遺産分割協議成立申立書とは?100万円以下の車の名義変更をする方法
相続手続きは複雑であり、多くの人々にとって、その手順や必要書類についての詳しい知識はないものです。特に、被相続人が所有していた財産の中で、車の名義変更は独自の手続きを必要とします。
その中で、「遺産分割協議成立申立書」という重要な書類がキーポイントとなります。
この記事では、まず「遺産分割協議成立申立書」とは何か、その定義と使用目的について解説します。次に、100万円以下の車を相続する際の名義変更の具体的な手順や必要書類について説明します。最後に、遺産分割協議成立申立書の書き方や記入例を交えて、読者の皆様が確実に手続きを進められるようサポートいたします。
相続は予期しない問題や困難に直面することも少なくありません。しかし、適切な知識と情報があれば、その多くの問題はスムーズに解決できます。遺産分割協議成立申立書について理解することで、あなたの相続手続きが円滑に進むようお手伝いさせていただきます。
目次
遺産分割協議成立申立書とは?
遺産分割協議成立申立書で車の名義変更を簡略化できる
遺産分割協議成立申立書は、車の相続における名義変更手続きを効率的に行うための書類です。
通常、相続手続きの中で、車の名義変更を行う際は「遺産分割協議書」という書類を提出する必要があります。この書類には相続人全員の同意が明示された上で、各相続人の署名や押印が必要とされます。特に相続人が多い、または遠方に住んでいる場合、この書類の準備はかなり手間と時間がかかることがあります。
しかし、車の査定額が100万円以下の場合、「遺産分割協議書」の代わりに「遺産分割協議成立申立書」を提出することが認められています。遺産分割協議成立申立書は、車を相続する人の署名・捺印だけで作成できる簡易的な書類で、複数の相続人が署名・押印するという手間を省くことができます。
遺産分割協議成立申立書には、被相続人の情報、車の詳細情報、相続人の一覧やその同意の旨などが記載されます。
100万円以下の車でない場合は遺産分割協議書が必要
車の査定額が100万円以下の場合は、遺産分割協議書または遺産分割協議成立申立書のどちらかを選択することができます。
その場合は、遺産分割協議書による手続きが必要になります。遺産分割協議による手続きが必要な場合は、
を参照ください。売却や廃車手続きにも必要です
車の所有者が亡くなった場合は、名義変更しない限り、売却も廃車手続きも行うことができません。
したがって、売却や廃車手続きを検討している場合も、原則として遺産分割協議書や遺産分割協議成立申立書の提出が必要となります。
車を相続した場合は、名義変更を速やかに行いましょう。
以下では、遺産分割協議成立申立書を利用した名義変更の手続きの流れを説明いたします。
100万円以下の車を相続した場合の名義変更の方法
100万円以下の車を相続した場合は、遺産分割成立申立書を利用した名義変更手続きが可能です。
遺産分割成立申立書と査定書のほかに、車検証や被相続人の戸籍謄本などの必要書類を揃えて、管轄の運輸局に提出します 。
では、提出する書類はどのようなものが必要なのでしょうか。必要書類とその入手方法、また揃えた必要書類を提出する方法について以下で詳しく解説いたします。
名義変更の必要書類
100万以下の普通自動車を名義変更する場合の必要書類は、以下の通りです。
- 遺産分割協議成立申立書
相続人全員が自動車の名義変更に同意していることを証明するものです。 - 戸籍謄本
被相続人と自動車を相続する人の戸籍謄本が必要です。これは、相続関係を証明するためのもので、正確な相続権を明らかにするために提出します。 - 自動車を相続する人の印鑑証明書
手続きを行う相続人の印鑑が登録されていることを証明するための書類です。 - 車検証(自動車検査証)
被相続人名義の自動車の詳細な情報が記載されている公的な書類です。 - 車庫証明書
自動車を保管する場所が適切であることを証明する書類。新しい所有者の住所に応じたものが必要となります。 - 査定額を証明する書類
自動車の査定額が100万円以下であることを示す証明書です。 - 委任状
名義変更の手続きを他の人に依頼する場合に必要な書類。名義変更を代理で行ってもらう場合に、その代理権を証明するためのものです。
遺産分割協議成立申立書は運輸局HPからダウンロード可能
遺産分割協議成立申立書は、運輸局のホームページからダウンロードすることが可能です。
国土交通省の書式のPDF版はこちらのリンクからダウンロードできます。
もしオンラインでのダウンロードが難しい場合や、紙の書式を直接受け取りたい場合は、最寄りの運輸支局の窓口へ行くと、書式を手に入れることができます。
管轄の運輸支局等はこちらのリンクから確認することができます。
査定書の入手方法
遺産分割協議成立申立書は、車の価格が100万円以下であることが条件です。そのため、査定額が100万円以下であることを証明する必要があります。
証明する書類として、一般的な中古車販売店のホームページからの相場価格情報のコピーなどの簡易的な資料は認められていません。査定士の資格を持つ専門家や、その資格を持つスタッフを擁する自動車販売店から発行された公式な査定書が必要とされます。
または、車の査定を専門で行っている一般財団法人である「日本自動車査定協会」に査定を依頼することもできます。そこでの査定を受けることで、車の現在の市場価格を示す正式な「査定証」を取得できます。
遺産分割協議成立申立書の書き方と記入例
遺産分割協議成立申立書の書き方を、下の書式をもとに順に解説いたします。
- 車検証の登録番号と車台番号:
車検証に記載されている、自動車の一意の識別番号です。これにより、該当する自動車が特定されます。 - 被相続人の氏名と死亡年月日:
亡くなった方(被相続人)のフルネームとその方が亡くなった正確な日付を記載します。 - 車の相続人が決定した日付:
車の新しい所有者が正式に決定された日を記載します。 - 各相続人が申立書による申請に同意した日付:
全ての相続人がこの手続きに同意した日付を記入します。 - 遺産分割協議成立申立書の提出日:
申立書を提出する予定の日付、または実際に提出した日付を記載します。 - 運輸局と運輸支局名:
手続きを行う場所としての運輸局やその下部組織である運輸支局の名称を書きます。 - 車を相続する人の氏名と実印:
車の新しい所有者となる人の正式な名前と、その人の公式な実印(印鑑)を押す欄があります。
遺産分割協議成立申立書の記入例は、東北運輸局福島運輸支局のホームページに掲載されています。こちらの記入例を参考に、ご自身で作成してください。
(引用:東北運輸局福島運輸支局)
遺産分割協議成立申立書に関するQ&A
Q1遺産分割協議成立申立書の提出が必要な場面はどのような時ですか?
A1 被相続人が所有していた車の名義変更を行う場合、特にその車の査定額が100万円以下のときに、遺産分割協議成立申立書の提出が要求されます。この書類を利用することで、複数の相続人の署名や実印などの手間を省き、スムーズな手続きが可能になります。
Q2: 車の査定額が100万円を超える場合は使用できますか?
A2: いいえ、遺産分割協議成立申立書は査定額が100万円以下の車の名義変更手続きのためのものです。100万円を超える場合には、通常の遺産分割協議書の提出が必要となります。
Q3: 提出先はどこですか?
A3: 遺産分割協議成立申立書は、最寄りの運輸支局に提出する必要があります。提出先の詳細や窓口情報は、各都道府県の運輸支局の公式ウェブサイトや窓口で確認することができます。
まとめ
相続手続きは多くの人にとって難解であり、特に被相続人が所有する車の名義変更は独特のプロセスを要します。この手続きを簡素化する鍵となるのが「遺産分割協議成立申立書」です。
本コラムでは、この書類の役割や書類を用いた車の名義変更手続き、そして適切な書類の書き方を説明いたしました。
相続における車の名義変更は特有の手続きを伴いますが、「遺産分割協議成立申立書」の存在により、その手続きが大幅に簡素化されます。本コラムが、皆様の相続手続きがスムーズに進むための一助となることを願っています。
この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。