遺言書作成を弁護士に依頼するメリットと費用の相場

遺言

更新日 2024.03.06

投稿日 2024.03.06

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

遺言書を作るとき、多くの人が「専門家に頼むべきかどうか」という疑問にぶつかります。自分で遺言書を書くことはできますが、間違いやあいまいな言い回しがあると、家族間でトラブルが起きることがあります。また、形式に不備があればその遺言は無効となってしまいます。
その点、遺言書の作成を弁護士に依頼すると、遺言書を間違いなく遺すことができます。

弁護士に依頼するメリットは、遺言書を作成することだけではありません。弁護士は遺言を実行するための手続きを進めることもできます。弁護士費用については気になるところですが、家族の紛争を避け、スムーズに相続を進めるためには、依頼する価値はあると言えます。

この記事では、弁護士に依頼するメリット、どのくらい費用がかかるか、そして他の専門家とどう違うかなどを、わかりやすく解説します。

目次

遺言書作成は弁護士に依頼するべき!4つのメリット

無効になるリスクを避けられる

遺言書の作成を弁護士に依頼する最大のメリットは、遺言書が無効になる危険性を大幅に減らせることにあります。遺言書には守るべき様々なルールがあり、これらを知らないと、せっかく作成した遺言が無効になる恐れがあります。

例えば、自筆証書遺言では、全文を自筆で書く、日付を明記する、署名と押印をするといったルールがあります。これらの一つでも間違えると、遺言書は無効になります。また、公正証書遺言の場合は、適格な証人が必要ですが、これも間違えると遺言書は無効です。

弁護士はこれらのルールを熟知しており、遺言書が法的に正しい形で作成されるようにサポートします。自分で調べて作成するよりも、弁護士に依頼することで、遺言書が無効になるリスクをほとんどなくすことができるのです。

自筆証書遺言・公正証書遺言どちらにすべきかを決めることができる

遺言書には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類がありますが、最も一般的なのは自筆証書遺言公正証書遺言です。
自筆証書遺言は、遺言者が自ら手書きで作成するもので、比較的簡単に作成できるメリットがあります。しかし、自筆証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必要になり、また保管場所が不明確だと遺言書が見つからない可能性もあります。

一方、公正証書遺言は公証人によって作成され、公証役場に保管されます。これにより、安全性が高まり、遺言書が行方不明になるリスクを軽減できます。ただし、自筆証書遺言と比較すると、作成には手間や費用がかかります。
弁護士に遺言書の作成を相談することで、個々の状況に合わせて最適な遺言書のタイプを決定することができます。例えば、公正証書遺言は確実に有効な遺言を残すのに適していますが、緊急性がある場合には証拠を確保しながら自筆証書遺言を選択することも可能です。

弁護士は、遺言者の具体的な状況や、将来発生するかもしれないトラブルを考慮して、最も適切な遺言書の形式を提案してくれます。

相続財産の正確な調査と記載ができる

遺言書を作成する際、相続財産をどのように分けるかが重要なポイントです。分け方を指定するためには、相続財産を全て把握し、正確に記載することが必要です。弁護士に依頼すると、相続財産の調査と記載を正確に行うことができるため、大きなメリットがあります。

遺言書に記載されていない財産があった場合は、遺言者の意志に従って分割することができません。そのため、相続財産が多い方は、弁護士に相談することで、遺言書に全ての財産をしっかりと記載し、意志に沿った遺産分割が実現できるようになります。
特に、不動産や株式などの価値の評価が難しい財産がある場合などは、どのように財産を評価し、遺言書に記載すべきかについて弁護士が的確にアドバイスすることができます。さらに、分割が難しい財産について、どのように相続させればトラブルが少ないかについても、具体的な提案をしてくれます。

死後の相続トラブルへの対策ができる

弁護士に遺言書の作成を依頼する大きなメリットのひとつは、死後の相続トラブルを未然に防ぎ、万が一発生してもスムーズに解決できるようサポートしてもらえることです。相続は感情的な問題が絡むため、相続人同士の話し合いだけでは解決が困難な場合が多々あります。弁護士がいれば、こうしたトラブルを冷静かつ公平に解決することができます。

例えば、ある遺言で「長男に全財産を相続させる」と指定した場合、次男には法的に保証された最低限の相続分、すなわち「遺留分」があります。このような場合、次男は「遺留分侵害額請求」をする可能性が高く、長男はその請求に応じる必要があります。

弁護士なら、このような遺言の内容が他の相続人にどのような感情を引き起こし、どのような事態を招くかを予測し、適切なアドバイスを行えます。たとえば、遺留分に相当する財産を次男にも確保する、あるいは遺留分侵害額請求に対応できるように現金を準備しておくなどの対策が可能です。

遺言書の内容を慎重に検討することは、相続人が自分の死後に苦労しないようにするためにとても重要です。弁護士に依頼することで、事前に対策を講じることができ、死後の相続トラブルを最小限に抑えることが可能となります。

遺言執行まで一貫して依頼できる

遺言書を作成する際、誰がどう遺言書の内容を実現するのかも大切な点です。4つ目のメリットは、弁護士を遺言執行者として指名できることです。遺言執行者とは、遺言に書かれた内容を実現する役割を担います。遺言の執行には、金融機関での手続きや法務局での相続登記など、さまざまな作業が必要となり、これには専門的な知識と経験が求められます。
遺言の内容によっては、遺言執行者を指定していなければ実現できないこともあります。弁護士に遺言執行を依頼することで、遺言の内容をスムーズかつ確実に実行することが可能になります。

なお、遺言執行者は必ず弁護士に依頼しなければならないありません。相続人や親族などを指定することも可能です。しかし、遺言執行に慣れていない人がこれを行うと、手続きの不備が生じるリスクがあります。また、遺産を受け取る人が遺言執行者である場合、自分にとって不都合な内容の実行が遅れるなどのトラブルが起きることもあります。
そのため、弁護士に遺言執行を依頼することで、遺言書の内容が正しく実現され、予期せぬトラブルを避けることができるのです。

遺言書作成を弁護士に依頼する場合の費用の相場

遺言書の作成を弁護士に依頼した場合の費用の相場は11万円~22万円ほどです。自筆証書遺言の場合も公正証書遺言の場合も費用に差はありません。作成費用の他にも費用が発生する場合があります。それぞれ詳しく解説していきます。

費用の種類 費用の目安
相談費用 1時間あたり約1.1万円(税込)※初回無料相談の法律事務所も多い
遺言書作成費用 約11万円~22万円(税込)
その他実費 証人の公証役場への費用(日当・交通費等)
遺言書保管費 約1万円
(法務局の保管費は遺言書1通につき3,900円)
遺言執行費用 30万円から(内容や遺産額によって変動)

相談費用

弁護士に遺言書の作成について相談する際には、通常相談料が発生します。一般的な料金の相場は、1時間の相談で約1.1万円(税込)と見積もっておくと良いでしょう。ただし、この相談料は初回のみで、依頼することを決めた後は追加の相談料は発生しません。また、初回の相談を無料で行う法律事務所も多くあります。

遺言書作成費用

弁護士による遺言書の作成費用は、内容の複雑さや遺産額によって異なりますが、大体11万円から22万円程度です。遺産額が多かったり、遺産の内容が複雑な場合には、55万円を超えることもあります。

遺言書保管費用

自宅で保管しておくのも選択肢の一つですが、紛失するリスクがあるため、安全性を高めるためには弁護士に預けるという方法があります。法律事務所での保管費用は事務所によって異なりますが、一般的には年間約1万円が相場とされています。また、自筆証書遺言を選んだ場合は、法務局で遺言書を保管するという選択肢もあります。この場合、遺言書1通ごとに3,900円の費用がかかることが一般的です。

その他の実費

弁護士に遺言書の作成を依頼する際、作成費用以外にもいくつかの追加費用が必要になることがあります。例えば、弁護士が手配する証人が公証役場に行く際の日当や交通費などが別途かかります。また、遺言書の内容に誤りがないよう、印鑑登録証明書や戸籍謄本、住民票などの公的な書類の準備が必要です。これらの書類を準備する際には、それぞれの書類に関連する手数料が発生します。

遺言執行費用

弁護士に遺言執行者への就任を依頼する場合、その報酬は一般的に30万円~で、遺産の量や業務の複雑さに応じて増額することがあります。場合によっては、報酬が100万円を超えることもあります。

報酬の計算方法は、基本的には「基本手数料+財産の金額に応じた報酬」で計算されます。この基準は、2004年3月に廃止された「旧弁護士会報酬基準規定」に基づいていることが多く、現在でも多くの弁護士事務所がこの基準に沿って報酬を設定しています。
遺言執行者としての弁護士の業務には、預貯金の払い戻し、不動産の登記変更などが含まれます。これらの業務は、遺言の内容によって異なり、その複雑さや遺産の多さによって報酬が変わるのです。

法律事務所によって報酬の設定に違いがあるため、具体的な費用については依頼する前に必ず事務所に確認してください。

遺言書作成を弁護士に相談してから完成するまでの流れ

 

遺言書作成を弁護士に相談してから完成するまでの流れ

 

①初回の面談と相談

まず最初に、法律事務所へ弁護士との初回面談を申し込みます。初回面談では、遺言者の状況や希望、目的などを詳細に聞き取ります。弁護士は遺言書の内容や形式、書き方について法律的な側面からアドバイスし、弁護士に依頼するメリットや費用についても説明します。この情報を基に、遺言者は弁護士に遺言書作成を依頼するかを検討します。

②詳細な面談と原案の作成

依頼を決定した場合、さらに詳しい事情を聞き取るために再度面談を行います。この段階で、遺言者の財産状況、家族構成、遺言の詳細な希望などが再度確認されます。弁護士はこの情報をもとに遺言書の原案を作成し、遺言者に提出します。遺言者は、必要に応じて加筆や修正を行います。

③ 遺言書の作成

遺言書の内容が確定したら、実際の作成に取り掛かります。自筆証書遺言の場合は、遺言者が自ら手書きで遺言書を書き、弁護士が内容や形式に問題がないかをチェックします。公正証書遺言の場合は、弁護士が公証役場に遺言書の作成を依頼し、公証人と細かい内容の調整を行います。この段階で証人の手配も行われます。調整後、遺言者は公証役場で遺言書の作成に立ち会います。

④ 遺言書完成と保管

遺言書が完成した後、遺言者の希望に応じて弁護士が遺言書の保管を行います。定期的に遺言者と連絡を取り、遺言者の状況や意向の変化、財産の変動などを確認し、必要に応じて遺言書を更新します。また、必要に応じて法務局の遺言書保管制度の利用も案内されます。

⑤ 遺言執行

弁護士が遺言執行者に指名されている場合、遺言者が亡くなった後に遺言の内容に基づいた手続きを進めます。これには、遺産分割協議の調整、必要な法的手続きの実施、そして関連する行政機関への申請などが含まれます。弁護士は、遺言の内容が適切に実施されるように、関係者との交渉や協議を適切に行い、必要に応じてトラブルへの対応を行います。

このように、弁護士に遺言書の作成を依頼すると、初回の相談から遺言の完成、さらにはその後の保管や遺言執行まで、一貫したサポートを受けることができます。

遺言書作成は誰に依頼するべき?司法書士や行政書士、信託銀行との違い

司法書士に依頼

司法書士に遺言書の作成を依頼する大きなメリットは、特に不動産登記を含む相続関連業務を一括で依頼できる点です。相続財産の大部分が不動産である場合、司法書士は遺言書の作成と同時に不動産の登記も扱うことができます。また、弁護士に比べると費用が安くすみます。

ただし、相続トラブルには対応できないため、遺言書作成の主な目的がトラブルの回避であれば、弁護士へ依頼する必要があります。
交渉や調停の対応はできず、遺言書の作成に関しても場合によっては違法になる可能性がありますので注意が必要です。

行政書士に依頼

行政書士は主に官公庁への書類作成と提出代行を行っています。一定の法律知識を持ち、法律に基づいた書類作成が可能ですが、その専門性は主に行政機関への提出書類に限られます。相続は多岐にわたる財産や個々の事情に応じた対応が求められますが、行政書士が対応できる範囲は非常に限定的です。
相続人が1人しかおらずトラブルが想定されないようなシンプルなケースであれば、行政書士に依頼することも選択肢として考えられます。

しかし、複雑なケースや確実な相続手続きを望む場合は、弁護士に依頼することが望ましいです。

信託銀行に依頼

信託銀行は遺言書の作成から保管、執行までのパッケージサービスを提供しているところが多いです。

しかし、遺言信託料金は高額になりがちで、対応範囲は財産に関する内容に限られます。また、トラブルを防ぐための遺言の内容や遺言執行における複雑な対応に関する能力は、弁護士ほどの専門性は持っていません。

法律の専門家である弁護士に依頼するのが最もおすすめ

遺言書の作成に関しては、弁護士が最も信頼できる選択肢といえます。
司法書士や行政書士は低コストですが、相続トラブルの解決や複雑なケースへの対応力には限界があります。また、信託銀行は包括的なサービスを提供しますが、料金が高く、法的な側面での専門性に欠ける場合があります。

したがって、専門的なサポートを求める場合は、弁護士に依頼するのが最善の選択といえます。
弁護士は、遺言書の作成だけでなく、遺言の執行者としても指名することができ、遺言執行時はスムーズに手続きをサポートすることができます。

また、交渉も可能なので相続人間での理解を得やすく、弁護士の信頼性と専門性により円滑に手続きを進めることができます。
費用面では司法書士や行政書士と比べると少し高いですが、信託銀行よりは安く、専門性と安心感を考えれば、その価値は十分にあると言えるでしょう。

遺言書作成を弁護士に依頼することに関するQ&A

Q: 複雑な家族構成や不動産が関わる場合、どの専門家に遺言書作成を依頼すべきですか?

A: 不動産が含まれる場合や相続人同士の不仲、生前贈与があるなど複雑なケースやトラブルが予想されるケースでは、当初から弁護士に相談することをお勧めします。弁護士はトラブルを事前に防ぐ遺言書を作成することが可能です。また、死後に万が一トラブルが発生した場合も、対応することが可能です。

Q: 弁護士の選び方についてアドバイスはありますか?

A: 複数の法律事務所に相談し、見積もりを比較するのが良いでしょう。費用だけでなく、弁護士の相続案件に対する経験や専門性、信頼性を総合的に判断して選びます。ほとんどの法律事務所で初回無料相談がされていますので、無料相談で費用が明確か、わかりやすく丁寧に説明してくれるか、相性が良いか、事務局の対応などを確認してみるとよいでしょう。

Q: 弁護士に依頼する場合、費用はどの程度見積もっておくべきですか?

A: 遺言書の作成を弁護士に依頼した場合の費用の相場は11万円~22万円ほどです。ただし、法律事務所によって費用は異なるため、初回相談で具体的な見積もりを依頼することが重要です。弁護士費用は、事案の複雑さや遺言書作成以外の対応範囲により変動するため、複数の法律事務所から見積もりを取り、比較検討することをお勧めいたします。

Q: 弁護士に遺言書を作成してもらう際、トラブルを予防するための方法としてどのようなものがありますか?

A: 弁護士は、相続に関するトラブルを予防するためのアドバイスを提供します。具体的には、公平性を保つ遺産分割方法の提案、相続人間の不仲を避けるための配慮、生前贈与の扱い、特殊な家庭状況(前婚の子どもや認知された子どもなど)に対する対応などのアドバイスを行います。

遺言者の方は、相談の際にこれらの懸念事項を事前に弁護士に伝えることで、効果的にトラブルを未然に防ぐことができます。

まとめ

遺言書の作成は、将来発生する可能性のある相続トラブルを未然に防ぐために非常に重要です。この記事を通じて、遺言書を作成する際には専門家である弁護士のサポートを受けることがおすすめされる理由を理解していただけたことと思います。

自分で遺言書を作成することも可能ですが、法的な知識が必要であり、また、無効にならないよう正確な手続きを踏む必要があります。しかし、専門知識を持つ弁護士に依頼することで、安心して遺言書を作成することが可能です。

また、司法書士や行政書士も遺言書の作成に携わることはできますが、弁護士に比べて相続に関するトラブル対応に限界があることに注意する必要があります。特に複雑な家族構成である場合や不動産を含む遺産がある場合には、弁護士への依頼が最適です。

費用の面で不安を感じる方も、初回相談は無料で対応している事務所も多くありますので、まずは一度相談をしてみることをお勧めします。遺言書を通じて、次世代に問題を残さないためにも、弁護士のサポートを受けながら早めに準備することをご検討ください。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。