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別居中にしてはいけないこと|浮気や過剰な連絡はNG?注意点を解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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夫婦仲が悪化したとき、関係を修復するため、あるいは離婚に向けて進むために、配偶者と別居する場合があります。
どちらの場合にしろ、別居中もまだ夫婦は婚姻関係にあるわけですから、してはいけないことがあります。

この記事では、別居中にしてはいけないことについて、なぜしてはいけないのか、してしまった場合にどういったリスクがあるのかなど、別居中に注意すべきことを弁護士が解説いたします。

目次

夫婦が別居中してはいけないこと①夫や妻以外の異性と性的関係を持つ

一つ目にご説明させていただく「夫婦が別居中してはいけないこと」は、夫や妻以外の異性と性的関係を持つことになります。
これには前提として、夫婦の「貞操義務」が関係しているため、まずは夫婦の貞操義務について簡単に解説いたします。

法律上の夫婦には貞操義務がある

法律上、婚姻関係にある夫婦には、貞操義務があります。
貞操義務とは、配偶者以外の人と性的な関係になってはいけない、という義務のことです。貞操義務は、民法などの条文に直接規定されているものではありませんが、日本においては下記の通り、重婚が禁止されていることや、夫婦は同居し、協力し合う扶助の義務があること(民法第752条)、また、不貞行為が離婚の原因となり得る(民法第770条第1項)ことから、婚姻の本質に基づき、夫婦は互いに貞操義務を有すると解釈されています。

(重婚の禁止)
民法第732条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

(同居、協力及び扶助の義務)
民法第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

(裁判上の離婚)
民法第770条第1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

そのため、夫婦の一方が配偶者以外の第三者と性的関係を持った場合、不法行為(民法第709条)に該当することになり、不貞をした側は、配偶者に対し不貞慰謝料を支払うことになります。
なぜならば、夫婦の一方が不貞行為をしたことによって、夫婦関係が破綻したら、「平穏な婚姻生活」という守られるべき権利が不貞行為によって侵害され、精神的な損害を被った、と考えられるからです。

別居中の夫婦にも貞操義務はあるの?

さて、離婚に向けて別居していたり、一時的に別居しているような場合があるかと思いますが、離婚届を提出していない以上、別居していても法律上は夫婦です。
こうした別居中の夫婦についても、貞操義務は生じるのでしょうか。

この点、ケースバイケースにはなりますが、別居中の夫婦であっても、原則として貞操義務があると考えられています。
そのため、別居中の夫婦であっても、夫や妻以外の異性と性的関係を持つことは不貞になってしまう可能性があるのです。
ですので、法律上は夫婦である以上、別居中であっても異性と性的関係を持ったりしてはいけません。

なお、別居中の夫婦について、既に「平穏な婚姻生活」という守られるべき権利が存在しない場合は、夫や妻以外の異性と性的関係を持っても、貞操義務違反ではないとされる場合もあります。
例えば、長期間にわたる別居生活をしており、離婚に向けて具体的に協議が進んでいるような場合です。この場合は、別居中の夫婦において、保護されるべき「平穏な婚姻生活」という権利が既に存在しないため、不貞行為によって夫婦関係が破綻したわけではないのだから、権利の侵害は発生しておらず、貞操義務違反とはならないと考えられるのです。

もっとも、裁判上、婚姻関係が破綻していたと認められるハードルは極めて高いと考えられていることから、別居後であっても不貞をしない方がよいといえるでしょう。

別居中に貞操義務違反になるような5つのケース

それでは反対に、別居中の夫婦が貞操義務違反になるような場合は、どういった別居状態なのでしょうか。貞操義務違反となるような別居のケースは、主に次の5つの場合が考えられます。

  1. 出張や単身赴任、入院や出産など、正当・合理的な理由のある別居
  2. 相手の一方的な別居
  3. 夫婦関係を修復するための別居
  4. 別居期間が短い
  5. 別居中、離婚について双方が合意していない場合

1.出張や単身赴任、入院や出産など、正当・合理的な理由のある別居

出張や単身赴任、入院や出産などの正当な理由で別居している場合、夫婦は物理的には別居中であっても、法律上の夫婦関係は破綻していないと考えられます。
そのため、例えば妻が出産のために里帰りしており、夫と妻が別居している場合に、夫が妻以外の異性と性的関係を持つことになれば、夫は貞操義務違反となり、妻から不貞行為による損害賠償として慰謝料を請求されることになりかねないのです。

2.相手が一方的に別居を始めた

夫婦の一方にまだ婚姻を継続する意思がある以上、婚姻関係が破綻しているとは言えませんから、配偶者が納得していないのに勝手に別居を始め、その別居中に夫や妻以外の異性と性的関係を持てば、貞操義務違反となりえます。

3.夫婦関係を修復するための別居

夫婦喧嘩が連日絶えなくて、夫や妻と同居しているのがつらい・・・と別居を始める場合もあるかと思います。こういった場合、離婚する気まではなく、夫婦関係を修復してやり直すことを目的として別居することもあるでしょう。
関係の改善や再構築を目指しているような状況で浮気や不倫をしてしまうと、婚姻関係が破綻していないのに不貞行為を行ったとして、貞操義務に反することになります。
夫婦の関係修復のための別居は、夫と妻が貞操義務を守り、お互いに誠実でなければなりません。したがって、関係修復のための別居中に他の異性との性的関係を持つことは、夫婦関係の信頼を深刻に損なう行為であって、慰謝料を請求される可能性もあるのです。

4.別居期間が短い

別居期間が長いと、事実上夫婦関係が破綻していると認められ、この別居中の浮気や不倫が貞操義務違反にならない場合があることは前述した通りです。
したがって、別居期間が短い場合は、夫婦関係が破綻しているとまでは認められずに、夫婦の婚姻関係は継続していると考えられます。
そのため、別居を始めて数ヶ月しか経っていないような場合に他の異性と性的関係になってしまうと、貞操義務違反になってしまいかねません。

5.別居中、離婚について双方が合意していない場合

離婚協議や離婚調停などを進めていく際、夫や妻と別居する人は少なくありません。
この状況では、夫婦関係はまだ法的に有効で、夫婦は互いに忠実であるべきという義務が継続しています。離婚に向けた合意がない限り、配偶者以外の異性と性的関係を持つことは、貞操義務違反とみなされることになるでしょう。

夫婦が別居中してはいけないこと②しつこく連絡する

離婚に向けて、あるいは夫婦関係の修復に向けて別居中の場合、相手と連絡を取りたい時や、連絡を取らなければならない時があるかと思います。
もちろん、必要な連絡であれば別居中も連絡を取ることは必要ですし、例えば離婚協議中の相手が連絡が欲しい、と言ってくるのであれば、別居中に連絡を取っても問題ないでしょう。

しかし、別居中に連絡を取ることが自分にとって不利に働いたり、場合によっては法律に違反する行為として懲役や罰金が科されることになってしまうこともありますので、別居中の連絡には注意が必要です。
以下に、別居中に連絡をしてはいけない主なケースをご紹介いたします。

相手から連絡を控えるように言われている場合

相手から連絡を控えるように要求されている場合は、その要求を尊重し、必要最低限の連絡で済ませるか、相手からの連絡を待つようにしましょう。
しつこく連絡を取ろうとすると、場合によってはストーカー規制法に抵触する可能性もありますし、かえって離婚の話し合いを冷静に進めていくことが難しくなってしまうことがあります。

また、電話やメール、手紙、SNSなど、昨今の連絡手段は多種多様です。この点についても、連絡を取る場合はどのように連絡を取ればいいのか、別居前に相手と意見をすり合わせておくことをおすすめいたします。
電話が嫌だという相手に対し電話で連絡しては、余計なストレスを与えてしまい、夫婦関係を修復するために別居したのに、関係の修復がより難しくなってしまう恐れがあります。

相手が弁護士に依頼している場合

別居中、相手が弁護士に離婚協議などの代理人として弁護士を立てた場合、弁護士から相手に直接連絡することを禁止してくる場合があります。相手側としては、弁護士を窓口にすることで、直接連絡を取る時間や手間を省け、精神的負荷も軽減できます。また、法律の専門家である弁護士が窓口になることで、離婚協議や離婚調停を有利に進めていくことを期待しているためです。

しかし、いくら相手から弁護士を通してほしいと言われても、直接話したいと思う方もいらっしゃるでしょう。ですが、次の理由から、弁護士を無視して相手に直接連絡を入れることはおすすめできません。
弁護士を立てた相手に直接連絡を取ることは、相手に多大なストレスや嫌悪感を与えますし、連絡を取ったこと自体が証拠として保全され、自分にとって不利に働く可能性があります。

さらに、相手の家に押しかけて対面で話そうとすれば、住居侵入罪(刑法第130条)などに該当してしまう恐れがあります。
関係の修復にしろ、離婚協議や離婚調停にしろ、自分の立場を不利なものにしないためにも、相手が弁護士を立てた場合は、直接の連絡をやめて弁護士を通すようにしましょう。

法的な制約や禁止命令がある場合

夫や妻のDVやモラハラを原因として離婚協議を進めているような場合に、相手と直接連絡を取ることが制限されていることがあります。
例えば、「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」や「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」に基づき、裁判所が接近禁止命令や退去命令といった保護命令を発令している場合があります。
接近禁止命令とは、裁判所が特定の個人に対して、6ヶ月間、別の個人やその住居、職場といった特定の場所に近づくことを禁止する命令です(DV防止法第10条第1項1号)。

退去命令とは、夫と妻とが同居している場合に、一方が住居を引っ越す準備等をするために、他方に対して2ヶ月間住居から出て行くことを命じ、かつその期間中、その住居の付近をうろつくことを禁止する命令です(DV防止法第10条第1項2号)。

(保護命令)
DV防止法第10条第1項 被害者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫(被害者の生命又は身体に対し害を加える旨を告知してする脅迫をいう。以下この章において同じ。)を受けた者に限る。以下この章において同じ。)が、配偶者からの身体に対する暴力を受けた者である場合にあっては配偶者からの更なる身体に対する暴力(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。第十二条第一項第二号において同じ。)により、配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた者である場合にあっては配偶者から受ける身体に対する暴力(配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。同号において同じ。)により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、当該配偶者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者。以下この条、同項第三号及び第四号並びに第十八条第一項において同じ。)に対し、次の各号に掲げる事項を命ずるものとする。ただし、第二号に掲げる事項については、申立ての時において被害者及び当該配偶者が生活の本拠を共にする場合に限る。
一 命令の効力が生じた日から起算して六月間、被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この号において同じ。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないこと。
二 命令の効力が生じた日から起算して二月間、被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならないこと。

上記の接近禁止命令に付随して、夫や妻の子に対する接近禁止命令が発令されることもあれば、電話等禁止命令が発令されることもあります。
そして、こうした保護命令に違反して、相手に連絡を取ったり接触しようとした場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられることになってしまいます(DV防止法第29条)。

(罰則)
DV防止法第29条 保護命令(前条において読み替えて準用する第十条第一項から第四項までの規定によるものを含む。次条において同じ。)に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

以上のような場合以外にも、例えば別居直後であれば、お互いに冷静になる冷却期間として、連絡を取らない方が良いかもしれません。
相手から連絡がなくて不安になることもあるでしょうが、相手も別居中に冷静に考えを整理する時間を必要としています。
必要以上の連絡は控えて、それでも連絡したいことがある、というような時には、まずは弁護士にご相談いただければと思います。

夫婦が別居中してはいけないこと③その他

別居中にしてはいけないこととして、夫や妻以外の異性と性的関係を持つことと、しつこく別居中の配偶者に対して連絡を取ってしまうことをご紹介しました。
これら2つのしてはいけないこと以外にも、次のような別居中にしてはいけないことがあります。

生活費用を渡さない

離婚を前提として夫や妻と別居中であっても、法律上の婚姻関係が継続している以上、夫婦には扶助義務があるため(民法第752条)、収入の多い方が少ない方(一般的には夫から妻)に対して生活費用を渡さなければいけないとされています。

(同居、協力及び扶助の義務)
民法第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

この別居中の生活費用のことを婚姻費用といいますが、婚姻費用を渡したくないと拒否したとしても、婚姻費用分担調停を申立てられて、婚姻費用を請求される可能性もあるのです。
調停手続きが始まると、時間も手間も費用もかかってしまい、婚姻費用だけ支払うよりもかえってマイナスになってしまいます。

別居中の相手の生活費用については、別居前に金額や支払い方法について話し合い、支払うように心がけましょう。
なお、別居中の生活費用に関しての詳細は、こちらの関連記事をぜひご参照ください。
[別居中の生活費を請求したい!相場の金額はいくら?請求方法は?]

離婚や関係改善の話し合いを拒否する

別居は、夫婦関係を修復するためのきっかけとなる場合もあります。また、離婚について揉めている場合に、離婚条件や方法などについて冷静に話し合うためにも別居は有効です。そのため、こうした関係改善や離婚協議の話し合いを拒否してしまうと、かえって自分の立場を不利にすることにつながってしまいます。

離婚や関係改善の話し合いを拒否することは、相手に対する尊重や信頼の欠如を示すことになります。自分の感情や考えを相手に伝える機会を失うことになってしまうため、自分のニーズや要望を満たすことができなくなりますし、相手の理解や共感を得ることもできなくなる可能性があります 。

さらに、別居の目的や期間を明確にする機会も失い、別居の効果や結果の評価、別居の終了や再開の条件を決定することができなくなる可能性があります。
このように、別居中に離婚や関係改善の話し合いを避けることは、関係のさらなる悪化や離婚の確率を高めることになりかねません。「顔を合わせたくない」などの一時的な感情から、話し合いを避けることをしてはいけません。

別居中は、相手との対話や交渉を維持することが重要です。どうしても直接話し合うことに抵抗がある場合は、弁護士にご相談いただければと思います。

同意のない一方的な別居NG!別居前にしてはいけないことに注意

別居中にしてはいけないことについてご説明いたしましたが、別居前にもしてはいけないことが存在します。以下に簡単にご説明いたしますので、別居前にしてはいけないことに注意してください。

別居前にしてはいけない4つのこと

別居中にしてはいけないことだけでなく、別居を始める際にもしてはいけないことがあるので、注意しましょう。

1.正当な理由なく一方的な別居をしてはいけない

 

別居中にしてはいけないこと|浮気や過剰な連絡はNG?注意点を解説

 

別居前にしてはいけないことのひとつ目は、一方的に別居を始めることです。
夫婦には同居の義務があるため(民法第752条)、相手に何も告げずに勝手に家を出ていくことは、同居の義務を一方的に放棄したとみなされてしまいます。正当な理由なく同居を拒否した場合、「悪意の遺棄」と判断されかねません。
悪意の遺棄とは、正当な理由なく共同生活をしない、協力しない、支援しないことを指します。一方的な別居が悪意の遺棄であるとみなされると、裁判での離婚の原因(民法第770条1項2号)になる可能性があり、慰謝料請求の対象になることもあります。

そのため、別居を始める際には悪意の遺棄とならないよう、一方的に家を出て行ったりしてはいけません。また、別居の理由や目的については必ず伝えましょう。

ただし、別居の理由が相手のDVやモラハラにある場合などは、相手の暴力や精神的虐待の行為が婚姻を継続し難い重大な事由とみなされるため、相手の同意なく別居を始めても、離婚に不利になることや、慰謝料を請求されることはないでしょう。DVやモラハラの場合は、心身の安全の確保を優先して別居に踏み切ることを推奨いたします。

2.相手に連絡先や別居先を知らせない

離婚協議を進める際は、通常、相手方との連絡が必要ですので、電話番号やメールアドレスを伝えることが望ましいです。引っ越し先の住所も、問題がなければ教えても良いでしょう。

しかし、相手が押し掛ける恐れがある場合や、執拗に電話をかけてくる可能性がある場合は、住所や電話番号を伝えるべきではない時もあります。特に、相手のDVやモラハラによって別居する場合は、引っ越し先や連絡先を教えない方が良いでしょう。

ただし、ケースによっては、別居中の住所は教えないが、SNSの連絡先だけは教えておく、という場合もあります。連絡手段を全て絶ってしまうと、連絡できない状況に相手が感情的になり、強硬手段に出る恐れがあるためです。
別居前に、連絡先や引っ越し先の住所を教えるべきかどうか、お悩みがあれば弁護士にご相談いただければと思います。

3.別居時に相手の同意なく財産を持ち出すことをしてはいけない

別居前の婚姻期間中に夫婦が築いた財産を共有財産といい、離婚時の財産分与の対象財産になります。
そのため、別居時に相手の同意なく共有財産を持ち出してしまうと、後に法的トラブルに発展しかねません。また、相手も「夫婦の財産=自分にも権利がある」と思っているため、相手の気分を害し、離婚協議や関係改善のための話し合いがうまく進まなくなってしまう可能性もあります。
スムーズに離婚手続き等を進めていくためにも、夫婦の共有財産を無断で持ち出すことはしてはいけないと留意しておいてください。

4.別居時に相手の同意なく子供を連れ出してはいけない

結婚している夫婦は、子供について共同で親権を持っています。つまり別居中であっても、夫婦は子供についての親権や監護権を共同で有すことになります。
相手の同意なく子供を連れ出す行為は、未成年者略取罪(刑法第224条)に該当する可能性があり、3ヶ月以上7年以下の懲役に処される可能性があります。

(未成年者略取及び誘拐)
刑法第224条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

また、こういったトラブルを起こしてしまうと、後に親権争いが生じた場合、子供を連れ出した親の親権者としての適格性が低く見られることがあります。
さらに、相手方の同意なく子供を連れ出し片親と引き離すことは、子供に悪影響を及ぼす恐れがあります。子供の健全な成長のためにも、相手と話し合い、子供の意見も尊重することが大切です。

Q&A

Q1.別居中にしてはいけないことは何がありますか?

  • 別居中にしてはいけないことには、主に次のようなことがあります。
  • 夫や妻以外の異性と性的関係を持つこと。
  • しつこく連絡したり、保護命令に違反して接触しようとすること。
  • 生活費用を渡さないこと。
  • 離婚協議や夫婦関係改善のための話し合いを正当な理由もなく拒否すること。

Q2.別居中でも貞操義務違反になってしまうケースは、例えば何がありますか?

貞操義務違反となってしまうような別居のケースは、主に次の5つの場合が挙げられます。

  1. 出張や単身赴任、入院や出産など、正当・合理的な理由のある別居
  2. 相手の一方的な別居
  3. 夫婦関係を修復するための別居
  4. 別居期間が短い
  5. 別居中、離婚について双方が合意していない場合

Q3.別居中に連絡を取ってはいけないのでしょうか?

離婚や夫婦関係の修復を目指す別居中には、必要な場合は相手と連絡を取るべきですが、個々の状況によっては注意が必要です。
相手から連絡を控えるよう要求されている場合や、相手が弁護士を通じて対応を求めている場合は、直接連絡を避けるべきです。

また、法的な制約や接近禁止命令がある場合、特にDVやモラハラが関係する場合は、相手との直接連絡を制限されていることがあります。これらのケースでは、違反すると警察沙汰になったり、法的な罰則が科せられる可能性があります。

離婚を検討している場合は弁護士にご相談ください

離婚や夫婦仲の修復のために、別居をする夫婦は少なくありません。
しかし、別居開始時や別居中にしてはいけないことをしてしまうと、離婚協議や離婚調停で自分の立場が不利になってしまったり、慰謝料を請求されるようなことにもなってしまいかねません。
別居を検討している方、もしくは既に別居中の方にとって、本記事の弁護士の解説がご参考となりましたら幸いです。

また、別居中してはいけないことや、別居前にしてはいけないことについて、その対応にお悩みがありましたら、ぜひ当法律事務所の弁護士にご相談いただければと思います。
当法律事務所では、弁護士による初回相談を無料とさせていただいておりますので、お気軽にお問合せください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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