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DVとは?ドメスティック・バイオレンスの意味や具体的事例を紹介

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、明確な定義はないようですが、日本では、配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力という意味で用いられることが多いとされています。
DVは夫婦間や家庭内という閉鎖的な空間で行われるため、外部から被害が分からないことが多く、また、被害者も外部に助けを求めることが難しい場合があります。

本記事では、DVについて具体例とともに解説いたします。
本記事が、DVによるお悩みを解決するためのご参考になりましたら幸いです。

目次

DVとはどんな意味?ドメスティック・バイオレンスの定義

それでは、DVとは何か、まずは正式名称と、DVとはどういう意味なのかを解説していきたいと思います。

正式名称は「ドメスティック・バイオレンス」

DVとは、その正式名称を「ドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)」と言います。

「Domestic(ドメスティック)」が「家庭の」、「Violence(バイオレンス)」が「暴力」なので、ドメスティック・バイオレンスを直訳して「家庭内暴力」と言われます。

ドメスティック・バイオレンスは親子間でも起こること

ドメスティック・バイオレンスは、前記のとおり、日本では、配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力のことを言いますから、「夫から妻」、「妻から夫」に対して行われるほかにも、「親から子ども」、「子どもから親」あるいは「兄弟姉妹間」での暴力も含むものと言ってもよいでしょう。

このように、夫婦間だけではなく、親子間でもドメスティック・バイオレンスは起こり得る問題なのです。

また、DVは、法律婚をしている夫婦に限らず、事実婚や、同棲状態にある相手、事実上の離婚を含む離婚した元夫婦の間で起こるものも含まれると考えられています。

なお、未婚の男女の間で起こる暴力やモラハラ(精神的虐待)などのハラスメントに関しては、デートDVと呼ぶこともあるようです。

DV被害者は男女のうち女性(妻)の方が多い?

内閣府男女共同参画局が令和3年3月に公表した「男女間における暴力に関する調査(令和2年度調査)」によると、日本におけるDVの被害者は男性よりも女性が多いことが分かっています。
男性に比べて、女性は肉体的な力が劣ることから身体的暴力を受けやすく、経済的に自立しづらいことから経済的なDVを受けやすい状況にあるのかもしれません。

DVの特徴

家庭内暴力をする人の特徴や、DV加害者の精神的な状態の特徴、原因などについては、こちらの関連記事に詳しくご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
DVの特徴が知りたい!加害者の心理傾向や原因を解明!被害者の傾向もご紹介します

言葉による暴力も?・・・DVの6つの種類

精神的DV、経済的DV、社会的DVとは?家庭内暴力は6種類

さて、家庭内暴力の種類は、身体的暴力行為による身体的DVだけではありません。精神的暴力や社会的暴力といった加害行為も、家庭内暴力の種類の1つと考えられています。

家庭内暴力の6つの種類

  • 身体的暴力
  • 精神的暴力
  • 経済的暴力
  • 性的暴力
  • 社会的暴力
  • 子供を利用した暴力

身体的暴力

身体的DVとは、暴行や傷害として刑法で定義される行為にも該当する家庭内暴力行為です。

精神的暴力(心理的暴力)

精神的DVとは、被害者の心理的安定や自尊心を損なう行為で、脅迫、侮辱、無視、絶え間ない批判などが含まれます。これはモラハラ(モラルハラスメント)とも呼ばれ、被害者を精神的にコントロールする精神的虐待です。

例えば、大声でどなる、ののしる、物を壊すなどが精神的暴力に当たります。

また、SNSなどで誹謗中傷をすることや、交友関係や電話・メールを監視・制限する、行動や服装などを細かくチェックしたりする、他の異性との会話を許さないことも精神的暴力に当たります。

モラハラ夫や妻と離婚したい|方法や伝え方、裁判事例も紹介

経済的暴力

経済的DVとは、被害者の経済的自立を妨げる行為で、生活費を渡さないことや、お金を借りたまま返さない、パートナーに無理やり物を買わせるなどが挙げられます。

性的暴力

性的DVとは、同意のない性行為や性的行動を強制することで、強制的な性交、性的嫌がらせ、性的不快感を与える言動、性的な写真や動画の強要などがこれに当たります。

社会的暴力(社会的隔離)

社会的DVとは、被害者を社会的ネットワークから切り離す行為で、友人や家族とのコミュニケーション制限、集会や社交活動への参加禁止、通信手段の使用制限などが含まれます。

子供を利用した暴力

子供を利用したDVとは、子供を道具として使い、被害者に対する支配を強化する行為で、子供に対する脅迫、感情的操縦、子供の前での暴力行為、子供との接触制限などが含まれます。

精神的暴力をはじめとする、これら6つの種類のDVとはどういったものなのか、詳細については、こちらの関連記事をご覧ください。
DVの種類6つを解説!身体的暴力だけじゃない?具体的な事例も

いずれの家庭内暴力にせよ、暴力行為は夫婦関係だけでなく、親子関係にも深刻な影響を与えます。被害を受けているかもしれない、と思い当たったときには、迷わず外部に相談しましょう。

DVとは繰り返すもの?

DVとは繰り返すものである、という言葉を耳にしたことはないでしょうか。
家庭内暴力は、外部からの介入がなければ、何度も繰り返され、暴力の頻度と重症度も時間の経過とともに深刻化していく傾向があるのです。

このように、家庭内暴力が一定のパターンで繰り返されることを「暴力のサイクル」と言いますが、暴力のサイクルに陥っていると、時間が経つにつれ被害者は逃げ出すことが難しくなり、被害も深刻化してしまうため、早期に暴力被害に気付いて対処することが重要です。
それでは、「DVとは」を語る上ではずせない、DVのサイクルについてご説明させていただきます。

DVのサイクル

 

DVサイクル

 

DVのサイクルには、大きく分けて①蓄積期、②爆発期、③開放期(ハネムーン期)の3つの段階があるとされています。

①蓄積期

緊張期ともいいます。DV加害者が仕事や人間関係、配偶者に関連するストレスや不満を内に蓄積していく時期が蓄積期です。日常の些細な出来事がDV加害者の心に積み重なり、その不満が表情や行動に表れ始めます。この過程で、配偶者もDV加害者の変化を感じ取り、緊張感が高まっていきます。

②爆発期

爆発期は、蓄積された不満やストレスが限界に達し、DV加害者が配偶者に対して暴力を振るう時期です。この暴力は身体的なものだけでなく、精神的なものも含まれ、DV加害者はしばしば自分の行為を正当化し、暴力の原因を配偶者に転嫁します。

③開放期(ハネムーン期)

開放期(ハネムーン期)は、DV加害者が暴力行為を後悔し、反省する時期です。DV加害者は配偶者に対して優しく振る舞い、謝罪し、「もう暴力はしない」と約束することがありますが、この反省はしばしば表面的であり、配偶者や周囲の状況をコントロールするための手段となることがあります。そして、しばらくすると、サイクルは再び蓄積期に戻ります。

夫婦間のDVとは?具体的事例

夫婦間の暴力には、さまざまな態様のものがあります。
本記事では、いくつかの夫婦間の家庭内暴力の具体的な事例をご紹介させていただきたいと思います。

ケース①夫から妻への身体的暴力と経済的暴力

夫は妻に対して、日頃から頻繁に身体的暴力を振るっていました。具体的には、夫が妻に対して口論の最中に平手打ちをしたり、腕を掴んだり、食器や雑貨などの物を妻に向かって投げつける、妻の立つ背後の壁に向かって強く投げ捨てるなどの行為がありました。
そのような身体的暴力だけでなく、夫は妻の経済的自立を妨げ、妻の給与を夫の銀行口座に入れさせ、必要な生活費以外にお金を引き出すことを許しませんでした。

こうした状況が数年続き、妻は夫の行動に委縮していました。遠方の両親を頼ることもできず、相談できる友人もいなかったため、夫婦問題にどのように対応すべきかが分からず、思い詰めていました。

そうした中で、夫による身体的暴力がエスカレートし、妻は骨折で入院することになりました。このときに、医師や看護師が妻から話を聞き、DV被害相談窓口に連絡を取り、妻は夫には内密で弁護士に相談することになりました。
このようなケースでは、まずは身を守るために実家などに別居した上で、離婚を検討した方が良いでしょう。

ケース②妻から夫への精神的暴力(モラハラ)

妻は夫に対して日頃から精神的な暴力を行っていました。具体的には、妻が夫の収入が低いことをたびたび非難し、「こんなに稼げないなんて、男としてどうなの?」と言ったり、夫の趣味に関しても「大人がこんな子供っぽいことに時間を使うなんて恥ずかしくない?」と侮辱するような発言をしていました。

さらに、夫が家庭や育児に関する提案をすると、「あなたには無理よ、私が全部やるから」と一蹴し、夫の家庭内での役割や存在価値を否定するような言動を繰り返していました。
夫はこれらの発言から自分の能力不足と考え、自己肯定感が低下していましたが、インターネットで「モラハラ妻チェックリスト」を見て、自分が精神的DVの被害者であることを自覚しました。この気付きをきっかけに、夫は一度は離婚も考えましたが、長年連れ添った妻とやり直せるならやり直したいと、再構築の道を選びました。

このような場合には、カウンセリングを受けることが勧められます。

家庭内暴力に関するQ&A

Q1.DVとはなんですか?精神的DVとは?身体的DVとは何が違うの?

DVとは、その正式名称を、「ドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)」と言います。明確な定義はありませんが、日本語にすると、家庭内暴力です。
日本では、配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力という意味で使用されることが多いです。

DVには6つの種類がありますが、そのうちの1つが精神的DV(モラハラ)です。暴力行為をともなう身体的DVと異なり、精神的DVは殴る蹴るといったことはしません。相手を侮辱する言葉を吐いたり、無視する態度を取ったり威圧したりと、精神的な虐待をともなう行為を精神的DVと言います。

Q2.家庭内暴力は繰り返されるのですか?

家庭内暴力は、一定のパターンで繰り返されます。これを、DVサイクルと呼びます。
DVサイクルには①緊張期、②爆発期、③開放期(ハネムーン期)の3段階があります。①緊張期は、加害者がストレスや不満を内に蓄積したり、イライラして機嫌が悪くなる段階で、続いて、②爆発期では、感情のコントロールを失い暴力を振るうようになります。そして、③開放期では、加害者が行動を反省し、別人のように優しくなり、反省するようになります。

このように、3段階のサイクルを繰り返すのです。

Q3.家庭内暴力の被害者はどのように対処すればよいですか?

家庭内暴力の被害者が取るべき対処方法は複数あります。まず、安全を確保することが最優先です。緊急時には警察に通報するか、近隣のシェルターや支援機関への避難を検討してください。

他には、DV相談ナビ♯8008という相談窓口もあります。♯8008とダイヤルを押して電話をすれば、DVの相談をすることができます。匿名での相談も対応しています。

さらに、DV相談+という相談窓口もあります。電話(0120-279-889)は24時間受付をしています。専門の相談員が対応しており、外国語(10か国語)にも対応しています。
加えて、被害の証拠(写真や日記、医療記録など)を集め、信頼できる家族や友人、専門家(弁護士、カウンセラーなど)に相談することも重要です。
カウンセリングや心理療法を受けることも有効です。

DVとは?対処法は?暴力のお悩みは弁護士にご相談ください

本記事では、DVとは何か、どういった例があるかを簡単にご説明させていただきました。
夫婦間でのDVとは、被害が外部からは分かりづらく、DV被害者も自覚がないことが多いため、対処が難しい社会的問題です。

DV被害から脱却するためには、まずは被害に遭っていることを自覚し、配偶者の行為が暴力行為であることを認識することが重要です。
おひとりで悩まずに、ぜひ弁護士にご相談ください。ご来所されるのが難しい方も、電話相談をご利用いただけます。本Webサイトから、お気軽にお問合せください。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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