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DVの種類6つを解説!身体的暴力だけじゃない?具体的な事例も

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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DV(家庭内暴力)は、家庭や親密な関係の中で発生する暴力の一形態です。
これには、肉体的な暴力だけではなく、主に6つの種類があります。
6種類のDVうち、肉体的な暴力は、打撃や身体への危害を含むことが一般的ですが、精神的な暴力には、脅迫、侮辱など、恐怖感を煽るような行動が含まれます。このように、外部からは分かりづらい種類のDVもあり、家庭内でのDVは隠されがちで、被害者は周囲の支援を求めにくい状況にあることが多いです。

ですが、こういったDVは、被害者の身体・精神に深刻な影響を及ぼすだけでなく、家庭全体に対するストレスの原因となり、子供の成長にも悪影響を与えることがあります。
本記事では、DVの種類について、その種類ごとの具体的な事例もまじえながら、弁護士が詳しく解説させていただきます。DVについての当法律事務所の関連記事などもご参考にしていただき、DVの理解に役立てていただけましたら幸いです。

目次

日本におけるDV(ドメスティック・バイオレンス)

DV(家庭内暴力)と法律

DVの種類について見ていく前に、日本におけるDVについて簡単にご説明させていただきます。
DVは、「ドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)」の略称です。厳密な定義こそありませんが、家庭内や恋人といった親密な関係の中で発生する暴力という意味であることから、日本語では「家庭内暴力」などと言われています。
夫婦間での暴力や虐待は、家庭という閉鎖的な空間で行われるものであるため、その被害はなかなか外部からでは分かりにくいものがあります。
実際、日本においてDVが深刻な社会問題であると認識されるようになったのは、1990年代後半のことでした。

こうしたDVに関する認識の高まりと、DV被害者の保護・救済の必要性に対応すべく、2001年(平成13年)に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」が制定されることとなったのです。
さて、このDV防止法によると、「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」を言います(DV防止法第1条第1項)。

(定義)
DV防止法第1条第1項
この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項及び第28条の2において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。

つまり、「配偶者からの暴力(DV)」とは、「身体に対する暴力」の他に、「心身に有害な影響を及ぼす言動」も含まれているのです。

4人に1人の割合で配偶者から暴力の被害を受けている

こうした配偶者からの暴力ですが、令和2年の内閣府による「男女間における暴力に関する調査結果」によると、約4人に1人の割合で、配偶者からの暴力の被害を受けたことがある、と回答しています。

 

配偶者からの暴力の被害経験

 

調査結果によると、男性よりも女性の方が被害を受けたことのある割合が高く、調査項目である「身体的暴行・心理的攻撃・経済的圧迫・性的強要」のうち、被害経験があったという回答が最も多かったのは、男女ともに「身体的暴行」でした。
参照:令和2年度調査 | 内閣府男女共同参画局 

さて、DVの現状について把握できたところで、本記事の本題に入っていきたいと思います。
それでは、身体的暴力を含めたDVの種類について、詳しく見ていきましょう。

DVの6つの種類と具体的な事例を解説

DVには、主に次の6つの種類があるとされています。

  • 種類①身体的暴力
  • 種類②精神的暴力(心理的暴力)
  • 種類③経済的暴力
  • 種類④性的暴力
  • 種類⑤社会的暴力(社会的隔離)
  • 種類⑥子供を利用した暴力

これら6種類のDVについて、その内容や具体的な行為の事例を詳しく解説していきます。

種類1.身体的暴力

DVの種類1つ目は、前述した内閣府の調査結果にもあったように、夫婦間で最も多いDVの種類が「身体的暴力」です。このような身体的暴力は、家庭内での力の不均衡や支配的な行動を反映することが多く、被害者に深刻な心理的、身体的な影響を及ぼす可能性があります。
また、こうした身体的暴力行為は、暴行(刑法第208条)や傷害(刑法第204条)の加害行為に該当する恐れがあります。

(傷害)
刑法第204条 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

(暴行)
刑法第208条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

ところで、身体的暴力と聞くと、「殴る、蹴る」といった、積極的に被害者を加害する暴力行為をイメージする方が少なくないでしょう。ですが、こうした暴力行為のほかにも、「怪我をしている妻を病院に連れて行かせない」といった行為も、身体的暴力の一種であると考えられています。

身体的DVの具体的な事例

  • 拳で配偶者を殴ったり、家具や家電など身近な物を使って配偶者を殴打する。
  • 足や膝で相手の体を蹴り、打撲傷や骨折などの傷害を与える。
  • 相手を強く押し、壁にぶつけたり床に倒れさせるような行動をとる。
  • 手のひらで相手の顔や体を強く叩き、痛みや赤みを引き起こす。
  • 相手の首を掴み、圧迫することで呼吸困難や意識喪失を引き起こす。
  • 石や本などの固い物を相手に向けて投げ、打撲傷や怪我をさせる。
  • 配偶者の髪を強く引っ張り、痛みやストレスを与える。
  • 相手の腕や足などを噛み、傷をつけることで恐怖を与える。
  • 爪を立てて相手の肌を引っ掻き、傷や出血を引き起こす。
  • 熱湯や鋭利なナイフを使い、故意にやけどや切り傷を与える。
  • 相手の腕を捻じ曲げたり、関節を無理な方向に動かして痛みを与える。
  • 強制的にアルコールや薬物を摂取させ、健康を害するよう強いる。
  • 性的な行為を無理やり行い、身体的な痛みや精神的な苦痛を与える。
  • 手錠や縄で縛り、閉じ込めるなどして身体的な自由を奪う。
  • 怪我や病気の治療が必要な配偶者を医療施設に連れて行かず、必要な薬も提供しない。
  • 意図的に配偶者の食事量を制限し、栄養不足や飢餓状態を引き起こす。
  • 必要な休息や睡眠の時間を削減し、健康回復や精神安定を妨害する。
  • 厳しい気候条件下でも、適切な衣服や保護具を用意せず、健康リスクを高める。
  • 既存の身体的障害や健康問題を無視し、必要なケアやサポートをしてくれない。

これらの行為に思い当たることがある場合は、配偶者から身体的暴力を受けている可能性があります。

種類2.精神的暴力(心理的暴力)

DVの種類の2つ目は、近年その認識が広まってきた、精神的暴力(心理的暴力)です。これは、脅迫、侮辱、無視、絶え間ない批判など、被害者の心理的な安定や自尊心を損なう行為を指します。
「モラハラ(モラルハラスメント)」とも呼ばれ、被害者の自己肯定感や自信を喪失させて、被害者をコントロールしようとする精神的な虐待です。

モラハラには、被害者の行動や考えを否定する、人格を貶めるような発言、被害者の自己決定権を奪う、隠れた脅迫などが含まれます。これらの行為は、被害者に深刻な心理的な影響を及ぼし、自信の喪失やうつ状態を引き起こすことがあります。

精神的DVの具体的な事例

  • 配偶者に対して繰り返し侮辱的な言葉を投げかけ、自尊心を傷つける。
  • 配偶者の意見や感情を無視し、常に自分の意見を押し付ける。
  • 配偶者の外見や能力、趣味などについて頻繁に批判し、自信を奪う。
  • 配偶者の友人や家族との関係を制限し、孤立させる。
  • 配偶者を人前で恥ずかしめ、社会的地位を低下させる。
  • 配偶者の過去の失敗や弱点を頻繁に持ち出し、屈辱感を与える。
  • 小さなミスや失敗を過剰に責め、恐怖感を植え付ける。
  • 配偶者の行動を過度に監視し、プライバシーを侵害する。
  • 自分の感情や行動の責任を配偶者に押し付け、罪悪感を感じさせる。
  • 一貫性のない行動や態度で配偶者を不安定にし、常に緊張状態に置く。
  • 配偶者が表現した感情や悩みを無視し、無価値だと感じさせる。

こうした精神的なDVは、被害者自身がDVを受けていることを認識できないケースも少なくありません。もし上記の例に思い当たることがあれば、チェックしてみることをおすすめいたします。
配偶者から精神的なDVを受けているのかは、こちらの関連記事のチェックリストを使ってチェックしていただけます。
モラハラ夫の特徴チェックリスト|言葉や言動から診断しましょう
また、配偶者の精神的DVによって離婚をご検討されている方は、こちらの関連記事もご参照ください。
モラハラ夫や妻と離婚したい|方法や伝え方、裁判事例も紹介

種類3.経済的暴力

3種類目の経済的DVは、被害者の経済的自立を妨げる行為です。
配偶者が一方に対して、夫婦共有の銀行口座を利用することを制限したり、配偶者の収入を自分で管理させなかったり、生活費を渡さないといった行為のほか、勤務させなかったり、仕事を辞めさせることなども経済的DVとされています。

経済的DVにより、被害者は金銭的に加害者に依存する状態に追い込まれ、逃げ場を失ってしまうことがあります。そのため、経済的DVは被害者の選択の自由を奪い、自立への道を遮断してしまう行為なのです。

経済的DVの具体的な事例

  • 銀行口座や夫婦共有の財産を配偶者に利用させない。
  • 配偶者の給与やその他の収入を管理し、自由に使わせない。
  • 家庭の日常的な支出に対して必要な資金を配偶者に渡さない。
  • 配偶者が働くことを禁じたり、職場への嫌がらせを行う。
  • 配偶者の意見を無視し、すべての金銭的な決定を一方的に行う。
  • 配偶者に不当な借金を負わせる。
  • 配偶者の日常的な買い物や必要な物品の購入を制限する。
  • 家計に関する情報や財政状況を配偶者に知らせない。
  • 配偶者に対して金銭的なプレッシャーをかけるために不必要な支出を強いる。

種類4.性的暴力

4種類目の性的暴力は、無理やりの性行為や性的な行動を強制することを指します。これには、強制的な性交、性的な嫌がらせ、性的に不快な言動、性的な写真や動画を強要することなどが含まれます。
たとえ配偶者間の性行為であっても、同意のない行為は刑法第177条によって禁止されている行為です。

(不同意性交等)
刑法第177条第1項
前条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第179条第2項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑に処する。

性的DVの具体的な事例

  • 性行為を強要する
  • ポルノビデオやアダルトサイトの視聴を強要する。
  • 出産を希望する配偶者に対して中絶を強要する。
  • 配偶者に避妊を求められているのに、避妊に協力しない。
  • 子供ができないことを、一方的に相手のせいにする。
  • 配偶者が嫌がっているのに、配偶者以外の異性との交際を許容させる。
  • 配偶者の同意なく性的画像を撮影・拡散する。

種類5.社会的暴力(社会的隔離)

5種類目の社会的DVとは、被害者を社会的なネットワークから切り離すDVを言います。
具体的には、友人や家族とのコミュニケーションを制限する、集会や社交的な活動への参加を禁止する、電話やインターネットの使用を制限するといった行為が社会的DVとされています。
このような社会的隔離は、被害者を孤立させ、加害者に対する依存を強めることになります。その結果、被害者は外部に支援を求めることが難しくなり、心身に支障をきたす恐れが生じるのです。

社会的DVの具体的な事例

  • 配偶者の友人や親族との連絡や交流を禁止する。
  • 配偶者の仕事や趣味を妨害する。
  • 配偶者の外出や買い物を制限する。
  • 配偶者の携帯電話やSNSを監視する。

種類6.子供を利用した暴力

DVの6種類目は、子供を利用したDVです。6つの種類のDVの中でも、あまり広くは認識されていないDVかと思います。
具体的には、子供を道具として使い、被害者に対する支配を強化する行為です。これには、子供に対する脅迫、子供を通じた感情的な操縦、子供の前での暴力的な行動、子供との接触を制限することなどが含まれます。
この種類のDVは、子供自身にも深刻な影響を及ぼし、心理的な問題や行動障害の原因となることがあります。加害者は、子供の愛情や安全を利用して、被害者に対する圧力をかけることがあるのです。

子供を利用したDVの具体的な事例

  • 子供に暴力をふるって、配偶者に見せつける。
  • 子供に配偶者の悪口や嘘を吹き込んで、親子関係を壊す。
  • 配偶者から子供を取り上げて、関わりを制限する。
  • 子供を人質にして、相手の行動や意思を制限する。
  • 子供の教育や健康に関して、自分は関わらず、一方的に配偶者を責める。
  • 子供の成長や発達に関して、配偶者の不安や心配を必要以上にあおる。

夫婦間だけにとどまらず、子供を巻き込んでいるため、6種類のDVの中でも、より悪質なDVです。
子供を利用したDVを受けていると認識したら、すぐに警察や病院、弁護士にご相談ください。

DVに関するQ&A

Q1.DVの種類には、何がありますか?

DVの種類は、主に6種類あるとされています。6種類のDVは、次の通りです。

  • 種類①身体的暴力
  • 種類②精神的暴力(心理的暴力)
  • 種類③経済的暴力
  • 種類④性的暴力
  • 種類⑤社会的暴力(社会的隔離)
  • 種類⑥子供を利用した暴力

Q2.DVの種類の1つ「身体的暴力」とはどういった内容のDVですか?

身体的暴力は、家庭内での力の不均衡や支配的な行動を反映したDVです。殴る、蹴る、といった積極的な暴力行為だけでなく、「怪我をしている配偶者を病院に連れて行かない」といった受動的な行為も身体的DVに含まれます。

身体的DVは、暴行や傷害として刑法第204条や同法第208条に該当する恐れがあります。
身体的DVの例としては、殴打、蹴る、押す、叩く、首を絞める、物を投げつける、髪を引っ張る、噛む、引っ掻く、熱湯やナイフを使う、腕を捻じ曲げる、強制的なアルコールや薬物の摂取、医療の提供拒否、栄養不足や飢餓状態の引き起こし、休息や睡眠の削減、適切な衣服や保護具の不足、必要なケアの不足などが挙げられます。

Q3.日本において夫婦間のDV被害は多いのでしょうか?

内閣府によると、日本において、4人に1人の割合で何らかのDVの被害を経験したことがある、という調査結果が出ております。
この割合は、女性に限らず、男性も含まれます。

夫婦間でのDVのお悩みは弁護士にご相談ください

さて、本記事では夫婦間での暴力(DV)について、具体的な事例をまじえながら、その種類を詳しく解説させていただきました。
夫婦間のDVの種類には、次の6つの種類があります。

  • 種類①身体的暴力
  • 種類②精神的暴力(心理的暴力)
  • 種類③経済的暴力
  • 種類④性的暴力
  • 種類⑤社会的暴力(社会的隔離)
  • 種類⑥子供を利用した暴力

いずれのDVも、家庭内という閉鎖的な空間で行われるものであるため、外部から被害を認識するのは難しいと言われています。また、被害者自身もDV被害を受けていることを認識していないケースもあるため、DV被害者へサポートが十分に届いていないのが現状です。

本記事をご参考にしていただき、あらためてご自身の家庭の状況をご確認ください。

ご紹介した6種類のDVは、単独で起こることもあれば、数種類が複合して起こることもあります。
もし、自分がDVの被害を受けているかもしれない、と思われた場合は、なるべく早期に、弁護士や警察、病院などにご相談いただくことをおすすめいたします。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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