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熟年離婚に至る夫婦の特徴や原因とは?切り出すタイミングはいつ?

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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熟年離婚を選択する背景には、どのような特徴や原因があるのでしょうか。

本記事では、長年連れ添った夫婦が熟年離婚を選択した原因や、熟年離婚される夫や妻の特徴について、弁護士が詳しくご紹介いたします。
また、一般的に熟年離婚を考えるようになるタイミングについてもご紹介いたします。

原因や特徴を知ることによって、結婚生活が長期にわたるからこそ生じる問題について理解できると思われます。そして、離婚原因を知ることによって、夫婦関係の改善も期待できるかと思います。
本記事が、熟年離婚の原因と特徴を理解するための参考となりましたら幸いです。

目次

熟年離婚とは

熟年離婚の原因について見ていく前に、そもそも熟年離婚とはどういった離婚なのかについて、簡単にご紹介させていただきます。

熟年離婚の定義とその背景

結婚してから長期間が経過した夫婦の離婚を熟年離婚といいます。
2005年に熟年離婚をテーマにしたテレビドラマが放送されたことをきっかけに、熟年離婚という言葉がその年の流行語にもなりました。

一般的には、60代前後の、定年退職を迎えた年代が離婚すること、というイメージを持つ方もいるでしょう。しかし、熟年離婚とは、60歳代以降の離婚だけを指すわけではありません。

とはいえ、60歳代以降の離婚の場合には、多くの場合では、20年以上の婚姻生活を送った夫婦の離婚ということになるので、結果として50代・60代の夫婦が離婚することになるのです。
この年齢層では、子供も経済的に自立して子育てが終わり、会社勤めであれば退職を迎えるなど、生活の節目にあたることが多いです。
そのため、熟年離婚の背景には、次のような原因が考えられます。

夫婦関係の変化

結婚生活が長期にわたる中で、夫婦間の関係性やコミュニケーションが変化し、互いに新たな価値観や生活スタイルを求めるようになる場合があります。

個人の成長と自立

特に女性の社会進出が進む中、経済的な自立が可能になり、自分自身の人生を見つめ直す機会が増えます。夫やその家族・親族に干渉されることのない生活をしたいと、熟年離婚を選択する妻も少なくありません。

ライフスタイルの変化

子育ての終了や退職後に、夫婦が2人で過ごす時間が増え、改めて性格が合わないことに気付いたりして、一緒に生活することができないと感じてしまうことがあります。このような経緯から、熟年離婚を考える方もいらっしゃるのです。

例えば、今までは、夫が会社勤めであったことから、休日くらいにしか一緒の時間を過ごすことがないために、気付いていなかった夫の受け入れられない性格が夫の退職後に分かるというような場合です。

他にも、今までは、子どもがメインの家庭だったことから、見えていなかった相手の嫌なところが、子どもの自立によって、夫婦2人だけになったことで発覚するようなことも考えられます。

健康と介護の問題

加齢に伴い、一方に介護の必要性が生じるなどによっても、一方にストレスを与え、熟年離婚の一因となることがあります。

熟年離婚は、結婚生活の長期化に伴う夫婦間の関係の変化、個人の成長と自立、生活スタイルの変化、そして健康や介護の問題といった複合的な要因によって引き起こされるものであり、現代社会における家族構造やライフスタイルの変化を反映していると言っても過言ではないでしょう。

熟年離婚に至る男性・女性別の主な理由と兆候

ところで、熟年離婚と聞くと、夫に原因があり、妻から夫に熟年離婚を切り出す、という形をイメージする方が多いのではないでしょうか。

しかし当然、夫から妻に対して熟年離婚を切り出すケースも少なくありません。
熟年離婚の原因について詳細をご説明する前に、妻から熟年離婚を切り出すケースに見られる離婚理由の特徴と、夫から熟年離婚を切り出すケースに見られる離婚理由の特徴について、男性・女性ごとに簡単に見ていきましょう。

妻から切り出すときに多い理由

妻から夫に対して熟年離婚を切り出す原因として多いと言われているのは、以下で挙げられるような夫に対する不満や、自己実現の欲求です。

  • 夫の性格や生活態度に不満がある。
  • 夫の家族や親族との関係から解放されたい。
  • 第二の人生をスタートさせたい。

これらの概要についてご説明いたしますと、下記の通りです。

1.夫の性格や生活態度に不満がある

長年の婚姻生活を通じて、妻が夫の性格や生活態度に不満を感じるようになると、それが原因で熟年離婚に至るようなケースがあります。
たとえば、夫のコミュニケーションの仕方、家事への非協力的な姿勢、あるいは自己中心的な行動や態度などが、妻にとってストレスの原因となることがあります。

例えば、会社で出世して職務上の地位が上がり、偉そうな性格に代わってしまい、妻に対して、上から目線の態度でコミュニケーションをとるような方もいらっしゃるのではないでしょうか。会社での地位が性格に影響を与え、家庭を崩壊させてしまうこともあるようです。

このような不満が積み重なったことが原因で、妻は夫との生活からの脱却を求め、熟年離婚を検討するようになります。

2.夫の家族や親族との関係から解放されたい

妻が夫の家族や親族との関係に負担を感じている場合も、熟年離婚の原因となります。
たとえば、お互いに高齢になることから、冠婚葬祭との関係で、親族とこれまで以上に関わることになり得ます。それに伴い、親族などから、一定の役割を期待されるなどする結果、妻にとって精神的な重荷となることがあります。他にも、親族の介護などをお願いされ、断れずに過度の負荷を抱え込むようなこともあるようです。
夫の家族や親族との関係に疲れ果てた妻は、こういった関係から解放されたいと思い、それが原因で熟年離婚を考えることになるのです。

3.第二の人生をスタートさせたい

妻が自分自身の人生において、新たなスタートを切りたいと考えるようになったことを原因に、熟年離婚に至るケースもあります。
特に、子育てが終わって、自分の時間が持てるようになってくると、趣味などの時間を割けるようになることもあります。

このような状況でも、自分のキャリアや趣味などの自己実現のために、夫が協力的であるような場合は、熟年離婚に至ることはほとんどないようです。しかし、たとえば夫が妻の趣味や習い事に対して、否定的でいつも不満を言ったり、夫も定年退職していて時間があるにも関わらず、家事に協力してくれないなどと、夫との婚姻関係が、妻の新たな人生にとって障害となると感じた場合、妻は熟年離婚を選択することが多いようです。

夫から切り出すときに多い理由

一方で、夫から妻に対して熟年離婚を切り出す原因は、主に次の3つが多いと一般的に言われています。

  • 夫に他に好きな人ができた。
  • 自分の趣味や夢を実現させたい。
  • 妻の自分に対する言動や態度に不満がある。

これらの概要についてご説明いたしますと、下記の通りです。

1.夫に他に好きな人ができた

夫が別の女性に好意を持つことが熟年離婚の引き金となるケースがあります。

今までは子どもとの関係で夫婦でいたが、子どもの自立に伴い、婚姻関係を継続する障壁がなくなったと考えて、本当に好きな人と一緒にいたい気持ちを優先した結果、熟年離婚を考えるようになるということもあるようです。

2.自分の趣味や夢を実現させたい

定年退職を迎えた結果、自分の趣味や夢に集中することにより、新たな生きがいを見出すことがあります。こうした時には、自分自身の興味や情熱により深く没頭することが一層魅力的になります。

しかし、妻がこれらの活動を理解しない場合や、それを支持しない場合、夫は家庭生活の制約を感じ、熟年離婚を考えることがあります。自分の趣味や夢に専念する自由が、家庭内で制限されると感じる瞬間があるのです。
そういう状況を窮屈に感じ、熟年離婚を切り出す結果となる場合があります。

3.妻の自分に対する言動や態度に不満がある

このケースでは、夫が妻の言動や態度に対して不満を抱くことが熟年離婚の原因となります。
長年の結婚生活の中で、夫は妻のある特定の行動や態度に対して不満やイライラを感じるようになることがあります。例えば、妻の家事や育児への姿勢、夫に対する批判的な言動、または夫の趣味や生活様式に対する不満などです。
不満自体が些細なものであったとしても、それを都度解消してこなかった結果、小さな不満が積もりに積もり、熟年離婚の原因になり得ることもあるのです。

熟年で別れる夫婦に見られる兆候

以上のことから、熟年離婚に至る夫婦に見られる兆候として、次のようなことが挙げられます。

  • 会話が少なくなり、お互いの時間を共有しなくなる。以前は頻繁に交わされていた日常の会話や深い話題について話し合う機会がほとんどなくなる
  • 趣味の時間やそれぞれがそれぞれの活動に熱中しすぎてしまって夫婦の時間がほとんどなくなる
  • 些細なことで喧嘩がよく起こる。

なぜ?熟年で別れることを決めた9つの理由

さて、それでは夫婦が熟年離婚したいと思うようになった原因について、具体的に見ていきましょう。
夫婦が熟年離婚をする主な原因について解説していきます。一般的に考えられる原因は、次の9つの原因です。

  1. 夫の定年退職
  2. 子供が経済的に自立した
  3. 年金制度の改正により専業主婦も離婚しやすくなった
  4. 高齢者の離婚に対する社会的理解の拡大
  5. 夫や妻の言動や態度に我慢できなくなった
  6. 夫や妻のモラハラ
  7. 配偶者の家族の介護をする生活に疲れた
  8. 不倫をしている、好きな人ができた
  9. 相手の浪費や借金

なお、熟年離婚に限らず、全ての年代においての離婚原因についての解説記事がございますので、こちらの関連記事もご参考にしてください。
離婚理由|統計から見る離婚の理由は何?裁判ではどうなる?
離婚原因ランキング|夫が離婚したいと思う時1位の理由は?

それでは、夫婦が熟年離婚に至った9つの原因について、具体的にどういった背景があるのか、見ていきましょう。

原因1.夫の定年退職

妻が熟年離婚を望む場合のきっかけとして定年退職が挙げられます。
定年退職を機に夫が常に自宅にいるようになったことで、夫の言動の些細な部分が大きく目につくようになり、夫といることがストレスになる、という声もあるようです。
特に、戦後日本では「夫は外へ出て働き、妻は家庭を守る」という家庭のあり方が一般的でした。それまでは家事・育児を全て任されてきた妻が、今度は夫の世話もすることになり、「だったら自分一人で暮らした方が楽だ」と熟年離婚に踏み切ることが多いのです。

また、そんな妻の「夫をないがしろにする態度、夫に対し不満を抱えている様子」に疲弊した夫から、熟年離婚を提案するケースも見られます。
「これまでは妻子のために仕事を頑張ってきたのに、定年退職したら労いもなく、邪険にされてしまう。」といった状況が、熟年離婚の原因となる場合もあるのです。

原因2.子供が経済的に自立した

子供が経済的に自立すると、夫婦は子育てから解放されます。子供が自立することにより、夫婦の話題が一つなくなったと感じたりして会話が亡くなることがあるようです。また、子どもが家にいたときには、子どもが話題を作ったりしていたことから、家族の話が盛り上がっていたなどの事情があった家庭の場合、子どもが自立したことによって、それがなくなり、特に仲が悪かったわけでもなかったのに、夫婦の会話がなくなってしまって、仮面夫婦のようになってしまうこともあるようです。

自分の趣味や友人との交流を増やしたり、自分の夢や目標を追いかけたりするようになり、「子供の世話も見なくてよくなったのだから。」と、熟年離婚を選択することになるのです。

原因3.年金制度の改正により専業主婦も離婚しやすくなった

2007年に年金制度が改正となり、それまでは国民年金しか貰えなかった専業主婦も、離婚時に夫がそれまで積み立てた厚生年金の原則半分を、受け取ることができるようになりました。これがいわゆる、離婚時の「年金分割」です。
離婚と年金分割|請求に期限あり?手続きをしたらいつからもらえる?

この年金分割に関する法改正によって、「就職も難しい年齢で熟年離婚してしまったら、お金もなくて老後の生活に困ってしまう。それならば熟年離婚せずに我慢しよう。」と思いとどまっていた専業主婦が、熟年離婚に踏み切りやすくなったのです。

熟年離婚における年金の詳細につきましては、こちらの関連記事をぜひご一読ください。
熟年離婚で年金分割したらいくらもらえる?遺族年金はどうなりますか

原因4.高齢者の離婚に対する社会的理解の拡大

熟年離婚という言葉が流行語になったこともあるように、熟年離婚に対するハードルが下がったことも原因として考えてもよさそうです。

こうした社会的な変化により、以前は家庭や社会的な期待に縛られていた高齢者も、自分の幸せを優先して行動できるようになりました。

原因5.夫や妻の言動や態度に我慢できなくなった

夫婦は長年一緒に暮らしていると、相手の言動や態度に対する不満が積み重なることがあります。
結婚当初は気にならなかった相手の癖や性格が気になるようになったり、相手の考え方や価値観が合わないことに、ストレスを感じるようになったりすることがあります。
そういったストレスを抱え、相手とコミュニケーションを取ることを避けるようになるうちに、相手に対する理解や尊重が失われ、熟年離婚を考えるようになることがあるのです。

このように、夫や妻の言動や態度に我慢できなくなったことが原因で、熟年離婚に至るケースがあります。

原因6.夫や妻のモラハラ

近年では離婚の原因として珍しくなくなってきたのが、配偶者からのモラハラです。
モラハラとは、モラルハラスメントの略語で、言動や態度による精神的な虐待のことをいいます。たとえば、「夫に理由もなく長期間に渡って無視されている。」、「妻が毎日、収入が少ないことで執拗に叱責してくる。」といった行為が、夫婦間のモラハラの一例です。
こういった配偶者のモラハラや、身体的暴力(DV)といった不法行為が原因で、熟年離婚に至るケースもあります。

結婚当初からモラハラやDVの被害を受けている場合も、「子供が小さいうちは、子供のために離婚しない。」と我慢していることが多く、子供が就職あるいは結婚して自立したことをきっかけに、熟年離婚を切り出すようです。

原因7.配偶者の家族の介護をする生活に疲れた

日本が高齢化社会と言われるようになってから、ずいぶん経ちました。そうした高齢化社会にともなって生じる問題が、親の介護の問題です。
高齢化社会においては、夫や妻が配偶者の家族の介護をすることが珍しくもなくなってきました。しかし、介護をすることは、肉体的にも精神的にも大きな負担になります。これが自分自身の両親や家族であればともかく、配偶者の両親ともなると、気を使わなければならない場面も多く、かなりの負担を感じるようになります。

そして、親の介護問題でほぼ必ず生じるのが、夫や妻の親との同居問題です。夫から、「もう親父もお袋も歳だから・・・」と夫の親との同居を打診された妻が同居に反対し、夫婦のどちらも譲らなかった結果、熟年離婚に至る場合もあります。
また、「実の息子である夫はなにも介護を手伝ってくれないのに、どうして私が夫の親の介護をしなければならないんだろう。」といったように、介護に非協力的な配偶者の態度も、熟年離婚を検討する要因となっているようです。

介護をする側は、自分の時間や趣味を犠牲にしたり、介護のために退職したりと、キャリアや友人との関係を失ってしまうことがあります。
このように、介護をする生活は夫婦の関係にストレスを与え、離婚の原因になることがあるのです。

原因8.不倫をしている、好きな人ができた

典型的な離婚原因の一つでもある、夫や妻の浮気・不倫といった異性問題や、セックスレス・性嗜好の不一致といった性的不調和も、熟年離婚の原因です。
「最近になって夫の不倫を知った。」というケースもあれば、結婚当初に夫が自分以外の女性と浮気していることを知って離婚を考えたものの、子どもが成人するまでは我慢しよう、と決めていた妻が、子どもの就職や夫の定年退職を機に熟年離婚に踏み切った、というようなケースがあります。そして、こういった事例は珍しくはないのです。

また、長年セックスレスに悩んでいた夫が、妻とのセックスレス・性嗜好の不一致を原因として妻と熟年離婚し、他の女性と新たな関係を築きたい、と熟年離婚を申し入れることもあります。

原因9.相手の浪費や借金

お金の使い方について、夫婦で意見が合わないことは少なくないでしょう。夫や妻が浪費したり、借金をしたりすることがあります。これにより、夫婦は経済的な困難に陥り、資産や収入の使い道のことで夫婦喧嘩したりすることがあります。
また、経済的な困難に陥ると、夫婦は生活水準を下げたり、節約したりする必要があります。これが、夫婦関係にもストレスを与え、お互いに対する不満になることがあります。
浪費や借金によって、自分の欲求や夢を諦めたり、自分の楽しみや趣味を制限されたりすることが重なると、人生に対する満足度や幸福感が低下してしまうのです。

このように、浪費や借金といったお金のことで喧嘩すると、ストレスが溜まり場合によっては離婚を決意させるほどの要因となり得ます。

 

熟年離婚の9つの主な原因

 

熟年離婚のメリットとデメリットをご紹介します

熟年離婚の原因についてイメージを持っていただけたところで、熟年離婚のメリットとデメリットについて、見ていきましょう。
まずは、熟年離婚をする3つのメリットについてご紹介します。

熟年離婚のメリット①ストレスからの解放

熟年離婚のメリットの一つは、熟年離婚を決意した原因・ストレス源から解放されることです。
価値観の異なる他人同士が共同生活を送っていたわけですから、大なり小なり、その結婚生活には悩みがあったことかと思います。例えば、夫についての悩みとしては、DV、浪費などがあり、妻についての悩みとしては、家事をしない、給料を自由に使わせてくれない、妻のことを異性として見られなくなったということが挙げられるでしょう。

また、配偶者に直接的な不満がなかった場合でも、配偶者の親の介護問題から解放されることも、大きなメリットの一つのようです。
こういった、長年の結婚生活における悩みから解放されることが、熟年離婚の最大のメリットといえます。

熟年離婚のメリット②自由な時間が増える

これまでは夫や妻のために使っていた時間も、全て自分のために自由に使うことができるようになります。
趣味の時間を増やしたり、新しく習い事を始めたりと、第2の人生を充実させられます。

熟年離婚のメリット③自由な交友関係

結婚によって配偶者との生活がメインとなり、独身時代の交友関係を制限していた、あるいはされていた、という夫婦は少なくありません。
これまでは配偶者に遠慮して行けなかった同窓会に出席したり、友達と泊まりの旅行に出掛けたり、熟年離婚後は気兼ねなく友人との交流に時間を割くことができるようになります。
また、異性との新たな出会いがあり、男女関係に発展しても、独身なので問題はありません。

一方で、晴れて第2の人生をスタートさせても、次のようなデメリットに直面し、熟年離婚しない方がよかった、と後悔するケースも見られます。
熟年離婚を検討している人は、後悔のない熟年離婚をするためにも、熟年離婚のデメリットを知っておきましょう。

熟年離婚のデメリット①孤独感

孤独感こそ、熟年離婚の最大のデメリットと言っても過言ではないでしょう。長年に渡って連れ添った相手がいなくなれば、誰しも孤独感に襲われます。

また、熟年離婚時の年齢が高いほど、孤独死のリスクも比例して高くなるというデメリットもあるのです。
熟年離婚による孤独が心身に与えるストレスは大きく、健康障害を引き起こしたり、余命に影響を与えたりと、決して孤独感を軽視はできません。

熟年離婚のデメリット②お金の問題

使えるお金が減ることも熟年離婚のデメリットです。
特に、家事従事者(専業主婦)だった場合、熟年離婚後の生活費用等の確保が難しく離婚を躊躇している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結婚前に働いていたとしても相当のブランクがありますし、また、会社によっては入社条件として年齢を掲げている場合もあります。仕事を始めたくても、年齢や未経験を理由に不採用となることが多く、職を得たとしても、非正規雇用であったり定収入であったりと、熟年離婚前と同程度の生活レベルを維持できない可能性が高いのです。

熟年離婚のデメリット③日常生活への影響

3つ目のデメリットは、日常生活への影響です。婚姻期間中は2人で分担していた家事も、熟年離婚後は全て自分で行うことになります。
自分の思うまま自由に生活できるというのはメリットですが、同時にデメリットでもあるのです。特に、家のことは全て配偶者に任せていたという人は、熟年離婚後に日常生活の些細なことに戸惑ったり困ったりすることも少なくありません。

それまで仕事に打ち込んで、身の回りのことは全て妻に任せてきたような男性は、熟年離婚した途端に生活が荒れてしまい、体調管理もできなくなってしまう、という話も耳にします。
熟年離婚後に生活面で困ることのないよう、熟年離婚前に準えておく必要があります。

熟年離婚のデメリット④子どもへの影響

熟年離婚の場合、子どもがいても独り立ちしていることも多く、親権や養育費などの問題が生じることはほとんどありません。
しかし、熟年離婚によって父母のいずれかの生活が苦しくなり、子どもを頼ることになれば、少なからず子どもにとって負担となってしまいます。熟年離婚が子どもに与える影響は、決してゼロではないのです。

熟年離婚のデメリット⑤交友関係の変化

20年近く連れ添いますと、夫婦共通の友人や、配偶者を介した交友関係も多いことでしょう。そのため、熟年離婚後はそういった友人・知人とは疎遠になってしまいます。
また、熟年離婚に伴い引っ越すことになると、それまでの近隣との付き合いもなくなり、転居先で新しいご近所付き合いをしていかなければなりません。
人付き合いが苦手な人や、高齢になって新しく友人関係を築くことが億劫だと感じる人にとっては、この点も熟年離婚後のストレスの一因となることでしょう。

熟年離婚をするタイミングはいつ?きっかけを知っておこう

それでは、熟年離婚を考えるようになるタイミングとは、具体的にいつが多いのでしょうか。熟年離婚を検討するきっかけを知っておきましょう。

タイミング1.夫の定年退職による生活の変化

夫の定年退職によって、これまでの生活が一変することがあります。
退職により、抜け殻のようになってしまい、夫婦関係に支障をきたすことがあります。

また、夫が家に多くの時間を過ごすようになることで、これまでのように自由に時間を使うことができなくなったり、プライベートスペースが減ってストレスの原因になりえます。
このように、夫の退職が離婚を考えるきっかけになることがあります。

タイミング2.子供の経済的な自立

子供が自立したことで、夫婦関係を見直すきっかけになります。

夫婦関係を見直した結果、夫婦でいる意味が子育てだけだったというような場合には、離婚を検討する方もいらっしゃいます。

タイミング3.専業主婦やパートタイム労働者の定職就業と経済的自立

専業主婦やパートタイム労働者が定職に就くことで、経済的に不安が解消された結果、離婚を検討する方もいます。

中には、結婚生活に不満をもち、そのような結婚生活から解放されるために、定職に就こうと考える方もいます。

タイミング4.夫も妻も、双方が離婚することに納得しているとき

配偶者双方が現在の結婚生活に満足しておらず、新たな人生を求めている場合は、熟年離婚の重要なタイミングとなります。
夫婦がお互いを尊重し、新しい人生の道を歩むことを選択することで、より円満な熟年離婚へと進むことができます。

熟年離婚される夫や妻に見られる特徴を知って事前に回避しましょう

熟年離婚を切り出される側としては、突然のことに寝耳に水だと思うかもしれません。しかし、熟年離婚を切り出す側にとっては、長年に渡って不満をため続けてきた、ということも少なくないのです。
もし、下記のような「熟年離婚される夫や妻に見られる特徴」に当てはまるものがあれば、家庭内での自身の生活態度などを振り返ってみることをおすすめいたします。

  • 夫婦間のコミュニケーションがほとんどない。
  • 退職後、共通の趣味などがほとんどない。
  • 夫や妻への関心がなくなっている。
  • 配偶者の健康問題や介護が必要な状況に対して、適切なサポートや共感、感謝を示せていない。配偶者の善意に甘えている。
  • 浪費癖や借金などの経済的な問題ががある。
  • 精神的な虐待やモラルハラスメントが頻発し、相手に対する尊重や配慮が欠けてる。
  • 時代の変化や配偶者の成長に対応できず、過去の価値観や生活様式に固執している。
  • 不倫

Q&A

Q1.熟年離婚の原因として一般的な原因はなんですか?

熟年離婚の原因として一般的な原因は、次の通りです。

  • 原因①夫の定年退職
  • 原因②子供が経済的に自立した
  • 原因③年金制度の改正により専業主婦も離婚しやすくなった
  • 原因④高齢者の離婚に対する社会的理解の拡大
  • 原因⑤夫や妻の言動や態度に我慢できなくなった
  • 原因⑥夫や妻のモラハラ
  • 原因⑦配偶者の家族の介護をする生活に疲れた
  • 原因⑧不倫をしている、好きな人ができた
  • 原因⑨相手の浪費や借金

Q2.熟年離婚のメリットとデメリットを教えてください。

熟年離婚のメリットには、配偶者に不満がある場合にはそのストレスからの解放されること、自由時間が増えることなどがあります。熟年離婚によって、長年の結婚生活における悩みから解放され、自分らしさが取り戻せる場合があります。

一方、デメリットとしては、孤独感、経済的な問題、日常生活への影響、子どもへの影響、交友関係の変化が挙げられます。
熟年離婚を検討する際には、これらのデメリットを理解し、対策を講じることが重要です。

Q3.熟年離婚をするタイミングはいつが多いのでしょうか?

熟年離婚を考える主なタイミングは、夫の定年退職、子供の自立、定職就業による経済的自立、そして夫婦双方が離婚に納得している時です。
夫の定年退職は、普段ほとんどいなかった夫が自宅に長時間いることになり、長年見えてこなかった夫の嫌な一面に気付き、耐えられなくなって、それが離婚の要因になりえるのです。

子供の自立は、夫婦二人だけになることから、夫婦の関係を見直しことに繋がりえます。その結果、離婚という選択も視野に入ってくるのです。
定職に就くことによる経済的自立によって、経済的な不安が解消され、離婚の障壁がなくなる方もいます。

また、夫婦双方が現在の結婚生活に満足しておらず、新たな人生を求めている場合は、円満な熟年離婚へと進む重要なタイミングとなります。

弁護士にご相談ください

本記事では、熟年離婚に至る原因についてご紹介させていただきました。主な熟年離婚の原因として、本記事でご紹介した原因は次の9つの原因です。

  • 原因①夫の定年退職
  • 原因②子供が経済的に自立した
  • 原因③年金制度の改正により専業主婦も離婚しやすくなった
  • 原因④高齢者の離婚に対する社会的理解の拡大
  • 原因⑤夫や妻の言動や態度に我慢できなくなった
  • 原因⑥夫や妻のモラハラ
  • 原因⑦配偶者の家族の介護をする生活に疲れた
  • 原因⑧不倫をしている、好きな人ができた
  • 原因⑨相手の浪費や借金

以上の原因を総合してみると、夫婦間の関係が長年の経過と共に変化することを主な原因として、熟年離婚に至ると言えます。
また、近年では、女性の社会進出も目立つようになり、そうした経済的背景の変化も、熟年離婚の一つの原因として考えられます。
こうした社会の変化と共に、熟年離婚に対する社会的な理解も拡大したことが、熟年離婚の原因の一つでもあります。
このように、熟年離婚の原因には、夫婦間の問題以外にも、社会や時代の変化が密接に関係しているとみることもできるのです。

また、本記事においては、熟年離婚を考えるようになるタイミングや、熟年離婚を切り出される夫や妻に見られる特徴などについてもご紹介いたしました。
子供の就職や結婚、自分の定年退職など、人生や家庭における節目は、熟年離婚されやすいタイミングです。そのような節目のときには、熟年離婚されるような原因はないだろうかと、自分の言動を振り返ってみることも大切です。

熟年離婚の原因となるような言動や態度は、無意識のうちに取ってしまっていることがあります。
また、配偶者が自分の両親の介護をしてくれているということに甘えてしまっていると、そのような態度が熟年離婚を切り出される原因となってしまいます。
大切なことは、相手に対する感謝や理解を示し、同時に相手の意思を尊重することです。
夫婦間の相互理解と、お互いを尊重する行動が、熟年離婚のリスクを減らすことになるでしょう。

もし現在、熟年離婚を検討していたり、配偶者から熟年離婚を切り出されているという方がいらっしゃいましたら、お早めに弁護士にご相談ください。
熟年離婚をする場合の準備や、反対に熟年離婚を回避したい場合の交渉なども、弁護士が徹底的にサポートさせていただきます。
まずは、当法律事務所の初回無料相談をご利用ください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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