寄与分|寄与分とは?親を介護した相続人に認められる?裁判例も解説!

被相続人の財産の維持や増加に貢献した家族がいる場合、その貢献を遺産相続で評価すべきか、相続分の算定で考慮すべきかが問題になります。被相続人と長年同居し介護していた相続人が、自身が受け取る遺産が被相続人を介護していなかった他の相続人と同じなのは公平でないと、争いになることも少なくありません。
こうした場合に知っておきたい制度が、「寄与分」です。寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付、療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持または増加について「特別の寄与」をした者がいる場合に、その貢献を金銭的に評価して相続分に加算する制度です。
法定相続分通りの分割では不公平が生じる場合に、相続人間の実質的な公平を図ることを目的とする制度ですが、寄与分の認定は簡単ではありません。どのような行為が寄与分として認められるのか、実際の裁判における判断とあわせて、しっかり確認しておくことが重要です。
そこでこの記事では、寄与分の基本的な概念から、寄与分が認められるための要件や類型、具体的な裁判例などを、弁護士が詳しく解説させていただきます。遺産相続で損をしないためにも、本記事で寄与分について確認していきましょう。
目次
寄与分
1.寄与分とは
「寄与分(きよぶん)」とは、被相続人が亡くなる前に、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人が、どのくらい貢献したかに応じて相続財産を多く受け取ることができる制度です(民法第904条の2)。
「寄与」とは、一般的には「貢献すること」や「役立つこと」を意味します。遺産相続においては、被相続人の財産に対して何らかの形でプラスの影響を与えた行為を指します。寄与分の制度は、遺産分割において、被相続人に貢献した相続人に対して法定相続分を超える額の財産を取得させることによって、相続人間の公平を図ることを目的としているのです。
例えば、長女が被相続人である父親の介護を長年やってきて、その健康の維持や生活の質の向上に大きく貢献したとします。一方で、他の兄弟は仕事や自身の家庭の事情で、介護にほとんど関わってきませんでした。
こうしたケースで、長女の介護によって母親の財産が維持されたり、介護費や医療費の節約につながったりしたことが評価されると、長女は法定相続分以上の遺産を寄与分として受け取れる可能性があります。
1-1.寄与分に関する民法の根拠
寄与分については、民法に以下のとおり定められています。
(寄与分)
民法第904条の2 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。
「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき」と規定されているとおり、寄与分が認められるためには要件に該当する必要があります。
寄与分が認められる要件については後述いたしますので、まずは寄与分の基本的な事項について見ていきましょう。
1-2.寄与分と遺言の関係
ところで、寄与分はあくまでも「被相続人の意思に反しない」限りにおいて認められます。
遺言によって相続人に財産を相続させることを「遺贈」といいますが、寄与分はこの「遺贈」を侵害してまでは、認められません。民法第904条の2第3項において、「寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。」と定められているからです。
仮に、相続財産が1,000万円あり、「子Aに600万円、子Bに400万円を相続させる。」旨の遺言があったとしましょう。この場合、子Bが被相続人を長年にわたって介護しており、理論上は、金額にすれば800万円の寄与分が認められるとします。ですが、子Bが800万円を相続してしまうと、被相続人が「子Aに600万円を相続させる」という意思に反することになってしまいます。そのため、このケースでは子Bに800万円の寄与分は認められないことになるのです。
もし、相続財産全てが遺贈された場合は、寄与分を受け取ることができません。
このことから、寄与分の上限は「相続財産の総額-遺贈の価額」であることが分かります。
1-3.寄与分と遺留分の関係
一方で、寄与分は遺留分に優先することになる、と考えられています。遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた、最低限相続することのできる相続分です。
遺留分について定めた民法第1044条が、寄与分についての民法第904条の2を準用していないことから、「遺留分の算定において寄与分を考慮する必要はなく、寄与分により他の相続人が得た額が遺留分額に満たないことになっても、その差額を取り戻すことはできない」ということになるのです。
そのため、遺留分より寄与分が優先するものと考えられています。
そのため、特定の相続人に高額な寄与分が認められた場合、他の相続人が受け取る相続分が、遺留分を下回ってしまう可能性があるのです。
なお、家庭裁判所が寄与分の認定をする際には、民法が「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他の一切の事情を考慮する」と規定していることから、「他の相続人の遺留分についても、寄与額の決定の事情として考慮すべきである」とされています(東京高等裁判所平成3年12月24日決定)。
寄与分が遺留分に優先するという前提はありますが、遺留分を侵害する寄与分も必ず認められる、というものではなく、遺留分が寄与分の認定に影響しているのが実状です。
このように、遺贈は寄与分に優先し、寄与分は遺留分に優先する一方、遺留分は遺贈に優先することから、寄与分・遺留分・遺贈はいわゆる「三すくみ」の関係にあると言えるでしょう。
2.寄与分の対象
2-1.寄与分の対象は相続人
寄与分を主張できるのは、原則として「共同相続人」に限られます。寄与分の制度は、相続人の中に被相続人の財産の維持または増加について「特別の寄与」をした者がいる場合に、その貢献を評価して具体的相続分を修正し、相続人間の実質的な公平を図ることを目的としているためです。
より詳しく見てみますと、主に以下の人が寄与分の対象となります。
-
共同相続人
民法第904条の2第1項により、「被相続人の事業への労務提供や療養看護等で特別の寄与をした相続人」に寄与分が認められます。
-
包括受遺者
包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するため、相続人と同視されて寄与分が認められるとされています。
-
代襲相続人
被代襲者(本来の相続人)が相続開始前に死亡した場合、代襲相続人は自己の寄与分だけでなく、被代襲者が有していた寄与分を承継して主張できる、とした裁判例(東京高等裁判所平成元年12月28日決定)があります。
-
超過特別受益者
特別受益が法定相続分を超えている場合であっても、寄与分を主張することができるとされています。
2-2.子どもの嫁や内縁の配偶者に寄与分は認められない
つまり、内縁の配偶者や子どもの嫁など、相続人以外の人に寄与分は認められません。
なお、2019年7月1日から施行の相続法の改正により、相続人以外の親族による特別の寄与があった場合は、貢献度に応じた金銭を請求できるようになりました(特別寄与料)。
3.寄与分が認められる要件
それでは、寄与分が認められる要件について確認していきましょう。
寄与分が認められる要件は、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」があることです。
東京家庭裁判所第5民事部発行のパンフレットの前文「寄与分の主張を検討する皆様へ」に、以下のとおり具体的に記載されています。
寄与分が認められるためには
①主張する寄与行為が相続開始前の行為であること
被相続人が亡くなった後の行為、例えば、遺産不動産の維持管理・違算管理・法要の実施などは、寄与分の対象になりません。
②寄与分が認められるだけの要件を満たしていること
※要件とは、
「その寄与行為が被相続人にとって必要不可欠であったこと」、
「特別な貢献であること」
「被相続人から対価を得ていないこと」
「寄与行為が一定の期間あること」
「片手間ではなくかなりの負担を要していること」
「寄与行為と被相続人の財産の維持又は増加に因果関係があること」
などで、その要件の一つでも欠けると認めることが難しくなります。
③客観的な裏付け資料が提出されていること
寄与分の主張をするには、誰が見ても、もっともだと分かる資料を提出する必要があります。主張の裏付けとなる資料のないまま主張すると、解決を長引かせてしまうだけです。
(引用:東京家庭裁判所第5民事部「寄与分の主張を検討する皆様へ」)
そこで、以下ではこれらの要件について、詳しく見ていきましょう。
3-1.寄与行為が相続開始前の行為であること
被相続人が亡くなった後に行われた行為、例えば、遺産である不動産の維持管理、遺産管理、法要の実施などは、寄与分の対象にはなりません。このような相続開始後の行為は、被相続人の財産の維持や増加に貢献したとはいえないためです。
寄与分を主張する場合は、「その寄与行為が被相続人の生存中に行われたものであること」が重要なポイントとなります。
3-2.寄与行為が被相続人にとって必要不可欠であったこと
単に被相続人のために何らかの行為をしただけでは不十分で、その行為が被相続人の財産の維持や増加において欠かせないものであったことが重要です。
例えば、被相続人が高齢かつ病気がちで、家族の献身的な介護がなければ生活が成り立たなかった場合、家族の介護行為は、被相続人にとって必要不可欠な行為であったと評価される可能性があります。
一方で、被相続人が自立して生活できている間に、家族が日常的な家事を手伝ったとしても、この行為が被相続人の財産の維持や増加に必要不可欠であったとはみなされないのが一般的です。そのため、このような行為は寄与分の対象として認められる可能性が低いです。
3-3.特別な貢献であること
「特別な貢献であること」とは、「被相続人と相続人の間の通常の身分関係に基づいて期待される程度を超える貢献」でなければならないということを意味します。
例えば、息子が父親(被相続人)の事業を手伝った結果、事業が大きく発展し、財産が大幅に増加したとします。息子の貢献が、単に親子間の通常の扶養や互助の範囲を超え、事業の成功に決定的な役割を果たしたと認められるような場合には、この貢献は「特別な貢献」とみなされる可能性があります。
あるいは、娘が自宅での介護が必要な母親のために、自分の仕事を辞め、昼間や夜間も介護をしていた場合なども、特別な貢献があったと認められる可能性があります。娘の行為は通常の家族の範囲を超えており、母親の健康状態の維持や生活の維持に直接貢献しているからです。
一方で、夫婦間の協力扶助義務(民法第752条)や親族間の扶養義務・互助義務(民法第877条1項)の範囲内で行われた行為は、特別の寄与とはみなされません。
例えば、同居している兄弟のうち、弟が年老いた父親の日常の世話をしていたとします。父親の食事を準備や洗濯、病院への送り迎えなどは、同居している家族間で一般的に期待される範囲内のものとみなされるため、特別の貢献とは認められない可能性が高いです。
以上のように、特別な貢献と認められるかどうかは、行為の内容や被相続人との関係、どの程度貢献したかなど、具体的な状況に応じて判断されます。そのため、寄与分の主張をする場合は、その貢献が通常の家族関係を超えるものであることを示すことが重要です。
3-4.被相続人から対価を得ていないこと
寄与行為が無償であることは、寄与分を受けるための必須条件です。ただし、直接的な報酬を受け取っていなくても、例えば「感謝の気持ちとして海外旅行の費用を支払われた」など、他の形の対価を受け取っている場合は、報酬とみなされる可能性があります。
また、「対価を得ていないこと」といっても、厳密に「一切金銭を受け取らないこと」という意味ではありません。寄与行為に対する報酬が一般的な水準に比べて明らかに低額である場合などには、完全に無償ではなくても、寄与分が認められることがあります。
3-5.寄与行為が一定の期間あること
寄与行為が寄与分として認められるためには、一時的なものではなく継続的に行われたことが必要です。具体的な期間の基準は定められていないためケースバイケースとなりますが、通常は数年単位の長年にわたる行為が求められることが多いです。
3-6.片手間ではなくかなりの負担を要していること
寄与行為が相続人にとって相当な労力、時間、精神的な負担を伴うものである必要があることを意味します。
例えば、介護や事業の手伝いが毎日数時間以上に及び、相続人の日常生活に大きな影響を与えている場合などが該当します。
3-7.寄与行為と被相続人の財産の維持又は増加に因果関係があること
「相続人の行為が被相続人の財産の維持または増加に直接的な影響を与えていること」、つまり因果関係があることが重要です。相続人の行為によって、被相続人の財産が減るのを防いだり、または財産が増えた事実がなければ、寄与分は認められません。
例えば、相続人が被相続人である親の介護を自宅で長年にわたって行ったことで、親を医療機関や老人ホームなどに入居させる必要がなかったとしましょう。その結果、高額な介護サービスや医療費の支出が抑えられました。この場合、相続人の行為は財産の維持に貢献したものと認められる可能性があります。
一方で、財産上の効果がない精神的な援助や協力は、寄与行為として認められません。財産上の効果がない行為は数値的な評価が難しく、主観的な評価になりがちで、かえって公平性を損なう恐れがあるからです。
3-8.客観的な証拠が提出されていること
寄与分を主張する際には、寄与行為が実際に行われたことを証明する客観的な資料(証拠)が必要です。
遺産分割協議で他の共同相続人に求められた場合に、客観的な証拠があることで、より具体的に主張することができます。また、家庭裁判所での調停や審判で寄与分を主張する場合、寄与行為の事実を裏付ける証拠として提出しなければなりません。そのため、証拠となる書類は必ず保管し、適切なタイミングで提出できるように整理しておくことが重要です。
寄与行為の事実があったとしても、それを証明する資料がなければ、寄与分が認められる可能性は低くなってしまいかねません。また、寄与分が認められたとしても、証拠資料が不十分な場合は、認められる寄与分の額が少なくなってしまう可能性があります。
具体的にどのような証拠が必要となるのかについては、寄与行為の内容によって異なりますので、寄与分の5つの類型とともに見ていきましょう。
4.寄与分の5類型
寄与分が認められる行為には、以下の5つの類型があります。
- 療養看護型
- 家業従事型
- 金銭出資型
- 財産管理型
- 扶養型
以下では、それぞれの類型を詳しく見ていきましょう。
4-1.療養看護型│介護を行っていたケース
「療養看護型」とは、被相続人の介護を行っていたことにより寄与分が認められるケースです。以下の6つの要件に該当することが必要とされています。
-
療養看護の必要性(則要介護2以上)
病気や障害により介護が必要な状態にあること、また原則として要介護2以上であることが必要です。要介護2以上であれば、日常生活を周りの人の援助を受けなければ1人で生活できない状態、療養看護の必要性がある可能性が高いからです。
なお、入院期間や施設に入所していた期間がある場合、その期間の寄与分は原則として認められません。 -
特別な貢献
自分の仕事や生活を犠牲にして、長期間にわたる病気や障害の介護をしていた場合などが該当します。親族として通常期待される範囲の家事援助や身の回りの世話、精神的な支えなどでは認められません。
-
無償性
介護を無償でしていた場合のみ認められます。ただし、寄与行為に対する報酬が一般的な水準に比べて明らかに低額である場合には、無償ではなくても寄与分が認められることがあります。
-
継続性(1年以上)
介護が少なくとも1年以上継続して行われていたことが必要です。
-
専従性
昼は会社に勤務しながら夜は被相続人の介護をしていたような場合は、専従性の要件を満たしていないため認められません。ただし、たまにパートをする程度であれば認められる可能性があります。
-
財産の維持・増加との因果関係
介護したことにより、介護費や医療費の出費を免れたというような因果関係が必要です。
このケースで寄与分を主張する場合は、以下のような証拠を提出する必要があります。
- 要介護認定通知書・要介護認定資料等(どういう症状だったかを証明する資料)
- 介護サービス利用票・ケアプラン・施設利用契約書・介護利用契約書等(どういう介護が必要とされたかを証明する資料)
- 医療記録等(対象期間を証明する資料)
- 報告書(具体的にどういう介護をしたのかを証明する資料)
- 写真・日記・手紙・家計簿等(具体的にどういう介護をしたのかを証明する資料)
4-2.家業従事型
「家業従事型」とは、被相続人の事業を手伝っていたことにより財産を維持・増加させた場合に寄与分が認められるケースです。以下の5つの要件に該当することが必要とされています。
-
特別な貢献
「被相続人との身分関係に基づき通常期待される程度」を超える寄与であることが必要です。特に、配偶者や同居している相続人などは、同居義務や扶助義務があるため、「特別」の基準が高くなります。また、被相続人からの依頼によるものか、自ら志願して行ったものか、または他に仕事がなくやむを得ず家業を継いだのか、などの経緯も重要です。
-
無償性(無償か著しく低い給与)
たとえ完全な無償ではなくても、もし労働に対する報酬が一般的な水準に比べてかなり低い場合、寄与分として認められる可能性があります。一方で、報酬がないか、非常に少ない状態であっても、被相続人の財産や収入に依存して生活していたような場合、寄与分として認められないこともあります。
-
継続性
明確な基準はありませんが、少なくとも3年以上継続している必要があると考えられています。
-
専従性
専任である必要はありませんが、片手間でないことが求められます。週1、2回、仕事が休みの日曜日に家業を手伝った、などの場合は寄与分は認められないでしょう。
-
財産の維持・増加との因果関係
「労働して被相続人の事業を成功に導いた」などでは直接的な因果関係が証明できないため、寄与分は認められません。あくまでも、給料を支払わずにすみ、その分支出を免れた、という点で寄与分が認められる可能性があります。
このケースで寄与分を主張する場合は、以下のような証拠を提出する必要があります。
- 確定申告書等経営内容のわかる資料(事業の収支性を明らかにするための資料)
- 給与台帳、給与明細書、確定申告書等、給与の支払状況がわかる資料
- 報告書(家計の状況、他の相続人の労務提供状況、家業に従事するに至った経緯、労務の内容などを記載したもの)
4-3.金銭出資型
「金銭出資型」とは、被相続人に対して財産上の利益を提供したことにより財産を維持・増加させた場合に寄与分が認められるケースです。以下の4つの要件に該当することが必要とされています。
-
特別な貢献
扶養の範囲を超える程度であることが必要です。例えば、所有する賃貸マンションに被相続人を無償で住まわせた場合や、被相続人の家の高額なリフォーム代を支払った場合などが該当します。
-
無償性
例えば、単に貸付をしていた場合などは、長年放置しており返還してもらえなかった場合であっても、寄与に当たる行為ではないので寄与分は認められません。
-
効果の残存
財産上の給付による効果が、相続開始時に依然として残存していることが重要です。例えば、事業資金を贈与したが事業が失敗し、その資金による財産が全て失われた場合には、寄与分は認められません。
-
財産の維持・増加との因果関係
被相続人の財産を維持または増加させる必要があります。金銭の出資が被相続人の事業に対するものであれば、法人の財産を増加させるものになるため、寄与分は認められません。
このケースで寄与分を主張する場合は、以下のような証拠を提出する必要があります。
- 寄与主張者の預金通帳、振込通知書(寄与分の主張者が金銭等を給付したことを証明する資料)
- 被相続人の預金通帳、振込受領書、不動産売買契約書、増改築や入院費用等の明細書、被相続人の家計簿等(被相続人が寄与分の主張者から金銭等を受領したことを証明する資料)
- 相続人の非課税証明書、年金額改定通知書など(被相続人が要扶養状態にあったことを証明する資料)
4-4.財産管理型
「財産管理型」とは、被相続人の財産を管理することで財産を維持・増加させた場合に寄与分が認められるケースです。以下の5つの要件に該当することが必要とされています。。
-
財産管理の必要性
財産管理を行う必要性があったことが重要です。管理会社に財産の管理を依頼していたような場合は、たとえ管理会社の管理がいい加減なものであったとしても、相続人に財産管理の必要性があったとはいえないでしょう。
-
特別な貢献
「被相続人との身分関係に基づき通常期待される程度」を超える寄与であることが必要です。例えば、アパートを管理するケースでは原則として、管理するアパートの賃借人の数や不動産の面積等も考慮して、相当な規模であった場合に「扶養の範囲」を超えるとして、寄与分が認められます。部屋数が8室程度のアパート1棟の管理などでは、寄与分が認められない可能性が高いでしょう。
-
無償性
寄与行為が無報酬またはほとんど無報酬で行われていることが必要です。しかし、通常の管理報酬などと比較してかなり少ない報酬であれば、寄与分として認められることがあります。一方で、報酬がほとんどない状態でも、もし被相続人の資産や収入に頼って生活していた場合は、寄与分として認められないこともあります。
-
継続性
専従性は要件ではありませんが、継続性は必要です。例えば、被相続人が入院した数か月間財産管理をしただけでは、寄与分は認められません。
-
財産の維持・増加との因果関係
被相続人の財産を維持または増加させる必要があります。例えば、立ち退き交渉などに努力し土地の売買価格を「増加」させた場合でも、財産の維持・増加と因果関係が証明できないので、寄与分が認められない可能性があります。
このケースで寄与分を主張する場合は、以下のような証拠を提出する必要があります。
- 管理していた財産の賃貸借契約書・売買契約書・預金通帳・領収書
- 賃貸人や不動産業者とのメールや書類、手紙等
4-5.扶養型
「扶養型」とは、被相続人の財産を管理することで財産を維持・増加させた場合に寄与分が認められるケースです。以下の5つの要件に該当することが必要とされています。
-
扶養の必要性
療養看護型と異なり、疾病等の存在は要件でありませんが、扶養の必要性があるかどうかが問題です。扶養の必要性がない被相続人に対して、引き取って生活の面倒をみた場合や、小遣いを渡していたという場合などは、寄与分は認められません。
-
特別な貢献
被相続人との関係で通常期待される程度を超える特別な貢献が必要です。単に同居して家事手伝いをしたり、小遣いを渡した程度では「特別」とはいえません。
-
無償性
扶養が無報酬またはほとんど無報酬で行われていることが必要です。しかし、通常の扶養の対価と比較してかなり少ない報酬であれば、寄与分として認められることがあります。
-
継続性
数か月程度のわずかな期間の扶養では寄与分は認められません。
-
財産の維持・増加との因果関係
扶養行為によって被相続人の財産を維持または増加させる必要があります。
このケースで寄与分を主張する場合は、以下のような証拠を提出する必要があります。
- 被相続人の非課税証明書、年金額決定・改定通知書、被相続人の収支がわかる預金通帳(要扶養状況を証明する資料)
- 家計簿、被相続人の預金通帳、被相続人の生活に関わる各種証明書、領収書、金銭出納帳、振込明細等(扶養に要した費用を証明する資料)
- 寄与分の主張者の預金通帳等(扶養料の給付を証明する資料)
- 報告書(被相続人の当時の生活状況と必要とされた扶養の内容、被相続人との身分関係や扶養開始事情・扶養の内容、扶養の時期・期間、報酬の有無と内容、他の相続人らの費用義務と能力・同居の有無と期間や生活費の負担割合)などを記載したもの。
5.介護しなかった相続人の遺産相続はどうなる?
親の介護をしなかった相続人をはじめとする、被相続人の生前に特別の寄与がなかった相続人について、寄与分こそ認められませんが、原則として、法定相続分または遺言による指定相続分に基づき遺産を受け取る権利を有しています。相続権そのものは、他の相続人の寄与分によって左右されることはありません。
ですが、他の相続人や親族が療養看護等の貢献をしていた場合、寄与分制度や特別寄与料制度(民法第1050条)によって、介護しなかった相続人が最終的に取得する財産額は減少する可能性があります。
相続と寄与分の額
1.寄与分の計算方法
以上でご説明した寄与行為の5類型ごとに、以下の計算式で寄与分の額を算定することになります。
|
寄与行為 |
計算方法 |
|---|---|
|
療養看護型 |
療養看護の報酬日当額 × 療養看護日数 × 裁量的割合 |
|
家事従事型 |
受け取るべき年間給付額 ×(1 - 生活費控除割合)× 寄与年数 |
|
金銭等出資型 |
贈与額 × 貨幣価値変動率 × 裁量的割合 |
|
財産管理型 |
管理等を第三者に委任した場合の報酬額 × 裁量的割合 |
|
扶養型 |
負担した扶養額 × 期間 ×( 1 - 寄与相続人の法定相続分割合) |
ただし、計算した金額がそのまま認められるわけではありません。こちらの計算式は、あくまで寄与分の算定の基準となるものであって、実際の寄与分額は、寄与の時期、方法や程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して決定することになります。
寄与分は、まずは遺産分割協議において相続人間の話し合いで決定されるため、提案した金額に異議を唱える相続人が現れることも珍しくありません。さらに、寄与分に加えて特別受益、遺留分、遺贈などが関係する場合、計算式に従った金額がそのまま寄与分として認められるとは限りません。
1-1.親を介護した場合の寄与分の算定の具体例
それでは、寄与分がある相続人と寄与分のない相続人の、具体的な計算例を見てみましょう。子どもA、Bが相続人となるケースで、遺産総額が5,000万円、療養看護型の介護をしていた相続人Aに800万円の寄与分が認められたとします。
寄与分の額が確定したら、以下の計算式で、それぞれの相続分に反映させます。まずは、寄与分がある相続人Aの相続分です。
=(遺産総額 ― 寄与分)× 法定相続分 + 寄与分
=(5,000万円 ― 800万円)× 1/2 + 800万円
= 2,900万円
一方で、寄与分がない相続人Bについては、遺産総額から寄与分の額を差し引いて計算することになります。
=(遺産総額 ― 寄与分)× 法定相続分
=(5,000万円 ― 800万円)× 1/2
= 2,100万円
この例では、子どもAの寄与分が考慮された結果、子どもAは2,900万円、子どもBは2,100万円を相続することになります。寄与分がある場合、その分だけ寄与者の相続分が増え、他の相続人の相続分が減少することになるのです。
1-2.寄与分の相場
寄与分の額は、一般的に相続人同士の話し合いによって決定されるため、特に決まった相場はありません。相続人全員が寄与行為を認め、寄与分として全財産を取得することで合意した場合は、全財産を相続することも可能なのです。
裁判所で判断される場合の寄与分の相場についても、具体的なケースによって大きく異なります。貢献の内容や程度、期間などに基づいて個別に判断されますが、一般的には、相続財産の2~3割程度、多くても5割程度が寄与分の相場といえるでしょう。
ただし、特別な貢献があったことを認めてもらうのは非常に難しいです。特に、通常の扶養の範囲内の行為であった場合、寄与分を一切認めてもらえない可能性もあります。
1-3.寄与分の上限は「相続財産-遺贈」
遺言と寄与分の関係をご説明した際にも触れましたが、寄与分の上限については、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額」と定められています(民法第904条の2第3項)。他に寄与分の上限について規定した条文はありません。
2.寄与分の請求
以上のような寄与分ですが、遺産相続においては以下の流れで請求することになります。
2-1.遺産分割協議で主張する
まずは遺産分割協議の中で、自身の寄与分を主張します。
具体的な寄与分の額を含めて、全ての相続人が寄与分について合意すれば、その内容に基づいて遺産分割協議を進めることができます。
ただし、遺産分割協議は全員の同意が必要なため、一人でも反対する相続人がいると遺産分割協議は成立しません。相続人間での協議がうまくいかず、合意が得られなかった場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになるでしょう。
なお、寄与分などを考慮した具体的相続分による遺産分割については、相続開始の時から10年、という期限が設けられています(民法第904条の3)。
(期間経過後の遺産の分割における相続分)
民法第904条の3 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
原則として、亡くなってから10年が経過してしまった場合、その後に寄与分を主張してもその主張は認められないため注意が必要です。
2-2.家庭裁判所に調停を申し立てる
相続人間での協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになるでしょう。方法としては、① 遺産分割調停の中で寄与分について話し合う、② 寄与分を定める処分調停を申し立てる、という2つのやり方があります。
遺産相続において寄与分が主な争点となる場合、寄与分を定める処分調停において、寄与分のみを対象として話し合うことがあります。「寄与分を定める処分調停」は、「遺産分割調停」の一部として行うことも、それ自体で単独で申し立てることも可能です。
また、「遺産分割調停」が先に申し立てられている場合でも、後から「寄与分を定める処分調停」を申し立てることができます。
「寄与分を定める処分調停」の申し立ての概要は、以下のとおりとなります。
- 申立人
特別の寄与を行ったと主張する相続人が申立人となります。相手方は、申立人以外の相続人全員です。 - 申立先
申立先の家庭裁判所は、申立人以外の相続人のうちの1人の住所地を管轄する裁判所、または全員が合意で定める裁判所です。既に遺産分割調停が行われている場合は、その調停が行われている裁判所に申し立てます。 - 必要書類
1.申立書とその写し(相手方の人数分)
2.被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
3.相続人全員の戸籍謄本
4.相続人全員の住民票または戸籍附票
5.遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しや残高証明書、有価証券の写し等)
6.寄与分を証明するための資料や証拠
詳細については、裁判所のホームページも合わせてご覧ください。
参考:寄与分を定める処分調停 (裁判所)
調停では、寄与分を証明するための資料や証拠の準備が非常に重要です。具体的にどのような資料や証拠が有効であるかについては、弁護士にご相談ください。
2-3.審判
遺産分割調停で合意できない場合は、自動的に遺産分割審判に移行します。審判では裁判所が寄与分について判断することになるため、話し合いによる合意ができません。そのため、なるべく遺産分割協議か遺産分割調停で、合意を得ることが推奨されます。
寄与分に時効はない
寄与分に関しては、消滅時効がないと解されています。つまり、寄与分を求める権利自体には時効はありません。ただし、全相続人の合意により遺産分割が行われた場合、原則としてその後に合意の内容を覆すことはできません。したがって、実質的には寄与分を主張できるのは、遺産分割の合意が成立するまでの間です。遺産分割協議が終結する頃になって主張してしまうと、「なぜ今更になって」といった不満が生じることもあるため、なるべく早い段階で寄与分の主張をしましょう。
以上のとおり、寄与分には時効がないため、何十年前の行為であっても寄与行為を証明することができれば、寄与分は認められる可能性があります。ただし、実際に何年も前の行為を証明するのは難しいため、こうしたケースで寄与分が認められることは多くはありません。
なお、特別寄与料に関しては、寄与分とは異なり、消滅時効と除斥期間が設定されています。寄与分と似ていますが、このような違いがあるため注意が必要です。
寄与分の裁判例
最後に、寄与分に関する裁判例をいくつかご紹介いたします。
1.介護による寄与分が認められた判例
被相続人には子が3人おり、遺産相続ではその3人の子が相続人となりました。遺言がないため、法定相続分は3分の1ずつです。被相続人は生前、持病の悪化と老衰で寝たきりであったため、子Aとその妻が自宅で看護していました。被相続人の病状が悪化し、Aの妻は30分以上の外出もできない状態になり、昼夜を問わず看護する必要が生じました。そのために、Aの妻は慢性的な睡眠不足となり、被相続人の死後、長期間の看病疲れから自律神経失調症を発症したほどでした。
以上のようなAの妻の被相続人に対する献身的看護について、裁判所は「親族間の通常の扶助の範囲を超えるものがあり、そのため、被相続人は、療養費の負担を免れ、遺産を維持することができたと考えられるから、遺産の維持に特別の寄与貢献があったものと評価するのが相当であるところ、右看護は、申立人の妻として、申立人と協力しあい、申立人の補助者または代行者としてなされたものであるから、本件遺産分割にあたっては、申立人の寄与分として考慮すべきである。」と判断し、看護期間である2年4ヶ月について、120万円の寄与分を認定しました。
そして、寄与分が認められた結果として、相続開始時の遺産総額851万7,000円から寄与分120万円を除外した額が遺産分割の基準となり、その3分の1にあたる243万9,000円が各相続人の法定相続分である、としました。
なお、審判時の遺産総額は1,115万7,000円であることから、子Aの取得額は476万7,000円で、他の2人の子の取得額は319万5,000円ずつ、とされました。
本件当時は相続人以外の人についての「特別寄与料」の制度が存在しなかったため、息子の妻は息子の代理として看護を行ったとみなされ、その寄与分は息子のものとして認められた事例です。
(神戸家裁豊岡支部平成4年12月28日審判)
2.扶養による寄与分が認められた判例
子ども全員で負担すべき親の扶養を、相続人の一人が全面的に引き受けたケースになります。
被相続人の8人の子が相続人となり、各人の法定相続分は8分の1でした。
相続人の子Aは、被相続人と同居し、被相続人が亡くなるまで18年間扶養し、被相続人自身の交際費として毎月多額の小遣いを与え、被相続人の遺産である不動産にかかる火災保険、補修改造、公租公課を全額負担してきました。このため、晩年被相続人は恵まれた境遇に感謝しながら、子Aを後跡りとして自分の遺産を当然相続するのだから辛抱するように諭していました。その間、被相続人が他の共同相続人である子らに金銭的援助を施すことがあっても、彼らからまともに仕送りしてきたものはありませんでした。
その結果、相続開始時の遺産として、不動産のほかに合計1,247万円の株式、預金、現金が遺りました。
こうした事実関係から、裁判所は子Aが被相続人を扶養した18年間にわたる金銭的負担は、少なく見積っても825万円となること、本来兄弟8人が能力に応じて負担すべきところを、Aが全面的に引受け、これがため被相続人は自己の財産を消費しないで遺産となった判断とし、「本来的義務を超えて負担したものとみなされる部分に対応する寄与の効果を認めるのが相当である。そこで叙上の事情を総合考慮し申立人の寄与分を金730万円と定めることとする。」と結論しました。
(大阪家庭裁判所昭和61年1月30日審判)
3.介護による寄与分が認められなかった判例
被相続人には3人の子がいましたが、そのうち1人が相続分の放棄をしたため、子2人が各2分の1ずつの法定相続分で相続人となりました。
被相続人が脳梗塞で倒れ、右半身不随で身体障害者2級の認定を受けたため、被相続人と同居していた子Aの妻は、週2回、被相続人を車に乗せてリハビリのため病院に連れて行く生活となりました。また、判断能力には全く問題がなく、会話もでき、トイレに行くことや用意された食事を自分で食べることはできましたが、一人で入浴することはできなかったため、子Aの妻が週2回、通院の前日に被相続人を介助して入浴させていました。
被相続人は、亡くなる半年位前から、毎晩失禁するようになったため、夜間はおむつを使用することとなり、子Aの妻がおむつ交換や粗相してしまった布団の後始末などをしました。
子Aの妻は、10年以上にわたり被相続人の通院の付き添いや入浴のサポートなど、日常の世話を担ってきたものです。ですが裁判所は、被相続人が自力でトイレに行ったり、箸を使って食事をしたりできたことを考慮し、相続人の妻の行為が同居家族として通常期待される扶養義務の範囲を超える療養看護であったとは判断できないとして、寄与分を認めませんでした。
この判例は、日常の世話が長期間にわたって行われたとしても、被相続人の状態や同居家族としての通常の扶養義務の範囲内であれば、寄与分として認められない可能性があることを示しています。
(静岡家庭裁判所沼津支部平成21年3月27日審判)
4.扶養による寄与分が認められなかった判例
被相続人の経営する簡易郵便局に勤務し、業務を手伝い給与を得ていた相続人Aが、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたと主張した事例になります。
しかし、裁判所は、平成18年○月までの郵便局の業務主体は被相続人であったこと、給与水準は従事する事業の内容、企業の形態、規模、労働者の経験、地位等の諸条件によって異なるから、賃金センサスによる大卒46歳時の年収の平均額に充たなかったとしても、A夫婦の収入が低額であったとはいえず、むしろ月25万円から35万円という相応の収入を得ていたことが認められること、A夫婦は被相続人と同居し、家賃や食費は被相続人が支出していたこと、などを考慮し、「Aは郵便局の事業に従事したことにより相応の給与を得ていたというべきであり、郵便局事業への従事が、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたとは認められない。」と判断し、寄与分を認めませんでした。
(札幌高等裁判所平成27年7月28日決定)
寄与分に関するQ&A
Q1.なぜ寄与分が認められにくいのですか?
A:寄与分が認められにくい主な理由の一つは、特別の寄与の要件が厳しいことにあります。特に重要なのが、「被相続人と相続人の身分関係から通常期待される程度を超える行為であること」という要件です。
例えば、同居している親子であれば、法律上、歳を取った親の面倒を見ることは当然とされています。同居する親子間で「食事の世話をずっとしていた」や「病院の送り迎えをずっとしていた」といった行為は、通常期待される範囲とみなされるため、特別の寄与として認められにくいのです。
一方で、通常は期待されないような行為、例えば施設に入居させず、相続人自身で被相続人の介護を全て行ったり、仕事を辞めて家業を無償で手伝ったりした場合には、特別の寄与として認められる可能性が高くなります。
Q2.寄与分の計算方法はどのようになっていますか?
A:寄与分の金額は、相続人間の遺産分割協議によって決定されますが、合意に至らない場合は裁判所が判断します。民法は寄与分の算定方法について具体的な規定を設けておらず、実務では「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して」定められています。具体的な計算はケースごとに異なりますので、弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
Q3.寄与分を認めてもらうためにはどうすればよいですか?
A:寄与分を認めてもらうためには、まず、遺産分割協議で自分の寄与分を主張します。具体的な寄与分の額を含め、全ての相続人が寄与分について合意すれば、その合意に基づいて遺産分割を進めることができます。ただし、遺産分割協議は相続人全員の同意が必要なため、一人でも反対する相続人がいると、話し合いで寄与分は認められません。
相続人間での協議がうまくいかず、合意が得られなかった場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停でも合意が成立しなければ、審判で判断が下されることになります。
まとめ
寄与分をめぐっては、相続人間での話し合いが難航することも多く、争いになることが少なくありません。
また、裁判所の判断を仰ぐ場合も、十分な証拠を用意する必要があります。寄与分が認められる要件は複雑で、通常の扶養義務の範囲と「特別の寄与」がどのように異なるのか、個人で見極めるのは簡単ではありません。自分一人で寄与分の主張をするには、限界があるでしょう。
そういった場合には、法律の専門家である弁護士にご相談いただければと思います。
弁護士法人あおい法律事務所には、寄与分などの遺産相続に詳しい弁護士が在籍しています。弁護士による法律相談は、初回無料で行っておりますので、寄与分についての悩みや疑問がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。法律相談は、対面だけでなくお電話によるご相談もお受けしております。当ホームページのWeb予約フォームやお電話にて、お問合せいただければと思います。
この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。








