法定相続情報証明制度とは?証明書で効率よく手続きを!デメリットも解説

法定相続人

更新日 2024.08.06

投稿日 2024.08.06

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

 

法定相続情報証明制度とは、相続手続きを効率よくできることを目的とした制度です。

相続登記や金融機関での名義変更を行う際など、従来は膨大な数の戸籍を揃えて提出する必要がありました。しかし、この制度を活用することで、手続きのたびに戸籍の束を提出する手間が省けます。

具体的には、「法定相続情報一覧図の写し」1枚を提出するだけで、複数の手続きを同時に進めることが可能となります。特に、多くの財産を持つ方々にとっては法定相続情報証明制度を利用することで大きなメリットがあるでしょう。

この記事では、法定相続情報証明制度の基本的な仕組みや利用方法、手続きの流れについて詳しく解説します。また、法定相続情報証明制度を利用するデメリットについても触れ、効果的に利用できるようサポートします。相続手続きをスムーズに進めたい方は、ぜひご一読ください。

目次

法定相続情報証明制度とは?相続人は誰かを証明する制度

相続証明書「法定相続情報一覧図の写し」を法務局が発行

法定相続情報証明制度とは、相続手続きを大幅に簡素化するための制度です。具体的には、相続人が法務局(登記所)に必要書類である戸籍謄本などを提出し、登記官がその内容を確認して法定相続人を一覧にまとめ、証明書を発行する仕組みです。この証明書は「法定相続情報一覧図の写し」と呼ばれます。

従来の相続手続きでは、戸籍謄本などを何度も用意し、複数の手続き先に提出する必要がありました。しかし、法定相続情報証明制度を利用することで、法定相続情報一覧図の写し一枚を複数の手続き先に同時に提出することができるため、手間が大幅に削減されます。例えば、相続税の申告や不動産の名義変更など、異なる手続きにおいても同じ一覧図を使うことで、効率よく進めることができます。

法定相続情報証明制度を利用することで、相続手続きが簡便化されるだけでなく、必要な通数の一覧図を取得することができるため、様々な手続きを同時並行で行うことが可能になります。法定相続情報証明制度は、特に多くの財産を相続する場合や、手続きを迅速に進めたい方にとって非常に有用な制度です。

様々な相続手続きを効率よく進めることができる

相続手続きでは、亡くなった人(被相続人)の戸籍謄本を集める必要があります。この戸籍謄本は、現在のものだけでなく、亡くなった人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を集める必要があります。これは、誰が相続人であるかを確定するためです。

従来は、このようにして時間をかけて集めた戸籍謄本の束を、相続手続きを行うさまざまな窓口に何度も提出しなければなりませんでした。例えば、銀行、税務署、不動産登記所などで、それぞれ戸籍謄本を提出する必要がありました。

また、各窓口で提出する戸籍謄本は、一般的には「原本還付」という手続きを利用することができますが、途中で戸籍謄本の束の一部を紛失してしまった場合は、再度戸籍を取得しなければならないこともあります。また、不動産登記の手続き中に戸籍謄本の原本を法務局に提出すると、手続きが完了するまでしばらく戻ってこないこともあります。

このように、相続手続きが非常に煩雑で時間がかかるものでした。

しかし、法定相続情報証明制度が導入されたことで、相続手続きが大幅に簡単になりました。

法務局が認証したA4サイズの「法定相続情報一覧図の写し」を使えば、これ1枚で複数の手続きを行うことができます。つまり、戸籍謄本の束を持ち歩く必要がなくなり、一覧図の写しだけで手続きが済むようになりました。

具体的には、以下の手続きにおいて、法定相続情報証明制度を利用することで、手続きの負担が大幅に軽減されます。

 

  • 金融機関での預貯金の払戻し
  • 税務署での相続税の申告
  • 登記所での相続登記(不動産の名義変更)
  • 自動車や株式など各種名義変更
  • 被相続人の死亡に起因する年金等手続(遺族年金、未支給年金、死亡一時金等の請求)

 

※令和2年10月26日から、被相続人の死亡に起因する各種年金等手続(例:遺族年金,未支給年金及び死亡一時金等の請求)においても、身分関係を証する書面として「法定相続情報一覧図の写し」を利用できるようになりました。

日本年金機構のホームページ「年金を受けている方が亡くなったとき」をご確認ください。

法定相続情報証明制度のデメリット

法定相続情報証明制度は非常に便利な制度ですが、利用する際にはいくつかのデメリットも存在します。以下に、主なデメリットを列挙し、それぞれ詳しく解説します。

1. 法定相続情報一覧図の作成に時間と労力を要する

法定相続情報証明制度を利用するためには、事前に「法定相続情報一覧図」を作成する必要があります。この一覧図は家系図のようなもので、作成方法が厳密に決められています。正確に作成しなければならず、そのために多くの時間と労力を要します。特に、関係者が多い場合や複雑な家族構成の場合は、正確な情報を集めるのが大変です。

2. 戸籍謄本の収集が煩雑

法定相続情報証明制度を利用するには、被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類を集める必要があります。これには、過去の住所地の役所から戸籍を取り寄せるなど、多くの手間がかかります。また、場合によってはその他の戸籍謄本類も必要となることがあり、その収集に時間がかかります。

3. 証明書の受け取りに時間がかかる

登記所へ法定相続情報証明書の発行を申請しても、すぐに交付されるわけではありません。申出後、受け取るまでに1~2週間かかることが一般的です。このため、急いで相続手続きを進めたい場合には、この期間がデメリットとなります。

4. 対応していない金融機関などがある

法定相続情報証明書は、すべての相続手続きに利用できるわけではありません。不動産や車の名義変更には使えますが、金融機関や証券会社によっては受け付けてもらえない場合があります。金融機関によっては、法定相続情報証明書ではなく、従来の戸籍謄本の原本を要求するところもあります。

5. 再発行手続きができるのは申出人のみ

法定相続情報証明書の再発行は、申出人本人しか申請できません。つまり、最初に申請を行った人以外の相続人や関係者は、再発行を受けられないという制約があります。このため、再発行が必要な場合には、最初に申請した人が対応しなければならず、不便を感じることがあります。

法定相続情報証明制度のメリット

法定相続情報証明制度には多くのメリットがあります。以下に、主なメリットを列挙し、それぞれ詳しく解説します。

1. 手数料は無料

法定相続情報証明制度の利用には一切の手数料がかかりません。法務局から証明書である「法定相続情報一覧図」を発行してもらえるにもかかわらず、無料で取得できます。

特に複数の相続手続きを行う場合、費用を気にせずに利用できることが非常に魅力的です。

2. 相続登記や名義変更など複数の相続手続きを楽に進められる

法定相続情報証明制度を利用することで、相続登記や車、預貯金などの名義変更の際に戸籍謄本類を何度も集め直す必要がなくなります。従来は各手続き先でそれぞれ戸籍謄本を提出しなければならず、多くの手間と時間がかかりました。しかし、法定相続情報一覧図を使えば一度の手続きで済むため、大幅に手続きが簡便化されます。特に、多数の手続きを同時に進める必要がある場合に、その効果は絶大です。

3. 証明書は5年間何度でも再発行可能

法定相続情報証明制度で発行された証明書は、一度申請するとその後5年間は何度でも再発行が可能です。これにより、一度にすべての相続手続きを完了できない場合でも、段階的に手続きを進めることができます。必要に応じて何度でも再発行を受けられるため、手続きの遅延や不備があった場合でも安心です。また、再発行の際も手数料がかからないため、安心して利用できます。

4. 代理人による申請も可能

法定相続情報証明制度では、相続人が申請できない場合には代理人に委任することが可能です。代理で申出ができるのは、相続人の親族や専門家(司法書士、弁護士など)、法定代理人です。これにより、相続人が多忙であったり、体調不良などで直接申請できない場合でも、代理人を通じて手続きを進めることができます。特に、専門家に依頼することで手続きが確実かつ迅速に行われるため、相続人にとって大きな安心感があります。

5. 郵送での申請が可能

法定相続情報証明制度の申請は、管轄の登記所へ郵送で行うことが可能です。これにより、実際に登記所に足を運ぶ必要がなくなり、時間と労力を節約できます。特に遠方に住んでいる相続人や仕事などで忙しい相続人にとっては非常に便利です。郵送での申請により、手続きのために移動する手間が省け、ストレスなく手続きを進めることができます。

法定相続情報証明制度の申出手続きの流れ

法定相続情報証明制度の申出手続きの流れについて解説していきます。

なお、法務局ホームページ「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」においても手続きの流れが説明させておりますので参照してください。

①必要書類を収集する

まず、必要書類を収集します。以下の表に、必要書類とその取得先をまとめました。

 

書類名

取得先

確認事項

被相続人(亡くなられた方)の戸除籍謄本

被相続人の本籍地の市区町村役場

出生から亡くなるまでの連続した戸籍謄本および除籍謄本を用意する必要があります。

被相続人(亡くなられた方)の住民票の除票

被相続人の最後の住所地の市区町村役場

被相続人の住民票の除票を用意する必要があります。

相続人の戸籍謄抄本

各相続人の本籍地の市区町村役場

相続人全員の現在の戸籍謄本または抄本を用意する必要があります。これらは、被相続人が死亡した日以後の証明日のものが必要です。

申出人(相続人の代表となって、手続きを進める方)の氏名・住所を確認することができる公的書類

各種公的機関

以下のいずれか一つを用意してください
・運転免許証の表裏両面のコピー※
・マイナンバーカードの表面のコピー※
・住民票記載事項証明書(住民票の写し)など
※ 原本と相違がない旨を記載し、申出人(または代理人)の記名が必要です。

以下は、状況に応じて必要となる書類の一覧です。該当する場合は以下の書類も準備しましょう。

 

書類名

取得先

確認事項

(法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合)各相続人の住民票記載事項証明書(住民票の写し)

各相続人の住所地の市区町村役場

法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載するかどうかは相続人の任意です。
※ 各相続人の印鑑証明書や戸籍の附票でも代用可能です。

(委任による代理人が申出の手続をする場合)
⑥-1 委任状
⑥-2 (親族が代理する場合)申出人と代理人が親族関係にあることが分かる戸籍謄本
⑥-3 (資格者代理人が代理する場合)資格者代理人団体所定の身分証明書の写し等

各種公的機関(⑥-2は市区町村役場)

親族が代理する場合、申出人と代理人の親族関係を証明するために必要です。
または③の書類で親族関係が確認できる場合は不要です。
資格者代理人(司法書士、弁護士など)が代理する場合に必要です。

(②の書類を取得することができない場合)被相続人の戸籍の附票

被相続人の本籍地の市区町村役場

被相続人の住民票の除票が廃棄されている場合、代わりに必要です。

(引用:法務局ホームページ「必ず用意する書類/必要となる場合がある書類」)

②法定相続情報一覧図を作成する

法定相続情報証明制度を利用するためには、申出人が法定相続情報一覧図を準備する必要があります。この一覧図は、家系図のような形式で、被相続人(亡くなった人)と相続人の情報を整理して記載します。具体的には、被相続人の氏名、生年月日、住所、出生日、本籍地、死亡年月日を記載し、相続人についても氏名、生年月日、出生日、住所(任意)を記載します。

以下は法定相続情報一覧図の例です。

(引用:法務局ホームページ「~法定相続情報証明制度について~」)

なお、法定相続情報一覧図の様式及び記載例については、法務局ホームページ「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」を参照してください。

また、当ホームページの下記ページにおいても、法定相続情報一覧図について詳しく解説しています。あわせて参照してください。

法定相続情報一覧図とは│各テンプレートの取得と自分で作成する方法

③申出書を作成して登記所に提出する

申出書には、必要事項を記入し、①で用意した書類(戸籍謄本、住民票の除票など)と、②で作成した法定相続情報一覧図を合わせて申出を行います。申出先は、以下の地を管轄するいずれかの登記所を選択できます。(参照:法務局ホームページ「管轄のご案内(リンク)」)

 

  1. 被相続人の本籍地(死亡時の本籍を指します)
  2. 被相続人の最後の住所地
  3. 申出人の住所地
  4. 被相続人名義の不動産の所在地

 

申出や法定相続情報一覧図の写しの交付(戸除籍謄抄本の返却を含む)は、登記所に直接訪問するほか、郵送で行うことも可能です。郵送による一覧図の写しの交付や戸除籍謄抄本の返却を希望する場合は、申出書にその旨を記入し、返信用の封筒および郵便切手を同封する必要があります。

登記所の窓口で受け取る場合は、受取人の確認のために、申出書の「申出人の表示」欄に記載した住所および氏名と同一のものが記載された公的書類(運転免許証、マイナンバーカード、住民票記載事項証明書など)を持参してください。

申出書の様式と記載例は下記法務局ホームページを参照してください。

 

 

④法定相続情報一覧図の写しが交付される

申出書と必要書類を提出すると、登記官による確認が行われます。この際、提出された書類の内容が正確であるかどうか、また相続人の関係性が正しく記載されているかを確認します。

登記官の確認が完了すると、法定相続情報一覧図の写しが交付されます。この写しには認証文が付されており、公的な証明書として利用することができます。

法定相続情報一覧図の写しが交付される際に、提出した戸除籍謄本等は返却されます。

⑤相続登記などの相続手続きで利用する

交付される法定相続情報一覧図の写しは、相続手続きの際にさまざまな場面で活用できます。例えば、預貯金の払戻し、不動産の名義変更、相続税の申告など、多岐にわたる相続関連の手続きにおいて、この一覧図の写しを提出することで、手続きをスムーズに進めることができます。

また、交付された写しは必要な枚数分だけ取得することが可能です。これにより、複数の手続きを同時に進める場合でも、それぞれの手続き先に同じ書類を提出することができます。さらに、再発行も可能なため、紛失や追加の手続きが発生した場合でも安心です。

法定相続情報一覧図の写しが交付されることで、相続手続き全体の効率が大幅に向上し、相続人にとっての負担が軽減されます。

法定相続情報証明制度の交付までの日数は?

法定相続情報証明制度の申出手続きから法定相続情報一覧図の写しが交付されるまでの期間は、一般的に1週間ほどかかります。ただし、この交付期間は法務局によっても、また時期によっても異なることがあります。例えば、申出が多い時期や法務局の処理能力によっては、交付までにもう少し時間がかかることもあります。逆に、早い場合には、申出の翌日に交付されることもあります。

ただし、法定相続情報証明制度の申出手続きの必要書類の準備にも時間がかかります。

法定相続情報一覧図を作成するためには、被相続人の戸籍謄本を出生から死亡まで全て揃える必要があります。この戸籍謄本は、被相続人が住んでいた自治体ごとに取得しなければならないため、複数の自治体に散らばっている場合には、それぞれの役場で手続きを行う必要があります。

遠方の自治体から戸籍謄本を取り寄せる場合、郵送手続きを利用することが多いです。この場合、郵送と返送に数日かかることが一般的です。さらに、相続関係が複雑な場合には、必要な戸籍謄本が多くなることも考えられます。そのため、必要書類を全て揃えるだけでも相当な時間がかかることがあります。

また、法定相続情報一覧図の作成にも時間がかかります。これは、被相続人と相続人の関係を明確に示すもので、家系図のような形式で作成されます。法定相続情報一覧図を正確に作成するためにも、十分な時間を確保することが大切です。また複雑なケースなどは弁護士などの専門家に依頼することをお勧めいたします。

以上を踏まえると、法定相続情報証明制度を利用する際には、申出から交付までの1週間の期間に加えて、必要書類の準備期間も考慮して、余裕を持って手続きを進めることが望ましいでしょう。

再交付を受けることができる期間と必要書類

申出人のみ5年間再交付が可能│費用も無料

法定相続情報証明制度を利用して交付された法定相続情報一覧図の写しが追加で必要になった場合、再交付を受けることが可能です。この再交付には、いくつかの条件と必要書類があります。

まず、再交付を受けることができるのは、当初の申出書に「申出人」として氏名を記載した方のみです。他の相続人は再交付を申請することができませんので、注意が必要です。この申出人が法定相続情報一覧図の再交付を申請できる期間は、申出日の翌年から起算して5年間です。この期間内であれば、いつでも再交付を申請することができます。

再交付の必要書類

再交付の手続きを行う際には、以下の書類が必要です。まず、再交付申出書を記入する必要があります。この申出書には、再交付を希望する法定相続情報一覧図の詳細を記載し、申出人の情報を明確に示す必要があります。

申請書の様式や記入例は下記法務局ホームページをご覧ください。

 

 

次に、再交付申出書とともに、以下の書類を用意します。

申出人の氏名・住所を確認することができる公的書類

 

  • 運転免許証の表裏両面のコピー
  • マイナンバーカードの表面のコピー
  • 住民票記載事項証明書(住民票の写し)

 

再交付の申出は、当初の申出を行った登記所で受け付けます。これは、申出人が作成した法定相続情報一覧図が保管されている登記所で行う必要があります。

また、再交付の申出を郵送で行う場合には、返信用の封筒および郵便切手を同封することが求められます。これにより、再交付された一覧図の写しを郵送で受け取ることができます。

法定相続情報番号で相続登記がもっと簡単に

令和6年4月1日から、不動産登記の申請において法定相続情報番号を利用することで、法定相続情報一覧図の写しを添付する手間が省けるようになりました。従来の方法では、相続登記の際に法定相続情報一覧図の写しを登記申請書に添付する必要がありました。この写しを添付することで、戸籍証明書や住民票などの添付を省略することが可能でした。

新しい制度では、法定相続情報番号(11桁の番号)を登記申請書の添付情報欄に記載することで、法定相続情報一覧図の写しそのものを省略できるようになります。この番号は、法定相続情報一覧図の右上に記載されており、登記官がその番号を確認することで、既に法務局に保管されている法定相続情報一覧図を参照できる仕組みです。

(引用:法務局ホームページ「法定相続情報番号の提供による相続登記等における法定相続情報一覧図の写しの添付省略について」)

法定相続情報番号の注意点

銀行などの他の相続手続きでは使えない

この制度は、法定相続情報自体が法務局にあることを前提としているため、銀行などの他の相続手続きでは法定相続情報番号を利用することはできません。不動産登記に特化した利便性の向上を目指したものです。

他の書類の添付は引き続き必要

ただし、法定相続情報番号を記載することで省略できるのは、法定相続情報一覧図の写しの添付のみです。遺産分割協議書や印鑑証明書、相続放棄申述受理証明書など、他の必要書類の添付は引き続き必要です。また、法定相続情報番号は法定相続情報一覧図を作成しないと発行されないため、一覧図自体の作成は依然として必要です。

法定相続情報証明制度のQ&A

Q: 申出の手続きをとる時間がありません。誰かに頼むことはできますか?

A: はい、法定相続情報証明制度の申出手続きは、資格者代理人に依頼することができます。以下の専門家に依頼することが可能です。

 

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 土地家屋調査士
  • 税理士
  • 社会保険労務士
  • 弁理士
  • 海事代理士
  • 行政書士

 

また、これらの専門家のほか、申出人の親族も代理として手続きを行うことができます。代理人に手続きを依頼する場合は委任状を提出する必要がありますのでご注意ください。

Q: 被相続人の出生から亡くなるまでの戸除籍謄本とは何ですか?

A: 被相続人の出生から亡くなるまでの戸除籍謄本とは、被相続人(亡くなった方)の生涯にわたる戸籍の記録を全て集めたものです。相続手続きでは、相続人を正確に特定するために、被相続人が生まれてから亡くなるまでの間に作成された全ての戸籍謄本や除籍謄本を確認する必要があります。

これらの戸籍謄本は、結婚や転籍、戸籍のコンピュータ化による変更などで複数に分かれている場合があります。そのため、市区町村役場で戸籍謄本を請求する際には、「相続手続きに必要なので、被相続人の出生から亡くなるまでの全ての戸除籍謄本が必要です」と伝えてください。こうすることで、必要な全ての戸籍を一度に取得できます。

Q: 法定相続情報一覧図に相続人の住所は記載しなくてもよいのですか?

A: はい、法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載するかどうかは相続人の自由です。ただし、住所を記載しておくと、その後の手続き(例えば、相続登記の申請や遺言書情報証明書の交付申請など)で相続人の住所を証明するための書類(住民票の写しなど)を提出しなくて済むことがあります。どの手続きで住所の記載が省略可能かについては、法定相続情報一覧図の写しを提出する各機関に確認することをおすすめします。

まとめ

法定相続情報証明制度は、相続手続きを大幅に効率化するための制度です。従来は、相続手続きのたびに多くの戸籍謄本や住民票などの書類を何度も提出する必要がありましたが、法定相続情報証明制度を利用することで、法定相続情報一覧図の写し一枚を提出するだけで済むため、手続きが格段に簡単になります。

さらに、令和6年4月1日からは、不動産登記の申請において法定相続情報証明制度を活用し、法定相続情報番号を利用することで、法定相続情報一覧図の写しそのものを添付する手間も省けるようになりました。これにより、相続登記手続きのさらなる効率化が期待されます。

法定相続情報証明制度には、多くのメリットがあります。まず、法定相続情報証明制度の利用は無料であり、費用負担が軽減されます。また、法定相続情報証明制度を通じて作成される法定相続情報一覧図は、一度に複数の相続手続きを同時に進めることができるため、手続きが非常に便利になります。

ただし、法定相続情報証明制度の手続きには準備が必要であり、特に戸籍謄本の収集や法定相続情報一覧図の作成には時間がかかることもあります。また、法定相続情報証明制度はすべての手続きに利用できるわけではない点も注意が必要です。

法定相続情報証明制度を上手に活用することで、相続手続きの負担を大幅に軽減し、迅速かつ効率的に進めることが可能となります。法定相続情報証明制度の利用を検討されている方はぜひ弁護士法人あおい法律事務所にご相談ください。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。