遺産分割協議書の割印|割印・契印を押す場所や失敗した場合の押し直し方

遺産分割

更新日 2025.07.28

投稿日 2024.01.25

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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遺産分割協議書は、相続人や相続財産が多ければ多いほど、記載事項も増えていきます。そうなると、必然的に遺産分割協議書のページ数や、遺産分割協議書の部数も増えるものです。

遺産分割協議書の部数や枚数が複数になる場合、割印や契印が必要なのか迷われる方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、遺産分割協議書を作成する際に、割印や契印をどの印鑑でどのように押したらいいのか、押し方や押す場所について詳しく解説させていただきます。

また、割印の押印に失敗した場合の押し直し方や、遺産分割協議書の枚数に合わせた綴じ方と押印についても、具体的にご説明いたします。

ご自身で遺産分割協議書を作成される際に、本記事が少しでもご参考となりましたら幸いです。

目次

遺産分割協議書の割印

(1)遺産分割協議書に割印は必要?

相続人が複数人いる場合、遺産分割協議書はその人数に応じて、複数部作成されることが一般的です。遺産分割協議書を2通以上作成する時、協議書の作り方などで「割印を押印する」と見かけることが多いと思います。

そもそも遺産分割協議書を作成する部数が複数になる場合に、割印は必要なのでしょうか。

結論としては、遺産分割協議書の割印は任意とされています。ですので、必ずしも押印しなければならないというものではありません。ですが、どうしても押印できないというような理由のない限り、割印を押しておくことが推奨されます。

というのも、遺産分割協議書が複数ある場合に割印を押印する目的は、不正や改ざんの防止にあるからです。

複数ある遺産分割協議書について、すべての遺産分割協議書にまたがるように、割印が押されていることによって、複数の遺産分割協議書が同一の機会に作成された同一の内容であることを保証することができるというわけです。

割印があることによって、遺産分割協議書の内容が勝手に書き換えられたり、勝手に複製されたりしてしまう、といったトラブルを防止することもできます。

 

なお、割印や契印を含め、すべて実印で押印されていなければ、遺産分割協議書の法的な効力が認められず、無効となってしまうケースもあります。後の無用なトラブルを防止するという観点からも、遺産分割協議書を複数部作成する場合は、割印を押印しておくと良いでしょう。

また、相続人の中に実印の登録をしていない方がいる場合は、その相続人の住所地を管轄する役所において、ご本人に印鑑登録手続きを行っていただく必要があります。15歳未満の未成年者の場合は印鑑登録ができませんので、その場合は特別代理人を選任する必要があります。

(2)割印の押し方と押す場所

それでは、遺産分割協議書の割印の押し方と押す場所について確認しておきましょう。

押印する場所に決まりはない

遺産分割協議書の割印を押す場所に関してですが、明確な決まりはありません。左右の位置や、押す順番などに、法律上の指定はありません。

なお、一般的には、遺産分割協議書の上の部分に割印を押印します。
割印の押し方は、以下の通りです。

  1. 作成した複数の遺産分割協議書を、縦や横に少しずつずらし重ねて置く。
  2. すべての遺産分割協議書にまたがるように、相続人全員が押印する。
  3. 遺産分割協議書のそれぞれの末尾に、相続人3全員の印鑑登録証明書を添付する。

遺産分割協議書が2通、3通、4通ある場合も、割印の押し方は変わりません。

(3)遺産分割協議書の割印は実印?

遺産分割協議書の割印に使う印鑑は認印か実印か、迷う方もいらっしゃるかと思います。認印とは役所などで印影を登録していない、日常的に使われる印鑑のことです。一方、実印とは、市区町村役場に登録した、公的に認められている印鑑を意味します。

ここで一度、遺産分割協議書に必要な「押印」を整理しておきましょう。遺産分割協議書では、相続人全員が話し合って合意したことを示すための署名押印の「押印」と、複数部作成した場合の割印という「押印」があります。

まず、遺産分割協議書の署名押印で使用する印鑑に関しては、法律上の決まりがないため、実印である必要はありません。そのため、認印で署名押印した遺産分割協議書も有効です。

ですが、相続手続きの実務では実印による運用が原則となっているため、以下の点に注意してください。

相続手続きでは実印の押印が必要

実際の相続手続きにおいては、相続人全員の実印が押された遺産分割協議書と印鑑証明書をセットで求められることがほとんどです。
ですので、遺産分割協議書に押印する印鑑は、認印ではなく実印を使用していただければと思います。

というのも、遺産分割協議書は、「遺産分割協議の内容に同意したのが、間違いなく相続人本人であること」が非常に重要となるからです。

不動産の相続登記の手続きや、被相続人名義の預貯金口座の解約・払い戻しの手続き、相続税の申告手続きにおいては、法務局や金融機関、税務署の窓口で、相続人全員の実印が押された遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑証明書の提出が求められることが一般的です。

以上の通り、認印を使用したとしても、遺産分割協議書自体の効力に影響はありません。ですが、相続手続きがスムーズに進まないおそれがあるため、遺産分割協議書の署名押印には実印を使うことをお勧めいたします。

遺産分割協議書の署名押印の際に実印を使うとなれば、割印に関しても実印を使用するのが自然と言えます。
もちろん、割印に使用する印鑑は、必ずしも遺産分割協議書の署名捺印の際に使用した実印である必要はありません。ですが、わざわざ割印だけ他の印鑑を使用することはありませんので、署名押印と同じ実印を使用して割印を押すのが一般的です。

遺産分割協議書と契印

遺産分割協議書を複数部作成する場合は「割印」が推奨されます。次に確認するのは「契印」です。

割印と契印を混同される方も少なくはありませんので、以下で契印についてしっかり見ておきましょう。

(1)遺産分割協議書の「契印」とは

契印とは、2枚以上の書類が1つの連続した文書であることを証明するために押すものです。

遺産分割協議書に限らす、契約書などが複数ページになる場合に、すべてのページのつなぎ目に実印を使って押印します。遺産分割協議書の場合、すべての相続人が実印を使って押印することになります。

契印は非常に重要です。
もし契印がない場合、各相続人の押印があるページ以外は偽造が可能となってしまいます。遺産分割協議書の内容を書き換えられたとしても、気付くことが難しいでしょう。また、本来の遺産分割協議書にはなかったページが追加されたり、逆に途中のページが丸ごと抜き取られたりしてしまう恐れもあります。

そのため、遺産分割協議書が複数ページの場合には、各ページが連続したものであることが分かるように契印を押しましょう。

ところで、契印の押し方は、遺産分割協議書がホチキスで綴じられている場合と製本テープで綴じられている場合で以下のように異なります。

(2)遺産分割協議書の製本の仕方と契印の押し方

①遺産分割協議書の枚数が少ない場合

遺産分割協議書の枚数が少なく、2枚~3枚程度であるときには、以下の方法で製本します。

  1. 横書きなら左側(縦書きなら右側)をホッチキスで綴じる。
  2. 全てのページの見開きの部分に、左右の両ページにまたがるように、相続人全員が実印で契印を押す。
  3. 契印を押した遺産分割協議書を相続人の人数分製本し、割印を押す。

そして、遺産分割協議書の左右両ページにまたがるように、すべてのページのつなぎ目に、相続人全員が実印で契印を押します。

②遺産分割協議書の枚数が多い場合

遺産分割協議書の枚数が多いときには、すべてのページの見開きに契印を押印するのは手間のかかる作業です。ですので、製本テープを使用して「袋とじ」にする方法をお勧めいたします。

製本テープを使用して袋とじにする場合、以下のように製本します。

  1. 横書きなら左側、縦書きなら右側をホチキスで綴じる。
  2. ホチキスで綴じた部分に製本テープを貼る。
  3. 遺産分割協議書の紙面と製本テープにまたがるように、表表紙と裏表紙の両方に相続人全員が実印で契印を押す。
  4. 相続人の人数分、同じように契印を押した遺産分割協議書を製本し、割印を押す。

製本テープを使用して袋とじにした場合は、遺産分割協議書の紙面と製本テープにまたがるように、表表紙と裏表紙の両方に実印で契印を押します。こうすることで、各ページの見開きの部分に契印を押す必要はなくなります。

(3)A3用紙で作ると契印が不要

「A4ではなくA3サイズなら1枚で書き切れるため契印を押す手間を省けるのに。」というケースもお見受けします。遺産分割協議書はA4サイズの用紙で作成されることが一般的ですが、実は用紙のサイズに決まりはないため、A4サイズでなくても問題はありません。

A4用紙2枚だと契印が必要になってしまう場合も、遺産分割協議の内容がA3用紙1枚で収まるのであれば、契印が省略できるので便利です。

記載事項がそこまで多くないが相続人が多くて契印が大変、といったケースでは、A3用紙で作成されてみてはいかがでしょうか。

(4)印鑑証明書の綴じ方

本記事で割印の押し方をご説明した際にも触れましたが、遺産分割協議書には、押印されている印鑑が実印であることを証明するために、印鑑証明書(印鑑登録証明書)を必ず添付しましょう。

遺産分割協議書の割印を失敗したら

割印がずれてしまったり、滲んでしまったりして押印に失敗した場合、どのように押し直したら良いのでしょうか。

(1)遺産分割協議書の割印の押し直し方

遺産分割協議書の割印を押し直す方法は、以下の見本画像の通りです。

 

割印失敗時の訂正方法

 

  1. 失敗した印影の一部に被せるように、訂正印として実印で押印する。
  2. 訂正印のすぐ近くに、新たに実印で割印を押し直す。

なお、失敗した割印を二重線で消して、隣に押印し直す方法は、遺産分割協議書では控えるのが無難です。
二重線で消す方法の場合、さらに二重線で消されて異なる印鑑を押されてしまうリスクがあるためです。

(2)遺産分割協議書の契印の押し直し方

遺産分割協議書の契印を失敗したときも、少しずらして訂正印として実印で押印し、その隣に新たに実印で押印し直しまましょう。

押印に何度も失敗してしまい、遺産分割協議書が見づらくなってしまうような場合は、改めて遺産分割協議書を作り直したほうが良いでしょう。

契印・割印なしの遺産分割協議書でも登記できる

ここまで割印と契印の必要性や意義を見てきました。

実際の相続登記の手続きなどでは、割印なし・契印なしの遺産分割協議書でも、問題なく手続きをすることができます。

遺産分割協議書の割印や契印がなくても、相続人全員が合意していることの証明は可能であるからです。割印なし、契印なしでも、遺産分割協議書が無効となることはありません。

もっとも、すでに解説させていただいた通り、割印や契印を押印することにより、後々のトラブルを防ぐことができますので、割印や契印はできる限り押印していただければと思います。

遺産分割協議書の割印に関するQ&A

Q1.遺産分割協議書の押印に使用する印鑑は実印ですか?

A:遺産分割協議書の押印に使用する印鑑に、法律上の決まりはありません。

認印が使用されたとしても遺産分割協議書としての効力を失うわけではありませんが、認印を使用した場合、不動産の相続登記や預貯金の払い戻しなどの相続の手続きがスムーズに進まない恐れがあります。ですので、実印での押印をお勧めいたします。

Q2.遺産分割協議書の割印の押し方は?

A:割印の位置や押す順番などに法律的な指定はありませんが、一般的には、遺産分割協議書の上の部分に押印します。

遺産分割協議書の割印の押し方は、以下の通りです。

  1. 作成した複数の遺産分割協議書を縦や横に少しずつずらして重ねて置く。
  2. すべての遺産分割協議書にまたがるように、相続人全員が実印で押印する。

Q3.遺産分割協議書の割印に失敗したときの押し直し方は?

A:遺産分割協議書の割印を失敗したときに押し直す方法は、下記の通りです。

  1. 失敗した印影の一部に被せるように、訂正印として実印で押印する。
  2. 訂正印のすぐ近くに、新たに実印で割印を押し直す。

まとめ

遺産分割協議で相続人全員が合意したとしても、その内容を有効な遺産分割協議書にまとめなければ意味がありません。

遺産分割協議書には、必ず相続人全員の署名と、実印の押印が必要となります。また、遺産分割協議書には、押印された印鑑が実印であることを証明する印鑑証明書の添付も必要です。

そして、遺産分割協議書の原本を複数部作成する場合は、それぞれの遺産分割協議書の内容が同一であることを証明するために「割印」が推奨されます。
また、遺産分割協議書が複数枚となった場合は、ページの抜き差しが行われていないことを証明するために「契印」を押印しましょう。

遺産分割協議書に割印や契印がない場合でも、法務局や金融機関などに提出すること自体は可能ですが、相続人同士や提出先との無用なトラブルを防ぐためにも、押印しておくことをおすすめします。

有効な遺産分割協議書の作成を相続人だけで進めるのが難しい場合には、ぜひ弁護士へご相談いただければと思います。
弁護士法人あおい法律事務所では、弁護士による法律相談を初回無料で行っております。当ホームページのWeb予約フォームやお電話にて、ぜひお気軽にお問合せください。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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