換価分割|換価分割とは?その場合の譲渡所得税や遺産分割協議書の書き方も解説

遺産分割

更新日 2026.03.04

投稿日 2024.04.10

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

被相続人の相続財産に土地や建物、株式などがあるときに、どのように相続人間で遺産分割するのかは、遺産分割協議においても大きな争点となります。

その際に便利な遺産分割方法の一つが、「換価分割」です。換価分割とは、不動産などの相続財産を売却し、それによって得た金銭を相続人間で分配する方法です。物理的に分割しにくい相続財産でも、金銭になることで分配が容易になり、スムーズに遺産相続を進めていくことができます。

ですが、換価分割する際には相続登記の手続きや、税金に関する手続きなども関係してくるため、事前にそのメリット・デメリットをしっかり把握しておく必要があります。

そこでこの記事では、遺産分割方法の一つである「換価分割」について、弁護士がわかりやすく解説させていただきます。制度の概要や、換価分割のメリットとデメリット、相続税や譲渡所得税などの関連する税金の問題について、詳しくご説明いたします。あわせて、換価分割する場合の遺産分割協議書の正しい書き方についても、わかりやすく解説いたします。

換価分割を検討中の方にとって、本記事が少しでもご参考となりましたら幸いです。

目次

換価分割

1.換価分割とは

1-1.不動産売却で得た利益を分割する方法

換価分割(かんかぶんかつ)とは、遺産相続が発生した際に、遺産をどのように分けるか決める方法の一つです。具体的には、遺産や共有物などの財産を売却して金銭に換え、その代金を相続人間で分配します。

相続財産には、現金や株式のように分配が容易なものから、不動産のように分割が困難なものもあります。特に分割が難しい不動産などの財産を売却し、その売却代金を相続人間で分け合うことで、公平に遺産分割をできるのです。

例えば、相続財産として市場価値5,000万円の住宅(不動産)と、預貯金3,000万円がある場合を考えてみましょう。これらの相続財産を2人で遺産分割する場合、著貯金3,000万円は1,500万円ずつ分けることができますが、住宅を物理的に遺産分割することはできません。共有財産として所有するか、どちらかが住宅を一人で相続するかが現実的な分配方法でしょう。

ですが、不動産をそのまま残して相続するのではなく、換価分割で金銭に換えてしまうことで、不動産についてもきっちり分け合うことが可能となるのです。

換価分割とは

例えば上の場合は、不動産を市場価格5,000万円で売却すれば、得られた売却代金5,000万円を2人で分配することになります。預貯金も不動産も、単純に2人で2分の1ずつ分け合うということであれば、「(5,000万円+3,000万円)÷2人=4,000万円」が1人あたりの取得分となるのです。

1-2.不動産や株式、有価証券の遺産分割に便利

換価分割は、物理的な分割の難しい不動産で活用されることが多いですが、それ以外にも株式や有価証券の遺産分割においても使われています。被相続人が保有していた株式や有価証券を受け継ぎたい相続人はいないが、その経済的利益は公平に分配したいといったような場合に、換価分割が活用されます。

2.換価分割と代償分割の違い

ところで、遺産の分割方法の中に、換価分割と混同されやすい「代償分割」というものがあります。両者の違いを簡単に確認しておきましょう。

代償分割とは、一部の相続人が不動産などの相続財産を取得する代わりに、他の共同相続人に対して、その価値に相当する代償金を支払う方法です。

換価分割との大きな違いは、不動産などの相続財産が、「そのまま残った状態で特定の人に相続されること」です。換価分割は相続財産を売却して現金化してしまうため、相続人の手元に相続財産そのものは残りません。一方、代償分割の場合は、相続人全員がその財産そのものを得るわけではないものの、特定の人が引き継ぐことになります。

2-1.換価分割をおすすめするケース

換価分割が向いている主なケースとしては、不動産が相続財産の大部分を占めている場合が挙げられます。

不動産を他の共同相続人と共有で相続したくないが、経済的利益は得たい。不動産については手元に残らなくても構わない、といったケースでは換価分割が適しています。不動産を売却して現金化することで公平に分割できますし、得た金銭は相続税の納税に充てることもできるでしょう。

2-2.換価分割をおすすめしないケース

一方で、特定の財産に対する思い入れが強く、絶対に売却したくない場合は、換価分割はおすすめできません。親の家に相続人のうち1人がそのまま住み続けたい場合などにも、不動産を残したまま遺産相続を進めることになるでしょう。こうした場合は、代償分割がおすすめです。

また、被相続人の事業を特定の相続人が承継する場合も、事業用の不動産や資産を失うことなく、他の相続人にも公平な遺産分割が可能となる代償分割によって遺産相続すべきです。

このように、換価分割では、財産を「換価」、つまり現金化することがポイントとなります。金銭による分配はその内容も明確でわかりやすいため、相続人間の争いを回避するという点でも有効な方法です。

3.換価分割のメリット

このような換価分割ですが、主に次のようなメリットがあります。

3-1.公平な遺産分割ができるためトラブルを予防できる

換価分割の最大のメリットは、相続財産を現金化し、その収益を相続人間で均等に分配することで、公平な遺産分割を実現できる点にあります。

価値が大きく変動する可能性がある不動産や株式などの財産は、その評価額を正確に評価することは難しいです。そのため、例えば代償分割するときに代償金の金額は正しいのかと、相続人間のトラブルの原因となることが少なくありません。評価額が低ければ代償金を支払う側の負担が軽くなり、評価額が高くなれば代償金をもらう側の取得分が増えるためです。

ですが、換価分割であれば、得られた現金を全員で公平に分配することになります。相続人間で「支払う側と受け取る側」に立場が分かれることもないため、不動産の査定価格でもめてしまうリスクを減らせます。そして、財産の価値を具体的な現金に換算することができるため、各相続人が受け取るべき金額が明瞭になり、全員が納得しやすい遺産分割を実現できるのです。

このように換価分割は、不動産の評価方法などでもめるリスクを軽減でき、トラブルを防ぐことも期待できます。

3-2.現金が手もとに残るため納税資金を確保できる

換価分割では、相続税の支払いに、受け取った金銭を直接充てることができる、という大きなメリットもあります。

特に、高価な不動産や株式などの資産を相続する場合、高額な相続税を現金一括で納税しなければなりません。納税期限までに現金を用意できない場合は、相続税の支払いのために資産を売却するか、延納などを検討することになるでしょう。相続税の延納制度は、国税の原則である金銭による一括納付が困難な場合に、例外的に年賦での分割納付を認める制度です。しかし延納すると、その手続きに手間がかかる上に、一定のケースでは担保を提供する必要があり、利子税も発生してしまいます。

この点、換価分割をすると売却代金が手元に残るので、その金銭を相続税の支払いに充てることができます。相続税の納税のために資金不足になったり、急遽資産を売却したり、延納の手続きなどを行う必要がなくなるという、税制面でのメリットもあるのです。

4.換価分割のデメリット

一方で、換価分割には以下のデメリットもあります。

4-1.不動産や株式を手放すことになる

換価分割は対象となる財産を売却するため、不動産や株式などを手放すことになってしまいます。思い入れのある財産や、先祖から受け継いだ家や土地を手放すことにためらいや抵抗のある方もいらっしゃるかと思います。

また、不動産や株式をそのまま持っていれば、家を賃貸に出すことで定期的に収入を得たり、株や土地の価値が将来上がったタイミングで売りに出して利益を得たりすることができます。ですが換価分割をする場合、こういった機会を失うことにもなるのです。

特に、不動産や株式などの価値が将来さらに上がることが見込まれる場合、短期的にはお金が手に入るかもしれませんが、長期的に見ると大きな損失になる可能性があります。

したがって、どうしても換価分割でなければならないという事情もなく、すぐにお金が必要でない場合には、他の遺産分割方法を検討してみるべきでしょう。

4-2.期待した売却益にならないことがある

不動産や株式を、期待した金額で売却できない可能性も少なくありません。こうした時価のある財産は、売却するタイミングによってその価格も大きく変わるため、換価分割による遺産分割は市場の状況に大きく左右されるのです。

とはいえ、値上がりするまで売るのを待っている、というのも現実的ではありません。例えば、遺産相続の際に相続税を支払わなければならない場合、10か月という支払い期限が設けられています(相続税法第27条1項)。10か月以内に不動産などを売却して相続税を計算し、納税の手続きをしなければなりませんから、あまり長期間市場の動向を確認している余裕はないのです。

反対に、なかなか不動産の買い手がつかないと、価格を下げざるをえなくなってしまいます。急いで売ろうとするほど、安く売らなくてはならなくなってしまいうのです。

株式の場合も、市場価格が毎日変動し、売却するタイミングによって得られる金額が大きく変わります。遺産相続の時期と、市場が下落している時期がかぶってしまうと、期待していたよりも低い価格で売ることになってしまうかもしれません。

このように、換価分割は市場の状況による影響を受けやすく、期待した売却益を得られないリスクがあります。

4-3.売却手続きに手数料がかかる

換価分割に際して資産を売却する際には、手数料がかかってしまうこともあります。

代表的な不動産の売却でかかる手数料を挙げますと、不動産会社に支払う仲介手数料、不動産の売買契約書に貼付する印紙、不動産の正確な面積を測定する測量費用、隣接する土地との境界線を明確にする境界確定費用、相続登記手数料など、さまざまな費用が必要です。不動産会社に支払う仲介手数料は、不動産の売却価格に応じて決まるため、売却価格が高ければ高いほど、仲介手数料も高額になります。

資産を売却することで、最終的には相続人の手取り額が大幅に減ってしまう可能性もあるのです。

4-4.譲渡所得税が高額になる可能性がある

譲渡所得税は、売却によって生じる利益(譲渡益)に対して課される所得税および住民税です。換価分割では不動産などを売却するため、譲渡所得税が生じますが、特に以下のようなケースで譲渡所得税が高額になる傾向があります。

  1. 長期間所有することで地価が上昇している

    不動産は長期間にわたって所有されていることが多いため、その間に地価が高騰することによって、売却時に大きな利益が発生する可能性があります。不動産の買値と売値の差が大きいほど、譲渡益も大きくなり、結果として譲渡所得税も高額になるのです。
    例えば、数十年前に1,000万円で土地を購入したら、都市開発の影響で地価が上昇し、遺産相続時に土地の市場価格が3,000万円になっていた、といったような場合には、売却益が購入額を大きく上回るでしょう。

  2. 取得価格が証明できない

    古い不動産の場合、取得時の価格を証明する書類が失われていることがあります。こうした場合に、法律に基づき売却額の5%を不動産の取得費とみなすことができますが(租税特別措置法第31条の4)、結果的に売却価格の大部分が利益とみなされ、高額な譲渡所得税が課されることになります。
    つまり、取得価格が不明な場合、売値の95%が譲渡益とみなされ、それに応じて譲渡所得税が高額になる可能性があるわけです。

特に、長期間所有していた不動産や取得価格が不明な資産を売却する場合は、事前に弁護士などの専門家に相談することをおすすめいたします。

5.換価分割のやり方・流れ

具体的な換価分割の手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. 相続人全員で換価分割について合意したら、遺産分割協議書を作成し、換価分割によって相続する旨も明記する。
  2. 相続登記を行って、相続人名義に不動産を変更する。
  3. 不動産売却の方針を決めて、不動産会社や業者を選定し、売買契約を締結する。
  4. 受領した売買代金を相続人間で分配する。
  5. 譲渡所得税が発生する場合は譲渡所得税の申告を行う。
不動産を相続しないのに、なぜ相続登記が必要かといいますと、被相続人の名義のままでは、不動産の売却ができないためです。不動産の売却という相続財産の処分を行うためには、売却する人が不動産の所有者である必要があります。そのため、遺産分割協議で換価分割をすることに決めたら、まずは対象不動産の相続登記をしなければなりません。

なお、以上は一般的な、相続人間で話し合う場合の流れです。もし遺産分割協議で合意がまとまらない場合は、調停などの裁判所での手続きで、換価分割をすべきかどうか決めていくことになるでしょう。

6.不動産が売れない・・・売却期限はいつまで?

法律上、換価分割のために不動産を売却する期間に期限は設けられていません。遺産分割協議書を作成してから10年後に不動産を売却することも可能で、直接的なペナルティはありません。

ですが、税金に関する問題では注意が必要です。特に、単独登記で不動産を売却する場合、売却までの期間が長引くと、税務上、名義人から他の相続人への「贈与」とみなされるリスクがあります。
また、遺産分割協議書にきちんと換価分割をする旨を記載してあっても、実際に売却せずに数年経ってから売却すると「贈与」とみなされ、贈与税が課される可能性が高まります。

さらに、不動産を所有していると、固定資産税も発生します。固定資産税の通知書は代表者宛てに送られますので、代表者は一旦支払った上で、他の相続人に請求することになるでしょう。

こうした税金の支払いが原因で、新たなトラブルが生じてしまうケースも少なくありません。

不動産を長期間売らずにいることで、以上のようなデメリットやリスクがあります。そのため、換価分割をすると決まったら、なるべく早めに売却の準備を整え、適切なタイミングで不動産の売却を進めていくことが望ましいです。

換価分割は譲渡所得税がかかる

換価分割を通じて不動産やその他の資産を売却し、利益(譲渡所得)を得た際には、譲渡所得税を支払う必要があります。譲渡所得税については本記事でも少し触れましたが、売却によって得られた利益に対して計算され、その利益に対してかかる所得税や住民税などのことです。

1.譲渡所得税の納税義務者 誰が払う?

譲渡所得税の申告および納税義務者は、売却代金を受け取る相続人全員となります。代表相続人や、不動産の売主になった相続人だけが税金を申告・納税する必要があると思われがちなのですが、売却によって得た利益は共同所有者全員の間で分配されるため、利益を受け取る全ての相続人がそれぞれ譲渡所得税の申告および納税を行わなければなりません。

2.換価分割における譲渡所得税の計算

譲渡所得、つまり売却益は、不動産を売った際に得られる金額から、その不動産を購入した際にかかった費用(取得費)と、売却する際にかかった費用(譲渡費用)を差し引いたものになります。
取得費には、購入価格の他、購入時にかかった諸経費や改良費なども含まれます。譲渡費用には、売却に際して支払う仲介手数料や測量費用など、売却するために直接かかった費用が含まれます。

譲渡所得(売却益)=売却価格―(取得費+譲渡費用)

この計算式で算出した金額に対して、譲渡所得税及び住民税が計算されます。そのため、換価分割により資産を売却する際には、得られる利益だけでなく、これらの税金の負担も考慮に入れておくことが重要です。

譲渡所得税の税率は、資産の所有期間によって異なります。

譲渡所得税の税率

短期譲渡所得
所有期間が5年以下の資産を売却した場合の利益。
税率は、「所得税率30% + 住民税率9%+ 復興特別所得税率0.63%」が一般的です。

長期譲渡所得
所有期間が5年を超える資産を売却した場合の利益。
税率は、「所得税率15% + 住民税率5%+ 復興特別所得税率0.315%」 が一般的です。

たとえば、10年前に2,000万円で購入した不動産を相続し、遺産相続の際に3,000万円で売却したとします。売却時の仲介手数料などの譲渡費用が200万円だった場合、譲渡所得の計算は以下のようになります。

譲渡所得=3,000万円−(2,000万円+200万円)=800万円

この800万円の利益に対して、長期譲渡所得の税率が適用されますので、「800万円×15%=120万円」の所得税と、「800万円×5%=40万円」の住民税が、課税されることになります。

換価分割する際には、次のような特例を適切に利用することで、譲渡所得税の負担を軽減することが可能です。

  1. 取得費加算の特例

    相続した資産を相続開始後3年10か月以内に売却する場合、支払った相続税の一部を取得費に加算することができます。取得費が増えると売却益との差額(譲渡所得)が減少することになり、譲渡所得税も軽減されるため、節税効果が期待できます。
    なお、下の空き家を売ったときの特例と併用はできないので注意してください。

  2. 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

    相続により空き家となった不動産を相続後3年以内に売却する場合、一定の要件を満たせば、不動産売却時の譲渡所得から最大3,000万円を控除することができます(租税特別措置法第35条3項)。この空き家の特例は相続人1人あたりに適用されるため、不動産を複数の相続人の共同名義にした上で売却した場合は、相続人の数が増える分、節税効果はさらに大きくなります。

  3. マイホーム売却特例

    被相続人の死後、同居していた相続人がそのまま居住し続けいている家を売却した場合、譲渡所得のうち3,000万円までを控除することが可能です(租税特別措置法第35条)。つまり、不動産を売却して得た利益のうち、3,000万円分には課税されないということになります。

これらの特例を利用するには、特定の条件を満たす必要があります。特例の適用条件や手続きは複雑な場合が多いため、実際にこれらの特例を利用しようと考えている場合は、弁護士など税務の専門家に相談することをお勧めします。

3.換価分割と相続税

3-1.換価分割の売却代金に相続税は課されない

換価分割で譲渡所得税がかかる一方、不動産の売却代金自体に相続税は課されません。

相続税は、相続が発生した時点での相続財産の評価額に基づいて課税されます。つまり相続税が課されるのは、相続開始時に存在した財産の評価額に対してであり、相続後に行われる換価分割による財産の売却やその売却価格に基づいて相続税が計算されることはないのです。

したがって、換価分割による売却代金自体に対して相続税が課税されることはありません。

不動産の評価には、路線価方式や倍率方式、固定資産税の評価額などの方法が用いられます。この評価方法によって算出された評価額が相続税の課税対象となり、各相続人が分配割合に応じて支払うことになります。

3-2.換価分割するときの相続税申告書の書き方

換価分割を行う際、相続財産は原則として最初に共同相続人全員の名義で相続され、その後売却することになります。そのため、相続税申告書における「財産の明細書」の記載では、共有財産として「各相続人の取得財産の金額」を正確に記入する必要があります。

具体的には、換価分割する共有財産の相続税評価額を、換価分割によって各相続人が取得した金額の割合に基づいて按分された金額を記載します。計算式は以下のとおりです。

各相続人の取得財産の金額=換価分割する財産の相続税評価額×各相続人が取得する換価分割による売却代金/換価分割による売却代金の合計額

4.換価分割では贈与税に注意

前述のとおり、換価分割をする際には、不動産の所有者の名義変更(相続登記)をする必要があります。相続人全員の共有名義で相続登記(共同登記)することが一般的ですが、手続きを簡便にするため、代表者1人の名義で相続登記(単独登記)するケースも見られます。

このような単独登記を行った場合、税務上で贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があるという点に注意が必要です。

参考:遺産の換価分割のための相続登記と贈与税(国税庁)

そのため、贈与とみなされないように、遺産分割協議書を作成し、その旨をきちんと記載することが非常に重要です。具体的には、「換価分割を行うこと、換価分割のために一時的に代表者の名義にすること、そして売却代金が相続人間で分配される旨」を明確に記載する必要があります。換価分割をする場合の遺産分割協議書の書き方については、本記事で後述しておりますので、ぜひこのまま読み進めていただければと思います。

また、遺産分割協議後にすぐに売却せず、長期間先延ばしにしていると、「本当に不動産を売るつもりがあるのか」と税務署に疑われ、結果として贈与税が課されるリスクが高まってしまいますので、注意しましょう。

換価分割する場合の遺産分割協議書

換価分割を行う場合、まずは被相続人の名義で登記されている不動産を相続人の名義に変更し、その後新しい所有者(不動産の買い手)の名義に変更することになります。すでに亡くなっている人の名義のままでは、売却手続きができません。

そのため、最初の「被相続人の名義から相続人の名義に変更する相続登記」をどのように行うかによって、遺産分割協議書の書き方も変わってきます。以下で、相続登記の方法と遺産分割協議書の書き方を確認していきましょう。

1.換価分割する場合の遺産分割協議書の書き方は2通り

相続登記の方法としては、上述のとおり「共同登記」と「単独登記」が考えられます。「共同登記」は不動産を相続人全員が共有した状態で相続登記する方法で、「単独登記」は相続人の中から1人を代表者として選び、代表者の名義で不動産を登記する方法です。

登記方法

メリット

デメリット・注意点 

共同登記

  1. 代表者を選ぶ必要がなく、相続人間のトラブルリスクが起こりにくい
  2. 登記が実態に即しており、税金関連の問題が起こりにくい
  1. 相続人全員が売買の当事者となり、手続きが複雑で時間や労力がかかる
  2. すべての手続きにおいて相続人全員の署名押印が必要

単独登記

  1. 手続きが簡単で迅速に売却活動を進めやすい
  2. 媒介契約書や売買契約書の署名押印、重要事項説明の受け取りが1人で足りる
  1. 代表者を誰にするかでもめる
  2. 代表者が売却金を使い込むリスクがある
  3. 固定資産税の納税などでトラブルが起こりやすい
  4. 長期に渡って売らずに放置した後で売却すると贈与税がかかるリスクがある

このように、それぞれメリットとデメリットがありますので、自分たちの状況に適した方法を選択しましょう。

2.換価分割する場合の遺産分割協議書の書き方サンプル

それでは、実際の遺産分割協議書の書き方を、共同登記と単独登記の場合とで見てみましょう。

2-1.共同登記した場合の遺産分割協議書の書き方サンプル

換価分割する際に、不動産を共同登記した場合の遺産分割協議書の記載例は、以下のとおりです。

1.相続人甲及び相続人乙は、次の不動産を、各2分の1の割合で共有取得する。
(土地)・・・・・
(建物)・・・・・
2.相続人甲及び相続人乙は、共同して本件不動産を売却し、その売却代金から売却に要する一切の費用(不動産仲介手数料、契約書作成費用、登録免許税)を控除した残額を前項の共有持分に従って取得する。

2-2.単独登記した場合の遺産分割協議書の書き方サンプル

換価分割する際に、不動産を単独登記した場合の遺産分割協議書の記載例は、以下のとおりです。

1.次の不動産は換価分割を目的として、相続人甲が取得する。
(土地)・・・・・
(建物)・・・・・
2.相続人甲は、前項の不動産を速やかに売却し、その売却代金から売却に要する一切の費用(不動産仲介手数料、契約書作成費用、登録免許税)を控除した残額を以下の割合で分配する。
・相続人甲及び相続人乙が各2分の1ずつ

換価分割で遺産分割協議書を作成する際は、一般的な注意点に加えて、特に「換価目的」を明記することを注意しましょう。遺産分割協議書を作成する上でのポイントをまとめましたので、ご参考ください。

例えば単独登記の場合は、後のトラブルや税務上の問題を避けるため、特定の相続人が「換価分割のため」に不動産を取得することを明記します。代償分割ではなく、共同相続人全員の意思で換価分割するため1人が相続登記することを、遺産分割協議書で明確にしておきます。

売却にかかる諸費用(仲介手数料、登記費用、税金など)を売却代金から控除することについても、具体的に記載します。あわせて、費用を控除した後の残金を、各相続人がどのような割合で取得するのかを「各2分の1ずつ」のように明記しましょう。

遺産分割協議書の作成は、遺産相続においては特に重要です。不明な点があれば、専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

換価分割に関するQ&A

Q1.換価分割の主なメリットは何ですか?

A:換価分割の主なメリットは、不動産などの分割しにくい財産を公平に分配できる点にあります。現金化することで不動産の価値は明確になるため、評価方法などで意見の対立やトラブルが起こるリスクを減らすことができます。また、手元に現金が残るので、相続税の納税資金を確保できるという点も大きなメリットです。

Q2.換価分割に際し、不動産売却で発生した譲渡所得には、どのような税金がかかりますか?

A:換価分割に際し、不動産やその他の資産を売却し、利益(譲渡所得)を得た場合、譲渡所得に対して譲渡所得税が課されます。譲渡所得税は、売却益にかかる所得税と住民税の総称で、売却から得られた利益(譲渡所得)を基に計算します。譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間(短期譲渡所得か長期譲渡所得か)によって異なり、さらにその年の税法によっても変動するため、売却時の具体的な税率を確認することが重要です。

Q3.換価分割での不動産売却に法的な期限はありますか?長期間売れないとどうなりますか?

A:法律上、換価分割での不動産売却に具体的な期限はありません。しかし、長期間売却しない場合、税務上の問題が生じる可能性があります。特に、単独登記で長期にわたり売却を先延ばしにしていると、贈与とみなされ贈与税が課されるリスクがあります。また、不動産を所有している期間は固定資産税が発生するため、固定資産税の支払いについて相続人間でトラブルが起こる恐れがあります。できるだけ早めに売却することをおすすめいたします。

まとめ

本記事では、遺産分割の方法の一つ、換価分割について弁護士が解説させていただきました。不動産などの、分割が難しい相続財産を公平に分配したい場合に、金銭で分配できる換価分割はおすすめの方法です。

ですが、換価分割をするためには不動産の相続登記や売却手続きが必要で、遺産相続のタイミングによっては思うような値がつかないなど、市場の状況に左右されるという側面もあります。相続税や譲渡所得税、固定資産税といった税金に関する問題も関係してくるため、換価分割による遺産分割を検討している場合は、法律の専門家である弁護士に、なるべく早めにご相談いただくことをおすすめいたします。

弁護士にご依頼いただければ、税金に関する問題だけでなく、前提となる遺産分割協議の進行や遺産分割協議書の作成、不動産の相続登記の手続きや不動産の売却手続きなど、換価分割に関わる一連の手続きをサポートいたします。

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