遺族年金とは?受給条件・もらえる人・金額の計算方法などわかりやすく解説

相続手続き

更新日 2024.10.01

投稿日 2024.07.29

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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遺族年金とは、被保険者が亡くなった際に、その遺族が生活の安定を図るために受け取ることができる公的年金の一種です。遺族年金は、主に遺族基礎年金と遺族厚生年金に分かれており、それぞれの受給条件や金額の計算方法が異なります。

この記事では、遺族年金とは何か、基本的な仕組みや受給条件、もらえる金額の計算方法について詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

遺族年金とは│配偶者や子などの遺族に支給される年金のこと

遺族年金とは、その名のとおり、亡くなった被保険者の遺族に対して支給される年金制度です。この年金は、亡くなった方が国民年金や厚生年金に加入していた場合、その方によって生活を支えていた遺族に対して支給されます。具体的には、配偶者や子どもなどが対象となります。国民年金に基づく遺族年金は「遺族基礎年金」と呼ばれ、厚生年金に基づくものは「遺族厚生年金」と称されます。

後ほど詳しく解説しますが、これらの年金は、それぞれ異なる条件と金額で支給されます。遺族年金の基本的な目的は遺族の生活を経済的に支援することです。したがって、遺族年金は、被保険者の死後も遺族が安心して生活を続けられるように設計された重要な公的制度です。

遺族年金には2種類ある

遺族年金の種類は、日本の公的年金制度において「2階建て」と表現される構造に基づいています。この2階建て構造は、国民年金と厚生年金の二つの制度で成り立っており、それぞれに対応する遺族年金も存在します。

まず、1階部分に該当するのが国民年金に基づく「遺族基礎年金」です。この年金は、主に自営業者やフリーランスなどが加入している国民年金制度に基づき、被保険者が亡くなった際にその配偶者や子どもに支給されます。遺族基礎年金は、被保険者の死後も遺族の基本的な生活を支えるための基礎的な支援を提供します。

次に、2階部分となるのが厚生年金に基づく「遺族厚生年金」です。これは、会社員や公務員など(以下、会社員等とする)が加入している厚生年金制度に基づいて支給されるものです。遺族厚生年金は、被保険者が厚生年金保険の対象である勤務期間中に亡くなった場合、その配偶者や子ども、さらには一定条件を満たす場合には親や孫にも支給される可能性があります。遺族厚生年金は、遺族基礎年金に加えて支給されるため、遺族の経済的な支えをより強固にする役割を果たします。

つまり、会社員等である場合、一定の条件を満たせば、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給することができます。

遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い

以下に、遺族基礎年金と遺族厚生年金の違いを表にまとめました。

項目

遺族基礎年金

遺族厚生年金

対象者

国民年金の被保険者が亡くなった場合

厚生年金の被保険者が亡くなった場合

亡くなった配偶者の働き方

・個人事業主
・自営業
・会社員
・公務員

・会社員
・公務員
※個人事業主・自営業の場合でも、過去に厚生年金保険に加入していた(会社員・公務員としての勤務経験があある)場合、遺族厚生年金の支給対象となる可能性もある。

受給対象者

・子どもがいる配偶者
・子ども
※子とは以下のような場合をいいます。
・18歳到達年度末(3月31日)までの子
・20歳未満で障害等級1級または2級の子

・配偶者
・子
・父母
・孫
・祖父母

支給金額

定額(子どもの人数により増額)

老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3
※65歳以上の場合は、別途計算が必要(詳細は下で解説)

遺族年金が支給される条件とは

遺族基礎年金と遺族厚生年金では受給要件が異なります。

遺族基礎年金の受給要件

遺族基礎年金の受給要件については、次のいずれかの条件を満たしている場合に、遺族に対して支給されます。

①国民年金の被保険者である間に死亡したとき。
②国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき。
③老齢基礎年金の受給権者であった方(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限る) が死亡したとき。
④保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方が死亡したとき。
(引用:日本年金機構HP「遺族年金ガイド」

保険料の納付要件

さらに、1および2の要件については、死亡日の前日において保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上であることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までの場合、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないことが条件となります。

遺族厚生年金の受給要件

遺族厚生年金の受給要件については、次のいずれかの条件を満たしている場合に、遺族に対して支給されます。

①厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき。
②厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日*から5年以内に死亡したとき。
③1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が、死亡したとき。
④老齢厚生年金の受給権者であった方(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限る) が死亡したとき。
⑤保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が 25年以上ある方が死亡したとき。
*初診日とは、死亡の原因となった病気やけが(以下「傷病」といいます。)について、初めて医師または歯科医師(以下「医師等」といいます。)の診療を受けた日をいいます。
(引用:日本年金機構HP「遺族年金ガイド」

ただし、1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

遺族年金をもらえる人

遺族年金を受け取ることができる遺族は、亡くなった方によって生活が支えられていた人たちが対象です。この遺族の中で、最も優先順位の高い方が年金を受け取ることができます。

遺族年金をもらえる人

(引用:日本年金機構「日本年金機構HP「遺族年金ガイド」

「生計を維持されていた人」│共通の条件

受給対象者は、故人によって生計を維持されていたことが必要です。この「生計を維持されていた」とは、故人と生計を同一にしていたことを指し、具体的には以下の条件を満たす必要があります。

  • 生計を同じくしていること:同居していることまたは、別居しているが仕送りを受けている、健康保険の扶養親族であるなどの事情があること
  • 収入要件:前年の収入が850万円未満、または所得が655万5,000円未満であること

同居している必要はなく、単身赴任や子どもの下宿などで別居している場合でも対象となります。また、内縁関係にある場合でも、事実上の婚姻関係があり、生計が維持されていることが確認できれば受給可能です。

さらに、離婚している場合でも、非監護親から養育費を受け取り、定期的に面会しているケースでは、子どもの生計が非監護親によって維持されていると見なされ、受給資格が認められます。

遺族基礎年金をもらえる人│生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」

子どもがいる配偶者または子ども自身が受給対象です。ただし、同時に両方が受給することはできず、配偶者が受給する場合は子どもは受給できません。ここでいう「子ども」とは、18歳に達する年度の3月31日までの子どもを指します。ただし、障害等級1級または2級に認定され、独身である場合は、20歳まで受給が可能です。さらに、死亡時に胎児がいる場合、その胎児も出生後から受給資格を持つことになります。

  1. 子のある配偶者
  2. 子(18歳未満、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ場合)

遺族厚生年金をもらえる人│生計を維持されていた配偶者、子、親、孫、祖父母のいずれか

以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受給することになります。

第一順位
・配偶者(夫は妻の死亡時に55歳以上、妻は年齢制限なし)
・子ども(18歳未満、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ場合)
第一順位の中でも、さらに以下の優先順位があります。
1.子どものいる妻、または子どものいる55歳以上の夫
2.子ども
3.子どものいない妻、または子どものいない55歳以上の夫
第二順位
・亡くなった人の父母(死亡時に55歳以上)
第三順位
・亡くなった人の孫(18歳未満、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ場合)
第四順位
・亡くなった人の祖父母(死亡時に55歳以上)

配偶者とは│内縁の配偶者も含まれる

遺族年金を受け取ることができる遺族には、法律上の婚姻関係にある配偶者だけでなく、内縁の配偶者も含まれます。内縁の配偶者とは、正式に婚姻の届出はしていないものの、実質的に婚姻関係と同様の生活をしている人を指します。たとえば、一緒に生活し、経済的にも一体となっている場合などが該当します。

一方、子どもについては、亡くなった方の実子または養子が対象となります。実子とは、亡くなった方との間に生まれた子どもを指し、養子は法的に養子縁組をした子どもを含みます。しかし、内縁の配偶者の子どもであっても、法的に養子縁組をしていない場合は、遺族年金の受給対象にはなりません。

遺族年金の受給金額はいくら?

受け取る年金の金額は、遺族基礎年金と遺族厚生年金で異なります。もし遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方の受給要件を満たしている場合は、両方を合わせて受け取ることが可能です。

遺族基礎年金の計算方法と受給金額

子のある配偶者が受け取る場合

遺族基礎年金は、子どもがいる配偶者が受け取る場合、次のように設定されています。

昭和31年4月2日以後生まれの方

年額816,000円 + 子の加算額

昭和31年4月1日以前生まれの方

年額813,700円 + 子の加算額

子どもの加算額は以下の通りです。

1人目および2人目の子ども

各234,800円

3人目以降の子ども

各78,300円

子どもが受け取る場合

遺族基礎年金は、子どものみが受け取る場合でも支給されます。具体的な支給額は以下の通りです。

年額816,000円 +(2人目以降の子の加算額)

子どもの数

基本額

子ども加算額

合計 

1人

816,000円

816,000円

2人

816,000円

234,800円

1,050,800円

3人

816,000円

234,800円 + 78,300円

1,129,100円

子どもが複数いる場合、上記の合計額を年金を受ける子どもの人数で割った金額が、それぞれの子どもに支給される1人あたりの額となります。

遺族基礎年金の支給額は、物価や賃金の変動、その他の調整により毎年度改定されるため、受給開始時の額と変動する可能性があります。したがって、最新の情報を確認することが重要です。

遺族厚生年金の計算方法と受給金額

遺族厚生年金の年金額は、亡くなった方の厚生年金の加入期間や報酬額を基に計算します。

遺族厚生年金の年金額=亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4= (+)×3/4

A: 平成15年3月以前の加入期間

平均標準報酬月額に基づき計算されます。計算式は以下の通りです。

平均標準報酬月額×(7.125÷1,000)×平成15年3月までの被保険者期間の月数

※平均標準報酬月額とは、平成15年3月以前の各月の標準報酬月額を再評価率で現在価値に再評価し、その総額を加入期間の月数で割ったものです。

B: 平成15年4月以降の加入期間

こちらは平均標準報酬額に基づき計算されます。計算式は以下の通りです。

平均標準報酬額×(5.481÷1,000)×平成15年4月以降の被保険者期間の月数

平均標準報酬額とは、平成15年4月以降の各月の標準報酬月額と標準賞与額を再評価率で現在価値に再評価し、その総額を加入期間の月数で割ったものです。

65歳以上の場合の遺族厚生年金の計算方法と受給金額

65歳以上で老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取る資格がある方が、配偶者の死亡により遺族厚生年金を受け取る場合、年金額の計算方法には特別な規定があります。以下の2つの額を比較し、高い方が遺族厚生年金として支給されます。

  1. 亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4(詳細な計算方法は上記解説のとおり)
  2. ①の額の2/3 と ご本人の老齢厚生年金の額の1/2 の合計

遺族厚生年金の中高齢の寡婦加算額│妻に対してのみ支給

中高齢寡婦加算は、特定の条件を満たす妻に対して、40歳から65歳になるまでの間、年額612,000円が遺族厚生年金に加算される制度です。

この加算は、以下のいずれかに該当する場合に適用されます。

【中高齢寡婦加算の条件】

  1. 夫が亡くなった時点で妻が40歳以上65歳未満であり、生計を同じくしている18歳未満の子ども(または20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ子ども)がいない場合
  2. 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻(40歳に到達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けている)が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなった場合

この制度は、老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている夫が亡くなった場合に適用されますが、夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上であることが必要です。また、特例により20年未満でも共済組合などの加入期間を除いた老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている場合も含まれます。

中高齢寡婦加算は65歳まで適用され、その後は妻自身の老齢基礎年金に切り替わります。しかし、老齢基礎年金の額が中高齢寡婦加算額よりも少ない場合、年金額が減少することを防ぐために「経過的寡婦加算」が支給されることがあります。

【経過的寡婦加算の条件】

  1. 昭和31年4月1日以前に生まれた妻が65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生した場合
  2. 中高齢寡婦加算を受けていた昭和31年4月1日以前生まれの妻が65歳に達した場合

ただし、昭和31年4月2日以降に生まれた妻には経過的寡婦加算は支給されません。

遺族年金の請求手続き

遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取るためには、年金の請求手続きが必要です。

①請求書を提出する

遺族年金を請求する際の書類の提出先は以下のとおりです。

・遺族基礎年金のみを請求する場合

お住まいの市(区)役所または町村役場に提出してください。

・遺族厚生年金や共済組合等の加入期間がある場合

お近くの年金事務所または街角の年金相談センターに提出してください。これにより、共済組合等に加入していた期間の年金も請求することができます。

遺族年金の請求に必要な書類については、日本年金機構HP「遺族基礎年金を受けられるとき」または「遺族厚生年金を受けられるとき」に掲載されていますのでそちらを参照ください。

②年金証書を受け取る

遺族年金の請求書を提出すると、1か月程度で日本年金機構から「年金証書」「年金決定通知書」「年金を受給される皆様へ(パンフレット)」がご自宅に届きます。ただし、加入状況の確認が必要な場合は2か月程度かかることがあります。また、共済組合等から年金を受け取る権利がある場合は、さらに時間がかかる場合もあります。

③振り込みが開始する│いつからもらえる?

年金証書がご自宅に届いてから約1~2か月後に、年金の振り込みが始まります。振り込みは、年金請求時に指定した口座へ偶数月に2か月分ずつ行われます。

遺族年金の請求手続きの期限は5年

遺族年金の請求期限は、生計を維持していた人が亡くなった翌日から5年です。 この期間内に手続きを行わないと、原則として遺族年金を受け取ることができなくなります。ただし、時効が消滅しないようにするために、理由を書面で記載して申立て手続きをすれば、時効期限が延びる場合もあります。

遺族年金は、遺された家族の生計を支えるための重要な制度です。遺族が生活に困ることなく、できるだけ早く手続きを進めることをお勧めします。

遺族年金は「いつから」もらえる?│支給開始日

遺族年金の支給開始日は、被保険者が亡くなった翌月から始まります。

年金の支給は偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)に行われ、2か月分がまとめて振り込まれます。ただし、初回の支給に限り、奇数月に振り込まれることもあります。

申請後の手続きには時間がかかるため、申請してすぐに入金されるとは限りません。初回の入金までには、一般的に3か月から4か月かかると考えておくとよいでしょう。しかし、申請が通れば、遺族年金は亡くなった翌月分からまとめて受け取ることができますので安心してください。

遺族年金は「いつまで」もらえる?

遺族基礎年金の受給期間

遺族基礎年金は、亡くなった方によって生活を支えられていた子どもがいる場合に支給されます。この年金は、子どもが18歳になる年度の末日(3月31日)まで受給することが可能です。ただし、子どもが障害年金の障害等級1級または2級に該当する状態にある場合は、受給期間が20歳になるまで延長されます。

  • 子が満18歳になる年の末日まで
  • 障害等級1・2級の子が満20歳になる年の末日まで

妻や子どもが結婚した場合や、子どもが直系血族または直系姻族以外の養子になった場合などの特定の事由に該当すると、遺族基礎年金の受給権がなくなることがあります。これについては後ほど詳しく解説いたします。

遺族厚生年金の受給期間

遺族厚生年金は、亡くなった本人が死亡した翌月から支給が開始されます。受給期間は、受給対象者の年齢や家族構成によって異なります。

受給対象者

受給開始年齢

受給終了年齢

備考 

妻(子どもあり、または30歳以上)

翌月から

生涯

妻(子どもなし、30歳未満)

翌月から

5年間

子ども・孫

翌月から

18歳年度末まで

障害1級・2級の場合は20歳まで

子どもがいない夫(55歳以上)

60歳から

生涯

遺族基礎年金併給の場合、55歳から60歳まで受給可

父母・祖父母

60歳から

生涯

55歳以上の場合のみ受給可

妻の場合

子どもがいる妻、もしくは妻が30歳以上の場合、一生涯受給することができます。しかし、30歳未満で子どもがいない妻は、5年間に限り受給できます。

子ども・孫の場合

子どもや孫は、18歳になった年度の末日(3月31日)まで受給できます。障害等級1級または2級に該当する場合は、20歳になるまで受給が延長されます。

夫の場合

夫には、支給対象となる子どもがいる場合、遺族厚生年金は支給されず、子どもに支給されます。子どもがいない夫は、55歳以上である場合に限り、60歳から一生涯受給できます。ただし、遺族基礎年金を併せて受給できる場合は、55歳から60歳の間でも遺族厚生年金を受給できます。

父母・祖父母の場合

父母や祖父母は、55歳以上の場合に限り、60歳から一生涯受給できます。

遺族厚生年金が支給停止するケース

遺族厚生年金は、一定の条件を満たすと支給が一時的に停止されることがあります。具体的な理由と条件について確認しておきましょう。

  1. 労働基準法で定められた遺族補償が行われるとき
    労働基準法に基づく遺族補償が行われる場合、遺族厚生年金は死亡日から6年間支給停止となります。この期間中は、遺族補償が優先されるためです。
  2. 受給権を持つ夫、父母または祖父母が60歳未満のとき
    夫、父母、祖父母が受給権を持っていても、60歳未満の場合は支給が停止されます。60歳に達すると支給停止が解除され、年金の受給が開始されます。
  3. 受給権者の所在が1年以上明らかでないとき
    受給権者の所在が1年以上確認できない場合も支給が停止されます。所在が明らかになった時点で支給が再開されます。

また、遺族厚生年金の受給者は基本的に「1名のみ」であるというルールもあります。例えば、夫が亡くなり妻が受給権を有している間は、子ども自身への遺族厚生年金の支給は停止されます。しかし、妻が婚姻や死亡により受給権を失権した場合、子どもの支給停止は解除され、年金の支払いが始まります。

妻はいつまでもらえる?受給者が妻である場合を例にわかりやすく解説

夫が自営業であった場合

夫が自営業の場合は、国民年金に加入しています。その夫が亡くなった場合に、妻が受け取れるのは「遺族基礎年金」です。

【妻の受給期間】
・子が満18歳になる年の末日まで
・障害等級1・2級の子が満20歳になる年の末日まで

妻や子どもが結婚した場合や、子どもが直系血族または直系姻族以外の養子になった場合などの特定の事由に該当すると、遺族基礎年金の受給権がなくなることがあります。これについては後ほど詳しく解説いたします。

夫が会社員・公務員であった場合

子どもがいる妻、もしくは妻が30歳以上の場合、一生涯受給することができます。しかし、30歳未満で子どもがいない妻は、5年間に限り受給できます。

【妻の受給期間】
・子のいない妻で30歳未満の場合は、5年間
・子のいる妻は一生涯
※ただし婚姻したり養子になったりすると、受給権を失う
※ほかの公的年金を受け取ると、遺族年金をもらえなくなる場合がある

老齢年金を受給中でも遺族年金はもらえる?

老齢年金を受給している方が遺族になった場合や、老齢年金を受給している方が亡くなった場合における遺族年金の取り扱いについて、詳しく見ていきましょう。

遺族年金と自分の年金の併用

65歳以降、自分の老齢年金を受け取ることができますが、遺族基礎年金との同時受給はできません。そのため、老齢基礎年金と遺族基礎年金のどちらかを選択する必要があります。一方、遺族厚生年金は老齢基礎年金との同時受給が可能です。

妻が65歳以上で、遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方を受給できる場合、まず妻自身の老齢厚生年金が全額支給されます。その後、遺族厚生年金の額が妻自身の老齢厚生年金より多い場合、その差額が遺族厚生年金として支給される仕組みになっています。したがって、妻は自分の老齢年金を受け取りながら、遺族年金の差額も追加で受け取ることが可能です。

年金受給中の被保険者が亡くなった場合

65歳以上の夫が老齢厚生年金を受給している状態で亡くなった場合、妻の年収が850万円未満(または所得が655万5千円未満)であれば、遺族厚生年金を受給することができます。この条件は、夫の年齢が70歳以上や80歳以上であっても変わりません。

具体的には、遺族厚生年金の受給額は、夫の老齢厚生年金の約4分の3に相当する金額となります。例えば、夫の老齢厚生年金が月額200,000円だった場合、妻は月額150,000円ほどの遺族厚生年金を受け取ることができます。

このように、老齢年金を受給していても、遺族年金を同時に受給することができるのは大きな特徴です。

子どもなしの配偶者は遺族基礎年金を受け取れない│寡婦年金または死亡一時金の請求を

寡婦年金とは

国民年金に加入していた夫が、受給せずに亡くなった場合、妻は「寡婦年金」を受け取ることができます。

寡婦年金とは、自営業者や農業者など国民年金の第1号被保険者である夫が亡くなった際に、その夫と婚姻関係(事実婚を含む)にあり、死亡当時に夫に生計を維持されていた妻が受け取れる年金です。この年金は、妻が60歳から65歳までの間に限って支給されます。

具体的な条件としては、夫が死亡した日に第1号被保険者としての保険料納付期間(保険料免除期間を含む)が10年以上あることが求められます。さらに、夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受給することなく亡くなった場合に限ります。妻は、夫と10年以上継続して婚姻関係(事実婚を含む)にあり、その夫に生計維持されていた場合に寡婦年金を受給することができます。

寡婦年金の年金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算された老齢基礎年金額の4分の3となります。ここで注意すべき点は、夫がサラリーマンや公務員など第2号被保険者として納付した期間は年金額に反映されないことです。

なお、妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受給している場合には、寡婦年金は支給されません。このように、寡婦年金は特定の条件を満たす場合に限り支給されるものであり、該当する場合には適切に請求手続きを行うことが重要です。

死亡一時金とは

死亡一時金とは、国民年金法に基づく給付の一つであり、特定の条件を満たす国民年金第1号被保険者が老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らないまま死亡した場合に、その遺族に支給される一時金です。

具体的には、国民年金の保険料を36ヶ月以上納めた第1号被保険者が対象です。この死亡一時金は、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族、1. 配偶者、2. 子、3. 父母、4. 孫、5. 祖父母、6. 兄弟姉妹の中で優先順位の高い方に支給されます。ただし、遺族が遺族基礎年金を受けられる場合には、死亡一時金は支給されません。

さらに、寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取る資格がある場合には、どちらか一方を選択する必要があります。

死亡一時金を受給するためには一定の条件を満たす必要があります。条件は以下のとおりです。

  • 亡くなった方が国民年金の第1号被保険者であること。
  • 亡くなった方が36ヶ月以上の保険料を納めていたこと。
  • 亡くなった方が老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取っていなかったこと。
  • 受け取る方は、亡くなった方と生計を共にしていた遺族であること。

死亡一時金について、詳しくは、下記記事を参照してください。

遺族年金とは?その他の疑問を解決!

70歳以上でも遺族年金は受け取れる?

遺族年金については、70歳以上の夫が死亡した場合でも受け取れるか不安に思う方が多いかもしれません。しかし、遺族年金は一定の要件を満たしていれば受け取りが可能です。亡くなった方や遺族となった方が70歳以上であっても、基本的な要件は変わりません。

遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。遺族基礎年金では、死亡した方や配偶者に特別な年齢の制限はありません。受給資格には、子どもがいる配偶者や子ども自身が対象となり、特定の要件を満たしている必要があります。

一方、遺族厚生年金では、いくつかの条件があります。まず、亡くなった方の受給資格期間が25年以上であることが求められます。また、遺族が遺族厚生年金を受け取るには、亡くなった方によって生計を維持されていた配偶者や子どもであることが必要です。子どもについては、18歳になる年度の末日まで(障害がある場合は20歳まで)という年齢要件を満たしている必要があります。

さらに、配偶者の場合、年収が850万円未満(または所得が655万5千円未満)であることが条件となります。この要件は、夫が70歳以上であっても変わりません。

以上のように、70歳以上の夫が死亡した場合でも、遺族年金を受け取るための基本的な条件を満たしていれば受給が可能です。不安な点があれば、年金事務所などで具体的な条件や手続きを確認することをお勧めします。

亡くなった人が公務員の場合の遺族年金は?

公務員が亡くなった場合、その遺族が受け取ることができる遺族年金について説明します。以前は「遺族共済年金」として知られていたこの制度は、平成27年10月1日以降、遺族厚生年金と一元化されました。そのため、現在では新規に遺族共済年金を受け取ることはできず、遺族厚生年金としての手続きが必要です。

平成27年9月30日以前に受給権が発生している公務員の遺族は、現在も遺族共済年金を受け取ることができます。しかし、新たに遺族年金の受給権を得る場合は、遺族厚生年金として申請を行います。

現在、公務員の遺族が受け取ることができる遺族年金は、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類です。遺族基礎年金は、亡くなった人が国民年金の被保険者であり、その遺族が一定の条件を満たす場合に支給されます。一方、遺族厚生年金は、亡くなった人が厚生年金の被保険者であった場合に支給され、生計を共にしていた配偶者や子どもが受給対象となります。

公務員が亡くなった場合の遺族年金の申請手続きは、遺族厚生年金として行います。ただし、平成27年9月30日以前に受給権が発生している場合には、各共済組合に対して遺族共済年金の申請を行う必要があります。

このように、公務員が亡くなった場合の遺族年金は、基本的に遺族厚生年金として一元化されましたが、制度改正以前に受給権が発生している場合は遺族共済年金として受け取ることができます。新規の場合は、遺族基礎年金または遺族厚生年金の手続きを行ってください。

遺族共済年金の受給要件や受給資格者、金額などについては国家公務員共済組合連合会HP「遺族共済年金」を参照してください。

亡くなった人が自営業の場合の遺族年金は?

自営業の方が亡くなった場合に、その遺族が受け取ることができる公的給付について、以下の表に簡単にまとめました。

対象者

被保険者の要件

給付の名称

詳細 

子ども

受給資格期間25年以上、または全被保険者期間の2/3以上

遺族基礎年金

子どもが18歳になる年度の末日まで支給。

妻(婚姻期間10年以上)

第1号被保険者としての保険料納付済み期間が10年以上

寡婦年金

60歳から65歳まで支給。老齢基礎年金や障害基礎年金を受給していない場合に限る。

老齢基礎、障害基礎年金が未受給のまま亡くなった方の遺族

第1号被保険者としての保険料納付済み期間が36か月以上

死亡一時金

老齢基礎年金や障害基礎年金を受給していない場合に限る。

厚生年金の加入歴のある方の遺族

受給資格期間が300か月以上

遺族厚生年金

厚生年金の加入期間がある場合にのみ支給。

妻(厚生年金加入歴のある夫)

受給資格期間300か月以上で厚生年金加入期間20年以上

中高齢寡婦加算

子どもがいない場合や子どもが18歳を超えている場合に支給。

共働き家庭の場合、夫が妻の遺族年金を受け取るための条件は?

共働き家庭が増えた現代社会において、夫が妻の遺族年金を受け取るための条件について説明します。遺族基礎年金に関しては、2014年3月に「子のある妻」から「子のある配偶者」へと変更され、夫も子どもがいる場合は受給可能となりました。

一方、遺族厚生年金については、妻と夫で受給資格の年齢に違いがあり、特に夫が不利な状況となっています。具体的には、妻が死亡した時に夫が55歳以上であることが必須条件となっています。さらに、夫や55歳以上の父母、祖父母は受給資格を満たしていたとしても、受給開始は60歳からとなります。

夫が55歳未満でも、子どもがいる場合にはその子どもが遺族厚生年金を受給することが可能です。子どもが18歳の年度末まで受給資格を持つため、家計の支えとなる年金を受け取ることができます。

この現状は、共働き家庭が増える中で問題点とされており、今後の制度改善が期待されます。

遺族年金は非課税?

遺族年金は、公的年金から給付されるもので、所得税や住民税の算出では収入とみなされません。つまり、遺族年金に対しては、所得税や住民税が課税されないということです。これは、遺族年金が受給者の生活を支えるためのものであり、税金の負担を軽減するための措置です。

ただし、注意が必要なのは、老齢遺族年金や老齢厚生年金は課税対象となることです。これらの年金は収入としてみなされるため、所得税の対象となります。

遺族年金は収入とはみなされないため、基本的に確定申告の必要はありません。ただし、遺族年金以外に所得がある場合は、その所得については申告が必要です。

遺族年金に関するQ&A

Q: 遺族年金とは何ですか?

A: 遺族年金とは、被保険者が亡くなった際に、その遺族が生活の安定を図るために受け取ることができる公的な年金制度です。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。遺族基礎年金は主に国民年金の被保険者が亡くなった場合に支給され、遺族厚生年金は厚生年金の被保険者が亡くなった場合に支給されます。これらの年金は、遺族の生活を支えるために設けられた重要な制度です。

Q: 遺族年金の申請手続きはどのように行いますか?

A: 遺族年金の申請手続きは、以下の手順で行います:

  1. 必要書類を揃える:主な書類には、被保険者の死亡届、戸籍謄本、住民票、被保険者の年金手帳、受給者の本人確認書類などがあります。具体的な書類は役所や年金事務所で確認してください。
  2. 申請書の提出:揃えた書類とともに、遺族年金の申請書を記入し、役所や年金事務所に提出します。
  3. 審査と通知:申請が受理されると、年金事務所で審査が行われ、審査が通れば「年金証書」や「年金決定通知書」が郵送されます。
  4. 振り込み開始:年金証書が届いてから、約1~2か月後に年金の振り込みが始まります。支給は偶数月に2か月分まとめて行われます。

申請手続きには時間がかかる場合がありますが、申請が通れば亡くなった翌月分からの年金を受け取ることができます。

Q: 自分の年金と遺族年金は同時に受け取れますか?

A: 遺族年金の種類によって扱いが異なります。65歳以降、自分の老齢年金を受け取ることができますが、遺族基礎年金との同時受給はできません。そのため、老齢基礎年金と遺族基礎年金のどちらかを選択する必要があります。一方、遺族厚生年金は老齢基礎年金との同時受給が可能です。さらに、老齢基礎年金、老齢厚生年金、遺族厚生年金の3つを同時に受給することも可能ですが、以下の条件があります:

  • 老齢厚生年金よりも遺族厚生年金が高い場合、その差額が支給されます。
  • 老齢厚生年金が遺族厚生年金よりも高い場合、遺族厚生年金は支給停止となります。
  • 自分の老齢厚生年金の額を超える遺族厚生年金がある場合、超えた部分のみ受給することができます。

これにより、受給する年金の総額が調整される仕組みとなっています。

Q: 離婚・別居中の配偶者が亡くなっても遺族年金は受け取れますか?

A: 離婚により夫婦関係が解消された場合、元妻は遺族基礎年金を受け取れませんが、夫と子どもの親子関係は続くため、子どもが遺族基礎年金を受給できる場合があります。別居中の配偶者が亡くなった場合、同一生計で事実上の夫婦関係が認められれば、遺族基礎年金が支給される可能性もあります。

遺族厚生年金についても、被保険者が子どもの養育費を支払っているなど、生計維持の関係が認められれば、受給できるケースがあります。

Q: 受給者が再婚しても遺族年金はそのまま受け取れますか?

A: 受給者が再婚すると遺族年金の受給資格がなくなるため、元配偶者の遺族年金は受け取れません。再婚した場合は、年金事務所または年金相談センターに「遺族年金失権届」を提出する必要があります。遺族基礎年金の場合は再婚後14日以内、遺族厚生年金の場合は再婚後10日以内が提出期限です。

再婚後に遺族年金を受給していた場合、原則として一括返納しなければなりませんが、高額な場合は分割返納が認められることもあります。また、婚姻届を提出していなくても、事実上の婚姻関係にある第三者がいる場合、遺族年金を受給できなくなる可能性がありますので注意が必要です。

まとめ

遺族年金とは、亡くなった被保険者の遺族が生活の安定を図るために受け取ることができる公的な年金制度です。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、それぞれ異なる受給条件と支給額があります。

遺族基礎年金は、主に子どもがいる配偶者や子ども自身が受給対象となり、国民年金の被保険者が亡くなった際に支給されます。一方、遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた被保険者が亡くなった場合に、その配偶者や子ども、場合によっては親や孫が受給対象となります。遺族厚生年金は、被保険者の報酬や加入期間に基づいて計算されるため、個々の状況により支給額が異なります。

また、一定の条件を満たす場合には、「寡婦年金」や「死亡一時金」といった他の給付金も受け取ることができます。特に自営業者や農業者など第1号被保険者の遺族には、これらの給付が重要な支援となります。

遺族年金の受給手続きは、必要書類を揃えて役所や年金事務所に申請することから始まります。申請手続きには時間がかかることもありますが、受給が決定すれば、亡くなった翌月分からの年金を受け取ることができます。

この記事では、遺族年金の基本的な仕組みや受給条件、金額の計算方法について詳しく解説しました。遺族年金は、遺族が経済的な安定を保つために重要な制度です。具体的な条件や手続きについては、年金事務所などで確認し、正しい情報を元に適切な手続きを行いましょう。

 

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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