精神的DVのチェックリスト|加害者の言動に見られる特徴とは?
精神的DVは、身体的暴力と異なり目で見てチェックし分かるものではないため、自身が被害者であるかどうか、自分の夫や妻が加害者であるかどうかを判断するのが難しい行為です。
ですが、その影響は決して軽いものではなく、たとえ精神的DVをしてくる夫や妻と離婚したとしても、離婚後数年経ってからPTSD症状に悩まされることも少なくありません。
この記事では、精神的DVの行為にどういった特徴が見られるのか、自身がDV被害者で配偶者がDV加害者の可能性があるのかについてチェックするためのチェックリストを用意いたしました。
心身が健全な状態で日常生活を送ることができるよう、また、現在精神的DVの被害を配偶者から受けている場合は、チェックして早めに気付いて対処できるよう、この記事が参考になりましたら幸いです。
目次
家族に精神的DVをする加害者の行為の特徴とは?
DV(ドメスティック・バイオレンス)というと、ほとんどの方が殴ったり蹴ったりする肉体的な暴力行為を連想するかと思いますが、DVにも肉体的な暴力行為だけでなく、さまざまな種類のDVがあることが、近年は知られるようになってきました。
その中のひとつが、「精神的DV」です。精神的DVとは、殴る蹴るなどの肉体的な暴力ではなく、言葉や態度などによって、相手に精神的なダメージを与える行為をいいます。
精神的DVはモラハラの一種
「DV」が家庭内暴力を意味するので、「精神的DV」とは夫婦や恋人などの親密な男女間で行われる精神的な暴力を意味するとされています。
この精神的DVと似た言葉に「モラハラ」がありますが、モラハラは「精神的な嫌がらせ・虐待」を意味するため、親密な男女間で行われる「精神的DV」は、モラハラの一種であるといえます。
内閣府男女共同参画局による「精神的暴力」の意味と特徴
内閣府の男女共同参画局のホームページでは、精神的DVに関してその行為の特徴を例示しながら、次のように説明しています。
心無い言動等により、相手の心を傷つけるもの。精神的な暴力については、その結果、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に至るなど、刑法上の傷害とみなされるほどの精神障害に至れば、刑法上の傷害罪として処罰されることもあります。
- 大声でどなる
- 「誰のおかげで生活できるんだ」「かいしょうなし」などと言う
- 実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする
- 何を言っても無視して口をきかない
また、精神的DVのより具体的な事例が掲載されている、内閣府のこちらのWebページも参考になります。
参考:精神的なものの事例(内閣府)
【男女別】精神的暴力チェックリスト
親密な関係内での精神的DVは気付かれにくいのでチェックして認識することが重要です
夫婦間の精神的DVは、肉体的DVと比べると傷跡が残ったりしないため、目で見て精神的DVを受けている、と容易に分かるものではありません。また、精神的DVに該当するような言葉を言われたと思っても、相手と「言った・言わない」の争いになってしまい、証拠も集めづらいケースが少なくありません。
何より、精神的DVの被害者が自分が配偶者から精神的DVを受けていると自覚していないことが多いため、配偶者からの精神的DVを認識しないまま被害を受け続けている人もいます。
そのため、精神的DVの行為をする配偶者に適切に対応するためには、まずは相手の言動をチェックし、自分が精神的DVの被害者であることを認識することが重要です。
そこで、以下の通り、男女別に精神的DVの行為のチェックリストを作成いたしました。こちらのチェックリストを参考にしていただき、自分の夫や妻が精神的DVの加害者の可能性があるのかをチェックし、自身が精神的DVの被害者であるかをチェックしてみてください。
【女性用チェックリスト】夫は精神的DVの加害者?
□ 大したきっかけもないのに、数ヶ月にわたって夫からずっと無視されている。
□ 自分の意見や感情が夫によって常に否定され、「そんなことはない」「お前が間違っている」と言われる。
□ 夫に頻繁に批判され、「お前は何をやってもダメだ」と自分の行動や考えが否定される。
□ 夫が自分の行動や人間関係に過度に干渉し、「どこに行っていた」「誰と会っていた」と質問攻めにされる。
□ 夫から過度な嫉妬や束縛を受け、「他の男と話すな」と命令される。
□ 夫によって家族や友人との関係が制限され、「あの人とは会うな」と孤立を強いられる。
□ 過去の失敗や弱点が夫によく持ち出され、「以前の失敗を忘れたのか」と攻撃される。
□ 夫が言うことに反対すると、「離婚するぞ」「お前一人では生きていけない」と脅迫され、従わせようとされる。
□ 夫が自分の感情を否定し、「神経質すぎる」「大袈裟だ」と責め立てられる。
□ 夫が自分の意見を一切尊重せず、会話の中で発言する機会を奪われる。
□ 自分の努力や成果を夫に認めてもらえず、「それくらい当たり前」と否定される。
□ 夫から外見や服装について否定的なコメントをされ、「そんな格好で恥ずかしくないのか」と言われる。
□ 夫が自分のお金の使い方を一方的に決め、「お前に金を使わせるわけにはいかない」と経済的自立を妨げられる。
□ 夫に自分の性格や能力を侮辱され、「お前にはこれが限界だ」と自尊心を傷つけられる。
□ 夫による監視が厳しく、携帯電話やSNSをチェックされ、プライバシーが侵害される。
□ 夫から度々嘘をつかれ、「実は違うところにいた」と信頼関係が築けない。
□ 夫の言動が子どもとの関係にも悪影響を及ぼし、「お前のせいで子どもがおかしくなる」と責められる。
□ 夫が自分を責めることで、「お前が悪いんだ」と自分が問題を引き起こしていると思い込まされる。
□ 夫から暴言を受け、「バカ」「役立たず」と精神的に深く傷つけられる。
□ 夫の圧迫感が強く、自分の意見や感情を表現することが怖くなり、「何も言えない」と感じる。
□ 夫が妻の料理を常に批判し、「お前の料理はまずい」「外食の方がマシだ」と言って否定する。
□ 夫が妻の料理の腕前を他人と比較し、「お前の料理は母さんの料理には遠く及ばない」と言って妻を傷つける。
□ 夫が妻の趣味や特技をバカにし、「お前の趣味は時間の無駄だ」「特技なんて役に立たない」と言って否定する。
□ 夫が妻の子どもに対する教育方針を否定し、「お前のやり方では子どもがダメになる」「俺の言う通りにしないといけない」と言って強要する。
□ 夫が妻の趣味や特技に対して興味を示さず、「お前のやっていることには関心がない」と言って、妻の趣味などを共有してくれない。
【男性用チェックリスト】妻は精神的DVの加害者?
□ 妻が自分の意見や感情を一方的に否定し、「そんなことはない」「お前が間違っている」と言って自分の考えを押し付けてくる。
□ 妻が自分の行動を細かく監視し、「どこに行っていた」「誰と会っていた」と質問攻めにし、自由に外出や交友関係を制限される。
□ 妻が些細なことで頻繁に怒り、「いつもそうだ」「お前はダメだ」と自分を攻撃する言葉で責め立てられる。
□ 妻が自分の過去の失敗や弱点を何度も持ち出し、「以前の失敗を忘れたのか」と言って威圧する。
□ 妻が自分の友人や家族との関係を悪く言い、「あの人とは会うな」と言って孤立させようとする。
□ 妻が自分の経済的な自立を妨げ、「お前に金を使わせるわけにはいかない」と言って金銭管理を一方的に握ろうとする。
□ 妻が自分の外見や服装を批判し、「そんな格好で恥ずかしくないのか」と言って自己価値を下げるような発言をする。
□ 妻が自分の努力や成果を認めず、「それくらい当たり前」と言って常に不満を表現する。
□ 妻が自分の言動を常に監視し、携帯電話やSNSをチェックされ、プライバシーが侵害される。
□ 妻が自分をコントロールしようとし、「お前はこうすべきだ」と言って自分の意思で決断することを許さない。
□ 妻が自分の性格や能力を侮辱し、「お前にはこれが限界だ」と言って自尊心を傷つける。
□ 妻が自分に対して冷たい態度を取り、感情的なサポートを拒否し、「お前の話なんて聞きたくない」と言う。
□ 妻が自分の子どもとの関係に悪影響を及ぼし、「お前のせいで子どもがおかしくなる」と言って親子関係を妨げる。
□ 妻が自分の言動で暴力をほのめかし、「お前を許さない」と言って脅迫する。
□ 妻が自分の失敗や問題をすべて自分のせいにし、「お前が悪いんだ」と言って責任を押し付ける。
□ 妻が自分の感情を否定し、「お前は感情的すぎる」「大げさだ」と言って責める。
□ 妻が自分の意見や感情を表現することを恐れさせるような雰囲気を作り出し、「お前の意見なんて聞きたくない」と言う。
□ 妻に話しかけてもずっと無視され、「お前と話すのは時間の無駄だ」と言われ、コミュニケーションを取ることを拒絶される。
□ 妻が自分に対して日常的に「バカ野郎」「役立たず」といった暴言を吐く。
□ 妻が自分の人格を否定し、何かにつけて「お前は何もできない」「価値がない」と言ってくる。
□ 妻が夫の家事を常に批判し、「お前の掃除はいつも中途半端」「洗濯はこんな風にするんじゃない」と言って否定する。
□ 妻が夫の家事に対して感謝を示さず、「お前がやっても全然助からない」「私がやった方が早い」と言って批判しかされない。
□ 妻が夫の趣味や特技を軽視し、「お前の趣味は子どもっぽい」「そんな特技、誰も認めてくれない」と言ってバカにする。
□ 妻が夫の仕事を見下し、「お前の仕事は稼ぎが悪い」「もっとまともな仕事につけ」と言って批判する。
□ 妻が夫の職業選択やキャリアプランを尊重せず、「お前のやりたいことなんて聞きたくない」「家族のためにもっといい仕事を探せ」と言って強要してくる。
チェックリストのチェック項目に、該当するものはありましたでしょうか。チェック項目に当てはまる言動が多ければ多いほど、自分が精神的DVの被害者で、配偶者が精神的DVの加害者である可能性が高いです。
なお、チェックリストに挙げたチェック項目は精神的DVの一例に過ぎず、上記のチェック項目の他にも、精神的DVの言動は多岐にわたります。
こちらのチェックリストは、ご自身の現状を簡単にチェックするための目安としてお考えいただき、できれば精神的DVに関して相談窓口に相談することなどをご検討ください。
【相談窓口】
DVの悩みは早めに相談を
チェックリストでチェックしてみた結果はいかがでしたでしょうか。
配偶者から精神的DVの被害を受けている可能性がある場合は、専門的な相談窓口にご相談いただくことも重要です。
下記の表は、精神的DVについての主な相談窓口の一覧になります。
相談窓口 |
利用概要 |
福祉事務所 |
都道府県や市町村が設置する、社会福祉全般の窓口です。住む場所を探したい、生活資金の援助を受けたいといった相談や、母子生活支援施設などへの入所の窓口でもあります。 電話で相談、又は直接窓口に出向いてのご利用となります。 |
配偶者暴力相談支援センター |
都道府県や市町村が設置する適切な施設において、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため、相談や相談機関の紹介、カウンセリング、被害者の安全確保及び一時保護などを行います。 |
DV相談プラス |
24時間電話・メール対応可能な内閣府の相談窓口です。面談、同行支援といった直接支援も実施しており、10か国語に対応しています。12:00~22:00はチャット相談も受け付けています。 【連絡先】0120-279-889 |
DV相談ナビ |
配偶者からの暴力に悩んでいる方に、相談機関を案内する内閣府の電話相談窓口です。 【連絡先】#8008 |
よりそいホットライン |
(一社)社会的包摂サポートセンターが運営する悩み相談窓口です。電話、FAX、チャットやSNSによる相談に対応しています。 【連絡先】0120-279-338/岩手、宮城、福島からは0120-279-226 |
警察相談専用電話#9110 |
警察安全相談員(警察官、元警察官等)が、多岐にわたる相談を総合的に受け付け、相談内容に応じて窓口等を案内します。 【連絡先】#9110 (平日8:30~17:15) |
法テラス (日本司法支援センター) |
電話、メールにて相談を受け付けています。また、法テラスHPに「相談窓口検索」システムがあり、都道府県や相談内容、窓口条件(面談、電話、夜間対応、外国語対応等)を選択し、自分に適した相談窓口を検索することができます。 【連絡先】0570-078374 (平日9:00~21:00、土曜日9:00~17:00) |
精神的DVに関する相談窓口の詳細につきましては、ぜひこちらの関連記事もご一読ください。
Q&A
Q1.精神的DVとは何ですか?
精神的DVとは、殴る蹴るなどの肉体的な暴力ではなく、言葉や態度などによって、相手に精神的なダメージを与える行為をいいます。
内閣府のホームページでは、精神的DVを「心無い言動等により、相手の心を傷つけるもの。」と説明しています。
Q2.精神的DVの具体的な言動や行為にはどういったものがありますか?
精神的DVの具体的な言動や行為について、内閣府のホームページには次のような具体例が掲載されています。
- 人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする
- 大切にしているものをこわしたり、捨てたりする
- 生活費を渡さない
- 外で働くなと言ったり、仕事を辞めさせたりする
- 子どもに危害を加えるといっておどす
- なぐるそぶりや、物をなげつけるふりをして、おどかす
Q3.精神的DVの被害者かどうか、自分でチェックしたいです。例えばどういったチェック項目がありますか?
精神的DVの被害者かどうかを自分でチェックするためには、以下のようなチェック項目が役立ちます。これらのチェック項目に該当するものが多ければ多いほど、精神的DVを受けている可能性が高くなります。
- 配偶者によって自分の意見や感情が一方的に否定され、自己価値を軽視されることが多い。
- 配偶者に無視されることが続いている。
- 配偶者による批判や非難が頻繁にあり、自己肯定感が低下している。
- 配偶者が自分の行動や人間関係に干渉し、孤立させようとする。
- 配偶者によって経済的な自立が妨げられ、金銭的な制約を受けている。
- 配偶者の機嫌や感情に振り回され、常に緊張感を感じている。
- 配偶者の言動によって自己信頼を失い、自分の判断を疑うようになっている。
本記事の精神的DVの男女別チェックリストもあわせてご参照ください。
当法律事務所の弁護士にご相談ください
精神的DVは、その非物理的な性質から、被害者自身がその状況を正確に認識できない場合があります。
この記事でご紹介した精神的DVのチェックリストは、自分や配偶者が精神的DVの被害者・加害者である可能性を見極めるための一つの手段です。チェックリストに当てはまる行為が多い場合は、専門的な相談窓口や支援機関に相談することを強くおすすめいたします。
また、精神的DVの配偶者との別居や離婚を検討している場合は、ぜひお早めに法律の専門家である弁護士にご相談ください。弁護士は、精神的DVの被害者の支援と保護を目的とした法的アドバイスや、精神的DVの加害者と別居・離婚するための法律的なサポートを提供しています。
精神的DVをする配偶者に対しては、離婚だけでなく、慰謝料の請求なども考えられます。そういった法律問題に関しても、弁護士が適切に対応させていただきます。
まずはお気軽に、当法律事務所の初回無料相談をご利用ください。
この記事を書いた人
雫田 雄太
弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。