離婚調停中にやってはいけないことは?調停を有利に進めるために
離婚調停とは、夫婦が家庭裁判所で調停委員を介して、離婚についての話し合いを進める離婚方法です。
調停委員は夫と妻のどちらかに肩入れすることはないものの、離婚調停中に調停委員や相手方の心証を悪くするような言動を取ってしまえば、離婚調停を有利に進めることが難しくなってしまいます。
離婚調停は裁判所での手続きとはいえ、相対するのは人間同士です。離婚調停中にやってはいけないことをおさえておき、少しでも離婚調停手続きを有利に進めていきたいところです。
そこで、この記事では「離婚調停中にやってはいけないこと」について、弁護士が詳しく解説させていただきます。離婚調停中にやってはいけないことには、離婚調停の期日の場でやってはいけないことや、離婚調停の期間中に、普段の日常生活の中でやってはいけないことがあります。
離婚調停を有利に進めるため、離婚調停中にやってはいけないことと、そのリスクについて見ていきましょう。
目次
離婚調停中にやってはいけないこと①「離婚したくない」と時間をかせぐ
離婚調停中にやってはいけないことの一つに、不当に時間をかせぐ行為があります。
離婚したくない人が、離婚調停を申立てられたら、たしかに離婚成立を先延ばしにしたくなる気持ちも理解できます。ですが、離婚調停の手続きが進行している以上、離婚したくないからといって、むやみに時間をかせごうとするのは逆効果となってしまいます。
これは、調停の目的である円満な解決を妨げるだけでなく、調停員や相手方の信頼を損なう原因となります。離婚調停中にやってはいけないこととして、このような行為は避けるべきです。
この離婚調停の成立を先延ばしにするための時間かせぎの行為には、次のような行為が挙げられます。
- 意図的に必要書類を提出しないといった行為。
- 離婚調停の期日を何度も変更するといった行為。
- 離婚調停の合意事項に対して、常に異議を申し立てるといった行為。
- 離婚調停中に新たな要求を次々と追加したり、意見を何度も変更したりするような行為。
- 離婚調停の合意事項に関する確認や追加の調査を頻繁に要求する行為。
こうした行為によって離婚調停が長引くことにより、子どもにも悪影響を及ぼすことがあります。子どもは家庭内の緊張や不安を敏感に感じ取るため、離婚調停が長引くことで、精神的ストレスが増大する可能性があります。
さらに、調停委員に対しても悪い印象を与えることになります。調停委員は公平な立場から問題解決を図りますが、時間をかせぐ行為は調停委員からの信頼を失うことになり、離婚調停の手続きに悪影響を及ぼすことがあります。
離婚調停中にやってはいけないこととして、時間かせぎは逆効果であることを理解しましょう。円満な解決を目指すためには、離婚調停のスムーズな進行を妨げることのないよう、協力的で誠実な態度を心がけることが重要です。
離婚調停中にやってはいけないこと②調停期間に配偶者以外の異性と関係を持つ
離婚調停中にやってはいけないことの一つに、「離婚調停の期間中に配偶者以外の異性と関係を持つ」ことがあります。これは、離婚調停を有利に進めるために、非常に重要なポイントです。
「離婚調停の期間中に配偶者以外の異性と関係を持つ」ということは、具体的には、配偶者以外の異性と会う、連絡を取る、同棲する、肉体関係を持つ、といった行為が該当します。これらの行為は離婚調停の手続きを進めるにあたって大きな障害となり、相手方や調停委員からの信頼を損なう原因となる上、離婚問題以外の法的問題が生じる可能性もあります。
なぜならば、離婚調停中は法的にはまだ夫婦であるため、配偶者以外の異性と性的関係を持ってはいけない=不倫や浮気をしてはいけない、という貞操義務があるからです。
既婚者が配偶者以外の異性と性的関係を持った場合、貞操義務違反と解され、民法第770条第1項1号の「不貞行為」に該当すると判断される可能性があります。
(裁判上の離婚)
民法第770条第1項1号
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
なお、民法の「不貞行為」は、肉体関係をともなうもの、と解釈されているので、「離婚調停の期間中に配偶者以外の異性とラインや電話でやり取りをした。」、「1度だけカフェデートをした。」といった行為は、不貞行為にはならないと考えられています。
離婚調停中の不貞行為が認められると、有責配偶者となってしまい、自分からは離婚請求ができなくなったり、不貞行為に基づく慰謝料を請求されたりする恐れがあります。
離婚調停中に配偶者以外の異性と関係を持つことは、このような法的リスクを生じさせるのです。さらに、離婚調停の相手方や調停委員についても、その心証を悪化させることになってしまうでしょう。
また、離婚調停中にやってはいけないことの一つである「配偶者以外の異性と関係を持つ」行為は、子どもとの関係にも悪影響を及ぼしかねません。
ところで、婚姻関係が既に破綻している場合は、不倫をしても不貞行為にはならないから大丈夫だ、と考える人もいるかもしれません。ですが、「婚姻関係が破綻しているかどうか」の判断は、さまざまな事情を考慮して総合的に判断するものなので、「自分は婚姻関係が破綻しているから、不貞にはならないと思った。」と勝手に自己判断するのは早計です。
相手方や調停委員からの信頼を損ねることのないよう、離婚調停の手続きが進められている間は、自分が有責配偶者となるような行為は避けるべきです。
離婚調停中にやってはいけないこと③調停の相手方にライン等で直接連絡を取る
離婚調停中にやってはいけないことの3つ目は、離婚調停の相手方に対して、ラインや電話等で直接連絡を取ることです。
もっとも、相手方が電話やライン等による連絡をしても良いと認めている場合や、離婚調停の手続きを進めるにあたって必要な事務連絡が認められている場合は、この限りではありません。
ですが、相手方が離婚調停の手続きを弁護士に依頼しており、弁護士から「直接連絡することのないようにしてください。」と、弁護士を通すように言われている場合には、感情的に反抗せず、その旨に応じておきましょう。
離婚調停の手続きが行われている期間中は、相手方に伝えたいことや主張したいことは、離婚調停の期日の場で伝えるのが原則です。離婚調停での相手方の言動に不満があっても、それを本人に直接伝えるのは控えましょう。
ただでさえ、離婚調停において対立しているのですから、直接連絡を入れて文句を言えば、お互いに感情的になってしまい、関係の悪化は避けられないものとなってしまいかねません。
また、相手方と直接連絡を取り合う行為は、調停委員において、信頼を損なう行為とみなされます。調停委員は、公正な立場から問題解決を図るため、夫婦双方から意見を聞き、公平な解決が図れるように、離婚調停の手続きを進めていきます。しかし、当事者が直接連絡を取ってしまうことで、調停委員が把握していない情報や感情的なやり取りが生じてしまい、離婚調停の公正さが損なわれてしまう恐れもあるのです。
さらに、相手方に直接連絡を取る行為は、法的なリスクも伴います。
例えば、相手方が連絡内容を証拠として提出することが可能です。これにより、感情的な発言や攻撃的な内容が記録され、裁判所での判断に悪影響を及ぼすことがあります。また、脅迫やハラスメントと見なされるような内容が含まれていた場合、法的な責任を問われる可能性もあります。
離婚調停中にやってはいけないことを守り、なるべく有利に離婚調停を進めるためには、相手方に直接連絡を取ることを避け、調停委員を通じて必要な情報交換や話し合いを行うことが重要です。これにより、公正で冷静な離婚調停を実現し、双方にとって納得のいく解決策を見つけることが可能となります。
相手方に対しても、調停委員に対しても誠実な対応を心がけ、離婚調停を有利に進めるために、相手方と直接連絡を取り合うことは、控えるようにしましょう。
その他の離婚調停中にやってはいけないこと
さて、ここまでは、離婚調停中にやってはいけないこととして、特に注意すべきことについて解説させていただきました。
ですが、離婚調停中にやってはいけないことは、上記の3つだけではありません。離婚調停の期間中に気を付けなければならないことや、離婚調停の期日の場においても注意しなければならないことなど、離婚調停中にやってはいけないことは多岐に渡ります。
以下に、その他の離婚調停中にやってはいけないこと7つをご紹介させていただきます。
1.調停期日の場で不利になる発言や感情的な主張をする
離婚調停中にやってはいけないことの一つに、「調停期日の場で不利になる発言や感情的な主張をする」ことがあります。離婚調停は夫婦間の問題を解決するための重要な場であり、冷静かつ理性的な対応が求められます。しかし、感情的になりやすい離婚調停の場では、不適切な発言や主張をしてしまうことが少なくありません。これが離婚調停においてどのような影響を及ぼすかを理解しておきましょう。
まず、離婚調停中にやってはいけないこととして、不利になる発言は避けるべきです。例えば、相手方を過度に非難する発言や、自身の感情に任せた攻撃的な言葉は、調停委員に悪い印象を与えるだけでなく、離婚調停の進行を妨げることになります。感情的な発言は、相手方の反発を招き、建設的な話し合いを困難にします。離婚調停中には、事実に基づいた冷静な発言を心がけることが重要です。
また、感情的な主張も離婚調停中にやってはいけないことの一つです。例えば、「絶対に子どもは渡さない」といった一方的な主張や、「全て相手の方が悪い」といった感情に任せた断定的な言い方は、調停委員の信頼を損ない、離婚調停全体の雰囲気を悪化させます。離婚調停の場では、相手方との協力が必要であり、一方的な主張は解決を遠のかせるだけです。
さらに、感情的な発言や主張は、自身の立場を不利にする可能性があります。調停委員は、公平な判断を下すために双方の意見を聞きますが、感情的な発言が多いと冷静さを欠くとみなされ、信頼性が低下します。これにより、調停委員が提案する解決策にも影響が出ることがあります。
離婚調停中にやってはいけないことを避けるためには、感情を抑え、理性的に対応することが大切です。自身の意見を述べる際には、具体的な事実や根拠を示し、冷静に話すことが求められます。また、相手の意見にも耳を傾け、協力的な態度を示すことで、離婚調停を円滑に進めることができます。
このように、離婚調停中にやってはいけないこととして、調停期日の場で不利になる発言や感情的な主張をすることは避けるべきです。冷静かつ理性的な対応を心がけ、離婚調停を有利に進めるための基本を押さえましょう。
2.無断で調停期日に遅刻・欠席する
離婚調停中にやってはいけないことの一つに、「無断で調停期日に遅刻・欠席する」ことがあります。離婚調停は、夫婦間の問題を解決するための重要な場であり、双方が誠実に対応することが求められます。無断で遅刻や欠席をすると、離婚調停の進行に大きな支障をきたすだけでなく、いくつかの重要な問題を引き起こす可能性があります。
まず、無断で調停期日に遅刻や欠席をすることは、調停委員に対する信頼を損なう行為とみなされてしまいます。調停委員は双方の話を聞き、公平に問題を解決しようと努力しますが、片方が無断で遅刻や欠席を繰り返すと、調停委員の心証が悪くなります。これにより、公正な判断を下すことが難しくなり、離婚調停が不利に進む可能性があります。
また、無断で調停期日に遅刻や欠席をすることは、相手からの信頼も損なう結果となります。離婚調停の相手が誠実に調停に参加している中で、一方が無断で遅刻や欠席をすると、相手の不満が募り、対立が深まることになります。これにより、離婚調停が円滑に進まず、解決が遠のくことになります。
さらに、無断で遅刻や欠席を繰り返すと、離婚調停の進行が大幅に遅れる原因となります。調停のスケジュールは双方の都合を考慮して設定されますが、無断で遅刻や欠席が続くと、新たな日程調整が必要となり、時間がかかります。これにより、離婚調停が長引き、双方にとって不利益となってしまいます。このように、離婚調停の進行上からも、遅刻や欠席は離婚調停中にやってはいけないことの一つなのです。
また、無断で離婚調停期日に遅刻や欠席をすることは、法的なリスクも伴います。例えば、調停委員が出席を強制するために、裁判所に命令を求めることが考えられます。このような事態になると、裁判所の判断により強制的な措置が取られ、さらに不利な立場に追い込まれる可能性があります。
このように、離婚調停中にやってはいけないこととして、無断で調停期日に遅刻や欠席することのないよう、注意しておきましょう。誠実な対応を心がけ、離婚調停の期日には必ず出席し、冷静に話し合う姿勢を示すことが重要です。
3.相手に譲歩する姿勢を全く見せない
離婚調停中にやってはいけないことの一つに、「相手に譲歩する姿勢を全く見せない」ことがあります。
離婚調停は、夫婦間の問題を解決するための重要な場であり、双方が歩み寄る姿勢を見せることが求められます。しかし、譲歩を全く見せない態度は、離婚調停の進行を妨げるだけでなく、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。
譲歩する姿勢を見せないことは、調停委員に対する印象を悪化させる原因となります。調停委員は、公平な立場から問題解決を図るため、双方の意見を聞き、調停の進行を円滑にする役割を担っています。相手に譲歩する姿勢を全く見せない態度は、調停委員に対して非協力的とみなされ、結果的に離婚調停が不利に進むことがあります。
また、譲歩する姿勢を全く見せないことは、相手との関係をさらに悪化させる可能性があります。離婚調停は、双方が納得のいく解決策を見つけるための場です。相手に譲歩する姿勢を見せることで、相手も歩み寄る可能性が高まり、建設的な話し合いが進むことが期待できます。逆に、全く譲歩しない態度は相手の反発を招き、対立が深まる結果となります。
さらに、離婚調停中にやってはいけないこととして、譲歩を全く見せないことは、調停全体の進行を遅らせる原因となります。調停の過程では、双方が譲歩し合うことで合意に達しやすくなりますが、一方が全く譲歩しない場合、合意に至るまでの時間が長引き、調停の解決が遠のいてしまいます。これにより、双方にとっての時間的・経済的負担が増加することになります。
また、譲歩しない態度は、裁判所での審判においても不利に働く可能性があります。調停が不成立となった場合、裁判所での審判に移行しますが、調停の過程で見せた態度や姿勢は、裁判所でも考慮されることがあります。全く譲歩しなかったことが記録に残ると、裁判官の判断に悪影響を及ぼすことがあるため、注意が必要です。
このように、離婚調停中にやってはいけないこととして「相手に譲歩する姿勢を全く見せない」ことは避けるべきなのです。
4.相手方に嫌がらせ行為をしてしまう
相手方に嫌がらせ行為をするということも、当たり前ですが、離婚調停中にやってはいけないことの一つです。
例えば、相手の職場や自宅の近くで待ち伏せし、無言の圧力をかけるような嫌がらせをするというケースや、相手がよく利用するスーパーや駅などで待ち伏せし、偶然を装って接触するというケースが考えられます。
また、相手が外出する際に後をつけて、行動を監視するなどのつきまとい行為や、無言電話、SNSでの誹謗中傷といった嫌がらせも、当然離婚調停中にやってはいけないことになります。
相手に直接連絡することを拒否されているのに、何度もメールやメッセージアプリを送り続けることも、相手にとっては嫌がらせの一種です。
こうした嫌がらせを行う人の中には、離婚したくないという必死な気持ちもあり、嫌がらせ行為だと自覚していない人もいるかもしれません。ですが、こうした行為は嫌がらせであることを自覚し、離婚調停中にやってはいけないこととして認識しておくべきです。
このような嫌がらせ行為は、相手や調停委員からの信頼を失う原因となります。調停委員は、公正な立場から問題解決を図るため、双方の意見を聞き、公平な判断を下します。しかし、一方が嫌がらせ行為を行っていることが発覚すると、調停委員の心証が悪くなり、結果的に離婚調停が不利に進んでしまう可能性があります。
さらに、嫌がらせ行為は法的なリスクを伴います。例えば、ストーカー規制法やハラスメント防止法に抵触する可能性があり、相手が警察に通報した場合、法的措置を取られることがあります。これにより、離婚調停の進行に支障をきたすだけでなく、刑事責任を問われることになってしまう可能性もあります。
5.相手に無断で別居を始める、生活費を渡さない
離婚する・しないで揉めるようになると、相手と共同生活することが嫌になったり、気まずくなったりします。そのため、離婚協議や離婚調停の期間中は相手と別居をする、という夫婦は少なくありません。
ですが、相手に無断で別居を始めてしまったり、別居で生活は別々になるからと生活費を渡さなかったりすると、法的リスクを伴う場合があるため、離婚調停中に別居をする場合は注意が必要です。
例えば、妻が夫に何の説明もなく突然家を出て行き、別居を開始する場合や、夫が妻に告げずに新しい住居を探して引っ越してしまう場合などが該当します。
配偶者のモラハラやDVの被害を受けないために、急いで別居する必要があった、というようなケースを除いて、相手に無断で別居を始めることは、離婚調停中にやってはいけないこととしても、非常に重要な禁止事項です。
また、別居中に生活費を渡さない行為も、離婚調停中にやってはいけないことの一つです。例えば相手が専業主婦やパート労働者で、自分より収入が少ない場合に生活費を渡さないことは、相手に対する経済的な圧力をかける行為です。
このような、無断で別居を始める行為や、別居中の生活費を渡さないといった行為は、法律上、「悪意の遺棄(民法第770条第1項2号)」に該当してしまう可能性があります。
民法第770条第1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
悪意の遺棄とは、配偶者が意図的に家族を放棄し、経済的、精神的な支援をしないことを意味しています。この行為は、法律上の離婚原因となったり、慰謝料を請求される原因となったりすることがあります。
また、法律上問題になるだけでなく、相手からの信頼を損ない、調停委員からも非協力的な態度とみなされ、離婚調停が不利に進んでしまう可能性があるのです。
以上の通り、相手に無断で別居を進めることや、生活費を渡さないことは、離婚調停中にやってはいけないこととして注意しましょう。
6.子どもを連れ去る
離婚調停で子どもの親権について争われることがありますが、子どもを監護している親のもとから無断で連れ去ることは、たとえ親子といえど、離婚調停中にやってはいけないことに該当します。
まず、子どもを連れ去ることは、相手方に対する重大な裏切り行為であり、調停委員からの信頼を失う原因となります。例えば、夫が妻に無断で子どもを実家に連れて行く、妻が夫に知らせずに子どもを別の場所に連れ去るなどの行為は、調停委員に対して非協力的な態度とみなされ、離婚調停が不利に進む可能性があります。誠実な対応を心がけ、調停委員からの信頼を得ることが重要です。
また、子どもを連れ去る行為は、子どもに対する心理的な負担を増大させます。突然の環境変化や片親との別離は、子どもに深刻な精神的ストレスを与え、精神的な健康に悪影響を及ぼす可能性があります。子どもの福祉を最優先に考えるためにも、離婚調停中には冷静かつ誠実な対応が求められます。
さらに、子どもを連れ去る行為は法的なリスクを伴います。
例えば、子どもの連れ去りは、監護権侵害として法的に問題視されることがあり、相手方が警察に通報した場合、法的措置を取られる可能性があります。これにより、刑事責任を問われるだけでなく、離婚調停の進行にも悪影響を及ぼします。子どもの親権争いにおいても、不利な立場に立たされる可能性が高まります。
また、子どもを連れ去る行為は、相手方との関係をさらに悪化させる原因となります。相手方が子どもを取り戻そうとする過程で対立が深まり、離婚調停が有利に進まなくなることがあります。相手方との協力的な関係を築くためにも、子どもを連れ去ることは避けるべきです。
7.婚姻中に取得した夫婦の共有財産を処分する
離婚調停中にやってはいけないことの一つに、婚姻中に取得した夫婦の共有財産を処分することがあります。
例えば、夫が妻に無断で共有財産である車を売却する、妻が夫に知らせずに共有財産である不動産を処分するなどの行為、銀行口座の預金を勝手に引き出して使用する行為や、共有財産である株式を売却処分するといった行為は、離婚調停の進行や内容だけでなく、離婚調停成立後の義務の履行に、重大な影響を与えることになりかねません。
具体的に、共有財産の無断処分がどのような影響を及ぼすかについて考えてみましょう。
まず、離婚調停中に夫が妻に無断で車を売却した場合、調停終了後にその車の売却代金が財産分与の対象となるべきものです。しかし、無断で処分されてしまったために、その代金が不明となり、適切な財産分与が行えなくなる可能性があります。
また、妻が夫に知らせずに共有財産である不動産を処分した場合、その不動産の価値が共有財産として適切に評価されないまま処分されてしまうことで、財産分与が不適切に行われるリスクがあります。不動産の価値は大きく、これが適切に分配されないと、離婚後の双方の生活に大きな影響を及ぼします。
これにより、相手方が受け取るべき正当な財産分与額が減少し、不公平な結果を招きます。
さらに、こうした行為が発覚すると、法的な措置を取られる可能性もあり、離婚調停がさらに複雑化することになります。
こうした背景には、財産分与で取られる財産をなるべく減らしたい、あるいは財産隠しをしたいといった意図があることが多いです。例えば、離婚後に自分が有利になるように、共有財産の一部を隠したり、処分して現金化したりすることで、相手方に分配される財産の総額を減らそうとします。
こうした行為は、財産分与の公正さを損ない、相手方に対する不公平感を生むだけでなく、調停委員にも非協力的な態度とみなされ、離婚調停全体に悪影響を及ぼすことになります。
離婚調停を有利に進めるため事前にできる対処方法
離婚調停を有利に進めるためには、事前の準備と適切な法的対応が不可欠です。
まず、離婚調停中にやってはいけないこととして、不利になるような発言をしないことが重要です。離婚したくないからといって、「離婚したってお前一人では何もできないぞ」と感情的な発言をしたり、攻撃的な主張をしてはいけません。冷静かつ理性的に対応することで、調停委員の信頼を得ることができます。
また、誠実に受け答えをすることも大切です。相手方や調停委員に対して真摯な態度で接することで、離婚調停が円滑に進む可能性が高まります。
主張は書面に簡潔にまとめることが望ましいです。離婚調停の場では、口頭での説明だけでなく、書面での主張も重要です。具体的な事実や証拠をもとに、わかりやすくまとめた書面を提出することで、調停委員に対する説得力が増します。
また、離婚調停の場に合った服装や清潔な身だしなみを心がけることも必要です。適切な服装や身だしなみは、調停委員や相手方に対する敬意を示し、誠実な態度を印象付けることができます。
感情的にならないことも離婚調停中にやってはいけないことの一つです。感情的になると冷静な判断ができなくなり、対処法を誤ってしまう可能性が高まります。冷静さを保ち、理性的に対応することで、調停委員の信頼を得ることができます。
離婚調停が始まる前から、子どもとの関わりを増やしておくことも重要です。親権獲得を目指す場合、子どもとの日常的な関わりや世話をしっかり行うことで、親としての適性を示すことができます。
また、希望する条件に固執しすぎず、相手に譲歩する姿勢を見せることも必要です。離婚調停は双方の妥協と合意が求められる場です。一方的な主張に固執することなく、柔軟に対応することで、調停がスムーズに進む可能性が高まります。
例えば、相手が離婚したくないと主張している場合に、「離婚してくれるなら、財産分与はしなくてもいい。」と折り合いをつけるのも、離婚調停を進めていくにあたって有効なポイントです。
訴訟になった場合の見通しを持つことも重要です。離婚調停が不成立となり、訴訟に移行する可能性を考慮し、法的アドバイスを受けることが賢明です。法律の専門家である弁護士の助言を仰ぎ、最悪のシナリオを想定しておくことで、離婚調停中に適切な判断ができるようになります。
このように、離婚調停を有利に進めるためには、これらのポイントを押さえ、誠実かつ冷静な対応を心がけることが重要です。
離婚調停中にやってはいけないことに関するQ&A
Q1.離婚調停中にやってはいけないことには何がありますか?主な離婚調停中にやってはいけないことを教えてください。
例えば、離婚調停中にやってはいけないこととして、次のような行為が挙げられます。
- 調停期間に配偶者以外の異性と関係を持つ
- 相手方が拒否しているのに、直接連絡を取る
- 感情的な発言や不利になる主張をする
- 無断で調停期日に遅刻・欠席する
- 相手に譲歩する姿勢を全く見せない
- 相手方に嫌がらせ行為をする
- 相手に無断で別居を始める
- 別居中の相手の生活費を渡さない
- 子どもを連れ去る
- 婚姻中に取得した夫婦の共有財産を処分する
Q2.離婚調停中に相手方に嫌がらせ行為をするとどうなりますか?
離婚調停中に相手方に嫌がらせ行為をすると、相手方や調停委員からの信頼を失うだけでなく、法的リスクを伴う可能性があります。例えば、相手方の職場や自宅の近くで待ち伏せやつきまといをする行為は、ストーカー規制法に違反する可能性があります。誠実な対応を心がけましょう。
Q3.親子なのに、離婚調停中に子どもを連れ出すことはダメなの?
離婚調停中に、相手に無断で子どもを連れ去ると、相手方に対する信頼を損なうだけでなく、子どもに対する心理的な負担も増大します。突然の環境変化や片親との別離は、子どもに深刻なストレスを与えるため、子どもの福祉を最優先に考えることが重要です。また、法的なリスクも伴い、監護権侵害として法的措置を取られる可能性があります。
離婚調停の申立て手続きや進行中のお悩みは当法律事務所の弁護士にご相談ください
離婚調停中にやってはいけないことは多岐にわたります。感情的な発言や不利になる主張を避け、無断で調停期日に遅刻・欠席することなく、相手に譲歩する姿勢を見せることが求められます。また、相手方に嫌がらせ行為を行わないことや、無断で別居を進める、生活費を渡さないといった行為も控えるべきです。さらに、子どもを連れ去る行為や、婚姻中に取得した夫婦の共有財産を勝手に処分することは、調停を不利に進める原因となります。
離婚調停は双方にとって非常にデリケートな過程であり、適切な対応が求められます。
当法律事務所の弁護士は、離婚調停の申立て手続きや進行中のお悩みに対し、専門的なアドバイスとサポートを提供いたします。冷静かつ理性的な対応を心がけ、離婚調停を円滑に進めるために、ぜひ弁護士法人あおい法律事務所の弁護士にご相談ください。
この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。