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国際離婚|外国人との国際結婚の離婚手続きについて弁護士が解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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日本人と外国人が結婚するケースや、外国に居住する日本人同士で結婚するケース、日本で外国人同士が結婚するケースなどを総じて「国際結婚」といいます。この国際結婚の増加にともない、国際離婚も増えているようです。

ところで、日本に居住する日本人同士の離婚であれば、離婚届を提出すれば離婚が成立しますが、国際離婚の場合はどうなのでしょうか。

そこでこの記事では、国際離婚について弁護士が詳しく解説させていただきます。

外国人との離婚に関して、そもそもどの国の法律が適用されるのか、といった基本的な事項から、日本における国際離婚の手続きと、外国における国際離婚の手続きの方法、子どもの親権や養育費についてはどのように考えるのか、といった具体的な事項まで、分かりやすくご説明いたします。

国際離婚というと、一見すると難しそうで身構えてしまうかもしれませんが、本記事が少しでもご参考となりましたら幸いです。

目次

国際離婚

国際離婚とは、国際結婚をした夫婦が婚姻関係を解消することをいいます。ここでいう「国際結婚」とは、日本人と外国人が結婚する場合だけでなく、外国に居住している日本人同士が結婚するケース、日本に居住している外国人同士が結婚するケースなど、国境をまたいで結ばれるあらゆる婚姻を指します。

国際離婚では、離婚手続きにどの国の法律が適用されるのかという基本的な問題から、日本や外国で離婚手続きを行う際の実務的な手続きの問題、子どもの親権や養育費についての法的問題など、さまざまな課題が生じます。

また、夫婦の居住地や国籍、信仰する宗教の教義などによって、適用される法律や手続きが異なるため、正しい知識を備えておくことが重要です。

それでは、国際離婚について詳しく見ていきましょう。

どの国の法律が適用される?

国際離婚においてどの国の法律が適用されるかは、「法の適用に関する通則法」に定められています。

「法の適用に関する通則法」とは、国際的な要素がある法律問題において、どの国の法律を適用するのかを決定するためのルールを定めた日本の法律です。国際結婚や国際離婚のほかにも、国際的な相続問題、契約問題など、異なる国の法律が関わる場合に、どの国の法律を適用すべきかの判断基準を規定しています。

国際離婚について、法の適用に関する通則法第27条に、国際結婚の効力についての規定を準用すると定められています。

(離婚)
法の適用に関する通則法第27条 第25条の規定は、離婚について準用する。ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。

(婚姻の効力)
法の適用に関する通則法第25条 婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。

つまりは、以下の通りになります。

 

国際離婚ではどの国の法律が適用される

 

夫婦が共通の本国法を有している場合、その本国法が適用されます。本国法とは、国籍を有する国の法律のことです。ドイツ国籍を持つ夫婦が日本で離婚するような場合、本国法はドイツ法となるため、ドイツの法律によって離婚手続きを進めることになります。

夫婦に共通の本国法がない場合は、夫婦が共通の常居所地法が適用されます。常居所地とは、長期間継続的に居住し、日常生活を営んでいる場所のことをいいます。

つまり、夫婦が同じ国に居住している場合は、その国の法律が適用されます。たとえば、夫婦が日本で生活していれば、日本の法律が適用されることになりますし、夫婦がイギリスで共に生活していればイギリスの法律が適用されることになります。

共通の常居所地がない場合や、共通の常居所地の法律により離婚が認められない場合には、夫婦と最も密接な関係がある地の法律が適用されます。具体的には、たとえば日本人とアメリカ人の夫婦が現在、それぞれ日本とアメリカとで別居しているとしても、それ以前に長期間ドイツで共に生活していた場合には、ドイツの法律が適用される可能性があります。

なお、法第27条には「ただし、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。」とあるため、夫婦のどちらか一人が日本に住んでいる日本人であれば、日本の法律によって離婚することになります。

離婚裁判の管轄はどうなる?

国際離婚の準拠法の原則は上記の通りですが、準拠法が日本の法律であるからといって、裁判になった場合も日本で国際裁判をできるかというと、必ずしもそうではありません。

この点、国際裁判の管轄は人事訴訟法において、以下の通り規定されています。

(人事に関する訴えの管轄権)
人事訴訟法第3条の2 人事に関する訴えは、次の各号のいずれかに該当するときは、日本の裁判所に提起することができる。

1号 身分関係の当事者の一方に対する訴えであって、当該当事者の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき。

5号 身分関係の当事者の双方が日本の国籍を有するとき(その一方又は双方がその死亡の時に日本の国籍を有していたときを含む。)。

6号 日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、当該身分関係の当事者が最後の共通の住所を日本国内に有していたとき。

7号 日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、他の一方が行方不明であるとき、他の一方の住所がある国においてされた当該訴えに係る身分関係と同一の身分関係についての訴えに係る確定した判決が日本国で効力を有しないときその他の日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき。

つまり、①被告(裁判を起こされる側)が日本に住所を持っている場合(人事訴訟法第3条の2第1号)、②夫婦の双方が日本国籍である場合(同条第5号)、③夫婦の最後の共通の住所が日本国内で、原告(裁判を起こす側)の住所が日本国内にある場合(同条第6号)、④その他、特別な事情があり、日本の裁判所が裁判を行うことが適切であると判断される場合(同条第7号)のいずれかのケースにおいては、日本の裁判所で離婚に関する国際裁判を行うことができるとされているのです。

なお、④特別の事情とは、配偶者が行方不明のケースや、夫婦の一方が他方からDVを受けている場合などが該当すると考えられています。

国際結婚の離婚手続き

それでは、具体的な国際離婚の手続きについて見ていきましょう。国際離婚のケースについては、①日本で外国人と協議離婚する場合、②日本で外国人と調停・裁判離婚する場合、③外国で離婚する場合、の3つに大別して解説させていただきたいと思います。

①日本で外国人と協議離婚する場合

日本で外国人と協議離婚する場合、準拠法が日本法であるか外国法であるかによって、協議離婚が認められるかが異なります。

日本法により離婚するケースでは、話し合いで夫婦が合意すれば協議離婚をすることが可能です。この場合、居住地あるいは本籍地の市区町村役場に離婚届を提出することで、離婚成立となります。

手続きには、離婚届のほかに、下記の書類が必要となります。

  • 届出人の顔写真付きの公的な本人確認書類(マイナンバーカード、パスポート、在留カードなど)
  • 住民票(外国人同士の場合は国籍・在留資格・在留期間等が記載されたもの)
  • 婚姻の事実が確認できるもの(受理証明書、婚姻証明書など)

なお、アメリカやフィリピンなど、国によっては協議離婚を認めていない国や地域もあります。こうした協議離婚の認められない国の人同士が離婚する場合、日本の役所でも話し合いによる離婚届を受理することはできません。

また、一方が日本人で、日本法で離婚が成立したとしても、外国人配偶者が協議離婚の認められていない本国で婚姻登録をしている場合は、外国人配偶者の本国における婚姻登録は抹消されません。この場合、本国において定められた所定の手続き(裁判所で離婚判決を受けるなど)を行うことで、外国人配偶者は本国での婚姻登録を抹消することになります。日本では離婚が成立しているのに、外国人配偶者の本国では婚姻状態が続いている、という矛盾した状態になると、再婚ができないといった支障が生じるため、注意が必要です。

②日本で外国人と調停・裁判離婚する場合

夫婦が準拠する法律で離婚することが認められており、かつ国際裁判の管轄権が日本にある場合は、日本で調停や裁判による離婚をすることが可能です。

調停離婚とは、夫婦間で合意が成立しない場合に家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所の調停委員が間に入り話し合いを進める手続きです。調停委員は双方の事情や意見を聞き取り、離婚条件について調整を行います。双方が合意に達すれば調停が成立し、裁判所で調停調書が作成されます。この調停調書には、確定判決と同一の法的拘束力があります。

調停において合意がほぼ成立しているものの、何らかの理由で正式に調停が成立しない場合に利用されるのが審判離婚です。これは「調停に代わる審判」という手続きを家庭裁判所が行い、裁判官が調停に代わって判断を下すものです。審判離婚は裁判離婚と同様に判決としての法的効力があるため、裁判離婚しか認めない国においても、審判離婚による離婚を裁判離婚のひとつとして承認されることがあるため、国際離婚において有効な手段となり得ます。ただし、審判離婚を裁判離婚のひとつとして扱うことができるかに関しては、国ごとに異なるため、事前に確認が必要です。

調停や審判で離婚が成立しない場合は、裁判離婚に進みます。家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、裁判官が法的要件を満たしているかどうかを審理し、最終的な判断を下します。日本の裁判離婚では、民法に定められた離婚理由を原因とした離婚請求に限り、裁判による離婚が認められます(民法第770条)。

さて、以上の裁判所での離婚手続きを進める際、夫婦の両方が日本で生活し、日本語を理解しているのであればスムーズですが、外国人配偶者が海外に居住している場合には、書類の送達や書類の作成に関して注意が必要です。

外国に書類を送る場合、日本国内と異なり、通常の郵便のように簡単に送ることはできません。日本の裁判所から外国に書類を送るには、外交ルートを通じたり、現地の裁判所や公的機関を通じたりするなど、正式な手続きを踏む必要があります。そのため、書類が相手の手元に届くまでに数ヶ月かかることもあります。

そして、相手国の協力が必要なため、その国が国際的な条約に参加していなかったり、外交関係が円滑でなかったりすると、書類の送達自体が非常に難しくなることがあります。相手国の裁判所や当局が忙しかったり、手続きが複雑だったりすると、さらに時間がかかる場合もあります。

送達を行う際には、相手が書類を受け取ったことを正式に証明する必要もありますが、相手方が受領を拒否したり、住所が分からなかったりすると、その手続きが進まなくなることがあります。

このような、相手が海外にいて通常の送達ができない場合には、公示送達(民事訴訟法第110条)の手段が取られることもあります。公示送達は、日本の裁判所が所定の期間裁判所の掲示板に書類を掲示することで、書類が実際に届かなくても法的に「送達した」とみなす方法です。ですが、日本での公示送達はあくまで国内での法律上の手続きです。海外に居住する配偶者に対し、日本で公示送達を経て欠席裁判で離婚判決を取得した場合、相手の本国でこの離婚判決が承認されない可能性があります。

このように、外国への書類送達には時間がかかり、相手国の制度や状況に左右されるため、手続きは非常に複雑なものになるのです。

また、書類を作成した場合、訳文を付ける必要もありますし、外国人当事者が日本語を十分に理解できない場合は、通訳を準備する必要があります。翻訳や通訳については正確性が求められるため、専門的な翻訳者や通訳者に依頼することが望ましく、それらにかかる追加費用についてもあらかじめ予算化しておくべきでしょう。

このように、国際離婚の手続きは複雑ですから、円滑に手続きを進めるためにも、なるべく早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめいたします。

③外国で離婚する場合

外国で離婚手続きを行う場合には、当事者の国籍や居住地によって手続きが異なります。

日本人同士が外国で離婚をする場合、準拠法は日本法となります。ですので、日本の民法により、協議離婚をすることが可能です。このため、日本の大使館や領事館に離婚届を提出する方法、または郵送で日本の本籍地の市区町村役場に届出をする方法によって離婚が成立します。

ですが、この方法で日本法上は離婚できたとしても、外国の法律によっても効力を認められるかどうかは別問題となるため、注意が必要です。

日本人と外国人が外国で離婚する場合、日本法が準拠法として適用されるかどうかによって、離婚手続きが大きく異なります。

まず、夫婦の常居所地が日本にある場合など、日本法が準拠法とされる場合には、日本の法律に従って協議離婚が可能です。この場合、日本の本籍地の市区町村役場に郵送で離婚届を提出することで、協議離婚が成立します。

一方、夫婦の常居所地が外国にあり、日本法が準拠法として認められない場合には、外国の法律に従って離婚手続きを行う必要があります。

協議離婚の認められない国では、まずその国で定められた裁判離婚等によって離婚を成立させます。外国で裁判離婚が成立した場合の日本における効力については、民事訴訟法第118条に「すべての要件を備える場合に限り認められる」と規定されています。

(外国裁判所の確定判決の効力)
民事訴訟法第118条 外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。

一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。

二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。

三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。

四 相互の保証があること。

外国での判決の効力が認められた上で、日本で離婚の届出を行うことで、日本においても離婚が成立することになります。

国際離婚するとビザ(在留資格)はどうなる?

さて、外国人配偶者が日本人と離婚した後、日本でのビザ(在留資格)がどうなるのかは、特に気になるかと思います。

外国人が「日本人の配偶者等」としての在留資格によるビザを持っている場合、離婚したからといって直ちにビザが無効になるわけではありません。法律上は離婚後も最長6ヶ月間、配偶者としての在留資格のまま日本に滞在することが可能です。ただし、この6ヶ月というのは猶予期間であり、この間に何の手続きもしなければ、「ビザの取消」の対象となります(出入国管理及び難民認定法第22条の4第1項7号)。

(在留資格の取消し)
出入国管理及び難民認定法第22条の4第1項 法務大臣は、別表第一又は別表第二の上欄の在留資格をもつて本邦に在留する外国人(第六十一条の二第一項に規定する難民の認定又は同条第二項に規定する補完的保護対象者の認定を受けている者を除く。)について、次の各号に掲げる事実のいずれかが判明したときは、法務省令で定める手続により、当該外国人が現に有する在留資格を取り消すことができる。

7号 日本人の配偶者等の在留資格(日本人の配偶者の身分を有する者(兼ねて日本人の特別養子(民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百十七条の二の規定による特別養子をいう。以下同じ。)又は日本人の子として出生した者の身分を有する者を除く。)に係るものに限る。)をもつて在留する者又は永住者の配偶者等の在留資格(永住者等の配偶者の身分を有する者(兼ねて永住者等の子として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留している者の身分を有する者を除く。)に係るものに限る。)をもつて在留する者が、その配偶者の身分を有する者としての活動を継続して六月以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)。

したがって、離婚後に本国へ帰国する場合は特段問題ありませんが、日本に定住し続ける場合には、離婚によって在留資格の前提を満たさなくなったわけですから、在留資格を取得しなければなりません。そこで、在留資格の変更手続きが必要となります。

なお、婚姻期間が約3年以上で、経済的に自立して生活を維持できる収入や日本語能力があり、また、日本人との間に子どもがいてその子の養育を担当する場合などは、定住者ビザが認められやすくなります。

そして、離婚が成立した日から14日以内には、入国管理局へ「配偶者に関する届出」を行わなければなりません(出入国管理及び難民認定法第19条の16第3号)。この届出を怠ると過料(最大20万円)が課される場合があります(同法第71条の5第3号)。また、今後のビザ変更の申請においても不利な事情と判断される可能性がありますので、注意が必要です。

 

国際離婚時の届出

 

国際離婚と子どもの親権

国際離婚する場合、子どもの親権や養育費に関してどのように取り決めたらいいのか、悩む人も多いのではないでしょうか。

国際離婚における子どもの親権の取り決めに関しては、どの国の法律に準拠するかが大きな鍵となります。この点につき、法の適用に関する通則法第32条には、次の通り定められています。

(親子間の法律関係)
法の適用に関する通則法第32条 親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。

つまり、基本的には子どもの国籍が父親または母親と同じであれば、その子どもの国籍のある国の法律が適用されるということです。両親が双方とも日本国籍で子どもも日本国籍であれば、日本の法律が準拠法となります。

一方、子どもの国籍が両親どちらとも異なる場合や、両親がそれぞれ異なる国籍で子どもがそのどちらとも一致しない場合は、子どもが実際に生活の拠点としている国(常居所地)の法律が適用されることになります。

離婚の準拠法と、親子関係についての準拠法は必ずしも一致するわけではないため、事前に確認しておくことが重要です。

なお、子どもの養育費に関しては「扶養義務」の問題となるため、扶養義務の準拠法に関する法律の規定が優先されることになります。

(準拠法)
扶養義務の準拠法に関する法律第2条 扶養義務は、扶養権利者の常居所地法によって定める。ただし、扶養権利者の常居所地法によればその者が扶養義務者から扶養を受けることができないときは、当事者の共通本国法によって定める。

2 前項の規定により適用すべき法によれば扶養権利者が扶養義務者から扶養を受けることができないときは、扶養義務は、日本法によって定める。

ハーグ条約とは?

ところで、国際離婚に関しては、一方の親が子どもを国外へ連れ去ってしまう事件をニュースなどで目にしたことがあるかと思います。

こうした問題に対処するために、国際的な枠組みとして定められているのが「ハーグ条約」です。正式には「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」といい、日本は2014年にこのハーグ条約に加盟しました。

具体的には、16歳未満の子どもが一方の親によって元の居住国から別の国に無断で連れ去られた場合、その子どもを速やかに元の国へ返還することを義務付けた条約です。これにより、子どもの監護状態を原状回復させることができるほか、子の面会交流の機会を確保できるよう、手続きを進めることが可能となっています。

日本では外務省が中心となって、子どもの返還手続きや面会交流の実現支援が行われていますが、返還が子どもの福祉に深刻な危険を及ぼす場合など、例外的に返還が認められないケースもあります。

このため、国際離婚を考える場合は、ハーグ条約の仕組みについて事前に理解し、慎重な対応をすることが重要です。

国際離婚は弁護士に

国際離婚は、異なる国の法律や制度が複雑に絡み合うため、自分たちだけで解決するのはなかなか大変です。こうした国際離婚の悩みに関しては、弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

弁護士は国際離婚に関わる法律や制度について詳しいため、正しい情報をもとにした適切なアドバイス・サポートを受けられます。

国際離婚では、言葉の違いや文化の違いから、夫婦間の話し合いが難しくなることも少なくありません。そんなときに弁護士が間に入って交渉すると、コミュニケーションがスムーズになり、誤解や感情的な対立をおさえ、交渉を進めていくことが期待できます。

子どもの連れ去りなどの緊急事態も、国際離婚に精通した弁護士のサポートを受けることで、迅速かつ適切に対処することが可能となります。

また、弁護士は職務権限を活用して必要な情報収集や調査を行うことができるため、自分ひとりでは難しい手続きも、スムーズに進めることができます。

なにより、専門家に相談することで精神的な負担を軽減することができ、落ち着いてトラブルにも対応していくことができるでしょう。

国際離婚に関するQ&A

Q1.国際離婚ではどの国の法律が適用されますか?

A:基本的には、夫婦の国籍や居住地などの条件により決定されます。日本では「法の適用に関する通則法」という法律に基づき、どの国の法律を適用するかが判断されます。

Q2.外国人の配偶者と離婚する場合、日本で離婚手続きを進められますか?

A:外国人配偶者との離婚手続きは、日本の裁判所や役所で進めることが可能です。ただし、日本で離婚手続きを行うためには、夫婦のどちらかが日本に居住しているなど一定の条件を満たす必要があります。また、日本で離婚が成立したとしても、外国人配偶者の母国でも離婚が認められるとは限りませんので、注意が必要です。

Q3.子の親権に関する準拠法は離婚手続きの準拠法と同じですか?

A:必ずしも同じではありません。親権については、子どもの国籍や常居所地に基づいて判断されるため、離婚手続きと異なる国の法律が適用される場合があります。

まとめ

本記事では、国際離婚について弁護士が解説させていただきました。

国際離婚は国ごとの法律や制度の違いにより、さまざまな悩みや問題が生じることがあります。

特に、そもそもどの国の法律が適用されるのか、準拠法について正しく理解しておくことが重要です。

また、宗教上、離婚を認めていない国や、協議離婚が認められず、裁判所で離婚が認められなければ離婚できない国もあります。日本で離婚が成立した場合も、もう一方の国では離婚が成立していない、といったケースも少なくありません。どういった手続きが必要になるのか、あらかじめ確認しておく必要があります。

夫婦に子がいる場合、親権や養育費はどの法律によってどのように決定されるのか、不安に感じることも多いかと思います。離婚手続き・親権・養育費については、判断の基準となる準拠法が異なるため、日本の民法によって離婚できたからといって、親権も日本の民法によって判断されるわけではないことを理解しておくことが大切です。

こうした複雑な問題を一人で抱え込まず、国際離婚に詳しい弁護士に、なるべく早めに相談していただくことをおすすめいたします。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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