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性格の不一致で離婚できる?不一致の具体例について弁護士が解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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夫婦間の「性格の不一致」は、離婚原因としてよく耳にする理由です。夫婦間の価値観や生活習慣の違いが日常生活において積み重なり、互いの不満が限界に達し、離婚に至ってしまうことがあります。

ところで、具体的にどういったケースが「性格の不一致」に該当するのか、意味や具体例をご存知でしょうか。

そこでこの記事では、離婚原因としての夫婦間の「性格の不一致」について、その具体例を挙げながら、弁護士が詳しく解説させていただきます。

また、性格の不一致を理由とした離婚の手続きに向けて必要な準備や、性格の不一致を理由に離婚するのが難しい場合の対処方法などについても、弁護士が分かりやすく解説いたします。

性格の不一致を理由とした離婚を検討している場合に、少しでも本記事の解説がご参考となりましたら幸いです。

目次

離婚原因に多い性格の不一致とは?

さて、「性格の不一致」という言葉を耳にすることは多いですが、そもそも「性格の不一致」とはどういうものか、具体的なイメージはお持ちでしょうか。

性格の不一致とは

「性格」というと、優しい、怒りっぽい、といった内面の傾向・品性を思い浮かべるのが一般的かと思います。しかし、離婚問題における「性格」とは、こうした人の内面の傾向や品性に限られません。

離婚原因である性格の不一致とは、結婚生活や日常生活における価値観の違い・生活習慣の違い・物事に対する考え方や向き合い方の違いを意味しています。

日本においては、この性格の不一致を理由とした離婚が、離婚原因としては最も多いです。

具体的な数字は、裁判所の統計情報「司法統計」が参考になります。

「令和4年 司法統計年報(家事編)」によりますと、動機別(離婚原因別)の離婚調停事件の申立事件数は次の表の通りとなっており、日本における離婚原因として性格の不一致がとても多いことが分かります。

【離婚調停事件の申立事件数 動機別】

順位

申立ての動機

申立人数

1

性格が合わない

25,278

2

精神的に虐待する

14,209

3

生活費を渡さない

12,877

4

暴力を振るう

9,214

5

その他

8,035

6

異性関係

7,434

7

浪費する

5,254

8

性的不調和

4,402

9

不詳

4,313

10

家族親族と折り合いが悪い

4,230

11

家庭を捨てて省みない

3,274

12

酒を飲み過ぎる

2,765

13

同居に応じない

1,947

14

病気

1,214

総数

57,062

 

参考:令和4年 司法統計年報(家事編)

 なお、性格の不一致をはじめとするさまざまな離婚原因については、ランキング形式で詳しく解説しておりますので、こちらの関連記事もぜひご覧ください。

[離婚原因ランキング|夫が離婚したいと思う時1位の理由は?]

性格の不一致を理由に離婚する方法は?裁判では難しいの?

離婚の理由として「性格の不一致」は、多くの夫婦が直面する問題です。そして、性格の不一致で離婚する方法としては、協議による離婚、調停による離婚、裁判による離婚、の主に3つの方法があります。

協議離婚や離婚調停では、性格の不一致を理由として離婚することが可能です。協議離婚や離婚調停では、夫と妻が話し合いで合意すれば、離婚理由は問われません。そのため、性格の不一致という理由で夫婦が離婚を決断することができます。

しかし、裁判離婚では性格の不一致を理由とした離婚が難しくなります。

裁判離婚では、民法に定められた離婚理由(法定離婚事由)が必要です(民法第770条1項)。具体的には、下記の条文に明記された理由が、裁判における離婚が認められる離婚原因となります。

(裁判上の離婚)

民法第770条1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

性格の不一致は、それ自体は上記の法定離婚事由に該当しません。そのため、性格の不一致を理由とした裁判離婚が認められるためには、性格の不一致によって、民法第770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する事情があることが裁判において認められる必要があります。

具体的には、性格の不一致が夫婦の生活に深刻な影響を及ぼした結果、夫婦関係が破綻し修復困難になった、と裁判所に認められなければ裁判離婚ができません。

協議離婚や離婚調停では性格の不一致を理由に離婚することは比較的容易ですが、裁判離婚では「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められるためには具体的な証拠や状況が必要です。離婚を考えている方は、性格の不一致が法定離婚事由に該当するかどうか、弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

夫婦の結婚生活における性格の不一致の具体例

さて、離婚原因となる性格の不一致ですが、性格の不一致の具体例について、詳しく見ていきたいと思います。

性格の不一致の具体例1.
夫が家事を全く手伝わず、妻が一人で家事全般を担う状況が続く場合、妻の不満が積もり積もってしまいます。夫が家事に対する協力を拒否し続けると、夫婦間の信頼関係が崩れ、最終的には離婚を考える理由となります。

性格の不一致の具体例2.
夫が子供に対して厳格な教育方針を持ち、妻がそれに反対して柔軟な育児を望む場合、育児方針の違いが夫婦間の大きな対立点となります。子供の教育や生活習慣についての話し合いがまとまらないと、家庭内での緊張が高まり、性格の不一致が原因で離婚に至ることがあります。

性格の不一致の具体例3.
夫が家計を重視して節約を心がける一方、妻が自由にお金を使うことを好む場合、お金の使い方に関する意見の食い違いが大きな問題となります。このような性格の不一致は、夫婦間での信頼を損ねる原因となり、離婚を考える一因となります。

性格の不一致の具体例4.
夫が長時間労働を強いられる職業に就いている場合、妻がその状況を理解せず、家にいる時間が少ないことを責め続けることがあります。夫が仕事と家庭のバランスを取れないことに対する妻の不満が募り、性格の不一致が原因で離婚に至ることがあります。

性格の不一致の具体例5.
夫がスポーツやアウトドア活動を好む一方、妻がインドア派で家庭内での時間を大切にする場合、趣味や考え方の違いが日常生活での衝突を招くことがあります。このような性格の不一致が夫婦間の緊張を引き起こし、離婚を考える原因となることがあります。

性格の不一致の具体例6.
夫が感情を表に出さないタイプで、妻が感情を率直に表現するタイプの場合、コミュニケーションの齟齬が生じやすくなります。夫が感情を抑え込み、妻が不満を募らせることで、夫婦間の溝が深まり、性格の不一致が原因で離婚の原因となることがあります。

性格の不一致の具体例7.
夫が家族行事を大切にする一方で、妻が友人との時間を優先する場合、夫婦間での優先順位の違いが対立を招くことがあります。特に休日の過ごし方や重要なイベントの過ごし方について意見が合わない場合、性格の不一致が夫婦関係に亀裂を生じさせる原因となることがあります。

性格の不一致の具体例8.
夫が健康管理に非常に気を使う一方、妻が健康に無頓着な場合、生活習慣や食事に対する意見の違いが衝突を引き起こすことがあります。例えば、夫が健康的な食事を求めるのに対し、妻がジャンクフードを好む場合、日常生活での対立が深まり、性格の不一致が離婚の原因となることがあります。

性格の不一致の具体例9.
夫がペットを飼うことに強く反対し、妻がペットを非常に可愛がる場合、ペットに対する考え方の違いが夫婦間の緊張を引き起こすことがあります。ペットに関する意見の食い違いが夫婦の対立を深め、性格の不一致が原因で離婚に至ることがあります。

性格の不一致の具体例10.
夫が宗教に対して熱心である一方、妻が無宗教である場合、宗教に関する考え方の違いが日常生活での対立を引き起こすことがあります。例えば、夫が宗教的な行事や習慣を重視するのに対し、妻がそれに従うことを拒否する場合、夫婦間の緊張が高まり、性格の不一致が原因で離婚に至ることがあります。

性格の不一致の具体例11.
夫が特定の政治的信念を持っている一方、妻が全く異なる政治的信念を持っている場合、政治に関する意見の違いが夫婦間の対立を引き起こすことがあります。例えば、選挙の際に異なる候補者を支持することが原因で夫婦喧嘩が頻発する場合、性格の不一致が原因で離婚を考えることになります。

性格の不一致の具体例12.
妻の方が夫よりも収入が多い場合、夫がその状況を不満に感じることがあります。夫が自尊心を傷つけられたと感じ、妻がそれを理解せずにキャリアを優先する場合、夫婦間の緊張が高まり、性格の不一致が原因で離婚に至ることがあります。

性格の不一致の具体例13.
夫が親族や友人との付き合いを重視する一方、妻が家庭内での時間を大切にする場合、親族や友人との付き合い方に関する考え方の違いが夫婦間の対立を引き起こすことがあります。例えば、夫が頻繁に親族や友人を招いて集まりを開くのに対し、妻がそれを負担に感じる場合、性格の不一致が原因で離婚を考えることになります。

性格の不一致の具体例14.
妻が出産を機に考え方が大きく変わり、夫との間で意見の食い違いが増えた場合、出産後の変化が夫婦間の緊張を引き起こすことがあります。例えば、妻が出産後に子供の教育や生活習慣に対する強い意識を持つようになり、夫がそれに応じられない場合、性格の不一致が原因で離婚を考えることになります。

性格の不一致の具体例15.
夫が頻繁に旅行に行きたいと望む一方、妻が家庭内での静かな生活を望む場合、旅行に対する考え方の違いが夫婦間の対立を引き起こすことがあります。例えば、夫が家族での旅行を提案するのに対し、妻が自宅でのんびり過ごすことを希望する場合、性格の不一致が原因で離婚を考えることになります。

以上のような具体的な例をはじめとし、さまざまな夫婦間の性格の不一致が原因で、離婚に至ってしまう場合があるのです。

性格の不一致を理由に離婚したい場合の準備

性格の不一致を理由として離婚をする場合、まずは相手に「離婚したい」と話を切り出すことになるかと思います。この場合に、何も準備せず「離婚したい」と切り出してはいけません。

性格の不一致を理由とした離婚の話し合いをする前に、離婚後の生活や、相手に請求する慰謝料・財産分与といったお金の問題について、しっかり検討して必要な準備をしておきましょう。

慰謝料を請求できる?相場の金額はいくら?

性格の不一致を理由に離婚したい場合、慰謝料の請求ができるかどうかは重要なポイントです。

しかし、性格の不一致という理由だけでは、慰謝料を請求するのは難しいことがあります。これは、慰謝料が発生するためには、相手に有責性、すなわち婚姻関係を破綻させた責任が必要だからです。

性格の不一致による離婚は、夫婦間の価値観や生活習慣の違いが原因であるため、どちらが悪いとも言えないケースが多いです。このため、性格の不一致を理由に離婚する場合、慰謝料を請求することは一般的には認められにくいです。

例えば、夫が妻に対して暴力を振るったり、妻が夫以外の男性と不貞行為を行った場合など、明確な有責行為が存在する場合にのみ慰謝料の請求が可能です。

慰謝料の相場については、有責性が認められる場合でも、具体的な金額は状況により異なります。

一般的には、離婚慰謝料の相場は約100万円から300万円とされていますが、夫婦の結婚期間や状況、夫婦間での話し合いの結果などによって変動します。また、裁判や離婚調停での決定により金額が異なることもあります。

したがって、単に性格の不一致が原因で離婚を決意した場合、裁判で慰謝料の請求が認められることはたいへん難しいといえます。そのため、なるべく裁判にまでもつれこまないよう、離婚協議や離婚調停で話し合い、離婚条件について合意することが推奨されます。

離婚を検討した場合に、相手方に慰謝料を請求できるか悩んだら、離婚の話を相手に切り出す前に、弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

財産分与

性格の不一致を理由に離婚したい場合、離婚財産分与は重要なポイントとなります。離婚財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に共同で築いた財産を、離婚時に公平に分けることです。これは夫婦の離婚後の生活を支えるために欠かせない手続きであり、協議や離婚調停、場合によっては裁判を通じて行われます。

夫婦が離婚する際、まずは財産の把握から始めます。離婚財産分与の対象となる財産には、預貯金、不動産、自動車、株式、退職金などがあります。これらの財産は、夫婦が婚姻期間中に共同で築いたものであるため、基本的には夫婦間で公平に分けられます。一方、婚姻前に個別に所有していた財産や、相続や贈与によって得た財産は、離婚財産分与の対象外となります。

例えば、夫が婚姻期間中に購入した住宅や車、共同名義の預金口座などは、離婚財産分与の対象となります。これに対して、夫が独身時代に相続した土地や、妻が結婚前から所有していた貯金などは、分与の対象にはなりません。

離婚財産分与を進める際には、まず夫婦間で協議を行い、話し合いによって分割方法を決定します。協議がまとまらない場合、離婚調停を通じて第三者の介入を得ることができます。離婚調停でも解決しない場合は、裁判での解決を目指すことになります。この際、弁護士のサポートを受けることで、適切な離婚財産分与が行われるようにすることが重要です。

離婚財産分与の割合については、一般的には50:50が基本とされています。しかし、夫婦の貢献度や具体的な事情に応じて、割合が変更されることもあります。例えば、妻が専業主婦として家庭を支えた場合、その貢献度を考慮して、妻の取り分が多くなることもあります。

離婚財産分与は、夫婦の離婚後の生活を支えるために非常に重要な手続きです。性格の不一致が原因で離婚を考えている場合、離婚財産分与に関する詳細な情報を把握し、適切に準備を進めることが求められます。弁護士に相談し、離婚財産分与の進め方や具体的な対策についてアドバイスを受けることで、円滑な離婚手続きを進めることができるでしょう。

子供の親権・養育費

性格の不一致を理由に離婚を考える場合、子供の親権と養育費は非常に重要な課題です。離婚後も子供の福祉を最優先に考えることが求められるため、親権や養育費について適切に取り決めることが必要です。以下に、子供の親権と養育費について詳しく説明します。

まず、親権についてですが、親権は子供の監護や教育、財産管理などを行う権利と義務を含むため、誰が親権を持つかは非常に重要な問題です。親権者を決める際には、子供の年齢、生活環境、親子関係などが考慮されます。

例えば、夫が仕事で長時間不在になることが多く、妻が主に子供の面倒を見ている場合、妻が親権を持つことが一般的です。しかし、子供の福祉に最も適した環境を提供できるかどうかが最優先されるため、具体的な状況に応じて異なる結果となることもあります。

次に、養育費についてです。養育費は、離婚後に親権を持たない親が子供の生活費用を負担するために支払うお金です。養育費の額は、両親の収入や生活費用、子供の年齢や生活費用などを基に決定されます。養育費の取り決めは、夫婦間の協議や離婚調停を通じて行われますが、場合によっては裁判で決定されることもあります。

養育費の支払いは子供が成人するまで続けられることが一般的ですが、大学進学などの場合はさらに延長されることもあります。養育費の具体的な金額については、弁護士に相談することで、適切な額を算出することができます。養育費の支払いが滞る場合には、法的手続きを通じて支払いを強制することも可能です。

また、親権や養育費の取り決めは、将来的に見直しが必要になることもあります。例えば、親権者の生活環境が変わった場合や、養育費の支払い能力に変化が生じた場合には、再度協議や離婚調停を通じて取り決めを変更することができます。

性格の不一致が原因で離婚を考えている場合、子供の親権や養育費についても慎重に検討し、適切な取り決めを行うことが重要です。

離婚後の生活費用・お金のこと

性格の不一致を理由に離婚を考える場合、離婚後の生活費用やお金のことをしっかりと考えて準備することが重要です。離婚後の生活を安定させるためには、経済的な計画を立てる必要があります。以下に、離婚後の生活費用やお金に関する具体的なポイントを説明します。

まず、離婚後の住居費用について考える必要があります。離婚後、夫婦がそれぞれ別の住居に住むことになりますが、その際の賃貸料や住宅ローンの支払いなどをどうするかを決めることが重要です。例えば、妻が子供と一緒に住む場合には、住居費用を夫と協議して決定し、必要に応じて養育費の一部として負担を求めることができます。

次に、生活費用についても考慮しなければなりません。離婚後は、これまで共同で負担していた生活費用をそれぞれが負担することになります。食費、光熱費、通信費などの日常生活にかかる費用を見積もり、その費用をどのように賄うかを計画することが大切です。

また、子供がいる場合には、子供の教育費や医療費も重要な費用項目です。子供の学校の学費や塾代、病院の診察料など、子供にかかる費用をどう分担するかを夫婦間で明確に決める必要があります。これらの費用も養育費に含めて取り決めることが一般的です。

さらに、離婚後の収入源についても検討が必要です。妻が専業主婦であった場合、離婚後の収入を確保するために仕事を探す必要があるかもしれません。その際には、就職活動やスキルアップのための費用も計画に含めることが重要です。夫もまた、離婚後の生活費用を賄うために収入を見直す必要があります。

離婚後の生活費用を考える際には、弁護士に相談することが非常に有益です。弁護士は、夫婦間の財産分与や養育費、慰謝料などの取り決めに関して専門的なアドバイスを提供してくれます。また、離婚後の生活費用に関する具体的な計画を立てる際にも、弁護士のサポートを受けることで安心して進めることができます。

例えば、夫が高収入である場合、妻が離婚後に安定した生活を送るためには、適切な養育費や生活費用の分担を夫に求めることが重要です。これには、弁護士の助言を得て、協議や離婚調停を通じて適切な取り決めを行うことが必要です。

離婚後の生活費用やお金の問題は、離婚を考える上で避けて通れない重要な課題です。性格の不一致が原因で離婚を考えている場合、将来の生活を見据えた経済的な計画を立てることが求められます。弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けながら、しっかりと準備を進めることが大切です。

性格の不一致で離婚する場合の注意点

本記事で前述した通り、性格の不一致は法定離婚事由ではないため、性格の不一致で裁判離婚をするのは難しいです。そのため、性格の不一致で離婚する場合、なるべく協議や調停の段階で合意することが重要です。

性格の不一致を理由として、協議や調停で離婚を成立させるためには、次の点に特に注意して、離婚協議や離婚調停の話し合いを進めていきましょう。

1.話し合いの切り出し方のコツ

性格の不一致を理由に離婚を考える場合、最初に重要なのは夫婦間での話し合いです。話し合いを円滑に進めるためには、適切な切り出し方が必要です。以下に、話し合いの切り出し方のコツを具体的に説明します。

まず、話し合いのタイミングが重要です。夫婦がリラックスしている時間を選ぶことがポイントです。例えば、夕食後や休日の午後など、夫婦が共にリラックスできる時間を選ぶことで、冷静に話し合いを進めることができます。また、子供がいない時間や場所を選ぶことも重要です。子供の前では話しにくい内容であるため、プライバシーが確保できる状況を整えましょう。

次に、話し合いの始め方ですが、最初に相手の気持ちを尊重し、理解しようとする姿勢を見せることが大切です。例えば、「最近、私たちの関係について感じていることを話したい」と切り出すことで、相手に対する敬意を示し、話し合いの場を設ける意図を伝えることができます。このようなアプローチは、相手に防御的な反応をさせず、オープンな対話を促進します。

話し合いの内容に入る際には、自分の感情や考えを正直に伝えることが重要です。ただし、相手を非難するような言い方は避けましょう。「あなたが悪い」という表現ではなく、「私が感じていること」という形で話すことがポイントです。例えば、「最近、私たちの性格の不一致が原因で、お互いにストレスを感じていると感じる」といった具合です。このように、自分の感情を中心に話すことで、相手に理解を求めることができます。

また、話し合いを進める際には、具体的な問題点を挙げることが大切です。漠然とした不満を述べるのではなく、具体的な例を挙げることで、相手に問題の深刻さを理解してもらいやすくなります。例えば、「家事の分担について、私が一人で負担を感じている」といった具体的な事例を出すことで、問題の共有がしやすくなります。

話し合いの中で、解決策についても一緒に考える姿勢を持つことが重要です。離婚を考えている場合でも、まずは夫婦間での改善策を模索することで、相手に対する敬意を示し、真剣に問題解決を考えていることを伝えることができます。この姿勢は、相手の協力を得やすくし、建設的な話し合いに繋がります。

最後に、話し合いが難航する場合には、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、夫婦間の問題解決に向けた専門的なアドバイスを提供してくれるため、冷静で客観的な視点からのサポートを受けることができます。離婚を考える際には、弁護士のサポートを得ながら話し合いを進めることで、最適な解決策を見つけることができるでしょう。

以上のポイントを踏まえ、性格の不一致を理由に離婚を考えている場合、話し合いの切り出し方に工夫を凝らし、円滑に対話を進めることが重要です。

2.離婚しないと拒否された場合は?協議や調停でも合意できない場合の対処方法

性格の不一致を理由に離婚を申し出た場合、相手が離婚に同意しないこともあります。

まず、離婚しないと拒否された場合、感情的にならずに冷静に対応することが重要です。感情的な対立は問題をさらに複雑にするだけでなく、解決への道を遠ざけてしまいます。冷静に対応することで、建設的な話し合いを続けることができます。

夫婦の協議での解決が難しい場合、第三者の助けを借りることを検討しましょう。弁護士に相談することで、専門的なアドバイスを得ることができます。弁護士は、法律的な観点から適切な解決策を提案してくれるため、夫婦間の対立を緩和する助けとなります。

また、離婚調停を通じて、調停委員の助けを借りながら話し合いを進めることも有効です。

それでもなお、離婚に同意が得られない場合、最終手段として裁判を検討することになります。裁判は時間と費用がかかるため、可能な限り協議や離婚調停での解決を目指すことが望ましいですが、どうしても解決が見られない場合には、法的手続きを通じて問題を解決することが必要です。

3.裁判に備えて他の理由や証拠を探し、別居を検討しましょう

性格の不一致を理由に離婚を考えている場合、話し合いや離婚調停で解決が難しいこともあります。その場合には、最終手段として裁判を検討する必要があります。裁判に備えて、証拠集めや他の離婚理由を探し、別居を検討することが重要です。以下に、その具体的な方法を説明します。

まず、裁判に備えるためには、証拠を集めることが必要です。性格の不一致だけでは裁判で離婚が認められにくいため、他の理由や具体的な証拠を集めることが大切です。例えば、夫が家事や育児を放棄している場合や、妻が家庭内での暴言を繰り返している場合、それを証明するための記録や証言を集めます。日記をつける、メールやメッセージのやり取りを保存する、友人や親族に証言を依頼するなどの方法があります。

次に、性格の不一致以外の離婚理由を探すことも重要です。例えば、夫の不貞行為や妻の暴力行為があれば、それらを証明する証拠を集めます。不貞行為の証拠としては、ホテルの領収書や写真、メールのやり取りなどが考えられます。また、暴力行為の証拠としては、診断書や警察への届け出の記録などが有効です。

別居を検討することも有効な対策です。別居は、婚姻関係の破綻を証明するための重要な要素となります。別居期間が長くなるほど、夫婦関係が修復不可能であることを示す強力な証拠となります。別居を開始する際には、弁護士に相談して適切な手続きを進めることが重要です。

また、別居中の生活費用についても計画を立てる必要があります。別居後の住居費用や生活費をどう確保するかを考え、必要に応じて養育費や生活費の支援を求めることができます。

別居を開始する前に、しっかりと準備をすることが重要です。まずは、信頼できる弁護士に相談し、別居の手続きや必要な証拠集めについてアドバイスを受けることをおすすめします。また、別居中の生活費用やお金の管理についても、弁護士と共に計画を立てておくと安心です。

Q&A

Q1.性格の不一致を理由に離婚することはできますか?

性格の不一致を理由に離婚することは可能です。方法としては、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの方法があります。夫婦間で性格の不一致が続き、婚姻関係が破綻している場合、協議離婚や離婚調停による場合は離婚が成立しやすいです。ですが、離婚方法が裁判による場合は法定離婚事由が必要になるため、性格の不一致による裁判離婚は難しい場合があります。

Q2.性格の不一致を理由にした離婚の場合、慰謝料は請求できますか?

性格の不一致だけでは慰謝料を請求するのは難しいです。慰謝料が発生するには、相手に有責性が必要です。例えば、夫が不貞行為を行った場合や妻が暴力を振るった場合など、具体的な有責行為がある場合にのみ慰謝料を請求することが可能です。詳細は弁護士に相談すると良いでしょう。

Q3.性格の不一致で離婚する場合の費用はどのくらいかかりますか?

性格の不一致による離婚の費用は、離婚の方法や個々のケースによって異なります。協議離婚の場合は、基本的に費用はあまりかかりませんが、離婚調停や裁判を通じて離婚する場合は、弁護士費用や裁判費用が発生します。弁護士に相談することで、具体的な費用について見積もりを得ることができます。

当法律事務所の弁護士にご相談ください

本記事では、性格の不一致による離婚や性格の不一致の具体例について、弁護士が解説させていただきました。

性格の不一致による離婚は、夫婦間の価値観や生活習慣の違いが原因であり、円滑に進めるためには冷静な対応が求められます。

まず、性格の不一致を理由にした離婚では、話し合いや離婚調停を通じて協議することが大切です。双方が納得する形で解決策を見つけるためには、丁寧なコミュニケーションが必要です。また、性格の不一致では相手に有責性がない場合が多く、慰謝料の請求が難しいため、他の具体的な理由や証拠を集めることも考慮しましょう。

性格の不一致による離婚を進めるためには、なるべく早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

弁護士に相談することで、性格の不一致による離婚では慰謝料請求が難しい場合でも、不倫や暴力などの有責性があれば請求可能か確認できます。さらに、協議離婚や離婚調停がうまくいかない場合でも、裁判に備えた準備やサポートが受けられ、安心して手続きを進められます。

また、弁護士に交渉を依頼すれば、自分で対応する必要がなくなり、ストレスを軽減しつつ有利な条件で離婚を進められる可能性が高まります。加えて、親権や財産分与、離婚後の生活など、決めるべきことが多い中、弁護士から的確なアドバイスを受けることで、後悔のない離婚を実現することができます。

弁護士法人あおい法律事務所では、初回無料の法律相談も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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