モラハラと離婚|モラハラ夫とあっさり離婚したい!【離婚調停や裁判も解説】
「モラハラ」、つまりモラルハラスメントは、近年、夫婦の婚姻生活において深刻な問題となっています。
精神的な虐待やコントロールを行うモラハラ行為は、被害者の自尊心を著しく損なうだけでなく、身体にも変調をきたすほどの精神的なダメージを与えます。
このモラハラの問題に直面している夫婦は、モラハラを理由に離婚を考えることも少なくありません。しかし、離婚は重大な決断ですので、慎重に考える必要があります。
そこで本記事では、モラハラを理由に離婚したいときの方法や、離婚を拒否するモラハラ夫にはどのように対応したら良いかなど、具体的な事例も踏まえてご説明させていただきます。モラハラによる離婚は何かと煩雑ですので、本記事がご参考となれば幸いです。
モラハラという深刻な問題に対して、皆様がより良い選択をし、前に進むことができるよう、この記事がその一助となることを心より願っています。
目次
モラハラと離婚
モラハラによる離婚とは
モラハラとは、モラル・ハラスメントの略語で、近年ニュースなどで取り上げられることも増え、よく耳にするようになってきました。「モラル」が倫理や道徳、「ハラスメント」が嫌がらせという意味なので、倫理や道徳に反した嫌がらせ、という意味だとされています。
モラハラの行為としては、具体的には次のような言動が挙げられます。
- 配偶者の話を遮り、自分の意見を強く主張する。
- 家計や配偶者の外出について、過度にコントロールしようとする。
- 配偶者の過去の失敗を何度も持ち出し、そのことで執拗に相手を非難する。
- 自分は自由に交友するが、配偶者の友人や家族との交友は制限しようとする。
- 「お前は何も役に立たない。誰のおかげで生活できていると思っているんだ。」などと配偶者を貶める言葉や罵倒を繰り返し使う。
(参考)内閣府男女共同参画局/暴力の形態
夫や妻の、こうした言動による離婚請求が、近年では増えています。
実際に、「令和4年 司法統計年報(家事編)」という、裁判所が公開している統計情報を見てみますと、「精神的に虐待する(モラハラ)」を理由として離婚調停を申し立てた人数は、約1万4200人となっています(「令和4年 司法統計年報(家事編)・第19表 婚姻関係事件数:申立ての動機別・申立人別(全家庭裁判所)」参照)。
このように、モラハラを理由とした離婚は、増加傾向にあるようです。
モラハラでは離婚できない?
さて、そんなモラハラによる離婚ですが、必ずしも全ての申立てが認められるわけではありません。モラハラを理由にした離婚請求が認められる場合と、認められない場合について、簡単にご説明させていただきます。
モラハラで離婚できる場合
協議離婚と調停離婚では、夫婦双方の合意があれば、モラハラを理由に離婚することが可能です。協議は夫婦間での話し合いですし、離婚調停でも、申立ての理由に特段の制限はないからです。
しかし、合意が得られない場合や、合意に至る過程で証拠が求められることもあります。
このような場合は、離婚裁判になりますが、裁判で離婚が認められるためには、法定離婚事由(民法第770条1項)が必要です。
民法第770条1項によると、「婚姻を継続しがたい重大な事由」がある場合、配偶者は離婚を請求することができます(民法第770条1項5号)。モラハラは、この「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当てはまる可能性があります。
具体的には、配偶者からの暴言、無視、経済的な束縛、社会的な孤立を強いる行為などが該当することが考えられます。これらの行為が継続的かつ重大であれば、裁判で離婚が認められるための法定離婚事由となるでしょう。
モラハラで離婚できない場合
一方で、モラハラの程度が軽微であったり、証拠が不足している場合、離婚は難しいことがあります。モラハラ行為が口頭でのみ行われたり、目撃者がいない場合は証拠を収集することが困難です。
そのため、配偶者の行動や言動を詳細に記録し、できるだけ多くの証拠を集めることが重要です。また、カウンセリングや医療機関での相談も有効な手段となり得ます。
専門的な知識と経験を持つ弁護士にご相談いただくなどして、冷静かつ慎重に対応することで、最善の結果を目指していただければと思います。
モラハラ夫とあっさり離婚したい!どうしたら?
モラハラ夫と離婚するなら証拠が重要!
モラハラ夫とや妻と離婚したいと思っても、なかなか簡単にはいかないかと思います。
特に、モラハラの加害行為を認めてしまうと、モラハラ加害者としては離婚慰謝料を支払わなければならなくなることもあって、スムーズに離婚協議を進めていくことは困難なのです。
とはいえ夫婦の問題ですから、話し合いが可能であれば、まずは離婚したい、と意思を伝えることになるでしょう。ですが、モラハラを行う夫は、自己の非を認めることなく、離婚に同意しないこともあれば、親権や慰謝料を巡って争うことも考えられます。そのため、モラハラ夫との離婚を進める際には、以下の3つの重要なポイントに留意する必要があります。
まず、モラハラの証拠を確実に集めることが重要になってきます。
モラハラは目に見えない、精神的なDVであるため、客観的にモラハラのあったことを証明できる証拠がなければ、離婚の理由として認められません。なお、離婚調停ならば話し合いなので証拠は要らないだろう、と考える人もいますが、たとえ調停でも、第三者にモラハラを証明できる証拠を用意しておくことが望ましいです。
証拠として効果的なものには、モラハラを受けている際のチャットや音声、動画の記録、医師による診断書、警察や相談センターへの相談履歴などがあります。さらに、日時や場所、内容を詳細に記載したメモや第三者による証言も補足的な証拠として利用できます。
そして、離婚を前提とした別居を行うことも、ご検討ください。
モラハラ夫や妻との離婚を目指すにあたり、別居は効果的な手段となるでしょう。
最大のメリットは、心身の安全を確保できる点です。別居することによって、モラハラ被害から解放されるため、心の平穏を取り戻すことが期待できますし、距離を置くことによって、離婚について冷静に考えて行動することも期待できます。
また、別居期間が1年、2年と長引けば、それ自体が離婚の理由となることもあります。
別居を実施する際には、婚姻費用(生活費)や子どもの養育費などを請求できるかについても、検討しておくと良いでしょう。
このような、モラハラ夫や妻との離婚手続きや、そのための証拠集め、別居などについてのお悩みは、まずは弁護士にご相談ください。
特に、別居には法的なリスクがともなう恐れがあります。別居が「悪意の遺棄」と判断されてしまう可能性があるためです。これは、配偶者が相手に対して無断で別居を始め、夫婦としての協力義務を果たさないような状態を指します。このような悪意の遺棄とみなされる行為は、離婚の際に不利な立場に立たされることとなります。
そのため、別居を考えている場合は、なるべく早いうちに弁護士にご相談いただき、適切な手続きと準備をもって、離婚手続きを進めていくようにしていただければと思います。
方法①:夫婦間での話し合い(協議)
モラハラを理由に離婚を考える際、初めに実行すべきことは、配偶者との丁寧な対話を通じて、お互いの理解を深め、可能であれば合意に基づいた離婚を目指すことです。たとえば、互いに感じている不満や希望を率直に話し合い、お互いの立場を理解し合う時間を設けることが重要です。
一方で、離婚を切望している方が、自分の思いや条件をはっきりと伝えることで、相手も離婚に同意することがあります。ただし、その際には慰謝料の支払いや財産分与といった、離婚に伴う様々な条件についての合意を得ることが必要です。
財産分与や慰謝料に関して意見の対立が生じた場合でも、冷静に話し合いを進め、お互いに歩み寄る姿勢を持つことで、納得のいく解決策を見出すことが可能です。たとえば、具体的な分配方法や支払い方法を細かく決め、双方が納得できる条件を模索することが大切です。
しかし、もし配偶者が日常的にモラハラ行為を行っている場合、直接の対話がかえってストレスとなり、解決への道を遠ざけることもあります。そのような状況においては、無理をせず一度距離を置くことを選択し、別居を検討することも一つの方法です。別居により心に余裕が生まれ、より良い解決策を冷静に考えることができるようになるでしょう。
伝え方には気を付けましょう
モラハラを理由に離婚協議を進める際、話し合いの進め方や言葉の選び方、そして離婚したいという気持ちをどのように伝えるかは非常に重要な要素となります。モラハラを受けている状況では、感情が高ぶりやすく、対話がこじれやすいため、特に注意が必要です。
まず、話し合いの進め方についてですが、自身の主張したい内容と、モラハラ行為についての事実関係などを整理しておきましょう。
離婚の話し合いのタイミングとしては、相手が仕事で忙しいときや疲労が溜まっているときは避けましょう。また、子どもや、離婚の話し合いを聞かせるべきではない他者が立ち会っている状況は離婚協議には向いていません。相手にも落ち着いて話し合いに応じてもらえるような環境で、離婚の話を切り出しましょう。
モラハラ加害者が暴力を振るったり、威圧的な言動をしたり、その場から逃げ出したりすることを想定し、安全策や緊急時の連絡先・避難先も、あらかじめ用意しておくと良いでしょう。
しかし、どれほど自分が気を付けていても、相手が攻撃的になってしまったり、議論が平行線になってしまう可能性はあります。
ですので、弁護士などの信頼できる第三者に、モラハラ夫・妻との間に入ってもらって、離婚の話し合いを進めることをおすすめいたします。
方法②:離婚調停
夫婦間の話し合いで離婚ができなかった場合、そもそも離婚協議が難しい場合は、裁判所での離婚調停によってモラハラ配偶者と離婚します。
離婚調停は、夫婦とともに、中立的な立場である調停委員が、離婚についての話し合いを進める手続きです。
ですので、「夫からモラハラの被害を受けているので離婚したい。」と主張するだけでなく、調停委員に「夫がモラハラ行為をしていること」を理解してもらえなければならないのです。しかし、モラハラの被害を受けていることを第三者に客観的に証明するのは、難しい場合が多く、調停委員から「離婚ではなく関係修復に努めてはどうか」「離婚が認められるほどの夫婦関係の破綻はないのではないか」などと促されることもあるようです。
調停委員に正確にモラハラの状況を理解してもらうためには、離婚調停の際に、具体的な証拠を示しながら、当事者が分かりやすく主張・証明する必要があります。
このとき重要となるのは、配偶者によるモラハラを立証するための、客観的で説得力を持った証拠です。モラハラは身体に傷を残さないことが多く、家庭内で行われることが一般的なため、家庭外の人にはモラハラ被害を理解されにくいのが現状です。
特に、モラハラ夫・妻の特徴として見られるのが、「社会的には信頼されている。良い人である、という評価を受けている。」というものです。モラハラ夫・妻は、裁判所のような場所では非常に紳士的にふるまい、モラハラ行為をしたことを全力で否定することが多いのです。そのため、単に言葉だけで「モラハラ被害を受けています。」と言っても、信じてもらえないことが少なくないのです。
モラハラの被害を訴える証拠として有効なものとしては、以下の例を挙げることができます。
- モラハラ被害者が受けた暴言や罵倒などを録音した音声ファイル
- モラハラ加害者が物を壊す様子や、暴言を吐く様子などを撮影した動画データ
- モラハラの行為や、モラハラ行為によって感じた精神的苦痛などを日々記録した日記やメモ
- モラハラ加害者からの暴言や脅迫を含むメールやメッセージ、SNSのスクリーンショット
- モラハラ加害者が被害者に対し、言動などの改善を求める手紙やメール、SNSのやり取り
- 信頼できる友人や家族、警察といった機関へのモラハラについての相談の記録
- 心理カウンセラー、医師、弁護士といった専門家からの意見や診断書、相談記録
こうした説得力のある証拠を集めることは、なかなか難しいこともあります。特に、離婚を前提として別居している場合などは、証拠集めもより一層難しくなるでしょう。そうした場合は、証拠集めなどについても、弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。
なお、モラハラ証拠収集の上で重要なポイントは、「相手の非難や侮辱といった行為が、通常の範囲を超えていることを示すこと」となります。
そこで、モラハラ行為を受けた後に、日記やメモを作成する際には、モラハラ加害者の発言内容を思い出し、モラハラ加害者の発言内容をできるだけ具体的に記録するように意識しましょう。たとえば、「お前は、毎日家のことだけ考えていればいいから、気楽でいいよな。俺が稼いだ金で、楽に生活ができて。」「誰のおかげで生活できていると思っているんだ。」「俺の言うことが聞けないのなら今すぐ出ていけ。」など、モラハラ加害者の具体的な発言内容を記録しておくことが特に大切です。
また、モラハラを受けて、「今日も暴言を言われてつらかった。」「私の話を聞いてくれなくて悲しい。」などのモラハラを受けた精神的苦痛を日記やメモに記録することも、日時が記載されていれば、日常的にモラハラ行為を受けていることを立証するための証拠になる可能性があります。
モラハラは近年耳にするようになってきましたが、どのような行為がモラハラに該当し、どこまでであればモラハラに該当しないかなどは、個々のケースごとに判断していくことになります。
方法③:離婚裁判
離婚調停が不成立となり、モラハラ夫や妻との離婚ができなかった場合の離婚方法は、離婚裁判になります。
なお、「モラハラ夫との話し合いは難しいので、最初から離婚裁判の方法によって離婚請求する方が効率が良いのではないか。」という疑問もちょうだいいたしますが、日本では離婚といった家事事件は「調停前置主義」を採用しておりますので、いきなり離婚裁判を申し立てることはできないのです(家事事件手続き法第257条)。
(調停前置主義)
家事事件手続法第257条 第244条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
2 前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
簡単に言ってしまうと、「家庭の問題はなるべく家庭の話し合いで解決すべきなので、裁判の前に必ず調停という話し合いをしましょう。」という考え方です。
そのため、モラハラ配偶者との離婚を考えたときも、いきなり離婚裁判を申し立てるのではなく、まずは離婚調停を行い、不成立だった場合に離婚裁判になる、という流れになっております。
さて、離婚裁判の申立ては、離婚原因となるモラハラの具体的な内容や証拠、慰謝料や財産分与、親権や養育費などの請求内容を記載した書面の他、証拠などを添えて裁判所に提出します。
調停と大きく異なるのは、「法定離婚事由」が必要である、という点です。
モラハラを理由とした離婚が裁判で認めらるためには、民法に定められた次の5つの離婚理由のうち、いずれか一つに当てはまることが必要とされています。
(裁判上の離婚)
民法第770条1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
上記の5つの中には、「モラハラ」や「精神的虐待」といった離婚理由は記載されておりません。
そこで、「婚姻を継続するのが難しいほどの、モラハラの加害行為があること」を、客観的な証拠資料等により、裁判所に認めてもらう必要があります。
ここでも重要なのは、上でご説明した離婚調停の場合と同じく、客観的にモラハラの行為があったことを示す証拠の存在です。
証拠を収集・整理する上で重要なポイントを以下にご紹介いたします。
- 証拠はできるだけ客観的である必要があります。自分の感情や主観を交えず、事実のみを記録するよう心掛けてください。
- 医師やカウンセラーからの診断書や意見書は、強力な証拠となります。可能であれば、専門家の診断や相談を受けるようにしましょう。
- いつ、どのような状況でモラハラが行われたか、日付や状況(発言内容など)について詳細に記録しておくことが重要です。
- 集めた証拠は整理しておくことが重要です。時系列に並べ、どの証拠がどのような状況を証明するかを明確にしておくと、裁判での説明がしやすくなります。
- 証拠の集め方や整理の仕方、どの証拠が有効かなど、不安や疑問があれば弁護士に相談してください。
証拠収集と別居はどちらを優先すべき?
ここまで、モラハラの証拠が非常に重要であるとお伝えしたので、別居と証拠収集のどちらを優先すべきか、お悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
もしも、証拠収集するほどの余裕もなく、モラハラ加害者の暴言や言動に追い詰められている状況にあるのであれば、別居を優先することをおすすめいたします。
別居後はモラハラの証拠を集めるのは難しくなりますので、別居前にモラハラの証拠を集めておくのが理想ですが、まずは自分自身を保護してください。
モラハラ被害者は洗脳状態にありますので、心身の安全のためにも別居して物理的距離を置くことが望ましいです。
また、離婚を既に決断している場合は、モラハラの証拠収集より別居を優先しましょう。別居期間が長ければ、モラハラではなくとも、婚姻関係の破綻を理由に、裁判で離婚が認められる可能性があります。
また、別居をすべき場合でも、住宅の名義は自分なので、モラハラ加害者に自宅を出ていってほしい、というケースもあるかと思います。
そういったケースでは、モラハラ加害者に対して、自宅からの退去や一時退去を求めることを検討していくことになります。
離婚前の自宅退去の請求が認められるかは、法律的な問題となりますので、一人でやろうとすると非常に難しいです。
こうした別居についてのお悩みは、事前に弁護士へのご相談をご検討ください。
裁判事例
それでは、モラハラを理由とした離婚請求が認められた裁判の事例をご紹介いたします。
モラハラによる離婚が認められた裁判例(横浜家庭裁判所令和3年3月17日)
事実
夫は、妻の行動や言葉に不満を持つと、妻を厳しく非難し、「非常識だ」、「間違っている」、「価値がない」、「普通なら分かるだろう」などと言って彼女を徹底的に批判しました。さらに、「クズ」や「カス」といった侮辱的な言葉を使うこともありました。特にある時、夫が骨折して入院していた際には、妻に対して「殺す」「殺意しかない」と言いました。
夫のこのような言動によって、妻は精神的に不安定な状態となり、抑うつ気分や希死念慮を抱えるようになりました。その結果、彼女は医療機関を受診し、投薬治療を始めました。妻は医師に対して、アルコールやたばこなどの刺激物を欲しがること、気分が不安定で子育てに集中できないと訴えました。
その後、妻は異なる医療機関でも「うつ病」と診断され、投薬治療を受けることとなりました。
こうしたモラハラ行為から、妻は夫に対して離婚を請求した事案です。
この離婚請求について、裁判所は上記の事実を踏まえて、次のように判断しました。
裁判所の判断
被告は、原告との性交渉の際、原告が避妊を求めてもこれに応じず、また、原告が拒絶しているにもかかわらず性交渉に応じさせていたこと、原告の言動に不満があると、あたかも原告が間違っているかのように原告を徹底的に批判し、罵ることもあったこと、原告は、このような被告の言動により精神的に不調を来し、精神科で投薬治療を受けるようになったこと、原告は、平成30年3月23日、子らを連れて被告と暮らしていた住居を出て、以後被告とは別居していること、別居後、原告と被告との間で任意に被告と子らとの面会交流を行っていたが、被告は、原告の就寝中に長女(当時3歳)を連れ去った後、長女が帰りたがらないと言っているとして長女を原告に返さず、長女を原告に引き渡すよう命じる複数の審判等にも従わず、長女を被拘束者とする人身保護請求を原告が取り下げなければ一生会わせないなどとする手紙を原告に交付し、長女とともに居所を明かさない状態であることが認められる。これらによれば、原告と被告との婚姻共同生活を回復することはもはや困難といわざるを得ず、婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)がある。
このように述べ、夫(被告)のモラハラ行為が、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することを認め、妻の離婚請求には理由があると判断し、離婚を認めました。
Q&A
Q1.モラハラで離婚を考えているのですが、どのような準備をすべきですか?
まず、証拠を集めてください。モラハラは直接的な証拠が少ないため、日記をつけて具体的な出来事や言動を記録しましょう。また、信頼できる友人や家族に相談し、心身の安全を確保し、冷静に考えられるような環境を整えましょう。状況が悪化した際に避難できる場所や人を確保しておくことも重要です。
また、法律の専門家である弁護士に相談し、法的なアドバイスを得ることが大切です。弁護士は法的な知識と経験を持っており、あなたの状況に応じた適切なアドバイスやサポートを提供してくれるでしょう。離婚を進める上での手続きや必要な書類、また慰謝料や財産分与についても相談することができます。
Q2.モラハラで離婚を進める際、法的にはどのような点に注意すべきですか?
モラハラを理由に離婚を進める際、証拠の確保が非常に重要です。モラハラは形のない暴力であるため、証明が難しいケースが多いです。
日常的に行われたモラハラの具体的な行為や言動を記録して、証拠として提出できるように準備しておいてください。これには、日記、メールやメッセージのやり取り、音声録音などが含まれます。
同時に、弁護士と密に連携し、法的な権利と手続きの流れを正確に理解しておくことが重要です。
Q3.モラハラを受けていることを他人に話すのが怖いです。どうしたらいいですか?
モラハラは非常にデリケートな問題であり、それを話すことが怖いと感じるのは自然なことです。しかし、一人で抱え込むことはあなたの心身に悪影響を及ぼす可能性があります。信頼できる友人、家族、または専門家に相談し、支援を求めることが重要です。話すことで気持ちが楽になり、解決策を見つけやすくなることもあります。
こちらの関連記事では、モラハラ被害を受けた際にどこに相談すべきなのか、という点についてまとめてありますので、参照にしてください。
モラルハラスメントのお悩みは弁護士にご相談ください。
モラルハラスメント(モラハラ)は、精神的な苦痛を引き起こし、特に結婚生活においてはその影響が甚大であることがあります。
この記事を通じて、モラハラを理由に離婚を考えている方々に対して、その手続きの方法や、伝え方について、具体的な事例をまじえながら、ご説明させていただきました。
モラハラは直接的な証拠を残しにくい性質を持っているため、日記をつけて具体的な出来事や言動を記録することが、離婚においては重要です。また、被害を受けている環境下では冷静に思考することも難しいため、信頼できる友人や家族に相談して心の支えを得るとともに、心身の安全を確保できるようにしておく必要があります。
そして、法的な問題に関しては、法律の専門家である弁護士にご相談していただくことをおすすめいたします。
当法律事務所では、モラハラに関連する離婚問題に対する豊かな経験と専門知識を持つ弁護士が、皆様の困難な状況に対して親身になって対応し、最適な解決策を提案します。
モラハラによる苦痛は非常に重いものです。お悩みを真摯に受け止め、お一人お一人の状況に合わせて丁寧に対応していきます。
皆様が再び幸せを取り戻し、充実した生活を送ることができるよう、全力でサポートいたします。
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この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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