自筆証書遺言保管制度とは?法務局に遺言書を預けるデメリットはある?

遺言

更新日 2026.10.20

投稿日 2024.08.06

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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日本では、遺言書の作成方法の一つとして、自筆証書遺言があります。2020年7月には「自筆証書遺言書保管制度」が導入されました。この制度では、法務局で遺言書を安全に保管し、生前に相続人に内容を見せることなく管理できます。これによって、遺言書の紛失や改ざんのリスクを抑え、相続開始後の手続を円滑に進められます。

ただし、保管には手数料がかかります。また、法務局が確認するのは主に形式面であり、遺言内容の有効性や解釈について助言を受けられるわけではありません。内容に問題がある場合には、遺言の全部又は一部が無効となったり、相続人間で争いが生じたりするおそれがあります。

この記事では、自筆証書遺言保管制度の概要とともに、そのメリットとデメリットを詳しく解説します。遺言を考える際の参考にしていただければ幸いです。

目次

自筆証書遺言書保管制度とは?遺言書を法務局で保管してくれる制度

「自自筆証書遺言書保管制度」は、自筆証書遺言書を安全に保管するために設けられた制度です。自筆証書遺言は、自ら作成できる手軽さがある一方、民法で定められた方式を満たさなければ無効となるおそれがあります。自宅で保管する場合には、紛失、隠匿、偽造又は改ざんのリスクにも注意が必要となります。また、遺族が遺言書の存在に気づかないことも少なくありません。これらの問題を解決するために、2020年7月10日からこの制度が導入されました。

自筆証書遺言書保管制度では、遺言書とその画像データを法務局で保管することができます。これにより、遺言書の紛失、隠匿、偽造又は改ざんのリスクを抑えることができます。また、遺言者が指定者通知を希望した場合などには、相続開始後に遺言書が保管されている事実が関係者に通知される仕組みもあります。利用できる遺言書保管所は、法務省のホームページで確認しましょう。

この保管制度を利用することで、原本と画像データを適正に保管し、相続開始後に遺言書の存在や内容を確認しやすくすることができます。

自筆証書遺言保管制度を利用するメリット

法務局での保管で紛失や改ざんのリスクを抑えられる

自筆証書遺言書保管制度を利用することで、遺言書の紛失や盗難、偽造、改ざんのリスクを抑えられます。法務局に遺言書の原本とその画像データを保管してもらうことで、遺言書が自宅で保管されている場合に比べて、紛失や盗難の心配が少なくなります。遺言書が法務局に保管されるため、第三者による偽造や改ざんも防ぐことができます。これにより、遺言者の生前の意思が確実に守られ、遺族に対して正確な遺言が残せます。

遺言書の形式を確認してもらえる

自筆証書遺言書保管制度を利用すると、遺言書の形式ルールを法務局でチェックしてもらえます。保管の申請時には、遺言書保管官による外形的な確認が行われます。確認の対象は、民法上の方式や保管制度上の様式に適合しているかといった形式面についてです。形式面に問題がある場合には、保管申請を受け付けてもらえません。

そのため、この制度を利用することで、遺言書が無効になるリスクを減らし、安心して自筆証書遺言を作成できるようになります。ただし、法務局のチェックは形式面に限られ、遺言書の内容の有効性を保証するものではありません。

相続人への通知で遺言書を確実に発見できる

自筆証書遺言書保管制度には、相続開始後に遺言書の存在を関係者へ知らせる通知の仕組みがあります。遺言者が指定者通知を希望した場合には、遺言書保管官が死亡の事実を確認した後、あらかじめ指定された者に対して、遺言書が保管されている旨を通知します。この通知は、遺言者が希望した場合に限られ、遺言書保管官が遺言者の死亡を確認した時点で行われます。

この仕組みは、遺言書の存在が関係者に知られないリスクを抑え、遺言内容の確認や相続手続を進めるきっかけになります。

検認手続が不要になる

自筆証書遺言書保管制度を利用することで、遺言者が亡くなった後の検認手続が不要になります。通常、自筆証書遺言が見つかった場合には、家庭裁判所で検認の手続を行い、相続人に遺言書の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の現状を明確にする必要があります。検認を要する自筆証書遺言では、相続手続に当たり、家庭裁判所の「検認済証明書」の提出を求められるのが通常です。しかし、自筆証書遺言書保管制度を利用して保管された遺言書については、相続開始後の検認は不要となります。

これにより、相続人は速やかに遺言書の内容を実行でき、遺産相続の手続きがスムーズに進めることができます。

自筆証書遺言書保管制度を利用するデメリット

遺言者本人が法務局に行く必要がある

自筆証書遺言書保管制度を利用するためには、遺言者本人が必ず法務局に出向いて申請を行う必要があります。他人に代理を依頼することや郵送での申請は認められていません。これにより、遺言者が病気や怪我で移動が難しい場合には、事実上、この制度を利用することが困難になります。例えば、高齢者や身体に不自由がある人にとって、法務局への出向は大きな負担となり、場合によっては利用を諦めざるを得ないことも考えられます。

保管できる法務局が限られている

自筆証書遺言書保管制度のデメリットとして、保管の申請を行える遺言書保管所が限られる点が挙げられます。全国の法務局すべてが遺言書の保管を扱っているわけではなく、特定の法務局のみがこのサービスを提供しています。これらの法務局は「遺言書保管所」と呼ばれ、法務省のホームページで確認することができます。

保管の申請は、遺言者の住所地又は本籍地を管轄する遺言書保管所、あるいは遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所に対して行います。

例えば、住んでいる場所から遺言書保管所が遠い場合、遺言者が保管所に出向くのは大変な手間となります。このため、遺言書の保管手続きが不便になる可能性があります。

遺言書の様式ルールに従う必要がある

自筆証書遺言書保管制度を利用するためには、遺言書の様式に関する特定のルールを守らなければなりません。例えば、用紙のサイズや余白の取り方など、細かい規定があります。保管制度上の様式を満たさない遺言書は、遺言書保管所で受け付けてもらえません。様式に不備がある場合、遺言書を作り直してから保管を申請する必要があります。

このように、遺言書を作成する際には、事前に様式ルールを確認し、それに従って正確に作成する手間と労力がかかります。たとえば、誤って用紙のサイズを間違えると、再度書き直さなければならず、時間がかかることもあります。

詳しい様式のルールについては、後ほど解説します。

氏名や住所変更時の届出が面倒

自筆証書遺言書保管制度を利用する際、遺言者の氏名や住所が変更になった場合、法務局に速やかに届出を行う必要があります。この届出は、遺言者自身の情報だけでなく、遺言書に記載された受遺者や遺言執行者の氏名や住所、死亡時の通知対象者の情報についても必要です。

変更を届け出なくても遺言書が直ちに無効となるわけではありません。しかし、通知が届かなくなったり、相続人、受遺者又は遺言執行者が閲覧・証明書請求の手続を進めにくくなったりするおそれがあります。

遺言内容の確認はしてもらえない

自筆証書遺言書保管制度を利用する際、法務局では遺言書の形式ルールについてはチェックしてもらえますが、遺言内容の確認や法的な相談は一切受けてくれません。つまり、遺言書が法律に基づいて有効かどうか、内容が適切であるかどうかは自分で確認する必要があります。遺言内容に問題があると、遺言の全部又は一部が無効となるほか、財産の特定や遺言事項の解釈を巡って争いが生じる可能性があります。

そのため、遺言書の内容については事前に専門家に相談することが重要です。弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、遺言書の内容が法令に適合しているか、遺言者が意図する財産承継を実現しやすい内容になっているかを確認できます。事前の確認は、相続開始後の解釈上の争いを減らすために有用です。

法務局での手続きは形式的な確認にとどまるため、遺言内容に関する十分な準備と確認を怠らないよう注意が必要です。

保管に費用がかかる

自筆証書遺言書保管制度を利用する際のデメリットの一つは、費用がかかることです。自筆証書遺言を自宅の金庫などで保管する場合は、基本的に費用はかかりません。しかし、法務局に遺言書を保管してもらう場合には、手数料を支払う必要があります。

手数料の詳細については後ほど詳しく解説します。

自筆証書遺言書保管制度を利用するには?手続きの方法と必要書類

自筆証書遺言書保管制度を利用するための手続きは、以下のような流れで進められます。

①遺言書を作成する│形式や書き方に細かい規定あり

保管制度を利用するには、民法上の自筆証書遺言の方式を満たすことに加え、保管制度で定められた用紙・余白などの様式上の要件にも従う必要があります。様式上の要件を満たさない場合、遺言書保管所では受け付けてもらえません。

  •  A4サイズの用紙を使用します。
  • 文字の判読を妨げる模様や彩色のない用紙を使用します。一般的な罫線入りの用紙は使用できます。
  • 上部5mm、下部10mm、左20mm、右5mmの余白を確保します。余白に文字がはみ出していると書き直しが必要です。
  • 用紙の片面のみに記載します。両面に書かれた遺言書は受け付けられません。
  • 遺言書が複数ページにわたる場合は、本文と財産目録を通じて、各ページに総ページ数が分かる形式の通し番号を余白内に記載します。遺言書が1枚のみの場合は、ページ番号の記載は不要です。
  • 遺言書の各ページはホチキスやクリップで綴じずに、バラバラのままで提出します。封筒に入れる必要もありません。
  • 遺言書は長期間保存されるため、消えにくいボールペンや万年筆を使用します。消えるインクは避けましょう。
  • 遺言者の氏名は戸籍どおりの正式な氏名を使用します。外国籍の方は公的書類に記載された氏名を記載します。ペンネームやニックネームは使用できません。

遺言書の書き方や文例、自筆証書遺言保管制度を利用する際の書き方の注意点などについては、下記記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

「遺言書の書き方と例文│自筆証書遺言が無効にならないための作成方法」

②保管の申請をする遺言書保管所を決める

次に行うのは保管の申請をする法務局、つまり「遺言書保管所」を決めることです。保管の申請先は、遺言書保管所として指定された法務局に限られます。申請先となる遺言書保管所は、法務省のホームページで確認できます。

実際に遺言書を保管してもらうためには、次の3つのうちいずれかの条件を満たす遺言書保管所を選ぶ必要があります。

  1. 遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所
  2. 遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
  3. 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所

③申請書を作成する

次に行うのは申請書の作成です。遺言書を法務局に保管してもらうためには、遺言書だけでなく、申請書も準備する必要があります。申請書の様式や記載例は法務省のホームページに掲載されていますので、これを参考にして正確に記入しましょう。

申請書には、以下の情報を記載します。

  • 遺言者の氏名、生年月日、住所
  • 受遺者等又は遺言執行者等の氏名・住所

なお、死亡時の通知を希望する場合は、「死亡時の通知の対象者欄」にチェックを入れ、通知対象者の氏名や住所などの必要事項を記載する必要があります。

④保管の申請の予約をする

  1. 法務局手続案内予約サービスの専用ウェブサイトで予約する(24時間365日利用可能)
  2. 遺言書保管所へ電話または窓口での予約する(平日9時から17時まで。土日祝日・年末年始を除く)

注意点として、予約は手続きする本人が行い、30日先までの予約が可能です。当日の予約はできません。また、夫婦でそれぞれ遺言書の保管申請を行う場合は、各自1件ずつの予約が必要です。

⑤遺言者本人が遺言書保管所で保管の申請をする│必要書類と費用

予約した日時に、遺言者本人が遺言書保管所に出向いて保管の申請を行います。その際、以下のものを用意して持参してください。

遺言書

ホチキス止めや封筒に入れず、バラバラのまま持参します。

保管申請書

事前に記入して持参します。

添付書類

本籍と戸籍の筆頭者が記載された住民票の写し(マイナンバーや住民票コードの記載がない、作成後3か月以内のもの)

顔写真付きの本人確認書類

マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、旅券など、官公署が発行した顔写真付きの本人確認書類を持参します。有効期限がある書類は、有効期限内のものが必要です。

手数料

遺言書の保管申請手数料は1通につき3,900円です。手数料は収入印紙で納付します。収入印紙は持参し、手続当日に担当者の指示に従って手数料納付用紙に貼付して納付します。

この表を参考にして、必要な書類を準備してください。

一度保管した遺言書は、保管の申請を撤回しない限り返却されませんので、注意してください。これらの準備を整えて、確実に手続きを進めましょう。

⑥保管証を受け取る

遺言書、申請書、添付書類に問題がなく、手数料の納付が完了すると、手続きが終了します。手続き終了後に「保管証」が発行されます。この保管証には、遺言者の氏名、出生年月日、手続きを行った遺言書保管所の名称、および保管番号が記載されています。保管番号は、保管した遺言書を特定するための重要な番号です。

保管証は再発行ができないため、紛失しないように注意してください。また、遺言書保管所に遺言書を預けていることを家族などに伝える際、保管証の写しを渡しておくと安心です。保管番号が分かると、遺言書の閲覧、保管の申請の撤回、変更の届出、相続開始後に相続人が遺言書情報証明書の交付を請求する際に便利です。

自筆証書遺言保管制度│02遺言者の手続

引用:法務局ホームページ「自筆証書遺言保管制度│02遺言者の手続」

相続人が遺言書を閲覧する際の手続き方法

相続開始後は、相続人、受遺者、遺言執行者などの関係相続人等が、遺言書保管所に対して遺言書の閲覧を請求できます。なお、遺言者本人は、生前であっても自ら保管した遺言書を閲覧できます。以下は、遺言書の閲覧手続きの流れです。

1. 閲覧の請求をする遺言書保管所を決める

遺言書の閲覧には、モニターによる画像閲覧と原本の閲覧があります。モニターによる閲覧は全国すべての遺言書保管所で可能ですが、原本の閲覧は遺言書が保管されている遺言書保管所でのみ行えます。

2. 請求書を作成する

閲覧請求書に必要事項を記入します。請求書の様式は法務省のホームページからダウンロードでき、遺言書保管所の窓口にも備え付けられています。

3. 閲覧の請求の予約をする

閲覧を希望する日時を予約します。これにより、スムーズに手続きを進めることができます。

4. 閲覧の請求をする

予約した日時に、以下のものを持参して遺言書保管所に行きます。

  • 閲覧の請求書
  • 相続開始後は、相続人、受遺者、遺言執行者などの関係相続人等が、遺言書保管所に対して遺言書の閲覧を請求できます。なお、遺言者本人は、生前であっても自ら保管した遺言書を閲覧できます。
  • 顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、旅券など)
  • 手数料(モニター閲覧: 1,400円、原本閲覧: 1,700円)

手数料は収入印紙を手数料納付用紙に貼って納付します。

5. 閲覧をする

遺言書保管所で、遺言書の内容をモニターで閲覧するか、原本を閲覧します。これにより、遺言書の内容を確認することができます。

自筆証書遺言保管制度の費用一覧

自筆証書遺言書保管制度で主に利用される手続の手数料を一覧にまとめました。なお、網羅的な一覧とする場合は、「申請書等・撤回書等の閲覧の請求」(1件につき1,700円)も追加してください。

手続き内容

申請人

手数料 

遺言書の保管申請

遺言者

3,900円/通

モニターによる遺言書の閲覧の請求

遺言者・関係相続人等

1,400円/回

遺言書の原本の閲覧の請求

遺言者・関係相続人等

1,700円/回

遺言書情報証明書の交付請求

関係相続人等

1,400円/通

遺言書保管事実証明書の交付請求

関係相続人等

800円/通

証明書について、詳しくは、法務局ホームページ「自筆証書遺言保管制度│05 証明書について」を参照してください。

自筆証書遺言書保管制度と公正証書遺言の選び方

手書きできない場合は公正証書遺言を

自筆証書遺言書保管制度では、遺言者が財産目録以外の全文を手書きする必要があります。また、法務省令で定められた様式に従い、無封の状態で提出しなければなりません。

一方、公正証書遺言では、遺言者が遺言内容を公証人に口授し、公証人が公正証書を作成します。遺言者の自書は不要であり、病気などにより署名又は電子サインができない場合にも、公証人が法令に基づく代替措置をとることで作成できる場合があります。

手書きの負担を軽減したい場合には、公正証書遺言が適しています。

遺言書の内容を確認してもらいたい場合は公正証書遺言を

自筆証書遺言保管制度を利用する場合、法務局では遺言書の内容に関する質問や相談には応じられません。つまり、遺言書の内容については遺言者自身がすべて責任を負うことになります。

一方、公正証書遺言では、公証人に遺言内容の相談や作成の依頼をすることができます。作成に当たっては、公証人が遺言者の意思を確認し、提出資料を踏まえて遺言内容を整理します。このような手続を経て作成されるため、公正証書遺言は、遺言者の意思表示に関する証拠として一般に高い証明力を有するとされています。

遺言者本人が保管所へ行けない場合は公正証書遺言を

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、遺言者本人が法務局に出向いて保管の申請を行う必要があります。法務局の職員が出張して遺言書を保管することはないため、遺言者が病気や高齢で法務局に行けない場合、この制度を利用することはできません。

一方、公正証書遺言では、遺言者が高齢や病気で公証役場に行けない場合、公証人が自宅や老人ホーム、介護施設、病院などに出張して遺言書を作成してくれます。この出張サービスにより、遺言者は自分の居場所で遺言書を作成することができ、体調や移動の不便さを気にせずに手続きを進められます。

費用を安く済ませたいなら自筆証書遺言書保管制度

自筆証書遺言書保管制度の保管申請手数料は、遺言書1通につき3,900円です。公正証書遺言では、財産の価額や受益者の数、証書の交付費用、出張の有無などにより費用が異なります。初期費用を抑えることを重視する場合には、自筆証書遺言書保管制度が選択肢となります。

相続人に通知したい場合は自筆証書遺言保管制度

自筆証書遺言書保管制度では、遺言者が指定者通知を希望している場合、遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確認した後、あらかじめ指定された者に対して、遺言書が保管されている旨を通知します。遺言書の存在を特定の関係者に伝える手段として活用できます。

一方、公正証書遺言では、相続人に遺言書の存在を知らせる制度はありません。遺言者が自ら相続人に伝えるか、遺言書のコピーを保管場所と一緒に通知するなどの対策が必要です。

遺言書の存在を確実に相続人に知らせたい場合には、自筆証書遺言保管制度を利用する方が安心です。

自筆証書遺言書保管制度に関するQ&A

Q1.自筆証書遺言書保管制度の申請がしたいのですが、遺言者本人が病気のため法務局へ行けません。どうすればよいですか?

A1. 自筆証書遺言書保管制度では、遺言者本人が法務局(遺言書保管所)に出頭して申請手続きを行うことが義務付けられています。そのため、遺言者本人が病気などで法務局に出頭できない場合は、この制度を利用することができません。

ただし、遺言者が法務局に出向く際に介助が必要であれば、付添人が同伴することは可能です。付添人のサポートを受けながら手続きを行うことができます。

もし遺言者本人が出頭できない場合は、代わりに公正証書遺言を検討してください。公正証書遺言の場合、公証人が遺言者の自宅や病院、介護施設などに出張して遺言書を作成することが可能です。公正証書遺言は、公証人が内容を確認し、法律的に有効な形で作成されるため、高度な証明力を持ち、相続手続きが円滑に進むメリットもあります。

Q2.保管の申請をした後に、遺言書の内容を変更することができますか?

A2.保管の申請をした後に遺言書の内容を変更したい場合には、保管の申請を撤回して遺言書を返還してもらいます。法務局に保管の申請を撤回する手続きを行い、遺言書を返してもらった後で、その内容を変更します。変更後、新たに作成した遺言書を再度法務局に保管申請することで、最新の遺言書のみが法務局に保管されることになります。ただし、改めて保管の申請手数料がかかります。

また、保管の申請を撤回せずに、新たな遺言書を法務局に保管申請することも可能です。この場合、古い遺言書と新しい遺言書の両方が保管されます。後の遺言が前の遺言と抵触するときは、抵触する部分について前の遺言が撤回されたものと扱われます。ただし、複数の遺言書が併存すると解釈が複雑になるため、内容を変更する場合は、従前の保管申請を撤回した上で新たな遺言書を作成・保管する方法を検討するとよいでしょう。

Q3.遺言書の閲覧をしたいのですが、保管されている法務局が遠方の場合もその法務局へ行く必要がありますか?

A3. 遺言書の閲覧方法には、遺言書原本を閲覧する方法とモニターで閲覧する方法の2つがあります。遺言書原本を直接閲覧したい場合は、遺言書が保管されている法務局(遺言書保管所)へ行く必要があります。しかし、遺言書保管所が遠方にある場合は、全国どこの法務局(遺言書保管所)でもモニターを通じて遺言書を閲覧することができます。

まとめ

自筆証書遺言書保管制度は、遺言書を法務局に安全に保管し、遺言者の意思を確実に相続人に伝えるための便利な制度です。この制度を利用することで、遺言書の紛失や改ざんのリスクを大幅に減らし、遺言内容の確実な実行をサポートします。法務局による通知には、遺言者が指定する者への通知や、関係相続人等の閲覧・証明書請求を契機とする通知の仕組みがあります。通知の対象や要件を確認し、遺言書の保管事実を誰に伝えるかをあらかじめ検討しましょう。

しかし、自筆証書遺言書保管制度には手数料がかかることや、法務局への出向が必要なことなどのデメリットもあります。法務局では遺言内容に関する法的な助言を受けられません。財産構成や相続関係が複雑な場合、又は遺言内容に不安がある場合には、弁護士・司法書士などの専門家への相談を検討しましょう。公正証書遺言は手数料が高いものの、専門家のサポートを受けられ、証明力が高いというメリットがあります。

遺言書の作成や保管方法については、費用や利便性、証明力などを考慮して、自分に最適な方法を選ぶことが重要です。自筆証書遺言書保管制度の利用を検討している方は、制度のメリットとデメリットをよく理解し、必要に応じて弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。