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熟年離婚の準備【徹底解説】慰謝料や生活費など・・・専業主婦は必見!

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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長年連れ添った夫婦が離婚することを「熟年離婚」と言いますが、高齢になってからの離婚では、定年退職や年金の受給といった、お金に関する問題が差し迫っています。
また、高齢になってから突然ひとりの生活になるのですから、趣味や生き甲斐がなければ、離婚後の生活が精神的にもつらいものとなってしまいかねません。
離婚後の生活をより良いものにするためにも、事前の準備がとても重要なのです。

そこで本記事では、熟年離婚を進めるにあたって、特に注意して準備していただきたいことについて、弁護士が解説いたします。
男性や女性、特に専業主婦にとって、熟年離婚の準備において重要なポイントをおさえながら解説いたします。
熟年離婚をして後悔しないためにも、この記事をご参考にしていただき、きっちりと準備を進めていただければと思います。
本記事が、熟年離婚の準備についての理解を深める一助となりましたら幸いです。

目次

熟年離婚の準備

それでは、熟年離婚に向けての準備について、解説させていただきます。
準備をするにあたって、まず大切なのは、「自分にはどういった準備が必要か」を把握することです。現在夫婦共働きなのか、専業主婦なのか。未成年の子供はいるのかなど、夫婦によって状況が異なりますので、当然、必要な準備というのも違います。

以下にご紹介するのは、あくまで一般的な熟年離婚の場合に必要な準備となります。
ですので、できれば熟年離婚を検討した段階で、弁護士などの専門家にご相談していただくことをおすすめいたします。

1.生活費

生活設計

最初に考えるべきは、熟年離婚後の生活設計です。今の生活がどのように変わるのか、特に経済的な負担については、十分に検討してください。その上で、熟年離婚するメリットとデメリットを比較し、本当に熟年離婚すべきなのか考えましょう。

熟年離婚後の生活を具体的にイメージし、生活費がいくら必要かなど、生活設計をしておきましょう。
余裕があれば、収支の予測を立てて、ざっくりとした家計表・家計簿を作成してみてください。頭の中で考えるよりも、紙に書き出した方が整理できますし、「そういえばあの費用を含めるのを忘れていた!」と後から慌てずに済むでしょう。

具体的な支出の金額が分からない場合は、総務省の「家計調査」が参考になります。
たとえば、「家計調査 家計収支編(2022年度)」の調査結果によれば、単身世帯の1ヶ月の消費支出の平均額は、16万5796円(約17万円)となりました。

用途分類
食料 39,952
住居 24,220
光熱・水道 13,750
家具・家事用品 5,666
被服及び履物 5,259
保険医療 7,345
交通・通信 20,003
教育 1
教養娯楽 18,747
その他 30,853
消費支出 合計 165,796

参照:家計調査(総務省統計局)

この消費支出に含まれている費目は、上記表に記載された衣食住費、衣料費、通信費、教育費、その他の趣味嗜好品費の合計になります。
そのため、人によってはこれ以外にも支出のあることが考えられます。
出ていくお金に対して、自分の収入がいくらあれば足りるのか、事前に算出して準備しておくことが重要です。
特に、財産分与や年金分割、離婚慰謝料などのお金を支払う側は、消費支出に加えてこれらのお金が出ていくことになるわけですから、離婚後にお金に困らないよう、しっかりと準備しておきましょう。

仕事はどうする?

現在働いている仕事を続けられるのか、転職しなければならないか。特に、現在家事従事者であるなら、就職活動は最優先事項です。
熟年離婚後の当面の生活費用として、財産分与や慰謝料、年金分割があるからと悠長に構えてはいられません。全て金銭で給付してもらえるわけでもなく、必ず支払ってもらえるとも限らないからです。
安定した勤め先を見つけるか、就職・転職のための資格を取得してみることも検討してみてはいかがでしょうか。

住まい・家のこと

生活の基盤となるのは住居です。熟年離婚後も現在の居所で暮らしていけるのか、あるいは頼れる実家があるのか。引っ越す場合は年齢のことも考え、病院に通院しやすい場所か、自動車以外の交通手段はあるのか、行政のサポートを受けやすいか、といった面からも検討してみる必要があるでしょう。
もし、独立済みの子どもや親族といった身内を頼れるようであれば、その近くに居所を構えるのもいいかもしれません。

新しく部屋を借りるとなれば、物件探しから契約締結まで、余裕をもって進めていきたいところです。
賃貸物件は借りたい、と言えば借りられるわけではなく、入居審査に通らなければなりません。入居審査の際にチェックされる主なポイントは、3つあります。

  1. 家賃の支払い能力
  2. 保証人・保証機関の有無
  3. 入居者の性格や属性

ポイント③に関しては、内見の申し込み時からの不動産会社とのやり取りを通して、不動産会社が「常識的な人であるかどうか」を判断します。通常人と接する上での常識的な言動を取っていれば、特に問題はありません。

②に関しても、自分の両親など、信頼できる人に連帯保証人となってもらえれば大丈夫でしょう。保証人が高齢で保証能力がない場合は審査に通りにくくなりますが、そういったケースでも、貸主が保証機関の保証も認めているのであれば、保証機関の審査に通れば問題ありません。
熟年離婚のタイミングと状況によっては最も難しいのが、①家賃の支払い能力についての審査でしょう。

支払い能力の審査基準は、年収、勤務先、勤続年数、家族構成、年齢等を考慮して判断されます。熟年離婚の準備中に、まだ仕事に就いていない段階で物件を探そうとしても、希望の物件に対し支払い能力が無いと判断されてしまう可能性があるのです。

また、高齢者向けの集合住宅や、公営住宅への入居も早い段階から検討しておきましょう。
公営住宅とは、都営住宅、市営住宅、町営住宅などの総称で、60歳以上の低所得者などを対象に、割安な賃料設定で自治体が提供している住宅です。対象年齢に該当し、月収が自治体の定める基準額以下など、入居の条件を満たす場合は、公営住宅の利用も考えましょう。ただし、公営住宅の募集は自治体によって、スケジュールが決められているので、自分の任意のタイミングで応募することができないケースが多いです。また、募集の際に抽選が行われることもありますので、応募すれば必ず入居できるものでもありません。

住まい探しは、離婚後の収入の確保と並行して、早い段階から入念に準備を進めておくようにしてください。

◆住まい探しのポイント

  • 実家や親戚、頼れる友人が近くにいるか。
  • 病院に通院しやすい住環境か。
  • バスや電車などの公共交通手段が充実しているか。
  • 市区町村役場などの公共サービスにアクセスしやすいか。
  • 公営住宅などを利用できるか。

2.慰謝料

熟年離婚に際して、慰謝料や財産分与など、お金の問題が生じるため、これらに関しての準備も必要です。たとえば、相手方配偶者が不倫をしていた場合は、配偶者の不法行為が熟年離婚の原因になったと考えられるため、慰謝料を請求することになります。
こうした熟年離婚時に発生するお金の問題は、その内容や計算方法、請求手段や手続きが煩雑で、時間がかかる場合も少なくありません。

ですので、なるべく早期からお金の問題について把握し、準備しておくことが重要です。

配偶者に不倫やモラハラ、DVといった「不法行為」がある場合、民法第709条の規定によって、不法行為に基づく損害賠償として慰謝料を請求することが考えられます。
まずは慰謝料の請求を検討します。
慰謝料が発生する離婚原因として、主に「不貞行為(不倫)、モラハラ、DV、悪意の遺棄」が考えられます。いくら請求できるのか、相場の金額はどれくらいかなど、詳細は個々のケースによって異なりますので、弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

また、いずれの離婚原因による慰謝料請求にせよ、重要なのは証拠です。口頭で「夫に不倫されたので、慰謝料を請求します。」と主張したところで、証拠がなければ相手は「不倫していない。」と言い逃れようとするでしょうし、調停や裁判でも認められなくなってしまいます。
慰謝料を請求するためには、証拠を準備しておくことが重要です。証拠の準備にお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所の初回無料相談をお気軽にご利用ください。

夫や妻の不倫を理由に慰謝料を請求するための方法や準備については、こちらの関連記事もご参考にしていただけますと幸いです。

3.財産分与

離婚時のお金のこと②財産分与は専業主婦ももらえます

 

熟年離婚時には、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた共有財産を、夫と妻とで分配することになります。これが、財産分与です。
なお、しばしば「専業主婦は働いていないのだから、夫の給与収入を折半するのはおかしい。」という声も耳にしますが、専業主婦は家事労働や育児に専念することによって、夫の労働を支えてきたと評価できるため、専業主婦でも、熟年離婚時に財産分与を受けることができます。
離婚時の財産分与についての詳細は、こちらの関連記事にてご説明しておりますので、ぜひご一読ください。

財産分与において必要な準備は、共有財産と特有財産を把握することです。預金通帳のコピーや、所持している車や不動産を一覧にまとめておくなど、財産資料を準備しておきましょう。そして、財産分与の対象とはならない、独身時代の預貯金や親からの相続財産といった特有財産は、資料を準備し、共有財産とは明確に区別できるように準備しておきましょう。

また、住宅ローンや借金がある場合は、共有財産の金額からマイナスの財産額を控除することになるため、これらの資料についても準備しておく必要があります。

4.年金分割

年金は、熟年離婚後の老後の生活を支えるために重要な資産ですので、年金分割の準備も進めておきましょう。特に、長年専業主婦だった場合は、自分自身が貰える年金が国民年金だけで、厚生年金が貰えないことが少なくありません。専業主婦だった女性が、熟年離婚後に国民年金だけで生活していくことは、困難が予想されます。
また、女性から年金分割を請求される男性の側は、将来受け取る厚生年金の金額が減ることになります。
熟年離婚後の生活のためにも、年金分割は少々複雑ですが、きちんと理解して準備をしましょう。

さて、そもそも年金分割とは、離婚後に片方の配偶者が納付した年金保険料の一部を分割し、もう一方の配偶者にそれを配分する制度です。
婚姻期間中に納めた厚生年金の年金保険料についてが、年金分割の対象となります。
年金分割の方法には、夫婦双方による合意や裁判を通じて年金分割の割合を決定し、その合意した割合に基づいて、婚姻期間中の保険料納付記録を分割する「合意分割」と、専業主婦など、夫の扶養に入っていた場合に行われる「3号分割」の2つの方法があります。

なお、年金分割の請求は熟年離婚後に行うことになりますが、熟年離婚した日の翌日から起算して2年以内に行う必要があります。
具体的な分割方法や金額は、年金事務所での手続きや相談を通じて確認することが可能です。年金事務所や弁護士にご相談いただき、余裕を持って熟年離婚後の年金分割の請求準備を進めていきましょう。


5.婚姻費用

離婚成立前に別居している場合は、別居中の生活費である婚姻費用の請求も検討しましょう。
婚姻費用とは、夫婦が別居する際や離婚後に、経済的に困難な状況にある方が求めることができる生活維持のための費用のことを指します。具体的には、食料品の購入にかかる食費、電気・ガス・水道などの光熱費、病院の診察や薬代にかかる医療費、子供の学校の学費や塾・習い事の費用としての教育費など、日常生活を営む上で必要となるさまざまな費用が含まれます。

裁判所がホームページにて公開している「令和4年 司法統計年報(家事編)」などによりますと、婚姻費用の金額はおおむね「6万円以下から15万円以下」での合意が相場であるとされています。
以下の関連記事もご参考にしていただき、別居中の生活費を請求する場合は、準備を進めていきましょう。


6.相手の退職金

熟年離婚をする年齢の夫婦の場合、既に退職金を受け取っていたり、あと数年で退職金が支払われるというケースが多いかと思います。
熟年離婚をする妻・女性の立場から、夫の退職金を受け取ることができるのか、といったご相談をお受けすることがございます。

この点、配偶者の退職金も、熟年離婚時の財産分与の対象財産になる可能性があります。これは、専業主婦であっても、男女が共働きである場合でも同様です。
なお、財産分与の対象となる退職金は、配偶者が働いていた全期間に対する退職金ではありません。あくまで、働いていた期間のうち、婚姻期間に対応している分の退職金を受け取ることができる、というものです。

熟年離婚の準備

さて、「熟年離婚に向けての準備」について、男性・女性別に注意すべきポイントをまとめますと、次の通りとなります。

専業主婦の熟年離婚の準備

女性の場合、やはり経済面での不安要素が大きいため、この点を重視しながら熟年離婚の準備を進めていかなければなりません。
転職や就職活動をする必要がある方は、なるべく早めに活動を始めましょう。
特に、専業主婦の場合、職歴のなさや長いブランクが不安要因になり得るため、仕事探しに苦戦することが予想されます。
自身のスキルや経験を活かせる職種を見つけ、準備期間があるようでしたら、資格を取得してみるのも良いでしょう。

そして、離婚時に請求できるお金について、しっかりと把握し、請求の準備を進めておくことが肝心です。
離婚原因が夫の不法行為にある場合は、慰謝料を請求することも考えられるため、不法行為の証拠資料を準備しておく必要もあります。

男性の熟年離婚の準備

熟年離婚において、男性は金銭的には得るものが少ないどころか、財産分与や年金分割などで、妻と分配する財産が多くなる、という点を理解しておきましょう。
大抵の場合、男性の方が女性よりも収入が多いため、熟年離婚することによって、妻に財産を渡すことになるケースがほとんどです。

また、それまでは妻に任せてきた家事についても、熟年離婚後はひとりで行っていくことになります。
ひとり暮らしの経験があって慣れている男性もいらっしゃるかと思いますが、労働に専念してきた夫にとっては、熟年離婚後、急に家事をしなくてはならなくなるので、熟年離婚前に、妻にやり方を聞いておくなどして、ひとり暮らしに向けて準備をしておくようにしましょう。

 

熟年離婚を決めたら、熟年離婚後に住む予定の地域で、各種交流会やイベントに参加してみることをおすすめします。地域のイベントや集会に参加することで、その地域の雰囲気や環境が分かりますし、同じ地域の人々との新しいつながりが生まれます。こうした活動は、熟年離婚をする前から始めても、早すぎるということはありません。
ご自身の熟年離婚後の充実した生活のためにも、準備は早めに始めておくようにしましょう。

熟年離婚の方法

協議・調停・裁判

熟年離婚の準備が終わったら、熟年離婚の手続きを進めていきます。
熟年離婚の仕方ですが、基本的には、一般的な離婚の手続きの流れと同様です。

まずは話し合いによって、熟年離婚の具体的な条件などを夫婦で決めていきます。離婚協議は当事者で進めると感情的になりがちですので、弁護士などの代理人に依頼して、弁護士が離婚協議を進めていくこともひとつの方法です。

話し合いで熟年離婚ができなければ、離婚調停を申し立てることになるでしょう。
離婚調停では、家庭裁判所において調停委員が夫婦の主張を聞き、解決案を提案します。調停で落ち着いて調停員に話をできるように、主張したいことを紙などにまとめておき、資料があれば準備しておきましょう。

離婚調停で合意ができなければ、審判手続きに移行し、裁判所によって決定が下されることになります

そして、離婚調停や審判によっても解決できなければ、最後には離婚裁判となります
離婚裁判では、法定離婚事由が必要なほか、話し合いの場合以上に厳密に、客観的な証拠が求められます。配偶者の不貞行為やモラハラなどを離婚原因とし熟年離婚する場合や、慰謝料を請求したい場合などは、証拠を準備しておくことが重要です。

別居すべき?

熟年離婚の準備を進めて、熟年離婚がいよいよ現実的になったら、別居も検討されることでしょう。
熟年離婚を前提とした別居には、以下のようなメリットとデメリットがあります。これらのメリットとデメリットは考え得る一部に過ぎませんので、できれば弁護士に別居について事前にご相談いただくことをおすすめいたします。

別居のメリット

  1. 相手に熟年離婚の意思が固いことを示せるため、なかなか話し合いの席についてくれない配偶者に「本気である」とプレッシャーを与えることができる。
  2. 熟年離婚することや、離婚条件について、それぞれが冷静に熟考するための時間を持つことができる。
  3. 精神的ストレスから解放される。
  4. 離婚協議や離婚調停が長引いた場合でも、別居期間が長期に渡れば、婚姻関係が破綻しているとして、裁判で離婚が認められる可能性がある。

別居のデメリット

  1. 財産分与等の資料や、不貞等の証拠収集が難しくなる。
  2. 相手が生活費を支払ってくれなくなる恐れがある。

以上のような別居のメリットとデメリットを踏まえた上で、別居の準備をしていきましょう。別居の準備に際しては、「熟年離婚することを前提として別居したい。」と配偶者に伝えておくことが大切です。
何も知らせずに突然家を出て、連絡も取れない、となってしまえば、別居した側が「悪意の遺棄をした」と思われてしまいかねません。そうすると、かえって相手に慰謝料を支払わなければならなくなってしまいます。

別居の準備としては、別居の期間や別居中の生活費(婚姻費用)をどうするか、別居に際しての具体的な条件や、連絡手段などについて、夫婦で話し合っておくようにしてください。口頭ではなく、書面に記載しておくと、後のトラブルを防止できるでしょう。
そして、住まいを確保し、転居にともなう各種手続きをしなければなりません。住所が変わるわけですから、住民票や健康保険証、運転免許証、クレジットカードなど、住所変更の手続きを迅速に済ませていく必要があります。郵便物の転送手続きも忘れないようにしましょう。
住所変更は何かと煩雑ですので、別居前に、必要な手続きのリストを準備しておくことをおすすめいたします。

DVやモラハラの証拠は別居前に確保しておきましょう

配偶者にDV(家庭内暴力)やモラハラ(モラルハラスメント。精神的虐待)などの不法行為があった場合は、なるべく有利な条件でスムーズに熟年離婚ができるよう、加害行為の証拠を確保しておきましょう。
配偶者のモラハラやDVによって精神的苦痛を受けた場合、損害賠償として離婚慰謝料を請求することが考えられます。この際に、離婚慰謝料の請求が認められるためにも、モラハラやDVがあったことが客観的に分かる証拠が重要です。

また、離婚協議や離婚調停の場合は、相手の合意さえあれば離婚が成立しますが、揉めた場合は最終的に訴訟(離婚裁判)に発展します。裁判で熟年離婚が認められるためには、モラハラやDVによって夫婦関係が破綻していることを客観的に証明するための証拠が必要です。

このように、離婚慰謝料の請求の他にも、熟年離婚すること自体で揉めた場合のことを考えて、モラハラやDVの被害を受けている場合は、モラハラやDVの証拠を確保しておくようにしてください。
なお、証拠の確保は、可能であれば別居前にしておくことが望ましいです。別居を始めた後は、DVやモラハラの被害を避けられるようになる分、証拠を収集することが難しくなるためです。

ですが、心身の安全を確保することが何より大切ですので、モラハラやDVの被害の程度を考えて、証拠確保より別居を優先すべき場合は、別居することを優先してください。
別居や証拠収集でお悩みの方は、まずは弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

熟年離婚の準備に関するQ&A

Q1.熟年離婚を考えていますが、最初にどのような準備をすべきですか?

まずは熟年離婚をした後に、自分ひとりでどのような生活になるのか、生活設計を立てましょう。経済的に熟年離婚が難しいとなった場合は、熟年離婚をすべきかどうか、再考しなければなりません。
熟年離婚後に自分が得られる収入や、離婚時に請求することができるお金(財産分与、慰謝料など)、熟年離婚後の生活で発生する支出について、なるべく具体的に算出しておきましょう。

可能でしたら、熟年離婚の準備を始める際に、弁護士にご相談ください。離婚後の生活設計を含めて、どのように準備を進めていくべきか、弁護士がご相談者様と一緒に検討していきます。

Q2.熟年離婚の準備において、住まいの確保で気を付けるべきポイントはありますか?

収入に応じた住まいを確保することが重要ですが、高齢であるという点から、住環境には特に気を付けなければなりません。

  • 実家や親戚、頼れる友人が近くにいるか。
  • 病院に通院しやすい住環境か。
  • バスや電車などの公共交通手段が充実しているか。
  • 市区町村役場などの公共サービスにアクセスしやすいか。
  • 公営住宅などを利用できるか。

以上のポイントを踏まえた上で、熟年離婚後の住まいを探していくようにしましょう。

Q3.熟年離婚前に別居するべきでしょうか?

熟年離婚前に別居するべきかどうかについては、本記事でご紹介したメリットとデメリットを考えた上で決めるようにしましょう。また、別居の準備などについてのお悩みも、弁護士にご相談いただければと思います。

まとめ

本記事では、熟年離婚に際して必要な準備について、解説させていただきました。
まとめますと、熟年離婚の準備の流れは次の通りです。

  1. 熟年離婚後の生活設計を立てる。
  2. 慰謝料や財産分与、年金分割といったお金の問題を検討し、必要な資料を準備する。
  3. 熟年離婚後の生活に後悔しないよう、交友関係をあたため、公的支援をチェックしておく。
  4. 熟年離婚を前提とした別居を検討し、手続きの準備を進める。

このようにして熟年離婚の準備が整ったら、まずは夫婦の話し合いで熟年離婚の手続きを進めていくことになります。
熟年離婚は、多くのケースで、子供の経済的自立や夫の定年退職など、人生における「ひと区切り」のタイミングで起こっています。
人生の節目を熟年離婚のタイミングとして、充実した新生活を始める男女がいる一方で、熟年離婚したことを後悔する男女がいることも確かです。
熟年離婚することが、ご自身の人生にとってプラスとなるよう、しっかりと準備を進めていっていただければと思います。

熟年離婚の準備にお悩みの方がいらっしゃいましたら、お気軽に弁護士にご相談ください。熟年離婚に向けて何を準備すべきか、どのように準備を進めていけばスムーズかなど、熟年離婚の準備を徹底的にサポートさせていただきます。
まずは当法律事務所の初回無料相談をお試しください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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