法定相続情報証明制度を徹底解説!法定相続情報とは?
何かと煩雑な手続きの多い遺産相続ですが、手続きにかかる負担を軽減できる制度があるのをご存知でしょうか。
遺産分割協議や調停の後、実際に相続登記や金融機関での手続きを行う際に、これらの手続きを効率化することを目的として設計されたのが、法定相続情報証明制度です。
不動産の相続登記や、金融機関での名義変更を行う際に、これまでは戸籍謄本の提出が必要でした。抜け漏れのないように揃えられた戸籍謄本の枚数は膨大で、しかも原本を提出しなければならなかったため、相続手続きの数が多いケースでは、戸籍謄本の取得や管理が非常に手間だったのです。
ですが、法定相続情報証明制度が導入されたことで、この手間を省くことが可能になり、相続手続きが非常に効率化されました。
具体的には、法定相続情報証明制度を利用することによって入手できる「法定相続情報一覧図」1枚が膨大な戸籍謄本の代わりとなり、たった1枚を提出することで、法務局や金融機関での複数の手続きを同時に進めることが可能となったのです。
さて、この記事では、法定相続情報証明制度の基本的な概要や、利用することのメリットとデメリットについて、弁護士が詳しく解説させていただきます。また、本制度を利用して、法定相続情報一覧図を取得するための手続きについても、簡単にご紹介いたします。
相続手続きをスムーズに進めるために、法定相続情報証明制度は欠かせません。ぜひ本記事を最後までご一読いただければと思います。
目次
法定相続情報証明制度とは?相続人は誰かを証明する制度
それでは最初に、法定相続情報証明制度の概要について見ていきたいと思います。
法務局による法定相続情報一覧図の交付制度
「法定相続情報」とは、被相続人(亡くなった人)の法定相続人に関する情報のことです。法定相続人は民法で定められた相続権を持つ人(民法第887条、889条、890条)のことを指しますので、ある被相続人に関して、民法のルールによって法律上相続人となった人に関する情報をまとめたものが法定相続情報、ということになります。
そして、この法定相続情報について一元化し、法定相続人を関係図の形式で証明書として交付する法務局の仕組みが、法定相続情報証明制度なのです。
具体的には、相続人が法務局(登記所)に必要書類である戸籍謄本などを提出し、登記官がその内容を確認して法定相続人を一覧にまとめ、「法定相続情報一覧図」という証明書を発行します。
従来の相続手続きでは、戸籍謄本などを何度も用意し、複数の手続き先に提出する必要がありました。しかし、法定相続情報証明制度を利用することで、法定相続情報一覧図の写し一枚を複数の手続き先に同時に提出することができるため、手間が大幅に削減されます。例えば、相続税の申告や不動産の名義変更など、異なる手続きにおいても同じ一覧図を使うことで、効率よく進めることができます。
法定相続情報証明制度を利用することで、相続手続きが簡便化されるだけでなく、必要な通数の一覧図を取得することができるため、様々な手続きを同時並行で行うことが可能になります。法定相続情報証明制度は、特に多くの財産を相続する場合や、手続きを迅速に進めたい方にとって非常に有用な制度です。
法定相続情報証明制度の導入の背景と意義
そもそも、なぜ法定相続情報証明制度が導入されることになったのでしょうか。
法定相続情報証明制度が導入されるまでの相続手続きでは、さまざまな申請にともなう戸籍謄本の収集が、相続人にとって大きな負担となっていました。
相続手続きでは、被相続人が出生してから死亡するまでの戸籍謄本や、相続人の戸籍謄本など、多くの書類が必要となります。
時間をかけて集めた戸籍謄本の束を、相続手続きを行うさまざまな窓口に何度も提出しなければなりませんでした。例えば、銀行、税務署、不動産登記所などで、それぞれ戸籍謄本の原本を提出する必要がありました。
各窓口で提出する戸籍謄本の原本は、手続きが終われば返却されるものの、途中で戸籍謄本の原本を一部でも紛失してしまったときには、再度その戸籍謄本を取得しなければなりませんでした。また、戸籍謄本の原本を提出すると、手続きが完了するまで戻ってこないため、他の窓口での手続きを進められないこともありました。
このように、各手続きごとに戸籍謄本の原本を提出することが求められるため、そうした手間を嫌って相続登記の手続きを行わなかったり、相続自体を放棄したりする人もいたのです。
そこで、相続手続きをより簡便なものにし、相続登記が適切に行われるよう、法定相続情報証明制度が導入されたのです。
法定相続情報証明制度により、相続手続きで必要な戸籍謄本や相続関係説明図の代わりに、法定相続情報一覧図を提出できるようになりました。
法定相続情報一覧図は、相続手続きに必要な分の写しを交付してもらえます。これまでは一箇所で戸籍謄本の原本を提出したら、その返却を待たなければ他の窓口での相続手続きに着手できませんでしたが、相続手続きに必要な数の法定相続情報一覧図を取得すれば、複数の窓口で同時に提出し、並行して手続きを進められるようになったのです。
また、戸籍謄本は紛失すると、再度市区町村役場に取得申請しなければなりませんでしたが、法定相続情報一覧図は簡単に再発行ができるため、そういったリスクも軽減することが可能となりました。
法定相続情報一覧図の作成という手間はかかるものの、A4サイズの紙1枚で完結する法定相続情報一覧図は、非常に有効的なのです。特に、戸籍謄本の提出を必要とする相続手続きが多ければ多いほど、この法定相続情報証明制度が役立つことになります。
法定相続情報は何の手続きに使えるの?
ところで、法定相続情報は、具体的にどういったシーンで利用されるのでしょうか。
法定相続情報が利用される場面は、相続手続きを進めるにあたって、相続人の確認が必要になる場合です。具体的には、以下の手続きにおいて、法定相続情報証明制度による法定相続情報一覧図が利用されることになります。
- 銀行・金融機関での預貯金の払戻し
- 税務署での相続税の申告
- 登記所での相続登記(不動産の名義変更)
- 自動車や株式など各種名義変更
- 被相続人の死亡に起因する年金等手続(遺族年金、未支給年金、死亡一時金等の請求)
銀行・金融機関での預貯金の払戻し
相続人が被相続人の預貯金を解約・名義変更する際、通常は戸籍謄本を用意して相続関係を証明しなければなりませんが、法定相続情報一覧図を提出することで、複数の金融機関での手続きを同時に進めることができます。これにより、各機関ごとに戸籍謄本の返却を待って、一箇所ずつ手続きを行う手間を省くことが可能です。
税務署での相続税の申告
相続税申告において、税務署には相続人と被相続人の関係を証明する書類が必要です。通常の戸籍謄本に代わって一覧図を提出することで、複数の相続人や複雑な相続関係でも証明が一枚で完結するため、税務署における手続きが円滑になります。
登記所での相続登記(不動産の名義変更)
不動産の相続登記では、被相続人の名義を相続人に変更する手続きが必要です。法務局に法定相続情報一覧図を提出することで、相続関係が確認でき、戸籍謄本を収集・提出する手間を省くことができます。
自動車や株式など各種名義変更
被相続人が保有していた自動車や株式の名義変更を行う際には、各手続きで相続関係を証明する書類の提出が求められます。例えば、自動車の名義変更では陸運局に対し、株式の名義変更では証券会社や企業の株式担当部門に対して、それぞれ相続人であることを証明する必要があります。通常、戸籍謄本の提出が必要とされますが、法定相続情報一覧図を提出することで、一枚の証明書で手続きを進めることが可能となり、書類収集や提出の負担が軽減されます。
被相続人の死亡に起因する年金等手続
被相続人が年金を受給していた場合、遺族年金の請求や未支給年金、死亡一時金の申請手続きが必要になります。これらの手続きでも、相続人であることを証明するための戸籍書類の提出が求められるため、一覧図を用いると効率的です。
相続登記は法定相続情報番号でより簡単になりました
以上のように、さまざまな手続きで法定相続情報証明制度は利用されていますが、近年では手続きによっては、さらに簡略化され効率化が進んでいます。
例えば、令和6年4月1日から、不動産登記の申請において「法定相続情報番号」を登記申請書に記載することで、法定相続情報一覧図を紙で提出するのを省略できるようになりました。
法定相続情報番号とは、法定相続情報一覧図の右上に記載される11桁の番号です。
従来の提出方法では、法定相続情報一覧図の写しを登記申請書に添付して提出する必要がありました。
令和6年4月からの新制度では、これがさらに簡略化され、法定相続情報番号を登記申請書の添付情報欄に記載することで、登記官がその番号を確認し、法務局に保管されている法定相続情報一覧図を参照する、という仕組みになったのです。
参照:法定相続情報番号の提供による相続登記等における法定相続情報一覧図の写しの添付省略について(法務局)
なお、銀行などの他の相続手続きでは、法定相続情報番号を利用することはできませんので、法定相続情報一覧図の写しを提出する必要があります。法定相続情報番号による手続きの簡略化は、法定相続情報と不動産の相続登記が、同じ「法務局」という機関で扱われている業務だから可能となっているのです。
法定相続情報証明制度のメリット
続いて、法定相続情報証明制度のメリットとデメリットについて見ていきたいと思います。まずはメリットについてです。
1. 発行手数料は無料で5年間何度でも再発行可能
法定相続情報証明制度の利用には、手数料がかかりません。法務局での法定相続情報一覧図の作成や写しの発行は無料で行われるため、相続手続きにおけるコスト負担が抑えられます。また、発行日から5年間有効であり、この期間中は何度でも再発行が可能です。万が一紛失してしまった場合でも、再度法務局に申請することで再発行が受けられます。複数の機関に一覧図の提出が必要な場合も、複数枚の写しを発行できるため、手続きに必要な分を簡単に用意できます。
2. 複数の相続手続きを効率的に進められる
法定相続情報一覧図を活用することで、銀行や不動産登記、株式や自動車の名義変更など、複数の相続手続きを効率的に進めることができます。従来、相続関係を証明するためには、相続人全員の戸籍謄本一式を揃え、各手続きごとに提出が求められていましたが、法定相続情報一覧図を使うことで、これらの戸籍書類の提出が不要になり、手続きが大幅に簡便化されます。複数の機関に並行して手続きを行う際も、一枚の法定相続情報一覧図で対応できるため、全体の手間が軽減されます。
3. 情報が明確・簡潔なため誤りが少なくなる
法定相続情報一覧図の申請では、法務局が戸籍謄本や住民票を確認して作成するため、一覧図自体が正式な公文書として整理され、情報に誤りが少なくなります。これにより、手続き先で相続関係に誤解が生じにくく、スムーズな対応が期待できます。
4. 公的信頼性が高い
法定相続情報一覧図は法務局で発行されるため、その内容は公的な信頼性が高く、多くの機関で相続関係の証明書として認められています。そのため、各種相続手続きにおいて証明書としての効力が高く、相続手続きをスムーズに進めることができます。
5. 戸籍謄本の紛失リスクが軽減される
相続手続きでは通常、各機関へ戸籍謄本を提出する必要があるため、紛失のリスクが増えます。しかし、法定相続情報一覧図を利用することで、各手続きにおける戸籍謄本の提出が不要になり、紛失のリスクを抑えながら書類の管理をより安全かつ効率的に行うことが可能です。
法定相続情報証明制度のデメリット
上記のようなメリットがある一方、以下のようなデメリットもあります。
1. 法定相続情報一覧図の作成に時間と労力を要する
法定相続情報証明制度を利用するためには、事前に「法定相続情報一覧図」を作成する必要があります。この一覧図は家系図のようなもので、作成方法が厳密に決められています。正確に作成しなければならず、そのために多くの時間と労力を要します。特に、関係者が多い場合や複雑な家族構成の場合は、正確な情報を集めるのが大変です。
2. 戸籍謄本の収集が煩雑
法定相続情報証明制度を利用するには、被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類を集める必要があります。これには、過去の住所地の役所から戸籍を取り寄せるなど、多くの手間がかかります。また、場合によってはその他の戸籍謄本類も必要となることがあり、その収集に時間がかかります。
3. 証明書の受け取りに時間がかかる
法定相続情報証明制度を利用して法定相続情報一覧図を申請した場合、証明書の受け取りには一定の時間がかかります。申請から交付までの期間は、法務局が戸籍謄本などの書類をもとに相続関係を確認し、一覧図を作成するための審査を行うため、即日発行は難しいのが実情です。通常、法定相続情報一覧図の交付には1~2週間程度かかることが一般的で、申請が集中する時期や申請内容が複雑な場合には、さらに時間がかかることもあります。
4. 対応していない金融機関などがある
法定相続情報証明書は、すべての相続手続きに利用できるわけではありません。不動産や車の名義変更には使えますが、金融機関や証券会社によっては、受け付けてもらえない場合があります。金融機関によっては、法定相続情報証明書ではなく、従来の戸籍謄本の原本を要求するところもあります。
5. 再発行手続きができるのは申出人のみ
法定相続情報一覧図の再発行は、初回に申請を行った「申出人」にしか手続きが認められないため、他の相続人や代理人が直接再発行を行うことはできません。このため、相続手続きの過程で一覧図が紛失・破損した場合や追加の一覧図が必要になった場合でも、申出人が再発行手続きを行わなければならず、他の相続人が手続きを進めるのを待つ必要が生じる場合があります。
法定相続情報証明制度の申出手続き
以上の法定相続情報証明制度ですが、必要な戸籍謄本等を適切に用意できれば、作成するのは特に難しくありません。法定相続情報一覧図の作成申し出の手続きの流れを簡単におさえておきましょう。
申出手続きの流れ
具体的には、以下の手順で法定相続情報一覧図を取得することになります。
- 必要書類を準備する
- 法定相続情報一覧図の原稿を作成する
- 申出書を作成して登記所に提出する
それでは、簡単に流れを見てみましょう。
①必要書類を準備する
まずは法定相続情報一覧図の作成申し出に必要な書類を準備します。一般的な必要書類は次の通りです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、改正原戸籍謄本、除籍謄本
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人全員分の現在の戸籍謄本等
- 法定相続情報一覧図の原稿
また、状況に応じて以下のような書類も必要となる場合があります。
- 各相続人の住民票の写し(一覧図に相続人の住所を記載する場合)
- 委任状(申し出を他者に委任する場合)
- 申出人と代理人が親族関係にあることを証明する戸籍謄本(親族が申し出の代理人の場合)
- 資格者代理人団体所定の身分証明書の写し(弁護士等が代理人の場合)
- 被相続人の戸籍の附票(被相続人の住民票の除票が取得できない場合)
②法定相続情報一覧図の原稿を作成する
法定相続情報証明制度では、申出人が作成した法定相続情報一覧図の原稿がベースとなって、法定相続情報一覧図が作成されます。そのため、被相続人の氏名、生年月日、住所、出生日、本籍地、死亡年月日等を記載し、相続人についても氏名、生年月日、出生日、住所(任意)を記載した原稿を用意しましょう。
なお、当ホームページの下記関連記事において、法定相続情報一覧図の作成方法を詳しく解説しておりますので、本記事とあわせてご参照ください。
③申出書を作成して登記所に提出する
法定相続情報一覧図の作成申出書に必要事項を記入し、①で用意した書類(戸籍謄本、住民票の除票など)と、②で作成した法定相続情報一覧図の原稿と共に、登記所(法務局)に提出して申し出を行います。どの登記所でも手続きができるわけではなく、管轄の登記所で行う必要があるため、事前にこちらの法務局のホームページで確認しましょう。
参照:管轄のご案内(リンク)(法務局)
法定相続情報一覧図の作成申し出や写しの交付は、登記所の窓口で行うほか、郵送で行うことも可能です。郵送による一覧図の写しの交付や戸除籍謄抄本の返却を希望する場合は、申出書にその旨を記入し、返信用の封筒および郵便切手を同封する必要があります。
登記所の窓口で受け取る場合は、受取人の確認のために、申出書の「申出人の表示」欄に記載した住所および氏名と同一のものが記載された公的書類(運転免許証、マイナンバーカード、住民票記載事項証明書など)を持参してください。
申出書と必要書類を提出すると、登記官によって、提出された書類の内容が正確であるかどうか、また相続人の関係性が正しく記載されているかが確認されます。登記官の確認が完了すると、法定相続情報一覧図の写しが交付されます。
法定相続情報一覧図の写しが交付される際に、提出した戸除籍謄本等は返却されます。
なお、法務局ホームページ「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」にて手続きの流れが掲載されていますので、こちらもぜひご覧ください。
交付までの日数は1週間程度
法定相続情報証明制度の申出手続きから法定相続情報一覧図の写しが交付されるまでの期間は、一般的に1週間ほどかかります。
ただし、この交付期間は法務局によっても、また時期によっても異なることがあります。例えば、申し出が多い時期や法務局の処理能力によっては、交付までにもう少し時間がかかることもあります。逆に、早い場合には、申し出の翌日に交付されることもあります。
また、法定相続情報証明制度の申出手続きの必要書類の準備にもある程度の日数が必要です。
法定相続情報一覧図を作成するためには、被相続人の戸籍謄本を出生から死亡まで全て揃える必要があります。この戸籍謄本は、被相続人が住んでいた自治体ごとに取得しなければならないため、複数の自治体に散らばっている場合には、それぞれの役場で手続きを行う必要があります。
遠方の自治体から戸籍謄本を取り寄せる場合、郵送手続きを利用することが多いですが、郵送と返送に数日かかることが一般的です。さらに、相続関係が複雑な場合には、必要な戸籍謄本が多くなることも考えられます。そのため、必要書類を全て揃えるだけでも相当な時間がかかってしまうのです。
ですので、法定相続情報一覧図を正確に作成するためには、余裕を持って十分な時間を確保することが大切です。複雑なケースのときは、弁護士などの専門家に依頼することをお勧めいたします。
以上を踏まえると、法定相続情報証明制度を利用する際には、申し出から交付までの1週間の期間に加えて、必要書類の準備期間も考慮し、余裕を持って手続きを進めることが望ましいでしょう。
法定相続情報証明制度の申出費用は無料
法定相続情報証明制度のメリットについてお話しした際に軽く触れましたが、法定相続情報一覧図の交付申請手続きにかかる費用は、原則として無料です。ただし、市区町村役場での戸籍謄本や住民票の取得には費用が発生するため、あくまで無料なのは「登記所における申出費用」となります。
さらに、法定相続情報証明制度を利用して交付された法定相続情報一覧図の写しが追加で必要になった場合、無料で再交付を受けることが可能です。
ただし、再交付を受けることができるのは、当初の申出書に「申出人」として氏名を記載した人に限られます。他の相続人は自分で直接法務局に再交付を申請することができないため、注意しましょう。
申出人が法定相続情報一覧図の再交付を申請できる期間は、申出日の翌年から起算して5年間です。この期間内であれば、いつでも何通でも再交付を申請することができます。
再交付の手続きを行う際には、必要事項を記入した再交付申出書と、申出人の氏名・住所を確認することができる公的書類(運転免許証やマイナンバーカード等)が必要です。最初の申し出を行った登記所の窓口か、郵送によって再交付の申請をすることになります。
法定相続情報証明制度のQ&A
Q1: 法定相続情報証明制度とは何ですか?
A: 法定相続情報証明制度は、相続手続きを簡略化するため、法務局が発行する「法定相続情報一覧図」によって、相続関係を証明する制度です。
Q2: 法定相続情報一覧図はどのような手続きで利用できますか?
A: 法定相続情報一覧図は、銀行や証券会社での預貯金や株式の解約、不動産の相続登記、相続税申告、さらには自動車の名義変更や年金手続きなどで利用できます。これにより、各手続きにおいて戸籍謄本を何度も提出する手間を省けます。
Q3: なぜ法定相続情報証明制度が導入されたのですか?
A: 法定相続情報証明制度は、相続手続きをより簡便に進めるために導入されました。相続手続きでは、被相続人の戸籍謄本を収集し、複数の機関で何度も提出する必要があり、これが相続人にとって大きな負担となっていました。この制度により、法務局で発行する「法定相続情報一覧図」を使うことで、手続きが簡略化され、相続関係の証明がスムーズに行えるようになりました。
まとめ
法定相続情報証明制度は、相続手続きを大幅に効率化するための制度です。従来は、相続手続きのたびに多くの戸籍謄本や住民票などの書類を何度も提出する必要がありましたが、法定相続情報証明制度を利用することで、法定相続情報一覧図の写し一枚を提出するだけで済むため、手続きが格段に簡単になります。
さらに、令和6年4月からは、不動産登記の申請において、法定相続情報番号を利用することで、法定相続情報一覧図の写しそのものを添付する手間も省けるようになりました。これにより、相続登記手続きのさらなる効率化が期待されます。
法定相続情報証明制度には、多くのメリットがある一方で、本記事でもご紹介した通り、時間がかかるなどのデメリットもあります。そのため、法定相続情報証明制度を利用すべきかどうか、自身の状況や必要な相続手続きに合わせて、適切に判断することが大切です。
法定相続情報証明制度を利用した相続手続きについて、疑問や不安がありましたら、お気軽に弁護士にご相談いただければと思います。弁護士法人あおい法律事務所では、相続に関するさまざまなご相談をお受けしております。当ホームページの予約フォームやお電話にて、初回無料の法律相談のご予約を受け付けておりますので、ぜひ一度ご利用ください。
この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。