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別居後に離婚する準備や条件、メリットやデメリットを弁護士が解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の離婚専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
当サイトでは、離婚に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

夫婦の関係が悪化し、日常生活が息苦しくなった時、夫や妻と距離を置きたい・・・と考える人もいることでしょう。
こうした場合に取られる手段が、別居です。

関係が悪化した夫婦が物理的に距離を取ることで、ストレスの少ない程良い距離感になることもあれば、冷却期間を経て離婚を決断することもあります。

その他にも、出産のための里帰りや単身赴任といった事情から一時的に同居生活を解消する夫婦もいますが、この記事では、離婚を前提とした別居について、弁護士が基本的な知識を解説させていただきます。

離婚する前に別居することが重要だと考えられている理由や、メリットとデメリット、相手に切り出すタイミングや、どのように話を切り出すべきなのか、別居するために必要な準備などについても、詳しく解説いたします。

この記事が、離婚を検討するにあたって、少しでもご参考となりましたら幸いです。

目次

別居が離婚に必要な理由って?離婚の成立条件とは

離婚が成立するには「婚姻関係の破綻」が重要

離婚するための主な方法には、協議離婚調停離婚裁判離婚の3つがあります。

協議離婚と調停離婚は、夫婦が話し合いによって離婚をする方法です。協議離婚は夫婦だけで話し合い、調停離婚は家庭裁判所で調停委員を介して話し合いを行います。そのため、協議離婚の場合も調停離婚の場合も、「夫婦の合意」があれば離婚は成立するため、特別な条件は必要ありません。

一方で、裁判で離婚を争うことになった場合には、夫婦の合意ではなく、民法に定められた成立条件を満たす必要があります。

裁判で離婚するための条件として、民法で定められた離婚理由(法定離婚事由)によって、夫婦の婚姻関係が破綻していると認められることが必要なのです。

(裁判上の離婚)
民法第770条1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

配偶者の不貞な行為(不倫)や3年以上の生死不明など、はっきりとした法定離婚事由が存在するケースでは、裁判で離婚が認められる可能性はありますが、性格の不一致で離婚したいケースなどは、この法定離婚事由には当てはまりません。

性格の不一致など、明確な法定離婚事由による離婚請求ではない場合は、民法第770条1項5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由」によって、夫婦の婚姻関係が破綻していると判断された場合に、裁判で離婚が認められることとなります。

婚姻関係の破綻とは

「婚姻関係の破綻」とは、夫婦に婚姻を継続させる意思がなく、夫婦としての生活を送ることが事実上不可能になった状態のことをいいます。

夫婦の婚姻関係が破綻しているかを判断する際には、さまざまな事情・事実が総合的に考慮されることになります。その中でも、別居は重要な判断要素のひとつなのです。

具体的には、別居を始めることになった経緯や理由、婚姻期間と別居期間の長短、別居中の生活費や子供の養育費を支払っているか、別居中に配偶者以外の異性と男女関係になっていないか、夫婦に婚姻を継続していく意思があるのか、といった別居の状態を見て、夫婦関係が修復できないほどに破綻しているかどうかを判断することになります。

たとえば、結婚半年後に夫の不倫が理由で別居を始めた夫婦がいるとしましょう。別居当初こそ一時的な冷却期間と考え、再び同居生活をする予定でしたが、別居中に個々の生活スタイルが確立し、10年以上別居生活を継続しており、ここ7年間は連絡を一切取り合っていません。夫婦の間に子供はおらず、妻も働いて自分で生計を立てています。夫婦の双方に婚姻を継続して同居生活をしたい、という意思はありません。

このようなケースでは、もはや夫婦関係は修復困難であると考えられ、10年以上に及ぶ別居の実態や、他の事情と合わせて、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高いでしょう。

なお、一般的に5年~10年ほど別居していると婚姻関係の破綻が認められやすい傾向があると言われますが、別居期間が一定の年数に達したからといって、自動的に婚姻関係が破綻したとは認定されません。

それぞれのケースごとに、裁判所は慎重に状況を評価し、婚姻関係が本当に修復不可能な状態にあるかを判断します。

別居期間の長短は、あくまで判断要素のひとつに過ぎないため、「とにかく5年以上別居すれば離婚できる」といったものではありません。別居すること全てが婚姻関係の破綻になるわけではないので、注意が必要です。

別居を切り出すタイミングと切り出し方

一方的に無断で別居を始めるのはNG!

別居を止められたくない、妨害されたくない、別居の話をするのが気まずい、などといった理由から、相手に無断で一方的に別居を始めようとする人がいます。

しかし、一方的な別居は民法第770条1項2号の「悪意の遺棄」に該当してしまう恐れがあります。
なぜなら、法律上はまだ夫婦である以上、同居義務(民法第752条)があるからです。

(同居、協力及び扶助の義務)
民法第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

夫婦である以上、正当な理由もないのに一方的に別居を始めてしまうと、この「同居し協力し合わなければいけない」という義務に違反してしまうことになってしまいます。単身赴任や里帰りなどの正当な理由もなく、相手が別居に合意していないのに別居をするのは、同居義務違反になり、悪意の遺棄になる可能性があるのです。

悪意の遺棄と判断されると、民法第770条1項の規定により、裁判で悪意の遺棄を理由とした離婚の請求が認められることになってしまいますし、悪意の遺棄を理由として慰謝料を請求されることもあります。

後述する「DVやモラハラ」といった例外的な事情がある場合を除いて、配偶者に無断で一方的に別居することは推奨できません。

一般的なタイミングと切り出し方

別居を切り出すタイミングとしては、相手がリラックスしており、話に集中できる状況を選ぶことが望ましいです。

慌ただしい平日の朝や、肉体的・精神的に摩耗している時間帯は避け、時間にも気持ちにも余裕のある休日などに切り出すことをおすすめいたします。

また、感情的にならずに冷静に別居を切り出しましょう。別居の理由は伝えた方が良いですが、相手を一方的に非難するような言い方は避け、場合によっては本当の理由を伝えずに、「冷静に考えたいことがあるから距離を置きたい。」などと伝えるようにしましょう。

そして、別居を切り出された側は突然の話に、その場では冷静に返答できないかもしれません。「別居について考えてほしい。次の日曜日にまた話し合いをしましょう。」など、相手にも落ち着いて考える時間を設けるようにしましょう。

このように、別居を切り出す際には、相手に配慮をしながら、自分の気持ちや考えを明確に伝えることが大切です。相手の反応を見ながら、柔軟に対応することも重要となります。

別居の話の具体的な切り出し方については、各々の状況や関係性によってさまざまです。

別居の切り出し方としては、口頭で直接伝えることが一般的です。感情や細かなニュアンスを伝えやすく、相手の反応を直接見ることができます。面と向かって話すことで、お互いの思いや考えを即時に共有できるため、誤解が生じにくくなります。

一方で、感情的な衝突が起こりそうな場合や、直接話すのが難しい場合には、メールや手紙による切り出し方が役立ちます。書面を利用すると、伝えたいことをじっくりと考え、感情を制御しながら伝えることが可能です。

また、LINEなどのメッセージアプリやSNSを使う方法もあります。しかし、メッセージアプリやSNSなどを用いると、非公式な印象を与えやすく、別居という重要な話題を扱うには不適切な印象を与えることがあります。

いずれの切り出し方でも、相手を思いやり、自分の意図をはっきりと伝えることと、別居に関する相手の不安や心配に向き合うことが重要です。

原因が浮気・不倫の場合のタイミング

別居の理由が夫や妻の浮気・不倫といった不貞行為である場合、相手方は浮気や不倫をしていない、と反論してくることが少なくありません。

また、別居後に離婚や慰謝料を請求することになる場合、浮気や不倫をしていることを第三者に客観的に証明できる証拠が必要になります。

そのため、配偶者の浮気や不倫を理由として別居を始める場合、浮気や不倫の証拠をある程度集めてから別居することをおすすめいたします。

浮気や不倫の証拠収集については、こちらの関連記事もご参照ください。

原因がDV・モラハラの場合のタイミング

さて、配偶者に無断で一方的に別居することは避けるべきだとお伝えしましたが、別居の理由が配偶者のDVやモラハラである場合は異なります。

DVやモラハラの場合、心身の安全を確保することが何より優先すべきケースが少なくありません。そのため、DV・モラハラの被害をそれ以上受けないよう、相手に別居することを知らせない方が、安全に別居できると考えられます。

なお、DVやモラハラを理由に、別居後に離婚の請求や慰謝料の請求をする場合があります。この場合も浮気・不倫のケースと同様に、DVやモラハラの証拠が重要です。そのため、別居をするとDVやモラハラから避難することになり、証拠を集められなくなってしまうからと、DV・モラハラの証拠を集めるためだけに同居生活を継続しようとする人がいます。

ですが、離婚請求や慰謝料の請求も、なにより心身の安全が確保されていることが前提です。DVやモラハラをする配偶者と物理的に距離を置くことを優先し、DVやモラハラの証拠集めに関しては、弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

別居する際には、「DV、モラハラが原因で別居したい。」などと伝える必要はありません。別居の理由や別居後の住所については伝えず、配偶者が出掛けている間にこっそり別居しましょう。置手紙で別居する旨を伝えておいたり、弁護士に相談して相手からの連絡に対応してもらうと良いでしょう。

生活費や住まい・・・別居するために準備すること

 

生活費や住まい・・・別居するために準備すること

 

次に、別居する前にしておくべき準備について、簡単にご説明させていただきます。
別居前に必要な準備は主に9つあり、次の通りです。

  • 住まいを確保する
  • 仕事を探す
  • 別居中の生活費や養育費を確保する
  • 夫婦の共有財産を把握しておく
  • 浮気や不倫、DVなどの証拠を集める
  • 住民票の移動
  • 健康保険などの手続き
  • 離婚届不受理申出
  • 別居合意書を作成する

それでは、必要な準備について順に見ていきましょう。

別居の準備1.住まいを確保する

別居の準備において、まず重要なのは別居先の住まいを確保することです。

賃貸物件を探す場合、毎月の家賃や光熱費、生活費などを考慮して予算を設定します。希望するエリアや条件に合った物件をインターネットの不動産サイトや地元の不動産仲介業者を通じて探し、気になる物件が見つかったら実際に内見を行い、部屋の状態や周辺環境を確認します。

家賃や契約条件について交渉し、物件が決まったら賃貸契約の手続きを行います。

引越しに向けて荷物の整理や梱包、引越し業者の手配などを行い、新しい生活に必要な家具や家電の購入も検討します。この際、既に別居することについて配偶者と話し合いができている場合は、家具や家電を別居先に持ち出せないかについても話し合っておくと良いでしょう。

引越し日には、電気・ガス・水道などのライフラインの開設手続きも忘れずに行ってください。計画的に準備を進めることで、安心して新生活をスタートできます。

なお、住まいの選択肢としては、長期の賃貸契約だけでなく、ウィークリーマンションやマンスリーマンションも検討すると良いでしょう。ウィークリーマンションやマンスリーマンションは、短期間の滞在に適しており、家具や家電が備え付けられていることが多いため、手軽に新生活を始められます。すぐに入居しやすいというのも利点です。

また、実家に戻るという選択肢もあります。経済的な負担を軽減できる上に、家族のサポートを受けやすいという利点があります。

別居の準備2.仕事を探す

別居前から仕事をしていて、別居後も生活できる程度の収入を得ていれば問題ありませんが、パートタイム労働や専業主婦の場合、別居の準備として仕事探しも必要になります。

自分の持つスキルやこれまでの経験を活かせる仕事内容を考え、どのような働き方(フルタイム、パートタイム、在宅勤務など)が自分に合っているのかを明確にしましょう。

求人情報はインターネットの求人ポータルサイト、地元のハローワーク、専門の人材紹介会社などで幅広く探し、応募条件に合ったものを選びます。履歴書や職務経歴書の準備も進めましょう。

また、別居後の生活に適した勤務時間や通勤のしやすさも考慮することが重要です。

経済的な基盤をしっかりと築くことが、別居生活をより安定させるためには必要不可欠です。

別居の準備3.別居中の生活費や養育費を確保する

別居に伴い、生活費や必要に応じて養育費を確保することが重要となります。

まず、別居後の月々の予算を立てることから始めましょう。家賃、光熱費、食費、通信費などの固定費と、日用品や交際費などの変動費を見積もり、収入とのバランスを確認します。収入が不足する場合は、節約方法を考えたり、副業やアルバイトを検討することも一つの選択肢です。

また、子供がいる場合は、養育費の支払いや受け取りについても合意が必要です。夫婦間で話し合いが難しい場合は、調停や裁判を通じて養育費の支払いを確定させることも考えられます。

公的な支援制度を活用することも視野に入れましょう。たとえば、児童手当や児童扶養手当、住宅支援制度など、別居後の生活を支えるためのさまざまな支援制度があります。こうした公的支援制度を利用することで、経済的な負担を軽減することが可能です。

別居の準備4.夫婦の共有財産を把握しておく

別居後、離婚することになった場合、通常は財産分与をすることになります。

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築き上げた共有財産を離婚時に分配することです。離婚前に別居する場合、財産分与の対象となる財産は、婚姻してから別居開始するまでの期間に得た財産となります。

そのため、別居に際して財産分与の対象となる共有財産の範囲を確認しておくことが重要です。

共有財産には、不動産や車、預貯金、株式、退職金など、さまざまな財産が含まれます。別居開始までの銀行口座や証券口座の残高など、事前に確認できるものについては、通帳のコピーを取るなどして把握しておきましょう。

離婚時の財産分与については、こちらの関連記事もご一読ください。

別居の準備5.浮気や不倫、DVなどの証拠を集める

配偶者の不倫やDVといった不法行為が原因で別居する場合、別居前に証拠を集めておくことをおすすめいたします。

後に離婚することになった時に、相手が離婚や慰謝料請求に関する話し合いに応じない場合、最終的には裁判所の調停や裁判を利用することになります。その際に不倫やDVの証拠があれば、有利な立場で主張を展開することが可能となります。

特に、慰謝料を請求すると、相手は不倫やDVを否定してくることが多いので、言い逃れされないよう、証拠を集めておくことが重要です。
証拠集めの方法には主に次の2つの方法があります。

  1. 自分で証拠を集める
  2. 探偵事務所などに依頼する

なお、DVやモラハラなど、心身に危害を加えられている場合は、証拠収集よりも身の安全の確保を優先し、なるべく早く別居の準備を進めましょう。

別居の準備6.住民票の移動

別居の際には、住民票の移動も重要な手続きの一つです。新しい住所に移ることで、公的な書類や通知が新住所に届くようになり、行政サービスの利用や各種手続きがスムーズに行えるようになります。

特に、別居後、生活費などに関して公的支援制度を受けようとする場合は、住民票の移動が必要になることがあります。あらかじめ、別居に際して住民票の移動が必要になるか、確認しておくようにしましょう。

ただし、DVやモラハラが原因で別居することになり、相手に別居先の住所を知られると困る場合は、住民票を移動するべきではありません。

別居に際して住民票を移動させるメリットやデメリット、方法については、こちらの関連記事もご参考にしていただければと思います。

別居の準備7.健康保険などの手続き

住民票を移動し、配偶者と異なる世帯になる場合や、配偶者の会社の健康保険の扶養から抜ける場合は、社会保険の手続きも行わなければなりません。

まず、現在加入している健康保険の種類を確認し、扶養から外れる場合はその旨を保険者に届け出ます。

その後、新たに自身で国民健康保険や会社の健康保険に加入する手続きを行います。国民健康保険の場合は、新しい住所の市区町村役場で加入手続きを行い、会社の健康保険の場合は、新たに勤める会社の人事部を通じて手続きを進めます。

また、年金の手続きも忘れずに行うことが大切です。国民年金に加入している場合は、市区町村役場で住所変更の手続きを行い、厚生年金に加入している場合は、新しい勤務先で手続きを行います。

このように、健康保険や年金などの手続きを適切に行うことで、別居後の生活を安心して送ることができます。

別居の準備8.離婚届不受理申出

別居の際に、離婚届が勝手に出されてしまわないよう、離婚届の不受理申出を行っておきましょう。

離婚届不受理申出は、配偶者が自分の意志に反して一方的に離婚届を提出することを防ぐために、市区町村役場で行う手続きです。

離婚届不受理申出書の提出に必要なものは、次の通りです。

  1. 不受理申出書
  2. 本人確認書類
  3. 戸籍謄本(本籍地以外へ提出する場合)

離婚届不受理申出書の書き方ですが、複雑な記載事項はありません。申出人の署名欄についても、離婚届の場合と同様、押印は任意となりましたので、署名だけで大丈夫です。

申し出が受理されると、その旨の通知が発行され、離婚届が一方的に提出されても受理されなくなります。

夫婦で離婚の合意ができたため離婚届を提出することになった時など、離婚届不受理申出をしておく必要がなくなった場合には、市区町村役場で申出を取り下げる手続きを行いましょう。

なお、離婚届不受理申出を行った申出人本人が離婚届を提出する場合は、離婚届の提出が不受理申出を取り下げたこととして扱われるため、不受理申出を取り下げる必要はありません。

別居の準備9.別居合意書を作成する

円満に話し合って別居できる場合は、夫婦間で別居合意書を作成することが望ましいです。

別居合意書とは、別居に関する具体的な条件やルール、取り決めを文書化したものです。別居合意書には、別居中の生活費(婚姻費用)の分担、子供の養育費や面会交流の方法、共有財産の管理など、双方が別居の話し合いに際して合意した内容を明記します。

別居合意書を作成することで、双方の権利と責任が明確になり、後のトラブルを防ぐことができます。

別居合意書を作成する際には、法律の専門家である弁護士のアドバイスを受けておくことをおすすめいたします。

離婚前に別居するメリットとデメリット

メリット

離婚前に別居をすることには、いくつかのメリットがあります。

まず、別居期間が長くなると、裁判での離婚請求が認められやすくなる傾向があります。これは、長期間の別居が婚姻関係の破綻の明確な証拠と見なされるためです。

また、自身の離婚への強い意志を示すことができ、相手がその意思を真剣に捉え、話し合いに前向きに応じるようになる可能性が高まります。

さらに、相手が別居中の婚姻費用の支払いを減らしたいと考える場合、それが早期の離婚に向けた動機となることもあります。

別居によって、同居に伴うストレスから解放されることも大きなメリットです。特に、DVやモラルハラスメントなどの問題がある場合、別居は安全な距離を確保し、精神的な安定を取り戻すための重要な手段となります。

特に、日頃から夫婦喧嘩が絶えない場合、同居を続けていると、両親が揉めている環境は子供にとっても多大なストレスになります。別居することで、子供がストレスから解放され、心身の健全な発達に悪影響とならないようにすることができます。

そして、別居することで安心感を得られるため、離婚に向けた準備を冷静に進めることも可能になります。具体的には、離婚に関する法的手続きの準備、財産分与や親権などの交渉戦略の立案、必要な書類の収集などを、じっくりと行うことができます。

このように、別居は離婚に向けた慎重な準備を可能にし、より良い結果を導くための重要な役割を果たすという点で、非常に大きなメリットがあるのです。

デメリット

離婚前の別居には以上のようなメリットがある一方、次のようなデメリットもあります。

まず、一度別居してしまうと、離婚を考え直した場合に復縁が難しくなる可能性があります。別居によって生じた心理的な距離が、関係修復の障壁となることがあるためです。

また、相手の有責行為の証拠集めが難しくなることも懸念されます。特に、浮気やDVなどの証拠は、同居しているときに比べて収集が困難になることが多いです。

そして、別居に際しては、新しく仕事や住居を探す労力も必要となります。これには時間や手間、費用がかかるため、精神的および経済的な負担が増大することがあります。

さらに、家を出た行為が“悪意の遺棄”と見なされるリスクもあります。これにより、相手から逆に離婚請求や慰謝料請求をされるおそれがあるため、別居の際にはそのようなリスクを十分に考慮する必要があります。

子供がいる場合、別居は子供にとって精神的な負担となることがあります。親の一方と離れて暮らすことになるため、子供の心理的な安定や成長に影響を与える可能性があります。また、親子関係にも影響を及ぼすことがあるため、別居の際には子供の心情を十分に考慮する必要があります。

さらに、別居は社会的なつながりや支援ネットワークを失うリスクも伴います。同居していたときには当たり前にあった家族や近隣との交流が減少し、孤立感を感じることがあるかもしれません。特に高齢者の場合、別居によって支援を受ける機会が減ることが懸念されます。

また、別居は法的な問題を引き起こすこともあります。たとえば、離婚手続き中に別居をする場合、法的な権利や責任に関する問題が生じることがあります。別居によって家族構成が変わる場合、これらの法的な影響も考慮する必要があります。

また、別居中に相手が通帳などの財産を隠してしまう可能性も考えられます。離婚に際して財産分与が不利になることを避けるために、こうした財産隠しが行われることがあり、隠された財産に気付かないまま財産分与をしてしまうと、結果的に自身の権利が損なわれる可能性があります。

また、同居時よりも経済的に苦しくなることも一つのデメリットです。別居により生活費が二重にかかることになり、特に収入が限られている場合には、生活の質が低下する可能性があります。

このように、離婚前の別居にはメリットとデメリットがあるため、慎重に検討して判断することが大切です。
ご自身のケースで別居すべきなのかお悩みがありましたら、弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

子供がいる夫婦必見!子連れや妊娠中の場合の注意点

夫婦に未成年の子供がいる場合、子連れ別居における特有の注意点を理解しておくことが重要です。子供の心理的な安定と発達を考慮しながら、慎重に準備を進める必要があります。

まず、夫婦のどちらが日常の監護を担うのか、子供と離れて暮らす親との面会交流の方法や頻度について、夫婦間で合意を明確にすることが必要です。これにより、子供が安定した環境で成長できるように配慮します。

子供の心情を十分に考慮し、別居の理由や今後の生活について、子供が理解できる範囲で説明することが望ましいです。子供が不安や混乱を感じないよう、夫婦として支える姿勢を示すことが重要です。

子供の教育や生活環境の変化にも注意が必要です。転校が必要になる場合は、新しい学校でのサポート体制を確認し、スムーズな移行を促進するための準備を行います。また、別居による生活費の増加を考慮し、子供の養育費の確保も重要なポイントとなります。

さらに、子供の健康保険や医療手続きに関する変更も忘れずに行う必要があります。子供が安心して医療サービスを受けられるように、保険証の更新や医療機関の変更手続きを適切に行います。

子連れ別居は、子供にとって大きな変化となるため、夫婦としては子供の心のケアに十分な配慮をすることが求められます。また、必要に応じて専門家の助けを求めることも検討しましょう。子供の最善の利益を考えながら、別居の準備を進めることが、子供の健やかな成長につながります。

また、妻が妊娠中に別居する場合は、体調や精神面に生活環境の変化が大きく影響を与えることが予想されます。

妊娠中は、ホルモンバランスの変化や身体的な変化により、普段よりも体調が不安定になることがあります。そのため、別居に伴うストレスや不安が、妊婦の健康や胎児の発育に悪影響を与える可能性があります。別居を決断する際には、医師と相談し、妊娠中の健康管理に十分配慮することが重要です。

また、別居による生活環境の変化は、妊婦の精神状態にも影響を及ぼすことがあります。妊娠中は精神的にも不安定になりやすいため、別居に伴うストレスが、妊娠中のうつ症状や不安感を増加させることがあります。そのため、別居を決断した場合には、家族や友人などの支援ネットワークを確保し、精神的なケアにも注意を払うことが必要です。

さらに、妊娠中に別居する場合、出産に関する準備やサポート体制の確保も重要なポイントです。出産時には、医療機関へのアクセスや緊急時のサポートが必要となるため、別居先の環境やサポート体制を事前に確認し、必要な手配を行うことが望ましいです。

妊娠中に別居する場合は、妊婦の健康と安全を最優先に考慮し、医師や専門家と密に連携しながら、慎重に準備を進めることが重要です。

別居に関するQ&A

Q1.離婚の成立になぜ別居が重要なのですか?

離婚をするためには、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの方法があり、協議離婚と調停離婚は夫婦の合意が必要ですが、裁判離婚では民法で定められた離婚理由に基づいて婚姻関係の破綻が認められる必要があります。

「婚姻関係の破綻」とは、夫婦に婚姻を継続させる意思がなく、夫婦としての生活が事実上不可能になった状態を指します。別居は婚姻関係の破綻を認定する際の重要な判断要素であり、別居の経緯や理由、婚姻期間と別居期間の長短などが考慮されます。ただし、別居期間が一定の年数に達したからといって自動的に婚姻関係が破綻したとは認定されず、裁判所はそれぞれのケースごとに状況を慎重に評価します。

Q2.別居する前に、どういった準備が必要ですか?

別居する前にしておくべき準備は、主に次の9つあります。

  1. 住まいを確保する
  2. 仕事を探す
  3. 別居中の生活費や養育費を確保する
  4. 夫婦の共有財産を把握しておく
  5. 浮気や不倫、DVなどの証拠を集める
  6. 住民票の移動
  7. 健康保険などの手続き
  8. 離婚届不受理申出
  9. 別居合意書を作成する

Q3.離婚前に別居することのメリットを教えてください。

離婚前に夫婦が別居することには、さまざまなメリットがあります。まず、別居期間が長くなると、裁判での離婚請求が認められやすくなる傾向があります。これは、長期間の別居が夫婦の婚姻関係の破綻の明確な証拠と見なされるためです。

また、自身の離婚への強い意志を示すことができ、相手がその意思を真剣に捉え、話し合いに前向きに応じるようになる可能性が高まります。さらに、相手が別居中の婚姻費用の支払いを減らしたいと考える場合、それが早期の離婚に向けた動機となることもあります。

別居によって、同居に伴うストレスから解放されることも大きなメリットです。そして、別居することで安心感を得られるため、夫婦が離婚するために準備を冷静に進めることも可能になります。

弁護士にご相談ください

この記事では、夫婦の別居について基本的な知識を弁護士が解説させていただきました。

別居は単なる同居生活の解消ではなく、夫婦関係や離婚の手続きにおいて、特に重要な意味を持ちます。

また、裁判で離婚が認められるための重要な要素ともなりますが、どういった別居が婚姻関係の破綻を裏付けることになるのか、正しい知識を有しておかなければ、離婚に向けて適切な別居を進めることができません。

そして、別居にはさまざまなメリットやデメリットがあります。全ての夫婦のケースにおいて、別居することが最適とは言えません。別居するか、別居しないかについて、慎重に検討することが重要です。

自分ひとりでは結論を出すことが難しい場合は、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめいたします。

夫婦関係や離婚問題、別居についてのお悩みがありましたら、お気軽に当法律事務所までお問合せください。当法律事務所では、初回の法律相談を無料でご利用いただくことができます。

おひとりで悩まず、ぜひ弁護士にご相談いただければと思います。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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