遺産分割協議書とは?作成方法や書き方について解説!

遺産分割

更新日 2024.10.04

投稿日 2024.01.06

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産をどのように分けるのかについて話し合い、合意した内容を記載した書面のことをいいます。

ですが、日常生活では耳慣れない言葉ですので、「そもそも遺産分割協議書って何?」「遺産分割協議書が必ず必要なの?」「作成方法や書き方が分からない!」とお悩みの方も、少なくはないかと存じます。

そこで本記事では、遺産分割協議書の意味や、作成方法、書き方などについて、注意点を交えながら弁護士が解説させていただきます。

遺産分割協議書を理解するのに、この記事が少しでもご参考になりましたら幸いです。

目次

まずは「遺産分割協議」について知っておこう

「遺産分割協議」とは│遺産の分け方を話し合う手続き

 

遺産分割協議は必要か

 

「遺産分割協議書」について解説する前に、まずは「遺産分割協議」について解説します。
「遺産分割協議」とは、被相続人(亡くなった方)が亡くなった時点で所有していた遺産について、どの相続人が、どの遺産を相続するかについて、相続人全員で話し合うことをいいます。

被相続人が亡くなったときに相続人が複数いる場合、民法第898条1項の「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」という定めにより、被相続人の遺産は相続人全員で共有することになります。
このような共有状態となっている遺産について、各相続人でどのように分け合うかを話し合うのが、「遺産分割協議」です。

遺産分割協議の方法に決まりはない

「遺産分割協議」と聞くと、堅苦しい会議のような印象を受けますが、全くそんなことはありません。遺産分割協議をどのように進めるかについて、法律上に特段の決まりはないので、カフェで話し合いをしても良いですし、電話やメールなどで連絡を取り合っても、テレビ電話で話し合っても問題はありません。

遺産分割協議は相続人全員で参加する必要あり

ただし、遺産分割協議の方法に決まりはありませんが、遺産分割協議は相続人全員が参加することが必要です。

遺産分割協議は、多数決ではなく、相続人全員の合意によって成立するため、1人でも遺産分割協議に参加していなければ合意が成立しません。

遺産分割協議が成立すると、通常、協議の結果をまとめた「遺産分割協議書」を作成します。

遺産分割協議書とは?│不動産の相続登記・銀行の相続手続き等で必要!

遺産分割協議書とは│遺産分割協議の内容をまとめた書類

さて、相続人全員の合意により遺産分割協議が成立したら、「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容を取りまとめた書類です。

遺産分割協議書を作成する意味│法律上の作成義務はありません

遺産分割協議書の作成は、法律上義務付けられているものではありません。遺産分割協議は、相続人の合意のみで成立するものであって、遺産分割協議書の作成までは必要とされていないのです。

ですが、法律上の義務ではなくとも、将来的なトラブルを回避し、相続人の間での権利と義務を明確にするために、遺産分割協議書は必ず作成しておくことをお勧めいたします。

例えば、本記事でも後述いたしますが、不動産の相続登記や、銀行口座の解約・名義変更などには、相続人全員が合意した内容を証明する書類が求められます。口頭の合意だけでは第三者に伝えることはできませんが、遺産分割協議書があれば、これらの手続きをスムーズに進めることが可能です。

そして、口頭での合意のみだと、後から記憶の相違や解釈の違い、議論の蒸し返しなどが生じる恐れがあります。遺産分割協議書を作成し、全員が署名・押印することで、各相続人がどの財産を受け取るかが明確になり、トラブルを防ぐことができます。また、トラブルが生じた場合でも、協議書が証拠となり、裁判などにおいて有効な資料となるのです。

一度成立した遺産分割協議についてのトラブルを防止するために、遺産分割協議書は作成しておきましょう。

法定相続分で分ける場合│遺産分割協議書は必要なし?

法定相続分の割合で遺産を分け合うような場合、遺産分割協議書を作る必要がないこともあります。
法定相続分とは、相続人それぞれが相続する割合のことをいい、民法に次の通り定められています。

(法定相続分)
第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

法定相続分の割合で遺産を分け合う場合、遺産分割協議書を作成する必要がないこともあるのは、すでに法律で定められた相続割合に従って遺産が分配されるため、相続人間で別途の協議や合意が不要となるからです。そのため、全ての相続人が法定相続分通りに遺産を受け取ることに合意している場合、遺産分割協議書を作成して相続人間での調整を行う必要がない場合があります。

ただし、法定相続分で遺産を分割するからといって、遺産分割協議書を作ってはいけない法律はありませんので、任意で遺産分割協議書を作ることに問題はありません。後々のトラブルを防止するためにも、やはり作っておく方が望ましいでしょう。

遺産分割協議書は何に使う?│相続手続き等で必要になる!

遺産分割協議書は、有効な遺言書がなく、法定相続分とは異なる分割を行う場合や、相続手続きなどで必要となります。
全員が絶対に作成すべきものではありませんが、次のような場面で活用することができます。

  1. 法務局での不動産の名義変更(相続登記)手続き
  2. 銀行での預貯金の相続手続き
  3. 自動車の名義変更手続き
  4. 相続税の申告手続き
  5. トラブルの予防

1.法務局での不動産の名義変更(相続登記)手続き

不動産を相続する場合、法務局で、不動産の名義変更(相続登記)の手続きを行う必要があります。
遺言書がない場合や、法定相続分通りに相続しない場合には、相続人が不動産をどのように分割するのか遺産分割協議を行い、相続登記を行わなければなりません。

このような相続登記の手続きの際に、法務局に対し、遺産分割協議の内容を証明する書面として、遺産分割協議書が必要となります。遺産分割協議書があれば、相続人全員がその内容に合意したことを証明することができ、登記手続きがスムーズに進みます。

遺産分割協議書は、円滑かつ確実に不動産の名義変更を行うための重要な書類となるのです。

2.銀行での預貯金の相続手続き

相続した預金を引き出す場合、銀行口座の名義変更の手続きを行う必要があります。
このような銀行での相続手続きの際に、遺産分割協議の内容を証明する書面として、遺産分割協議書が必要となることがあります。

通常、多くの銀行では、銀行の所定の書類に相続人全員が署名捺印をすることにより、遺産分割協議書がなくても払い戻し手続きを行うことができるようになっています。ですが、相続人の数が多かったり、遠方に住んでいたりすると、相続人全員の署名押印を短期間に集めることはなかなか難しいです。

そこで遺産分割協議書があれば、誰がどれだけの預貯金を相続するかが明確になっているため、銀行側も迅速に手続きを進めることが可能となります。遺産分割協議書を作成しておいた方が、手間を省き、スムーズに手続きを行うことができるでしょう。

また、払い戻された預貯金をどのように分け合うのか、といった点についても話し合う必要がありますので、先に遺産分割協議書を作っておくことをお勧めいたします。

3.自動車の名義変更手続き

車を相続した場合は、車の名義変更の手続きを行う必要があります。

被相続人が所有していた普通自動車の査定額が100万円を超える場合、その自動車の名義変更手続きには遺産分割協議書が必要となることがあります。この背景には、自動車が相続財産の一部として重要な資産とみなされることが関係しています。

自動車の名義変更手続きでは、相続人が複数いる場合、誰がその自動車を相続するのかを相続人全員の合意によって決定しなければなりません。特に、査定額が100万円を超えるような価値の高い自動車では、相続人間での取り決めが重要となり、どの相続人が取得するかについての明確な合意が求められるためです。

なお、査定額が100万円以下の普通自動車の場合は、名義変更手続きが簡略化されるため、遺産分割協議書は必須ではありません。

4.相続税の申告手続き

相続税を申告する際には、相続財産がどのように分配されたかを税務署に報告する必要があります。

相続税の申告においては、法定相続分以外の割合で相続する場合や、相続税を軽減するための特例などを活用する場合に、遺産分割協議書があれば、誰がどの財産を取得したかが明確になるため、正確な申告が可能となります。遺産分割協議書がない場合、法定相続分での申告が基本となり、相続税の控除や特例が適用できない場合があります。

このため、遺産分割協議書を作成しておくことで、適切な税務申告ができるだけでなく、税制上の優遇措置を受けることも可能になるのです。

5.トラブルの予防

遺産分割協議書を作成することで、相続人間での財産分配に関する合意が書面で明確に残り、将来的なトラブルを防止することができます。口頭での合意のみでは、後に相続人間で意見の食い違いが生じる可能性が高くなりますが、協議書によりその内容が証拠として残るため、紛争の発生を未然に防ぐことができます。相続手続きが円滑に進むだけでなく、相続人間の信頼関係を保つ上でも、遺産分割協議書の作成は非常に有効です。

遺産分割協議書を作成しておけば、誰がどの遺産を取得したのか、証明することができます。

遺産分割協議書の作成方法│流れや注意点は?

遺産分割協議書を作成するまでの流れ

遺産分割協議書を作成するために、まずは遺産分割協議書を作成するまでの流れを理解しておきましょう。

遺産分割協議書の作成は、一般的に次のような流れで進められます。

遺産分割協議書の作成までの流れ

  1. 相続開始(被相続人の死亡)
  2. 相続人の確定・相続財産の調査
  3. 遺産分割協議の実施
  4. 遺産分割協議書の作成

1.相続開始(被相続人の死亡)

相続開始日は、被相続人の死亡日となります。この日から、遺産分割協議を始めることになります。

2.相続人の確定・遺産の調査

まず、遺産分割協議に参加する必要のある相続人を確認する必要があります。
また、相続財産の調査を行い、相続財産の範囲を確定させなければなりません。

3.遺産分割協議の実施

被相続人が遺言書で遺産分割について指定している場合は、その内容に従って遺産分割を行います。遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。遺産分割協議では、誰がどの遺産をどれくらい相続するか、預貯金や不動産を分割する場合はどのように分割するのかについて、相続人同士で話し合います。

相続人のうち、誰か一人でも遺産分割協議に合意しなければ、遺産分割協議は成立しません。

4.遺産分割協議書の作成

遺産分割協議が成立したら、合意した内容を証明するための「遺産分割協議書」を作成します。

遺産分割協議書の作成時の注意点やポイント

それではここで、遺産分割協議書の作成にあたっての注意点やポイントについて、整理しておきましょう。

注意点①│作成をやり直すことは原則できない
注意点②│相続人の人数分作成する
注意点③│何通かに分けて作成してもよい
注意点④│早めに作成する

注意点①│作成をやり直すことは原則できない

遺産分割協議が一度成立した場合、原則として、もう一度遺産分割協議をやり直すことができません。
遺産分割協議書の作成後に遺産分割協議で取り決めた内容を変更したい場合には、相続人全員の合意が必要となります。

遺産分割協議書の内容変更は、非常に手間のかかる作業であり、トラブルに発展しやすいため、やり直すことがないよう、相続人同士で慎重に話し合ったうえで、作成しましょう。

注意点②│相続人の人数分作成する

遺産分割協議書の作成通数に法律上の決まりはありませんが、相続人の人数分の遺産分割協議書を作成し、各相続人が1通ずつ保管するのが一般的です。

遺産分割協議書の原本を1通だけ作成するというようなケースもありますが、前述したような相続手続きの際に遺産分割協議書が必要になるため、1通のみを使い回すのは非効率といえます。

したがって、遺産分割協議書は、相続人の人数分作成しておくことをお勧めいたします。

注意点③│何通かに分けて作成してもよい

遺産分割協議書は、目的に応じて、各財産ごとに分けて作成することができます。
したがって、必ずしも全ての協議内容を1通にまとめて記載する必要はありません。

例えば、不動産の分け方だけを記載した遺産分割協議書や、預貯金の分け方だけを記載した遺産分割協議書など、特定の財産ごとに遺産分割協議書を作成しても問題ありません。

また、遺産分割協議書を作成するタイミングについても特に決まりはありませんので、遺産分割協議がまとまった財産についてのみ、その都度遺産分割協議書を作成しても構いません。

ですが、原則としては、全ての遺産についてなるべく同時に分割手続きを進めるのがスムーズでしょう。

注意点④│早めに作成する

遺産分割協議書の作成について法律上の期限はありませんが、相続登記や相続税申告などの相続手続きには、以下のような期限があります。

  • 不動産の名義変更(相続登記):相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内(不動産登記法第76条の2)
  • 相続税申告:被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内(相続税法27条1項)

また、相続放棄を行う場合は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所への「相続放棄の申述」が必要です。

このように、相続手続きにはさまざまな期限があるため、相続開始がわかった時点で早めに遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成しましょう。

遺産分割協議書の書き方│手書きでもいい?

遺産分割協議書の書き方に決まりなし│手書きもOK!

遺産分割協議書は、遺産分割の内容や、遺産分割協議の成立が確認できれば問題ないため、形式・様式など、書き方に特に決まりはありません。
縦書き・横書きのどちらでも大丈夫ですし、パソコンで作っても、手書きで作っても、内容が正確であれば書き方は自由です。

また、遺産分割協議書の用紙サイズにも決まりはありませんので、A3でもA4でも、どのようなサイズで作成しても問題ありません。

遺産分割協議書の書き方│ひな形でイメージをつかもう

遺産分割協議書の書き方をイメージいただくために、一般的なひな形をご紹介します。
このひな形では、一つの例として、相続人3名をそれぞれA、B、Cとし、Aが不動産(土地、建物)を相続し、Bが預貯金、Cが株式を相続するケースを想定しています。

ただし、ひな形はあくまでも一例に過ぎず、そのまま使用することはお勧めできません。
遺産分割協議書のひな形がご自身のケースに当てはまるかどうかは、専門家ではなければ判断が難しいため、ひな形は書き方の参考程度にとどめて、弁護士などの専門家に相談していただくことをお勧めいたします。

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遺産分割協議書(ひな形)

被 相 続 人  ○○○○
本    籍  ○○○県○○○市○○○町○丁目○番
最後の住所   ○○○県○○○市○○○町○丁目○番○号
生年月日 昭和○年○○月○○日
死亡年月日   令和○年○○月○○日

被相続人○○○○の遺産につき相続人全員で協議を行った結果、次の通り分割することに同意した。

1.相続人Aは、次の遺産を取得する。

【土地】

所   在  ○○県○○市○○○丁目
地   番  ○○番○○
地   目  宅地
地   積  ○○○.○○平方メートル

【建物】

所   在  ○○県○○市○○○丁目○○番地○
家屋番号   ○○番○
種   類  居宅
構   造  木造瓦葺2階建
床 面 積  1階  ○○.○○平方メートル
2階  ○○.○○平方メートル

2.相続人Bは、次の遺産を取得する。

【預貯金】
○○銀行○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○
○○銀行○支店 定期預金 口座番号○○○○○○○

3.相続人Cは、次の遺産を取得する。

【株式】
○○○○株式会社 普通株式  ○○○株

4.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人間においてその分割につき別途協議する。

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を3通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。

令和○年○○月○○日

【相続人Aの署名押印】
住所 ○○県○○市○丁目○番○号
氏名           実印

【相続人Bの署名押印】
住所 ○○県○○市○丁目○番○号
氏名           実印

【相続人Cの署名押印】
住所 ○○県○○市○丁目○番○号
氏名           実印
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遺産分割協議書のひな形の詳細やダウンロードについては、下記の記事を参考になさってください。

遺産分割協議書に記載すべき内容

遺産分割協議書の書き方に決まりはありませんが、一般的には、次の事項を記載します。

  1. 被相続人の表示(氏名・本籍・死亡年月日)
  2. 相続人の表示(氏名)
  3. 相続人全員の合意により遺産分割協議が成立した旨
  4. 遺産分割の内容(財産の特定・その財産を取得する相続人の特定など)
  5. 遺産分割協議の日付
  6. 相続人全員の住所・署名・実印による押印

1.被相続人の表示(氏名・生年月日・逝去日・最後の住所・本籍地)

誰が財産を残したのか分かるよう、被相続人の氏名、生年月日、逝去日、最後の住所、本籍地などの情報を記載しましょう。

2.相続人の表示(氏名)

相続人を明らかにするために、相続人の氏名を明記しましょう。

3.相続人全員の合意により遺産分割協議が成立した旨

被相続人の遺産について、相続人全員で協議を行い、その結果として分割協議を決定した旨を記載しましょう。

4.遺産分割の内容(財産の特定・その財産を取得する相続人の特定など)

誰がどの財産を取得するのか、相続人や財産の内容を明確に特定しましょう。
財産の特定とは、具体的には次のようなものが挙げられます。

不動産(土地)

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積

不動産(建物)

  • 所在地
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

預貯金

  • 預貯金
  • 金融機関名
  • 支店名
  • 種類
  • 口座番号

相続財産に不動産や預貯金が含まれる場合、通常、その後に法務局での相続登記手続きや、銀行での預貯金の相続手続きが控えていますので、これらの手続きが問題なく行えるように正確な記載がなされているか、十分に留意する必要があります。

不動産の表示は、登記事項証明書(登記簿謄本)のとおりに記載すべきです。
遺産分割協議書を作成する前に、あらかじめ手続きを予定している各機関へ記載方法を確認しておくのもよいでしょう。

5.遺産分割協議の日付

遺産分割協議書の最後には、遺産分割協議が成立した日付を必ず記載しましょう。

6.相続人全員の住所・署名・実印による押印

遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印で押印した上で、相続人全員の印鑑証明書を添付しましょう。

「押印は実印で」という決まりこそありませんが、不動産の相続登記や、預貯金口座の解約・払い戻しなどの手続きを行う際に、法務局や金融機関では、相続人全員の実印が押印された遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑証明書をあわせて提出することが求められることが一般的です。

認印で押印した場合であっても、遺産分割協議書自体の効力が失われることはありませんが、後々の相続手続きをスムーズに進めるためにも、実印で押印していただくことをお勧めいたします。

認印を使用してしまうと、このような相続手続きが滞ってしまうおそれが非常に高いといえるので、必ず実印で押印しましょう。

遺産分割協議書に関するQA

Q.遺産分割協議書とは何ですか?

遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容を取りまとめた書類です。
相続人全員の合意により遺産分割協議が成立したら、その内容を取りまとめた「遺産分割協議書」を作成します。

Q.遺産分割協議書は何に使いますか?

遺産分割協議書は、有効な遺言書がなく、法定相続分とは異なる分割を行う場合や、実際に銀行などで相続手続きを進める場合において必要となります。
全員が絶対に作成すべきものではありませんが、次のような場面で便利に活用することができます。

  1. 法務局での不動産の名義変更(相続登記)手続き
  2. 銀行での預貯金の相続手続き
  3. 自動車の名義変更手続き
  4. 相続税の申告手続き
  5. トラブルの予防

Q.遺産分割協議書の書き方や作成方法に決まりはありますか?

遺産分割協議書は、遺産分割の内容や、遺産分割協議の成立が確認できれば問題ないため、形式・様式など、書き方に特に決まりはありません。
縦書きでも、横書きでも、パソコンでも、手書きでも、書き方は自由です。

また、遺産分割協議書の用紙サイズも決まりはないため、A3で作ってもA4で作っても問題ありません。

まとめ

さて、この記事では、遺産分割協議書の作成方法や書き方について、弁護士が解説させていただきました。

遺産分割協議書は、相続財産をどのように分配するかについて相続人全員が合意した内容を正式に記載した書類であり、相続手続きを円滑に進めるために極めて重要な役割を果たします。法的な義務はないものの、不動産の名義変更や預貯金の引き出し、自動車の名義変更など、多くの相続手続きにおいて必要となる場面が多く、これがなければ手続きが複雑化する可能性があります。

また、相続税の申告時にも遺産分割協議書があれば、適切な税務処理ができるだけでなく、相続税の特例が適用される場合もあります。

さらに、相続人間での合意内容が明確に記録されるため、後々のトラブルを防ぐ効果もあり、相続手続きにおける重要な証拠となります。

そのため、相続手続きを円滑に進め、相続人間の紛争を未然に防ぐためにも、遺産分割協議書を作成しておくようにしましょう。

遺産分割協議書の書き方や様式に決まりはありませんが、法務局での相続登記手続きや、銀行での預貯金の相続手続きにおいて、問題なく使用できるように留意して作成する必要があります。

法律的に有効で適切な遺産分割協議書を相続人だけで作成するのは難しいという場合は、法律の専門家である弁護士にご相談いただければと思います。

遺産分割協議書の作成方法や書き方でお悩みの方は、相続に強い弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。