自動車の相続における遺産分割協議書の書き方│100万円超の場合は名義変更に必要!

遺産分割

更新日 2024.10.17

投稿日 2024.01.25

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

相続財産といえば、預貯金や土地、建物をイメージする方が多いのではないでしょうか。

実は、自動車も相続財産に含まれますので、自動車の所有者が亡くなった場合は、名義変更等の相続手続きを行う必要があります。

自動車の所有者が亡くなると、車はいったん相続人全員の共有財産となります。共有財産のままだと、後に売却や廃車が手続きができないなどの不都合が生じるため、一般的には、特定の相続人の名義に変更します。

遺産分割協議書」は、名義変更などの相続手続きにおいて、自動車の相続を証明するために必要となる重要な書類です。

本記事では、自動車の相続時に遺産分割協議書が必要となるケースや、自動車を相続する場合の遺産分割協議書の書き方、必要書類などについて解説いたします。
相続財産に自動車があるものの、遺産分割協議書が必要か分からない方や、遺産分割協議書の書き方が分からない方は、ぜひ参考になさってください。

目次

自動車の相続に遺産分割協議書は必要?

自動車は遺産分割の対象となる

被相続人が自動車を所有していた場合、土地や建物と同様に、自動車も相続財産として扱われ、遺産分割の対象となります。

自動車の所有者が亡くなると、遺産分割が完了するまでは、相続人全員の共有状態になります。
したがって、相続財産に自動車が含まれる場合、通常、遺産分割協議を行い、ほかの相続財産とあわせて、相続人間で誰が自動車を相続をするのかを取り決め、その内容を「遺産分割協議書」にまとめます。

相続手続きで遺産分割協議書が必要

自動車を相続する場合は、名義変更手続きをおこなう必要があります。

この名義変更手続きの際に、自動車の相続を対外的に証明する為に、原則として遺産分割協議書が必要となります。

なお、法律上、相続における自動車の名義変更は義務ではなく、被相続人が死亡してからいつまでに名義変更を行わなければならないといった期限も定められていません。

しかし、「道路運送車両法第13条」では、下記のとおり、自動車の所有者が変わった場合には、15日以内に手続きをしなければならない旨定めています。

(移転登録)
第十三条 新規登録を受けた自動車(以下「登録自動車」という。)について所有者の変更があつたときは、新所有者は、その事由があつた日から十五日以内に、国土交通大臣の行う移転登録の申請をしなければならない。

売却や廃車手続きの場合も遺産分割協議書が必要

車の所有者が亡くなった場合は、その車を相続人の名義に変更しない限り、売却も廃車手続きも行うことができません。

したがって、売却や廃車手続きを検討している場合も、原則として遺産分割協議書が必要となります。
自動車の名義変更をしない場合、売却や廃車手続きができませんので、自動車を相続した場合は、名義変更を速やかに行いましょう。

相続手続きで遺産分割協議書が不要となるケースもある

自動車の相続手続き(名義変更)では、原則として遺産分割協議書が必要になります。

ただし、遺産分割協議書が不要となる例外もあります。

以下では、遺産分割協議書が必要となるケース、不要となるケースについて、解説いたします。

100万円を超える普通車を相続するときは遺産分割協議書が必要!

遺産分割協議書が必要なのは「査定額100万円超の普通車」を相続する場合

遺産分割協議書が必要となるのは、「査定額が100万円を超える普通車」の相続(名義変更)手続きをする場合です。

普通車とは、正式名称を普通自動車といい、道路運送車両法上、「小型自動車、軽自動車、大型特殊自動車及び小型特殊自動車以外の自動車」と定義されています。

遺産分割協議書は、相続人全員で相続財産の分け方を話し合い、同意した旨を証明するために、相続手続きにおいて必要となります。

普通車の名義変更時の「遺産分割協議書」の要否

自動車の種類

査定額

車の名義変更時の「遺産分割協議書」の要否

普通車

100万円超

「遺産分割協議書」が必要

100万円以下

「遺産分割協議書」または「遺産分割協議成立申立書」が必要

「査定額100万円以下の普通車」を相続する場合は?

「査定額が100万円以下の普通車」の相続(名義変更)手続きをする場合には、遺産分割協議書は必ずしも必要ではありません。
「遺産分割協議成立申立書」を提出すれば、名義変更手続きができます。

「遺産分割協議成立申立書」とは、査定額が100万円以下の自動車を相続する場合に、「遺産分割協議書」の代わりに提出することによって、手続きを簡略化できる書類です。 遺産分割協議成立申立書を提出する場合は、遺産分割協議書の提出は不要となります。

遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印による押印が必要となりますが、遺産分割協議成立申立書の場合は、自動車を相続する人だけの実印で済みますので、手続きを簡略化することが可能となります。

なお、遺産分割協議成立申立書を使用する場合は、以下の資料の添付が必要です。

  • 相続する自動車の価格が 100 万円以下であることを確認できる査定証、
  • または査定価格を確認できる資料の写し 等

軽自動車を相続する場合は?

軽自動車の相続(名義変更)手続きでは、査定額にかかわらず、「遺産分割協議書」・「遺産分割協議成立申立書」いずれも不要です。

軽自動車とは、道路運送車両法上、「排気量660cc以下、長さ3.4m以下幅1.48m以下、高さ2.0m以下の三輪および四輪自動車」と定義されています。

被相続人が所有していた自動車が、普通車か軽自動車か判断できない場合は、車検証の「自動車の種別」欄の記載を確認しましょう。

軽自動車の名義変更時の「遺産分割協議書」の要否

自動車の種類

車の名義変更時の「遺産分割協議書」の要否

軽自動車

「遺産分割協議書」・「遺産分割協議成立申立書」いずれも不要

自動車を相続する場合の遺産分割協議書の書き方│陸運局のひな形も紹介

自動車を相続する場合の遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書の書き方に法律で決められた様式はありませんが、一般的には、遺産分割の内容すべてを記載します。

ただし、手続きしたい財産だけを記載して遺産分割協議書を作成することも可能ですので、自動車の名義変更手続き用に、「自動車のみ」の遺産分割協議書を作成することができます。

下記では、「自動車のみ」の遺産分割協議書のひな形を使用して、自動車を相続する場合の具体的な書き方・注意点を解説します。
遺産分割協議書には、自動車登録番号などの記載が必要になるため、必ず車検証(自動車検査証)を準備しましょう。
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遺産分割協議書
①【令和○年○月○日】、②【所有者○○○○】の死亡により相続を開始し、相続人全員で遺産分割協議を行った結果、次の自動車を③【○○○○】が相続することに協議が成立しました。
自動車登録番号:④【○○○○○○○○】
車台番号:⑤【○○○○○○○○】
相続人
⑥【住所 ○○県○○市○○区○○町○丁目○-○○】
⑦【氏名 ○○○○○  実印】
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①被相続人の戸籍(除籍)謄本に記載されている死亡日を記入します。
②車検証に記載されている、亡くなられた所有者の氏名を記入します。
③自動車を相続する人の氏名を記入します。
④車検証に記載されているとおりに自動車登録番号を記入します。
⑤車検証に記載されているとおりに車台番号を記入します。
⑥、⑦自動車を相続する人を含めた相続人全員の住所・氏名を記入し、相続人全員が実印を押印します。

遺産分割協議書の書き方の注意点

自動車を相続する人(③に氏名を記入する人)の住所・氏名は、戸籍謄本等や印鑑証明書に記載されている内容と書き方に相違がないように、注意しましょう。

また、それ以外の相続人の住所・氏名も、戸籍謄本等に記載されている内容と書き方に相違がないようしましょう。

運輸局(国土交通省)の遺産分割協議書のひな形ダウンロード│pdf形式

自動車専用の遺産分割協議書のひな形は、陸運局(国土交通省)のホームページからダウンロードすることができます。

下記の通り、陸運局(国土交通省)が提供する遺産分割協議書のひな形は、簡素な様式で書き方がわかりやすくなっています。
自動車のみの遺産分割協議書を作成したい場合は、陸運局のひな形を使うとよいでしょう。

引用(引用:国土交通省 関東運輸局):<国土交通省│地方運輸局

以下の国土交通省 陸運局のホームページからは、遺産分割協議書のひな形がpdf形式でダウンロードできます。
関東運輸局│ひな形のダウンロードはこちら

遺産分割協議書のひな形ダウンロード│word、エクセル形式

当事務所では、下記の2つのケースを想定し、それぞれのひな形をword形式・エクセル形式でご用意しました。

  1. 自動車のみの遺産分割協議書
  2. 自動車以外の相続財産を含む遺産分割協議書

下記からひな形をダウンロードし、遺産分割協議書の作成にご活用ください。

なお、掲載しているひな形は、個々の状況によっては不十分な記載となる可能性があります。実際に使用する際は、管轄の運輸支局に事前にご確認いただき、お手続きください。

<【word形式】1.自動車のみの遺産分割協議書│ひな形ダウンロードはこちら>
<【エクセル形式】1.自動車のみの遺産分割協議書│ひな形ダウンロードはこちら>
<【word形式】2.自動車以外の相続財産を含む遺産分割協議書│ひな形ダウンロードはこちら>
<【エクセル形式】2.自動車以外の相続財産を含む遺産分割協議書│ひな形ダウンロードはこちら>

自動車の名義変更時の必要書類│売却・廃車する場合は?

自動車の名義変更時の必要書類

相続した自動車の名義変更をする場合の必要書類は、自動車の種類や査定額によって異なります。

自動車の名義変更時の必要書類一覧

査定額

名義変更時の必要書類

普通車

  • 遺産分割協議書
  • 車検証(自動車検査証)
  • 戸籍謄本(相続人全員が確認できるもの)
  • 除籍謄本または住民票の除票
  • 実印・印鑑証明書(自動車を相続する相続人のみ)
  • 手数料納付書
  • 自動車税・自動車取得税申告書
  • 申請書
  • 車庫証明書(同居している相続人が相続する場合は不要)
  • 委任状(相続人全員の実印)

※管轄の運輸支局によって別の書類が必要となることがあります。

普通車(査定額が100万円以下)

  • 遺産分割協議成立申立書
  • 戸籍謄本(被相続人・自動車を相続する人のもの)
  • 自動車を相続する人の印鑑証明書
  • 車検証(自動車検査証)
  • 車庫証明書
  • 査定額を証明する書類

軽自動車

  • 軽自動車を相続する人の住民票(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 自動車検査証記入申請書(OCRシートの第2号様式)
  • 車検証(自動車検査証)
  • 軽自動車税の申告書
  • 被相続人の戸籍謄本(本人の死亡や相続人との関係がわかるもの)
  • 除籍謄本または住民票の除票
  • 軽自動車を相続する人の認印

普通車の名義変更手続き

普通車の相続手続き(名義変更)を行う場合は、陸運局または運輸支局への届け出が必要となります。
上記の書類をそろえて、管轄の陸運局または運輸支部で名義変更の手続きを行いましょう。

運輸支局が分からない場合は、以下のサイトから検索することができますので、確認してみましょう。

参考:全国運輸支局等のご案内(国土交通省)

査定額が100万円以下の普通車の名義変更手続き

普通自動車の査定額が100万円以下であれば、遺産分割協議書の代わりに、遺産分割協議成立申立書を提出することで名義変更ができます。

相続人以外の書類が不要となり、遺産分割協議書を使用する場合よりも自動車の名義変更を簡易的に行うことができます。

軽自動車の名義変更手続き

軽自動車の相続手続き(名義変更)を行う場合は、軽自動車協会への届け出が必要となります。
上記の必要書類をそろえて、管轄の軽自動車協会事務所で名義変更の手続きを行いましょう。

相続後に車を売却する場合

被相続人の車は、相続人の名義に変更しない限り、売却することはできません。
一般的には、名義変更後に車を売却する場合、下記のような書類が必要となります。

  • 車検証(自動車検査証)
  • 自動車納税証明書
  • 自動車損害賠償責任保険証(自賠責保険証)
  • 印鑑登録証明書(軽自動車の場合は不要)
  • 印鑑(実印/軽自動車の場合は認印も可)
  • 自動車リサイクル券

相続後に車を廃車する場合

 

廃車とは、永久抹消登録のこと

 

被相続人の車は、相続人の名義に変更しない限り、廃車することはできません。
廃車とは、「永久抹消登録」を指します。

永久抹消登録とは、自動車を処分し、自動車登録そのものを完全に抹消するための手続きです。

名義変更後に、車を永久抹消登録(廃車)する場合の手順、および必要書類は、以下の通りです。

廃車手続きの手順

  1. リサイクル業者に解体を依頼する。
  2. リサイクル業者に車を持ち込む。(動かせないときは業者に連絡してレッカー車を手配する。)
  3. 自動車を解体する。
  4. ナンバープレートと解体証明書を受け取る。
  5. 解体から15日以内に運輸支局、または軽自動車検査協会で永久抹消登録の手続きを行う。

永久抹消登録(廃車手続き)する場合の必要書類

  • 永久抹消登録申請書(第3号様式)
  • ナンバープレート
  • 車検証
  • 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 自動車税および自動車取得税申告書

自動車の相続における遺産分割協議書に関するQA

Q.自動車を相続する場合は、遺産分割協議書が必要ですか?

遺産分割協議書が必要となるのは、「査定額が100万円を超える普通車」の相続(名義変更)手続きをする場合です。
また、軽自動車の場合は、名義変更手続きにおいて、遺産分割協議書は不要です。

Q.査定額100万円以下の普通車を相続する場合は、遺産分割協議書は不要ですか?

相続する普通車の査定額が100万円以下であれば、遺産分割協議書は不要です。

「査定額が100万円以下の普通車」の場合は、「遺産分割協議書」に代えて「遺産分割協議成立申立書」を提出すれば、名義変更手続きを行うことができます。

Q.自動車を相続する場合の遺産分割協議書の書き方は?

遺産分割協議書の書き方に法律で決められた様式はありません。

すべての財産について記載することもできますし、自動車の名義変更手続き用に、「自動車のみ」を記載することもできます。

まとめ

自動車は相続財産として扱われるため、遺産分割が完了するまでは相続人全員の共有財産となり、名義を変更しない限り、車の売却手続きや廃車手続きを行うことができません。

自動車を相続する場合に遺産分割協議書が必要かどうかは、自動車の種類や査定額によって異なります。遺産分割協議書が必要となるのは、「査定額が100万円を超える普通車」の名義を変更する場合です。

また、遺産分割協議書の作成時には、すべての相続財産を記載することもできますし、自動車の名義の変更手続き用に、自動車のみを記載することもできます。

遺産分割協議書の書き方に不安がある方や、書類収集の時間確保が難しい方は、相続手続きに強い専門家へ相談されることをおすすめします。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。