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離婚届の証人は誰に頼む?子供や代行もOK!自分で書くとバレる?リスクやデメリットも解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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離婚届を書こうとすると、用紙の右側に「証人」という記入欄があります。

この記入欄を誰に書いてもらおうか、悩んでいらっしゃる方もおられるかと思います。

また、離婚をするから証人になってほしい、と友人・知人から頼まれ、迷われている方もいらっしゃることでしょう。

そもそも、離婚届の証人とは、どういった場合に必要なのでしょうか。

素性を調べられることはあるのでしょうか。頼める人がいない場合に、自分で書くことは許されるのでしょうか。

実はそこまで知られていない離婚届の証人について、本記事では詳しく解説させていただきます。

目次

協議離婚に必要な離婚届の証人とは?

離婚届の証人とは、離婚届の「証人」欄に署名する人を意味します。

こちらの画像は、離婚届の記入例のサンプルです。用紙の右側に、「証人」という欄があります。

 

離婚届の記入例
<引用:伊豆の国市 離婚届

 

「協議離婚のときだけ必要です」とあるように、協議離婚する場合は、この証人欄を必ず記入しなければなりません。これは、次の通り、法律によっても定められています。

(婚姻の届出)

第739条

婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

2項

前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

(婚姻の届出の受理)

第740条

婚姻の届出は、その婚姻が第731条から第736条まで及び前条第2項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。

(婚姻の規定の準用)

第764条

第738条、第739条及び第747条の規定は、協議上の離婚について準用する。

それでは、なぜ離婚届に証人の署名が必要とされているのでしょうか。
これには、大きく2つの役割が期待されているからです。

1.離婚届が虚偽でないことを担保する

離婚届に証人を必要とすることによって、証人という第三者の目が入ることになります。
これにより、不正に作成された離婚届の提出を防ぐことが期待できます。

離婚届を提出すると、夫婦や親子といった身分関係が大きく変わり、扶養や相続といった法律上の権利義務関係に、重大な影響を及ぼすことになります。

例えば、婚姻中の夫婦は互いに相続人の関係にありますが、離婚をしたら元配偶者は戸籍上ただの他人となるため、相続権を失います。

このように、離婚は法律上の権利義務関係に様々な影響を生じさせます。

そこで、証人という第三者の存在によって、提出された離婚届はきちんと夫婦の合意に基づいて作成されたものであるということを担保しているのです。

なお、署名の偽造は、有印私文書偽造罪(刑法第159条1項)に、偽造した離婚届の提出は、有印私文書行使罪(刑法第161条1項)や電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法第157条1項)などの罪に問われる可能性があります。

2.離婚することに慎重になる

また、第三者を入れることで、離婚することに慎重になることも期待できます。

離婚は、親族や交友関係、仕事などにも影響を与えることになります。夫婦喧嘩をしたときの一時的な感情で離婚届を書いても、後日友人や知人に証人欄の記入を頼むことになる段階で、本当に離婚すべきなのかを考え直したり、あるいは証人になる人から、離婚についての意見を聞くことになるかもしれません。

第三者の存在が、その場の感情や軽い気持ちで離婚してしまうことを防いでくれるのです。

「保証人」とは違います!

ところで、離婚届の証人については「保証人」とよく間違えられることがあります。

証人と保証人とで意味は似ているように思われるかもしれませんが、実は全く異なるものなのです。

保証人とは、一般的に保証債務を負う人のことを意味します。

お金を借りた人が返済できなくなった場合に、借りた人の代わりに返済する義務を負う人や、家を借りている人が滞納した家賃を代わりに支払う義務を負う人などが、保証人に当たります。

これに対し、離婚届の証人は、「離婚をする夫婦が、離婚に関して合意しており、この離婚届に不正(虚偽)がないことを確認しました」という、あくまで形式的な役割です。

お金を返さなければならない保証人とは違い、法律上の義務や責任を負うことはありません。

何人必要なの?

民法第739条は、婚姻届について「成年の証人2人以上の署名」が必要と規定しています。
そして、民法第764条によって、この規定は離婚届の場合にも適用されることになるため、離婚届の証人は2人必要です。

また、夫婦のそれぞれから一人ずつ証人を出さなければいけないというわけではなく、どちらかが2人出すことで構いません。

例えば、妻が妻の友人2人に証人を頼むことも可能です。

離婚届の証人は誰に頼むべき?

それでは、離婚届の証人欄の記入を誰に頼むべきなのでしょうか。

離婚届の証人は誰でもいいの?条件はある?

離婚届の証人は、「成人(満18歳以上)」であれば誰にでも頼むことが可能です。

つまり、成人であることが、離婚届の証人になるための唯一の条件です。

民法第739条2項は「成年の証人2人以上が署名」と規定しています。ですので、当事者である夫婦以外の成人であれば、誰でも証人になることができます。

なお、これまでは成人は20歳以上とされていましたが、民法の成人年齢引き下げによって、18歳以上であれば離婚届の証人になることができるようになりました。

年齢の他に条件はなく、資格もいらないので、全く知らない人に頼むこともできます。外国籍の人や、日本国外に居住している人に証人になってもらうこともできます。

協議離婚を弁護士に依頼している場合は、協議離婚の交渉に加え、弁護士が離婚届の証人になってくれることがあります。

夫婦の片方の両親や兄弟姉妹に頼むケースが一般的です

18歳以上であれば誰にでも頼めるとはいえ、全くの知らない人に頼むという人はそこまで多くありません。

夫婦の片方の両親や、夫や妻の兄弟姉妹に頼むことが一般的です。夫婦の共通の友人に証人をお願いするケースもあります。

また、身内や親しい人ではなく、勤務先の上司や同僚といった人に頼む人もいます。

子供もなれます

証人になるための条件は成人であることですので、離婚する夫婦の子供が18歳以上であれば、子供が証人になることもできます。

ですが、両親が離婚することに消極的な子供も少なくありませんから、子供が証人として署名することを望んでいるような場合を除いて、子供に証人を頼むのは、あまりおすすめできません。

役所の人に頼むことはやめましょう

ところで、離婚届の証人を頼めるような友人・知人がおらず、提出時に役所の人に証人になってもらえないか頼んだことがある、という話を耳にしたことがあります。

ですが、離婚届の証人を役所の人に頼むのは絶対にやめましょう。

そもそも、役所は書類を「受理」する場ですから、提出する時点で証人欄もきちんと記載しておかなければなりません。書類の不備を審査し受理する立場である役所の人が、書類の内容に虚偽がないことを証明する証人になることはできません。

仮に役所の窓口で頼んでも、通常は断られることになるでしょう。

署名の代筆はバレるの?

自分で書くのは絶対にやめましょう!代筆は厳禁です

周囲に離婚届の証人を頼める人がいない、友人や知り合いに頼むのは抵抗がある・・・そんな場合でも、証人欄に両親や知人の名前を自分で書くといったことは、絶対にしないでください。

離婚届の証人欄は、代筆が認められていないため、必ず証人本人が書かなければなりません。

自分以外の第三者になりすまして、証人欄に第三者の名前で署名をして提出すると、有印私文書偽造罪(刑法第159条1項)、有印私文書行使罪(刑法第161条1項)といった罪にあたる可能性があります。

証人が本人かの確認で調べられることはある?

提出された離婚届について、証人の住所や本籍地が、住民票や戸籍に記載されているものと同じかなど、形式的な事については調べられ、不備があれば訂正を求められることがあります。

ですが、それ以上に証人の素性などを調べられることはなく、離婚届を提出する際に、役所の窓口で証人の身分証明書の提示を求められることもありません。

とはいえ、離婚届の証人欄は、証人本人以外が代筆した時点で「私文書偽造」になってしまいますから、バレなければ良いというものではありません。

また、何かをきっかけに、氏名や住所を証人欄に勝手に使われた人がそれを知るなどして、離婚届の証人欄が証人本人の署名であるかを調べられる可能性も無いとは言い切れません。

18歳以上の人であれば、誰でも離婚届の証人になってもらうことはできますし、後述の証人代行サービスなどもありますから、絶対に証人欄を自分で書くことはせず、証人本人に記入を頼みましょう。

離婚届の証人になるリスクはあるの?

離婚届の証人欄には、証人の氏名と生年月日、住所と本籍を記入しなければなりません。

この、「本籍まで記入しなければならない」というのが、証人を頼む方も頼まれた方にも躊躇いを生じさせるようです。

「離婚届の証人になることにリスクやデメリットはあるのか?何か問題があったら責任を取らされるのか?」という不安から、離婚届の証人を頼まれたけど断りました、という方も少なくありません。

それでは、離婚届の証人になることで、何らかのリスクは生じるのでしょうか。デメリットはあるのでしょうか。

デメリット無し!法的責任を問われることはありません

結論から申しますと、基本的に、離婚届の証人になることにデメリットはありません。

「証人」と「保証人」の違いでもご説明しましたが、証人はあくまで形式的な役割です。お金を借りた主債務者の代わりに弁済をしなければならなくなる保証人と違い、離婚届の証人には法的な義務や責任はありません。

滅多にありませんがトラブルに巻き込まれるリスクが考えられます

基本的に離婚届の証人になることのリスクはありませんが、離婚届を提出しようとしている当事者の状況によっては、次のようなトラブルに巻き込まれるリスクが考えられます。

離婚届を提出する当事者が揉めていて、どちらか一方が勝手に離婚届を提出してしまおうと、離婚届の証人を頼んできたような場合には注意してください。

「妻は離婚に反対しているが、どうしても離婚したいので勝手に離婚届を書いた。証人欄に署名してほしい。」

このように頼まれて署名してしまうと、有印私文書偽造罪(刑法第159条1項)、有印私文書行使罪(刑法第161条1項)や、電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法第157条1項)といった犯罪行為に加担することになってしまいます。

とはいえ、こういったトラブルは滅多にありませんし、離婚届の証人を頼まれるほどの間柄でしたら、夫婦の双方が合意している離婚であることを確認するのも難しくはないかと思います。

もし離婚届の証人を頼まれて迷われているのでしたら、署名を頼んできた当事者に「夫婦の双方に離婚する意思があり、不正の目的がないこと」をきちんと説明してもらうと良いでしょう。

調停離婚や裁判離婚の場合の離婚届

さて、離婚届の証人についてご説明いたしましたが、離婚届に証人が必要とされるのは、実は離婚が「協議離婚」である場合だけなのです。

ですが、離婚の種類には協議以外に、調停や裁判がありますよね。

それでは、調停離婚や裁判離婚の場合は必要ないのでしょうか。

協議離婚以外の離婚では離婚届に証人は必要ない

家庭裁判所で行われる離婚調停によって離婚する調停離婚や、離婚訴訟によって離婚となる裁判離婚、家庭裁判所が行う審判によって離婚が成立する審判離婚の場合は、離婚届の証人は不要とされています。

なぜかというと、調停や裁判といったケースでは、夫婦の間に裁判所が介入し、双方の離婚意思を確認しているからです。

調停離婚や裁判離婚の場合、「調停調書」や「判決」によって、離婚が成立したことが客観的に証明されています。

そもそも、離婚届の証人の大きな役割というのが「離婚が夫婦の合意によって成立していることを証明し、虚偽の離婚を防ぐ」ことなので、調停や裁判、審判によって離婚の成立が明らかにされているケースでは、離婚届に証人は必要ないのです。

頼める人がいない場合はどうすればいい?

離婚届の証人について解説させていただきましたが、実際には「知っている人に証人を頼みにくい」、「離婚することを知られたくない」という方も少なくないようで、証人を頼める人が誰もいない、とお困りの方が多いです。

証人を誰に頼んでいいかお悩みの方は、次のような手段がありますので、ご検討ください。

1.弁護士に依頼する

弁護士は法律の専門家です。

特に、離婚問題について取り扱っている弁護士でしたら、協議離婚の交渉や協議離婚に関する手続きにも精通していますので、不備の無い離婚届を用意できるよう、サポートしてもらえるでしょう。

協議離婚をご相談されている場合は、離婚届の証人になってもらえないか、あらかじめ弁護士に確認されると良いでしょう。

弁護士でしたら、職務上、守秘義務がありますので、ご依頼者の方が離婚することや、自分が証人になったことなどの情報を、外部に漏らすことは絶対にありません。

2.離婚届の証人代行サービスを利用する|概要とデメリット

証人になってくれる人を探したが、誰も見つからなかった。断られてしまった、といった場合には、どうすれば良いのでしょうか。

そんなときは、「離婚届の証人代行サービス」の利用を検討してみてください。

サービス利用料金は数千円から1万円程度で、離婚届を郵送でやり取りするものが一般的です。事業者が運営するものから、行政書士や弁護士といった専門家が行うものまで、様々な形態があります。

証人代行サービスの一般的な利用の流れを簡単にご説明しますと、次の通りです。

 

証人代行サービスの流れ

 

  1. 証人代行サービスの利用申し込みをする。
  2. 証人欄以外を全て記入・署名した離婚届を証人代行業者へ郵送する。
  3. 証人代行業者が離婚届の証人欄に署名し、依頼者へ離婚届を返送する。

このように、証人代行サービスは、証人を頼める人が見つからない場合にたいへん便利ですが、次のようなデメリットもあります。

  • 離婚届を郵送でやり取りするため、提出までに時間がかかる。
  • 離婚届の紛失・誤配などのリスクがある。
  • 数千円から1万円程度のサービス利用料や、郵送代がかかる。

証人代行サービスを利用する場合は、事前に業者のホームページなどで、手続きや費用について十分に確認しましょう。

代行業者の人を知らないので心配、という方は、行政書士や弁護士が運営する証人代行サービスを利用されると良いかと思います。

行政書士であれば、行政書士会に入会し、行政書士名簿に登録されていますし、弁護士は弁護士会に所属しています。どういった人が署名をしているのかがはっきりしているため、安心感があるかと思います。

離婚届に印鑑はいらない?押印不要なの?

離婚届の証人欄の印鑑についてですが、押印は不要となっています。

以前は、証人欄について、離婚届には印鑑が必要とされていました。

ですが、2021年の戸籍法改正により、押印義務は廃止されたので、離婚届の証人欄の印鑑も不要となりました。

なお、証人欄の印鑑は不要とされていますが、任意に押印することは可能ですので、印鑑を使うことで記載に不備ありとなって訂正を求められる、というようなことはありません。

離婚届の証人に関するQ&A

Q1.離婚届の証人と保証人は同じですか?

違います。「保証人」は、例えば主債務者が金銭を借りて弁済できなくなったときに、主債務者の代わりに金銭を弁済する人のことで、法律上の責任があります。

一方、離婚届の「証人」は、離婚届の内容が虚偽でないことを証明する形式的な役割を持っているに過ぎないため、法的責任を負いません。

Q2.離婚届の証人は誰に頼むべきですか?自分の子に頼めますか?

離婚届の証人の条件は「満18歳以上の成人」であることです。

この条件以外に資格や要件はいらないので、日本国外に居住している人や、外国籍の人に頼むことも可能です。夫婦の片方の両親や、夫婦の成人している子供、全く知らない人であっても、年齢の条件さえ満たしていれば、証人を頼むことができます。

Q3.頼める人がいないので自分で書きたい。代筆はバレますか?

自分で代筆せず、必ず証人本人に記入してもらうようにしてください。

離婚届に記載されている住所や本籍地が、住民票や戸籍に記載されているものと形式的に同じであれば、離婚届は受理されるでしょうが、証人欄を証人本人以外が書いた時点で「私文書偽造」という犯罪になってしまいます。

ですので、バレなければ良いというわけではありません。絶対に証人欄を自分で書いたり、代筆したりしないようにしてください。

誰にも頼める人がいない場合には、証人代行サービスや弁護士に依頼すると良いでしょう。

まとめ

本記事では離婚届の証人について解説させていただきました。

重要な点をまとめますと、次の通りです。

  1. 離婚届の証人は満18歳以上の成人2名がなります。
  2. 協議離婚の場合には離婚届に証人が必要ですが、調停や裁判による離婚の場合、離婚届に証人は必要ないです。
  3. 離婚届の証人に法的責任や義務はないので、基本的にデメリットはありません。
  4. 離婚届が虚偽に作成されたものと知りながら証人欄に署名すると、私文書偽造などの罪に問われる可能性があります。
  5. 身内や周囲に証人を頼める人がいない場合は、証人代行サービスや、弁護士といった法律の専門家に証人欄の署名を依頼しましょう。

離婚届をこれから書くという方は、多かれ少なかれ、証人を誰に頼むか悩まれているのではないかと思います。条件を満たして、頼める人がいる場合でも、心情的に頼みたくないこともあるでしょう。

そういった場合には、離婚届の証人について弁護士にご相談ください。

弁護士が離婚届の証人になることも可能ですし、離婚届を書く以外にも、相手方との交渉や離婚に関する手続きをサポートいたします。

まずはお気軽にお問合せいただければと思います。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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