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離婚と別居はどちらが得?メリットとデメリットを比較し、違いを解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の離婚専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
当サイトでは、離婚に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

夫婦関係が悪化している時、離婚するか、あるいはまず別居をするか、悩むことと思います。離婚と別居ではどちらが得なのか、自分の場合は離婚と別居のどちらを選択すべきなのか、迷っている人もいるのではないでしょうか。

どちらが得なのかを知っておき、自分のケースで最適な方を選びたいですよね。

そこで、この記事では、離婚か別居か、どちらが得なのか決めかねている方向けに、離婚と別居のそれぞれのメリットやデメリットについて、弁護士が解説いたします。

離婚するか別居するかでお悩みの際に、本記事がご参考になりましたら幸いです。

目次

離婚と別居はどちらが得?

夫婦仲が悪化した時、離婚するか、別居をするか。どちらの選択肢を取っても手間や時間、費用がかかりますし、一度決断すると覆すのは大変です。

そこで、離婚と別居とではどちらが得なのか、自分の場合にはどちらを選ぶべきなのか、ということについて、弁護士が詳しく解説させていただきたいと思います。

離婚と別居のどちらが得なのかを比較する前に、まずは離婚と別居それぞれの基本的な知識と、離婚と別居の違いについて見ていきましょう。

離婚とは法律上の夫婦関係を解消すること

離婚とは、婚姻届の提出によって法律上の夫婦となった男女について、離婚届の提出によって法律上の夫婦関係を解消することをいいます。

離婚の方法には「協議離婚」、「調停離婚」、「裁判離婚」、「審判離婚」の4種類の方法があります。中でも、日本で最も一般的なの離婚の方法は話し合いによる協議離婚で、夫婦双方の合意があれば、離婚届を提出するだけで離婚が成立します。

離婚することによって、夫婦の法律上の地位が大きく変化することになります。まず、婚姻関係が解消されるため、法律上の配偶者としての権利や義務がなくなります。これにより、相続権や扶養義務などが失われます。

離婚は単に法律上夫婦でなくなる、というだけでなく、個人の法律上の地位や権利義務に大きく影響する手続きなのです。

別居とは婚姻継続しつつ別々に生活すること

別居とは、夫婦が一時的または長期的に別々の生活を送ることを指します。別居には、別居を始める理由や目的、別居中の生活などによって、さまざまな形態があります。

たとえば、夫の単身赴任で夫婦が離れて生活する別居があります。一般的に単身赴任は一時的なもので、週末は夫婦で顔を合わせたり、単身赴任の終了とともに同居生活に戻ることが想定されているため、あまり別居生活だと意識することはないかもしれません。

また、妻が里帰りのために実家に帰省して夫とは別々に生活することも別居です。

一方で、離婚を前提とした別居では、夫婦が将来的に離婚することを意図して別々に生活を始めることもあります。この場合の別居は、離婚に向けて法的な手続きや財産分与、子供の親権などの問題を解決するための準備期間となります。

いずれの別居生活においても、離婚届を提出していないため、法律上は夫婦の婚姻関係は継続しています。そのため、別居中も法律上の夫婦としての権利や義務が生じることになります。

離婚と別居の違い

離婚と別居は、夫婦関係における重要な選択肢ですが、その法的地位の変化、夫婦関係の扱い、手続きの内容には大きな違いがあります。

まず、法的地位の変化についてですが、離婚は夫婦関係を法的に解消することを意味します。これにより、法律上の配偶者としての権利や義務が終了し、相続権や扶養義務などが失われます。

一方、別居は夫婦が物理的に離れて生活することを指すため、法的地位に変化はありません。夫婦は法的には引き続き結婚しており、法的な権利や義務も維持されます。

夫婦関係については、離婚の場合は離婚の成立によって夫婦関係は完全に終了します。これに対し、別居は夫婦関係を一時的に中断するものであり、関係の修復や再構築の可能性が残されています。

手続きの違いに関しては、離婚は協議離婚、調停離婚、裁判離婚など、法的な手続きを経て正式に成立します。
これに対して、別居は夫婦間の合意によって実施されることが多く、特別な法的手続きを必要としない場合が一般的です。

「離婚と別居はどちらが得か」のお得の意味

「得」とは、利益や利点があることを意味します。

離婚と別居はどちらが得かというのは、自身が置かれている状況において、離婚と別居はどちらがより良い選択肢か、ということになります。

たとえば、夫婦関係が修復不可能な状態にある場合、離婚は新たな人生を始めるための清算として「得」となるかもしれません。一方で、関係を見直し、修復の可能性を探るために一定期間距離を置きたい場合、別居がより「得」な選択となるでしょう。

また、子供の存在や経済的な状況、社会的な立場など、個々の状況に応じて「得」の意味は異なります。子供のために法的な夫婦関係を維持しながらも別居生活を選ぶことが「得」と感じる場合もあれば、経済的自立を目指して離婚を選ぶことが「得」となる場合もあります。

さらに、精神的な健康や将来の幸福を考慮すると、一時的な不利益を受け入れてでも離婚や別居を選ぶことが「得」となる場合もあります。重要なのは、自身の価値観、目標、そして現在の状況を正確に把握し、長期的な視点で最も利益をもたらす選択をすることです。

結局のところ、離婚と別居のどちらが得かは、個人の状況や目指す未来によって異なります。夫婦それぞれが自身の状況を慎重に分析し、最善の選択をすることが重要です。

それでは、自身にとって最善の選択肢がどちらなのか、まずはそれぞれのメリットとデメリットについて、詳しく見ていきましょう。

別居のメリット・デメリットと注意点

離婚問題が生じた場合、離婚前に別居して冷却期間を設けるという夫婦は少なくありません。すぐに離婚していない場合や、離婚条件で揉めている場合は、離婚前に別居することが一般的です。このように、離婚前に別居することに関して、何かメリットやデメリットはあるのでしょうか。

別居のメリット:別居中に離婚問題の早期解決が可能になる

夫婦関係が悪化しても、すぐに離婚せず別居することには、主に6つのメリットがあります。

  • 裁判での離婚請求が認められやすくなる
  • 自分の意思を強く表明でき、相手が協議に応じる可能性が高まる
  • 別居により婚姻費用が生じることが、早期離婚へのきっかけとなる
  • 同居に伴うストレスからの解放
  • 子供のストレス軽減と心身の健全な発達の保護
  • 離婚に向けた準備を冷静に進めることができる

それぞれについて、具体的にご説明させていただきます。

メリット1.裁判での離婚請求が認められやすくなる

別居をすると、裁判での離婚請求が認められやすくなることが一つの大きなメリットです。

日本の民法では、さまざまな事情によって夫婦の関係が修復不可能なほどに、婚姻関係が破綻していると判断された場合には、裁判での離婚請求が認められます。

別居しているというだけではなく、不倫やDVといった他の離婚原因の有無や、夫婦の個別の状況によって異なるものの、5年~10年の別居期間があると、婚姻関係の破綻が認められやすいと言われています。

なお、裁判例を見ると、2年未満の別居期間では離婚が認められることが少なく、別居期間が3年以上になると認められるケースが見受けられ、別居期間が5年以上になると、離婚が認められる可能性が高いという傾向があるようです。

これは、自分は離婚を望んでいるが、配偶者が離婚に同意してくれない場合に、特に重要なポイントです。別居を通じて、裁判所に婚姻関係が実質的に終了していることを示すことができれば、離婚裁判において有利な立場を得ることが可能になります。

ただし、別居期間が長くなると裁判での離婚請求が認められやすくなるとはいえ、それだけで離婚が成立するわけではありません。離婚を求める場合は、別居期間だけでなく、その他の離婚原因も裁判所に示す必要があります。

メリット2.自分の意思を強く表明でき、相手が協議に応じる可能性が高まる

別居は、離婚に向けた自分の意思を強く表明する手段として有効です。夫婦が一緒に生活を続ける中で、離婚の意向を伝えても相手に真剣に受け止められないことがあります。

しかし、別居という具体的な行動を通じて、離婚への強い意志を示すことができます。これにより、相手もその意思を真剣に捉え、離婚に関する話し合いに前向きに応じるようになる可能性が高まります。

別居が話し合いのきっかけとなり、夫婦間でのコミュニケーションが改善されることもあります。別居中にお互いの感情が落ち着き、冷静に話し合いができる環境が整うことが期待できます。

このように、別居は離婚に向けた協議を促進する役割を果たすことができるのです。

また、別居は相手に対して自分の決断を示すと同時に、自分自身にとっても離婚の意思を確認する機会となります。実際に別居生活を経験することで、離婚後の生活をイメージしやすくなり、より確固たる決断を下すことが可能になるでしょう。

メリット3.別居により婚姻費用が生じることが、早期離婚へのきっかけとなる

別居することで、相手が自身に対して支払うべき婚姻費用が増加することがあります。この経済的負担の増加は、相手にとって離婚を早期に進める動機となる場合があります。

特に、相手が別居に伴う追加的な費用負担を避けたいと考える場合、離婚によって婚姻費用の支払い義務を終了させることが一つの解決策となります。

たとえば、別居中に生じる住居費や生活費などの婚姻費用を、相手が支払うことになっている場合、その負担が重く感じられるようになると、相手は離婚に向けて前向きになる可能性が高まります。このように、別居によって生じる経済的な負担が、早期に離婚に応じるきっかけとなることがあるのです。

こうした点も、別居することのメリットのひとつと言えるでしょう。

メリット4.同居に伴うストレスからの解放

夫婦間の関係が悪化している場合、同居は日常生活において大きなストレス源となります。このような状況では、別居は同居に伴うストレスから解放される重要な手段となります。

別居によって、互いに距離を置くことができるため、日々の小さな諍いや摩擦が減少します。

また、お互いのプライベートな空間が確保されることで、精神的な安定を取り戻すことができます。これにより、冷静に自身の感情や状況を見つめ直し、今後の人生について考える機会を得ることができます。

特に、DVやモラルハラスメントなどの問題がある場合、別居は安全を確保し、被害者が自立するための第一歩となります。別居中に専門家の支援を受けることで、心身ともに回復し、より良い解決策を模索することが可能になります。

メリット5.子供のストレス軽減と心身の健全な発達の保護

夫婦間の対立や不和は、子供にとって大きなストレスとなり、心身の健全な発達に悪影響を与えることがあります。別居は、このような家庭環境から子供を守り、ストレスを軽減するための有効な手段となることがあります。

子供は家庭内の緊張や争いを敏感に感じ取ります。夫婦が同居している状況で、頻繁に喧嘩が起こると、子供は不安や恐怖を感じることがあり、学業や社会性の発達に悪影響を及ぼすことがあります。別居によって夫婦が物理的に離れることで、子供はこうした日常生活での争いから解放され、安定した環境で過ごすことが可能になります。

また、別居は親が子供との関係を見直す機会にもなります。親がそれぞれの役割を再確認し、子供とのコミュニケーションを改善することで、子供は安心感を得ることができます。

このように、別居は、子供の心身の健全な発達を支えるための環境を整えることにもつながるのです。

メリット6.離婚に向けた準備を冷静に進めることができる

別居は、離婚に向けた準備を冷静かつ計画的に進めるための有効な手段です。

夫婦が同居している状況では、感情的な対立や日常生活のストレスが、離婚に関する重要な決断を難しくすることがあります。別居によって物理的な距離を置くことで、双方が落ち着いて今後の方向性を考えることができます。

別居期間中には、離婚に関する法的手続きの準備を進めることが可能です。たとえば、弁護士との相談を通じて離婚の流れや必要な書類、財産分与や子供の親権などの重要なポイントを把握することができます。

また、財産や収入を整理し、離婚後の生活設計を立てることも重要です。別居中にこれらの準備を行うことで、離婚手続きをスムーズに進めることができます。
さらに、別居は精神的な準備を整えるためにも役立ちます。離婚は人生の大きな転機であり、不安や心配を感じることがあります。別居中に自分自身の感情や心の準備を整えることで、離婚の決断に自信を持つことができます。

また、必要に応じてカウンセリングやサポートグループを利用することで、心理的なサポートを受けることも可能です。

別居は、離婚に向けた準備を冷静に進めるための貴重な時間を提供します。この期間を有効に活用することで、離婚後の新たなスタートをより確かなものにすることができます。

別居のデメリット:やり方によっては不利になることもある

上記のようなメリットがある一方で、別居には次のようなデメリットもあります。

  • 一度別居をすると復縁が難しくなる
  • 有責行為の証拠集めが難しくなる
  • 仕事や住まい探しなどの手続きに手間がかかる
  • 悪意の遺棄とみなされるリスクがある
  • 子供の精神的負担が増大する
  • 社会的なつながりや交友関係が失われる
  • 財産を隠蔽されるリスクがある
  • 同居時よりも経済的な負担が増える

ひとつずつ見ていきましょう。

デメリット1.一度別居をすると復縁が難しくなる

夫婦が一度別居をすると、復縁が難しくなることがあります。

別居は物理的な距離だけでなく、心理的な距離も生じさせるため、夫婦間の関係修復が困難になることがあります。別居期間中に、お互いに対する不信感や恨みが深まり、元の関係に戻ることが難しくなることがあります。

また、別居を経験した後に復縁を試みる場合、以前と同じ生活パターンに戻ることが難しいこともあります。別居中にお互いが新しい生活習慣や価値観を身につけることがあり、それが復縁後の生活に影響を及ぼすことがあるためです。

さらに、別居が長期化すると、夫婦がお互いに新しい人間関係を築くことがあり、それが復縁の障害となることもあります。特に、新しいパートナーが現れた場合、復縁の可能性は一層低くなります。

復縁を望む場合は、別居を決断する前に十分なコミュニケーションを取り、問題解決に向けた努力をすることが重要です。また、別居を選択した場合でも、定期的なコミュニケーションを維持し、関係修復に向けた意志を持ち続けることが大切です。

デメリット2.有責行為の証拠集めが難しくなる

別居すると、配偶者の有責行為(不貞行為、DV、モラハラなど)の証拠を集めることが難しくなる場合があります。夫婦が同居しているときに比べて、お互いの行動を把握しにくくなり、証拠を収集する機会が減少します。

特に、不貞行為の証拠は、同居しているときに比べて別居中の方が収集が困難になることが多いです。同居しているときは、配偶者の行動パターンや外出の頻度などを把握しやすく、不審な行動に気づきやすいですが、別居中はそのような情報が得にくくなります。

また、DVやモラハラの場合も、別居によって直接的な被害が減るため、証拠を集めることが難しくなる可能性があります。これらの有責行為の証拠は、離婚裁判において重要な役割を果たすため、証拠が不足すると離婚の条件や判決に影響を与える可能性があります。

このような状況を回避するためには、別居を決断する前に、可能な限り証拠を収集しておくことが重要です。また、別居中も、弁護士や専門家と相談しながら、証拠収集の方法を検討することが推奨されます。

デメリット3.仕事や住まい探しなどの手続きに手間がかかる

別居を決断する際、新しい仕事や住まいを探す必要が生じることがあります。これには時間や手間、費用がかかり、精神的および経済的な負担が増大することがあります。

特に、別居に伴う住居探しは、適切な場所を見つけるために多くの時間と労力を要することがあります。家賃、立地、交通の便など、さまざまな要素を考慮しながら住まいを探す必要があり、これがストレスの原因となることがあります。また、引っ越しに伴う費用や、新しい生活環境への適応も別居の際に考慮すべき点です。

仕事の面では、別居によって通勤が困難になる場合や、新しい住まいの近くで新たな職を探す必要がある場合があります。これにより、仕事探しのプレッシャーや職場での変化に直面することがあります。

別居に際しては、これらの手続きに伴う負担を軽減するために、事前に計画を立て、必要なサポートを受けることが重要です。また、家族や友人、専門家からのアドバイスや支援を求めることも有効な方法です。別居の準備を丁寧に進めることで、別居後の生活をスムーズに始めることができます。

デメリット4.悪意の遺棄とみなされるリスクがある

別居を決断する際、特に法的な観点から注意が必要なのが、悪意の遺棄(民法第770条1項2号)とみなされるリスクです。

悪意の遺棄とは、配偶者が理由なく家庭を去り、家族の面倒を見なくなることを指します。このような行為は、離婚の際に有責配偶者として不利な立場に立たされる原因となることがあります。

別居自体が必ずしも悪意の遺棄とはみなされませんが、別居の理由や方法、別居後の行動によっては、悪意の遺棄と判断される可能性があります。たとえば、配偶者や子供に十分な生活費を提供せずに別居した場合や、別居を通告せずに突然家を出た場合などが該当する可能性があります。

悪意の遺棄とみなされると、離婚裁判において不利な立場に立たされるだけでなく、慰謝料の支払いが生じることもあります。

ですので、別居を検討する際には、配偶者との十分な話し合いを行い、別居の意図や条件を明確にすることが重要です。

デメリット5.子供の精神的負担が増大する

別居は、子供にとっても大きな影響を及ぼす可能性があります。親の一方と離れて暮らすことになるため、子供は精神的な不安や孤独感を感じることがあります。特に、親の間の対立や不和が別居の原因である場合、子供は自分がその原因であると感じたり、親を選ばなければならないというプレッシャーを感じることがあります。

また、別居によって生活環境が変化することも、子供にとっての負担となります。新しい学校や友達への適応、新しい住まいでの生活など、変化に対応することが子供の心理的な安定を妨げることがあります。親が子供の感情やニーズに十分に注意を払わない場合、子供の心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

別居の際には、子供の精神的な負担を軽減するために、親が協力して子供のサポートを行うことが重要です。子供とのコミュニケーションを維持し、感情を共有することで、子供が安心感を得られるように努めることが大切です。

デメリット6.社会的なつながりや交友関係が失われる

別居によって、家族や近隣との交流が減少し、社会的なつながりや交友関係が失われるリスクがあります。同居していたときには当たり前にあった家族との日常的なコミュニケーションや、近隣住民との交流が途絶えることで、孤立感や孤独感を感じることがあります。

特に、高齢者の場合、別居によって支援を受ける機会が減り、孤立化が進むことが懸念されます。また、別居によって新しい環境に移る場合、新たな交友関係を築くことが難しく、社会的なサポートネットワークの構築が困難になることがあります。

このようなデメリットを軽減するためには、別居後も積極的に家族や友人、地域社会との関わりを維持し、新しい環境での交友関係を築く努力が必要です。
また、地域のサポートグループや活動に参加することで、社会的なつながりを保ち、孤立感を軽減することができます。

デメリット7.財産を隠蔽されるリスクがある

別居中には、相手が財産を隠蔽するリスクがあります。特に離婚を見越しての別居の場合、相手が財産分与を有利に進めるために、通帳や貴重品、不動産などの財産を隠すことがあります。

このような行為は、後の離婚裁判において正当に財産分与を受ける権利を損なう可能性があります。

財産隠しを防ぐためには、別居前に共有財産のリストを作成し、可能な限り財産の状況を把握しておくことが重要です。

また、別居中も定期的に財産の状況を確認し、怪しい動きがあった場合は弁護士や専門家に相談することが推奨されます。

デメリット8.同居時よりも経済的な負担が増える

別居により、生活費が二重にかかることになり、特に収入が限られている場合には、生活の質が低下する可能性があります。別居には家賃や光熱費などの住居費だけでなく、新たな家具や家電の購入など、初期費用もかかります。

また、子供がいる場合、子供の生活費や教育費などの負担も考慮する必要があります。別居によって子供の生活環境が変わる場合、新しい学校への転校や習い事など、追加的な費用が発生することもあります。

結果として、夫婦が同居している時よりも、経済的な負担が増えてしまうことになるというデメリットがあるのです。

離婚のメリット・デメリットと注意点

離婚と別居のどちらが得かを比べるにあたって、離婚することのメリットとデメリットについても詳しくご説明させていただきます。

離婚することのメリット

離婚には、主に次の4つのメリットがあります。

  • 配偶者との関係についてのストレスや不満から解放される
  • 自分の時間やお金を自由に使える
  • 新しく恋愛や再婚ができる
  • 仕事や住む場所を配偶者の都合で左右されない

離婚のメリット1.配偶者との関係についてのストレスや不満から解放される

離婚によって、配偶者との関係に起因するストレスや不満から解放されることが大きなメリットの一つです。

夫婦関係がうまくいかない場合、日々の生活において感じるストレスは心身の健康に悪影響を及ぼすことがあります。離婚をすることで、このようなストレスから解放され、精神的な安定を取り戻すことができます。

また、不満や対立が解消されることで、自分自身の幸福感や満足感を取り戻すことができます。

離婚のメリット2.自分の時間やお金を自由に使える

離婚することで、自分の時間やお金を自由に使えるようになることも大きなメリットです。

夫婦の結婚生活では、配偶者との共同生活や家族のために時間や財産を使うことが多く、自分自身のために使える時間やお金が制限されることが多いです。

離婚によって独立することで、自分の趣味や興味、キャリアの追求など、自分の人生を自分のために生きることができます。

また、財産分与によって自分の資産を確保し、経済的な自立を図ることもできます。

自分の時間やお金を自由に使えることは、新たな人生のスタートを切る上で重要な要素です。

離婚のメリット3.新しく恋愛や再婚ができる

離婚によって、新しい恋愛や再婚の可能性が開かれることも大きなメリットです。

夫婦関係が終わることで、新たなパートナーとの出会いや人生を共にする機会が生まれます。再婚によって、より相性の良い人との関係を築き、幸せな家庭生活を送ることができるかもしれません。

また、新しい恋愛を通じて、自己成長や新たな経験をすることもできます。離婚後の人生で新しい恋愛や再婚を選択することは、自分自身の幸福を追求する上で重要な一歩となります。

離婚のメリット4.仕事や住む場所を配偶者の都合で左右されない

離婚によって、仕事や住む場所を自分自身の選択で決められるようになることも、メリットの一つです。

結婚生活では、配偶者の仕事や生活環境に合わせて、自分のキャリアや住居を選ぶ必要があることがあります。

しかし、離婚をすることで、自分のキャリアプランや希望する生活スタイルに合わせて、仕事や住む場所を自由に選択できるようになります。これにより、自分の望む人生を実現するための機会が広がります。

離婚することのデメリット

一方で、離婚には次のようなデメリットもあります。

  • 経済的に苦しくなる
  • 配偶者としての法的な権利を失う
  • 家族や子供と離れることの孤独感
  • 離婚に対してマイナスなイメージを持たれる
  • 離婚準備や離婚後の手続きが煩雑

離婚のデメリット1.経済的に苦しくなる

離婚は、経済的な面での大きな変化をもたらすことがあり、これがデメリットの一つとなることがあります。

結婚生活では、収入や財産を配偶者と共有することで生活の安定が保たれていることが多いですが、離婚によってこの安定が失われる可能性があります。

特に、専業主婦や低収入の配偶者の場合、離婚後の経済的自立が困難になることがあります。また、財産分与や養育費、慰謝料など、離婚に伴う経済的な負担が増加することもあります。

離婚のデメリット2.配偶者としての法的な権利を失う

離婚することで、配偶者としての法的な権利を失うこともデメリットの一つです。

結婚生活では、配偶者として相続権や保険の受取人となる権利、税法上の優遇措置など、さまざまな法的な権利が認められています。

しかし、離婚によってこれらの権利が失われることになります。特に、相続権の喪失は、配偶者が亡くなった場合に大きな影響を及ぼすことがあります。

また、健康保険や社会保険の扶養家族から外れることによる影響も考慮する必要があります。

このように、離婚によって失われる法的な権利は、離婚の際に十分に検討すべき重要なポイントです。

離婚のデメリット3.家族や子供と離れることの孤独感

離婚によって家族や子供と離れることは、深い孤独感を引き起こすことがあります。

特に、子供との関係が変化することは、親にとって大きな心理的な負担となることがあります。子供との日常的なコミュニケーションや親子の絆が弱まることで、孤独感や喪失感を感じることがあります。

また、離婚によって家族との関係が断絶されることは、社会的な支援ネットワークの喪失にもつながり、孤立感を強めることがあります。

このように、離婚に伴う孤独感や孤立感は、精神的な健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

離婚のデメリット4.離婚に対してマイナスなイメージを持たれる

離婚に対して社会的な偏見やマイナスなイメージを持たれることも、デメリットの一つです。

特に、離婚がまだ社会的に受け入れられにくい地域や文化の中では、離婚した人に対する偏見や差別が存在することがあります。このような状況は、離婚した人の社会的な立場や人間関係に悪影響を及ぼすことがあります。

また、離婚に対するネガティブなイメージは、離婚後の恋愛や再婚に対する障害となることもあります。
このため、離婚を決断する際には、社会的な偏見やイメージに対する対処方法を考えることが重要です。

離婚のデメリット5.離婚準備や離婚後の手続きが煩雑

離婚には、準備や手続きが煩雑であることもデメリットの一つです。

離婚には、財産分与、親権や養育費の決定、慰謝料の交渉など、さまざまな問題を解決する必要があります。これらの問題を解決するためには、法的な知識や専門家のアドバイスが必要になることがあり、時間や費用がかかることがあります。

また、離婚後も、養育費の支払いや子供の面会交流など、さまざまな手続きが続くことがあります。このように、離婚に伴う手続きの煩雑さは、精神的なストレスや経済的な負担となることがあります。

【まとめ】離婚と別居はどちらが得か

 

【まとめ】離婚と別居はどちらが得か

 

さて、以上の通り、離婚と別居それぞれのメリットとデメリットについて詳しく見てきました。その上で、離婚と別居はどちらが得なのか、どういった場合にどちらが得になるのかを簡単にまとめさせていただきます。

離婚するより別居する方が得な場合

冷静に考える時間が欲しい場合

夫婦関係が破綻していると感じるものの、すぐに離婚するかどうか決断できない場合、別居を選ぶことで感情的な距離を置き、将来の関係について冷静に考える時間を確保することができます。この期間を利用して、自身の感情や配偶者との関係を再評価し、修復の可能性を探ることもできます。

世間体が気になる場合

特に社会的な立場があったり、職業上、離婚がマイナスに影響する可能性があったりする場合、離婚より別居が向いていることがあります。苗字が変わることで離婚したことが周囲にバレる、というリスクもなく、外部からの評価を保ちつつ、夫婦関係の問題に対処することができます。

配偶者の扶養に入っていたい場合

経済的な理由から、配偶者の健康保険の扶養に入っていたい場合、別居を選ぶことで、法的な離婚をせずに扶養関係を継続することができます。これにより、医療費や生活費の負担を軽減し、経済的な安定を保つことができます。

離婚に必要となる費用負担を抑えたい場合

離婚には、弁護士費用や裁判費用など、多額の費用がかかることがあります。別居を選ぶことで、これらの費用を節約し、経済的な負担を軽減することができます。また、別居中に財務状況を安定させ、将来的な離婚に備えることも可能です。

離婚手続きを進める時間はないが配偶者と距離を取りたい場合

仕事や子育てなどで忙しく、すぐに離婚手続きを進めることが難しい場合でも、別居を選ぶことで、配偶者との距離を速やかに取ることができます。これにより、心理的な余裕を得ることができ、離婚に向けての準備をじっくりと進めることができます。

別居するより離婚する方が得な場合

再婚したい場合

もし将来的に新しいパートナーとの結婚を考えているなら、離婚することでその道が開かれます。別居中は法的に夫婦関係が続くため、再婚することはできません。新しいパートナーときちんと入籍したい場合は、別居ではなく離婚を選択すべきです。

経済的な独立を図りたい場合

配偶者との経済的な結びつきを完全に断ち切り、自分の収入や資産を自由に管理したい場合、離婚が適切な選択です。別居では、法的にはまだ夫婦とみなされ、経済的な義務や権利が残る可能性があります。離婚により、経済的な独立を図り、自分の財産を自由に使うことができます。

財産分与や慰謝料を請求したい場合

離婚に際して、配偶者の不貞行為やDVなどの有責行為に対して慰謝料を請求したい場合や、共有財産の公正な分与を求めたい場合、離婚手続きを進める必要があります。別居だと、婚姻関係が継続するため、慰謝料を請求すること自体が結果として夫婦の共有財産にとってマイナスになることがありますし、財産分与は離婚時に行われる手続きなので、別居時には財産分与をできません。婚姻期間が長く、分配する共有財産が多い夫婦は、特に別居よりも離婚を選ぶ方が良いケースがあります。

夫婦関係によるストレスや不満から解放されたい場合

配偶者との価値観の違い、コミュニケーションの問題、性格の不一致、あるいは不貞行為やモラハラなどの有責行為が原因で、配偶者との関係が悪化していると、精神的なストレスが大きく、別居するだけではこうしたストレスから完全に開放されません。別居ではなく離婚することによって、完全に関係を断ち切ることで、心理的な解放感を得ることができます。

離婚と別居は税金や保険の面ではどちらが得?

税金や保険などの制度面で見ると、一般的に別居の方が有利なケースが多いです。

たとえば税金に関しては、別居中でも法的に夫婦であれば、配偶者控除を受けることができます。離婚するとこの控除は受けられなくなります。同様に、別居中でも配偶者や子供が扶養家族として認められれば、扶養控除を受けることができますが、離婚するとこの控除は受けられなくなります。

社会保険については、別居中は配偶者の健康保険の扶養家族として保険証を使用することができますが、離婚するとその資格を失うことになります。そして、離婚すると、配偶者の社会保険の扶養から外れるため、自身で国民健康保険などに加入する必要があります。

ですが、これらは夫婦の状況や、世帯の所得によっても左右されるため、離婚と別居では別居の方が得だとは一概には言えません。たとえば、子供がいる場合は、離婚した方がひとり親世帯に対する公的支援制度を利用することができる場合もあるからです。

税金や社会保険だけではなく、他のメリットやデメリットを検討した上で、自分の状況に照らし、離婚と別居ではどちらが得なのかを慎重に判断すべきです。

「離婚と別居はどちらが得か」に関するQ&A

Q1.別居することのメリットとデメリットを教えてください。

別居することのメリットには、主に次のようなものがあります。

  • 裁判での離婚請求が認められやすくなる
  • 自分の意思を強く表明でき、相手が協議に応じる可能性が高まる
  • 別居により婚姻費用が生じることが、早期離婚へのきっかけとなる
  • 同居に伴うストレスからの解放
  • 子供のストレス軽減と心身の健全な発達の保護
  • 離婚に向けた準備を冷静に進めることができる

反対に、別居することには次のようなデメリットもあります。

  • 一度別居をすると復縁が難しくなる
  • 有責行為の証拠集めが難しくなる
  • 仕事や住まい探しなどの手続きに手間がかかる
  • 悪意の遺棄とみなされるリスクがある
  • 子供の精神的負担が増大する
  • 社会的なつながりや交友関係が失われる
  • 財産を隠蔽されるリスクがある
  • 同居時よりも経済的な負担が増える

Q2.離婚することのメリットとデメリットを教えてください。

離婚には、主に次の4つのメリットがあります。

  • 配偶者との関係についてのストレスや不満から解放される
  • 自分の時間やお金を自由に使える
  • 新しく恋愛や再婚ができる
  • 仕事や住む場所を配偶者の都合で左右されない

一方で、離婚には次のようなデメリットもあります。

  • 経済的に苦しくなる
  • 配偶者としての法的な権利を失う
  • 家族や子供と離れることの孤独感
  • 離婚に対してマイナスなイメージを持たれる
  • 離婚準備や離婚後の手続きが煩雑

Q3.離婚するより別居する方が得な場合には、どういったケースが考えられますか?

離婚するより別居する方が得だと言えるケースとしては、次のような場合が考えられます。

  • 冷静に考える時間が欲しい場合
  • 世間体が気になる場合
  • 配偶者の扶養に入っていたい場合
  • 離婚に必要となる費用負担を抑えたい場合
  • 離婚手続きを進める時間はないが配偶者と距離を取りたい場合

離婚前に別居すべき?どちらが得か迷ったら弁護士にご相談を

離婚と別居、どちらが得かは個々の状況や目的によって異なります。

別居は、関係の修復を目指す場合や、税金や保険の制度面で有利な場合に選択されることが多いです。

一方、離婚は、関係が完全に破綻している場合や、精神的な解放を求める場合に適しています。

重要なのは、自身の状況を正確に把握し、将来に向けて最善の選択をすることです。

離婚と別居のどちらを選択するべきか悩んだ時は、法律の専門家である弁護士にお気軽にご相談いただければと思います。離婚前に別居する場合に、離婚手続きを進める中で不利にならないよう、別居から離婚成立まで徹底的にサポートさせていただきます。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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