代襲相続|代襲相続とは?代襲相続人はどこまでか・割合についても解説

法定相続人

更新日 2025.12.18

投稿日 2024.01.25

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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通常、相続人がいない場合の遺産は国に帰属することになります。

この点、遺産相続が発生するのは、一般的に自分や親が高齢になった時期が多いため、相続開始時点で子どもや親兄弟が亡くなっているといったケースも少なくありません。
このとき、親も子も兄弟も亡くなっているからといって、被相続人の遺産をすぐに国のものとしてしまうのは、孫やひ孫といった次世代の血族からすれば釈然としないかと思います。

こうした事態を避けるべく設けられたのが、「代襲相続」という制度です。

代襲相続によって、世代を超えて相続権を受け継ぐことが認められるため、被相続人の直系卑属が相続財産を守っていくことができるのです。

ですが、必ずしも無制限に代襲相続が認められるわけではなく、代襲相続が認められる範囲には一定の制限があります。

そこでこの記事では、遺産相続において重要な「代襲相続」について、弁護士がわかりやすく解説させていただきます。
代襲相続によって相続人となることができるのは誰なのか、代襲相続した相続人の相続割合はどれくらいなのか、詳しく見ていきましょう。

目次

代襲相続

1.代襲相続とは

代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、遺産相続が発生した時に、被相続人よりも先に本来相続人になる人が死亡している場合などに、相続人になるはずだった人の子供が代わりに相続人となる制度です。
そして、亡くなった相続人の代わりに、代襲相続によって相続人となる人を「代襲相続人」といいます。

代襲相続の条文

代襲相続の代表的なケースは、被相続人の子供が相続が始まる前に亡くなっていたような場合です。この点に関しては、民法第887条に次の通り規定されています。

(子及びその代襲者等の相続権)
民法第887条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

したがって、次の3つの条件のいずれかに該当する場合、代襲相続が発生することになるのです。

  1. 被相続人の子もしくは被相続人の兄弟姉妹が、相続の開始以前に死亡したとき

  2. 民法第891条の規定(相続欠格)に該当し、その相続権を失ったとき

  3. 廃除によって、その相続権を失ったとき

また、民法第889条2項の規定によって、この3つの条件は「被相続人の兄弟姉妹が相続人の場合」にも適用されることになります。

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
民法第889条 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。

さて、3つの条件の中でも、「被相続人の子もしくは被相続人の兄弟姉妹の死亡」は比較的イメージしやすいかと思いますが、「民法第891条の規定に該当する場合」や、「廃除」などは、あまり耳慣れない言葉かと思います。そこで、続いてこれらの3つの条件について、簡単に解説させていただきます。

2.代襲相続の3条件

上記でもご説明しました通り、民法第887条2項の定めによって、代襲相続は①相続人の死亡、②欠格、③廃除の3条件のうち、いずれか1つを満たす場合に発生するとされています。

条件①相続人の死亡

まず、1つ目の条件である「被相続人の子もしくは被相続人の兄弟姉妹が、相続の開始以前に死亡したとき」について見ていきましょう。

被相続人の子の死亡は、代襲相続の中で最も一般的なケースかと思います。具体的には、被相続人が死亡した際に、その子供がすでに亡くなっている場合に、その子供に代わって孫が相続人となります。

この場合における「死亡」には、自然死だけでなく、事故や病気などによる死亡なども含まれます。

相続人の死亡による代襲相続のポイントは、「相続開始の前に、被相続人の子供が死亡していること」と、「その死亡した子供に、子供(被相続人にとっての孫)がいること」です。

また、被相続人に直系卑属(子・孫など本人から見て下の世代)や直系尊属(親・祖父母など本人から見て上の世代)がいない場合は、原則として被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になります。したがって、兄弟姉妹が法定相続人になる場合に、相続開始前に兄弟姉妹が亡くなっていれば、その亡くなっている兄弟姉妹の子供が代襲相続によって相続人となります。

ところで、代襲相続が発生するのは、タイミングとしては「相続開始の時に相続人が死亡している」場合です。ですので、相続開始後に相続人が死亡した場合は、代襲相続は発生しません。

これはなぜかといいますと、相続開始時点で、その相続人がすでに相続権を確定的に取得しているためです。相続は被相続人の死亡により開始され、その時点で相続人は法律上の権利として相続分を確定的に取得したことになります。この場合、相続権はすでに相続開始時点で相続人に帰属しているため、死亡した相続人の財産が、その相続人の法定相続人に対して「再度の相続」として継承される形になるのです。

条件②相続欠格事由に該当すること

2つ目の条件は、「民法第891条の規定に該当し、その相続権を失ったとき」です。

民法第891条は、以下のような場合について、相続権を失う欠格事由として定めています。

  • 被相続人や他の相続人を殺害し、または殺害しようとしたために、刑に処せられた者
  • 被相続人が殺害されたことを知りながら、告発・告訴しなかった者
  • 詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をすること、撤回すること、取り消すこと、または変更することを妨げた者
  • 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者
  • 被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、または隠匿した者

つまり、犯罪や不正を行った相続人本人は、法的に相続権を持つことができなくなるわけです。
しかしながら、相続欠格者が自身の行為によって相続権が剥奪されたとしても、その行為の影響をその子供にまで及ぼすのは不合理だと考えられています。
そのため、相続欠格の場合にも、代襲相続が認められています。相続欠格者が重大な不法行為を行ったことにより相続権を失っても、その不法行為は欠格者自身の責任であり、その子供には直接の責任がないため、子供が不利益を被らないように配慮されているのです。

条件③推定相続人の廃除

3つ目の条件は、「廃除によって、その相続権を失ったとき」です。

廃除とは、相続人が被相続人に対し虐待や重大な侮辱を加えたり、著しい非行があったりした場合に、被相続人が家庭裁判所での手続きを利用し、相続権をはく奪することです(民法第892条・同第893条)。

廃除された相続人は相続権を失いますが、その子供は代襲相続の対象となり、相続権を受け継ぎます。

廃除の場合も相続欠格と同様に、「相続権の喪失は廃除された本人にのみ帰属し、その子供には責任が及ばない」という考え方があるため、相続権をはく奪された相続人の子供にも、代襲相続が認められることになります。

3.代襲相続の手続き

代襲相続人になるために、特別な手続きなどは必要ありません。民法に定められた代襲相続が生じる要件を満たした場合、当然に代襲相続が発生します。

相続人として、代襲相続が発生しているかを知るためには、戸籍謄本類を確認することになります。通常は、相続人が誰かを調べるために戸籍謄本を収集していく中で、「被相続人の子供は亡くなっているが、孫がいる」といったように、代襲相続人の有無が分かります。

代襲相続人はどこまで?

さて、以上の3つのケースにおいて代襲相続が発生するわけですが、相続人の子供は誰でも代襲相続人になれる、というものではありません。
そこで、代襲相続人になる人・ならない人について、具体的な範囲を見ていきましょう。

1.直系卑属(孫)

一般的なケースとして、被相続人の子供が相続開始前に死亡している場合、その子供、つまり被相続人の孫が代襲相続人となります。

なお、直系卑属については、子から孫への代襲相続だけで終わらず、さらに孫からひ孫へ、ひ孫から玄孫への再代襲も認められています。
再代襲とは、代襲相続人となるはずだった人が相続開始前にすでに死亡している場合、その直系卑属がさらに相続権を引き継ぐ制度です。そして、代襲相続人が被相続人の子供や孫などの直系卑属の場合、何代先までも再代襲を繰り返すことができます。

例えば、被相続人には子供A、孫B、ひ孫Cと直系卑属がいるとしましょう。被相続人が亡くなって相続が開始する前に、子供Aが亡くなっていれば、Aの代襲相続人である孫Bが相続権を引き継ぎます。まずこれが1回目の代襲相続です。さらに、この孫Bも相続開始時に亡くなっていた場合、孫Bの相続権をひ孫Cが引き継ぐことになります。これは2回目の代襲相続なので、「再代襲」となります。

また、被相続人の「子供」に関してですが、配偶者との間に生まれた子だけでなく、元配偶者との間の子や、認知した婚外子なども含まれますので、代襲相続人について確認する際には注意が必要です。

2.兄弟姉妹の子(甥姪)

被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合、その兄弟姉妹が相続開始前に死亡していた場合には、甥や姪が代襲相続人となります。ただし、兄弟姉妹の代襲相続は甥や姪までが対象となり、さらにその次の世代(甥や姪の子供)は代襲相続人にはなりません。

兄弟姉妹に関しては、代襲相続が認められるのは甥や姪までで、再代襲は適用されないのです。この点が、直系卑属との大きな違いです。

甥姪の子供に再代襲が認められていない理由は、相続制度において直系血族の優先性を保ち、相続関係の複雑化を防ぐ、という意図があるためです。

相続においては、直系卑属(子供や孫など)が相続権を優先的に持つ一方、兄弟姉妹の子供(甥や姪)への相続権は、直系卑属がいない場合に限られます。再代襲を甥姪の子供にまで認めると、日頃ほぼ関わりのないような遠い血縁者にまで相続の範囲が広がってしまうため、直系血族に優先的に財産を残すという原則が薄れてしまいかねません。

また、相続関係は世代が下るほど複雑になり、遠い親族にも相続権が発生することによって、遺産分割の手続きが煩雑になる可能性があります。

このため、相続制度はある程度の範囲で権利を限定しているのです。

3.半血兄弟の子

父親のみが同じで母親が異なる兄弟姉妹(異母兄弟)、または母親のみが同じで父親が異なる兄弟姉妹(異父兄弟)のことを、「半血兄弟」といいます。片方の親との血縁関係しかない場合に、その兄弟姉妹の子供に代襲相続や再代襲は認められるのでしょうか。

3-1.被相続人の子供に半血兄弟がいる場合

亡くなった親の子供である半血兄弟に関しては、等しく第1順位の相続人になります。
そして、第1順位の子供については、代襲相続が認められるほか、その子供、孫、ひ孫へと、下の世代への再代襲も認められています。

3-2.被相続人に半血兄弟がいる場合

被相続人に第1順位の子供や第2順位の直系尊属が存在しない場合、次に相続人として考えられるのが第3順位の兄弟姉妹です。

この第3順位の兄弟姉妹には、半血兄弟も含まれます。

なお、相続順位こそ同順位ですが、全血兄弟と半血兄弟の相続分には違いがあり、半血兄弟の相続分は全血兄弟の2分の1となります(民法第900条4号)。

民法第900条4号 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

そして、半血兄弟にも代襲相続の制度が適用されますので、半血兄弟の子が代襲相続人になることができます。

4.養子

次に、子供が実子ではなく養子である場合の代襲相続について見ていきましょう。

4-1.被相続人の子供が養子の場合の孫

被相続人の子供が養子の場合、その養子の子供(被相続人の孫)が代襲相続人として相続できるかどうかは、養子縁組のタイミングによって異なります。

具体的には、被相続人の子供(本来の相続人)が養子として迎えられた後に生まれた孫であれば、その孫は代襲相続の対象となります。これは、養子縁組が成立した時点で、養子と養親との間に法的な親子関係が発生するためです。

親子関係の成立後に生まれた孫は、法的にも被相続人の孫として扱われることになるのです。

一方、養子縁組が成立する前に生まれた孫の場合、その孫は代襲相続の資格を持ちません。養子縁組が成立する前に生まれた孫は、本来の生物学的な親との間に生まれた子であるため、被相続人から見ると法的な直系の親族関係が形成されていません(民法第727条)。

(縁組による親族関係の発生)
民法第727条 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。

この点については判例も、次のとおり養子の連れ子は原則として養親と親族関係にならないことを述べています。

民法八八七条二項ただし書において、「被相続人の直系卑属でない者」を代襲相続人の範囲から排除した理由は、血統継続の思想を尊重するとともに、親族共同体的な観点から相続人の範囲を親族内の者に限定することが相当であると考えられたこと、とくに単身養子の場合において、縁組前の養子の子が他で生活していて養親とは何ら係わりがないにもかかわらず、これに代襲相続権を与えることは不合理であるからこれを排除する必要があったことによるものと思われる(大阪高判平成1年8月10日)

したがって、養子の連れ子は被相続人との法的親子関係がないため、代襲相続人にはなりません。

ただしこの裁判例では以上のように述べた上で、例外的に養子の連れ子が、養子ではなく実子を通じて被相続人(養親)の直系卑属であるため、被相続人の代襲相続人になる、と結論付けています。養子を通しての法的親子関係がなくても、他の血縁関係を通じて被相続人の直系卑属と認められる場合には、代襲相続権が認められることを示した裁判例です。

4-2.被相続人の兄弟が養子の場合の兄弟の子

被相続人の兄弟姉妹が養子の場合に、その養子の子供が代襲相続することができるかも、養子縁組のタイミングと、その養子の子供が生まれたタイミングによって異なります。

前述した通り、養子と養親との法的な親子関係は、養子縁組が成立した日から生じることになります。そのため、まず被相続人の親と養子である兄弟姉妹の間に法的親子関係が成立していることで、養子である兄弟姉妹は被相続人と同じ相続順位者として法定相続人になることができます。

その上で、養子縁組後に子供(被相続人にとっての甥姪)が生まれていれば、この甥姪は被相続人と法的な血族関係を持つことになり、代襲相続人として認められることになるのです。

一方、被相続人の親と養子縁組をした際に、その養子にすでに子供がいる場合はどうでしょうか。このケースでは単に養子の連れ子というだけなので、被相続人との法的な血族関係がないため代襲相続人にはなりません。

このように、養子の子供が代襲相続する資格があるかどうかは、養子縁組のタイミングに依存することになるのです。

代襲相続人はあくまで亡くなった相続人の相続順位で相続人となるため、他に同順位の相続人がいない場合でも、下の相続順位者へ相続権が移ることはありません。例えば、通常は被相続人に相続順位第1順位の子供がいなければ、相続順位第2順位者である親が相続人になります。ですが、子供に子(被相続人にとっての孫)が存在する場合は、孫が第1順位者として代襲相続人になるため、第2順位者である親は相続人にならないのです。

5.代襲相続人にならない者

以上の解説を簡単にまとめますと、代襲相続人になるのは、被相続人よりも後の世代(卑属)の人に限られるということになります。そのため、「代襲相続人とならない者」については、主に次の立場の者が当てはまります。

5-1.被相続人の配偶者

配偶者は、相続順位に関係なく、常に法定相続人となります。そのため、そもそも代襲相続の対象にはなりません。

5-2.被相続人の直系尊属

被相続人の直系尊属に関しても、単純に相続順位がめぐってきたことによって法定相続人となるため、代襲相続とは異なる概念で相続人となるのです。

代襲相続人の法定相続割合

続いて、代襲相続人が実際にどれくらいの遺産を相続できるのか、相続割合について見ていきましょう。

代襲相続が発生した場合、代襲相続人が受け取る相続割合(法定相続分)は、元々の相続人(被代襲相続人)が受け取る予定だった相続割合と同じです。このため、代襲相続人は、被代襲相続人が本来受け取るはずだった遺産の全額を受け継ぐことになります。

一人の被代襲相続人に対して代襲相続人が複数いる場合は、被代襲相続人の相続分を代襲相続人同士で均等に分けることになります。

1.代襲相続人が孫の場合

それでは、代襲相続人が孫の場合の相続割合を見てみましょう。

例えば、父が亡くなり、被代襲相続人である長男がすでに亡くなっているとします。長男の法定相続分が父の遺産の2分の1だったとしましょう。

孫が代襲相続する場合

もし長男に子供が2人、つまり父から見れば孫が2人がいる場合、長男の相続分である2分の1を、孫2人で均等に分ける必要があります。それぞれの孫は、父の遺産を4分の1ずつ受け継ぐことになります。

もし長男に子供が3人、つまり父から見れば孫が3人いる場合、長男の相続分である2分の1を、3人の孫で均等に分けることになりますから、父の遺産を6分の1ずつ受け継ぐことになります。

2.代襲相続人が甥姪の場合

次に、代襲相続人が甥姪の場合の相続割合についても見てみましょう。

例えば、次男が亡くなり、次男には妻子も親もおらず、長男・長女の2人の兄弟がいたとします。このケースで、相続開始時に長男はすでに亡くなっており、長男に子供が3人いたとします。

まず、次男の遺産について、長男と長女で均等に分け合うことになるため、それぞれの法定相続分は2分の1となります。

次に、長男の代襲相続人である3人の子供(次男にとっての甥姪)が、長男の法定相続分である2分の1を3人で均等に分け合うことになるため、次男の遺産を6分の1ずつ受け継ぐことになります。

このように、代襲相続が発生すると、被代襲相続人のもともと受け取るはずだった相続分を、代襲相続人たちが均等に分けて受け継ぐことになります。

代襲相続人の相続割合を理解するためには、まず「相続割合(法定相続分)」の基本的な概念を把握することが重要です。法定相続分については、こちらの関連記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご一読ください。

3.代襲相続人の甥姪に遺留分はない

ところで前述の通り、甥や姪も状況によっては相続人になる可能性がありますが、注意すべきなのが「遺留分」の問題です。

遺留分とは、法律で保障された最低限の財産の取り分のことを言います。この遺留分ですが、請求できるのは「被相続人の兄弟姉妹以外の相続人」とされています(民法第1042条1項)。そのため、もともと兄弟姉妹には遺留分が認められておらず、その兄弟姉妹の代襲相続人となる甥や姪についても、遺留分は認められません。

代襲相続の注意点

ここまで代襲相続について詳しく見てまいりました。最後に、代襲相続の注意点について確認しておきましょう。

1.相続放棄で代襲相続は発生しない

相続放棄とは、その名の通り、特定の相続人が相続権を手放すことです。相続財産に借金などのマイナスの遺産が多い場合や、遺産を相続するより親族間のトラブルを避けたい場合などに、相続放棄が利用されます。

この相続放棄の効果は、「相続開始時点で相続人ではなかったことになる」というものです。相続開始時点で相続人ではなかったことになるわけですから、そもそも相続放棄をした人は、初めから相続人ではないということになります。

相続人ではない人の子供も当然、何も無いところから相続権を引き継ぐことはできないため、相続放棄をした人に関しては代襲相続は発生しないことになるのです。

ただし、相続放棄は被相続人ごとに判断されます。そのため、過去に別の被相続人の相続放棄をしたことがあっても、新たに発生した相続で相続放棄をしなければ、代襲相続の可能性があります。

2.遺産分割協議が困難

相続では、相続人を確定するために、戸籍謄本を収集して血縁関係を辿っていかなければなりません。そのため、世代を超えていく代襲相続があるケースでは、戸籍謄本の手間が通常のケースよりも増加しがちです。

さらに、代襲相続においては、直接の親族でない甥や姪などが相続人となることがあります。疎遠となっている親族や、所在が分からない親族を特定して、連絡を取らなければなりません。そのため、通常の相続手続きよりも煩雑で、時間がかかる場合が多いです。

なんとか相続人全員に連絡を取ったとしても、全員で都合を合わせて遺産分割協議を行うとなると、予定の調整も難しいでしょう。遺産分割協議ができたとしても、普段交流のない親族間で合意を形成するのは難しく、協議が難航する可能性が高いです。

また、遺産分割協議が成立しても、遺産分割協議書を作成する際には、相続人全員の押印が必要です。加えて、相続税の申告・納付には期限があるため、複雑な代襲相続で相続税の手続きが遅れてしまうと、税金の滞納リスクが生じる恐れもあります。

代襲相続が発生する可能性がある場合、生前に家族間で相続に関する話し合いを行う、遺言書を作成する、などの対策を取っておくことが推奨されます。

3.相続税の算定に注意

相続税の算定は、法定相続人の数によって変動するため、注意が必要です。

相続税を算定する際、遺産の総額からまず差し引くことができる基本的な控除額を「基礎控除額」といいますが、基礎控除額は法定相続人の人数に応じて変動します。

まず、基本的な基礎控除額は3,000万円とされています。そして、その控除額に、「法定相続人1人あたり600万円×法定相続人の数」の控除額が加算されることになります。
例えば、法定相続人が4人いる場合は、4人×600万円=2,400万円なので、「3,000万円+2,400万円=5,400万円」を基礎控除として遺産総額から差し引くことができることになります。

また、死亡時の保険や退職金に関する非課税枠についても、「1人当たり500万円」を基準とし、法定相続人の数に応じて算定することになります。つまり、例えば法定相続人が3人いるとしたら、3人×500万円=1,500万円なので、1,500万円までは非課税、となります。

代襲相続人は、相続税の計算においては法定相続人として扱われるため、代襲相続が生じた際には、基礎控除額や非課税枠が拡大され、相続税の総額が安くなる可能性があるのです。

代襲相続に関するQ&A

Q1.代襲相続とは何ですか?

A:代襲相続とは、相続人となるべき人が相続開始時にすでに亡くなっている場合、その人の子供(次世代)が代わりに相続権を受け継ぐ制度です。主に、被相続人の子供が死亡している場合、その子供(被相続人にとっての孫)が代襲相続人になります。

Q2.代襲相続が発生する条件は何ですか?

A:民法第887条2項の定めにより、次の3つの条件のうち、いずれかに該当する場合、代襲相続が発生することになります。

  1. 被相続人の子もしくは被相続人の兄弟姉妹が、相続の開始以前に死亡したとき
  2. 民法第891条の相続欠格の規定に該当し、その相続権を失ったとき
  3. 廃除によって、その相続権を失ったとき

Q3.兄弟の子はどこまで代襲相続が認められますか?

A:兄弟姉妹の代襲相続が認められるのは、その者の子、つまり被相続人から見て甥または姪までです。子の代襲相続のように、孫、ひ孫と続いていく再代襲は、兄弟姉妹の相続においては認められません。

まとめ

この記事では、代襲相続について弁護士が解説させていただきました。

本記事でも前述した通り、代襲相続とは、もともとの相続人がすでに亡くなっているとき、その子供や孫が代わりに相続する制度です。近年、さまざまな家族の形がありますが、そうした中で代襲相続の重要性はますます高まっています。

相続の手続きやルールは複雑なので、法的トラブルを回避しつつ円滑に進めるためには、正確な知識が必要です。代襲相続に関して疑問や不安がある場合や、具体的な手続きについてのアドバイスが欲しい場合は、法律の専門家である弁護士に相談していただくことをお勧めいたします。

弁護士法人あおい法律事務所では、弁護士による法律相談を初回無料で行っております。ぜひお気軽にお問合せいただければと思います。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。