遺言執行者とは?遺言の執行人の権限や選任申立ての流れを解説

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するため、遺言で指定され、又は家庭裁判所により選任される者です。遺言者の意思に沿って、遺産の承継・分配に関する手続や相続財産の管理を進めます。遺言執行者の権限は、遺産分割や財産の管理、債務の弁済など多岐にわたりますが、その活動には法律に基づく厳格な手続きが求められます。遺言執行者を選任することで、相続人間の争いや混乱を未然に防ぎ、スムーズな相続手続きを実現することが可能です。
記事では、遺言執行者の権限・義務と、家庭裁判所に選任を申し立てる場合の流れを解説します。遺言の作成や遺言執行者の指定を検討する際の参考にしてください。遺言執行者の役割と重要性を理解し、適切な対応を心掛けるために、ぜひこの記事をご一読ください。
目次
遺言執行者とは?
遺言執行者とは、遺言者が作成した遺言の内容を実現するために、遺言で指定され、又は家庭裁判所により選任される者です。遺言執行者は、遺産相続に関わる手続きや遺産の分配を行う義務と権限を持ちます。「遺言」は一般に「ゆいごん」と読みますが、法律用語としては「いごん」と読むこともあります。民法上の名称は「遺言執行者」であり、実務上は「遺言執行人」と呼ばれることもあります。
2019年(令和元年)7月1日に施行された民法改正により、遺言執行者の権限や義務がより明確に定められました。(参考:法務省ホームページ「遺言執行者の権限の明確化等 」)改正前の民法では、遺言執行者は相続人の代理人とみなされていました。改正後は、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為を行う権利義務を有する者として位置付けられています。これにより、遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な行為を、法律上の権限に基づいて行うことができます。
遺言執行者は、遺言で遺言執行者を指定し、又は第三者にその指定を委託することができます。遺言執行者が指定されていない場合や、遺言執行者がいなくなった場合には、相続人、受遺者、遺言者の債権者などの利害関係人が、家庭裁判所に選任を申し立てることができます。遺言執行者の役割と権限を理解することで、相続手続きを円滑に進めることができ、相続人間のトラブルを避けることができます。
以下では、遺言執行者の具体的な権限や選任の方法について詳しく解説します。
(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
(e-Gov法令検索「民法1012条」)
遺言執行者の権限・役割
遺言執行者は、遺言者が亡くなった後に遺言書の内容を実現するために選ばれる人物で、遺産相続に関わる様々な手続きを行います。遺言執行者には多くの権限が与えられており、その主な役割は以下の通りです。
相続財産の管理
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
- 財産目録の作成
※自筆証書遺言などでは、遺言の執行に先立ち、家庭裁判所で検認が必要となる場合があります。
具体的な相続手続き
- 貸金庫の解錠・解約・取り出し
- 預貯金の払い戻し・分配
- 不動産の登記申請手続き
- 株式の名義変更
- 自動車の名義変更
- 遺言による保険金受取人変更に関する保険会社への通知(該当する場合)
特別な権限
- 非嫡出子の認知
- 相続人の廃除とその取り消し
遺言執行者は、相続人の個別の意思に従うのではなく、遺言の内容を実現することを目的として職務を行います。もっとも、遺言の有効性や執行方法に争いがある場合には、個別の事情に応じた対応が必要です。特に、非嫡出子の認知や相続人の廃除、その取り消しなどは遺言執行者にしかできない行為です。法改正により、遺言によって特定の相続人に相続財産を承継させる場合など、一定の要件を満たすときは、遺言執行者が単独で相続登記を申請できる場合があります。
遺言執行者の義務
遺言執行者には、上記のとおり広い権限が認められていますが、これに伴う義務も負います。
具体的には次のとおりです。
① 任務開始義務
遺言執行者が就任を承諾したときは、直ちに任務を開始しなければなりません。承諾後は、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知する必要があります。正当な理由なく任務を開始しない場合、解任の理由となることがあります。
(遺言執行者の任務の開始)
第千七条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
(e-Gov法令検索「民法1007条」)
② 相続人への通知義務
遺言執行者には、相続人全員に対して通知を行う義務があります。この義務は2019年の民法改正により追加され、遺言執行者が必ず履行しなければならない重要な役割です。
民法が改正される前は、遺言執行者が相続人に通知を行わずに相続手続きを進めることが可能でした。このため、相続人が遺言の内容や財産状況を知らないまま手続きが進行し、遺言執行者と相続人の間でトラブルが発生するケースが多くありました。これを防ぐため、2019年に民法が改正され、遺言執行者に通知義務が課されるようになりました。
遺言執行者は、次のような場合、相続人全員に対して通知を行う必要があります。
- 遺言執行者は、任務を開始したとき
- 相続人から請求があったとき
- 遺言執行が終了したとき
通知・報告の方法や記載内容は事案に応じて異なりますが、後日の確認に備え、書面で行うことが一般的です。
これにより、相続人は遺言の内容や進捗状況を把握することができ、不透明な手続きが進行することを防ぎます。
通知義務を怠った場合、相続人からの請求があっても無視を続けた場合には、遺言執行者は解任される可能性があります。
③ 財産目録の作成義務
遺言執行者は、遅滞なく相続財産の目録を作成し、相続人に交付しなければなりません。目録に記載すべき財産の範囲や、遺言書に記載のない財産に関する対応は、遺言の内容や遺言執行者の職務の範囲を踏まえて判断します。
(相続財産の目録の作成)
第千十一条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。
(e-Gov法令検索「民法1011条」)
④ 遺言内容の執行
遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な行為を行う義務があります。遺言執行者は、遺言の内容に応じて、不動産の登記手続、預貯金・証券の相続手続などを進めます。具体的な手続の進め方や財産の交付先は、遺言の文言、承継の態様および各金融機関・証券会社の取扱いを確認して判断します。
⑤ その他の義務
遺言執行者には、民法上、委任に関する規定の一部が準用されます。
- 善管注意義務: 遺言執行者は、善良な管理者の注意をもって職務を行う義務があります。
- 相続人への報告義務: 遺言執行者は、相続人に対する報告義務、受け取った金銭その他の物を引き渡す義務が問題となります。
- 財産の引き渡し義務: 財産の交付先は、遺言の内容に応じて、相続人、受遺者又は包括受遺者となります。
通知義務違反をするとどうなる?
遺言執行者には、遺言の内容を相続人に通知する法律上の義務があります。通知義務に違反した場合でも、直ちに損害賠償責任や解任が生じるわけではありません。ただし、任務懈怠によって相続人に損害が生じたと認められる場合には、損害賠償責任が問題となることがあります。また、任務を怠ったことその他の正当な事由があるときは、利害関係人の請求により、家庭裁判所が解任を認める場合があります。
以下のようなケースでは、遺言執行者が遺言の内容を通知しなかったことにより相続人に損害が発生する可能性があります。この場合、損害を受けた相続人は遺言執行者に対して損害賠償を請求することができます。
1.遺留分侵害の場合
遺言の内容が相続人の遺留分を侵害している場合、遺言執行者が遺言の内容を相続人に通知しないと、相続人は自分の遺留分が侵害されていることに気づかず、遺留分侵害額の請求を行うことができません。遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効により消滅します。また、相続開始の時から10年を経過したときも行使できません。遺言執行者が通知を怠ると、相続人はこの期限内に請求できず、結果として本来得られるはずの遺留分を失う損害が発生します。
2.公正証書遺言の存在を知らずに遺産分割協議を行った場合
相続人が遺言の存在を知らないまま遺産分割協議を行い、その後で遺言の存在が明らかになる場合も問題が生じます。相続人が遺言の存在を知らないまま遺産分割協議を行うと、後に遺言が判明した場合に、協議内容と遺言内容との関係を整理する必要が生じることがあります。遺産分割協議の効力や、費用負担・損害賠償の成否は、遺言の内容や個別の事情によって判断されます。
遺言執行者が遺言の内容を通知しなかった場合、その結果として相続人に損害が発生すると、遺言執行者は損害を賠償する義務を負う可能性があります。さらに、任務を怠ったとして家庭裁判所によって解任されるリスクもあります。
遺言執行者ができないこと
遺言執行者にはできないことも存在します。その一つが相続税の申告です。
相続税の申告義務は、相続又は遺贈により財産を取得した相続人・受遺者に課されます。遺言執行者の地位だけを根拠として、相続人・受遺者に代わり相続税の申告を行う権限が当然に認められるわけではありません。申告の準備や提出を第三者に依頼する場合は、別途、必要な権限や税理士法上の取扱いを確認してください。相続税の申告は、相続人や受遺者が自らの責任で行わなければならないため、遺言執行者の権限には含まれません。
遺言執行者になれる人は?相続人がなっても問題ない?
民法第1009条によれば、遺言執行者になることができない人は以下の通りです。
- 未成年者
- 破産者
これら以外の者については、原則として遺言執行者に指定又は選任されることが可能ですが、実際に就任を依頼する際は、事務処理能力や利害関係の有無なども考慮する必要があります。
(遺言執行者の欠格事由)
第千九条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
(e-Gov法令検索「民法1009条」)
相続人を遺言執行者に指定することは、法律上可能です。ただし、他の相続人との関係や遺言の内容によっては、公平性に対する疑念や紛争が生じるおそれがあるため、指定の適否は慎重に検討する必要があります。例えば、遺言書に「長男〇〇を遺言執行者に指定する」と明記されていれば、その長男は遺言執行者としての任務を果たすことができます。相続人が遺言執行者になることで、遺言の内容を理解しやすく、スムーズに相続手続きを進めることができる場合もあります。
ただし、遺言執行者は弁護士や司法書士などの専門家に依頼がおすすめ
相続人間に利害対立がある場合や、財産が多岐にわたる場合には、弁護士や司法書士などの専門家を遺言執行者の候補とすることを検討できます。法律上は相続人を遺言執行者に指定することは問題ありませんが、実務上、様々なトラブルが発生するリスクがあります。
相続人を遺言執行者に指定する際のトラブル
- 相続人間の確執: 遺言執行者に指定されなかった相続人が不満を抱く可能性があり、これが原因で相続人間の確執が生まれることがあります。
- 不正疑惑: 遺言執行者が遺産の一部を不正に取得したのではないかと疑われるリスクがあり、相続人間の信頼関係が崩れる可能性があります。
- 手続きの遅延: 相続手続きに不慣れな相続人が遺言執行者となると、手続きに時間がかかり、相続手続きが遅れることがあります。
専門家を遺言執行者に依頼するメリット
- 公平性: 専門家は公平かつ中立な立場から職務を遂行するため、相続人間でのトラブルを未然に防ぐことができます。
- 専門知識: 専門家は相続手続きに精通しているため、効率的かつ確実に遺言の内容を実現することができます。
- 負担軽減: 相続手続きにかかる精神的および時間的な負担を大幅に軽減することができます。
法人を遺言執行者に指定する例もありますが、当該法人が就任を受諾するか、遺言執行者となることが業務範囲に含まれるか、組織変更等があった場合にどのように対応するかを、事前に確認することが重要です。
遺言執行者は必要か?
遺言執行者は全ての相続において必須というわけではありませんが、遺言執行者の選任が絶対に必要となるケースもあります。また、遺言執行者の選任をおすすめする場合もあります。ここでは、遺言執行者が必要なケースと、選任することで相続手続きがスムーズに進むケースについて解説します。
遺言執行者しかできないことがある
遺言執行者の関与が必要となる代表的な場面には、次の3つがあります。
①遺言による認知
遺言によって婚姻外の子(非嫡出子)を認知する場合には、遺言執行者が認知の届出をする必要があります。遺言で認知を行う場合に遺言執行者が指定されていなければ、相続開始後に家庭裁判所へ遺言執行者の選任を申し立てることを検討します。
②遺言による相続人の廃除又は廃除の取消し
また、遺言による相続人の廃除又は廃除の取消しでは、遺言執行者が家庭裁判所への請求を行います。廃除が認められるかは、民法上の要件を満たすかどうかについて家庭裁判所が判断します。
③遺言執行者がいる場合における遺贈の履行
特定遺贈とは、特定の不動産、預貯金その他の財産を、特定の者に遺贈することをいいます。受遺者は、相続人である場合も、相続人以外の者である場合もあります。例えば、A不動産を法定相続人以外の人に遺贈する場合です。遺言執行者がいる場合には、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができます(民法1012条2項)。特定遺贈を含む遺言では、執行手続を円滑に進めるため、遺言執行者の指定を検討するとよいでしょう。
第千十二条
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
(e-Gov法令検索「民法1012条第2項」)
遺言執行者を選任した方がよいケースも
次に、遺言執行者を選任しなくても相続手続きは進められますが、選任することで手続きが円滑に進むケースです。
①相続人に負担をかけたくない場合
相続人が現役世代で忙しい、遠方に住んでいるなどの事情がある場合、遺言執行者を選任することで、相続手続きの負担を軽減できます。
②相続人が手続きを自分で行うことが難しい場合
相続人に認知症の方がいる、非協力的な相続人がいる、または相続手続きに不慣れな場合には、遺言執行者を選任することでスムーズに手続きを進めることができます。
遺言執行者選任の方法
遺言執行者を定める主な方法には、①遺言で遺言執行者を指定する方法、②遺言で第三者に遺言執行者の指定を委託する方法、③相続開始後に家庭裁判所へ選任を申し立てる方法があります。ここでは、基本となる遺言書で遺言執行者を選任する方法について詳しく解説します。
遺言で遺言執行者を指定する場合は、遺言書に本人を特定できる情報を記載します。もっとも、遺言書自体が民法上の方式を満たして有効に作成されていることが前提となるため、氏名、住所、生年月日などを正確に記載することが重要です。
氏名:(遺言執行者の氏名)
生年月日:(遺言執行者の生年月日)
住所:(遺言執行者の住所)
職業:(遺言執行者の職業)
遺言執行者は、不動産の移転登記手続き、預貯金の解約及び払戻し、名義変更、貸金庫の開扉、貸金庫契約の解約その他この遺言の執行に必要な一切の権限を有する。
第〇条 遺言執行者の報酬は、遺産総額の〇パーセントと定める。
遺言書に遺言執行者を記載することは重要ですが、いくつかの注意点があります。まず、遺言書に遺言執行者を記載しただけでは、その人に遺言執行者としての義務が自動的に発生するわけではありません。特に、事前に知らせないまま家族や友人を遺言執行者に指定した場合、その人物が負担を感じて就任を拒絶する可能性もあります。
遺言執行者の選任に際して、事前に候補者の承諾を得ることは法的な要件ではありません。しかし、可能な限り事前に承諾を得ておくことが望ましいです。事前に了承を得ておくことで、相続開始後にスムーズに遺言執行者としての任務を引き受けてもらえる可能性が高まります。
遺言書に遺言執行者の記載がない場合や、指定された遺言執行者が辞退した場合には、家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらう方法もあります。この場合、相続人や利害関係者が家庭裁判所に申し立てを行い、適任者を選任してもらいます。
以下では、遺言執行者を家庭裁判所に選任してもらう方法について、その手続きの流れを詳しく解説いたします。
遺言執行者選任申立の流れ
遺言で遺言執行者が指定されていない場合や、指定された遺言執行者が死亡・辞退等により就任しない場合には、遺言の内容や必要な手続に応じて、利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます。
家庭裁判所への申立てが必要な場合
- 遺言書で遺言執行者が選任されていない場合
遺言書に遺言執行者の記載がなく、遺言執行者が指定されていない場合。 - 遺言書で指定された遺言執行者が遺言者より先に死亡している場合
遺言書に遺言執行者が指定されているが、その遺言執行者が遺言者の死後に死亡している場合。 - 遺言執行者が就任を拒絶した場合
遺言書で遺言執行者が指定されていたが、その者が遺言執行者としての役割を引き受けることを拒否した場合。
なお、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てができるのは、遺言者が亡くなり、遺言書の効力が発生した後です。遺言者の生前に家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることはできません。
自宅などで保管されていた自筆証書遺言については、原則として、遺言の執行に先立ち家庭裁判所で検認を受ける必要があります。ただし、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管されていた遺言書は、検認を要しません。検認は、遺言書の形状・内容を明確にして偽造・変造を防止するための手続であり、遺言の有効性を判断する手続ではありません。
以下では具体的に手続きの流れを解説していきます。
①必要書類を準備する
遺言執行者の選任を家庭裁判所に申し立てる際には、以下の書類を準備する必要があります。書類の詳細を表形式でまとめ、必要事項を解説します。
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申立書 |
家庭裁判所に提出する基本的な書類。裁判所のHP「遺言執行者の選任の申立書」に掲載されている書式および記載例を参考に正確に記入。 |
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遺言者の死亡記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(全部事項証明書) |
遺言者が死亡したことを証明する書類。申立先の家庭裁判所に検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要。 |
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遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票 |
遺言執行者候補者の現住所を確認するための書類。最新の情報を取得すること。 |
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遺言書の写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し |
遺言書の内容を証明する書類。申立先の家庭裁判所に検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要。 |
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利害関係を証する資料 |
申立人と遺言者の関係を示す書類(例:親族の場合は戸籍謄本)。親族以外の場合、適切な証明書類を用意する。 |
上記の必要書類の他に、遺言書1通につき収入印紙800円分の手数料と、連絡用の郵便切手が必要です。用意する郵便切手の詳細については、申立て先の裁判所にご確認ください。
なお、審理の過程で必要とされる場合には、追加の書類の提出が求められる場合もあるため、その際は裁判所の指示に従って速やかに準備しましょう。
②家庭裁判所に申立てる
書類の準備が整ったら、次に行うのは管轄の家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをすることです。管轄の家庭裁判所とは、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所を指します。この家庭裁判所に必要書類を提出し、正式な申立てを行います。(管轄裁判所を調べたい方はこちら)
申立ができるのは「相続人、遺贈を受けた人、遺言者の債権者などの利害関係人」です。
申立て後、家庭裁判所は、必要に応じて遺言執行者候補者の就任意思や適格性を確認します。審理の方法や選任までに要する期間は、事案の内容や家庭裁判所の運用によって異なります。候補者は、裁判所から照会を受けた場合には、指定された期限までに回答します。
③遺言執行者が選任される
家庭裁判所は照会書の回答内容を審査し、適任と判断された場合、遺言執行者を正式に選任します。
遺言執行者が選任されると、家庭裁判所から申立人と遺言執行者に対して審判書が送付されます。この審判書は、遺言執行者の選任が正式に認められたことを証明する重要な書類です。審判書が届くタイミングは、照会書への回答からおおよそ1週間から2週間後となることが一般的です。
審判書を受け取った遺言執行者は、これをもって正式に遺言の執行を開始することができます。遺言執行者は審判書を手元に置き、必要に応じて関係者に提示することで、自身の権限を証明することが可能となります。
遺言執行者に指定された人がやること│業務の流れを解説
①就任通知書と遺言書の写しを送付する
遺言執行者に指定された人がやることとして、まず重要なのは就職通知書と遺言書の写しを送付することです。遺言書で遺言執行者に指定された人が実際にその役割を引き受けるかどうかは本人の自由です。
遺言執行者への就任を承諾した場合は、遅滞なく任務を開始し、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。通知は書面で行うことが一般的であり、遺言書の写しを添付するかどうかは、遺言の内容や個人情報への配慮などを踏まえて検討します。これを実現するためには、就職通知書と併せて遺言書の写しも相続人に送付することが必要です。遺言書の写しを送付することで、相続人は遺言の内容を把握し、遺言執行者がどのような手続きを行うのかを理解することができます。
②相続人と相続財産を調査し、財産目録を作成する
まず、被相続人の戸籍調査を行い、法定相続人を確定させます。これは、遺言書に記載された法定相続人の範囲を把握し、漏れている法定相続人がいないかを確認するために必要な作業です。
並行して、遺言執行者は被相続人の相続財産の調査も行います。遺言執行者は、遺言の内容および職務の範囲を踏まえ、相続財産を調査します。財産目録には、財産を特定できるよう、預貯金、不動産、株式、債務その他の財産を記載します。通帳の写し、登記事項証明書その他の資料を添付するかは、財産の内容や相続人への説明の必要性に応じて判断します。これにより、相続財産の全体像を正確に把握することができます。
次に、この相続財産目録を相続人や包括受遺者に交付(通知)します。相続人から請求があった場合、遺言執行者は、その相続人の立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければなりません。これは、民法第1011条において義務化されているため、遺言執行者はこの義務を確実に履行する必要があります。
③遺言の執行と業務完了の報告
遺言書の内容に沿って、指定の財産を指定された相続割合や分割方法で分配するための手続きを実行します。
例えば、遺言書に預貯金の払戻しや解約が指示されている場合、遺言執行者は金融機関に対して手続きを行い、指定された相続人に対して適切に分配します。また、不動産が相続される場合には、相続登記の手続きを行う必要があります。特定財産継承遺言が存在する場合、遺言執行者は単独で相続登記を行うことが可能です。遺言執行者は、遺言の内容に従い、金銭の支払いや財産の引渡しなどを行います。相続財産の売却を行う場合には、遺言による授権の有無や売却の必要性を慎重に確認する必要があります。
遺言の内容に基づく手続きが全て完了したら、遺言執行者は業務完了の報告を行います。これは民法第1012条第3項に基づくもので、遅滞なくその経過と結果を相続人や包括受遺者に報告しなければなりません。この報告は、「職務完了報告書」を作成し、送付することで行います。報告書には以下の内容を記載します。
まず、遺言執行者の職務が全て完了した旨を明記します。次に、遺言執行に係る具体的な職務内容を詳細に記載します。これは、どのような手続きが行われたのか、どの財産がどのように分配されたのかを明確にするためです。遺言の執行が終了したときは、遅滞なく、その経過と結果を相続人に報告します。報告書には、行った手続、財産の引渡し又は分配の状況、必要に応じて収支の状況を記載します。
遺言執行者は解任することができる?
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために多くの任務を担いますが、その役割を適切に果たさない場合や、その他の正当な事由がある場合には解任されることがあります。民法第1019条第1項では、以下のように定められています。
(遺言執行者の解任及び辞任)
第千十九条 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
(e-Gov法令検索「民法1019条」)
①遺言執行者が任務を怠ったとき
遺言執行者に就任した人は、すぐに相続手続きや財産管理などの任務を開始しなければなりません。任務を開始したら、遺言の内容を他の相続人に知らせ、被相続人がどのような財産を持っていたかについてまとめた財産目録を作成する必要があります。遺言執行者には多くの任務があり、それらを怠ると相続人に代わって大きな負担がかかります。そのため、遺言執行者が任務を怠る場合、例えば、就任後すぐに任務に取りかからなかったり、必要な手続きを進めなかったりした場合は、利害関係者が家庭裁判所に対して解任を請求することができます。
②その他正当な事由があるとき
「正当な事由」とは、遺言執行者が重い病気にかかり任務を遂行できなくなった場合や、転勤などの事情により遠方に引っ越すことになった場合などが含まれます。これらの理由により、遺言執行者が任務を続行できない場合、利害関係者は家庭裁判所に対して解任を請求することができます。ただし、「個人的に遺言執行者のことが気に入らない」や「報酬を支払いたくない」という理由は正当な事由には該当しません。
正当な事由の基準は曖昧なことが多いため、事前に申立先の家庭裁判所に確認するか、相続に詳しい専門家に相談することが望ましいです。
遺言執行者の解任手続き
①家庭裁判所に申し立てる
遺言執行者の解任は相続人が決定するものではなく、家庭裁判所が最終的に判断します。遺言執行者の解任は、相続人、受遺者その他の利害関係人が、家庭裁判所に請求して行います。
遺言執行者の解任を希望する場合、まずは遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。
②必要書類を準備する
遺言執行者の解任手続きを進めるためには、以下の書類を準備する必要があります。
- 申立人の戸籍謄本、住民票または戸籍の附票
- 遺言執行者の戸籍謄本、住民票または戸籍の附票
- 遺言者の戸籍謄本、住民票または戸籍の附票
- 遺言書のコピー、または遺言執行者の選任審判書
必要書類とともに「家事審判申立書」を作成し提出します。申立書には申立先や作成日、被相続人や申立人の情報を正確に記入します。また、申立理由の欄には、解任を希望するに至った経緯や状況を詳しく記載します。申し立ての際には、手数料として800円分の収入印紙が必要です。
申立書の書式や必要書類は、解任手続を扱う家庭裁判所の案内を確認してください。裁判所のホームページ「遺言執行者の選任の申立書」からダウンロード可能です。
③家庭裁判所から審判書が発行される
遺言執行者の解任の審判が確定されると、家庭裁判所から「審判書謄本」が発行されます。解任の審理に要する期間は、事案の内容や家庭裁判所の運用により異なります。
④遺言執行者の再選任
遺言執行者が解任された場合、その地位は承継されません。残された遺言執行事務があるときは、利害関係人が家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を申し立てることを検討します。
遺言執行者が死亡したらどうする?
遺言執行者がすでに死亡している場合、対応方法は状況によって異なります。
相続開始前に死亡した場合
遺言者がまだ存命であり、遺言書を書き直せる状態である場合、遺言執行者を改めて指定した新しい遺言書を作成することが最善の方法です。この場合、遺言書の内容自体に変更がないのであれば、新たに遺言執行者を指定するだけで済みます。しかし、以前の遺言書の内容が現状と一致しているかどうかをしっかりと確認することが重要です。
相続開始後に亡くなった場合
相続開始後に遺言執行者が就任し、その後に遺言執行者が死亡した場合、その地位は遺言執行者の相続人に承継されることはありません。
このため、遺言執行者が任務の途中で死亡した場合、その地位は承継されません。残された遺言執行事務があるときは、利害関係人が家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を申し立てる必要があります。
この場合も、相続人や利害関係者は家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます(民法第1010条)。遺言執行者が途中で亡くなった場合、速やかに新たな遺言執行者を選任することが重要です。
遺言執行者に関するQ&A
Q1.遺言執行者の報酬はどのくらいで、支払いのタイミングはいつですか?
A1. 遺言執行者の報酬は、遺言で定められている場合のほか、家庭裁判所が定める場合や、専門家との契約で定める場合があります。金額や算定方法は、相続財産の内容、手続の難易度、報酬規程などによって異なるため、就任を依頼する前に確認することが重要です。遺言執行者の報酬は法的に基準が定められているわけではありませんが、専門家によって報酬にばらつきがあるため、契約を結ぶ前にしっかりと確認することが重要です。
報酬の負担方法や支払時期も、遺言・審判・契約の内容を確認して判断します。ただし、支払額は遺言者の生前に専門家に遺言執行者を依頼し、契約を結んだ時点で決定することが通常です。
遺言執行者の報酬について、詳しくは下記記事を参照してください。
Q2.遺言執行者は辞任することができますか?
A2. 遺言執行者は辞任することができますが、辞任のタイミングによって手続きが異なります。
遺言執行者に指定又は選任されても、就任を承諾する前であれば、就任を拒絶することができます。拒絶に際して、特別な理由を示す必要はありません。
一方、遺言執行者に就任した「後」に辞任するには、正当な事由が必要です。例えば、引っ越しや病気などで職務の継続が客観的に困難である場合が該当します。単に職務が難しいという理由では辞任は認められません。
就任後に辞任するには、正当な事由があり、家庭裁判所の許可を得る必要があります。病気その他の事情により職務の継続が困難になった場合には、速やかに専門家へ相談の上、必要な手続を確認しましょう。
まとめ
遺言執行者とは、遺言者の意思を実現するために、遺言の内容を具体的に執行する責任を持つ人物のことです。遺言執行者は、遺言書に記載された遺産の分配方法や相続手続きを正確に遂行し、相続人間のトラブルを未然に防ぐ重要な役割を担います。遺言執行者は、遺言で指定することが一般的です。遺言執行者が指定されていない場合や、指定された者が死亡・辞退等により就任しない場合には、遺言の内容や残された執行事務に応じて、利害関係人が家庭裁判所に選任を申し立てることができます。
遺言執行者には多くの権限が与えられており、相続財産の管理や分配、遺言内容の通知など、遺言の実行に必要な手続きを行います。しかし、相続税の申告など、相続人や受遺者の固有の義務については代行できない点に注意が必要です。 遺言執行者が任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人が家庭裁判所に解任を請求することができます。
この記事を通じて、遺言執行者の役割や権限、選任申立ての流れについての基本的な知識を深めていただければ幸いです。個別の遺言内容や相続関係によって対応が異なるため、お悩みの方はぜひあおい法律事務所にご相談ください。
この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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