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シェルターとは?DV被害を受けた女性が避難する保護施設の概要を解説

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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シェルターとは何かと聞くと、自然災害時の避難施設としてのシェルターや、戦時下で避難場所となる核シェルターなどが連想されるでしょうか。

しかし、シェルターはそれ以外にも、夫婦・家族関係においてDV被害を受けた母子を保護するための福祉施設としてのシェルター、通称DVシェルターも存在します。

この記事では、夫からDV被害を受けた女性や子供にとっての避難場所となるDVシェルターについて、弁護士が解説いたします。

シェルターとは何か、どういった種類のシェルターがあるのか、その中でもDVシェルターとはどのような役割を果たすのかなど、詳しくご説明させていただきます。

目次

シェルターとは何・誰のための施設?

まずは簡単に、シェルターとは何か、その意味やシェルターの種類について見ていきましょう。

日本におけるシェルターとは?シェルター(shelter)の意味

シェルターとは、英語で「shelter」と表記し、「避難所・保護施設・隠れ場・救護所・一時的収容施設」などの意味を持つ言葉です。自然災害や人為的な攻撃などのさまざまな危険から身を守るための避難所のことをいいます。

なお、たとえばコンクリート製の頑丈な建物のような施設・建築物だけを意味するのではなく、たとえばアウトドアの時に使うテントや、日差しの直射を防ぐための覆いなども、簡易的な「シェルター」と呼ばれることがあります。

日本では災害時用の防災シェルターのイメージが強いですが、意識してみると日常生活の中でもシェルターを意味するもの、シェルターに近いものは意外と多いのです。

さて、そんなシェルターですが、人が身を守るために避難する所としてのシェルターは、大きく次の3種類に分類できます。

種類①ミサイル攻撃など戦時下の避難所

ミサイル攻撃や核攻撃を受けた際に、身を守るための一時避難所としてのシェルターがあります。

日本では核シェルターなどと呼ばれています。このタイプのシェルターは、日本における普及率はわずか0.02%となっており、あまり馴染みのあるシェルターではありません。

なお、過去には栃木県矢板市や茨城県結城市において、ふるさと納税の返礼品として防災核シェルターが設定されたこともありました。

種類②自然災害時の避難所

日本でシェルターといえば、2つ目の種類となります、災害シェルターでしょう。

災害シェルターとは、津波や洪水、地震などの災害が起きた際に避難し、身を守るために設けられた施設を指します。防災シェルターとも呼ばれることがあります。

もともとシェルターといえば、ミサイル攻撃や核攻撃から身を守るための施設でしたが、防災目的としても使われるようになり、一般に普及するようになりました。

東日本大震災を機に度々ニュース番組などで報道され、一般的に知られるようになった津波・洪水シェルターや、地震で家屋が倒壊した際に身を守ることができる屋内用の耐震シェルターなど、自然災害に応じてさまざまなタイプのシェルターがあります。

種類③福祉シェルター

3つ目の種類は、福祉シェルターです。

福祉シェルターとは、DVシェルターとも呼ばれます。福祉シェルターは、配偶者などからのDV被害を受けた母子が、DV被害から逃れるための一時避難所として機能する福祉施設です。

この記事では、夫婦・家族間でのDV被害を受けた母子が避難する避難所としてのDVシェルターに注目し、その内容について詳しく解説していきます。

DVシェルターとはどんなところ?

DVシェルターとはDV被害を受けた母子を保護するための施設

DVシェルターとは、DV(家庭内暴力)の被害を受けた女性や子供が一時的に避難し、身柄の安全を確保するための保護施設のことです。

DV加害者からDV被害者の身を守るため、住所などの情報は公開されていません。その運営者によって、公的シェルターと民間シェルターの2つのDVシェルターがあります。

DVシェルターでは、被害者が安心して過ごせるように、部屋や生活に最低限必要な物資が提供されたり、心理的なサポートや法律相談、就労支援などのサポートも受けられることが一般的です。DVシェルターによっては、食事も提供されるところがあります。

DVシェルターでは、DV被害者が一時的に非難した後、避難所を出て自立して安全な生活を送ることができるように、さまざまな支援が行われています。

日本におけるDVシェルターの歴史

日本におけるDVシェルターの歴史は、昭和30年代にまで遡ります。

1956年に制定された売春防止法を根拠に、売春防止法違反で補導された女子を保護・収容し、更生を促すための施設(婦人補導院)でした。現在の公的シェルターに近いですが、更生施設の色が強く、現在のDVシェルターとは目的や受けられるサポートが異なっていました。

その後、1985年になると、配偶者からのDVから母子を一時的に保護する民間の施設として、ミカエラ寮が開所しました。ミカエラ寮は、日本初の民間シェルターと言われています。

そして1990年代後半になると、日本でDVが深刻な社会問題であると認識されるようになり、2001年(平成13年)に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」が制定されることとなりました。

こうして、公的シェルターが全国的に整備されるようになっていったのです。

さて、このDVシェルターですが、シェルター内の実際の生活はどのような様子なのでしょうか。

DVシェルターに関してはその秘匿性が重要であるため、インターネットで詳細を調べようとしても、具体的な情報はなかなか掲載されていません。施設の情報が外部に漏れてしまうことを防ぐため、外出も頻度や時間が制限されたり、インターネットがなく、携帯電話を入居時に預けなければならないこともあります。

そのため、以下でご紹介する公的シェルターと民間シェルターについては、あくまで一般的な情報となります。

公的シェルターの内容と費用

公的DVシェルターとは、行政が運営するDV被害者のための一時的な保護施設です。前述のDV防止法に基づいて、各都道府県に設置されています。なお、公的シェルターとは、民間シェルターに対して生まれた便宜上の呼称です。

原則として、公的シェルターを利用する費用はかかりません。公的シェルターは税金で運営されており、生活に必要な物資や食事が提供されます。

また、起床から就寝までの生活リズムも決められており、基本的にはシェルター内でテレビを見たり、他の入居者と交流したり、施設の職員と会話したりして過ごすようです。

部屋は個室ではなく相部屋が一般的です。

民間シェルターの内容と費用

一方で、民間シェルターは税金で賄えないため、入居には費用がかかります。一泊につき1000円前後で、子供を連れて入居する場合の子供の利用料は半額、という料金形態が一般的です。

食事なども、提供される場合もあれば、入居者が各自で用意しなければならないこともあります。

公的シェルターは食事や就寝の時間が管理されていますが、民間シェルターでの生活リズムは自由のようです。また、相部屋ではなく個室を利用できることが多いです。

DVシェルターに入居するには警察や婦人相談所などに相談しましょう

 

DVシェルターに入居するには警察や婦人相談所などに相談しましょう

 

DVシェルターは、その場所や連絡先が公開されていないため、直接自分で探して入居申請をすることはできません。そのため、入居したい場合はまず公的機関に相談し、DVシェルターに入居したい旨を伝える必要があります。

DV被害を受けたらまず、警察や婦人相談所、配偶者暴力相談支援センターといった相談窓口に相談しましょう。

対面で相談する以外にも、電話やメールなどで相談することも可能です。また、どこに相談したら良いのか分からないといった場合にも、こうした施設では適切な相談先を教えてもらうことができます。

たとえば、国のDV相談窓口のひとつに「DV相談+(プラス)」という相談窓口があります。24時間、電話相談を受け付けているため、DV加害者と同居していて日中の相談が難しい被害者も、夜間に相談できるのがメリットです。

DV相談+はDVの内容や相談者の性別、住居地にしばりがなく、24時間の電話相談のほか、メールやSNSチャットによる相談、WEB面談、外国語相談なども行っています。

また、DV被害者一人では対応しにくい問題(新居探しや警察・弁護士への相談など)について、相談相手である専門家が同行支援を行うサービスも提供しています。

こうした相談窓口に問い合わせ、まずは現在の状況や、DVシェルターに入居したい旨を相談しましょう。

なお、DV被害の相談窓口については、当法律事務所の関連記事もご一読いただければと思います。

DVシェルターに入居するための条件

公的シェルターか民間シェルターか、によっても異なりますが、DVシェルターに入居するためには、一般的に以下の条件を満たしている必要があります。

  • 配偶者からDV(身体的暴力・性的暴力)の被害を受けているか、DVに準ずるような心身に有害な影響を受けていること。
  • 身柄を保護すべき緊急性があること。

また、この他にも、子供やペットを連れての入居の可否など、被害者の状況やケースに応じて、DVシェルターへの入居の可否や、どのシェルターを紹介するか、といったことが検討されます。

DVシェルターに入居する場合にあると良い持ち物

なお、DVシェルターに入居するケースでは緊急性が高いことが多く、自分や子供の持ち物を満足に持ち出せないことがあります。ですので、あらかじめ以下の貴重品や身分証明書はひとところにまとめておくなどして、緊急時に素早く持ち出せるように準備しておくことをおすすめいたします。

  • 現金
  • 自分や子供の名義の預金通帳
  • 印鑑
  • クレジットカードやキャッシュカード
  • 健康保険証、運転免許証、マイナンバーカードなど
  • 母子手帳や年金手帳
  • 常用している薬
  • DVの証拠(写真や診断書、録音データなど)
  • 最低限の着替え

シェルターとは?Q&A

Q1.日本におけるシェルターの3つの種類を教えてください。

シェルターについては、主に次の3つのタイプに分類できます。

  • ミサイル攻撃や核攻撃を受けた際に一時的に身を守るためのシェルターで、日本では核シェルターなどと呼ばれるタイプのシェルター。
  • 津波や洪水、地震などの災害が起きた際に避難し、身を守るために設けられた災害シェルター。
  • DVシェルターとも呼ばれ、配偶者などからのDV被害を受けた母子が逃れるための一時避難所として機能する福祉シェルター。

Q2.公的なDVシェルターについて、簡単に教えてください。

公的DVシェルターは、DV被害者のための一時的な保護施設であり、行政が運営し、DV防止法に基づいて各都道府県に設置されています。

利用費用は原則無料で、税金によって運営され、生活に必要な物資や食事が提供されます。生活リズムは決められており、シェルター内での過ごし方には一定のルールがあります。宿泊施設は相部屋が一般的です。

Q3.民間シェルターについて、簡単に教えてください。

民間シェルターの利用には費用が必要で、一泊あたり約1000円から1500円程かかります。

また、生活必需品や食事を自分で準備しなければならない場合もあります。一方で、公的シェルターと異なり生活リズムは自由で、個室を利用できることが一般的です。

弁護士にご相談ください

この記事では、シェルターとは何か、特に、配偶者からDVを受けた女性や子供が避難するDVシェルターとはどんなところか、といったことについて、分かりやすく解説させていただきました。

DVシェルターの利用には、それぞれの目的や緊急性に応じて入居条件が設けられており、適切な支援を受け自身や子供の安全を守るためには、早めに相談機関に相談することが重要です。

DV被害は深刻化すると、生命に危険を及ぼすことになる恐れもあります。そのため、配偶者からDV被害を受けたときには、迷わずDV相談窓口に問い合わせましょう。

また、DV被害を理由に離婚や慰謝料請求を検討している場合は、弁護士にご相談いただければと思います。DV加害者と直接交渉をするのは、心身の安全のためにもおすすめできません。交渉のエキスパートである弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

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