被相続人とは?相続人との違い│相続に意思を反映させる方法も解説!

相続手続き

更新日 2024.03.20

投稿日 2024.01.25

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

相続とは、亡くなった人が残した財産を誰にどう分けるかということです。

相続には、相続人と被相続人という二つの立場があります。相続人とは、財産を受け継ぐ人のことで、被相続人とは、亡くなった人のことです。

この記事では、「被相続人」とは何か、また「相続人」との違いや関係について解説します。また、「被相続人」が自分の意思を反映させる方法や注意点についても詳しく解説します。相続に関する基本的な知識を身につけることで、自分や家族の将来に備えることができます。ぜひ最後までお読みください。

目次

被相続人とは?相続人との違い

相続において、「被相続人」は遺産を残す側の人物で、「相続人」は遺産を受け継ぐ側の人物です。この二つの用語の意味の違いを正確に理解することは、相続に関する手続きを進める際に不可欠です。

被相続人とは│相続財産を遺して死亡した人

被相続人とは、相続財産を遺して死亡した人のことです。被相続人は、自分の財産を相続人に引き継ぐ権利と義務を持ちます。

被相続人が亡くなり相続が開始すると、被相続人の持っていた財産、権利、義務などが、相続人に移転することになります。これには、現金、預金、不動産、有価証券といった資産が含まれます。

しかし、被相続人の財産には、生前に抱えていた借金や未払いの税金などの負債も考慮されるため、相続手続きでは、これらの負債と資産のバランスを明確にすることが重要です。

相続人とは│相続財産を受け継ぐ権利を持つ人

相続人とは、被相続人が死亡した後、被相続人が遺した相続財産を受け継ぐ権利を持つ人のことです。
この相続人の権利には具体的な範囲や順位が存在します。そして、この範囲や順位は、民法によって詳細に定められています。
したがって、被相続人と相続人の大きな違いは、前者が遺産を「残す側」、後者が遺産を「受け継ぐ側」であるということです。

一般的なケースでは、この法的な範囲に当てはまらない者は、相続人としての資格を持つことができません。そして、この民法に基づく相続権を持つ人を「法定相続人」と呼びます。この用語は、相続の際の権利や順位を法律で定められた人物、すなわち血縁関係や配偶関係によって、第一次的に相続権が認められている人物を指します。

しかし、「相続人」と「法定相続人」の間には微妙な違いが存在します。具体的には、「相続人」とは、最終的に相続財産を実際に受け継ぐ人を指します。

これに対して、「法定相続人」とは、法律によって第一次的に相続権を有する人を指す言葉です。例えば、被相続人が遺言を残しており、その遺言によって特定の人物が相続財産を継承する場合、その人物が「相続人」となりますが、必ずしも「法定相続人」であるとは限りません。

要するに、「法定相続人」とはあくまで法律によって相続権があると認められた人物を示し、「相続人」とは実際に遺産を受け継ぐ人物を指すという違いがあります。

被相続人との続柄により相続人や相続分は決まる

法定相続人が実際にどれだけの財産を受け取るかは、被相続人との関係や続柄によって決まります。

この記事では、民法によって定められている「どの続柄の人がどれだけの遺産を受け取るのか」、すなわち「相続の優先順位」と「相続の割合」についてわかりやすく解説します。

続柄で決まる相続人の順位│法定の相続人とは?

原則として、婚姻関係にある配偶者は常に相続の権利を持っています。

配偶者以外の法定相続人については、被相続人との関係によって、以下のように相続順位が定められています。

相続順位

法定相続人

常に相続人

配偶者

第1順位

子や孫など直系卑属

第2順位

親や祖父母など直系尊属

第3順位

兄弟姉妹

法で定められた順番に基づき、一番近い関係の人から順に相続の権利が与えられます。配偶者は常に相続人となり、その次は被相続人の子供、そして親、兄弟や姉妹の順になります。

なお、自分より順位の高い人がいる場合は相続人になれません。

配偶者がいる場合は「配偶者」と「最も順位の高い人」が相続人になり、配偶者が既に死亡している場合は「最も順位の高い人」だけが相続人になります。

第1順位から第3順位までの相続人がおらず配偶者しかいない場合は、配偶者だけが相続人になります。

法定相続人について、詳しくは下記記事を参照ください。

[法定相続人とは?範囲と順位・相続割合について詳しく解説]

続柄で決まる相続割合│法定の相続分とは?

民法では、法定相続人ごとに、どれだけの割合で遺産を受け取れるかを定めています。この遺産を受け継ぐ割合を「法定相続分」と呼びます。

それぞれの相続人がどれくらいの割合で遺産を受け取るのか、実際の「法定相続分」を詳しく見てみましょう。

「法定相続分」は、被相続人との続柄によって次のように変わります。

相続人の状況

配偶者の法定相続分

子や孫など直系卑属の法定相続分

親や祖父母など直系尊属の法定相続分

兄弟姉妹の法定相続分

配偶者と子ども

2分の1

2分の1(複数人いれば均等に分ける)

配偶者と親

2分の3

1分の3(複数人いれば均等に分ける)

配偶者と兄弟姉妹

3分の4

1分の4(複数人いれば均等に分ける)

配偶者のみ

全て

子どもや孫のみ

全て(複数人いれば均等に分ける)

親や祖父母のみ

全て(複数人いれば均等に分ける)

兄弟姉妹のみ

全て(複数人いれば均等に分ける)

たとえば、もし配偶者と3人の子供が相続人だった場合、配偶者は遺産の半分を受け取ることができ、残りの半分は3人の子供で分けられます。つまり、子供一人あたりが受け取る割合は、遺産の1/6になります。

 

配偶者と子供3人が相続人の場合

 

民法はこのような基準を設けていますが、実際の遺産の分け方はこの基準を必ずしも守る必要はありません。ただし、一部の相続人は、最低限受け取れる遺産の割合が決められていて、これを「遺留分」と呼びます。この遺留分は、例外的に遺言の内容よりも優先されます。だから、ある相続人に何も遺さないという遺言があったとしても、その相続人は民法で決められた最低限の遺産を受け取る権利があります。

この権利を行使するためには、裁判所を通じていれいきを進める必要がある点に注意が必要です。
このように、被相続人の遺産を受け取れる人「相続人」の範囲は、民法によって明確に定められています。

法定相続分について、詳しくは下記記事を参照ください。

[法定相続分とは?│法定の相続割合と計算方法を事例で解説します!]

では、被相続人の遺産を受け取れない人とはどのような人でしょうか。

被相続人の財産を相続できない人

相続は、ある人の財産や権利を次の世代や他の人々に引き継ぐ際のルールを決めるものです。

しかし、誰もが相続の権利を持つわけではありません。以下は、相続人として遺産を受け取る資格がない、あるいは失われた人の具体的な例です。

1.法定相続人に含まれない人

法律で定められた相続人の中には、内縁の関係(結婚していないが、夫婦のような関係)の方や愛人、そして愛人との間に生まれた未認知の子供などは含まれません。また、再婚した際の連れ子も該当しません。

もしこれらの人々に遺産を残したい場合、遺言を書いたり、子供を養子にしたり、正式に認知するなどの方法が考えられます。

2.相続欠格にあたる人

一部の行動や状況によっては、法律により相続の資格を失う場合があります。例えば、遺言書を勝手に変えたり、隠したり、不正な手段で遺言をさせた場合、また、被相続人に対して重大な犯罪を犯した場合などがこれに当たります。

3.相続廃除となった人

被相続人が特定の理由で、一部の相続人の権利を剥奪することができます。たとえば、遺産を相続する予定の人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱をした場合、この制度を利用して相続権を取り消すことができます。

4.相続放棄をした法定相続人

ある法定相続人が自分の意思で相続を受けないことを選択することも可能です。その場合、家庭裁判所に申し立てを行い、相続を正式に放棄します。これを選択すると、その人はもともと相続権がなかったとみなされるので、後から遺産を受け取ることはできません。

被相続人の意思を相続に反映させる方法とは?

遺産相続は、多くの場合、被相続人が生前に培ってきた財産を後世に受け継ぐという大きな意味を持つプロセスです。このとき、被相続人が残した財産をもとにした相続人同士での紛争やトラブルを防ぐために、「誰が相続人となるのか」「相続人が受け取れる遺産の割合はどれくらいか」、「財産の分配方法はどうあるべきか」など、具体的な指針が民法によって定められています。

一方、相続される財産は、被相続人が生前に所有し、築き上げてきたものです。それは彼らの努力や思い出、そして経験の集積であり、単なる物的価値以上のものを持っています。したがって、被相続人の遺志や考えが、亡き後の相続においても、できるだけ尊重され、反映されることが望まれます。
法律が一般的な枠組みを提供しているものの、被相続人の意向を最大限に生かすための手段が存在します。

被相続人の意思を反映させる方法には、主に以下の4つがあります。

遺言書の作成

遺言書とは、私たちが残す財産を、どのような人や組織に、どのような割合や方法で受け継がせるかを決めるための書類です。この遺言書を利用することで、法律が基本として決めている「法定相続」の範囲を超えて、様々な配分の選択が可能になります。

具体的な遺言書の活用方法として以下のような選択が可能です。

  1. 法定相続分からの変更: 通常、法律で定められた特定の割合での相続が行われますが、遺言書によりこの割合を変更することができます。つまり、ある特定の家族や親戚に、他の相続人よりも多くの遺産を受け継がせたいときに指定することができます。
  2. 相続人外への遺贈: 例えば長い友人や特定の団体、研究機関など、法律上の相続人でない者への贈与を行うことができます。
  3. 遺産内容の特定: 特定の土地、家、宝石、記念品など、具体的な遺産を特定の人に遺贈することを指示できます。

遺言書の大きなメリットの一つは、これらの具体的な希望や意向を正確に反映させることができる点です。さらに、遺言書がきちんと作成されていると、被相続人が亡くなった後の家族間や相続人間でのトラブルや紛争を大きく減少させることが期待できます。

遺言書の書き方などは、自分の意志をしっかりと形にするため専門家のアドバイスを受けることを推奨いたします。

生前贈与

生前贈与とは、被相続人が生きている間に、特定の人へ自分の財産を「あげる」契約のことです。これを行う主な理由は、後の相続手続きをシンプルにするためや、特定の相続人以外の人にも確実に財産を渡したい場合などが考えられます。

生前贈与の際、その財産は即時で所有権が移転し、後の相続財産からは除外されます。しかし、贈与額が一定を超えると贈与税が発生するため、国の控除や減税制度を利用して税の負担を減らすことが重要です。

相続税申告の際にトラブルとなることも多いため、生前贈与の際には、税法の知識を持った専門家の助言を求めると良いでしょう。

家族信託の活用

家族信託とは、貴重な資産を専門家、例えば信託銀行や弁護士に託して、被相続人の指示に基づいて資産を管理・利用してもらうための仕組みです。この制度の導入により、大きなメリットとして、資産の適切な管理と保護、家族間での相続や遺産分割に起因するトラブルの軽減、そして適切な計画による相続税や贈与税の節税効果が期待されます。

家族信託は大きく「一般信託」と「特定目的信託」の2つに分けられます。一般信託は、通常の資産管理・運用を目的としたもので、特定目的信託は、例えば障害を持つ子の将来の生活費を確保するといった、特定の目的に特化した形での信託です。それぞれのタイプは、資産の状況や目的に応じて選択することが重要です。

相続廃除の申し立て

「相続廃除」とは、特定の相続人が被相続人に対して過去に重大な虐待や侮辱などの不適切な行為を行っていた場合、被相続人がその相続人の相続権を停止するために家庭裁判所に申し立てる制度を指します。

この手続きは、被相続人が生前に自ら行うもので、被相続人が亡くなった後に他の家族や相続人が代わりに申し立てることは認められていません。相続廃除の申し立てを成功させるためには、不適切な行為の事実やその影響をしっかりと証明する必要があります。

この制度は、被相続人の意志を保護し、不正や不適切な行為に対するペナルティとして機能します。被相続人が相続廃除の申し立てを検討する際は、専門家の助言やサポートを受けることが推奨されます。

被相続人に関するQ&A

Q1: 相続人と被相続人の違いは何ですか?

A1: 被相続人は相続が発生する原因となる人、つまり財産を残す側の人物です。一方、相続人はその財産を受け取る側の人物、つまり遺産を受け継ぐ者を指します。

Q2: 被相続人が生前に遺言を残していない場合、どのように相続が進行しますか?

A2: 遺言がない場合、日本の民法に基づく法定相続順に従って相続が行われます。配偶者や子など、特定の続柄に基づいて相続人が決定され、相続財産は分割されます。

Q3: 被相続人が遺言を書いたが、その内容が不明確な場合、どうなりますか?

A3: 遺言の内容が不明確または曖昧な場合、その解釈について相続人間での協議が必要となります。協議による合意が得られない場合は、裁判所の判断を仰ぐことも考えられます。

Q4: 被相続人が生前に特定の物件や財産を特定の相続人に譲渡していた場合、その財産はどう扱われますか?

A4: 生前に被相続人が特定の財産を相続人に譲渡(例: 生前贈与)していた場合、その財産は原則として相続財産から除外されます。ただし、生前贈与を考慮した遺産分割や贈与税の取り扱いなど、特定のケースでの考慮が必要です。

Q5: 被相続人が外国籍であった場合、日本の相続法は適用されますか?

A5: 相続に関しては、被相続人の最後の住所があった国の法律が原則として適用されます。したがって、被相続人が外国籍であっても、最後の住所が日本であれば日本の相続法が適用されることになります。

まとめ

本記事では、「被相続人」の意味や役割、そして「相続人」との明確な違いについて詳しく解説しました。被相続人は、相続が発生した際に遺産を残す人のことを指し、その遺産は法的な基準に基づき「相続人」に受け継がれることとなります。

しかし、単に法律が決める方法に従うだけでなく、被相続人の意思を反映させるためのさまざまな手段が存在します。

具体的には、遺言書を作成することで自らの意思で遺産の分配を指示することが可能となり、家族間のトラブルを未然に防ぐことも期待できます。また、生前贈与や家族信託など、様々な方法で自分の財産を効果的に管理・分配することができる点も強調しました。

相続に関する手続きや法律は複雑であり、適切な知識がなければ思わぬ問題が発生することもあります。当法律事務所では、このような情報提供を通じて、皆様の相続準備や疑問解決の一助となることを心より願っております。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。