遺言書作成を弁護士に依頼するメリットと費用の相場

遺言

更新日 2026.09.28

投稿日 2024.03.06

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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遺言書を作るとき、多くの人が「専門家に頼むべきかどうか」という疑問にぶつかります。自分で遺言書を書くことはできますが、間違いやあいまいな言い回しがあると、家族間でトラブルが起きることがあります。さらに、形式に不備があればその遺言自体が無効となってしまうリスクもあります。
弁護士に依頼すれば、方式や内容の不備によって遺言書が無効となるリスクを抑え、遺言者の意思をより適切な形で残しやすくなります。弁護士に依頼するメリットは、遺言書を作成することだけではありません。弁護士に遺言を実行するための手続きを任せることもできます。弁護士費用は気になる点ですが、家族間の紛争を予防し、相続手続を円滑に進めたい場合には、依頼を検討すべきでしょう。

この記事では、弁護士に依頼するメリット、費用の目安、他の専門家との違いなどについて詳しく解説します。

目次

遺言書作成は弁護士に依頼するべき!4つのメリット

無効になるリスクを避けられる

遺言書の作成を弁護士に依頼する大きなメリットは、遺言書が無効になる危険性を大幅に減らせることにあります。遺言書には守るべきさまざまな方式があり、これらを知らないまま作成すると、遺言書が無効となるおそれがあります。

例えば、自筆証書遺言では、原則として遺言の全文、日付および氏名を自書し、押印する必要があります。ただし、財産目録については、自書によらない方式が認められる場合があります。法定の方式を満たさないと、遺言書が無効となるおそれがあります。公正証書遺言では、証人2人以上の立会いが必要です。推定相続人など、法律上証人になれない者(欠格者)を選んだ場合には、遺言書が無効となるおそれがあります。

弁護士は遺言方式や相続関係を確認し、法的な問題が生じにくい内容となるようサポートします。自専門家の助言を受けることで、方式や記載内容の不備によって遺言書が無効となるリスクを抑えられます。

自筆証書遺言・公正証書遺言どちらにすべきかを決めることができる

民法上、普通方式の遺言には、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類があります。このうち、一般的に利用されることが多いのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。

自筆証書遺言は、遺言者が自ら手書きで作成するもので、比較的簡単に作成できるというメリットがあります。原則として家庭裁判所での検認が必要ですが、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書については、検認は不要となります。また、自宅などで保管する場合は、保管場所が不明確だと遺言書が発見されないおそれがあります。

一方、公正証書遺言は公証人によって作成され、公証役場に保管されます。そのため、遺言書が行方不明になるリスクはありません。ただし、自筆証書遺言と比較すると、作成には手間や費用がかかります。

弁護士に相談すれば、財産の内容、相続関係、緊急性、費用、保管方法などを踏まえ、状況に合った遺言方式を検討できます。公正証書遺言は方式面の安全性や保管面を重視する場合に選ばれやすく、自筆証書遺言は早期に作成したい場合や内容を秘密にしたい場合に検討されます。弁護士は、将来想定される争点も踏まえて、適した形式を提案します。

相続財産の正確な調査と記載ができる

遺言書を作成する際、相続財産をどのように分けるかが重要なポイントです。財産の分け方を指定するには、把握できる範囲で相続財産を整理し、遺言書に特定できる形で記載することが重要です。弁護士に依頼すれば、資料の確認や財産目録の整理について助言を受けられ、記載漏れや特定不足のリスクを抑えられます。

遺言書に記載されていない財産について、残余財産に関する定めもない場合は、相続人間で遺産分割協議を行う必要が生じることがあります。そのため、財産を整理したうえで、必要に応じて残余財産の扱いも定めておくことが重要です。そのため、相続財産が多い方は、弁護士に相談することで、相続財産の記載漏れを防ぎ、遺言者の意思に適う遺産分割の実現が期待できます。
また、不動産や株式など、評価や分割が難しい財産がある場合には、財産の特定方法や分け方についても弁護士から助言を受けられます。必要に応じて、不動産鑑定士や税理士などと連携しながら、相続人間の争いが生じにくい方法を検討できます。

死後の相続トラブルへの対策ができる

弁護士に遺言書の作成を依頼することで、死後の相続トラブルを未然に防ぎ、万が一発生してもスムーズに解決できるようサポートしてもらえます。相続は感情的な問題が絡むため、相続人同士の話し合いだけでは解決が困難な場合が多々あります。弁護士に相談すれば、想定される争点を整理し、紛争の予防や発生後の対応について法的な助言を受けることができます。

例えば、「長男に全財産を相続させる」と定めた場合、他の子など遺留分を有する相続人との間で、遺留分侵害額請求が問題となることがあります。遺言書を作成する際には、遺留分への配慮や、請求がされた場合に備えた資金準備を含め、財産の配分を検討することが重要です。

弁護士なら、このような遺言の内容が他の相続人にどのような感情を引き起こし、どのような事態を招くかを予測し、適切なアドバイスを行えます。

遺言執行まで一貫して依頼できる

遺言書を作成する際には、誰が遺言内容を実現するのかを決めておくことも重要です。「遺言執行者」として弁護士を指定することができます。遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理や各種手続を行います。遺言の執行には、金融機関での手続きや法務局での相続登記など、さまざまな作業が必要となり、これには専門的な知識と経験が求められます。
遺言の内容によっては、遺言執行者の関与が必要となる事項や、遺言執行者を置いた方が手続を進めやすい事項があります。

なお、遺言執行者を必ず弁護士に依頼しなければならないわけではありません。相続人、受遺者、親族などを指定することも可能ですが、遺言執行には専門的な手続や相続人間の調整を要する場合がありますあるため、指定される人の負担や利害関係も踏まえて、適切な人物を指定する必要があります。

弁護士に遺言執行を依頼すれば、必要な手続を整理しながら遺言内容の実現を進められます。手続上の負担や相続人間の行き違いを抑え、円滑に進められる可能性が高まります。

遺言書作成を弁護士に依頼する場合の費用の相場

遺言書作成を弁護士に依頼する場合の費用は、遺言の内容、遺産額、財産の種類、依頼範囲などによって異なります。11万円~22万円ほどが相場と言えます。自筆証書遺言と公正証書遺言では、弁護士費用のほかに必要となる実費も異なるため、依頼前に見積もりを確認しましょう。

費用の種類 費用の目安
相談費用 1時間あたり約1.1万円(税込)※初回無料相談の法律事務所も多い
遺言書作成費用

約11万円~22万円(税込)※ 遺言内容、遺産額、財産の種類、依頼範囲によって異なる。

公正証書遺言の実費 公証人手数料、証人の日当・交通費、必要書類の取得費用など。
遺言書保管費 約1万円
(法務局の保管申請手数料は遺言書1通につき3,900円)
遺言執行費用 30万円から(内容や遺産額によって変動)

相談費用

弁護士に遺言書の作成について相談する際には、通常相談料が発生します。一般的な料金の相場は、1時間の相談で約1.1万円(税込)と見積もっておくと良いでしょう。相談料の有無や、依頼後の打合せに別途費用がかかるかどうかは、法律事務所の報酬体系によって異なります。初回相談を無料としている事務所もあるため、予約時に相談料と依頼後の費用体系を確認しましょう。

遺言書作成費用

弁護士による遺言書作成の費用は、遺言内容の複雑さ、遺産額、財産の種類、相続関係、依頼範囲などによって異なりますが、11万円から22万円程度が目安です。具体的な費用は法律事務所ごとに異なるため、依頼前に見積もりと報酬体系を確認しましょう。

遺言書保管費用

自宅で保管しておくのも選択肢の一つですが、紛失するリスクがあるため、安全性を高めるためには弁護士に預けるという方法があります。法律事務所に遺言書を保管する場合の費用は、事務所によって異なります。年間約1万円程度が相場と言えるでしょう。また、自筆証書遺言書については、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法もあります。この制度の保管申請手数料は、遺言書1通につき3,900円です。

その他の実費

弁護士に遺言書の作成を依頼する際、作成費用以外にもいくつかの追加費用が必要になることがあります。例えば、弁護士が手配する証人が公証役場に行く際の日当や交通費などが別途かかります。遺言方式や財産の内容に応じて、印鑑登録証明書、戸籍全部事項証明書、住民票、不動産の登記事項証明書などの書類が必要になる場合があります。取得する書類と手数料は手続によって異なるため、事前に確認しましょう。

遺言執行費用

弁護士に遺言執行者への就任を依頼する場合の報酬は、遺産額、財産の内容、業務の範囲、手続の難易度などによって異なります。30万円以上が目安となりますが、遺産の量や業務の複雑さに応じて増額することがあります。報酬の計算方法も法律事務所ごとに異なるため、就任を依頼する前に見積もりと報酬体系を確認することが重要です。

遺言執行者としての業務には、相続財産目録の作成、預貯金の払戻し、不動産についての相続を原因とする所有権移転登記に関する手続などが含まれます。必要な業務は遺言内容や財産の状況によって異なるため、報酬も個別に定められます。

法律事務所によって報酬の設定に違いがあるため、具体的な費用については依頼する前に必ず事務所に確認してください。

遺言書作成を弁護士に相談してから完成するまでの流れ

 

遺言書作成を弁護士に相談してから完成するまでの流れ

 

①初回の面談と相談

まず最初に、法律事務所へ弁護士との初回面談を申し込みます。初回面談では、遺言者の状況や希望、目的などを詳細に聞き取ります。弁護士は遺言書の内容や形式、書き方について法律的な側面からアドバイスし、弁護士に依頼するメリットや費用についても説明します。この情報を基に、遺言者は弁護士に遺言書作成を依頼するかを検討します。

②詳細な面談と原案の作成

依頼を決定した場合、さらに詳しい事情を聞き取るために再度面談を行います。この段階で、遺言者の財産状況、家族構成、遺言の詳細な希望などが再度確認されます。弁護士は、聞き取った内容をもとに遺言書の原案を作成し、遺言者に内容を確認してもらいます。遺言者が修正したい点がある場合、弁護士が遺言方式に適合するよう最終案を整えます。

③ 遺言書の作成

遺言書の内容が確定したら、実際の作成に取り掛かります。自筆証書遺言の場合は、遺言者が自ら手書きで遺言書を書き、弁護士が内容や形式に問題がないかをチェックします。公正証書遺言の場合は、弁護士が公証人との事前調整や証人の手配を行います。作成当日は、遺言者が証人2人以上の立会いの下で遺言の趣旨を公証人に伝え、公証人が公正証書として遺言書を作成します。

④ 遺言書完成と保管

遺言書が完成した後、遺言者の希望に応じて弁護士が遺言書の保管を行います。定期的に遺言者と連絡を取り、遺言者の状況や意向の変化、財産の変動などを確認し、必要に応じて遺言書を更新します。また、必要に応じて法務局の遺言書保管制度の利用も案内されます。

⑤ 遺言執行

弁護士が遺言執行者に指名されている場合、遺言者が亡くなった後に遺言の内容に基づいた手続きを進めます。遺言執行には、相続財産目録の作成、相続人や受遺者への通知、預貯金の払戻し、不動産の名義変更に関する手続など、遺言内容を実現するために必要な行為が含まれます。争いが生じた場合には、事案に応じて相続人等との協議や法的な対応を検討します。

このように、弁護士に遺言書の作成を依頼すると、初回の相談から遺言の完成、さらにはその後の保管や遺言執行まで、一貫したサポートを受けることができます。

遺言書作成は誰に依頼するべき?司法書士や行政書士、信託銀行との違い

司法書士に依頼

司法書士に相談するメリットの一つは、相続開始後に必要となる不動産登記の手続について、専門的な支援を受けられる点です。不動産が多い場合には、遺言書の作成支援から相続登記までを見据えて相談できます。具体的な対応範囲や費用は、事案と事務所によって異なります。

相続人間に争いがある場合や、法的な交渉・調停・訴訟対応を見据える場合には、弁護士への相談が適しています。司法書士が対応できる業務には法律上の制限があるため、遺言書の内容や紛争の有無を伝えたうえで、対応可能な業務を確認しましょう。

行政書士に依頼

行政書士は、官公署に提出する書類のほか、権利義務又は事実証明に関する書類の作成などを業務としています。

遺言書作成の支援についても対応できる範囲がありますが、相続人間の紛争への対応や訴訟代理などは業務範囲に含まれません。依頼前に、希望する支援が対応範囲に含まれるかを確認しましょう。

相続関係が比較的単純で、必要な支援が書類作成を中心とする場合には、行政書士への相談を検討できることがあります。

相続人間の利害対立が見込まれる場合や、交渉・調停・訴訟への対応が必要となる可能性がある場合には、弁護士への相談が適しています。

信託銀行に依頼

信託銀行には、遺言書作成の支援、保管、遺言執行を一体的に提供する遺言信託サービスがあります。サービス内容や料金、法律問題が生じた場合の弁護士との連携体制は金融機関によって異なるため、契約前に支援範囲と費用を確認することが重要です。

しかし、遺言信託料金は高額になりがちで、対応範囲は財産に関する内容に限られます。また、トラブルを防ぐための遺言の内容や遺言執行における複雑な対応に関する能力は、弁護士ほどの専門性は持っていません。

 

法律の専門家である弁護士に依頼するのが最もおすすめ

遺言書の内容が複雑な場合や、相続人間の紛争を予防・対応する必要がある場合には、弁護士への相談が適しています。
一方で、不動産登記を中心に検討したい場合、書類作成を中心とする場合、保管・執行を含むサービスを希望する場合には、それぞれの専門家や金融機関の支援範囲を比較して選ぶことが重要です。

したがって、専門的なサポートを求める場合は、弁護士に依頼するのが最善の選択といえます。
弁護士は、遺言書の作成支援に加え、遺言執行者として指定されることがあります。遺言執行を依頼する場合には、必要な手続や相続人等との連絡を含め、遺言内容の実現に向けた支援を受けられます。

相続人間の意見が対立している場合には、弁護士が依頼者の立場で交渉や法的対応を行うこともあります。費用や支援範囲は依頼先によって異なるため、他の専門家やサービスとも比較し、目的に合う依頼先を選びましょう。

遺言書作成を弁護士に依頼することに関するQ&A

Q1.複雑な家族構成や不動産が関わる場合、どの専門家に遺言書作成を依頼すべきですか?

A1.不動産が含まれる場合、相続人間の不和がある場合、生前贈与がある場合など、相続関係が複雑で紛争が予想されるときは、早い段階で弁護士に相談することを検討しましょう。弁護士は、将来の争点を踏まえた遺言内容について助言し、紛争が生じた場合には事案に応じた対応を検討します。護士はトラブルを事前に防ぐ遺言書を作成することが可能です。

Q2.弁護士の選び方についてアドバイスはありますか?

A2.複数の法律事務所に相談し、見積もりと支援内容を比較するとよいでしょう。費用のほか、相続案件の取扱経験、説明の分かりやすさ、連絡体制、担当弁護士との意思疎通のしやすさなどを総合的に確認します。初回相談の費用や時間は法律事務所によって異なるため、予約時に確認しましょう。

Q3.弁護士に遺言書を作成してもらう際、トラブルを予防するための方法としてどのようなものがありますか?

A3.弁護士は、相続に関する紛争を予防するため、遺留分への配慮、特別受益となり得る生前贈与の扱い、相続人間の関係、家族構成などを踏まえた遺言内容について助言します。前婚の際の子や認知した子がいる場合など、相続関係に影響する事情も、相談時に漏れなく伝えることが重要です。事前に情報を共有しておくことで、想定される争点に配慮した遺言内容を検討しやすくなります。

まとめ

遺言書は、財産の承継に関する遺言者の意思を示し、相続人間の争いを予防するための重要な手段です。自筆証書遺言、公正証書遺言などの方式には、それぞれ守るべき要件や特徴があります。

財産の内容や家族構成が複雑な場合、遺留分への配慮が必要な場合、相続人間の対立が想定される場合には、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

不動産登記、書類作成、保管・執行サービスなどを重視する場合は、司法書士、行政書士、信託銀行を含め、必要な支援範囲に応じて依頼先を比較することが重要です。費用や初回相談の有無は依頼先によって異なるため、事前に確認しましょう。早めに財産と家族関係を整理し、自身の希望に合う方法で準備を進めることが大切です。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。