遺留分の計算│計算方法は?子供のみの遺留分侵害額はいくら?

遺言による遺産相続などで、法定相続人が満足に相続財産を得られないことがあります。こうした場合、法律で保障された最低限の取り分である「遺留分」について、侵害額相当分を請求することが可能です。
そして、遺留分侵害額を請求するにあたっては、自身の遺留分はどれくらいなのか、実際に侵害されている遺留分はいくらなのかを計算しなくてはなりません。
計算の流れとしましては、まずは自身に保障されている「遺留分額」がいくらなのかを算出した上で、実際の遺産分割によって受け取ることができなかった「遺留分侵害額」がいくらかを算出します。
計算するにあたっては、相続財産の総額を正確に把握する必要があり、生前贈与や負債の有無なども調べなければなりません。遺留分侵害額の計算は、思った以上に煩雑なのです。
そこでこの記事では、遺留分を正しく計算するための手順に沿って、弁護士が具体的に解説させていただきます。
ケース別の遺留分の計算の具体例も掲載しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
遺留分の計算
遺留分とは、特定の法定相続人に法律で保障された、最低限の遺産取得分のことを指します。たとえば、被相続人が遺言で特定の相続人に全ての財産を引き継がせることを指定した場合でも、本来遺留分を受け取る権利のある他の共同相続人は、自身の遺留分を侵害した相続人に対して、侵害額相当分の遺留分を請求することが認められているのです。
そんな遺留分の侵害額ですが、以下の計算式によって金額を算出します。
まず、遺留分額を計算します。
この計算式によって算出した金額は、本来受け取れる最低限の取り分です。そしてこの金額をもとに、実際に取得した財産や特別受益などを差し引いて、「受け取れていない取り分(遺留分侵害額)」を算出するのです。
遺留分侵害額の計算方法
それでは、遺留分侵害額の計算について、より詳しく見ていきましょう。
1.遺留分の算定基礎財産を確認する
さて、遺留分の計算ですが、まずは遺留分の基礎となる財産額(算定基礎財産)を確認しなければなりません。算定基礎財産については、民法で以下のとおり定められています(民法第1043条)。
(遺留分を算定するための財産の価額)
民法第1043条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
これを計算式にすると、以下の通りとなります。
1-1.相続開始時に有していた財産の額
遺留分の計算の基礎となるのは、「算定基礎財産」です。これにはまず、「被相続人が相続開始時に有していた財産の額」が含まれます。例えば、以下のような財産が挙げられます。
- 不動産
家屋、土地、アパートやマンションなど - 金融資産
銀行口座の預金、株式、債券、投資信託、生命保険の解約返戻金など - 自動車や船舶
個人名義の自動車や船舶など - 事業資産
事業用の不動産、機械設備、在庫品、営業権、その他被相続人が経営していた事業に関連する資産 - 個人的な財産
家具、家電製品、美術品、宝飾品、貴金属など - 知的財産権
特許権、著作権、商標権など
なお、相続財産の価額を算出する際に重要なのは、財産の「金額」です。そしてこの金額は、相続が発生した時の「時価」とされています。
遺産が現金や預金のように、明確な場合は問題になりません。ですが、土地や建物のように価値が変動する資産である場合には、その時価の評価に注意が必要です。
不動産の価値は、市場状況や物件の状態によって大きく変動するため、一律に価格が決まるものではありません。そのため、適切な価格を知るためには、なるべく複数の方法で評価を行う必要があります。
具体的には、地価公示や都道府県地価調査に基づく土地の価格、相続税路線価、固定資産税課税評価額、不動産鑑定評価額、不動産業者による査定価格などがあります。評価方法によっては異なる結果をもたらすこともあり、相続人間で評価額に対する見解が分かれることも少なくありません。
また、不動産価格の評価の基準時は、遺留分侵害額の請求時ではなく、相続開始時であることにも注意が必要です。遺留分侵害額の請求時ではなく、被相続人が亡くなった時点の価値を基準にする必要があります。
適切な評価を行うためには、不動産鑑定士や税理士などの専門家に依頼することをおすすめいたします。
1-2.生前贈与と特別受益の額を加える
「算定基礎財産」には、次に生前贈与と特別受益の額を加算します。
生前贈与とは、被相続人が死亡する前に、相続人や相続人ではない第三者に対して無償で財産を移転することをいいます。
生前贈与することによって、相続開始時の相続財産を減らすことになるため、遺留分権利者の取り分を害する可能性があります。そこで遺留分の計算においては、一定の条件を満たす生前贈与は、相続開始時に被相続人が有していた財産に加えることになります。
特別受益とは、一部の相続人だけが被相続人から受けた利益のことです。結婚資金や、扶養の域を超えた生計資金(大学や高等教育の学費など)などがこれに含まれます。特別受益がある場合は、相続財産に持ち戻して遺留分が算定されます。
算定基礎財産に加える生前贈与と特別受益については、民法で以下のように定められています。
民法第1044条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
つまり、贈与財産の価格に含まれる生前贈与は、以下の4種類です。
- 相続開始前1年以内の贈与
被相続人が亡くなる前1年間に行った全ての贈与を含みます(民法第1044条1項)。 - 遺留分侵害を意図した贈与
贈与が行われた際、その贈与によって相続人の遺留分を侵害することを知っていた場合、この贈与は贈与の時期に関わらず遺留分の基礎となる財産に加算します(民法第1044条1項)。 - 不相当な条件での有償処分
被相続人が不相当な対価で行った有償処分について、贈与者と受贈者が共に遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合は、差額を遺留分の基礎となる財産に加算します(民法第1045条2項)。 - 過去10年間の特別受益
相続開始前の10年間に行われた「婚姻、養子縁組、または生計のための資本」としての贈与は、過去10年間の特別受益として、遺留分の基礎となる財産に加算します(民法第1044条3項)。
1-3.負債を差し引く
生前贈与や特別受益などは加算しましたが、被相続人が残した負債は、算定基礎財産から全額差し引くことになります。
- 住宅ローンや事業ローン
故人が生前に組んだ住宅ローンや事業に関連するローンなどの債務。 - クレジットカードの残高
故人名義のクレジットカードに残っている支払い義務。 - 消費者金融からの借金
個人的な消費目的で利用した金融機関や消費者金融からの借入金。 - 医療費や介護費などの未払い金
被相続人の最期の医療費や介護費用など。 - 税金
固定資産税、所得税など、被相続人が亡くなる前に発生していた税金の支払い義務。
ただし、葬儀費用に関しては、被相続人の個人的な負債とはみなされず、遺留分の計算で算定基礎財産から差し引くことができません。葬儀費用は、被相続人の死後に生じる費用であって、原則として相続人が負担するものとされているからです。
2.算定基礎財産に遺留分の割合を掛ける
遺留分額は、上記の算定基礎財産に、遺留分の割合と法定相続分を掛けることによって算出します。
遺留分の割合は、誰が相続人として残されているかによって異なります。
なお、全体の遺留分の割合は、直系尊属(親や祖父母)のみが相続人である場合は1/3、それ以外の場合は1/2とされています(民法第1042条)。
- 直系尊属(親など)のみが相続人の場合の遺留分の割合:法定相続分の1/3
- 上記以外の場合の遺留分の割合:法定相続分の1/2
この遺留分は、法定相続分に基づいて分配されます。つまり、各相続人が民法に定められた法定相続分に従って、遺留分を分け合うことになります。
各相続人の遺留分の割合を求める計算式は以下のとおりです。
遺留分の割合(個別的遺留分)=全体の遺留分の割合(総体的遺留分)×法定相続分の割合
この計算結果を表にすると以下のとおりとなります。
|
相続人の構成 |
全体の遺留分割合 |
配偶者の遺留分割合 |
子どもの遺留分割合 |
親の遺留分割合 |
|---|---|---|---|---|
|
配偶者のみ |
1/2 |
1/2 |
– |
– |
|
配偶者と子 |
1/2 |
1/4 |
1/4 |
– |
|
配偶者と親 |
1/2 |
1/3 |
– |
1/6 |
|
子どものみ |
1/2 |
– |
1/2 |
– |
|
親のみ |
1/3 |
– |
– |
1/3 |
例えば、相続人が配偶者と子供2人のケースでは、全体の遺留分の割合は1/2となります。法定相続分は、配偶者が1/2、残りの1/2は子供2人で等分するので、子供それぞれ1/4ずつとなります。
したがって、各個人の遺留分の割合は、次のとおりです。
配偶者の遺留分割合= 1/2 × 1/2 = 1/4
子供1人あたりの遺留分割合= 1/2 × 1/4 = 1/8
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3.遺留分侵害額を計算する
そして、以上の手順で算出した遺留分額をもとに、実際にいくら侵害されているのか、遺留分侵害額を計算していきます(民法第1046条2項)。
(遺留分侵害額の請求)
民法第1046条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
二 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額
計算式にすると、次のとおりです。
3-1.遺留分権利者の特別受益を差し引く
意中分侵害額を計算する遺留分権利者本人が特別受益を受けていた場合は、遺留分額から差し引く必要があります。
3-2.遺留分権利者が遺産分割において取得した財産の価額を差し引く
遺留分権利者が相続によって実際に受け取る財産の額(不動産、預貯金、株式など)を遺留分総額から差し引きます。被相続人が遺言で遺留分権利者に遺贈した財産がある場合、その金額も差し引きます。
3-3.遺留分権利者が相続によって負担する債務の額を加算する
故人の未払いのローンや税金といった債務に関して、遺留分権利者が相続によって引き継いだ場合は、遺留分侵害額の算定で加算します。
こうして算出した金額がプラスの金額であれば、遺留分侵害額がある、ということになり、遺留分を侵害している他の相続人に対して遺留分侵害額請求をすることが可能です。反対に、算出した金額がゼロ、またはマイナスの数値であった場合は、遺留分の侵害は発生していない、ということになります。
遺留分侵害額の計算例
例えば、相続人Aの遺留分額が3,000万円の場合に、次のような事情があったとしましょう。
- 相続人Aは特別受益として、結婚資金と大学の学費と留学費用で、総額2,500万円生前贈与されている。
- 遺言によって被相続人の友人Xが全ての遺産を相続することになったため、相続人Aは遺産分割で相続財産を何も取得していない。
- 相続人Aは被相続人の債務も負担しない。
Aの遺留分侵害額 = 3,000万円 – 2,500万円 = 500万円
相続人Aは、500万円分の遺留分を侵害されているため、被相続人の友人Xに対し500万円を請求できるということになります。
遺留分侵害額の計算【具体例】
それでは、遺留分の計算方法について、具体的な事例を用いてわかりやすく解説していきたいと思います。
1.子供のみ(3人)が相続人の場合の遺留分の計算
相続人が子供3人(A、B、C)のみで、被相続人が残した遺産の総額を1億円とします。そして、そのうち子供Aに2,000万円の特別受益がある場合の遺留分の計算例を見てみましょう。
なお、このケースでは被相続人が遺言で子供Aに1,000万円、子供Bに8,000万円、子供Cに1,000万円を遺すと定めています。
1-1.遺留分の基礎となる財産の確定
被相続人が残した遺産の総額は1億円、特別受益として2,000万円があるため、これを足して算定基礎財産は「1億2,000万円」となります。
1-2.遺留分の割合を掛ける
相続人は子供3人のみなので、被相続人の遺産は3等分することになります。そのため、子供1人あたりの法定相続分は1/3です。
遺留分の全体の割合は民法により1/2なので、子供1人あたりの具体的な遺留分割合は、「1/2 × 1/3 = 1/6」となります。
1-3.遺留分額の計算
各子供の遺留分額は、1億2,000万円の1/6、つまり2,000万円です(1億2,000万円 × 1/6 = 2,000万円)。
1-4.遺留分侵害額の計算
そして、被相続人が遺言で子供Aに1,000万円、子供Bに8,000万円、子供Cに1,000万円を遺すと指定していますので、それぞれの遺留分から取得した財産を控除する必要があります。
- 子供Aの遺留分侵害額
子供Aが受けた2,000万円の特別受益も差し引きます。
2,000万円 – 1,000万円 – 2,000万円= マイナス(遺留分侵害なし) - 子供Bの遺留分侵害額
2,000万円 – 8,000万円 = マイナス(遺留分侵害なし) - 子供Cの遺留分侵害額
2,000万円 – 1,000万円 = 1,000万円
子供A、Bは遺留分侵害がなく、子供Cのみ1,000万円の遺留分を侵害されている、という計算結果となりました。
2.配偶者と子供2人が相続人の場合の遺留分の計算
相続人が配偶者と子供2人で、生前贈与がある場合の遺留分の計算例を見てみましょう。
遺産の総額の確定被相続人が残した遺産の総額は1億円とします。このケースではさらに、被相続人が亡くなる1年以内に、知人に対して2,000万円を贈与していました。そして、被相続人には500万円の負債もある、というケースになります。
被相続人は、遺言で配偶者に500万円、子供Cに6,000万円、子供Dに1,000万円を遺すと定めています。
2-1.遺留分の基礎となる財産の確定
遺産の総額1億円に、生前贈与2,000万円を加算し、負債500万円を引くことになりますので、算定基礎財産は「1億1,500万円(1億 + 2,000万円 – 500万円)」となります。
2-2.遺留分の割合を掛ける
配偶者の法定相続分は遺産の1/2、被相続人の子供の法定相続分は1/2となります(民法第900条1号)。そして、子供は2人いるため、それぞれの法定相続分は「1/2 × 1/2 = 1/4」です。
配偶者の遺留分の割合は、法定相続分の1/2であるため「1/2 × 1/2 = 1/4」となります。子供2人の遺留分の割合は、それぞれの法定相続分の1/2ですので、「1/2 × 1/4 = 1/8」です。
2-3.遺留分額の計算
配偶者の遺留分額は、1億1,500万円の1/4、つまり2,875万円となります。
子供1人あたりの遺留分額は、1億1,500万円の1/8なので、1,437万5,000円です。
2-4.遺留分侵害額の計算
被相続人が遺言で配偶者に500万円、子供Cに6,000万円、子供Dに1,000万円を遺すと定めているため、取得した分を遺留分額から控除します。
- 配偶者の遺留分侵害額
2,875万円 – 500万円 = 2,375万円 - 子供Cの遺留分侵害額
1,437万5,000円 – 6,000万円 = マイナス(遺留分侵害なし) - 子供Dの遺留分侵害額
1,437万5,000円 – 1,000万円 = 437万5,000円
3.孫が相続人の場合の遺留分の計算
孫が相続人の場合の遺留分の計算は、子供が相続人である場合と同じように計算します。孫の遺留分の割合や法定相続分は、被相続人の子供の相続権に基づくものだからです。孫は被相続人の子供の代襲相続人として遺留分を請求する権利を持つため、計算も被代襲相続人である子供に準じることになります。
例えば、被相続人が残した遺産の総額が6,000万円で、孫だけが相続人のケースで考えてみましょう。
孫の法定相続分と遺留分の割合は子供と同じですから、「1/2 × 1/2 = 1/4」となります。
孫の遺留分額は、「6,000万円 × 1/4 = 1,500万円」となります。
この孫が、被相続人の生前に特別受益にあたる生前贈与を受けておらず、借金の負担などもない場合は、孫は1,500万円を遺留分侵害額として請求する権利を持つことになるのです。
4.相続人が両親のみの場合の遺留分の計算
被相続人の父親と母親が相続人である場合の計算例を見てみましょう。このケースでは、遺産総額が3億円で、特別受益などはありません。そのため、算定基礎財産は3億円となります。
直系尊属のみが相続人である場合の遺留分の割合は1/3です。
そして、遺産を父母2人で等分することになるため、それぞれの法定相続分は1/2となります。
以上から、父母それぞれの遺留分の割合は、「1/3 × 1/2 = 1/6」です。
父と母、それぞれの遺留分の金額は、「3億円 × 1/6 = 5,000万円」となります。
5.相続人が配偶者と両親の場合の遺留分の計算
相続人が配偶者と被相続人の両親の場合の、遺留分の計算例を見てみましょう。
算定基礎財産が3億円ですが、被相続人が遺言で「非営利法人に全財産を寄付する。」と指定しているケースです。
配偶者の法定相続分は2/3で、被相続人の直系尊属である「親」の法定相続分は1/3です(民法第900条2号)。
配偶者と親が相続人である場合の、全体の遺留分の割合は1/2(民法第1042条1項2号)なので、配偶者の遺留分割合は次のとおりになります。
配偶者の遺留分の割合 = 1/2 × 2/3 = 1/3
そして、親の遺留分の割合は「1/2 × 1/3 = 1/6」なので、親2人でさらにこれを等分することになります。そのため、両親の個別の遺留分割合は「1/6 × 1/2 = 1/12」となります。
これを算定基礎財産に掛けると、それぞれの具体的な遺留分額は以下のとおりです。
- 配偶者の遺留分額
3億円 × 1/3 = 1億円 - 父親の遺留分額
3億円 × 1/12 = 2,500万円 - 母親の遺留分額
3億円 × 1/12 = 2,500万円
したがって、配偶者は1億円を、両親はそれぞれ2,500万円ずつを、非営利法人に対して遺留分侵害額請求をすることができるのです。
6.不相当な条件での有償処分があった場合の遺留分の計算
算定基礎財産に加えるものとしては、生前贈与などの他に、「不相当な条件での有償処分」があった場合の、その差額もあります(民法第1045条2項)。そこで、このケースの遺留分の計算例を見てみましょう。
例えば、算定基礎財産が預貯金8,000万円で、相続人が子供2人(A、B)のみとします。
子供Aは、被相続人の生前に、亡くなる5年前に市場価格5,000万円の土地を、500万円で買い受けていました。この土地の売却によって、Bの遺留分が侵害される可能性のあることを、被相続人もAも十分に認識していたとしましょう。
この場合、民法第1045条2項の「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行った、不相当な対価をもってした有償行為」に当たるため、「500万円を負担の価格とする負担付贈与」ということになります。
そのため、本来の土地の価額(5,000万円)から、Aが負担した価額(500万円)を控除した額(4,500万円)が、被相続人からAに対して贈与されたということになります(民法第1045条1項)。
算定基礎財産に4,500万円を加えることになりますので、算定基礎財産は「8,000万円 + 4,500万円 = 1億2,500万円」となります。
相続人が子供2人のみの場合、それぞれの遺留分の個別の割合は「1/2 × 1/2 = 1/4」です。
したがって、次のとおりになります。
- 子供Aの遺留分額
1億2,500万円 × 1/4 = 3,125万円 - 子供Bの遺留分額
1億2,500万円 × 1/4 = 3,125万円
仮に、子供Aが遺言によって全財産渡すと指定されていたような場合には、子供BはAに対して3,125万円を遺留分侵害額請求できるということになります。
遺留分の計算に関するQ&A
Q1.遺留分を計算する際の基礎となる算定基礎財産には何が含まれますか?
A:相続開始時の被相続人のプラスの財産に加え、一定期間内の生前贈与を合算し、そこから債務を差し引いた金額が、遺留分の計算の算定基礎財産となります。
Q2.相続財産に不動産がある場合、どの時点の価格で遺留分を計算しますか?
A:原則として、不動産の価格は「相続開始時の時価」を基準に評価し、その評価額をもとに計算します。遺留分を請求する時点の時価ではありません。
Q3.遺留分侵害額は金銭以外で計算できますか?
A:現在の遺留分制度では、遺留分侵害額の請求は金銭で行うことになっています。そのため、遺留分侵害額は金銭で計算することになります。「遺留分侵害額が5,000万円と算出された。相続財産に時価5,000万円の不動産があるので、お金ではなく不動産で返してもらおう。」ということはできません。
まとめ
遺留分の計算は、計算方法が決まっているため、仕組み自体は理解しやすいものの、実際のケースで当てはめると、なかなか煩雑になることがあります。
まず、遺留分の計算の基礎となる財産の総額を正確に把握する必要がありますが、近年はデジタル資産が増加しており、どういった財産を所有しているのかを知らずに見落としてしまうリスクもあるようです。また、不動産は評価方法によっては同じ基準時の時価も変わることがあるため、どの評価方法によって評価するのかが非常に重要になってきます。
あわせて、誰にどういった生前贈与が行われたか、特別受益はあったかなども、把握しなくてはなりません。
ですので、遺留分の計算は、法律の専門家である弁護士にお任せいただくことをおすすめいたします。
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この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。






