遺産分割協議書【完全版】遺産分割協議書とは?書き方や作り方の注意点も

遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産をどのように分けるのかについて話し合い、合意した内容を記載した書面のことをいいます。
ですが、日常生活では耳慣れない言葉です。
「そもそも遺産分割協議書って何?」「遺産分割協議書の書き方が分からない・・・」とお悩みの方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、遺産分割協議書とはどういった書類なのかについて、遺産分割協議書の意味や書き方などを、弁護士が詳しく解説させていただきます。
遺産分割協議書を作成する上での注意点についてもご説明しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
遺産分割協議書を理解するのに、この記事が少しでもご参考になりましたら幸いです。
目次
遺産分割協議書
(1)遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容を取りまとめた書類のことをいいます。
被相続人が亡くなったときに相続人が複数いる場合、民法第898条1項の「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」という定めにより、被相続人の遺産は相続人全員で共有することになります。
このような共有状態となっている遺産について、各相続人でどのように分け合うかを話し合います(遺産分割協議)。
遺産分割協議が成立したら、話し合いの結果をまとめた「遺産分割協議書」を作成することが一般的です。
なお、遺産分割協議書の作成は、法律上義務付けられているものではありません。
ですが、法律上の義務ではなくとも、将来的なトラブルを回避し、相続人の間での権利と義務を明確にするために、遺産分割協議書は必ず作成しておくことをお勧めいたします。
(2)遺産分割協議書の法的効力
遺産分割協議書は単なるメモや記録ではなく、法的な効力を持った正式な文書になります。
遺産分割協議書に法的効力が生じると、どのようになるのでしょうか。
まず、各相続人は、協議書に記載された内容に従って遺産を取得する権利や、他の相続人に財産を引き渡す義務を負うことになります。そのため、一旦成立した協議書に基づいて、不動産登記や金融機関での預貯金解約など、相続手続きを具体的に進められるようになります。
また、万が一相続人の誰かが後になって「やっぱりあの協議は無効だ」と主張しても、原則としてこれを覆すことは認められません。遺産分割協議書は、相続人間での約束であると同時に、法的な証拠力を有しているためです。
さらに、もし相続人が協議書で定められた義務を果たさない場合、他の相続人は遺産分割協議書をもとに裁判所に訴えるなどして、権利の実現を強制することも可能となるのです。
ところで、遺産分割協議書の法定効力がいつ発生するのか気になるかと思います。
厳密に言えば、遺産分割協議書の作成自体は、効力発生の直接の要件ではありません。
そもそも、遺産分割協議の法的効力は、相続人全員が話し合いで合意して「成立した時点」で発生します。そして、その遺産分割協議の成立をもって、その効果は「相続開始時(被相続人の死亡時)」に遡って有効となるのです。
(3)遺産分割協議書の必要事項
遺産分割協議書は法律上の作成義務がないため、その様式についても特に決まりはありません。
ですが、トラブル防止のためにも、以下の事項については必ず記載しておくようにしましょう。
被相続人の氏名、生年月日、死亡日(相続開始日)
被相続人の最後の本籍地
被相続人の最後の住所
相続人が遺産分割内容に合意している旨の記載
相続財産の具体的な内容
相続人全員の氏名・住所
実印の押印(※各相続人の印鑑証明書を添付)
また、後から新しく財産が見つかった場合に備えて、「遺産分割協議書に記載のない財産が発見された場合の取り扱い」についても書いておくと安心です。
この点の詳しい書き方については後述いたしますので、このままお進みください。
(4)遺産分割協議書のメリット
このように遺産相続において重要な遺産分割協議書ですが、作成しておくことで、以下のようなメリットがあります。
①遺産の内容が明確化する
遺産分割協議書を作成しておくと、相続財産の内容や分け方が明確になります。
誰がどの財産を相続するのかが書面で確認できるため、さまざまな手続きを円滑に進めることができます。
また、相続人全員の合意内容がはっきりと残ることで、後になって意見の食い違いが起こるのを防ぐ効果もあります。
②各種相続手続きがスムーズになる
遺産分割協議書があれば、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどの相続手続きがスムーズに進みます。
例えば、不動産の相続では、法務局に提出して相続人全員の合意を証明でき、手続きが円滑になります。
また、銀行での手続きでも、協議書があることで誰がどの預金を相続するかが明確になり、相続人全員の署名を一から集める手間を省くことができます。
②将来的なトラブルの予防に役立つ
遺産分割協議書を作成することで、相続人間での財産分配に関する合意が書面で明確に残り、将来的なトラブルを防止することができます。口頭での合意のみでは、後に相続人間で意見の食い違いが生じる可能性が高くなりますが、協議書によりその内容が証拠として残るため、紛争の発生を未然に防ぐことができます。相続手続きが円滑に進むだけでなく、相続人間の信頼関係を保つ上でも、遺産分割協議書の作成は非常に有効です。
④相続税の申告手続きで役立つ
相続税を申告する際には、相続財産がどのように分配されたかを税務署に報告する必要があります。
相続税の申告においては、法定相続分以外の割合で相続する場合や、相続税を軽減するための特例などを活用する場合に、遺産分割協議書があれば、誰がどの財産を取得したかが明確になるため、正確な申告が可能となります。遺産分割協議書がない場合、法定相続分での申告が基本となり、相続税の控除や特例が適用できない場合があります。
このため、遺産分割協議書を作成しておくことで、適切な税務申告ができるだけでなく、税制上の優遇措置を受けることも可能になるのです。
遺産分割協議書の書き方
それでは、遺産分割協議書の書き方について詳しく見ていきたいと思います。
まずは基本的内容について確認し、具体的な書き方について個別に確認していきましょう。
(1)遺産分割協議書に書く基本的内容
一般的には、次の事項を記載します。
- タイトル
- 被相続人の表示
- 相続人の表示
- 相続人全員の合意
- 遺産分割の内容(財産の特定・その財産を取得する相続人の特定など)
- 遺産分割協議の日付
- 遺産分割協議書に記載のない財産について
- 複数ページある場合は契印
- 相続人全員の署名・実印による押印
①タイトル
「遺産分割協議書」と記載します。
②被相続人の表示
誰が財産を残したのか分かるよう、以下のような被相続人の情報を記載しましょう。誰についての遺産分割協議書なのかを特定するために重要なので、戸籍謄本等を確認しながら間違いのないよう書いていきます。
- 被相続人の氏名
- 被相続人の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 被相続人の生年月日
- 被相続人の死亡年月日
③相続人の表示
相続人を明らかにするために、相続人の氏名を明記しましょう。
④相続人全員の合意
被相続人の遺産について、相続人全員で協議を行い、その結果として分割協議を決定した旨を記載しましょう。一般的に、上記の相続人の表示とあわせて、次のように書くことが多いです。
⑤遺産分割の内容
誰がどの財産を取得するのか、相続人や財産の内容を明確に特定して記載しましょう。
相続財産に不動産や預貯金が含まれる場合、通常、その後に法務局での相続登記手続きや、銀行での預貯金の相続手続きが控えていますので、これらの手続きが問題なく行えるように正確な記載がなされているか、十分に注意する必要があります。
⑥遺産分割協議の日付
遺産分割協議書の最後には、遺産分割協議が成立した日付を必ず記載しましょう。
⑦遺産分割協議書に記載のない財産
遺産分割が終わった後に新たに財産が見つかった場合に、その財産についてどのように遺産分割をするのか、あらかじめ記載しておきましょう。
⑧複数ページある場合は契印
相続財産や相続人が多く、遺産分割協議書が複数ページに及ぶこともあります。
そうした場合には、ページの間に相続人全員の実印(署名押印で使ったものと同じ実印)で契印をしておきましょう。
契印があることによって、ページの繋がりが正しいもので、遺産分割協議書が改ざんされていないことを証明するのに役立ちます。
契印についての詳細は、こちらの関連記事をご覧ください。
⑨相続人全員の署名・実印による押印
相続人全員の住所記入し、署名・実印で押印した上で、相続人全員の印鑑証明書を添付します。
署名は自筆が望ましいとされていますが、パソコンで書く(記名)ことも可能です。ですが、後のトラブルを防止するためにも、自筆で署名するようにしましょう。
押印に関しても「押印は実印で」という決まり自体はありません。そのため、認印で押印することそのものは「可能」ですし、認印で押したからといって遺産分割協議書が無効になるわけではありません。
ですが、不動産の相続登記や、預貯金口座の解約・払い戻しなどの手続きを行う際には、相続人全員の実印が押印された遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑証明書をあわせて提出することが求められることが一般的です。
そのため、認印で押印していた場合、あらためて実印で押印する必要性が出てきます。
また、「本人が押した」という事実の証明において、認印は実印よりも証明力が弱いです。
後々の相続手続きをスムーズに進めるためにも、実印で押印していただくことをお勧めいたします。
(2)遺産分割協議書の具体的な書き方
それでは、特に重要な項目について、具体的な書き方を見ていきましょう。
①不動産についての書き方
遺産分割協議書に不動産を記載する場合、その相続人がどの不動産について取得するのかを明確にさせなければなりません。そのため、登記事項証明書に記載されている通りに記載することが、非常に重要です。
基本的には、土地や建物について以下の情報を記載します。
不動産(土地)
- 所在
- 地番
- 地目
- 地積
不動産(建物)
- 所在地
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 床面積
マンション(区分建物)
(一棟の建物の表示)
- 所在
- 建物の名称
(専有部分の建物の表示)
- 家屋番号
- 建物の名称
- 種類
- 構造
- 床面積
(敷地権の表示)
- 土地の符号
- 所在及び地番
- 地目
- 地積
- 敷地権の種類
- 敷地権の割合
不動産全部事項証明書の「表題部」をそのまま書き写せば、基本的に問題ありません。
なお、相続人の一人が不動産のすべてを相続する場合には、「被相続人所有の不動産全部は●●が相続する」といった書き方でも構いません。
共有名義の不動産について書く場合には、上記の不動産の表示に加え、持分割合を記載しましょう。
遺産分割協議書を作成する前に、あらかじめ手続きを予定している各機関へ記載方法を確認しておくのもお勧めです。
②現金・預貯金についての書き方
現金について記載する場合、誰がいくら相続するのかを明確に書く必要があります。「相続人●●は、現金5,000万円を相続する。」や「相続人●●及び△△は、それぞれ現金2,000万円を相続する。」などと書くのが一般的です。
なお、現金に米ドルなどの外貨が含まれている場合は、通貨の種類と金額によって特定して記載します。
また、為替相場の変動による価値の変動について、後のトラブルを避けるため、為替変動による精算を行わない旨を明記するかを検討しましょう。
(1)●● 1万米ドル
(2)△△ 5,000米ドル
2.●●及び△△は、前項の米ドルについて、為替変動による精算を行わない。
預貯金を書く場合には、どの口座の預貯金についてなのかを具体的に特定しなければなりません。残高を記載する必要はありませんが、同じ金融機関に複数の口座がある場合も、必ず別々に記載しましょう。
- 金融機関名
- 支店名
- 口座の種類(普通預金、定期預金など)
- 口座番号
- 口座名義
なお、預貯金がゆうちょ銀行の場合は、支店名や口座番号ではなく「記号と番号」を記載する形で大丈夫です。
③相続放棄についての書き方
相続放棄をした人については、初めから相続人でなかったものとみなされます。
そのため、相続放棄した人が遺産分割協議に参加する必要はなく、遺産分割協議書にも「相続放棄をした」と書く必要はありません。当然、遺産分割協議書に署名・押印する必要もありません。
④債務についての書き方
預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、マイナスの財産についても明確に書きましょう。
債権者、契約内容、債務残高について具体的に記載します。
⑤遺産分割協議書に記載のない財産についての書き方
遺産分割協議書を作成したあとに、新たな相続財産が見つかることがあります。
この場合、「相続財産の一部について遺産分割した」ということになり、遺産分割協議を無効として再度やり直す必要があるのかが問題となります。
裁判例では、「遺産の一部が後日発見された場合には、その財産について追加的に遺産分割を申立てれば足り、その存在は何ら本件遺産分割の効力に影響を及ぼすものではない。(東京高決昭和54年2月6日)」などと、最初の遺産分割を無効にしてやり直す必要まではないと考えられています。
一方で、最初に行った遺産分割協議で抜けていた財産が、相続財産全体の中で重要な財産であった場合には、錯誤があったため無効となり、遺産分割協議をやり直すことになるとも考えられています。
いずれの場合にしても、相続人間での話し合いが必要となり、手間や労力がかかってしまいます。
スムーズに進めるためには、「本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については相続人●●が取得する。」や「相続人全員が協議し、決定する。」などと記載しておくと安心です。
⑥特別代理人についての書き方
例えば、夫の遺産を妻と未成年の子供とで相続する場合、利益相反行為となってしまいます。妻という立場と、未成年の子の法定代理人という立場で遺産分割協議をすることになるためです。
こういう場合、家庭裁判所が選任した「特別代理人」が、未成年の子の代理人として遺産分割協議を行うことになります。
特別代理人を選任して遺産分割協議書を作成する場合は、特別代理人が未成年の子と連名で署名した上で、特別代理人の実印で押印し、家庭裁判所が発行する特別代理人の選任書を添付します。
相続人 静岡 花子(未成年者)
未成年静岡花子の特別代理人
静岡市駿河区××4丁目5番6号
あおい 太郎 ㊞
⑦その他の財産についての書き方
自動車を相続する場合、車検証に記載されているとおりに、「自動車登録番号」と「車台番号」を記載して特定します。
株式等の有価証券については、証券会社から送られる書類を参考に、以下の内容を記載しておきます。
- 証券の種類
- 銘柄
- 数量
- 証券会社名
- 支店名
- 口座番号
- 口座名義
なお、生命保険金や死亡退職金については記載する必要はありません。
これに関しては、そもそも「相続財産」ではないからです。
⑧代償分割についての書き方
代償分割とは、例えば不動産などを一人の相続人が取得し、その不動産の価値に相当する清算金を他の相続人に渡す方法です。
代償分割をする際は、遺産分割協議書にその旨を記載します。詳しくは、こちらの関連記事をご参考ください。
(3)手書きでもパソコンでもOK
遺産分割協議書は、遺産分割の内容や、遺産分割協議の成立が確認できれば問題ないため、形式・様式など、書き方に特に決まりはありません。
縦書き・横書きのどちらでも大丈夫ですし、パソコンで作っても、手書きで作っても、内容が正確であれば書き方は自由です。
また、遺産分割協議書の用紙サイズにも決まりはありませんので、A3でもA4でも、どのようなサイズで作成しても問題ありません。
(4)財産ごとに分けて作成してOK
遺産分割協議書は、目的に応じて、各財産ごとに分けて作成することができます。
したがって、必ずしも全ての協議内容を1通にまとめて記載する必要はありません。
例えば、不動産の分け方だけを記載した遺産分割協議書や、預貯金の分け方だけを記載した遺産分割協議書など、特定の財産ごとに遺産分割協議書を作成しても大丈夫です。
また、遺産分割協議書を作成するタイミングについても特に決まりはありませんので、遺産分割協議がまとまった財産についてのみ、その都度遺産分割協議書を作成しても構いません。
ですが、現実的には話し合いを何度もするのは難しいことも多いので、全ての遺産についてなるべく同時に分割手続きを進めるのがスムーズでしょう。
なお、遺産分割協議書については、こちらの関連記事でひな形をご紹介しております。より具体的なイメージを掴んでいただけるかと思いますので、ぜひ本記事とあわせてご覧ください。
遺産分割協議書の作り方の流れ
遺産分割協議書に書く内容や書き方について把握できたところで、作成までの全体的な流れについても見ておきましょう。
- 相続開始(被相続人の死亡)
- 相続人の確定・相続財産の調査
- 遺産分割協議の実施
- 遺産分割協議書の作成
①相続開始(被相続人の死亡)
相続開始日は、被相続人の死亡日となります。この日から、遺産分割協議を始めることになります。
②相続人の確定・遺産の調査
まず、遺産分割協議に参加する必要のある相続人を確認する必要があります。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等をもとに、相続人が誰かを特定していきます。
あわせて、相続財産の調査を行い、相続財産の範囲を確定させます。
③遺産分割協議の実施
被相続人が遺言書で遺産分割について指定している場合は、その内容に従って遺産分割を行います。
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。遺産分割協議では、誰がどの遺産をどれくらい相続するか、預貯金や不動産を分割する場合はどのように分割するのかについて、相続人同士で話し合います。
相続人のうち、誰か一人でも遺産分割協議に合意しなければ、遺産分割協議は成立しません。
④遺産分割協議書の作成
遺産分割協議が成立したら、合意した内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成します。
遺産分割協議書の注意点
それでは最後に、遺産分割協議書の作成にあたっての注意点について、整理しておきましょう。
- 相続人の人数分作成する
- 兄弟・配偶者の続柄もしっかり書く
- 作り直すことは原則できない
- 早めに作成する
- 法律に決められた配分で相続する場合は?
(1)相続人の人数分作成する
遺産分割協議書の作成通数に法律上の決まりはありませんが、相続人の人数分の遺産分割協議書を作成し、各相続人が1通ずつ保管するのが一般的です。
遺産相続の内容によっては、相続手続きなどで遺産分割協議書を提出する必要がないため、「自分が保管しておくだけなのでコピーで十分」といった場合もあるかと思います。
相続人が保管しておくだけであれば、コピーで問題ないでしょう。
ですが、相続手続きでは、遺産分割協議書の原本の提出が求められることが通常です。
遺産分割協議書の原本を1通だけ作成するというようなケースもありますが、相続人や相続財産が複数あり、手続きが一度や二度で済まない場合に、1通の原本を使い回すのは非効率といえます。
そのため、遺産分割協議書は原則として人数分の原本を作成し、全員が各自1通ずつ保管しておくことをお勧めいたします。
(2)兄弟・配偶者の続柄もしっかり書く
遺産分割協議書を作成するにあたっては、「誰が相続するのか」が重要です。
「妻 あおい花子」、「長男 あおい一郎」、「二女 あおい静子」といったように、氏名だけでなく続柄も明記しましょう。
(3)作り直しは原則できない
遺産分割協議が一度成立した場合、原則として、もう一度遺産分割協議をやり直すことができません。
遺産分割協議書の作成後に遺産分割協議で取り決めた内容を変更したい場合には、相続人全員の合意が必要となります。
(4)早めに作成する
遺産分割協議書の作成について法律上の期限はありませんが、相続登記や相続税申告などの相続手続きには、以下のような期限があります。
- 不動産の名義変更(相続登記):相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内(不動産登記法第76条の2)
- 相続税申告:被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内(相続税法27条1項)
また、相続放棄を行う場合は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所への「相続放棄の申述」が必要です。
このように、相続手続きにはさまざまな期限があるため、相続開始がわかった時点で早めに遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成しましょう。
(5)法律に決められた配分で相続する場合は?
法定相続分の割合で遺産を分け合うような場合、遺産分割協議書を作る必要がないこともあります。
法定相続分とは、相続人それぞれが相続する割合のことをいい、配偶者や子は各2分の1などと、民法に定められている割合です(民法第900条)。
法定相続分の割合で遺産を分け合う場合は、すでに法律で定められた相続割合に従って遺産が分配されるため、相続人間で別途の協議や合意が不要となります。ですので、遺産分割協議書も作成する必要がなくなるのです。
ですが、法定相続分で遺産を分割する場合に、遺産分割協議書を作ってはいけないという法律の決まりはありません。後々のトラブルを防止するためにも、遺産分割協議書を作っておく方が望ましいでしょう。
遺産分割協議書に関するQA
Q1.遺産分割協議書とは何ですか?
A:遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容を取りまとめた書類です。
相続人全員の合意により遺産分割協議が成立したら、その内容を取りまとめた「遺産分割協議書」を作成します。
Q2.後から新しい財産が見つかった場合、遺産分割協議書は無効になりますか?
A:すでに作成された遺産分割協議書がある状態で、新たな相続財産が見つかった場合でも、遺産分割協議書自体が無効になるかはケースバイケースです。新たに見つかった財産が、相続財産全体の中でも重要な財産である場合は、遺産分割協議書が無効になる可能性があります。
なお、遺産分割協議書が有効な場合でも、新たに見つかった財産については、別途相続人全員で話し合う必要があります。
Q3.遺産分割協議書の書き方や作成方法に決まりはありますか?
A:遺産分割協議書は、遺産分割の内容や、遺産分割協議の成立が確認できれば問題ないため、形式・様式など、書き方に特に決まりはありません。
縦書きでも、横書きでも、パソコンでも、手書きでも、書き方は自由です。
また、遺産分割協議書の用紙サイズも決まりはないため、A3で作ってもA4で作っても問題ありません。
まとめ
この記事では、遺産分割協議書の書き方を中心に、遺産分割協議書の基本的事項について、弁護士が詳しく解説させていただきました。
遺産分割協議書は、相続財産をどのように分配するかについて相続人全員が合意した内容を正式に記載した書類であり、相続手続きを円滑に進めるために極めて重要な役割を果たします。法的な作成義務はありませんが、不動産の名義変更や預貯金の引き出しなど、多くの相続手続きにおいて必要とされています。
遺産分割協議書なければ、こうした相続手続きが複雑化する可能性があります。
また、相続税の申告時にも遺産分割協議書があれば、適切な税務処理ができるだけでなく、相続税の特例が適用される場合もあります。
さらに、相続人間での合意内容が明確に記録されるため、後々のトラブルを防ぐ効果もあり、相続争いが発生した場合に重要な証拠ともなるのです。
相続手続きを円滑に進め、相続人間の紛争を未然に防ぐためにも、遺産分割協議書を作成しておくようにしましょう。
遺産分割協議書の書き方や様式に決まりはありませんが、法務局での相続登記手続きや、銀行での預貯金の相続手続きにおいて、問題なく使用できるように注意して作成する必要があります。
法律的に有効で適切な遺産分割協議書を相続人だけで作成するのは難しいという場合は、法律の専門家である弁護士にご相談いただければと思います。
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この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。








