• 離婚準備

離婚を切り出した後の生活|離婚宣告から離婚するまでは同居もOK?弁護士が解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の離婚専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
当サイトでは、離婚に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

離婚を切り出してから離婚が成立するまでには、財産分与などの条件について話し合ったり、家を出て行く場合は引越し先を決めたりと、やることが非常に多いです。そのため、離婚を切り出す側も、入念な準備と心構えが重要となってきます。

離婚を切り出す場合、切り出してから離婚が成立するまでの期間をどのように過ごすかについても、事前にしっかり検討しておく必要があります。

そこで本記事では、離婚を切り出した後の生活はどのように過ごすべきなのか、という点に着目して、弁護士が分かりやすく解説させていただきます。
離婚の話し合いを進める間の生活に関して、同居する場合と別居する場合との2つが想定されますが、どちらの場合にも共通してすべきことや、同居する場合の注意点などについてご説明いたします。
離婚を切り出した後の生活に悩んだときに、本記事が少しでもご参考となりましたら幸いです。

目次

離婚を切り出した後の生活

相手方に離婚を切り出した後、その日のうちに離婚が成立するというようなケースはほとんどないでしょう。ほとんどの場合、離婚条件について夫婦で話し合いをしなければなりませんし、相手が離婚することにすぐに合意したとしても、引越しや離婚にともなう諸々の手続きで、数日ないし数週間の期間を要することが一般的です。

そのため、離婚の話を切り出してから離婚が成立するまでの間、どこでどのように生活するかは重要です。それによっては、離婚時の財産分与や慰謝料などの取り決めについて影響を及ぼすこともあるからです。
特に、離婚を切り出した後の生活においては、そのまま同居を続けるか別居するかによっても、離婚手続きの進め方が大きく異なってくることがあるでしょう。

さて、同居を継続するにしろしないにしろ、離婚の話を切り出してからは、次の通り共通してやることがあります。

  • 新居を確保する場合は、子どもの通学や保育園の都合なども含め、生活環境を総合的に考えた上で物件の条件や予算を見極めます。すぐに引越しをしない場合でも、将来的に別居が必要となった際の選択肢を押さえておくと、あわてずに対応できるでしょう。
  • 離婚後の収入や支出を一度整理し、今後どのように家計を運用していくかを明確にしておきます。家賃や光熱費、食費、ローンの支払いなど、固定費と変動費を区別しながら具体的に見積もることで、家計破綻を避けるための現実的なプランを立てやすくなります。
  • 夫婦の共有財産や相手の不貞行為などが争点となる可能性がある場合は、自宅にある預金通帳や契約書類、領収書などを取りまとめ、必要に応じてコピーを保管しておきます。後から「あの書類が見つからない」「内容を忘れてしまった」といった事態にならないよう、証拠や記録を早めに整理しておくことが大切です。
  • 子どもの親権や養育費については、学費や習い事など継続的にかかる費用を具体的に洗い出し、負担の分担について話し合いがしやすいよう準備します。子どもの年齢や成長段階に応じて必要な出費が変わってくるため、将来の見通しも含めて検討することが望ましいです。

以上のように、離婚を切り出した後に共通して行うべき準備や確認事項は多岐にわたります。スムーズな話し合いと、離婚後のトラブル防止のためにも、これらの点を一つひとつ確実に進めていくことが大切です。
それでは次に、実際に「同居を続けるか、それとも別居するか」という点を見ていきましょう。

離婚宣告から離婚するまでの生活

離婚を宣告してから離婚が成立するまで、同居すべきか別居すべきかは悩ましい問題です。以下に、離婚を切り出した後同居を続けるメリットとデメリットについてご紹介いたします。

 

離婚宣告から離婚するまでの生活

 

離婚を切り出した後は同居すべき?

それでは、離婚を切り出した後に同居すべきかどうか、まずは同居を続けるメリットについて解説いたします。

同居するメリット

①経済的負担の軽減
離婚の話を切り出してから正式に離婚が成立するまでの間、同居を続けることで住居費や光熱費などの生活費を共有できます。別居を始める場合は家賃や敷金・礼金といった初期費用、電気・ガス・水道の基本料金などがかかるため、想像以上に出費が増えることが多いです。

同居を続ければ、当面は追加の住居費用を抑えられますし、家計の分担をある程度維持できるため、金銭的な余裕を確保しながら離婚協議を進めることが可能です。

特に、自分の収入が限られている場合や、専業主婦(主夫)だったために新たに就職する必要がある場合などは、すぐに別居のための住居や資金を確保するのが難しいでしょう。また、離婚協議が長引く可能性がある人にとっても、生活費が大幅に膨らむリスクが少ないため、経済的負担の軽減は大きなメリットとなるでしょう。

②証拠の確保
離婚を切り出した後に不貞行為やDVといった不法行為を理由に慰謝料を請求したい場合や、相手が離婚に反対して調停・裁判に発展する可能性がある場合には、相手の行為を裏付ける証拠が欠かせません。同居を続けている間は、相手の行動や言動を日常的に把握しやすくなるため、決定的な場面を記録や写真などで残すチャンスが増えるというメリットがあります。

不法行為を行っている側は、当然ながら自分に不利な証拠を隠そうとするものです。メールやSNSのやり取り、写真・動画データなどを勝手に削除したり、物的証拠を持ち出したりするケースも珍しくありません。しかし、同居を続けている間であれば、自宅内や相手の身近な場所で証拠が保管されている可能性が高いため、退去して物理的に離れてしまう前に必要な証拠を確保することが可能です。また、会話の録音や客観的な状況を示す日記なども、調停や裁判で有力な資料となり得ます。

調停・裁判では、いかに説得力のある裏付け資料を提示できるかが結果を左右するといっても過言ではありません。日々の生活のなかでこまめに記録を取っておくことで、相手が不当な主張をしても、自分の主張を客観的に証明しやすくなるでしょう。短期間でも同居を続けながら証拠を集められるかどうかは、のちの交渉や裁判で有利な立場を確保するうえで非常に重要なポイントとなります。

③共有財産を把握しやすい
財産分与では、夫婦が共同で築いた財産を正しく把握しておかなければ、適切な財産分与ができません。預貯金や株式・投資信託などの金融資産だけでなく、不動産や車、家電や家具といった動産、保険の契約内容など、対象となる財産は意外と多岐にわたります。

そのため、離婚の話を切り出してから正式に離婚が成立するまでの間は、夫婦が共同で築いた財産を正確に洗い出すことが重要です。

同居をしていれば、これらの存在や価値を確認しやすく、どの程度の財産があるのかを早い段階で把握できます。別居中に「いつの間にか処分されていた」「どこに保管されているか分からない」という事態になると、取り戻すのが難しくなる場合もあります。離婚協議を有利に進めるためにも、同居して共有財産を整理できるのは大きなメリットです。

④子どもの生活環境の維持
離婚協議中は、夫婦間の緊張が高まりやすい時期ですが、子どもにとってはできるだけ普段通りの環境を保つことが心理的な安定にもつながります。特に学校や保育園、習い事などの予定がある子どもの場合、突然の別居や引越しで生活リズムが崩れると、大きなストレスを感じることが少なくありません。

同居していれば、子どもを急に転校・転園させる必要もなく、学習環境や友人関係などを継続したまま、親は離婚協議を続けられます。離婚にともなう変化は避けられないとはいえ、タイミングや手続きの進め方を慎重に検討できるのは、子どもの負担を考えるうえでも大きなメリットといえるでしょう。

⑤離婚協議が進めやすい
離婚を切り出してからは、財産分与や慰謝料、親権・養育費など、取り決めるべき事項が数多く存在します。そのため、別居を始めるとメールや電話だけで連絡を取り合う場合が増え、必要な情報をスムーズに共有しづらくなることが少なくありません。特に、実際に会って話し合おうとすると、週末や平日の夜などにお互いの都合をつけて日程調整しなければならないため、なかなかスムーズに話し合いを進められないことも少なくありません。

一方、同居を続けていれば、顔を合わせる機会が比較的多いため、重要な確認事項をその都度話し合うことが可能です。まとまった時間を取れない場合でも、空いた時間で少しずつ話し合いを重ねていくこともできます。細かい論点についても、思い立ったときにすぐ相手に話せるため、離婚協議を進めやすいのです。

⑥準備を整える時間の確保
離婚届を提出するまでには、新居の確保、転校や転園の手続き、財産分与のための資料収集など、多くの作業が発生します。一気に別居へ踏み切ると、物件探しに追われたり、引越しのための資金や手続きに手間取ったりするうちに、離婚協議のほうが後回しになってしまう恐れもあります。

同居を続ければ、落ち着いて新生活の準備を進められるだけでなく、子どもの学校や習い事のタイミングを考慮したり、財産分与に必要な書類を整理したりすることも比較的スムーズです。

特に、離婚成立までに決めておきたいことが多い場合は、同居しながら計画的に進めることで、慌てずにベストな選択を探る余裕が生まれます。

⑦夫婦関係を修復できる
離婚を切り出した後でも、同居を続けることで互いにじっくりと話し合う機会が増え、夫婦関係を見直すきっかけを得られる場合があります。離婚を思いとどまるために必要な対話や問題点の整理を、日常生活のなかで行いやすくなるため、夫婦カウンセリングや第三者のサポートを利用しながら関係修復に取り組む余地が生まれます。離婚直前まで険悪だったとしても、同居して本音で話し合うことで、あらためて価値観のすり合わせができ、やはり関係を継続したいと考え直すケースもゼロではありません。こうした「やり直し」の選択肢を残しておきたい人にとっては、同居を継続することが大きなメリットとなるでしょう。

同居するデメリット

上記のようなメリットがある一方で、同居を続けることには次のようなデメリットも存在します。

①日常的に顔を合わせるストレス
離婚を切り出すほど夫婦仲が悪化している状況で、同居を続けながら日常的に顔を合わせることは、精神的な負担を大きくする要因になりがちです。すでに相手に対して不信感や嫌悪感がある場合、ちょっとした言動や生活習慣の違いが気になりやすく、一緒に食事をとったり家の中で行動したりするだけでもストレスが増大してしまうことがあります。

特に、朝から夜まで同じ空間で過ごしていると、「離婚までの期間がどのくらい続くのか分からない」という不安と相まって、日々のイライラが蓄積されやすくなる点が問題です。その結果、冷静に協議を進めたいと考えていても、相手のちょっとした態度に感情的になりやすくなり、話し合いがスムーズに進まない恐れがあります。

さらに、精神的負担が大きくなると、仕事や育児など他の面にも悪影響が及ぶ可能性があります。自宅が休息の場でなくなることで疲労やストレスを発散しにくくなり、心身の不調を招きやすくなる点は、長期的に見ても大きなデメリットといえるでしょう。

②夫婦間でトラブルが生じやすい
離婚を切り出した後に同居を続けると、すでに悪化している夫婦関係が一層険悪化しやすくなるため、些細な場面をきっかけに深刻なトラブルへ発展する危険が高まります。

たとえば、これまで自然に共有していた生活費の負担割合や管理方法を巡って「相手が勝手にお金を使っているのではないか」と疑心暗鬼になったり、洗濯や掃除、料理といった家事分担のあり方や、起床・就寝時間、食事のタイミングなど生活習慣の違いをめぐって苛立ちが募ったりすることが典型的です。

中には、部屋の使用時間を制限するなど相手の行動を意図的に邪魔しようとしたり、荷物を勝手に動かしてしまったりするなどの嫌がらせがエスカレートして、夫婦関係の悪化が深刻化することもあります。

また、すでに関係がこじれている状態では、罵倒や悪口が飛び交いやすく、精神的な嫌がらせや言葉の暴力といった形で感情のすれ違いがますます大きくなりがちです。
こうした状況が続くと、結果的に離婚協議自体が停滞してしまうだけでなく、同居生活を続けている間もお互いに強いストレスを抱えながら暮らすことになり、大小さまざまなトラブルが生じやすい状況となりかねないのです。

③夫婦の不仲が子どもに悪影響を及ぼす
離婚を切り出した後に同居を続けていると、夫婦の関係が悪化している様子や緊迫した空気を、子どもが日常的に目の当たりにしやすくなります。子どもは大人の表情や言動に敏感なため、「どうして両親がケンカをしているのか」「自分のせいで雰囲気が悪くなっているのではないか」などと不安や罪悪感を抱いてしまいかねません。

特に、年齢が低いほど「家は安心できる場所」という意識が強いので、両親のいがみ合いや重苦しい空気を間近で感じ続ける状況は、子どもの心身に大きなストレスを与える可能性があります。実際に口論を耳にし続けると、子どもが落ち着かないまま日々を過ごし、学習や遊びに集中できなくなることも珍しくありません。

また、受験を控えた子どもがいる場合には、一段と深刻な問題になりやすい点に注意が必要です。両親の不仲を近くで感じ続けると、勉強に集中できなかったり、精神的な不安定さが増したりして、本来なら力を発揮できるはずの場面で十分に実力を出せない恐れがあります。こうした状態が長引くと、子どもが将来に向けて抱いていた意欲や自信を失ってしまうこともあるため、夫婦それぞれが離婚協議と同時に子どもの心情を気遣う姿勢を持つことが欠かせません。

そして、夫婦の不仲が長引くと、子どもが対人関係や学校生活の面で自信を失ったり、表情や行動に変化が現れたりするリスクも高まります。こうした心理的負担が蓄積すると、思春期以降になってから情緒的な問題として表面化するケースもあるため、夫婦双方が子どもの健全な成長を第一に考えながら離婚協議を進めることが極めて重要です。

④DVのリスクがある
離婚を切り出した後も同居を続けていると、すでに夫婦関係が悪化しているために、DV(家庭内暴力)のリスクが高まる恐れがあります。DVには身体的暴力だけでなく、精神的暴力や経済的暴力、性的暴力など、さまざまな種類が含まれます。

特に、夫婦の一方が離婚に応じたくない、または離婚話そのものに強く拒否反応を示しているときは、感情の行き違いが増幅しやすくなります。相手を執拗に監視したり、人格否定につながる発言を繰り返したりといった精神的な支配や、生活費を渡さないなどの経済的圧迫を加える行為がエスカレートすると、被害者側の心身へのダメージは計り知れません。

もし少しでも暴力や脅迫を受ける兆候がある場合は、警察や自治体の窓口、シェルター、DV相談窓口などに早めに相談し、安全を確保するための具体的な対策を検討することが求められます。DVのリスクを放置したまま同居を続けると、離婚協議以前に自分や子どもの安全を脅かしかねないため、証拠の確保などより身の安全を優先して別居を検討することも必要です。

⑤生活費や家事の分担で揉めやすい
離婚を前提に同居を続けていると、「これ以上家族として協力する必要はない」と考えてしまう場合があり、家事や生活費の分担をめぐって強い不満が生じやすくなります。

たとえば、「離婚したいと言い出したのは妻なのに、生活費は今まで通り夫の自分がすべて負担している」「専業主婦(主夫)だった側が、別居後を見越して就職活動を始めたことで家事に十分な時間を割けなくなったのに、もう一方は相手の貢献度が下がったぶん生活費を減らしてほしいと求める」など、従来の役割分担が変化しているにもかかわらず、明確な話し合いをしないまま過ごしていると、摩擦が大きくなりがちです。

互いの感情が冷え切った状態では、家事を一切手伝わなくなったり、生活費を出し渋ったりして、「自分はもうこの家庭の一員ではない」というアピールをするなど、相手に対して嫌がらせに近い行動をとるケースもあります。その結果、日常生活そのものが嫌悪感や不満だらけのものになり、離婚協議の話し合いにすら支障をきたす恐れがあります。

こうした心理的対立を放置していると、離婚手続きを円滑に進めるどころか、同居している期間が長引くほどトラブルが深刻化してしまう点が、大きなデメリットです。

⑥証拠収集や保管が難しい
離婚を前提に同居していると、不貞行為やDVなどを理由に離婚を検討している場合でも、相手の監視が厳しくなるため、必要な証拠を集めたり安全に保管したりしにくいという問題が生じやすくなります。仮に相手の行動を怪しいと感じてスマートフォンをチェックしようとしても、同じ家の中で常に相手の目が光っていると、決定的なメールや写真を確保するタイミングを掴むのが非常に難しくなるでしょう。

相手が「自分の不貞行為の証拠を集められているかもしれない。」と認識している場合は、特に証拠集めが大変です。同居していると証拠を保管する場所を確保しづらく、「パソコン内のデータを勝手に削除された」、「USBメモリやノートを廃棄された」といった被害に遭う危険もあります。

こうした状況下では、不法行為や不貞行為を裏付ける資料を手に入れたとしても、相手が先回りして処分してしまう恐れが高まるため、最終的に十分な証拠を揃えられないまま離婚協議に臨まざるを得ない点が大きなデメリットとなるのです。

⑦別居の実績を作れない
話し合いや調停で離婚できない場合には、裁判によって離婚できるか争うことになります。この際、裁判で離婚が認められるためには、法律上定められた離婚理由(法定離婚事由、民法第770条1項)が必要です。法定離婚事由には不貞行為や悪意の遺棄などの分かりやすい離婚原因もありますが、「婚姻を継続し難い重大な事由」という離婚原因も含まれます。

「婚姻を継続し難い重大な事由」は、簡単に言うと「婚姻関係が破綻していて、夫婦としてやり直すのは難しい」状況のことです。これには、「長期に渡って別居状態が続き、夫婦としての実態がない状態」も含まれます。

つまり、相手が離婚に反対していても、たとえば5年間別居生活を続けていれば、「もはや婚姻関係は破綻している」と判断され、裁判で離婚が認められるケースもあるのです。そのため、時間がかかっても離婚したい、という場合には別居の実績を作ることが非常に重要なのですが、同居を継続していると、当然ながら別居の実績を作ることはできません。

別居の実績を作れないと、「婚姻関係の破綻」の証明が難しくなるため、各実に離婚したい場合にはこういった点もデメリットとなってしまいます。

⑧離婚の意思が本気だと思われない
離婚を切り出したにもかかわらず同居を続けていると、相手から「本当に離婚したいのだろうか」と疑われてしまう場合があります。特に、相手が離婚に反対していると、「口では離婚と言いつつ、まだ夫婦関係修復の余地があるのではないか」と思われてしまいかねません。

そうなると、相手が強気の姿勢を崩さず話し合いに応じない、周囲からの理解を得にくいなど、離婚成立までに時間がかかったりトラブルが深刻化したりするリスクが高まります。実際には真剣に離婚を望んでいるにもかかわらず、「同居しているのだからまだ本気ではない」と見られてしまうのは非常に不本意な状況といえるでしょう。

同居しない方が良いケース

以上の通り、離婚を切り出した後に同居するには、さまざまなメリットやデメリットがあります。こうした点を踏まえると、同居しない方が良いケースとしては、たとえば次のような場合が考えられます。

①DVやモラハラのリスクが高い場合
離婚を切り出したことで、相手が暴力的または威圧的な言動を強める恐れがある場合は、同居を続けること自体が非常に危険です。DVやモラハラは、身体的な被害だけでなく、精神的な苦痛や経済的な拘束をもたらすこともあり、被害を受けている側は強い不安と恐怖の中で生活することになります。特に、相手が「離婚に応じたくない」という意思を持っている場合には、無理やり支配しようとする行為がエスカレートしやすいため、速やかに別居して安全を確保することが第一といえるでしょう。

②子どもに悪影響を及ぼす場合
夫婦の不仲が深刻化しているにもかかわらず同居を続けていると、日常的な衝突や重苦しい雰囲気を子どもが目の当たりにすることになってしまいます。特に、家が安らぎの場ではなくなってしまうと、子どもは強いストレスを抱えながら生活しなければならず、学業や友人関係にも悪影響が及ぶリスクが高まります。受験を控えているような大切な時期や、思春期で繊細なメンタルを持つ年齢の子どもがいる場合には、別居によって子どもが精神的に落ち着ける環境を整えた方が望ましいケースも少なくありません。

③お互い感情的になりやすい場合
すでに夫婦間の関係がこじれていて、日常的に激しい口論が絶えない場合は、同じ空間で生活し続けることがさらに衝突を増幅させる原因になります。特に、感情的になりやすい性格や状況の場合、冷静な協議が非常に難しくなるでしょう。常に相手の言動に神経をとがらせ、気まずい雰囲気の中で過ごすことは精神的に大きな負担となり、結果的に離婚協議自体が進まないままストレスだけが高じる恐れがあります。このような場合は、距離を置くことで相手への嫌悪感を少しでも緩和し、落ち着いて離婚手続きに取り組める環境を整える方が賢明といえます。

なお、離婚前に別居するメリットやデメリットについては、こちらの関連記事にて詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

離婚が決まってからの生活の注意点

 

離婚届を提出した後戸籍上の手続きを終えるまでの注意点

 

離婚の話が一応まとまり、正式に離婚をすることになったとしても、離婚届を提出して戸籍上の手続きを終えるまでには、まださまざまなトラブルが起きる可能性が残されています。

まず、同居を続ける場合には生活費や家事の分担をめぐる衝突を防ぐため、家賃や光熱費、食費といった支出を誰がどの程度負担するのか、家事をどのように分担するのかを明確に決めておくことが大切です。

さらに、財産分与や慰謝料の対象となる預金通帳や印鑑、保険証券などの重要書類は、安全な場所に保管するよう心がけてください。相手が意図的に処分したり、書類を隠したりしてしまうケースもあるため、友人や実家など第三者の協力を得て管理するのも有効です。

そして、離婚条件について離婚協議書や公正証書にしておきましょう。
離婚協議書や公正証書を作成することで、財産分与や慰謝料、親権・養育費などの取り決めを公的に証明しやすくなります。口頭やLINEのやり取りだけで決めていると、後になって「そんな約束はしていない」「内容を覚えていない」などのトラブルが生じる恐れがあるため、文書化しておくことは極めて重要です。特に、公正証書にしておけば相手が支払い義務を果たさない場合でも強制執行が可能になるなど、手続きを円滑に進める上で大きなメリットがあります。

具体的に作成する際は、弁護士へ相談することで、法律的に不備のない内容にまとめやすくなります。たとえば、親権の取り決めひとつをとっても、面会交流の頻度や方法、養育費の金額や支払い期間など、細かい取り決めが必要です。財産分与や慰謝料についても、財産の種類や評価額の算定基準を明確にしておかないと、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースが少なくありません。

離婚後の生活をできるだけ穏やかに送るためにも、書面で権利義務関係をきちんと整理しておくことが望ましいでしょう。

離婚を切り出した後の生活に関するQ&A

Q1.離婚を切り出した後の生活でするべきことはありますか?

A:まずは財産分与や慰謝料の交渉を有利に進めるためにも、預金通帳や契約書などの重要書類を整理しておきましょう。口頭で取り決めた内容は紛争の火種になりやすいため、できればメモやメールなどで記録しておくと安心です。子どものいる場合は、転校や保育園の手続きなどを考慮しながら、親権や養育費に関する話し合いを具体的に進めてください。また、離婚後の生活設計に向けて、収入と支出を見直しながら就職や住まい探しを並行して行うことも重要です。状況が複雑化しそうなときには、早めに弁護士など専門家に相談しておくと、スムーズに手続きを進めやすくなります。

Q2.離婚を切り出した後も同居を続けるメリットはありますか?

A:代表的なメリットは、生活費や光熱費を従来どおり分担できるため経済的な負担を抑えやすいことです。また、離婚協議を進めるうえで、お互いのスケジュールを合わせやすく、日常のちょっとした空き時間に話し合いができる点も利点といえるでしょう。子どもがいる場合は、学習や習い事などの環境を大きく変えずに維持できるため、子どもにかかるストレスを抑えやすい面があります。さらに、生活する場を共有することで、夫婦関係を修復する可能性を探りたい人にとっては、同居を継続することで距離を保ちつつも話し合う機会を確保しやすいというメリットも考えられます。

Q3.離婚を切り出した後も同居を続けるデメリットはありますか?

A:夫婦間がすでに険悪になっている状態で同居を続けると、日常的に顔を合わせることによるストレスが増大する恐れがあります。子どもがいる場合は、不安定な夫婦関係を間近で見続けることによって精神的負担を抱えてしまうリスクも高いでしょう。また、強い感情の衝突が繰り返されると、暴力的な言動や嫌がらせがエスカレートしやすい点も大きなデメリットです。別居実績を作りたい人にとっては同居自体がネックになることもありますし、「離婚の意思が本気でないのでは」と相手に思われてしまう可能性もあるため、自分の状況や離婚の優先事項に照らし合わせて慎重に判断する必要があります。

まとめ

離婚を切り出した後の生活は、想像以上に多くの手続きや話し合いが必要となり、経済面・子どもの問題・住まいの確保など、考えるべき要素が山積みです。

特に、同居を続けるかどうかは大きな分岐点になります。同居には生活費の負担を抑えられるメリットや、離婚協議を進めやすい面がある一方、夫婦関係の悪化によるストレスや、子どもへの悪影響といったリスクも否定できません。

また、長期の別居実績がなければ「婚姻関係の破綻」を証明しにくい場合もあるため、どのような形で離婚を目指すのかを早い段階で明確にしておくことが重要です。財産分与や慰謝料を視野に入れた証拠の収集は、相手に隠されたり処分されたりしないうちに行いましょう。

離婚を切り出してから離婚が成立するまでの手続きや、相手との交渉など、夫婦関係のお悩みがありましたら当法律事務所の弁護士にご相談ください。当事務所では法律相談を初回無料で行っておりますので、Web予約フォームやお電話より、ぜひお気軽にお問合せください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

関連記事