別居中の浮気・恋愛は慰謝料請求される不貞行為?離婚前提の別居も?
夫婦が別居する場合、どのような理由や目的があるのでしょうか。
たとえば、出産のための里帰りや単身赴任、夫婦喧嘩の冷却期間や、離婚を前提とした話し合いをするため・・・こうしたさまざまな理由や目的から、夫婦は別居することがあります。
この別居の期間が長くなればなるほど、夫婦の物理的・心理的距離も広がり、別居中に配偶者以外の異性に惹かれてしまうこともあるかもしれません。
「どうせ離婚するのだから、別居中に浮気しても問題ないだろう。」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
もしこのように考えている場合には、注意しておくべきことがあります。
夫婦の状況や別居の状態、浮気の内容や程度によっては、別居中に配偶者以外の人と浮気をすると、慰謝料を請求される可能性があるのです。
そこでこの記事では、別居中の配偶者が浮気をした場合に、慰謝料請求が発生する行為や証拠の具体例、慰謝料の請求方法などについて、弁護士が解説いたします。
また、慰謝料が発生しない別居中の浮気の具体例や、慰謝料請求された場合の対処法についても、弁護士が詳しくご説明させていただきます。
目次
別居中の浮気・恋愛は違法になるの?
結婚すると、夫婦は同居して生活することが一般的です。そして、法律上も、夫婦は同居しなければならないという同居義務が定められています(民法第752条)。
(同居、協力及び扶助の義務)
民法第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
ですが、例外的に、さまざまな事情により、夫婦が別居して生活することもあるでしょう。
たとえば、以下に記載するような事情が考えられます。
- 夫が仕事で単身赴任のため妻と別居している。
- 出産のために妻が里帰りして別居している。
- 夫婦間の関係が悪化し、冷却期間として一定期間別居している。
- 子供の教育(通学先の学校など)のために、一方が子供と共に別の地域で生活している。
- 住宅のリフォームや建て替えの期間中、それぞれの実家にいて別居している。
- 離婚協議や離婚調停を進めている期間、別居している。
夫婦の別居期間が長くなると、浮気や不倫のリスクは高まります。なぜなら、別居中は夫婦の物理的・心理的距離が広がり、お互いの行動や生活の様子を確認できないため、配偶者以外の人との浮気や不倫がしやすい環境となっているからです。
そのため、残念ながら、「別居中バレなければ大丈夫だ。」「離婚調停中だし、どうせ離婚するのだから、バレても慰謝料請求されないだろう。」といった軽い気持ちで、配偶者以外の人と恋愛関係になったり、肉体関係になってしまう既婚者もいます。
こうした別居中の浮気や不倫は、違法なのでしょうか。
日本の法律上、浮気や不倫は犯罪ではないため、刑法上の法律違反にはなりません。そのため罰則などもありませんが、民事上は違法行為となる可能性があります。
別居中とはいえ、法律上は夫婦としての婚姻関係が継続しています。そのため、別居中であっても、夫婦は配偶者以外の人と性的関係になってはいけないという、民法上の「貞操義務」があるのです。
貞操義務とは、結婚したら配偶者以外の人と性的関係を持ってはいけない、つまり不倫や浮気をしてはいけない、という義務です。同居義務のように明確に法律に貞操義務について規定されているわけではありませんが、配偶者の浮気・不倫が裁判離婚の理由として認められること(民法第770条第1項1号)から、夫婦にはこの貞操義務があると解されています。
(裁判上の離婚)
民法第770条第1項1号
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
民法第770条第1項1号の「不貞」とは、浮気や不倫の法律的な表現です。
不貞行為は、裁判において離婚が認められるための理由になるだけではなく、不貞行為をした配偶者は他方配偶者に対して不貞行為に基づく慰謝料を支払うことになる可能性があります。
ですが、別居中の浮気や不倫によって、必ず慰謝料が発生するわけではありません。浮気や不倫の内容・頻度によっては、離婚の理由や慰謝料請求の原因となる不貞行為には該当しない場合があります。
では、どのような場合に、離婚の理由や慰謝料請求の原因となる不貞行為に該当するのでしょうか。
そこで、慰謝料が発生する別居中の浮気や不倫のケースと、慰謝料が発生しない別居中の浮気や不倫のケースについて、それぞれ解説していきたいと思います。
まずは、前提として「不貞」とはどういった行為を指すのかについて、簡単にご説明いたします。
慰謝料請求される場合のある法律上の「不貞」の内容とは
男女の交際といっても、その内容はさまざまです。手をつないで食事をするようなものから、肉体関係を持つものまであります。
実は、こうした男女の恋愛関係にともなう行為の全てが、法律上の不貞行為に該当するわけではないのです。
それでは、法律上の不貞行為にあたる浮気や不倫は、どういった行為を指すのでしょうか。
法律上の「不貞行為」とは自由な意思で配偶者以外の男女と肉体関係を持つこと
法律で離婚理由になる不貞行為とは夫婦・婚約・内縁関係にある男女のどちらか一方が、配偶者以外の第三者と、自由な意思でもって肉体関係を持つことを指します。
ここでポイントとなるのが、「自由な意思」と「肉体関係」の有無です。
自由な意思の有無
まず、不貞行為の定義における「自由な意思」とは、配偶者以外の者と性的関係を持つことを自らの意志で選択したことを指します。つまり、その行為が強制や強要によるものでなく、当事者が自らの意志で関係に参加していることが必要とされます。
身体的、精神的、または経済的な脅迫によって性的関係に追い込まれたような場合は、配偶者以外と肉体関係を持っても、その行為は自由な意思に基づくものとは見なされないため、不貞行為には該当しません。アルコールや薬物の影響で意識が不明瞭な状態で性的関係が行われた場合なども、自由な意思に基づく不貞行為ではないと見なされます。
肉体関係の有無
肉体関係を持つ、つまり性交渉をともなう男女関係であることが、法律上の不貞行為のポイントです。別居中に肉体関係を持つような内容の浮気や不倫をすると、慰謝料が発生する法律上の不貞行為となるでしょう。
一方で、肉体関係がない場合は、配偶者から見て親密な関係であっても、離婚裁判で不貞行為と認定される可能性は高くはありません。
たとえば、次の3つの行為は、どれも一般的に恋愛関係を推認させる行為ですが、どれも肉体関係はありません。
- 「大好きだよ」「愛してるよ」とメールを送る。
- 食事に行き、映画を見てドライブする。
- 日帰りデートし、ハグやキスをする。
そのため、これらの行為だけでは離婚理由や慰謝料の請求原因としての不貞行為とは認められにくいでしょう。
また、配偶者と別居中に異性と肉体関係を持ったとしても、継続せず一度きりの性交渉だったり、風俗店を利用しただけだったりすると、不貞行為とは認められない可能性が高いです。
慰謝料が発生する別居中の浮気のケース・発生しないケース
前述の通り、配偶者以外の人と自分の意思で肉体関係を持ってしまった場合、離婚理由や慰謝料の請求原因となる不貞に該当するため、慰謝料が発生することになります。
しかし、夫と妻が別居中の場合には、別居の理由やその時の状況によって、慰謝料が発生しない場合もあります。
別居中の浮気・不倫で慰謝料が発生しないケースと、慰謝料が発生するケースについて、それぞれ見ていきましょう。
既に夫婦関係が破綻していたり、離婚前提の別居の場合は慰謝料は発生しない
別居中に配偶者の浮気・不倫が発覚しても、別居中に以下のような事情があるケースでは、慰謝料は発生しないと考えられています。
別居期間が数年と長期に及び、交流がなかった場合
別居期間が数年に渡って続いていて、その別居期間中に夫婦間で交流することがほとんどなかったような場合には、別居中に浮気していたことが発覚しても、既に夫婦関係は破綻していたと判断され、慰謝料の請求が認められない可能性があります。
婚姻関係が破綻していると認められるためには、別居期間は何年か、というはっきり決められた基準はありませんが、一般的に5年が別居期間の目安と考えられています。
たとえば、東京地方裁判所平成23年6月30日は、「夫婦の別居生活が、5年余りの長期に及んでおり、既にその婚姻関係は破綻していたと認めることができる」旨の判示をしています。
もっとも、単純に別居期間が何年か、といったことだけでは判断されません。別居に至った事情や、別居中の状態、夫婦の婚姻期間なども総合して考慮されます。
たとえば、夫婦が結婚1年目に別居を始めて、別居期間が5年経ったケースでは、婚姻期間に比べて別居期間が長く、婚姻関係が結婚早々に破綻した、と推認されるでしょう。一方で、夫婦が結婚後30年経ってから別居を始めたケースでは、婚姻期間1年に対する別居期間5年のケースほど、別居期間が「長い」とは言えません。婚姻関係の破綻が認められるためには、5年よりも多くの年数が必要になる場合もあるのです。
また、別居中に定期的に交流していたり、夕食は一緒にとっていて休日にも出かける、といった関係だと、単に別居しているだけで夫婦としての関係性が継続している、とみなされることになるでしょう。
婚姻関係が破綻している別居と認められるためには、5年を目安とした長い年数別居しており、別居中は配偶者と一切交流がないことが求められます。
離婚を前提とした別居で、離婚協議や離婚調停、離婚裁判をしている場合
別居中の浮気・不倫があっても慰謝料が発生しない可能性があるケースとして、別居自体が離婚を前提としているケースが挙げられます。
このケースでは、夫婦間で離婚の意思が明確になっており、客観的にも別居が離婚することを前提とした準備段階として認識されている状況を指します。
具体的には、夫婦が離婚に向けて話し合いや調停の手続きを進めていたり、離婚裁判が進行中している場合が該当します。このようなケースでは、夫婦関係は事実上終了しているとみなされるため、別居中に夫婦の一方が他の人と肉体関係を持ったとしても、その不貞は婚姻関係の破綻を引き起こしたわけではなく、既に破綻していた夫婦関係に影響を与えたとは認められにくいためです。
ただし、離婚調停や離婚裁判をしていれば、別居中に浮気をしても絶対に慰謝料を請求されないというわけではありません。
離婚することのきっかけが、別居開始前に発覚した不貞であって、その不貞が別居中も継続していた、というような事情がある場合には、不貞が離婚原因となるため、慰謝料が発生すると考えられます。
夫婦の婚姻関係が破綻していると言えないケースは?
以上の通り、配偶者が浮気をする前から婚姻関係が既に破綻していた場合には、別居中の浮気・不倫によって慰謝料は発生しません。反対に、浮気や不倫をする前に婚姻関係が破綻していなかった場合は、別居中の浮気や不倫は法律上の「不貞」行為として、離婚理由や慰謝料請求の原因となります。
別居期間が短いケース
別居期間が短い場合、婚姻関係がまだ修復可能であると考えられることが多く、夫婦が再び一緒に生活を始める可能性が高いとされます。
たとえば、夫婦が些細な問題で一時的に距離を置くために別居を始めたが、別居期間が半年程と短い場合、この別居中に一方が配偶者以外の人と浮気・不倫をすると、それは夫婦関係の修復を妨げる行為とみなされることになり、慰謝料が発生することになるでしょう。
なお、具体的に別居期間が何年かは、同居期間の年数にもよるため個々の場合で異なりますが、前述した通り、婚姻関係の破綻が認められる別居期間は一般的に5年なので、5年がひとつの目安となります。
夫婦関係の改善を目的とした一時的な別居のケース
この場合、夫婦が関係を修復しようという共通の意志を持って、一時的に別居を選択していることになります。別居の目的は、問題を解決するために、お互いに距離を置くことで冷静になれる時間と空間を確保することにあります。一時的な別居を想定しているため、再び同居生活を再開させることが前提です。
このような状況で、一方が別居中に浮気・不倫をしてしまうと、夫婦関係の修復に向けた努力を無にし、もう一方の配偶者に深刻な精神的苦痛を与えることになります。
離婚する意思もなく、夫婦としての生活をやり直す意思に基づいた別居ですから、この別居中の浮気や不倫は不貞行為とみなされ、離婚の理由になったり、慰謝料を請求されることにもなります。
たとえば、東京地方裁判所平成21年6月4日は、「夫と妻との間の夫婦生活にやや円滑さを欠くことがあったことは否めないが、両者間で真剣に離婚に向けた話合いが行われた事実はなく、妻と夫とが別居するに至ったのも、妻及び夫の両家の協議の上、両名に冷却期間を置いた方がよいとの判断からであって、離婚を前提にしたものではなかったものと認められ」「いまだ妻と夫との婚姻関係が破綻していたものと認めることはできない。」旨の判示をしています。
単身赴任や里帰りなどが原因の別居のケース
別居をする理由は、離婚を前提としたものや、夫婦関係の修復だけではありません。単身赴任や両親の介護、学校の都合、実家での里帰り出産など、やむを得ない事情により別居することも多いです。
こうした事情によって始める別居は、婚姻関係の破綻とは無関係なものであり、仕事の都合などといった外的要因から、夫婦が離れて暮らすことを余儀なくされたものです。
たとえば、東京地方裁判所平成20年12月26日は、「妻はいわゆる里帰り出産をしたものと認められ、妻が実家での滞在を始めた時点で、夫との婚姻関係が破綻していなかったことは明らかである。」旨の判示をしています。
そのため、このような事情による別居中に、一方が配偶者以外の人と浮気・不倫をすると、別居中の浮気や不倫が原因で婚姻関係を破綻させるに至ったとみなされ、慰謝料が発生することになります。
別居期間は長いが、互いに離婚意思はなく交流もしているケース
別居期間が長いものの、互いに離婚の意思がなく、交流も継続しているケースでは、別居中の浮気・不倫が発生した場合に慰謝料が発生する可能性があります。
このような状況では、夫婦が物理的には離れて暮らしているものの、心理的な絆や婚姻関係を維持しようという意思が引き続き存在しています。
たとえば、夫と妻がそれぞれ仕事のために東京と大阪で暮らしていて週末だけ会うような、別居婚といったスタイルの夫婦が考えられます。
この場合、夫にも妻にも離婚をする意思はなく、別居期間が長いとはいっても、何か離婚に向けて具体的な行動をしているわけでもありません。そのため、こうした別居中に浮気や不倫をすると、婚姻関係が破綻していいない別居中に不貞行為をしたとみなされ、慰謝料を請求される可能性があります。
夫婦の一方が勝手に別居を始めたケース
夫婦の一方が勝手に別居を始めたケースでは、別居中の浮気・不倫が発生した場合に慰謝料が発生する可能性があります。
こうした別居は、残された配偶者には離婚や別居をする意思はないため、夫婦がお互いに離婚する意思があるとは言えず、婚姻関係が破綻しているとは言えない可能性が高いです。そのため、夫婦の一方が勝手に始めた別居中に浮気や不倫をすると、離婚理由にもなる不貞行為に該当し、慰謝料が発生することになりかねません。
また、配偶者の一方が他方に無断で勝手に別居を始めた場合、浮気や不倫をしていなくても、別居すること自体が悪意の遺棄(民法第770条第1項第2号)にも該当する可能性があります。
別居中浮気をした妻や夫に慰謝料請求する方法
別居中に浮気や不倫をした配偶者に慰謝料を請求する方法として、主に次の3つの方法が考えられます。
- 当事者間で話し合う。
- 弁護士に依頼して、示談交渉を行う。
- 調停や裁判などを申し立てる。
当事者間で話し合う
慰謝料の請求方法の一つとして、夫婦で話し合う方法があります。
別居中の浮気の事実を確認した上で、配偶者が別居中に浮気をしたことを認めれば、慰謝料についての話し合いがスムーズに進むことが期待できますが、別居中の浮気を否認する場合は協議が難航する可能性があります。
そのため、別居中の浮気の証拠を事前に準備しておくと良いでしょう。
また、相手が別居中の浮気を認め、慰謝料について金額や支払い方法に合意した場合でも、口約束のみでは後から慰謝料の支払いを拒否される恐れがあるため、話し合いを録音しておいたり、慰謝料について合意内容を離婚協議書や離婚公正証書に明記しておくなど、客観的な証拠を残すことが推奨されます。
弁護士に依頼して、示談交渉を行う
別居中の浮気について話し合いが進まない場合、弁護士に依頼して示談交渉を進めることができます。弁護士は法的な証拠収集のアドバイスを提供し、代理として示談交渉を行います。
交渉は一般的に、内容証明郵便を使って離婚や慰謝料を請求することから始まります。内容証明郵便とは、郵便局が内容を証明してくれる制度のことです。郵便局と自分の手元に相手に送った文書と全く同じ内容の写しが控えられるため、後から相手に送った文書内容を証明することができます。
内容証明郵便に対する相手の反応に応じて、慰謝料の条件を詰めていきます。別居中の浮気についての慰謝料請求に相手が合意したら、その合意内容に基づいて弁護士が合意書を作成します。
また、不倫相手についても、不倫相手の情報がわからない場合などに、弁護士は、職権によって「戸籍や住民票の職務上請求」や「弁護士会照会」という方法で、不倫相手について調べられる可能性があります。
調停や裁判などを申し立てる
話し合いがまとまらない場合、弁護士に依頼して調停や裁判を申し立てて、別居中の浮気の慰謝料を請求する方法があります。
離婚の請求と同時に別居中の浮気の慰謝料も請求する場合、まず家庭裁判所で夫婦関係調整調停を申し立てます。調停では、慰謝料のほかにも離婚に関するさまざまな条件を話し合い、調停で合意に至れば離婚が成立します。
調停で合意できない場合は、裁判に移行します。裁判では、法律に基づいて審理が行われ、別居中の浮気が離婚事由として認められれば、離婚と慰謝料の請求が認められる可能性が高まります。
別居中の浮気を証明する証拠には、次のようなものがあります。
- ホテルや不倫相手の家に出入りしている写真や動画
- ホテルの領収書やクレジットカードの利用明細書
- 配偶者と不倫相手のやり取りの記録
- 不倫相手との肉体関係を認める音声や動画、LINEやSNSなどの記録
裁判の終結方法としては、裁判官によって別居中の浮気を原因とする慰謝料請求を認める旨の判決が出されるか、裁判の途中で別居中の浮気についての慰謝料を支払うことに当事者双方が合意して和解する方法があります。
不倫の証拠や慰謝料の相場の金額は?
配偶者の別居中の浮気に対する慰謝料の金額について、はっきりとした相場はありません。
別居中の浮気の慰謝料の金額は、一般的に、浮気の内容や期間、浮気をされた側が受けた精神的苦痛の程度、浮気後の離婚や夫婦関係の破綻の程度、請求される側の経済状況など、様々な事情を総合的に考慮して決定されます。
慰謝料は、被害者の精神的苦痛の程度によって決まるため、明確な計算方法がなく、個別の事情によって金額も変わるためです。
なお、過去の裁判例や事例を参考にすると、配偶者の別居中の浮気による慰謝料の相場は、おおよそ50万円から300万円程度となっているようです。
別居中の浮気の慰謝料は、その後婚姻関係が破綻し、離婚に至ったかどうかによっても変動します。
別居中の浮気が原因で婚姻関係が破綻し、夫婦が離婚した場合、慰謝料請求の相場は100万円~300万円程になります。
別居中の浮気が原因で、離婚には至らないけれど夫婦が別居を継続する場合は、100万円を超えるケースが多いです。
そして、別居中の浮気が発覚しても夫婦が離婚せず、同居して婚姻生活を継続する場合、慰謝料の相場は低くなる傾向にあり、50万円~100万円程度となることが多いです。
別居中に浮気をして慰謝料請求された時の対処法
最後に、別居中に浮気や不貞をしてしまい、配偶者から慰謝料を請求された場合の対処法についても簡単に解説させていただきます。
1.請求内容や事実関係を確認し、冷静に対応する
別居中の浮気の慰謝料を請求された場合、請求内容や事実関係を冷静に確認しましょう。浮気の相手、期間、具体的な行動など、請求の根拠となる浮気の詳細を検証し、事実と異なる主張がないか確かめます。
また、請求されている慰謝料の金額が妥当かどうかも検討する必要があります。
前述した通り、別居中の浮気の慰謝料の相場の金額は、50万円~300万円程度です。
相場の金額よりも請求の金額の方が大幅に高額であれば、交渉して減額する余地がありますし、相場の金額から考えて妥当だと判断できるのであれば、早期に解決できるよう、早めに交渉を進めることも考えられます。
2.相手が所持する証拠の有無や内容の確認
配偶者から慰謝料請求された際は、相手が持っている証拠の詳細を把握することが重要です。
別居中の浮気があったことを証明する証拠としては、浮気相手とのLINEやメール、ホテルに出入りする写真、動画、クレジットカードの利用明細などがあります。
別居中の浮気の慰謝料を請求する側が、これらの証拠を使って別居中に浮気があったことを証明しなければならないため、慰謝料を請求された時には、相手が主張を裏付ける証拠を所持しているのか確認し、その内容も把握しておきたいところです。
3.請求が配偶者本人からか代理人(弁護士)からかを確認する
配偶者から慰謝料請求された場合、請求が配偶者本人からなのか、代理人弁護士からなのかを確認することが重要です。請求書や通知書に記載されている送り主の情報を確認し、必要に応じて連絡を取って請求の正確な経路を把握しましょう。
代理人弁護士からの請求の場合、法的な請求に必要な部分を中心に主張がまとめられていることが多く、内容が整理されている可能性が高いです。法律の専門家である弁護士に、自分ひとりで対応するのは不利に働く可能性が高いので、自分も弁護士に依頼することを検討すべきでしょう。
一方、配偶者本人から直接請求される場合は、法的な要件が不十分であったり、要求が整理されていないこともあります。このような場合、配偶者が実際に何を求めているのかを丁寧に把握することが重要です。
内容証明郵便で請求が届いた場合や、直接電話で請求された場合は、その場での回答を保留して、適切な対応を検討しましょう。
4.弁護士に相談する
配偶者から別居中の浮気に対する慰謝料を請求された場合、自分で対応するのは難しいことが多いです。慰謝料の額や支払い方法、離婚の条件など、交渉するべき事項が多くあります。配偶者の主張や証拠に対して、自分の立場や反論を正しく伝える必要がありますし、相手方は弁護士を代理人として慰謝料を請求してくることが少なくありません。
そこで、配偶者から別居中の浮気に対する慰謝料を請求された場合には、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士は、法律の知識や経験を持っているので、依頼者の利益を守るために、最適な対応策を提案してくれます。弁護士に相談することで、別居中の浮気の慰謝料についての交渉をスムーズに進めることができるでしょう。
配偶者から別居中の浮気の慰謝料を請求された時には、早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。
Q&A
Q1.別居中に妻や夫以外の人と浮気をするのは違法ですか?
別居中に妻や夫以外の男女と浮気をすることは、刑法上の犯罪行為には該当しませんが、民事上の「不貞行為」に該当することがあります。
この場合、離婚裁判で別居中の浮気を理由に離婚が認められることになったり、別居中の浮気を原因とした慰謝料の請求が認められることになるため、民法上は違法な不貞行為に当たる可能性があります。
Q2.別居中の浮気や不倫は、どのような場合にも慰謝料が発生するのでしょうか?
別居中の浮気や不倫について、慰謝料が発生しない場合もあります。たとえば、次のような場合には、既に婚姻関係が破綻しているとみなされ、別居中の浮気や不倫を原因とした慰謝料は発生しない可能性があります。
- 別居期間が数年に渡って続いていて、その別居期間中に夫婦間で交流することがほとんどなかったような場合。
- 夫婦が離婚に向けて話し合いや調停の手続きを進めていたり、離婚裁判が進行中しているなど、別居が離婚を前提としている場合。
Q3.別居中の浮気や不倫で、慰謝料が発生するケースはどのような場合が考えられますか?
別居中の浮気や不倫について、慰謝料が発生するケースには、次のような場合があります。
- 別居期間が短く、婚姻関係が修復可能で夫婦が再び同居する可能性がある場合。
- 夫婦関係の改善を目的とした一時的な別居。
- 単身赴任や里帰りなどが原因の別居。
- 別居期間は長いが、互いに離婚意思はなく交流もしている。
- 夫婦の一方が勝手に別居を始め、他方は離婚に同意していない場合。
不貞行為のお悩みは弁護士にご相談ください
この記事では、別居中の浮気についての法的な知識を弁護士が解説いたしました。
別居中に、配偶者以外の異性と恋愛関係になることについて、別居しているのだから問題ない、と思っている人もいますが、別居中の浮気は民事上、慰謝料を請求される原因になってしまいます。
また、別居中に配偶者以外の人と恋愛関係になることに関し、全てが法定離婚事由である不貞行為に該当するわけではありません。手を繋いだ、デートをした、という程度では、不貞行為として認められない可能性が高いでしょう。
このように、別居中の浮気を理由に慰謝料を請求する場合は、自分が「不貞」と認識している行為と、法律上「不貞」と考えられている行為が異なることが少なくないため、慎重に判断することが求められます。
別居中の配偶者の浮気についてのお悩みや、別居中の浮気を理由に慰謝料を請求されていることについてのお悩みなどがありましたら、弁護士にお早めにご相談ください。
当法律事務所では、法律相談を初回無料としておりますので、ぜひお気軽にお問合せいただければと思います。
この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。