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円満離婚|仲良し夫婦で離婚できる?円満離婚するには?【子あり、子なし両方】

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の離婚専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
当サイトでは、離婚に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

「離婚」という言葉を聞くと、泥沼化することをイメージされる方もおられます。できることなら、円満に離婚したいという方も多いのではないでしょうか。

離婚する際には、親権や養育費、財産分与など、様々な条件を取り決めることが必要ですが、なるべく揉めずに話し合いで解決できたら理想ですよね。

このような離婚の条件で争いにならずに、話し合いで離婚することを「円満離婚」といいます。

この記事では、円満離婚の意味や条件、円満離婚するために必要な準備や、うまく離婚する方法について、弁護士が詳しく解説いたします。ご参考になりましたら幸いです。

目次

円満離婚とは

「円満離婚」の意味は?必要な条件とは

そもそも、円満離婚とはどういった意味の離婚なのでしょうか。まずは、円満離婚の意味や、円満離婚が成立するための条件について見ていきましょう。

円満離婚とは、離婚後に夫婦が仲良しでいること?

 

円満離婚とは裁判所での調停ではなく協議(話し合い)で離婚すること

 

円満夫婦と聞くと、仲の良い夫婦が仲の良いまま離婚するイメージがあるかもしれません。また、離婚後にも良好な交流が続いている仲の良い元夫婦のことを、「円満離婚した夫婦」と考える人もいるようです。

しかし、円満離婚は、離婚後の関係性に着目した用語ではなく、「夫婦双方が納得した上で揉めずに離婚すること」と離婚に至る過程の良さに着目した用語であるといっていいでしょう。
つまり、円満離婚の意味とは、スムーズな協議によって成立した協議離婚のことと考えることができます。

この点、協議離婚といえど、その協議の過程は様々です。財産分与や慰謝料、子供の親権や養育費といった離婚条件について揉めて、一年以上の話し合いの末、ようやく離婚できたというケースも「協議離婚」です。
こうした協議離婚のケースではなく、あくまで「夫婦双方が納得する条件でしこりを残さずに、スムーズな協議で離婚できたケース」をここでは「円満離婚」といいます。

円満離婚の成立する条件は「協議離婚であること」

夫婦の双方が納得のいく形で協議離婚に合意するためには、事前に入念な準備が必要です。きちんと夫婦で未練のない話し合いができるかが、円満離婚の成立のためには重要になってきます。

なお、裁判所で行われる離婚に関する手続の中に、「円満調停」というものがあります。円満調停は円満離婚とは全く別のものですので、誤解が無いように注意が必要です。
円満離婚はスムーズな協議離婚であるのに対して、円満調停は家庭裁判所での夫婦関係調整調停によって、夫婦関係を修復し、婚姻生活を継続させることを目的とした調停です。
円満離婚は協議離婚ですが、円満調停は離婚ではなく夫婦関係を円満なものにするための調停なのです。

円満な離婚にちなんだ記念日があるって本当?

ところで、「円満離婚の日」という記念日があることをご存知でしょうか。11月22日が「いい夫婦の日」というのは有名ですが、実は離婚にちなんだ記念日もあるのです。

4年に1度の「2月29日」が円満離婚の日とされています。
円満に離婚する夫婦は少ない=4年に1度の頻度がちょうどいい、という理由と、「2人に福(29)あれ」という語呂合わせなどから「2月29日」が円満離婚の日と言われています。
こうした記念日があると知っていると、離婚は決して失敗や後退ではなく、夫婦の互いの成長と新たな人生への一歩であることを思い出せるのではないでしょうか。

円満離婚するには?

さて、協議離婚で揉めないようにとはいっても、ご夫婦同士で協議を行おうとしても、どうしても簡単にいかないことが現実です。
ですが、なるべくならスムーズな円満離婚を目指したいところかと思います。うまく円満離婚する方法は、何かあるのでしょうか。
それでは、うまく円満離婚する方法について、「期間」と「切り出し方」の、2つのポイントをご説明いたします。

うまく離婚する方法は?

円満離婚を成立させたいと考えるのであれば、離婚協議に長い期間がかかることも念頭に置いて、離婚条件の取決めを進めていきましょう。

離婚の手続を進めるにあたっては、取り決めなければならない離婚条件は多いのです。代表的な条件だけでも、財産分与、慰謝料、親権や養育費、面会交流、年金分割などがあります。離婚したいあまりに焦ってしまい、納得のいかない離婚条件を取り決めてしまい、離婚成立後に「やっぱり養育費の金額に納得できない。」などと後悔される方もおられます。

法的に正しい知識を身につけて、しっかりと話し合いをするとなると、どうしても長い期間がかかるものです。一般的に、円満離婚のために必要な期間は半年から一年ほどといえるでしょう。

また、離婚条件についての話し合いの中では、夫婦の意見が対立することもあり得るでしょう。その際には、感情的にならずに、冷静に根気強く、話し合いを続けなければなりません。円満離婚を成立させるためには、お互いの理解と歩み寄りが必要不可欠ですから、焦らずに冷静に、ご夫婦双方が納得できる円満離婚を実現していくことが大切です。

 

このような話し合いをできる限り円滑に進めたいという方は、弁護士に代理を依頼されることをお勧めします。

弁護士は、専門的な知識をすでに持っており、相手と冷静に話し合いを進めてくれることが期待できますから、半年よりもかなり早く、2、3か月程度で離婚できることも多くあります。

 

円満離婚のための切り出し方

うまく円満離婚する方法として重要な2つ目のポイントは、離婚の話の切り出し方です。極端な例ですが、喧嘩腰にお相手を一方的に非難して離婚を切り出すようなやり方では、お相手も感情的になってしまい、肝心の話し合いが進められません。
お相手にもきちんと離婚の話し合いに応じてもらえるように、そして話し合いがスムーズに進められるように、円満離婚を目指す話し合いの切り出しにあたっては、次の点を心がけてください。

  1. 感情的にならず、落ち着いて冷静に話す。
  2. 曖昧にせず、はっきりと伝える。
  3. 相手の気持ちをいたわる言葉や表現を心がける。
  4. 主張するばかりではなく、相手の意見をきちんと聞く。
  5. 一つずつ着実に解決していく。
  6. 焦らずに時間をかける。
  7. 事前に準備をしておく。
  8. 中立的な場所や環境で話し合いを進める。
  9. 非難や責任の押し付けをしない。

ポイント①感情的にならず、落ち着いて冷静に話す。

円満離婚を目指しているとはいっても、お相手としては、突然「離婚したい」と言われるのですから、切り出されたお相手は驚いてショックを受けて、動揺のあまり感情的になってしまうかもしれません。そのような場合に、ご自身も感情的になって言い争ってしまうと、話し合いがうまく進まなくなってしまいかねません。
そのため、離婚の話の切り出しにあたっては、お相手の動揺を少しでも緩和させるためにも、ご自身が感情的にならず、落ち着いて冷静に話すことが大切です。具体的には、以下の点に気を付けましょう。

  • ゆっくりとした口調で、落ち着いた声で話す。
  • 相手の目を見て、まっすぐに話す。
  • 怒りや悲しみなどの感情を抑え、冷静に話す。

仮に「もうあなたとは一緒にいられない!さっさと離婚届に署名してくれ!」などと感情的に話をぶつけてしまうと、お相手は反発し、話し合いがうまく進まなくなってしまうでしょう。
離婚条件についても合意を得なければなりませんから、話し合いを進めることを重視して、つとめて冷静に話すようにしてください。

例えば、直前に喧嘩をしている場合には離婚の話を切り出すのは避けるべきでしょう。お互いが冷静なタイミングを見計らって、真剣に話をすると良いでしょう。

ポイント②曖昧にせず、はっきりと伝える。

円満離婚の話の切り出しにあたっては、伝えたいことを曖昧にせず、はっきりと伝えることが大切です。具体的には、以下の点に気を付けましょう。

  • 離婚をしたい理由を、具体的に伝える
  • 離婚後の生活について、具体的な希望や考えを示す

「最近、うまくやれてる気がしないんだけど」などと濁した表現で離婚話を切り出しても、お相手としては、意図がつたわらないでしょう。
きちんと「離婚したい。」と伝えて、その際、笑って誤魔化したりしようとはせずに、ご自身の意見をはっきりと伝えましょう。そうすることで、お相手の理解もスムーズになりますし、また、離婚したいという真剣な気持ちも伝わるでしょう。

このように、離婚したいという結論はしっかり伝えることがポイントです。相手が離婚したくない場合には、離婚を切り出す側が真剣でないような態度を示すと、お相手に冗談だととらえられたり、うまくはぐらかされて離婚の話を続けづらくなってしまう可能性があります。そのため、はっきりと離婚の意思を伝えることがポイントです。

ポイント③相手の気持ちをいたわる言葉や表現を心がける。

円満離婚を目指す際には、特にお相手をいたわりながら離婚の話し合いを進めていかなければなりません。

離婚を切り出される側にとっては、突然、重大な話を切り出されることになるわけですから、通常はひどく動揺します。

お相手の気持ちをいたわる言葉や表現を心がけて、時には離婚したい理由について穏当な表現を選ぶことも必要になってきます。
例えば、自分に配偶者の他に好きな異性ができたため、円満離婚したい場合には注意が必要です。この場合に「あなたの他に好きな人ができたから離婚してほしい。」とはっきり言い切ってしまうと、配偶者はどう思うでしょうか。ただでさえ、寝耳に水の離婚の話を切り出されたのに、その理由が「他に好きな人ができた」というものでは、たいへんなショックを受けるのではないでしょうか。

円満離婚する上では、相手を思い遣ることが大切なのです。言うべきこと、言わない方が相手のためになることを事前に考えて整理しておきましょう。

ポイント④主張するばかりではなく、相手の意見をきちんと聞く。

夫婦の双方が離婚条件に納得して離婚するのが円満離婚です。つまり、円満離婚では、ご自身の要望を主張するばかりではなく、お相手の意見や要望にしっかりと耳を傾けて、時には譲歩・妥協することも必要です。
「あなたの考えも聞かせてほしいです。」と促して、お相手の意見や要望を全て言い切ることを待つことも、お互いの理解と信頼を深める手段になります。

もちろん、円満離婚のための最初の話し合いで、ご自身もお相手も全ての要望を出し切れないでしょう。円満離婚のための話し合いは、時に時間をかけるなどして、時間に余裕をもって行っていくものですから、まずは離婚したいという意向を伝えて、例えば「来週の日曜日にまた詳しく話し合いをしたいと思うから、今日の私の意見を聞いて、思ったことや考えを整理してみてほしい。」と言うなどして、お相手にも考える時間を設けるように心がけるとよいでしょう。
一方的な主張は、お相手の意思を全く尊重していないため、円満離婚に向けた話し合いが滞ってしまいかねません。双方の意見が尊重されることで、離婚条件についても合意でき、円満離婚へとつながることでしょう。

例えば、「離婚後は、これだけお金が必要だから、●万円が必要だから用意しておいてほしい。」などと離婚の切り出しと同時に必要なお金の話について一方的に話を進めていこうとすることは控えた方が良いでしょう。離婚の話し合いの最初は、離婚意思についてお話した上で、お相手の意思確認にとどめておく方が良いでしょう。

ポイント⑤一つずつ着実に解決していく。

円満離婚の話し合いをするにあたって、一度に全ての問題を解決しようとすると、うまく行かないことが多いでしょう。
お子様がいない家庭でも、財産分与や年金分割といったお金の問題を解決しなければなりませんし、離婚手続を進めるにあたっての役割分担を決めたり、離婚条件を離婚協議書や離婚公正証書にすることも検討しなければならないことがあります。

そのため、一つずつ着実に解決していくことが大切です。
例えば、「まず今日の話し合いでは財産分与について決めたいです。子供の親権や養育費の問題については、来週話し合いましょう。」と順序立てて進めることで、混乱や誤解を防ぎ、効率的に解決していくことが期待できます。また、話し合いにあたっては、財産分与などの法律についての基本的で正しい知識を共有した上で行うと良いでしょう。

全ての問題を一度に解決しようとすると、話し合いが複雑になってしまって、話がこじれかねません。十分な時間を割いて、議論を充実させるとよいでしょう。

ポイント⑥焦らずに時間をかける。

円満離婚でも、夫婦にとっては結婚や出産と並ぶ大きな出来事ですから、お互いに気持ちの整理や準備に相応の時間が必要です。

焦って話し合いを進めてしまうと、お相手の感情を逆なでしたりして、話し合いがうまく進まなくなってしまう可能性があります。また、円満離婚後に、冷静に話し合いを進めることができなかったことを後悔してしまうこともあるでしょう。
そのため、円満離婚の話し合いを切り出したら、焦らずに時間をかけて、お互いが納得できるように進めることが大切です。

ポイント⑦事前に準備をしておく。

円満離婚を進めていくためには、事前に準備をしておくことが大切です。
事前に円満離婚の話し合いに備えて準備をしておくと、話し合いの際に落ち着いて話すことができて、よりスムーズに進めることができます。また、お相手が質問してきた際にも、適切な返答をすることができます。
特に、財産分与や養育費といった金銭問題は、その金額が大きくなるほど、離婚条件の内容も複雑になっていくでしょう。「財産は折半ね。」とするだけでは、相手は納得してはくれないでしょう。

例えば財産分与についての話し合いにあたっては、財産分与に関する基本的な知識を頭に入れた上で、夫婦の財産についてあらかじめ把握しておくことが大切です。

養育費については、算定表を用いるなどして適正な額を定めようという心持ちが大切です。

事前準備を怠ると、円満離婚のための話し合いが漠然としてしまって、重要な問題やポイントを見落としてしまう恐れがあります。
なお、具体的に円満離婚のために何を準備すべきか、ということについては、後述しますので、そちらをご参照いただければと思います。

ポイント⑧中立的な場所や環境で話し合いを進める。

円満離婚の話し合いは、中立的な場所で行うことが望ましいです。
例えば、カフェやレストランなど、どちらの立場にも偏らない環境で話すことで、双方がリラックスしてオープンに意見を交換することができるでしょう。

もちろん、周りに人がいる場所では、話しにくいということもあると思います。お店を選ぶ時には、離婚の話が周りに聞こえないようなスペースで話せるかなどを事前に確認しておくと良いでしょう。

夫婦のどちらかの実家といった場所では、一方が有利になったり、感情的になりやすい状況が生じてしまいがちです。もし実家で話をするということでしたら、双方の両親が集まって、話をする方が公平ということはできるでしょう。このような時には、お互いの両親も含めて、これまでにご説明した注意点などを事前に確認しておかれることをお勧めします。

中立的な環境では、公平で落ち着いた話し合いが期待できますので、円満離婚の話し合いでは場所についても気を配ってみるのもおすすめします。

ポイント⑨非難や責任の押し付けをしない。

円満離婚の話し合いでは、相手を一方的に非難したり、責任を押し付けたりしないことが大切です。なぜなら、非難や責任の押し付けをされると、お相手の感情を逆なでして、話し合いがうまく進まなくなってしまう可能性が高いからです。
「あなたはいつも家事を手伝ってくれないから、離婚したい。」
例えばこのような伝え方をしすると、お相手は、離婚の原因が自分だと責められた気分になり、反発したい気持ちになるでしょう。また、自尊心を傷つけられたお相手が、話し合いに応じなくなってしまう可能性もあります。

具体的には、次のような言い方が挙げられます。
「最近、家事や育児の分担について、うまくいってなくて悩んでいて、離婚を考えるようになった。」
「あなたとの間に信頼関係が築けなくなってしまって、離婚を考えるようになった。」
このように穏便ではあるけれども結論を明示する言い方をすると、先ほどの例と比較して、冷静に話し合い話し合いをを受け止めやすくなるでしょう。
また、非難や責任の押し付けをしないためには、ご自身の気持ちや考えを客観的に伝えることも大切です。

円満離婚の話し合いにおいて、以上の9つのポイントを心掛けていただきたいと思います。
なお、離婚の話し合いにおける切り出し方については、こちらの関連記事もありますので、ぜひあわせてご一読ください。

円満離婚で決めること【子あり・子なし両方】

さて、円満離婚するためには、具体的に準備を進めていかなければなりません。離婚の手続自体は、市区町村役場に離婚届を提出することで終わりますが、財産分与や養育費といったお金の問題やお子様のことを取り決めていく必要があります。お子さんがおられるかどうかでもやることが変わってきますので、ぜひそちらもご参考にしてください。
婚姻期間の長短やお子様の有無等によって、ご夫婦にとって必要な準備は異なりますが、一般的には円満離婚に際して次の4つのことを検討することになります。

  • 財産分与
  • 年金分割
  • 親権
  • 養育費
  • 面会交流
  • 慰謝料

それぞれについて、どういった準備が必要なのかを見ていきたいと思います。

必要な準備(1)財産分与

財産分与とは、婚姻中に形成した夫婦の実質的な共有財産を離婚時に清算することです(民法第768条第1項)。
財産分与は義務ではなく権利ですので、夫婦がお互いに「財産分与はしない。」と合意して離婚するのであれば、離婚時に財産分与をする必要はありません。
なお、離婚後に財産分与を実際に請求する場合は、離婚の時から2年以内に行わなければなりません(民法第768条第2項ただし書き)。

円満離婚に向けて、財産分与を行う場合、まずは財産分与の対象となる夫婦の共有財産(結婚してから別居までの間に、夫婦で築き上げた財産)を確定させます。共有財産には、預貯金や住宅、自動車などの財産の他にも、ローンや借金などマイナスの財産が含まれる場合もありますので、財産をきちんと把握しておかなければなりません。

そして、対象となる財産が確定したら、財産分与する割合について決めます。財産分与の割合は、原則として2分の1とされており、このことは、夫婦が共働きの場合も、妻や夫が専業主婦である場合も変わりません。
もっとも、財産分与の内容については、夫婦の話し合いで自由に決められます。お互いが納得できる合意内容を目指して円満離婚の話し合いを進めましょう。
離婚時の財産分与については、こちらの記事もぜひご一読ください。

必要な準備(2)年金分割など老後のお金のこと

年金分割とは、ご夫婦が離婚する際に、婚姻期間中に納付した厚生年金保険料の記録を分割する制度です。円満離婚をした時にすぐにもらえるお金ではありませんが、老後のことを考えた場合に重要な問題なので、円満離婚に際してもきちんと話し合っておきましょう。
なお、実際に年金の請求手続ができるのは離婚後です。そのため、話し合いでは分割の割合などについて、ご夫婦で合意しておくことになります。

年金分割制度には、「合意分割」と「3号分割」という2つの主要な方法が存在します。
年金分割の手続方法は、日本年金機構から「年金分割のための情報通知書」を取り寄せて、年金事務所に対して請求手続を行うという流れで進みます。
この手続をしようと思っていたものの、面倒で放置しているうちに、請求できる期間を過ぎてしまい、年金分割をすることができなかった方もいます。
離婚後2年以内に年金分割の請求手続を行うようにしてください。

必要な準備(3)子供の親権や養育費・面会交流

未成年のお子様がいる場合は、お子様の親権や養育費、面会交流の条件などについても決める必要があります。親権や養育費については、特に離婚時に揉めやすい問題でもあるため、時間をかけて丁寧に話し合いを進めていきましょう。

親権

日本の法律上、父母は婚姻中は共同で子供の親権を持っています(民法818条第3項)。ですが、円満離婚した後は、現状、共同で親権を持つことはできないので、夫か妻のどちらか一方を単独親権者として指定しなければなりません(民法819条第1項)。
離婚届にも、未成年のお子様がいる場合は、必ず親権者を記入しなければならないと決められています。円満離婚の話し合いにおいて、未成年のお子様がいる場合は、必ず親権をどちらが持つかを決めるようにしてください。

養育費

養育費とは、お子様の養育に必要な経費のことです。お子様を監護していない親が、お子様を監護している親へ支払います。たとえ親権を持たない親であっても、そのお子様の親であることには変わりはないため、養育費の支払いの責任を持つものとされるのです。

養育費は、あくまでもお子様に必要なお金であって、離婚後のお相手の方の生活費という位置づけではないことについても事前知識として知っておくと、支払義務のある方の納得感も違うでしょう。
さて、養育費の内訳ですが、通常想定される生活費や医療費以外に、次の費用も含まれることがあります。

  • 学用品・教材費
  • 交通費
  • 習い事・クラブ活動費
  • 娯楽・レクリエーション費
  • 通信費
  • 保険料
  • その他特別な支出

円満離婚で養育費について取り決める際には、養育費の金額、支払方法や支払期間、振込先口座や送金の期日など、抜け漏れのないように気を付けましょう。
なお、養育費の金額に関しては、裁判所で公開されている「養育費算定表」が参考にされることが一般的です。
養育費について協議する際は、毎月の養育費の具体的な支出項目を明確にし、できるだけ詳細な金額を計算しておくと、お相手にも理解してもらいやすいでしょう。

  • 子供の日常の経費(食事代、衣類費、水道・光熱費など)
  • 学費(学費、テキスト代、学習塾や趣味の教室費用など)
  • 医療費
  • お小遣い
  • 交通費(学校への通学定期代など)

面会交流

親権や監護権を持たない親は、円満離婚後は子供と別居することになります。このような親を非親権者といいますが、非親権者には、面会交流権が認められており、離婚後もお子様と定期的に交流できるようになっています。
あらかじめ円満離婚後の面会交流の条件についても、具体的に決めておくと良いでしょう。
具体的には、面会交流について以下の内容を夫婦で話し合います。

面会交流の日時や方法については、お子様の利益を最優先にして決めることがとても大切です。円満離婚であっても、お子様にとって両親が離婚することは精神的に大きな負担となりますから、夫婦の都合をお子様に押し付けてしまうようなことにはならないように、お子様に心情に最大限配慮することを忘れないようにしましょう。

  • 面会交流を行う頻度
  • 面会場所
  • 取り決めに違反した際の対応
  • 面会交流で必要な交通費や食事代などの経済的な負担の分担をどうするか
  • 面会交流の際の通知方法
  • 面会交流の日時の変更・キャンセルの手続き
  • 緊急事態や突発的な事情における対応方法

円満離婚でも慰謝料は請求できるの?

円満離婚を目指していても、お相手が不倫やDV、モラハラなどの不法行為をしている場合には、その行為によって受けた精神的苦痛を賠償するものとして、慰謝料を請求することを検討しましょう。

慰謝料を請求すると、通常相手は「不倫なんてしていない。」「モラハラなんてしていない。」などと言って、慰謝料の支払を拒むでしょう。きちんと請求が通るようにするためには、不倫やDVがあったことを客観的に証明できる証拠が必要です。

慰謝料を請求した上で、離婚したいと考えている場合は、離婚の話を切り出す前に、証拠を集めて準備しておきましょう。



公正証書にしておきましょう

円満離婚の話し合いで合意できたら、離婚条件を整理し、公正証書にしておくことをおすすめいたします。
公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公文書です。公正証書にしておくと、次のようなメリットがあります。

  • 公証人が作成するため、証拠としての価値が高いです。
  • 公正証書があると強制執行することができ、お相手が合意した内容を守らない場合に、強制的に履行させることができます。
  • 公正証書があれば、客観的な証拠となるため、トラブルを未然に防ぐことができます。
  • お互いの権利や義務が明確になるため、円満離婚後も安心して新生活を始められやすいです。
  • 原本は公証役場にて保管されるため、手持ちの公正証書を紛失しても再交付を受けることができます。

離婚協議で決めた離婚条件を公正証書にするための詳細については、こちらの関連記事をご参照いただけますと幸いです。

弁護士に依頼するメリットや弁護士費用は?

円満離婚は、夫婦がお互いに納得した上で離婚することです。そのためには、離婚の原因や理由、離婚後の生活など、お互いの意見をしっかりと話し合い、合意する必要があります。
しかし、離婚の話し合いは、感情的になりやすく、なかなかうまく進まないこともあります。話し合いが停滞すると、円満離婚が難しくなるだけでなく、後々のトラブルに発展する可能性もあります。

そこで、円満離婚を目指している場合には、弁護士に相談することもおすすめいたします。
弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  • 法律に基づいたアドバイスを受けることができる。
  • 感情的になりにくく、冷静に話し合いを進めることができる。
  • 中立的な立場から話し合いを進めることができる。
  • 本人同士での話し合いが難しい場合は、弁護士が代理人として協議してくれる。

弁護士に相談することは、協議離婚を円満に進めて、早期に円満離婚するための一つの手段です。
弁護士の助言を受けることで、双方が納得できる解決策を見つけ、円満離婚へと近づくことが可能になります。
円満離婚を目指している方も弁護士に相談することをご検討ください。

弁護士費用

とはいえ、弁護士費用が高額になりそう・・・とためらう方もいらっしゃるかと思います。
離婚協議が夫婦だけで決着する場合は、離婚協議を進めること自体に費用は発生しませんし、なるべく出費をおさえたいところでしょう。
一般的に、弁護士費用の内訳は次の通りとなります。

  • 着手金
  • 報酬金(離婚協議を成立させた場合の報酬)
  • 日当(弁護士が直接相手方と交渉するために遠方へ赴いた際の費用)
  • 実費(郵便切手代、収入印紙代、申請手数料など)

着手金や報酬金は、弁護士や法律事務所によって異なりますが、一般的にはそれぞれ20~40万円前後となっています。
通常は一括払いですが、経済的に余裕のない場合などは、分割払いも可能な法律事務所もあります。

弁護士費用や支払方法などについては、事前にホームページや無料相談の際に確認しておきましょう。複数の弁護士や法律事務所に相談して、自分に合った弁護士を見つけることが大切です。

円満離婚に関するQ&A

Q1.円満離婚とはなんですか?

円満離婚とは、話し合いによってお互いが納得して離婚することを意味します。離婚の種類でいえば、紛争なく合意に至る協議離婚に当たります。なお、似た言葉に「円満調停」がありますが、これは家庭裁判所で行われる夫婦関係を修復するための調停で、円満離婚とは全く異なるものです。

Q2.円満離婚の話し合いを切り出すうまい方法はありますか?

話し合いの切り出し方では、次の点について気を付けていただければと思います。

  1. 感情的にならず、落ち着いて冷静に話す。
  2. 曖昧にせず、はっきりと伝える。
  3. 相手の気持ちをいたわる言葉や表現を心がける。
  4. 主張するばかりではなく、相手の意見をきちんと聞く。
  5. 一つずつ着実に解決していく。
  6. 焦らずに時間をかける。
  7. 事前に準備をしておく。
  8. 中立的な場所や環境で話し合いを進める。
  9. 非難や責任の押し付けをしない。

Q3.円満離婚は時間がかかりますか?

円満離婚の成立までの期間は、個人・夫婦によって異なりますが、半年から一年ほどかかるといえるでしょう。
ですが、お互いが納得して円満離婚するためにも、焦りは禁物です。十分な時間をかけて、夫婦で円満離婚を目指して話し合いを進めていきましょう。

夫婦の問題解決は弁護士にご相談ください

円満離婚を実現させるためには、夫婦が互いに協力し合うことが重要です。
本記事では、そもそも円満離婚とはどういう意味なのか、という基本的な知識に始まり、円満離婚するために重要なポイントや、円満離婚にあたって取り決めるべき離婚条件や、準備などについて解説させていただきました。

大切なのは、双方の感情を尊重し、話し合いによってお互いが納得できる解決策を見つけることです。
円満離婚を目指していて早期に解決してほしいなどご希望がありましたら、ぜひお気軽に弁護士にご相談いただければと思います。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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