換価分割とは│遺産分割協議書の書き方と譲渡所得などの税金について

遺産分割

2024.04.10

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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換価分割は、相続財産、特に不動産などを売却し、売却して得た利益を相続人間で分配する方法です。特に、相続財産が不動産に偏っているケースで有効な手段とされています。しかし、換価分割を選択する際には、いくつか注意点があり、手続きを誤ると贈与税が発生する場合があります。この記事では、換価分割のメリット、デメリット、相続税や譲渡所得税など関連する税金の問題、そして遺産分割協議書の正しい書き方について、わかりやすく解説します。

換価分割を検討中の方は、この記事を参考に、自分のケースで換価分割を選択すべきかどうかを見極めてください。

目次

換価分割とは

換価分割(読み方:「かんかぶんかつ」)とは、遺産相続が発生した際に、遺産をどのように分けるか決める方法の一つです。

相続財産には、現金や株式のように分配が容易なものから、不動産のように分割が困難なものまで様々です。換価分割は、特に分割が難しい不動産などの財産を売却し、その売却から得られた現金を相続人間で分配する方法です。

例えば、相続財産として市場価値が5,000万円の不動産と、3,000万円の預貯金がある場合を考えましょう。これらを2人の相続人が分割する場合、不動産を直接分けることは難しいです。

 

換価分割とは

 

この場合に換価分割を利用すると、不動産を市場価格で売却し、得られた5,000万円を相続人間で分配することになります。もし預貯金も分配対象であれば、合計8,000万円を各4,000万円ずつ分け合うことになります。

換価分割では、財産を「換価」、つまり現金化することがポイントとなります。換価分割では、不動産などの現金化が可能な財産を売却することで、相続人全員に対して公平な分配を実現することができる点が大きなメリットです。

換価分割は、相続人間の合意が得やすく、相続におけるトラブルのリスクを低減させることが期待できます。

換価分割以外の遺産分割の方法

遺産分割には4つの方法があり、それぞれの概要は以下のとおりです。
相続人全員が遺産分割協議によって、どのような方法で遺産を分割するか話し合い、全員の合意が得られればその方法で確定することとなります。

分割方法

概要 

代償分割

一部の相続人が遺産の一部(例えば不動産)を取得し、他の相続人にその価値に相当する代償金を支払う方法。

現物分割

遺産をそのままの形(現物)で相続人間で分ける方法。

換価分割

遺産を売却して現金化し、その現金を相続人間で分ける方法。

共有分割

遺産を相続人全員の共同所有とする方法。

以下では、換価分割のメリットとデメリットについてより詳しく解説していきます。

換価分割のメリット

換価分割の主なメリットとして、以下の2つが挙げられます。

  • 公平な遺産分割ができるためトラブルを予防でき
  • 現金が手もとに残るため納税資金を確保できる

これについて、以下でわかりやすく解説していきます。

公平な遺産分割ができるためトラブルを予防できる

換価分割の最大のメリットは、相続財産を現金化し、その収益を相続人間で均等に分配することで、公平な遺産分割を実現できる点にあります。特に、価値が大きく変動する可能性がある不動産や株式などの財産を相続する際にその価値を正確に評価することは難しく、これが相続人間のトラブルの原因となることが少なくありません。

しかし、換価分割を採用すると、不動産などの財産を市場価値で売却し、得られた現金を分配することになります。これにより、財産の価値を具体的な現金に換算することができるため、各相続人が受け取るべき金額を明確にすることができます。

換価分割は、評価方法などでもめることもなく、不公平感をいただきにくいため相続トラブルを防ぐことにもつながるのです。

現金が手もとに残るため納税資金を確保できる

換価分割では、遺産を現金で受け取るので、相続税の支払いに直接充てることができるという大きなメリットがあります。

特に高価な不動産や株式などの資産を相続する場合、原則として現金一括で相続税を納税しなければなりません。納税期限までに現金を用意できない場合は、相続税の支払いのために資産を売却するか、延納などを検討しなければなりません。

延納すれば、手続きに手間がかかる他、利子税も発生してしまいます。

しかし、換価分割を選択した場合、売却代金が手もとに残るので、それを相続税の支払いに充てることができます。相続税の納税のために資金不足になったり、急遽資産を売却したり、延納の手続きなどを行う必要がなくなります。

換価分割のデメリット

換価分割のメリットとして、主に以下の4つが挙げられます。

  1. 不動産や株式を手放すことになる
  2. 安くしか売却できない可能性がある
  3. 売却手続きに手数料がかかる
  4. 譲渡所得税が高額になる可能性がある

これについて、以下でわかりやすく解説していきます。

不動産や株式を手放すことになる

換価分割を選ぶと、不動産のような大切な財産を売ってしまう必要があります。先祖から受け継いだ家や土地を手放すことは、ただのお金以上の価値を失うことを意味する方もいらっしゃるでしょう。

また、不動産や株式をそのまま持っていれば、家を賃貸に出すことで定期的に収入を得たり、株や土地が将来価値が上がることを期待できるメリットもあります。しかし、換価分割で資産を売却すると、これらのチャンスも一緒に失ってしまいます。

特に、不動産や株式などが将来もっと価値が上がると思われる場合、それを売ってしまうことは、短期的にはお金が手に入るかもしれませんが、長期的に見ると大きな損失になる可能性があります。つまり、すぐにお金が必要でない場合には、大事な遺産を売るのは得策ではないかもしれません。

安くしか売却できない可能性がある

換価分割のもう一つのデメリットは、不動産や株式を期待した価格で売れない可能性があることです。不動産や株式の価格は売却する時期によって大きく変わるため、換価分割でこれらを売却するときには、市場の状況に大きく左右されます。

相続が起こった後、10ヶ月の期限内に相続税を支払う必要があります。この期間内に資金を確保する必要があるため、多くの場合、早めに資産を売却しようとします。しかし、市場が不利な状況にあるときに急いで売却すると、価値が下がってしまうリスクがあります。特に不動産は買い手が見つからないと価格を下げざるを得なくなることが多く、急いで売るほど安く売らざるを得なくなる可能性があります。

株式の場合は市場価格が毎日変動し、売却するタイミングによって得られる金額が大きく異なります。相続が発生してから急いで売却しようとすると、市場が下落している時期に売ることになり、期待していたよりも低い価格でしか売れないかもしれません。

このように、換価分割では相続税の支払いのためなどで急いで資産を売却する必要がある場合、市場の状況によっては、不利な価格でしか売れないリスクがあります。これは換価分割を選択する上で十分に考慮しなければならない大きなデメリットの一つです。

売却手続きに手数料がかかる

換価分割によって、資産を売却する際には手数料がかかってしまします。特に不動産の売却には、多くの追加費用がかかることが一般的です。

不動産を売る際には、まず不動産会社に支払う仲介手数料があります。この手数料は売却価格に応じて決まり、売却価格が高ければ高いほど、仲介手数料も大きな金額になります。しかし、これだけではなく、その他にも様々な費用が必要になることが多いです。

例えば、不動産の取引を正式に記録するための印紙代、不動産の正確な面積を測定する測量費用、隣接する土地との境界線を明確にする境界確定費用、相続登記手数料など売却に際して必要となる費用は多岐にわたります。

これらの費用は、売却手続きを進める中で徐々に積み重なり、最終的には相続人の手取り額が大幅に減ってしまう可能性もあります。

譲渡所得税が高額になる可能性がある

譲渡所得税は、売却によって生じる利益(譲渡益)に対して課される税金であり、特に以下の二つの理由により、換価分割で高額になる傾向があります。

長期間所有することで地下が上昇している

まず、多くの不動産は長期間にわたって所有されているため、その間の地価の高騰により、売却時に大きな利益が発生する可能性があります。不動産の買値と売値の差が大きいほど、譲渡益も大きくなり、結果として譲渡所得税も高額になります。例えば、数十年前に購入した不動産は、その間の地価の上昇により、現在の市場価値が購入価格を大きく上回ることが一般的です。これにより、売却時には予想以上の譲渡所得税が発生することがあります。

取得価格が証明できない

次に、古い不動産の場合、取得時の価格を証明する書類が失われていることがあります。このような状況では、法律に基づき売却額の5%を取得費とみなすことができますが、この規定により、売却価格の大部分が利益と見なされ、高額な譲渡所得税が課されることになります。つまり、取得価格が不明な場合、売値の95%が譲渡益とみなされ、それに応じて譲渡所得税が高額になる可能性があるわけです。

特に、長期間所有していた不動産や取得価格が不明な資産を売却する場合は、事前に専門家に相談しアドバイスをもらうようにしましょう。

換価分割の際にかかる譲渡所得税について、以下でさらに詳しく解説していきます。

換価分割には譲渡所得税がかかる

換価分割を通じて不動産やその他の資産を売却し、利益(譲渡所得)を得た際には、譲渡所得税を支払う必要があります。譲渡所得税は、売却によって得られた利益に対して計算され、その利益に対してかかる所得税や住民税などのことをいいます。

譲渡所得、つまり売却益は、不動産を売った際に得られる金額から、その不動産を購入した際にかかった費用(取得費)と売却する際にかかった費用(譲渡費用)を差し引いたもので計算されます。取得費には購入価格の他、購入時にかかった諸経費や改良費なども含まれます。譲渡費用には、売却に際して支払う仲介手数料や測量費用など、売却するために直接かかった費用が含まれます。

譲渡所得(売却益)=売却価格−(取得費+譲渡費用)

この計算式で算出した金額に対して譲渡所得税及び住民税が計算されます。そのため、換価分割により資産を売却する際には、得られる利益だけでなく、これらの税金の負担も考慮に入れる必要があります。

譲渡所得税の税率と計算方法

譲渡所得税の税率は、資産の所有期間によって異なります。

短期譲渡所得:所有期間が5年以下の資産を売却した場合の利益。
税率は、「所得税率30% + 住民税率9%+ 復興特別所得税率0.63%」が一般的です。

長期譲渡所得:所有期間が5年を超える資産を売却した場合の利益。
税率は、「所得税率15% + 住民税率5%+ 復興特別所得税率0.315%」 が一般的です。

たとえば、10年前に2,000万円で購入した不動産を相続し、これを換価分割によって3,000万円で売却したとします。売却時の仲介手数料などの譲渡費用が200万円だった場合、譲渡所得の計算は以下のようになります。

譲渡所得=3,000万円−(2,000万円+200万円)=800万円
この800万円の利益に対して、長期譲渡所得の税率が適用され、所得税として120万円及び住民税として40万円が税金として課されます。

ただし、以下のような特例を利用すれば、譲渡所得税は大幅に削減することが可能です。

特例を利用すれば譲渡所得税を節税できる

換価分割における相続で、節税効果を期待できる特例にはいくつかあります。これらの特例を適切に利用することで、譲渡所得税の負担を軽減することが可能です。主な特例を以下に詳しく解説します。

取得費加算の特例

相続した資産を相続開始後3年10か月以内に売却する場合、支払った相続税の一部を取得費に加算することができ、それにより譲渡所得が減少します。譲渡所得が減少すれば、その分譲渡所得税も軽減されるため、節税効果が期待できます。下の空き家を売ったときの特例と併用はできないので注意してください。

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続により空き家となった不動産を相続後3年以内に売却する場合、要件を満たせば不動産売却時の譲渡所得から最大3000万円を控除できます。この特例は、相続人1人あたりに適用されるため、不動産が複数の相続人によって共同名義にした上で売却した場合は、節税効果はさらに大きくなります。

マイホーム売却特例

被相続人の死後、同居していた相続人がそのまま居住し続けいている家を売却した場合、譲渡所得(利益)のうち3000万円まで控除することが可能です。

これらの特例を利用するには、特定の条件を満たす必要があります。特例の適用条件や手続きは複雑な場合が多いため、実際にこれらの特例を利用しようと考えている場合は、弁護士など税務の専門家に相談することをお勧めします。

譲渡所得税は誰が払う?│相続人全員が申告・納税

譲渡所得税の申告および納税義務は、売却代金を受け取る相続人全員に及びます。

多くの人が、代表相続人や売主になった相続人だけが税金を申告・納税する必要があると誤解しがちです。しかし、実際には、売却によって得た利益(譲渡所得)は共同所有者全員の間で分配されるため、利益を受け取る全ての相続人がそれぞれ譲渡所得税の申告および納税を行わなければなりません。

換価分割でかかる相続税│売却代金に相続税は課税されない

相続税は、相続が発生した時点での相続財産の評価額に基づいて課税されます。

つまり相続税が課されるのは、相続開始時に存在した財産の評価額に対してであり、相続後に行われる換価分割による財産の売却やその売却価格に基づいて相続税が計算されることはないのです。

したがって、換価分割による売却代金自体に対して相続税が課税されることはありません。

不動産の評価には、路線価方式や倍率方式、固定資産税の評価額などの方法が用いられます。この評価方法によって算出された評価額が相続税の課税対象となり、各相続人が分配割合に応じて支払うことになります。

換価分割するときの相続税申告書の書き方

換価分割を行う際、相続財産は原則として最初に共同相続人全員の名義で相続され、その後売却されます。そのため、相続税申告書における「財産の明細書」の記載では、共有財産として「各相続人の取得財産の金額」を正確に記入する必要があります。

具体的には、換価分割する共有財産の相続税評価額を、換価分割によって各相続人が取得した金額の割合に基づいて按分された金額を記載します。

計算式は以下のとおりです。
各相続人の取得財産の金額=換価分割する財産の相続税評価額×各相続人が取得する換価分割による売却代金/換価分割による売却代金の合計額

換価分割で贈与税はかからない│ただし、遺産分割協議書の作成が必要

換価分割を行う際に、手続きを簡潔にするため、しばしば一人の代表者の名義で相続登記を行ってから売却することがあります。しかし、このような名義変更を行った場合、税務上はそれが贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があるという点に注意が必要です。

そのため贈与とみなされないように、遺産分割協議書を作成しその旨をきちんと記載することが非常に重要です。具体的には、換価分割を行うこと、代表者の名義に一時的にすること、そして売却代金が相続人間で分配される旨を明確に記載する必要があります。換価分割をする場合の遺産分割協議書の書き方については、以下で詳しく解説していますのでご覧ください。

また、国税庁のホームページ「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」にも記載されていますので参考にご覧ください。

さらに、遺産分割協議後にすぐに売却活動を行わず、長期間売却を先延ばしにすると、「これは本当に売るつもりがあるのか」と税務署に疑われ、結果として贈与税がかかるリスクが高まります。遺産分割協議が完了した後は、売却が成立するまで積極的に売却活動を継続するようにしましょう。

換価分割をする場合の遺産分割協議書の書き方

換価分割を行う場合、まずは被相続人の名義で登記されている不動産を相続人の名義に変更し、その後新しい所有者への名義変更を行う必要があります。すでに亡くなっている人の名義のままでは売却手続きができないからです。

このとき、どの相続人の名義にするのかについて、次の2通りの方法が考えられ、それぞれで遺産分割協議書の書き方が変わってきます。

登記方法

概要

メリット

デメリット・注意点

 

共同登記

不動産を相続人全員の名義で共有し、その後売却する方法

・代表者を選ぶ必要がなく、相続人間のトラブルリスクが起こりにくい

・登記が実態に即しており、税金関連の問題が起こりにくい

・相続人全員が売買の当事者となり、手続きが複雑で時間や労力がかかる

・すべての手続きにおいて相続人全員の署名押印が必要

単独登記

相続人の中から一人を代表者として選び、その人の名義で不動産を登記し、売却する方法

・手続きが簡単で迅速に売却活動を進めやすい

・媒介契約書や売買契約書の署名押印、重要事項説明の受け取りが1人で足りる

・代表者選出で意見が合わないとトラブルになりやすい

・代表者が売却金を使い込むリスクがある

・固定資産税の納税などでトラブルが起こりやすい

・長期に渡って売らずに放置した後で売却すると贈与税がかかるリスクがある

それぞれ、メリットとデメリットがありますので、ごちらを選択すべきかよく検討するようにしましょう。ただし通常は、換価分割をする際は共同登記を行うことになります。

共同登記にした場合の遺産分割協議書の記載例

換価分割する際に、不動産を共同登記にした場合の遺産分割協議書の記載例は以下のとおりです。

1.相続人甲及び相続人乙は、次の不動産を、各2分の1の割合で共有取得する。
(土地)・・・・・
(建物)・・・・・
2.相続人甲及び相続人乙は、共同して本件不動産を売却し、その売却代金から売却に要する一切の費用(不動産仲介手数料、契約書作成費用、登録免許税)を控除した残額を前項の共有持分に従って取得する。

単独登記にした場合の遺産分割協議書の記載例

換価分割する際に、不動産を単独登記にした場合の遺産分割協議書の記載例は以下のとおりです。

1.次の不動産は換価分割を目的として、相続人甲が取得する。
(土地)・・・・・
(建物)・・・・・
2.相続人甲は、前項の不動産を速やかに売却し、その売却代金から売却に要する一切の費用(不動産仲介手数料、契約書作成費用、登録免許税)を控除した残額を以下の割合で分配する。
・相続人甲及び相続人乙が各2分の1ずつ

換価分割の流れ

換価分割の手続きの流れを簡単にまとめると以下の通りです。

  1. 相続人全員で換価分割について合意する(遺産分割協議)
  2. 遺産分割協議書を作成する
  3. 相続登記を行って、相続人名義に不動産を変更する
  4. 不動産売却の方針を決めて、不動産会社や業者を選定する
  5. 売買契約を締結して、売買代金を受領する
  6. 売却代金を相続人間で分配する
  7. 譲渡所得税が発生する場合は申告を行う

不動産が売れない…いつまでに売却すればよい?

法律上、換価分割のために不動産を売却する期間に期限は設けられていません。

つまり、遺産分割協議書の作成後、10年後でも売却することが可能で、直接的なペナルティはありません。

しかし、税金に関する問題では注意が必要です。特に単独登記で不動産を売却する場合、売却までの期間が長引くと、税務上、名義人から他の相続人への「贈与」とみなされるリスクがあります。

また、遺産分割協議書にきちんと換価分割をする旨を記載してあっても、実際に売却活動を行わずに、数年経ってから売却すると「贈与」と見なされ、贈与税が課税される可能性が高まります。

さらに、不動産の所有していると固定資産税も発生します。この税金は代表者あてに納税通知が送られ、代表者が一旦支払った後、他の相続人に請求する必要があります。

共同名義の場合でも、固定資産税の納税通知を誰が受け取るかを決め、役所に申請する必要があります。このような税金の支払いについて、相続人間のコミュニケーションが上手く行かず、トラブルに発展することも少なくありません。

以上のように、不動産を長期間売らずにいると、税金の問題でリスクやトラブルが生じる可能性があります。そのため、換価分割を選択した場合は、可能な限り早期に不動産を売却することが望ましいと言えます。

 

不動産の売却を検討中の方は、下記記事もあわせて参照してください。

相続した不動産を売却する流れとかかる税金│特別控除など税金を抑える方法も

代償分割と換価分割どちらを選択すべき?

代償分割とは、一部の相続人が不動産などの相続財産を取得する代わりに、他の相続人にその価値に相当する代償金を支払う方法です。

代償分割と換価分割はどちらも遺産を公平に分配できる点で共通しています。

どちらを選択すべきか悩まれる方も多いかと思いますが、どちらを選択すべきかは相続財産の性質や相続人の状況によって異なります。ここでは、それぞれの分割方法が向いているケースについて解説します。

換価分割をおすすめするケース

換価分割が向いている主なケースは、不動産が相続財産の大部分を占める場合です。

相続財産の大部分が不動産であり、共有相続を望まない場合は換価分割を選択するとよいでしょう。

不動産を売却して現金化することで、公平に分割できるうえ、相続税の納税資金も確保することができます。

代償分割をおすすめするケース

代償分割が向いている主なケースは、相続人が特定の財産に対する思い入れが強い場合です。不動産に引き続き居住したい相続人がいる場合などは代償分割がおすすめです。その相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払います。

ただし、代償金を支払う資力がなければ代償分割は選択できませんので注意が必要です。

また、被相続人の事業を、特定の相続人が承継する場合も代償分割がおすすめです。事業に必要な資産をその相続人が取得し、他の相続人への代償を行います。

これによって、事業用の不動産や資産を失うことなく、他の相続人にも公平な遺産分割が可能となります。

代償分割については、下記記事にて詳しく解説しております。あわせて参照してください。

「「代償分割とは?代償金の決め方・遺産分割協議書の書き方・相続税の計算方法

換価分割に関するQ&A

Q: 換価分割の主なメリットとは何ですか?

A: 換価分割の主なメリットは、不動産などの分割しにくい財産を公平に分配できる点にあります。現金化することで不動産の価値は明確になるため、評価方法などで意見の対立やトラブルが起こるリスクを減らすことができます。

また、手もとに現金が残るので、相続税の納税資金を確保できるのも大きなメリットです。

Q: 換価分割による不動産売却で発生した譲渡所得にはどのような税金がかかり、どのように計算されますか?

A: 換価分割によって不動産やその他の資産を売却し、利益(譲渡所得)を得た場合、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税は、売却益にかかる所得税と住民税の総称で、売却から得られた利益に対して計算されます。

譲渡所得、つまり売却益は、以下の計算式によって算出されます。

譲渡所得(売却益)=売却価格−(取得費+譲渡費用)譲渡所得(売却益)=売却価格−(取得費+譲渡費用)

この計算によって得られた売却益に対して、所得税と住民税がかかります。譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間(短期譲渡所得か長期譲渡所得か)によって異なり、さらにその年の税法によっても変動するため、売却時の具体的な税率を確認することが重要です。

Q: 換価分割を行った際の売却代金に対して相続税は課税されますか?

A: 換価分割による売却代金に対しては、相続税が課税されません。相続税は、相続が発生した時点での相続財産の評価額に基づいて計算されます。これは、相続開始時に存在した財産の価値に対してのみ相続税が課せられるということを意味します。相続後に行われる換価分割による財産の売却や、その売却から得られる金額に基づいて相続税が再計算されることはありません。

Q: 換価分割において贈与税が課されるリスクを避けるには、どのような手続きが必要ですか?

A: 換価分割において贈与税が課されるリスクを避けるためには、遺産分割協議書の作成が非常に重要です。換価分割による売却益の分配を贈与とみなされないようにするための注意点は以下の2つです。

  1. 遺産分割協議書の作成: 換価分割を行うこと、代表者の名義に財産を一時的にすること、そして売却代金が相続人間で分配される旨を遺産分割協議書に明記します。
  2. 迅速な売却活動: 遺産分割協議書の作成後、可能な限り迅速に売却活動を開始し、売却を行います。長期間売却を先延ばしにすると、贈与税が課されるリスクが高まります。また、遺産分割協議が完了した後は、売却が成立するまで積極的に売却活動を継続するようにしましょう。

Q: 換価分割での不動産売却に法的な期限はありますか?長期間売れないとどうなりますか?

A: 法律上、換価分割での不動産売却に具体的な期限はありません。しかし、長期間売却しない場合、税務上の問題が生じる可能性があります。特に、単独登記で長期にわたり売却を延期すると、贈与とみなされ贈与税が課されるリスクがあります。また、所有期間中には固定資産税が発生するため、この支払いについて相続人間でトラブルが起こる恐れがあります。できるだけ早めに売却することをおすすめいたします。

まとめ

換価分割は、相続財産を公平に分割したい場合におすすめの方法の一つです。

しかし、換価分割の手続きは複雑であり、相続税や譲渡所得税の計算、相続登記の手続き、そして不動産や株式の売却など、様々な知識が必要となります。そのため、換価分割による遺産分割を検討している方は、法律の専門家である弁護士に相談することが非常に重要です。

弁護士は、これらの手続きをスムーズに進めるための知識と経験を持っており、節税対策やスムーズな手続き、さらには財産を適正に売却する方法まで、幅広いサポートを提供できます。

特に、相続税や譲渡所得税の適切な申告による節税効果は、相続人にとって大きなメリットとなります。相続税や所得税には様々な特例がありますので、利用するしないで納税額に大きく差が出ます。

また、遺産分割協議書の作成や相続登記の手続きを確実にそして円滑に進めることで、相続手続きのストレスを軽減し、後のトラブルも予防できます。

弁護士法人あおい法律事務所はお客様の相続に関するあらゆるニーズに対応するため、経験豊富な弁護士を通じて専門的なサポートを提供しています。換価分割を含む相続手続きに関するご相談がある場合は、ぜひ私たちにお任せください。お客様の相続が円滑に、そして最も有利に進むよう、全力でサポートいたします。

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代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。