離婚しないで別居する理由は何?メリットとデメリットを解説
夫婦関係に亀裂が生じてストレスを感じた時、離婚を選択することが一般的です。実際、日本では毎年3組の夫婦のうち1組が離婚していると言われており、夫婦関係を解消する手段として離婚は珍しいものではありません。
ですが、離婚は生活環境が大きく変わり、自分だけでなく子供にも大きな影響を与えることになる選択肢です。そのため、もし離婚することに少しでも迷いがあったり、その時の感情で離婚したいと思ったりした時には、いきなり離婚しないで別居することを検討すべきです。
そこでこの記事では、離婚しないで別居する夫婦が、なぜ離婚しないかの理由について詳しく見ていきたいと思います。
離婚しないで別居することのメリットや、離婚しないで別居することのデメリットについても、具体的に解説させていただきます。
本記事がご参考となりましたら幸いです。
目次
離婚しないで別居するのは何のため?生活費や子供が理由?
離婚しないで別居する夫婦は、どういった理由から離婚しないで別居することを選ぶのでしょうか。別居するのに法律上夫婦であり続ける理由について、以下の9つの理由をご紹介いたします。
- 子供のため
- 離婚すると生活費に困るため
- 一方が離婚に反対しているため
- 離婚条件について合意できないため
- 夫婦関係の再構築としての別居であるため
- 離婚にともなう手続きが面倒なため
- 宗教的・文化的に離婚しづらいため
- 世間体が気になるため
- 夫婦の形として別居婚を選んだため
離婚しないで別居する理由1.子供のため
夫婦が離婚せずに別居を選択する主な理由の一つは、子供のためです。
離婚は子供にとって大きな影響を与える可能性があり、心理的な安定や成長に悪影響を及ぼすことが懸念されます。特に、子供が敏感な時期にある場合や、学校生活において大切な時期を迎えている場合、親の離婚による環境の変化が子供の精神的な負担や学業の妨げとなることを避けたいと考える親も少なくありません。
そのため、夫婦は子供のために離婚しないで別居することによって、お互いに距離を置きつつも、子供の生活環境や養育を優先させようとするのです。
離婚しないで別居する理由2.離婚すると生活費に困るため
夫婦が離婚しないで別居を選択する理由の一つに、離婚後の生活費の問題が挙げられます。
離婚すると、それまで夫婦で共有していた家計が分離され、生活費が二重にかかるようになります。特に、夫婦の一方が専業主婦や低収入であったり、子供の養育費がかかる場合など、経済的に自立が難しい状況にある場合、離婚によって生活が苦しくなることが予想されます。
また、財産分与や慰謝料の支払いが生じることもあり、一方または双方の経済的負担が増加する可能性があります。
このような経済的な不安から、夫婦は離婚しないで別居することを選択し、夫婦の共有財産や収入を一定程度維持することで、生活費の負担を軽減しようとします。
別居によって、夫婦はお互いに距離を置きつつも、経済的な支援や家計の分担を続けることが可能となり、生活の安定を図ることが期待できるからです。特に子供がいる場合、子供の生活費や養育費を確保するために、離婚せずに別居する選択をする夫婦もいます。
このように、離婚により生じる生活費の問題を避けるために、夫婦が離婚しないで別居を選択することがあります。
離婚しないで別居する理由3.一方が離婚に反対しているため
夫婦が離婚せずに別居を選択する理由の一つとして、一方が離婚に反対している場合があります。夫婦の一方が離婚を望んでも、もう一方がそれに同意しないことで、離婚が成立しない状況が生じることがあります。
このような場合、夫婦は離婚しないで別居という形で、お互いに距離を置くことを選択することがあります。離婚しないで別居することによって、離婚を望む方は自由な生活を求めることができ、離婚に反対する一方は、すぐに離婚するということを避けることができます。
そのため、夫婦の一方が離婚に反対している場合は、離婚しないで別居という手段が取られることがあるのです。
離婚しないで別居する理由4.離婚条件について合意できないため
夫婦が離婚しないで別居することを選択する理由の一つに、夫婦の双方が離婚すること自体については合意しているものの、離婚条件について合意できないから、という理由があります。
離婚条件とは、財産分与、慰謝料、子供の親権や養育費など、離婚に際して決定しなければならない重要な事項を指します。これらの条件について夫婦双方の意見が対立し、合意に至らない場合、離婚が成立しないことがあります。
このような場合には、夫婦は離婚に向けた法的な手続きを進めることが困難になります。そのため、離婚しないで別居することを選択して、時間をかけて離婚条件について交渉を続けることになります。
離婚しないで別居をすることで、夫婦双方が冷静になり、落ち着いて離婚条件について話し合う機会を持つことができます。
離婚しないで別居する理由5.夫婦関係の再構築としての別居であるため
夫婦が離婚しないで別居を選択する理由の一つに、夫婦関係の再構築を目的とした別居があります。
夫婦関係に問題が生じた場合、すぐに離婚を選択するのではなく、一度距離を置いてお互いを見つめ直すために、離婚しないで別居する場合があります。
同居生活を続けていると、些細な不満や不平が蓄積して夫婦関係が深刻化しやすいですが、別居して物理的に距離を置くことで、夫婦仲が悪化するのを防止することが期待できます。
日常生活のストレスから解放され、冷静に自分たちの関係を見つめ直し、夫婦関係を修復する機会を持つため、離婚しないで別居することを選択する場合があるのです。
離婚しないで別居する理由6.離婚にともなう手続きが面倒なため
夫婦が離婚しないで別居を選択する理由の一つに、離婚にともなう手続きの煩雑さが挙げられます。
離婚は、離婚届の提出によって成立します。しかし通常はそれだけでは終わらず、財産分与、慰謝料、子供の親権や養育費といった多くの法的問題も解決する必要があります。また、話し合いで離婚できない場合には、裁判所での手続きに進むことになり、時間と労力や費用がかかることが多いです。
このような手続きの煩雑さから、夫婦は離婚しないで別居を選択することがあります。離婚しないで別居することで、夫婦は法的な手続きをせずに、お互いに距離を置くことができます。
また、別居中に、お互いの気持ちや今後の方向性をじっくり考え、離婚後の生活の準備を進める時間を持つことができ、必要に応じて後に離婚手続きを進めることも可能になります。
このように、離婚しないで別居を選択することは、夫婦にとって一時的な解決策となることがあるため、離婚しないで別居する夫婦がいるのです。
離婚しないで別居する理由7.宗教的・文化的に離婚しづらいため
夫婦が離婚しないで別居を選択する理由の一つに、宗教的または文化的な背景による離婚への抵抗感があります。
宗教や文化によっては、結婚は神聖なものと見なされ、離婚は倫理的または道徳的に認められない場合があります。特に、厳格な宗教観を持つコミュニティでは、離婚が社会的な不名誉とみなされることもあり、こうした場合、離婚を避ける傾向が強くなります。
このような背景から、夫婦は離婚しないで別居を選択することで、お互いに距離を置くことができる一方で、宗教的または文化的な規範に従うことができます。
離婚しないで別居を選択することは、宗教的または文化的な理由から離婚が困難な夫婦にとって、このように現実的な解決策となることがあるのです。
離婚しないで別居する理由8.世間体が気になるため
夫婦が離婚しないで別居を選択する理由の一つに、世間体への配慮があります。
特に、社会的な立場や評判を重視する場合、離婚は家族や親戚、職場や地域社会に対するイメージを損なうことにつながる可能性があります。
このような場合は、夫婦は離婚しないで別居を選択することで、表面上は家庭が維持されているように見せることができます。
お互いに距離を置きつつも、社会的な評判や家族のイメージを守るために、離婚しないで別居することを選ぶ場合も少なくありません。
離婚しないで別居する理由9.夫婦の形として別居婚を選んだため
そもそも、離婚を検討するほど夫婦仲は悪くないが、別居をしているという夫婦もいます。
夫婦が共働きで、同居するとそれぞれの職場への通勤が困難になってしまう場合などに、あえて別居生活を送りながら、法律上夫婦であることを選ぶことがあります。
こうした夫婦の関係を「別居婚」と言います。
このような夫婦関係は、お互いの自由や個性を尊重することを重視する場合に選択されることがあります。
別居婚は、従来の夫婦像にとらわれず、お互いのニーズや状況に合わせた柔軟な夫婦関係を築くことを可能にします。
この選択により、夫婦は個人としての成長や自己実現を追求しつつ、法的な結婚関係を維持することができます。夫婦はお互いの独立性を保ちながらも、結婚生活の安定感や法的な保護を享受することを可能にするため、離婚しないで別居することを選ぶ場合もあるのです。
離婚しないで別居する夫婦のメリット
離婚しないで別居をする夫婦は、どのようなメリットから離婚しないで別居することを選ぶのでしょうか。
離婚しないで別居することのメリットについて、詳しく見ていきたいと思います。
- 生活の自由度が高い
- 仕事の選択肢が増える
- 法律婚のメリットを得られる
- 世間体を気にせず配偶者と距離を置くことができる
- 夫婦関係を改善できる可能性がある
- 同居に伴うストレスからの解放
- 子供のストレス軽減と心身の健全な発達の保護
- 離婚までの時間的・経済的猶予が得られる
メリット1.生活の自由度が高い
離婚しないで別居することのメリットの一つは、生活の自由度が高まることです。
離婚しないで別居する夫婦は、それぞれ別の場所で生活するため、お互いの生活リズムやプライバシーを尊重しながら、自由に日々を送ることができます。
例えば、夫が平日働き、妻が夜勤や休日出勤が多い場合、同居すると相手に配慮して静かに過ごす必要がありますが、離婚しないで別居すると、そのような配慮が不要になります。この自由度は、個人の趣味やキャリアを大切にしたい夫婦にとって、大きなメリットです。
メリット2.仕事の選択肢が増える
離婚しないで別居することのもう一つのメリットは、仕事の選択肢が広がることです。
離婚しないで別居することで、夫婦は地理的な制約を受けずにそれぞれのキャリアを追求できます。
例えば、夫の勤務先が東京で、妻の勤務先が北海道である場合に、結婚して同居生活しようとすると、どちらかが現在の仕事を辞めることが一般的です。
こうした場合に、離婚しないで別居することによって、双方が現在の仕事を続けることができます。
また、一方が海外赴任や地方転勤が必要な場合でも、離婚しないで別居することで柔軟に対応でき、夫婦双方がキャリアを積み重ねていくことが可能となるのです。
メリット3.法律婚のメリットを得られる
離婚しないで別居する夫婦は、法律上の夫婦としてのメリットを享受できます。
離婚しないで別居する夫婦も、同居している夫婦と同様に、法律上は夫婦です。そのため、お互いの法定相続人となることができます。税制面においても、配偶者控除といった優遇措置や、健康保険の扶養に加入したり、年金制度の適用などのメリットを受けることができます。
離婚しないで別居することにより、夫婦は独立性を保ちつつも、これらの法的なメリットを享受することができるのです。
メリット4.世間体を気にせず配偶者と距離を置くことができる
離婚しないで別居することのメリットの一つは、世間体を気にせずに配偶者と距離を置くことができる点です。
社会的な立場や評判を重視する場合、離婚は家族や職場、地域社会に対するイメージを損なう可能性があります。離婚しないで別居することで、表面上は家庭が維持されているように見せつつ、実際にはお互いに必要な距離を取ることができます。
これにより、夫婦は社会的なプレッシャーや批判を避けつつ、自分たちにとって最適な解決策を模索することが可能となります。
メリット5.夫婦関係を改善できる可能性がある
離婚しないで別居することが、夫婦関係を改善する機会となることがあります。離婚しないで別居することで、お互いに距離を置くことができ、感情的な緊張が和らぎ、冷静に関係を見つめ直すことが可能です。
この別居期間を利用して、夫婦はコミュニケーションを改善したり、カウンセリングやセラピーを受けたり、相互理解を深める努力をすることができます。
また、一時的に離れることで、お互いの存在の大切さを再認識し、新たな気持ちで関係修復に努めることができます。
離婚しないで別居することにより、夫婦は関係の改善に積極的に取り組むことができ、結果としてより健全で幸せな夫婦生活を築くことができる可能性があります。
メリット6.同居に伴うストレスからの解放
夫婦間の関係が悪化している場合、同居は日常生活において大きなストレス源となります。
すぐに離婚することが難しい場合でも、離婚しないで別居をまず始めることで、同居に伴うストレスから解放される重要な手段となります。別居によって、互いに距離を置くことができるため、日々の小さな諍いや摩擦が減少します。
また、お互いのプライベートな空間が確保されることで、精神的な安定を取り戻すことができます。特に、DVやモラハラなどの問題がある場合、安全を確保し、被害者が自立するためには、まず別居することが重要になります。
メリット7.子供のストレス軽減と心身の健全な発達の保護
子供は家庭内の緊張や争いを敏感に感じ取ります。そのため、夫婦間の対立や不和は、子供にとって大きなストレスとなり、心身の健全な発達に悪影響を与えることがあります。別居は、このような家庭環境から子供を守り、ストレスを軽減するための有効な手段となることがあります。
離婚しないで別居することによって、夫婦が物理的に離れることで、子供は日常生活での争いから解放され、安定した環境で過ごすことが可能になります。
また、離婚しないで別居することで、子供との関係を見直す機会にもなります。
メリット8.離婚までの時間的・経済的猶予が得られる
別居は、離婚に向けた準備を冷静かつ計画的に進めるための有効な手段です。
別居期間中には、離婚に関する法的手続きの準備を進めることが可能です。たとえば、弁護士との相談を通じて離婚の流れや必要な書類、財産分与や子供の親権などの重要なポイントを把握することができます。
また、財産や収入を整理し、離婚後の生活設計を立てることも重要です。別居中にこれらの準備を行うことで、離婚手続きをスムーズに進めることができます。
さらに、別居は精神的な準備を整えるためにも役立ちます。離婚は人生の大きな転機であり、不安や心配を感じることがあります。別居中に自分自身の感情や心の準備を整えることで、離婚の決断に自信を持つことができるようになります。
夫婦仲が悪化して離婚したいが、すぐには離婚するのが難しいという場合に、離婚しないで別居することは、後の離婚手続きを見据えた上でもメリットになるのです。
離婚しないで別居する夫婦のデメリット
離婚しないで別居することに以上のようなメリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 会う頻度が少なく、コミュニケーション不足になりやすい
- 浮気しやすい
- 子育てが大変
- 同居する場合より生活費がかさんでしまう
- 相手の緊急時に対応が遅れてしまう
- 恋愛や再婚ができない
- 別居によるストレスが生じる
デメリット1.会う頻度が少なく、コミュニケーション不足になりやすい
離婚しないで別居することのデメリットの一つとして、会う頻度が少なくなり、コミュニケーション不足に陥りやすいことが挙げられます。
日常的に顔を合わせる機会が減るため、お互いの日々の出来事や感情を共有することが困難になります。これにより、誤解が積み重なったり、関係の不安や孤独感を感じやすくなったりすることがあります。
特に、重要な決断や危機的状況に直面したとき、夫婦間の支え合いや協力が難しくなることがあります。そのため、定期的なコミュニケーションを心がけ、関係を維持する努力が必要です。
デメリット2.浮気しやすい
離婚しないで別居すると、夫婦が別々の場所に住むため、お互いの行動を把握しにくくなり、信頼関係が揺らぎやすくなります。
これにより、孤独感や寂しさから他の人との関係を求める心理が働きやすくなり、浮気しやすい状況になることがあります。
特に、長期間にわたる別居やコミュニケーション不足が続くと、浮気に発展するリスクが高まります。
デメリット3.子育てが大変
離婚しないで別居する夫婦の場合、夫か妻のどちらかが子供の養育を主に担うことになります。
これにより、子育てを担う親は、仕事と家庭の両立に苦労し、精神的・肉体的な負担が増大することがあります。
デメリット4.同居する場合より生活費がかさんでしまう
離婚しないで別居する場合、夫婦それぞれの世帯に生活費が発生するため、同居する場合よりも生活や養育にかかる費用がかさむ傾向にあります。
別居に際して、家を出ていく側の生活費や子供の養育費を収入が多い方が負担すると決めている場合には、家賃や生活費が2世帯分生じることになり、食事も個別に準備するため、食費も増えます。さらに、定期的にお互いのもとを訪れるための交通費も必要となります。
そのため、離婚しないで別居する場合、夫婦が同居している間に比べて、生活や養育にかかる費用負担が増えてしまうことがあるのです。
デメリット5.相手の緊急時に対応が遅れてしまう
離婚しないで別居する夫婦は、緊急時に相手のもとに駆けつけるのが遅れることがあります。特に、距離が離れている場合や交通手段が限られている場合には、緊急時の対応が大幅に遅れる可能性があります。そのため、緊急時の対応策を事前に準備しておくことが重要です。
デメリット6.恋愛や再婚ができない
離婚しないで別居することのデメリットの一つは、法的にはまだ夫婦であるため、新たな恋愛や再婚ができない点です。
離婚しないで別居していても、法的な婚姻関係が続いている限り、他の人との結婚はできません。これは、新しいパートナーとの関係を築きたいと考えている人にとって、大きな制約となります。
このため、将来的に再婚を望む場合には、離婚を検討する必要があります。
デメリット7.別居によるストレスが生じる
離婚しないで別居することにより、別居に伴うストレスが生じることもあります。別居は、夫婦関係の不安定さや不確実性を象徴することがあり、それ自体が精神的な負担となることがあります。
また、別居状態が長期にわたる場合、将来に対する不安や孤独感が増大することがあります。
さらに、別居によって家族や友人からの質問や好奇の目にさらされることもあり、社会的なプレッシャーを感じることがあります。
離婚しないで別居することは、同居のストレスから解放される一方で、別居によるストレスに悩まされることになる場合もあるのです。
生活費(婚姻費用)、財産分与、子供の養育費はどうなる?
離婚しないで生活する場合、別居生活にかかる費用(婚姻費用)や、財産分与、子供の養育費などはどうなるのでしょうか。
生活費(婚姻費用)
婚姻費用とは、夫婦が生活するために必要な費用のことを指します。これには家賃や光熱費などの住居費の他、食費、衣料費、交通費などが含まれます。
離婚しないで別居する場合でも、夫婦は法律上の婚姻関係にあるため、原則としてお互いに婚姻費用を負担する義務があります。そのため、原則として夫婦のうち収入の多い方が、他方の生活費を負担することになります。
婚姻費用の金額については、別居に際して夫婦が合意した金額や、家庭裁判所が決定した婚姻費用の分担に従うことになることが一般的です。
夫婦仲がこじれている場合には、別居をしてから婚姻費用を請求すると、交渉に応じてもらえないこともあるため、別居を始める前に話し合って、金額や支払い方法などについて取り決めておくことをおすすめいたします。
財産分与
財産分与は、離婚時に夫婦の共有財産を分けることです。そのため、離婚しないで別居する場合には、財産分与をすることはありません。
なお、離婚時の財産分与の対象となる共有財産は、夫婦が婚姻生活中に協力して築き上げた財産のことを意味します。そのため、別居期間中にそれぞれが得た給与収入などの財産は、夫婦が協力して得た共有財産ではなく、その人個人の財産となります。したがって、別居期間中に得た財産は原則として財産分与の対象にはなりません。
養育費
夫婦は法律上婚姻関係にある限り、互いに生活費や子供の養育費などを分担する義務があります。そのため、離婚しないで別居する場合も、子供と離れて生活する親は、子供の養育にかかる費用を負担する必要があります。
別居中の養育費を請求するには、相手との話し合いや裁判所の手続きが必要となります。話し合いで合意ができれば、養育費に関して取り決めた内容を書面にし、公正証書にしておくことが望ましいです。
話し合いが困難な場合や、合意が守られず養育費が支払ってもらえないような場合には、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることになるでしょう。
裁判所の手続きでは、婚姻費用算定表を参考にして、養育費の金額を算出します。しかし、これはあくまで目安であり、特別な事情の有無などによって、相場の金額から増減することもあります。また、話し合いでも婚姻費用算定表が参考にされることが一般的ですが、夫婦間で合意さえあれば、相場より少ない金額や、相場より多い金額で取り決めることが可能です。
離婚しないで別居する際に、子供の養育費に関して不安や悩みがある場合は、弁護士に相談していただくことをおすすめいたします。
ずっと別居しているのに離婚してくれない場合はどうすればいい?
長期間に渡ってずっと別居しているが、一方が離婚に応じてくれないような場合には、どうしたら良いのでしょうか。
ずっと別居しているのに離婚してくれない場合、まずは配偶者と話し合いの場を持ち、離婚の意向とその理由を伝えることが重要です。可能であれば、第三者を介しての話し合いも検討してみてください。
話し合いで解決しない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停では、裁判所の調停委員が間に入り、双方の話を聞いて解決を図ります。
調停で解決しない場合は、離婚裁判になります。裁判では、裁判所が双方の主張を聞いた上で、離婚の可否を判断します。
なお、日本の民法では、離婚の成立要件として、婚姻関係が破綻していることが必要です。長期間の別居は、婚姻関係破綻を判断する際の重要な要素のひとつとなり得ます。そのため、離婚に応じてもらえない場合、別居生活を継続しておくことが重要です。
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Q&A
Q1.なぜ離婚しないで別居する夫婦がいるのでしょうか?
離婚しないで別居することを選ぶ理由はさまざまですが、一般的に考えられる理由としては次の9つの理由があります。
- 子供のため
- 離婚すると生活費に困るため
- 一方が離婚に反対しているため
- 離婚条件について合意できないため
- 夫婦関係の再構築としての別居であるため
- 離婚にともなう手続きが面倒なため
- 宗教的・文化的に離婚しづらいため
- 世間体が気になるため
- 夫婦の形として別居婚を選んだため
Q2.離婚しないで別居することのメリットは何ですか?
離婚しないで別居することには、主に次の8つのメリットがあります。
- 生活の自由度が高い
- 仕事の選択肢が増える
- 法律婚のメリットを得られる
- 世間体を気にせず配偶者と距離を置くことができる
- 夫婦関係を改善できる可能性がある
- 同居に伴うストレスからの解放
- 子供のストレス軽減と心身の健全な発達の保護
- 離婚までの時間的・経済的猶予が得られる
Q3.離婚しないで別居することのデメリットは何ですか?
離婚しないで別居することには、主に次の7つのデメリットがあります。
- 会う頻度が少なく、コミュニケーション不足になりやすい
- 浮気しやすい
- 子育てが大変
- 同居する場合より生活費がかさんでしまう
- 相手の緊急時に対応が遅れてしまう
- 恋愛や再婚ができない
- 別居によるストレスが生じる
当法律事務所の弁護士にご相談ください
離婚しないで別居することは、夫婦関係においてさまざまな理由から選択されることがあります。
離婚しないで別居することには、生活の自由度が高まる、仕事の選択肢が広がる、法律婚のメリットを享受できるなどのメリットがありますが、同時にコミュニケーション不足、浮気のリスク、子育ての困難、生活費の増加、緊急時の対応の遅れなどのデメリットも存在します。
離婚をするべきか、離婚しないで別居するべきかを決断する際には、メリットとデメリットについて理解し、自身の状況に合わせて適切な選択をすることが重要です。
離婚しないで別居するか悩んだら、法律の専門家である弁護士に相談していただくことをおすすめいたします。
なお、当法律事務所では初回の法律相談を無料とさせていただいております。ご相談者の状況や要望に応じて、弁護士が適切なアドバイスをさせていただきます。ぜひお気軽にお問合せください。
この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。