代償分割|代償分割とは、代償金とは?遺産分割協議書の書き方も解説

遺産分割では、不動産などの物理的に分配するのが難しい相続財産についても、誰がどのように相続するのか取り決めることになります。その際に有効なのが、特定の相続人が不動産などの財産を取得し、他の共同相続人にその財産の代わりとなる他の財産を渡す方法、「代償分割」です。代償分割では、不動産を取得する代わりに、その不動産の価値に相当する金銭(代償金)を支払う、というやり方が一般的とされています。
代償分割は遺産の公平な分配を実現できる分割方法で、さまざまなメリットがありますが、一方で代償金の価格の算定でもめる可能性があったり、相続税に気を付けなければならなかったりと、注意点やデメリットもあります。そのため、代償分割する可能性がある場合は、制度の基本的なことに加え、代償金の金額の決め方や注意点についても確認しておくことが重要です。
そこでこの記事では、代償分割の基本から、代償金の決め方・算定上の注意について弁護士がわかりやすく解説させていただきます。また、代償分割する場合の遺産分割協議書の書き方や、相続税の計算方法に至るまで、詳しくご説明いたします。
本記事が少しでもご参考となりましたら幸いです。
目次
代償分割
1.代償分割とは
1-1.代償分割とは遺産分割の方法の一つ
代償(だいしょう)分割とは、相続が発生した際に、遺産をどのように分けるか決める方法(遺産分割方法)の一つです。
相続財産は、現金や預貯金のように、物理的に分けやすいものばかりではありません。
例えば不動産は、相続人の人数で建物を物理的に分割することができません。あるいは、土地を分割することは理論上可能でも、「遠方にある土地を相続したくない、代わりに別の遺産をもらいたい。」といった事情のある人もいるでしょう。
このように、相続人で不動産などを分割できない・分割しない場合などに、「代償分割」が有効な遺産分割方法となるのです。
代償分割の「代償」とは、「代わりに支払う」という意味です。つまり、不動産などの遺産を取得する特定の相続人が、他の共同相続人に対して、その不動産が持つ価値に見合った他の財産(代償金など)を「代わりに支払う」ことを意味しています。
1-2.代償分割の事例
例えば、相続人が2人いる遺産相続において、市場価値5,000万円の不動産と、3,000万円の預貯金が相続財産であるケースを考えてみましょう。
仮に、相続人Aが一人で不動産を引き継ぐことになり、相続人Bが預貯金3,000万円を相続することになった場合、AとBは公平と言えるでしょうか。Aが相続する不動産の市場価値は金銭にすると5,000万円ですが、Bが相続するのは3,000万円なので、AとBの相続財産は2,000万円の価値の差が生じています。
もし不動産を売却した場合は、その売却益である5,000万円と、預貯金3,000万円をAとBとで分配することになるわけですから、Bは「8,000万円÷2人=4,000万円」を受け取れる計算です。ところが、Aが不動産を取得することによって、Bは不動産の財産としての価値を享受できず、預貯金3,000万円しか受け取れません。不動産を受け継ぐAよりも、Bは「損」をしている状態といえます。
このような場合に、代償分割を活用していきます。
上述のとおり、不動産を金銭として考えると、AとBが分割する相続財産は「5,000万円+3,000万円=8,000万円」で、A・Bそれぞれが相続する金額は4,000万円ずつとなります。実際にBが受け取るのは預貯金3,000万円なので、1,000万円不足しています。この不足分を、不動産を受け継ぐ相続人Aが補填することで、A・B双方にとって公平な遺産分割が実現できるのです。
なお、この際にAは1,000万円に相当する「代償財産」をBに渡すことになります。
このように代償分割では、不動産などの分割しにくい財産を引き継ぐ相続人が、他の相続人に対してその価値の差額を金銭で補填することで、遺産の公平な分割を実現することができます。
以上のような不動産を特定の相続人が相続するケースの他にも、以下のような場合に代償分割を活用することが期待されます。
代償分割すべきケース
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遺産を平等に分配したいと考える場合
不動産などを相続しない相続人も、その代わりに金銭を受け取ることができるので、公平な遺産分割を実現することが期待できます。
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遺産のほとんどが不動産の場合
遺産のほとんどが不動産で、現金や預貯金などの現物で分割しやすい財産がなく、なるべく不動産を売却せずに遺産分割したい場合は、代償分割を検討することになるかと思います。
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一つの財産を特定の相続人に集中させたい場合
分割が困難な不動産や事業などを特定の相続人が引き継ぐ場合には、代償分割がおすすめです。
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自宅を継ぎたい同居の相続人がいる場合
被相続人と同居していた相続人が自宅を引き継ぎたい場合などには、代償分割することで、そのまま自宅に住み続けることが可能となります。
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次世代への事業継承・事業関連不動産の継承を計画している場合
家族経営の事業などを引き継ぐ場合も、代償分割がおすすめです。ある相続人が会社を引き継ぐために自社株を相続したい場合、その他の会社を引き継がない相続人に対して代償金を支払うことで、事業用の不動産や資産を失うことなく、他の相続人にも公平な遺産分割が可能となります。
反対に、以下のような場合には代償分割ではなく、他の方法によって遺産分割をすべきでしょう。
す。
代償分割すべきではないケース
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代償金を支払う相続人に支払能力がない場合
代償分割を行う上で最も重要な要件は、代償金を支払う相続人に支払能力があることです。遺産の現物を取得する人に代償金を支払うだけの資産がない場合、代償分割は現実的ではありません。
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他の分割方法が適切・可能な場合
現物分割が不可能、または分割によって遺産の価値が著しく損なわれる場合などには代償分割が適していますが、遺産のほとんどが現金や預貯金のケースなどでは、そもそも代償分割をする必要がありません。
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税務上の不利益が生じる可能性がある場合
例えば、不動産を取得した相続人が、その不動産の価額を超える金額の代償金を支払った場合、代償金を受け取った側は、その超える部分について贈与税が課される可能性があります。代償分割によって予期せぬ税金が課されるリスクも念頭に置いておくことが大切です。
2.代償分割のメリット
それでは続けて、代償分割のメリットを確認しておきましょう。
2-1.代償分割で不動産を売却せず残せる
家族が長年住んできた家や土地など、思い出の詰まった不動産は、単純に金銭価値だけでは測れない思い出や歴史を持っています。現物で分割してしまうと、こうした不動産を細分化することになってしまい価値を損ねることになりますし、売却して分割すると、不動産を手元に残しておくことができません。
代償分割では、他の共同相続人に代償財産を提供することで、家や土地を売却する必要がなくなり、財産を手元に残しておくことができます。
また、不動産の価値はさまざまな事情で変動するため、手元に置いておくことで、不動産の価値が高まった適切なタイミングで売却することができる、というのもメリットです。
2-2.不動産の共有名義化を避けられる
一つの不動産を複数の相続人が共同で相続する場合、その不動産は共有名義となります。共有名義となった場合、一人が不動産を売りたくても他の相続人が反対すれば、不動産を売ることができません。不動産の管理や処分に関して、全員が同意する必要があり、新たなトラブルの原因となってしまう可能性もあります。
代償分割することで、不動産はその特定の相続人の単独名義となるため、その相続人が一人で自由に管理・処分することが可能となります。
2-3.法定相続分以上の財産を引き継げる
特定の相続人が法定相続分や具体的相続分を超える遺産を、現物で取得することが可能になるというのも、代償分割のメリットの一つです。
2-4.公平な遺産分割ができる
遺産には、金銭や預貯金のように簡単に分けられる財産もあれば、家や土地のように分割が難しい財産もあります。全員が納得する方法で遺産を分けることは、相続人間での争いを避けるためにも非常に重要です。
代償分割では、不動産などの分割しにくい財産を取得したい相続人が、財産を取得する代わりにその財産の価値に相当する金銭や他の財産を他の相続人に支払います。
これによって、相続人全員が法定相続分に応じた遺産を取得することが可能になります。
2-5.相続税の負担を軽減できる
代償分割により、土地を手元に残しておくことで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。
例えば、被相続人と同居していた相続人が自宅を相続する場合など、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例が適用されることがあります。この特例により、自宅敷地の評価額が最大で80%まで減額され、結果として相続税の負担が大幅に軽減されます。遺産相続の際に不動産を売却してしまうと、この特例の適用を受けることができません。
同様に、貸付事業用宅地や事業用宅地を相続する場合にも、小規模宅地等の特例が適用されることがあり、これによって土地の評価額が最大で80%減額されるため、相続税の軽減が期待できます。
また、農地を相続した場合には、「農地の納税猶予」の制度を利用できることがあります。この制度を利用すると、農地に対する相続税の支払いを猶予されるため、短期間に大きな現金を用意する必要がなくなり、相続税の負担軽減が見込めます。
3.代償分割のデメリット
以上のようなメリットがある一方、代償分割には次のようなデメリットもあります。
3-1.代償金の計算でもめやすい
代償分割では、特定の財産を取得する相続人が他の相続人に対して支払う代償金の金額を決定する必要があります。この代償金の金額の計算で、相続人の間でトラブルとなりやすいです。
代表的なのが、不動産の評価額の計算です。一般的に、不動産の評価には主に以下の二つの方法があります。
- 公示価格(時価)
地価公示法に基づいて公表される、全国の都市計画区域内等に設定された標準地の正常な価格です。公示価格は市場での取引価格を反映しており、不動産の「時価」として広く認識されています。 - 相続税評価額
国税庁や各税務署で公表されている、相続税の計算に使用される価格です。公示価格の約80%が目安とされることが多いです。
どの評価方法を採用して金額を計算するかについて、相続人間でなかなか折り合いがつかないケースが多いのです。
相続人同士で不動産の評価額について折り合いがつかない場合、税理士や不動産鑑定士などの専門家に評価を依頼することも検討しましょう。専門家による客観的な評価を受けることで、双方が納得のいく形で代償金の金額を計算できるかと思います。
3-2.代償金を払えない場合は選択できない
代償金は、相続する財産の価値が高いほど、その額も大きくなります。そのため、相続人が代償金を用意するだけの資力がなければ、そもそも代償分割は選択できません。
代償金を一括で支払うことが難しい場合は、分割払いも検討することになるでしょう。もちろん、遺産分割協議で代償金の分割払いをすることに相続人全員が合意していれば、どのように分割払いをしても問題ありません。ですが、将来的に未払いのトラブルが発生してしまう恐れもあるため、遺産分割時に十分な資力がない場合には、そもそも代償分割をすべきではない、ということにもなりかねません。
また、代償財産として、相続人が所有する不動産や株式、動産などを活用することも可能ですが、そうした代償財産の提供が贈与とみなされてしまい、贈与税の支払いが発生することもあります。
代償金を払えない場合は、不動産を売却する換価分割を選択するなど、代償分割以外の遺産分割方法を検討する必要があるでしょう。
3-3.贈与税や所得税が発生する可能性がある
代償分割をする場合に、予期せぬ税金が発生することがあります。
例えば、以下のようなケースでは贈与税や譲渡所得税がかかる可能性があります。
- 贈与税が発生するケース:
・支払うべき代償金代以上の金銭や代償財産を渡した場合、その超過分に対して贈与税がかかる可能性があります。
・遺産分割協議書に代償分割の記載がなかった場合、代償金が全額贈与とみなされるリスクがあります。 - 所得税が発生するケース:
・現金以外の財産(例えば、他の不動産)を代償財産として渡した場合、その財産の譲渡により所得税がかかる可能性があります。
代償分割によりかかる税金については、後ほどさらに詳しく解説いたします。
代償分割の代償金とは
1.代償財産とは
さて、代償分割をするには、特定の相続人が受け継ぐ財産の対価として、他の共同相続人へ提供する「代償財産」が重要となってきます。
代償財産とは、遺産分割の際に、家や土地のような分けにくい財産を一人の相続人が単独で引き継ぐために、他の相続人に公平を保つ目的で提供される財産のことです。不動産などの財産を取得する相続人は、その財産と同等の価値がある他の財産を提供しなければなりません。
例えば、兄弟が遺産を分け合うケースで見てみましょう。
長男が自宅を相続し、次男が預貯金を相続することになったものの、金銭による支払いができないという場合、長男は代償財産として、自身が所有する別の不動産や株式、自動車などの他の財産を次男に提供することで、代償分割を行うことが可能となるのです。
2.代償分割の代償金の金額の決め方
代償金の決め方に関するルールは特にありませんが、代償分割においては、相続人間で代償金の金額について合意に至る必要があります。
代償金の金額を決定するためには、対象となる財産の金額を正確に評価することが重要です。財産の評価額が高いと代償金は高額になるため、代償金を支払う側にとっては財産の評価額が低い方が負担が少なくて済む一方、代償財産を受け取る側としては、評価額が高い方が受け取れる代償財産も高額になります。
そのため、相続財産の評価額や評価方法をめぐって争いになることは少なくありません。特に、不動産の価格をどのように評価するのか、その方法について意見が分かれることが多いです。
2-1.土地・不動産の評価額
不動産の評価方法には主に「相続税路線価」「公示地価」「固定資産税評価額」「時価」の4つの方法があります。
遺産分割に際しては「時価」、つまり不動産が実際に市場で取引される価格を基準にするのが一般的です。時価は、不動産会社による査定を通じて明らかにします。
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評価方法 |
説明 |
|---|---|
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固定資産税評価額 |
公示価格の約70%に設定されており、固定資産税を計算する際の基準として用いられます。建物の場合は「固定資産税評価額×1.0」が相続税評価額となります。 |
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相続税路線価(土地) |
公示価格の約80%とされ、特に相続税や贈与税の計算する際の土地の評価に用いられます。毎年7月に価格が変動します。市場価格の中間値に近く、代償金を決める際にもよく用いられます。 |
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公示価格 |
国土交通省によって発表される価格で、不動産の時価、つまり市場での実勢価格をおおむね反映しています。毎年3月に価格が変動します。 |
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実勢価格(時価) |
実際の不動産取引における売買価格を指し、不動産会社に査定を依頼するなどして明らかにします。 |
なお、遺産分割協議では、原則として「遺産分割時の時価」を用いて不動産の評価額を決めますが、相続人全員が合意すれば、相続税路線価や固定資産税評価額を基準とすることも可能です。
2-2.株式の評価額
会社の経営権に関わる株式を特定の相続人に引き継がせたい場合などにも、代償分割は便利な手段です。
ただし、遺産が自社の株式中心で他にめぼしい財産がない場合、後継者が全株式を相続すると、他の相続人の法定相続分を侵害してしまう可能性があります。そのため、対象となる株式の価額を正確に評価することが、代償金の計算においては非常に重要です。
特に、市場での取引価格がない非上場株式を評価する場合は注意が必要です。市場価格がないため、当事者間の合意で決めることもできるのですが、同族間での株式の譲渡は、時価より低い価格での譲渡と認定されると、譲渡対価と時価との差額に相当する金額を贈与されたとみなされ、贈与税が課税されるリスクがあります。
そのため、税務上の非上場株式の評価方法である、原則的評価方法(会社の規模に応じて、類似業種比準方式や純資産価額方式などを組み合わせて評価する方法)と、特例的評価方(1年間の配当金額を基に評価する方法)によって株式の評価額を決めることが望ましいでしょう。
3.代償分割の代償金の注意点
3-1.代償金の分割払いはできる?
本記事で前述したとおり、相続人全員の合意があれば、代償金の分割払いをすることは可能です。遺産分割協議の中で、毎月の支払金額や支払い方法、支払日、支払が遅れた場合にどうするか、といった点について具体的に決めておくことになるでしょう。
遺産分割協議で合意した場合は、遺産分割協議書に代償金の分割払いについて具体的に明記しておくと安心です。例えば、次のように記載します。
1. 甲は、別紙財産目録記載の不動産を取得した代償として、乙に対し、金〇万円の支払義務があることを確認し、これを次のとおり分割して、乙名義の銀行口座(〇〇銀行××支店普通預金・口座番号〇〇〇〇)に振り込む方法によって支払う。
(1) 令和〇年〇月から令和〇年〇月まで、月金10万円ずつ
(2) 毎月27日を支払い日とする。
(3) 振込手数料は甲の負担とする。
2. 甲が、前項の分割金の支払いを3回怠ったときは、当然に期限の利益を失い、乙に対し、直ちに第1項の金額から既払金を控除した残金及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済みまで年〇パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
なお、代償金は多額になることがあるため、分割払いの支払いを確実にするために、代償分割の対象となった不動産に、代償金を受け取る側を債権者とする抵当権を設定したり、第三者に連帯保証人となってもらったりすることも考えられます。
3-2.代償金の限度額はある?
代償分割における代償金の額について、法律上の明確な「限度額」は定められていません。ですが、実際には、税務上の観点や、代償金を支払う側の資力によって、事実上の限度額があるため注意してください。
例えば、代償分割で支払われる代償金が、代償金を支払う側が取得した遺産の価額を過大に上回るなど、過分・過大であると判断された場合、その超過部分は実質的な贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる可能性があります。贈与と判断されないためには、代償金の金額が「過分」とならないよう、制限する必要が生じることもあるのです。
また、代償金を支払う側に支払い能力がない場合も、事実上の限度額が存在するでしょう。
例えば、父親の遺した2,500万円の土地を長男が相続し、次男が500万円の現金を相続することになったとしましょう。本来ならば、長男は次男に1,000万円の代償金を支払う必要がありますが、長男の手元に十分な資金がなく、700万円しか用意できない場合には、700万円が事実上の限度額となるのです。
もちろん、次男が700万円で合意していれば問題はありませんし、上限の700万円ではなく500万円の支払いで合意することも自由です。
3-3.代償金の金額に合意できない場合
相続人間で代償金の額について合意に至らない場合は、家庭裁判所の調停や審判を通じて金額を決定することも検討しましょう。
なお、代償分割の調停や審判ではなく、「遺産分割調停・遺産分割審判」の中で代償分割の可否や方法、代償金の金額について決めていくことになります。
代償分割する場合の遺産分割協議書
遺言書がある場合は、遺言の内容のとおりに遺産分割がされますが、遺言書がない場合は相続人全員で話し合って(遺産分割協議)、遺産分割の方法について決めていくことになります。遺産分割協議で合意した内容は、遺産分割協議書として書面に残すのが一般的です。代償分割をすることに合意した場合も、遺産分割協議書にその旨を必ず明記しておきましょう。
遺産分割協議書を作成する際は、代償分割に関する詳細(代償分割をすること、代償財産の種類、金額、支払期限、支払方法)を正確に記入しておくことが重要です。
そのため代償分割をする際は、必ず遺産分割協議書にその旨を記載するようにしましょう。遺産分割協議書に代償分割について記載する場合は、以下の書き方もご参考にしていただければと思います。
遺産分割協議書
本籍 静岡県静岡市〇〇区〇〇
最後の住所 静岡県静岡市〇〇区〇〇
被相続人 〇〇○○(令和〇年〇月〇日死亡)
□□□□(以下「甲」という。)及び△△△△(以下「乙」という。)は、被相続人の遺産について、本日、遺産分割協議を行い、本書のとおり合意した。
1.甲は、次の不動産を取得する。
(土地)所在○○区○○台○丁目
地番○番○
地目宅地
地籍○○.○㎡
(建物)・・・・・・
2.甲は、乙に対し、令和〇年〇月〇日限り、前項の遺産取得の代償として各●●●万円を、乙の指定する口座(●●銀行○○支店普通預金、口座番号○○○○、口座名義△△△△)に振り込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。
3.この遺産分割協議書に記載した遺産以外に、新たに被相続人の遺産が発見されたときは、甲及び乙はその分割方法について協議する。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割が成立したので、本協議書を2通作成し、署名押印のうえ各自1通保管する。
令和〇年〇月〇日
【甲】 住所
氏名 実印
【乙】 住所
氏名 実印
代償分割と相続税
それでは最後に、代償分割における相続税について確認しておきましょう。
1.代償分割では原則として贈与税は課税されない
代償分割は遺産分割の方法のひとつであり、特定の財産を相続する代わりに、その価値に見合った金額を他の相続人に支払う方法です。そのため、債権債務の相殺とみなされます。一般的な贈与とは異なり、原則として贈与税は課されません。
ですが、上述のような遺産分割協議書に代償分割の内容が適切に記載されていない場合も含め、贈与税が課税されるケースもあるため、注意が必要です。
代表的なケースとしては、相続した財産の価値よりも代償金の金額が多い場合に、贈与税が課税されることがあります。
例えば、相続人の一人が時価1,000万円の土地を相続し、他の相続人に1,500万円の代償金を支払う場合、500万円の超過分に関しては贈与とみなされ、その部分に対して贈与税が課税されることになってしまいます。これは、相続財産の価値を超える金額を支払っていることから、相続ではなく経済的利益の移転とみなされることになるためです。
「代償分割であれば贈与税は課されない」のではなく、「原則として課されないが、代償金の金額や遺産分割のやり方によっては贈与税が発生するリスクがある」ことを、きちんと把握しておくことが重要です。
2.代償分割では譲渡所得税が課税される場合がある
代償分割に際し、現金ではなく不動産を代償財産として渡したときは、譲渡所得税が課税される可能性があります。
譲渡所得税とは、土地や建物などの資産を譲渡した時に得られた利益に対して課される税金のことです。代償分割の対象となる不動産の取得価格よりも分割時の時価が上回ると、その価格差が利益としてみなされて、結果として譲渡所得税の対象となります。
ですが、仮に長男が自身の土地を2,500万円で取得していたとなると、2,500万円で購入した土地を3,500万円で次男に譲渡したことになるため、長男に1,000万円の利益(譲渡所得)が発生したとみなされてしまうことになるのです。すると、譲渡所得税が課されることとなってしまいます。
3.代償分割の相続税の計算方法
代償分割を行う場合の相続税の計算方法ですが、通常の場合と大きく変わりはありません。
ただし、相続人それぞれの課税価格を計算する際は注意が必要です。代償分割の対象となった不動産をどのように評価したかによって、相続税の計算方法は2つありあます。
3-1.相続税評価額をもとに代償金を決めた場合
計算式
- 代償金を支払った人の課税価格
課税価格=相続または遺贈により取得した現物の財産の価格(相続税評価額)―代償金の額 - 代償金を受け取った人の課税価格
課税価格=相続または遺贈により取得した現物の財産の価格(相続税評価額)+代償金の額
相続人が長男と次男で、長男が相続税評価額8,000万円の不動産を手に入れる代償として、次男に4,000万円の代償金を支払うケースで相続税の計算をしてみましょう。
長男の課税対象金額=不動産の相続税評価額8,000万円―代償金4,000万円=4,000万円
次男の課税対象金額=代償金4,000万円
3-2.時価をもとに代償金を決めた場合
計算式
- 代償金を支払った人の課税価格
課税価格=相続税評価額―代償金の額×(相続税評価額÷代償分割時の時価) - 代償金を受け取った人の課税価格
課税価格=相続税評価額+代償金の額×(相続税評価額÷代償分割時の時価)
相続人が長男と次男で、長男が相続税評価額8,000万円・市場の時価が1億円の不動産を手に入れる代償として、次男に4,000万円の代償金を支払うケースで相続税の計算をしてみましょう。
長男の課税対象金額: 不動産の相続税評価額8,000万円―代償金4,000万円×(8,000万円÷時価1億円)=4,800万円
次男の課税対象金額: 代償金4,000万円×(8,000万円÷1億円)=3,200万円
4.代償分割と相続税の基礎控除
代償分割という遺産分割の方法は、相続税の基礎控除額そのものに直接的な影響を及ぼしません。相続税の計算上、代償分割は各相続人が取得する財産の課税価格を調整するものですが、遺産全体の課税価格の合計額は変わらないため、そこから控除される基礎控除額も変動しません。
そのため、相続税の基礎控除額についても、一般的な「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算することになります。
代償分割に関するQ&A
Q1.代償分割のメリットは何ですか?
A:代償分割は、不動産などの分割しにくい財産を公平に分割したい場合に有効です。特に、以下のようなメリットがあります。
- 公平な遺産分割ができる
- 不動産などの財産を売却せずそのまま残せる
- 不動産の共有名義化を避けられる
- 相続税の負担を軽減できる
Q2.代償金のデメリットは何ですか?
A:代償分割の主なデメリットとして、以下の3つが挙げられます。最も顕著なのは、代償金の決め方について、相続人間での意見が異なることが多く、トラブルになりやすいことです。
- 代償金の計算でもめやすい
- 代償金を払えない場合は選択できない
- 贈与税や所得税が発生する可能性がある
Q3.代償分割の際、現金以外の財産を代償財産として使用することは可能ですか?
A:はい、可能です。代償分割では、相続人間での合意があれば、現金だけでなく不動産や株式などの他の財産を代償財産として使用することができます。ただし、現金以外の財産を使用する場合は、譲渡所得税が発生する可能性があるため、税務上の影響を事前に確認することが重要です。
まとめ
代償分割は、不動産など分割しにくい財産があるときに、財産を平等に分配する一つの方法です。ただし、代償金の金額の決め方に関して、不動産の評価方法などで意見が対立するケースも少なくありません。
相続人同士で意見が合わない場合や、トラブルが起こっている場合に相続人同士だけで話し合いを進めようとすると、余計に話がこじれてしまい、なかなか遺産分割ができないどころか、親族間の関係性が悪化してしまい、新たなトラブルが生じてしまいかねません。
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この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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