遺産分割協議書はどこでもらえる?作成できる人は?│法務局のひな形ダウンロード方法や費用についても解説
相続人全員の合意で遺産分割方針が決定したら、遺産分割協議書を作成する必要があります。
「遺産分割協議書はどこでもらえるのか?」「作成できる人は?」と考えていらっしゃる方もいるかと思います。
本記事では、遺産分割協議書がどこでもらえるのか、といった疑問にお答えし、また、作成できる人や、法務局のひな形のダウンロード方法、作成費用などについても解説いたします。
遺産分割協議を控えている方はぜひ参考にしてください。
目次
遺産分割協議書はどこでもらえる?
もらえるものではなく、個人で作成するもの
遺産分割協議書は、役所や法務局、金融機関などで用紙がもらえるものではなく、相続人間で作成するものになります。
行政書士、司法書士、弁護士等の専門家に依頼をすることで書面を代わりに作成してもうことはできますが、あくまでも相続人の間で協議を行い、合意した内容を書面にします。
相続人が複数いて遺産分割協議を行った場合は、原則としてその協議の結果を遺産分割協議書として残さなければなりません。そのため、相続人の全員が遺産分割協議に参加し、遺産分割協議書を作成する必要があります。
ただし、遺言書がある場合や相続人が一人などのケースでは、原則として遺産分割協議書の作成は必要ありません。
一般的な遺産分割協議書の書式サンプル
遺産分割協議書を作成することには、以下のような重要な目的があります。
- 相続人全員の合意内容を明確にするため
- 正確な記録を残すことで、のちのトラブルを防ぐため
- 不動産や自動車、預貯金や株式などの名義変更手続きのため
- 相続税の申告書に添付するため
遺産分割協議の話し合いがまとまったら、必ず遺産分割協議書を作成しましょう。
以下では、一般的な遺産分割協議書の書式サンプルを見てみましょう。
遺産分割協議書(サンプル)
本籍地 〇〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇〇号
最後の住所地 〇〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇〇号
被相続人 甲野太郎 (令和〇〇年〇〇月〇〇日死亡)
上記の者の相続人全員は、被相続人の遺産について協議を行った結果、次のとおり分割することに同意した。
1.相続人甲野一郎は次の遺産を取得する。
【土地】
所 在 〇〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目
地 番 〇〇番〇〇
地 目 宅地
地 積 〇〇〇.〇〇平方メートル
【建物】
所 在 〇〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目
家 屋 番 号 〇〇番〇〇
種 類 木造
構 造 瓦葺2階建
床 面 積 1階 〇〇.〇〇㎡
2階 〇〇.〇〇㎡
2.相続人乙野花子は次の遺産を取得する。
【現金】 金〇,〇〇〇,〇〇〇円
【預貯金】
○○銀行○○支店 定期預金 口座番号○○○○○○○
○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○
【株式】
○○株式会社 普通株式 ○○○株
3.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人甲野一郎がこれを取得する。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を○通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。
令和○○年○○月○○日
【相続人甲野一郎の署名押印】
住所
氏名 実印
【相続人甲野花子の署名押印】
住所
氏名 実印
法務局の遺産分割協議書ひな形
法務局の遺産分割協議書の記載例
法務局の遺産分割協議書の記載例は、以下のとおりです。
<法務局のひな形の貼り付け>
(引用元:遺産分割協議書の記載例 | 法務局)
そのため、遺産が不動産だけの場合にしか参考とならないでしょう。
法務局の遺産分割協議書のひな形ダウンロード
法務局の遺産分割協議書のひな形は、法務局のホームページからダウンロードすることが可能です。
こちらをご覧ください。
なお、法務局のホームページからは、遺産分割協議書のひな形はPDFデータしかダウンロードすることができません。
しかし、本記事をご覧いただいている方の中には、法務局が作成したひな形をご使用になりたいという方もいらっしゃるかと思います。
以下から法務局の遺産分割協議書のテンプレートが無料で閲覧・ダウンロード可能ですので、ぜひご参考になさってください。
<Word貼り付け>
国税庁の遺産分割協議書のひな形
国税庁の遺産分割協議書の記載例
下のものが国税庁の遺産分割協議書の記載例です。
<国税庁のひな形の貼り付け>
(引用元:国税庁「相続税申告のしかた」令和元年度分用 125項)
国税庁の遺産分割協議書のひな形ダウンロード
国税庁の遺産分割協議書のひな形は、国税庁のホームページからダウンロードすることが可能です。
こちらをご覧ください。
なお、国税庁のホームページからは、遺産分割協議書のひな形はPDFデータしかダウンロードすることができません。以下から国税庁の遺産分割協議書のテンプレートが無料で閲覧・ダウンロード可能ですので、ぜひご参考になさってください。
<Word貼り付け>
遺産分割協議書を作成できる人は?│司法書士・行政書士・弁護士ができること
遺産分割協議書を作成できる専門家は、行政書士・司法書士・税理士・弁護士の4士業
遺産分割協議書は、相続人が自分で作成することも可能ですし、専門家に依頼することもできます。
遺産分割協議書を作成できる専門家は、行政書士・司法書士・税理士・弁護士の4士業です。
遺産分割協議書は、基本的には相続人が自分で作成可能な書類ですが、遺産分割をめぐってトラブルが発生している場合や、遺産に不動産が含まれているケースの相続や、遺産が多い、相続人が多い場合など、相続手続きが複雑になることが予想されるケースの相続では、遺産分割協議書の作成を専門家に依頼したほうが安心です。
遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家とそれぞれの特徴は、下記のとおりです。
遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家 |
専門家の特徴 |
行政書士 |
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司法書士 |
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税理士 |
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弁護士 |
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行政書士に依頼するのがよいケース
- 相続人間で遺産分割の話し合いは整っており、トラブルはない
- 合意した内容を遺産分割協議書にしたいだけ
行政書士は、遺産分割協議書の作成を行うことができます(行政書士法第1条の2第1項)。しかし、行政書士は、不動産の相続登記や相続税の申告、遺産分割協議での交渉や代理等をおこなうことはできません。
遺産分割協議書の内容についてのアドバイスを、行政書士から受けることはできませんが、他の専門家に遺産分割協議書の作成を依頼する場合より、低めの費用で依頼できることが一般的です。
司法書士に依頼するのがよいケース
- 相続人間で遺産分割の話し合いは整っており、トラブルはない
- 遺産に不動産が含まれていて、名義変更(相続登記)が必要
司法書士は、登記の専門家で、登記業務に関して、法務局に提出する書類の作成を行うことができます(司法書士法第3条第1項第2号)。
相続財産に土地や建物などの不動産が含まれる場合には、遺産分割協議書を作成とあわせて法務局への登記申請も依頼することができます。
税理士に依頼するのがよいケース
- 相続人間で遺産分割の話し合いは整っており、トラブルはない
- 相続税の申告が必要
- 相続税のシミュレーションをしてもらいたい
など
税理士は、税務署に提出する書類の作成を行うことができます(税理士法第2条第1項第2号)。したがって、相続税の申告に必要となる場合に限り、税理士が遺産分割協議書を作成することが認められます。
一方で、相続税申告を行わない場合には、税理士が遺産分割協議書を作成することはできません。
また、税理士も行政書士や司法書士と同様に、遺産分割協議の内容に関するアドバイスをしたり、代理人として交渉をしたりすることは許されません。
弁護士に依頼するのがよいケース
- 遺産分割協議がうまくまとまらず、相続人同士でもめている場合
- 遺産の内容が複雑で、遺産分割協議をめぐってトラブルになりそうな場合
- 相続手続きを一括して以来したい場合
など
弁護士は、相続に関する業務をほとんどすべて取り扱うことができます。
また、弁護士は、遺産分割の紛争において、代理人として他の相続人と交渉したり、交渉で決着がつかない場合には調停や裁判を代理したりすることのできる唯一の専門家です。
したがって、遺産分割協議の内容に関するアドバイスの提供や、他の相続人との交渉、遺産分割協議書の作成などを一括して依頼することが可能です。
【専門家別】遺産分割協議書の作成費用は?
専門家ごとに費用が異なる
遺産分割協議書を作成できる専門家は、行政書士・司法書士・税理士・弁護士の4士業です。
それぞれ異なる専門分野を持ち、遺産分割協議書の作成を依頼する場合の費用の相場は下記とおり異なります。
遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家 |
依頼した場合の費用の目安 |
行政書士 |
|
司法書士 |
|
税理士 |
|
弁護士 |
※交渉、調停、審判、訴訟等によって、最終的に獲得又は減額した権利利益の合計金額 |
なお、上記はあくまでも目安の費用となりますので、ご自身の相続状況などに照らし合わせて専門家を選んでください。
行政書士の費用
行政書士へ遺産分割協議書の作成を依頼した場合の費用相場は、3万~5万円です。他の専門家と比較して低めの費用であり、相続人調査なども依頼する場合は10万円前後となります。
司法書士の費用
司法書士に遺産分割協議書の作成を依頼する場合、不動産の調査や不動産の名義変更(相続登記)も一緒に依頼するケースが多く、必要書類の収集費用も含めた費用設定になっています。
また、費用は事務所によっても異なりますが、日本司法書士連合会が平成30年1月に実施したアンケートによると、相続による所有権移転登記を依頼した場合の司法書士費用の相場は、全体平均値として、6万~8万円という結果でした。
税理士の費用
税理士に相続税の計算や相続税申告書の作成、相続税申告を依頼した場合、費用の相場は相続財産の0.5~1.0%です。例えば、相続財産が1億円であれば、税理士費用の相場は50万~100万円となります。
そのプランの中に、遺産分割協議書の作成が含まれていることが一般的です。
弁護士の費用
弁護士費用は基本的に各弁護士が自由に設定することができますが、平成16年3月までは日本弁護士連合会が作成する報酬基準に従っていました。現在でも旧報酬基準を基準として費用を定めている弁護士が多く、以下のような相場となっています。
経済的利益 |
着手金(最低10万円) |
報酬額 |
---|---|---|
300万円以下 |
8% |
16% |
300万円を超え3000万円以下 |
5%+9万円 |
10%+18万円 |
3000万円を超3億円以下 |
3%+69万円 |
6%+138万円 |
3億円超 |
2%+369万円 |
4%+738万円 |
着手金は、弁護士が業務に取り掛かるために支払う報酬です。
また、依頼する前に、依頼するかどうかを決めるために弁護士に相談する場合にも、30分で5,000円程度の法律相談料が発生することが一般的です。
遺産分割協議書の作成費用の負担は誰がするのか?
遺産分割協議書の作成を専門家に依頼した場合、誰が費用を負担するのかで迷ってしまうケースもあります。一般的には依頼人が支払うものと考えられていますが、必ずしもそうではなく、各専門家によって以下のように分かれています。
行政書士や司法書士、税理士費用は相続人同士の話し合いで決定する
弁護士以外の専門家に遺産分割協議書の作成を依頼する場合の費用は、基本的には誰が支払っても構いませんが、相続人同士で話し合い、負担割合を決めるケースが一般的です。
代表者がまとめて支払うケースもあれば、相続人同士で分割して費用を払うケースもあります。また、遺産分割の相続分に応じて負担費用を調整することもあります。
弁護士費用は依頼人が支払う
弁護士に遺産分割協議書の作成を依頼したときは、基本的には、費用を支払うのは依頼人です。弁護士へ依頼するケースの場合、トラブル解決とセットで依頼することが多く、弁護士は依頼人の利益を重視して交渉などにあたります。したがって、直接的な利益を受けるのは依頼人であるため、依頼人による弁護士費用の支払いが当然と考えられます。
あまりないケースではありますが、もし遺産分割協議書の作成だけを弁護士に依頼した場合は、各相続人の相続分に応じて費用を按分してもよいでしょう。
「遺産分割協議書はどこでもらえる?」に関するQA
Q.遺産分割協議書はどこでもらえる?
遺産分割協議書は、役所や法務局、金融機関などでもらえるものではなく、相続人が作成するものです。
Q.遺産分割協議書を作成できる人は?
遺産分割協議書の作成を代行してくれる専門家は、行政書士・司法書士・税理士・弁護士の4つです。
専門家に依頼せず、相続人が自分で作成することも可能です。
Q.遺産分割協議書の作成費用は?
遺産分割協議書の作成を代行してくれる専門家は、行政書士・司法書士・税理士・弁護士の4士業ですが、それぞれ専門分野が異なっており、遺産分割協議書の作成を依頼する場合の費用相場それぞれ異なります。
まとめ
遺産分割協議書はどこかでもらえるものではなく、相続人間で作成するものですが、記載内容に漏れや不備がある場合、相続手続きができません。
もしご自身で遺産分割協議書を作成するのが難しい場合には、専門家に依頼して代わりに作成してもらうことも可能です。遺産分割協議書を作成できる専門家は、行政書士・司法書士・税理士・弁護士の4士業です。
その中でも弁護士は、遺産分割協議書を作成できるほか、相続手続き全般について対応することができます。そのため、相続手続きを一括して任せたい場合には、弁護士への依頼をおすすめします。
遺産分割協議書を作成できる人を探している方や、相続手続きへの対応にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所までご相談ください。
この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。