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離婚届の訂正印を解説|印鑑なしでOK!間違えたら捨印が便利!

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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離婚届を書き間違えてしまったとき、また新しい用紙を貰って一から書き直すのは大変ですよね。

たとえば、「そういえば、訂正箇所に押した印鑑がシャチハタだったかもしれない!」というようなことがあると、また離婚届を持って証人のところへ行かなければならない・・・ということもあるかもしれません。

また、軽微な書き間違いひとつで離婚届の再提出を求められても、そのためだけにもう一度役所に行って対応するのは、正直大変だと思います。これらの事態を避けるためにも、離婚届の記入の際の注意点を事前に把握しておきたいですよね。

そんな離婚届の書き間違いですが、実は訂正方法はとても簡単なのです。

さて、本記事では離婚届と訂正印について詳しく解説させていただきます。

法改正により、離婚届は訂正印をはじめ押印が不要となりました。そこで、法改正前の離婚届の訂正方法と比較しながら、訂正印を押印しない法改正後の訂正方法をご説明します。

訂正印や捨印に代わる訂正方法や「捨て署名」についても、サンプルと合わせて見ていきたいと思いますので、ぜひご一読ください。

目次

離婚届と印鑑

離婚届を書き間違えたときの訂正の仕方や訂正印について解説する前に、そもそも離婚届に印鑑は必要か、という点についてご説明いたします。

離婚届の書式変更で押印は任意に

2021年、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」が公布されました。社会におけるデータの多様化や大容量化が進んだことから、データを活用することによって、行政手続きを簡易・迅速化させる狙いがあったためです。

これに伴い、戸籍法の一部が改正されました。

戸籍法の改正により、離婚届や婚姻届などの印鑑の押印義務が廃止されました。これまでは「署名押印」が必要とされていたところ、「署名」のみが必要となり、手続きが簡略化したのです。

これらの改正により、押印は義務でこそなくなりましたが、明治以来、戸籍届書には押印するよう定められていたこと、重要な文書には印鑑を押印する慣習があることなどから、署名押印をする届出人が「押印したい」のであれば、届出人の意向により任意で押印することは可能です。

なお、改正戸籍法の施行以降も、市区町村によっては押印が必要とされていた旧書式を使うことができます。

証人も押印不要

協議離婚の場合の離婚届では、2人の証人を用意し、証人からも署名を貰う必要があります。

この証人に関しても、従来は署名押印が求められていましたが、訂正印の場合と同様、押印は任意とされています。

もちろん、押印禁止ではなく「任意」に過ぎませんから、証人に押印してもらっても問題はありません。

証人の押印も訂正印のように任意となったことで、心理的に証人を頼みやすくなった、というメリットもあるようです。

離婚届の証人は成人(2022年4月1日以降は、18歳以上)していれば他人であっても頼めますが、「署名押印」と聞くと重圧に感じて断る人もいるようなので、証人を頼む際は押印不要、ということも伝えておくことで、断られる可能性が低くなるかもしれません。

離婚届を間違えたら

さて、押印は任意になりましたが、正式な文書なので印鑑を押したい、という人は少なくありません。

ですのでご参考までに、離婚届を書き損じた場合の対処法について、印鑑を押印しない場合の訂正方法と、印鑑を押印する場合の訂正方法の両方について、ご紹介させていただきます。

1.印鑑なしで訂正する方法

従来、離婚届の書き方を書き間違えたときの訂正の仕方は、二重線で消した箇所に、訂正印を押印していました。ですが、現在は、戸籍法の改正によって押印が任意となりましたので、訂正印が不要になりました。

したがって、訂正印を押印する必要はなく、離婚届の書き方を書き間違えたときも署名だけで訂正することになります。

そのため、離婚届の書き方を書き間違えたら、まず、間違えた箇所の文字の上に二重線(横線)を引いてください。そして、間違えた箇所の近くの余白に、正しい記載事項を記入しましょう。

そして、離婚届書の欄外左にある「届書中  字加入  字削除」と書いてある箇所に、訂正した文字数分の数字を記入してください。最後に、その下の署名欄に届出人の名前を署名すれば、訂正は完了です。

以上が法改正後の、訂正印を用いない離婚届の訂正のやり方です。

2.訂正印を押して訂正する方法

離婚届を書き損じてしまった時、思わず修正テープや修正液を使いたくなりますが、離婚届に修正液や修正テープを使ってはいけません。
離婚届の書き方を間違えた場合は、訂正印を使わない場合のときと同じように、まず書き方を間違えた箇所に二重線(横線)を引いてください。そして、間違えた箇所の近くの余白に、正しい記載事項を記入します。

そして、署名ではなく訂正印を押印します。

離婚届に訂正印を押す場所

訂正印を押印する場所は、訂正箇所ごとに訂正印を押印するか、離婚届の欄外左の捨印欄となります。

ただし、本籍や親権者など、離婚届の中でも重要な記載事項に関しては、欄外の捨印欄を使わずに、間違えた箇所に訂正印を押印するようにしてください。

な訂正印が多くなってしまった場合には、「新しく書き直さないといけないだろうか・・・。」と考えてしまう方もいるかもしれません。ですが、訂正箇所が複数あっても、訂正後の記載が正しければ役所に離婚届を受理してもらえます。また、離婚届の見栄えなどを気にすることもありませんので、新しく離婚届を記入し直すなどと手間をかける必要はありません。

もし不安でしたら、あらかじめ離婚届の用紙を複数枚用意しておきましょう。

離婚届の書き損じには捨印を

記入した離婚届を見直して提出しても、意外と本人が気付かない記入ミスはあるものです。たとえば、本籍の番地が間違っていたなどということもあるでしょう。

役所に離婚届を提出した後に記入ミスが発覚したとき、通常は役所から訂正を求める連絡が入ります。

しかし、離婚届の提出のタイミングによっては、既に引っ越している場合もあり、再度役所に行って訂正しなければならないのはたいへんな手間ですよね。再度役所に行くための時間を作るのも、仕事などの都合があり、なかなか難しいかと思います。

そこで、離婚届には訂正印の代わりとなる「捨印(すていん)」を押印しておくことをお勧めします。

捨印とは、あらかじめ届出書や書類の余白部分に認め印などを押印しておくことです。
普通は届出書の書き方などに書き間違いがあれば、届出人本人が訂正印を押印した上で、記載事項を修正します。

しかし、例えば、離婚後に既に県外へ引っ越していて、離婚届を郵送で本籍地の市区町村に提出していた場合などは、本人が役所へ出向いて訂正印で訂正することが難しいですよね。

そこで、訂正印の代わりとして、離婚届の提出前にあらかじめ「捨印」を押しておくのです。

捨印が押印してあれば、よほど重要な記載事項の訂正ではない限り、役所の担当者が捨印を訂正印として利用し、本人の代わりに修正してくれます。そのため、わざわざ本人が役所に出向いて訂正印で訂正する必要がなくなるのです。

このように便利な捨印は、離婚届以外にも、契約書などで一般的に広く用いられています。

なお、離婚届には、離婚する夫婦と2人の証人という、合計4名の人間が署名します。
基本的に、署名人4名の内、誰か一人が勝手に訂正した、ということがないように、4名全員が捨印を押しておく必要があります。

離婚届の欄外左の捨印欄がある場合はそこに捨印を押印しておきましょう。欄がない場合や、証人の捨印は、離婚届の用紙の左右の余白に押印しておくと良いでしょう。そのため、離婚届には、離婚する夫婦と証人2名の4名全員の捨印を押しておくと安心でしょう。

押印しない場合は「捨て署名」を

また、訂正印の代わりになる「捨て署名」も有効です。こちらも捨印と同じ役割を果たしてくれるので、当事者である夫婦のフルネームを直筆で記入しておけば、軽微な訂正であれば役所で訂正してもらえます。

離婚届にシャチハタはNG!

離婚届に押印する印鑑は、届出人である夫婦の欄も、証人の欄も、訂正印としても、シャチハタなどのゴム印を使わないようにしてください。

シャチハタではなく印鑑を使用

 

離婚して婚姻前の氏(旧姓)にもどる場合に押印する印鑑も、シャチハタは押印しないでください。

まず、シャチハタとは、インク(朱肉)が既に内蔵されているスタンプ式の印鑑のことをいいます。朱肉をつける手間が必要なく、連続して手軽に押印できることから、一般家庭で広く日常的に使われている印鑑です。たとえば、回覧板、荷物の受取などの際には、シャチハタを使用されることが多いかと思います。

たいへん便利なのですが、朱肉を使って押す印鑑(認め印など)に比べると劣化しやすく、色味によっては薄くなったり、変色しやすいというデメリットもあります。加えて、材質が特殊なゴムなので変形する恐れがあり、押印する人の力加減によっても印影(押印のあと)が変わってしまうため、役所に提出する公的な書類や届出などには使うことができません。

実印でなく認め印でOK!

シャチハタやゴム印は認められませんとご説明しましたが、かといって実印である必要もありません。

署名押印や訂正印は、実印ではなく三文判と呼ばれる認め印で大丈夫です。

認め印とは、印鑑登録をしていない印鑑で、個人が日常生活上使用するような印鑑のことをいいます。
通常、離婚届や婚姻届、各種の手続きや公正証書などに押印する印鑑は、シャチハタ不可で認め印を押印することとされています。

役所に提出する書類は、例外的な指定がない限り、認め印を押印しておくと覚えていて間違いはないでしょう。

なお、離婚届の提出までは苗字が同じだからといって、届出人欄に同じ認め印を押印しないようにしてください。夫と妻それぞれが、必ず自分の印鑑を押印するようにしましょう。

離婚届の訂正印に関するQ&A

Q1.離婚届の書き方を間違えたらどう訂正すればいいですか?

離婚届の記載事項を書き間違えたときは、まず間違えた箇所の文字の上に二重線(横線)を引いてください。そして、その近くの余白に、正しい記入をしてください。

最後に、離婚届書の欄外左にある「届書中  字加入  字削除」に訂正した文字数の数字を記入し、その下の署名欄に届出人の署名を書きましょう。これで、離婚届の訂正ができます。

Q2.離婚届の訂正に印鑑は必要でしょうか?

離婚届の訂正に、印鑑は不要です。2021年の戸籍法改正により、離婚届の押印は任意となりました。

任意なので押印しても構いませんが、必須ではなくなりました。

Q3.離婚届にシャチハタを使ってもいいですか?

離婚届の押印には、シャチハタなどのゴム印は使用しないでください。シャチハタは便利ですが、劣化しやすく、色が薄くなったり変形しやすいなどの理由から、公的書類には適していません。認め印を使うようにしましょう。

まとめ

離婚届の書き方を間違えた場合の訂正の仕方についてご説明させていただきました。

離婚届の書き方は、一つ一つは難しい記載事項はないものの、修正テープを使えなかったり、夫婦と証人の4人がそれぞれ記入する必要があったりと、意外と記入ミスや書き間違いが生じやすいものです。

そんな離婚届も、2021年の戸籍法の改正によって押印が不要となりました。

とはいえ本人が希望すれば押印することも可能です。離婚する夫婦の中には、けじめとして任意だが押印する、という方もいらっしゃるようです。

そこで本記事では、訂正印を押す場合の訂正の仕方と、訂正印を押さない場合の訂正の仕方について解説させていただきました。

離婚届の書き方を間違えたときは、慌てず対処していただければと思います。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

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