• 離婚の方法

協議離婚とは?進め方や流れ、決めること等を分かりやすく解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の離婚専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
当サイトでは、離婚に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

協議離婚とは、離婚の手段の一つで、夫婦の話し合いで離婚の合意をして、その旨の届出をする方法により離婚することをいいます。

少なくとも、夫婦双方が離婚することについて合意し、子どもがいる場合は、親権者を指定すれば、離婚することでできます(民法819条1項)。

民法819条1項

父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

しかし、離婚にあたっては、今後の生活を考えると、財産分与や養育費・面会交流などの条件についても取り決めておくべきといえます。

これらの点については、夫婦だけで冷静かつ適切に取り決めるこは難しいため、なかなかスムーズに離婚手続きを進めることができないことが少なくありません。

そこで、本記事では、協議離婚とはどういった離婚方法か、協議離婚の進め方など離婚成立までの流れ、離婚協議を進める上での注意点などについて、弁護士が詳しく解説いたします。

目次

「協議離婚」とは?その意味を分かりやすく解説

日本における協議離婚とは

協議離婚とは、上記のとおり、夫婦の話し合いで離婚の合意をして、その旨の届出をする方法により離婚する方法のことをいいます。

日本では、下記のとおり、多くの夫婦が協議離婚により離婚しています。

このことは、厚生労働省の「人口動態統計」を見るとよく分かります。

それによると、令和4年の全国の離婚件数は17万9096組で、離婚率(人口1千人あたり)は1.47でした。

「令和4年度『離婚に関する統計』の概況」離婚件数208,333件のうち、協議離婚をした夫婦は約88.3%でした。

このように、日本では、離婚した夫婦のうち約9割の夫婦が協議離婚により離婚しているのです。

協議離婚は離婚するための方法の1つ

日本で離婚するには、4通りの方法があります。裁判所の手続を利用するかどうかで大きく2つに分けられます。

裁判所の手続を利用せずに離婚する方法が協議離婚です。他方、裁判所の手続を利用して離婚する方法としては、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の3つがあります。

協議離婚は、夫婦が離婚の条件について決めたうえで、離婚の合意をして、離婚届を役所に提出するだけで離婚が成立します。

協議離婚のメリット

後述する調停、審判、裁判は家庭裁判所が関与するため、離婚にあたり相応の時間を要することになりますが、協議離婚であれば、裁判所の手続きを踏まない分、時間をかけずに離婚することが可能です。

また、弁護士費用という観点からも、通常、協議離婚の方が費用がかかりませんし、裁判所を通さない分、申立費用や訴訟費用がかかりません。

さらに、協議離婚では、夫婦が話し合いによって離婚条件を決めることができるので、裁判所の手続を利用するより柔軟な解決ができることがあります。

他方、協議離婚の場合には、夫婦が合意すれば、どのような理由であっても離婚することができます。

協議離婚のデメリット

一方で、協議離婚には次のようなデメリットもあります。

離婚自体や離婚条件について対立が激しい場合やそもそも話し合いができない関係である場合には協議離婚をするハードルが高くなることです。

特に、子どもがいる場合には、親権者を定めなければ離婚することはできない(民法819条1項)ので、親権について話し合いができない場合には、協議離婚のハードルは高くなります。

また、当然、離婚後の生活のことを考えると、財産分与や養育費などの細かい取り決めをすべきですが、これらを適正にするためには、法律を理解したうえで、それを使いこなす能力が必要とされるのが通常です。

通常、離婚後は、お互いのことは忘れて生活したい方がほとんどでしょうから、後日、争いになって、離婚した夫婦同士で揉めることになることがないように、弁護士に依頼することをおすすめいたします。

協議離婚と調停離婚の違い・裁判離婚との違い

 

協議離婚と調停離婚の違い・裁判離婚との違い

 

上記のように離婚する手段として4通りありますが、それぞれによって、その手続きや進め方には大きな違いがあります。

協議離婚とは、夫婦が話し合いによって離婚に合意し、離婚届を提出することで成立する離婚方法です。この方法による離婚には、裁判所を利用することは通常ありません。

一方、調停離婚は、夫婦間で離婚に関する合意ができない場合に家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停の申立を行い、調停委員を介して離婚について話し合って離婚する方法です。

離婚調停では、離婚条件について双方が納得できる解決策を探し、合意に達すれば調停離婚が成立します。合意に至らない場合は調停不成立となり、審判や裁判に移行することもあります。

そして、裁判離婚は、夫婦間で離婚に関する合意ができない場合に、最終的な手段として用いられる方法です。民法に定められた離婚理由(法定離婚事由)が認められる場合にのみ、離婚が認められます。裁判離婚は、財産分与や子供の親権、養育費などの離婚条件を裁判所が決定します。

裁判による離婚は、これら3つの方法の中でも最も時間と費用がかかることがあり、離婚に至るまでの手続きが複雑です。

審判離婚は、当事者が2週間以内に異議申立をすると審判の効力が失われる(家事事件手続法286条1項、279条2項)というデメリットがあり、一般的には利用されていません。審判離婚が選択されるケースは非常に限定的でしょうが、例えば、別居期間が相当長期間にわたっており、相手方が正当な理由なく裁判所への出頭を拒んでいるような場合には、裁判離婚よりも審判離婚を選択した方が、短期間に解決までたどりつきやすいでしょう。

審判離婚した事例としては、当事者の一方が正当な理由がなく裁判所に出頭せず、かつ、別居期間が25年あるなどのような場合に、審判離婚しているケースがあります(福井家審平成21年10月7日家庭裁判月報62巻4号105頁)。

まとめますと、協議離婚は夫婦の合意に基づく比較的簡単な方法であり、調停離婚や裁判離婚は裁判所が関与し、より複雑で時間や費用がかかる方法となっています。

 

協議離婚

調停離婚

裁判離婚

費用

かからない

かかる

かかる

離婚理由

制限なし

制限なし

制限あり(民法第770条1項)

特徴

相手と直接話し合う。

調停委員が夫婦の間に入るため、夫婦が直接話し合うことはない。

夫婦双方の主張や証拠から、裁判所が判断を下す。

メリット

時間や手間がかからない。

自分達のペースで手続きを進めることができる。

調停による合意が成立すれば、裁判に比べて時間と費用を節約できる。

法的な判断に基づく明確な結果が得られる。

デメリット

感情的に対立しやすい。

合意内容の不備などに気付きにくい。

時間や費用、手間がかかる。

期日は平日の昼間に行われるため、働いていると出頭が難しい。

時間や費用、手間がかかる。

期日は平日の昼間に行われるため、働いていると出頭が難しい。

協議離婚の進め方と手続きの流れ

続いて、協議離婚の進め方と流れについてご説明させていただきます。

一般的に、協議離婚とは次のような流れで進められます。

  1. 離婚後の生活について検討する。
  2. 相手に離婚したいと切り出す。
  3. 離婚をするか、離婚する場合に財産や子供の親権をどうするかを話し合う。
  4. 離婚協議書や離婚公正証書を作成する。
  5. 離婚届を市区町村役場に提出する。

この進め方の具体的な内容について、詳しく見ていきましょう。

1.離婚後の生活について検討する。

まず最初に、離婚後の生活について慎重に検討する必要があります。

離婚によって変化する生活状況に対応するため、あらかじめ具体的な計画を立てておくことが重要です。

たとえば経済的な面では、離婚後の生活費に対して収入がいくらあるか見直し、離婚時の財産分与や離婚慰謝料の請求ができるか検討します。現在の居所を出て引っ越す場合は、引っ越しに必要な費用や手続きも検討しておかなければなりません。

夫婦の間に未成年の子供がいる場合、親権や養育費といった問題も生じます。自分が親権を獲得したい場合は、離婚後の子供の生活も考慮して、養育費の請求についても慎重に検討する必要があります。

また、この段階で、離婚届不受理申出の手続きを行っておくことをおすすめいたします。離婚届不受理申出をしておくことで、離婚の話し合いで揉めている場合に相手が勝手に離婚届を提出してしまうことを防止できるのです。

2.相手に離婚したいと切り出す。

ある程度の離婚後の生活設計ができたら、相手に離婚したいと切り出します。

離婚の意思を伝えるために、適切なタイミングと方法を選ぶことが必要です。まず、感情的にならず冷静に話を進めるためにも、落ち着いた環境を選び、十分な時間が確保できるタイミングを選ぶべきです。また、相手の心情を考慮し、非難や責任の押し付けを避けた、尊重のある表現を心がけることが大切です。

離婚の話を切り出す際には、自分の感情や考えを正直に伝え、相手の意見も聞き入れる姿勢を示すことが重要です。具体的な理由や、離婚に至った背景を説明することで、相手にも状況を理解してもらいやすくなります。

また、離婚を切り出す際には、今後の関係や子供がいる場合は子供のことも考慮した上で、前向きな解決策を提案することが望ましいです。

3.離婚をするか、離婚する場合に財産や子供の親権をどうするかを話し合う。

協議離婚の流れの中でも、メインとなるのがこの話し合いです。離婚に伴うさまざまな問題について、双方が納得する解決策を見つけるための話し合いが行われます。

まず、双方が離婚に同意するかどうかを確認します。合意が得られた場合、次に財産分与や離婚慰謝料、年金分割といった離婚条件について具体的に話し合います。

たとえば離婚財産分与では、共有財産や負債の分配方法を決める必要があります。具体的には、不動産、預金、株式、退職金、借金などの扱いについて合意を目指します。

子供がいる場合は、子供の親権や養育費、面会交流のスケジュールについても話し合う必要があります。子供の最善の利益を優先し、親権者を決定し、養育費の額や支払い方法を合意します。また、子供と離れて暮らす親との面会交流についても、具体的なスケジュールを決めることが大切です。

こうした協議離婚で話し合う内容については、本記事で後述させていただきますので、ぜひご一読ください。

4.離婚協議書や離婚公正証書を作成する。

離婚条件について合意が成立したら、将来的なトラブルを防止するためにも、合意した内容について、離婚協議書や離婚公正証書にすべきでしょう。

離婚協議書は、夫婦が合意した離婚条件を書面にしたもので、通常、財産分与、子供の親権や養育費、慰謝料など、離婚に関する具体的な合意内容が記載されます。

さらに、離婚協議書を公正証書として作成することもできます。公正証書は、公証人が作成する公的な文書で、一方が、公正証書の定めに違反して養育費を支払わないなどした場合に、公正証書の存在を根拠に、一方の財産に強制的に執行することができるメリットがあります。

このように公正証書には強力な効力が認められていますから、思いがけない不利益を被らないためにも、弁護士に公正証書作成の依頼をしておくと安心でしょう。



5.離婚届を市区町村役場に提出する。

話し合いが終わったら、最後に離婚届を市区町村役場に提出して離婚が成立します。

離婚届は、市区町村役場の窓口やホームページで入手することができます。必要事項を記入した後、夫婦双方が署名し、提出しましょう。

離婚届の書き方や、離婚届の提出時にあわせて行える手続きなどについては、当法律事務所の関連記事をご参考いただければと思います。


協議離婚で決めること(慰謝料など)

協議離婚の話し合いで決めることは、主にこちらの7つになります。

  1. 慰謝料
  2. 財産分与
  3. 親権
  4. 養育費
  5. 面会交流
  6. 年金分割
  7. 婚姻費用の清算

取り決めるべき離婚条件の内容について、簡単に解説させていただきます。

1.慰謝料

不貞行為やDVなど、離婚の原因を作った責任がある場合で、その行為が不法行為に該当する場合、被害を受けた配偶者は、受けた精神的苦痛に対する損害賠償として慰謝料を請求できます(民法第709条・710条)。

(不法行為による損害賠償)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
民法第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

ですので、相手の不倫やDVなどを理由に離婚を請求する場合、慰謝料についても話し合いましょう。

慰謝料の支払義務があるのは、離婚原因を作った配偶者です。

性格の不一致や価値観の違いで離婚する場合は、お互いに責任がなく損害も生じていないため、慰謝料は発生しません。

また、配偶者が不倫をしているが、自分も不倫をしている場合など、夫婦双方に離婚原因を作った責任がある場合は、お互いの慰謝料が相殺され、結果として慰謝料が発生しないこともあります。

慰謝料の一般的な金額の相場は50万円~300万円とされており、離婚原因の内容や程度、配偶者の収入や婚姻期間の長さによって変わります。ただし、協議離婚の場合は、夫婦が合意すればその金額が慰謝料額となりますので、相場よりも高額になる場合もあります。

2.財産分与

財産分与とは、婚姻中に夫婦が実質的に共有していた財産(名義がどちらかの配偶者になっているかは関係ありません)を清算することを指します。

最初に、財産分与の対象となる夫婦の共有財産を特定し、その財産の適切な価値を評価します。

財産分与の対象となる財産は、婚姻中に夫婦が協力して築いた「共有財産」です。この判断は、財産の名義ではなく、実質的に夫婦の共有財産であるかどうかという観点から行われます。具体的には、以下のような財産が含まれます。

  • 不動産
  • 自動車
  • 家具や家電製品
  • 現金、預貯金
  • 退職金
  • 有価証券、投資信託
  • 解約返戻金がある生命保険や学資保険
  • 負債(借金やローン)

財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産ですので、独身時代の貯金や、夫婦の一方が相続によって得た財産などは「共有財産」には含まれません。

共有財産が確定したら、次に財産分与の割合と、分配方法についても取り決める必要があります。通常は夫婦で2分の1ずつですが、協議離婚とは夫婦の話し合いによる離婚方法であるため、たとえば「預貯金は全て妻に、不動産は夫に分配する」といった内容で合意することも可能です。

そして、財産分与について協議する際は、対象財産や金額だけでなく、支払い方法についても明確に決めておきましょう。

なお、財産分与は、離婚から2年以内に行う必要があります(民法第768条2項ただし書き)ので、注意してください。

3.親権

日本では、離婚後の父母は共同で子供の親権を持つことは認められていません。そのため、未成年の子供がいる場合、離婚時に必ず親権者を夫婦のどちらかに決めておく必要があります(民法第819条1項)。

子供の親権をどちらが持つかは、非常に難しい問題だと思います。子供が10歳程度までであれば、子供のより育児をしている方が親権者として認められやすい傾向にあります。育児を多くしているかどうかという基準で親権を考えてみると良いでしょう。

10歳程度を超えると、子供の意思が尊重される傾向にあります。子供の幸せを考えれば、子供に対して入れ知恵をすることなく、どちらと今後一緒に住みたいか子供の意思を尊重しながら親権者を決めると良いでしょう

親権を取れない場合でも、面会交流を充実させるなどして、子供との交流を深めることができます

4.養育費

養育費とは、子供を監護している親が、監護していない親から受け取る、子供を養育するに当たって必要となる費用のことです。

養育費の支払い義務は、子供が最低限の生活を送るための「扶養義務」ではなく、自分と同程度の生活を子供にも提供するための「生活保持義務」と言われています。そのため、離婚後に子供を監護していない親も、子供に対して支払う義務があるのです。

離婚協議の際には、子供の養育費が月にいくらかかるのか、以下の項目を基本的な内訳とし、なるべく具体的な金額を算出しておくと良いでしょう。

  • 子供の生活費(食費、被服費、光熱費など)
  • 教育費(授業料、教材費、塾・習い事代など)
  • 医療費
  • 小遣い
  • 交通費(通学交通費など)

5.面会交流

離婚後、子供を監護していない親と子供が、定期的に会うことや、面会以外の方法で交流することを面会交流といいます。

面会交流の方法についても、基本的には、子供の意思を尊重できるようにある程度の柔軟性のある取決めをすることを推奨いたします。

面会交流では、直接会って交流することだけしか決められないわけではありません。対面以外の交流方法(電話、SNS、手紙など)、子供への小遣いやプレゼントについても、話し合って決めることもできます。

6.年金分割

婚姻期間中に支払った年金保険料を原則2分の1の割合で分割し、将来受け取る老齢厚生年金額を調整することを年金分割といいます。

年金分割の対象となるのは、公的年金のうち、厚生年金のみとなります。国民年金、国民年金基金、厚生年金基金や確定拠出年金などは、年金分割の対象となりません。

また、年金分割の請求手続きは、離婚等が成立してから2年以内に行わなければなりません(厚生年金保険法第78条の2)。

離婚後すぐに現金として受け取れる財産ではないので、離婚時に取り決める離婚条件として失念する人もいるのですが、特に老後に重要な収入となってきますので、忘れずに話し合っておきましょう。

7.婚姻費用の清算

離婚する前に夫婦が別居していた場合は、婚姻費用の清算についても話し合う必要があります。

婚姻費用とは、別居中の生活費のことを意味します。

夫婦には、双方が同程度の生活を送れるよう、その負担能力(収入など)に応じて、相互に協力して扶養する義務があります(民法第752条)。そのため、離婚を前提として夫婦の一方が家を出て別居していたような場合は、別居期間中の生活費である婚姻費用を清算することになるのです。

婚姻費用の具体的な金額については、裁判所が公開している「婚姻費用算定表」に基づいて算定します。この算定表は、夫婦双方の収入と、子どもの人数・年齢が基準となっています。

スムーズに手続きを進めるための注意点

協議離婚をスムーズに進めるためには、次の4つのポイントに注意していただければと思います。

1.離婚後の生活について具体的に考えておきましょう

協議離婚では、離婚後の生活についても考えておくことが大切です。離婚後にどのような生活を送りたいのか、どのようなサポートが必要なのかを考慮して、話し合いの中でそれらを盛り込むことが重要です。

婚姻費用や養育費についても、「〇〇円欲しい」とただ金額を伝えるだけでは、相手は「そんなに必要なのか?」と疑ってしまい、なかなか金額に合意してもらえないかと思います。

そこで、婚姻費用・養育費の算定表を用いるなどして、具体的な額を決めると、双方の納得が得られやすいでしょう。

2.話し合いの前に自分の主張内容を整理しておきましょう

協議離婚では、財産分与、慰謝料、子供の親権や養育費、年金分割など、取り決めるべき内容が多くあり、ひとつひとつの内容も複雑です。こうした離婚条件について、自分の考えや主張内容を事前にリストアップしておきましょう。

忘れないようにしようと思っていても、口頭での話し合いで言い忘れてしまう可能性はありますし、言い間違いがあったり、伝えた内容が相手に誤解されたりしてしまう可能性もあります。また、具体的な数字や条件を明記したメモを用意しておくと、相手に見せることもでき、離婚の話し合いがスムーズに進みます。

3.感情的にならないよう、冷静に話し合いましょう

離婚協議の話し合いは、感情的になりがちです。

たとえば、相手の不倫を理由に離婚しようとする場合、どうしても相手を非難してしまう口調になってしまったり、責めたつもりがなくても相手が責められたと感じてしまったりと、話し合いが進まなくなってしまう恐れがあります。

ですので、離婚協議では感情的にならずに、冷静さを保つことが重要です。落ち着いて話し合うことで、物事に対して客観的な判断ができ、スムーズに協議離婚を進めていくことが期待できます。

そして、落ち着いて話し合いをするためにも、やはり事前に自分の言いたいことをメモなどに整理しておくことが重要なのです。

4.合意した内容は離婚公正証書にしておきましょう

離婚協議で合意した内容は、忘れずに離婚公正証書として残しておくようにしましょう。

離婚公正証書は、公証人という法的な業務を行う専門家の立会いの下で作成される文書です。離婚公正証書に「強制執行認諾文言」を明記しておくことで、離婚公正証書は裁判を経ずに強制執行を行うことができる「執行証書」となります(民事執行法22条第5号)。

(債務名義)
民事執行法第22条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
第5号 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)

そうすると、たとえば養育費の支払いが滞ってしまった場合などに、すぐに強制執行の手続きを開始することができます。

このように、適切に作成した離婚公正証書は、協議離婚の合意内容の実行性を高めることができるのです。

【Q&A】協議離婚とは

Q1.協議離婚とはどういった離婚手続きですか?

協議離婚とは、裁判所を利用せず夫婦で離婚について協議して、離婚条件(財産分与や慰謝料、親権等)を決めた上で離婚届を提出し離婚する方法です。 

Q2.協議離婚とはどのような流れで進められるのですか?

一般的に、協議離婚とは次のような流れで進められます。

  1. 離婚後の生活について検討する。
  2. 相手に離婚したいと切り出す。
  3. 離婚をするか、離婚する場合に財産や子供の親権をどうするかを話し合う。
  4. 離婚協議書や離婚公正証書を作成する。
  5. 離婚届を市区町村役場に提出する。

Q3.協議離婚とは具体的に、どういったことについて話し合うのですか?

協議離婚とは、主に以下の離婚条件について話し合うものです。

  • 慰謝料
  • 財産分与
  • 親権
  • 養育費
  • 面会交流
  • 年金分割
  • 婚姻費用の清算

当法律事務所の弁護士にご相談ください

本記事では、協議離婚とはどういった離婚方法で、どのような流れで進めるのか、といったことについて弁護士が解説いたしました。

協議離婚とは、夫婦が話し合いによって離婚に合意し、離婚届を提出することで成立する離婚方法です。裁判所を通さずに手続きが行えるため、比較的スムーズで費用も抑えられるというメリットがあり、広く一般的に利用されています。

しかし、協議離婚とは双方の合意が必要な方法であるため、意見や感情的な対立が大きい場合には、夫婦だけで合意に至ることが困難になる場合もあります。

そこで、協議離婚をしたいと思ったときには、ぜひ法律の専門家である弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士に協議離婚をご依頼いただくことで、専門的な知識と経験を持つ弁護士が、財産分与や子供の親権、養育費などの離婚条件について適切に交渉し、スムーズに合意に至ることが期待できます。

また、弁護士が間に立つことで、感情的な対立を避け、冷静かつ公平な話し合いが進められます。さらに、合意内容を正確に法的文書にまとめることで、将来的なトラブルを防ぐことができます。

当法律事務所では、初回の法律相談を無料とさせていただいております。協議離婚を弁護士に依頼するか迷っていらっしゃる場合には、まずはお気軽に初回無料相談をご利用いただければと思います。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

関連記事