遺産分割を弁護士に相談・依頼するメリットと費用

遺産分割

更新日 2024.08.12

投稿日 2024.03.06

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

遺産分割では、「誰がどの遺産のどれだけ受け取るのか」や「不動産をどのように分けるのか」といったことを決めなければなりません。この遺産分割は、親族全員に影響を及ぼすため、トラブルが起こることも珍しくありません。相続人間で意見が合わず、遺産分割が原因で長期的な対立や解決の遅れが生じることもあります。さらに、適切な知識がないと、自分の相続分を不当に減らされるリスクもあります。

このようなトラブルを避けるためには、弁護士へ一度は相談されることが賢明といえます。弁護士は、遺産分割の手続きを公平かつ迅速に進めるためにサポートし、最も公正で有利な条件での解決を目指します。

この記事では、遺産分割を巡るトラブルや問題に直面した際に、弁護士に相談・依頼するメリットや、弁護士費用、遺産分割に強い弁護士の選び方などについて詳しく解説します。

目次

遺産分割を弁護士に相談・依頼するメリット

法的に適正な方法で遺産を分けることができる

遺産分割には、「誰が相続人として認められるか」や「各相続人にどの程度の割合が適用されるか」など、法律に基づいて決めるべきことがたくさんあります。遺産分割に関する法律を正確に理解していないまま、遺産分割協議を進めることは難しく、最終的には不利益な条件で合意する可能性が高まってしまいます。

弁護士は、これらの法的な要点に精通しており、遺産分割を適切に進めるための知識を提供することができます。さらに、不公平な要求をしてくる相続人に対しても、弁護士は法的根拠に基づく解決策を提示できます。例えば、特定の相続人が大部分の相続を要求する場合でも、法定相続分に則った分割案を提示することで、他の相続人も納得させることが可能です。

また、被相続人の財産増加や維持に特別な貢献をした相続人への「寄与分」を考慮することも重要です。弁護士は寄与分の主張がどの程度認められるかの見通しを立て、認められる場合はその主張を有利に進めることができます。
このように、弁護士に遺産分割を依頼することで、法的知識に裏打ちされた公正で適切な遺産分割を実現することが期待できます。

トラブルの予防とトラブルの円滑な解決ができる

遺産分割協議中に意見の不一致から感情的な対立が生じることは珍しくありません。こうした状況では、事前に弁護士に相談することで、法的に正しい考え方や解決方法を確認し、合意内容を検討することができます。これにより、全員が納得のいく解決を見出し、トラブルなく遺産分割を進めることが可能になります。

また、自分たちだけでは解決できず相続トラブルが生じてしまった場合には、弁護士に依頼することを強くお勧めいたします。弁護士に依頼すれば、相手方との交渉を代行してもらうことができますし、必要に応じて家庭裁判所における遺産分割調停の代理人として手続きや話し合いを代行してもらうことができます。弁護士が介入することで、相手方も感情的な対応を抑え、話し合いを受け入れやすくなります。これにより、よりスムーズに遺産分割の協議が進むことが期待できます。

遺産相続に関わる専門家には司法書士や行政書士もいますが、実際のトラブル解決を担うことができるのは弁護士だけです。法的な知識と経験を持つ弁護士に依頼することで、遺産分割の問題が効率的かつ円滑に解決される可能性が高まります。

協議、調停、裁判を弁護士が代理人として有利に進めてくれる

弁護士に依頼すれば、依頼者は相手方との直接のやり取りを避けることができ、家庭裁判所での手続きも弁護士が代行します。これにより、手続きの手間とストレスが大幅に軽減されます。

また、万が一、遺産分割協議での合意に至らず、調停や審判に進むことになった場合でも、弁護士はその豊富な知識と経験を活かして、問題解決に向けて力強くサポートします。

特に遺産分割調停の際には、弁護士が説得力のある主張を展開し、適切な資料を提出することで、調停委員に主張を認めてもらいやすくなります。
弁護士に依頼することにより協議や調停、審判を有利に進めることが可能になります。

ストレス軽減と心理的負担の緩和

遺産分割協議は親族間で行われるため、本音で話すことが難しかったり、感情的なトラブルが生じたりすることが少なくありません。
弁護士に遺産分割協議を依頼すると、弁護士が依頼者の代理人として代わりに話し合いを行います。これにより、依頼者は相手と直接やり取りすることなく、精神的なストレスを軽減できます。

また、交渉の代理は弁護士にのみ認められた業務であり、司法書士や税理士、行政書士など他の専門家では対応できません。

さらに、「法律の専門家に任せている」という安心感も得られます。これにより、話し合いが長期化しても、それが日常生活や精神状態に与える悪影響を最小限に抑えることができます。遺産分割の手続きは多くの場合ストレスが伴いますが、弁護士のサポートによって、この負担を軽減し、よりスムーズに問題解決に導くことができるのです。

相続人調査と相続財産調査を適切に行える

だれが相続人となるのか相続関係が複雑なケースでは、正確な相続人の特定が不可欠です。すべての相続人を確定しない限り、遺産分割を進めることはできません。そのため、弁護士が相続人の実態を調査し、関係を明確にする手続きを行います。

相続人調査では、被相続人の一生を通じたすべての戸籍謄本を取得するなどして、正しい相続人を特定します。これは、非常に手間のかかる作業です。

さらに、相続財産調査においても、被相続人の財産全体を把握するために様々な資料の収集が必要です。相続財産の調査は、時間がかかるうえに専門的な知識も必要であり、一般の人には難しい場合が多いです。

弁護士に依頼することで、相続人調査や相続財産調査を漏れなく正確に行うことができます。また、弁護士は相続関係説明書や相続財産目録の作成も行い、正確かつ効率的に手続きをサポートすることができます。

遺産分割協議書を正確に作成してもらえる

遺産分割協議が成立した後、遺産分割協議書を作成しなければなりません。遺産分割協議書は、相続人間の合意内容を正式に記録し、今後の不動産の名義変更や預貯金の払戻し等の相続手続きにも必要となります。

遺産分割協議書の作成には専門的な知識が必要です。不備があると法務局や金融機関では受け付けられず、相続手続きが遅延してしまう可能性があります。また、将来的に相続トラブルの原因となる場合もあります。

弁護士に遺産分割協議書の作成を依頼することで、このような問題を防ぐことができます。弁護士は、法的要件を満たし、全ての情報を正確に記載した協議書を作成します。これにより、法務局や金融機関での手続きがスムーズに進み、相続手続きにおけるトラブルを最小限に抑えることができます。

遺言書の有効性を判断してもらえる

言書が存在しても、それが必ずしも法的に有効とは限りません。遺言書が法的な要件を満たしていない、または偽造や改ざんの疑いがある場合、その遺言書は無効となる可能性があります。

弁護士は、遺言書の要式の確認、筆跡の鑑定、保管状態の評価などを通じて、その遺言書が法的に有効かどうかを判断します。遺言書の内容や作成状況に疑問点がある場合、弁護士は「遺言無効確認調停」や「遺言無効確認訴訟」といった法的手段を利用して、遺言書の有効性を正式に確認することができます。

遺言書が無効であると判断されれば、遺産分割の基準が変わり、相続財産の分配方法も変わります。そのため、遺言書が有効かどうかを正確に判断することは、遺産分割が公正かつ正確に行われるために不可欠です。

遺留分請求の可否の判断と請求の代行

遺留分とは、法定相続人が最低限保障されている遺産相続の権利を指します。たとえ遺言があったとしても、この遺留分は侵害されるべきではありません。
弁護士は、遺言の内容や遺産分割の内容が遺留分を侵害していないかどうかを判断し、遺留分の請求が必要かどうかについてアドバイスすることができます。

また、遺留分の請求は相手との感情的な対立を招く可能性があり、自分で行うには複雑で非常に大変です。さらに、遺留分の請求には期限があり(相続開始と遺言を知ってから1年間)、この期限を過ぎると請求権を失ってしまうため、迅速な対応が必要です。

弁護士に依頼することで、遺留分請求を適切かつ効率的に行うことができます。弁護士は、請求期限内に適切に手続きを進め、必要に応じて相手方との交渉を代行します。これにより、感情的な対立を避けつつ、法定相続人の権利を保護することができます。

遺産分割を弁護士に相談・依頼した場合の費用相場

 

遺産分割を弁護士に相談・依頼した場合の費用相場

 

遺産分割を弁護士に相談・依頼する際に発生する主な費用には、相談料、着手金、報酬金、実費・日当があります。これらの費用は弁護士や法律事務所によって異なりますが、一般的な相場は以下のようになります。

相談料

相談料については、遺産分割の相談を始める際に必要な費用で、一般的に30分ごとに5500円程度が相場とされています。初回相談を無料で提供する法律事務所も多く、この点は事前に確認すると良いでしょう。

着手金

着手金は、弁護士が実際に遺産分割問題に着手する際に必要な費用で、依頼する際に支払います。この金額は22万円~33万円程度が相場とされています。
また、固定金額で設定している場合と、相続財産の額に基づいて一定の率を掛けて計算される場合もあります。

また、話し合いで解決せず、調停や裁判に移行した場合などは追加で11万円程度の費用が必要になることがあります。
具体的な着手金の額や計算方法は初回相談時に把握しておくことが大切です。

報酬金

報酬金は、依頼した案件が解決した際に支払う費用です。この金額は、弁護士に依頼したことで得られた金額(経済的利益)に応じて計算されるのが一般的です。各法律事務所によって報酬金の計算方法は異なりますので、初回相談時に確認しておくようにしましょう。

なお、この金額を実際に回収できたかどうかは、報酬金の発生には影響しません。相手方が実際に支払いを行わなかった場合でも、報酬金の支払い義務は発生します。

実費・日当

弁護士が遺産分割の手続きを進める中で発生する交通費や郵便代などの実費、遠方への出張時の日当などの費用も考慮する必要があります。これらの費用についても事前に弁護士と確認し、予期しない追加費用が発生しないようにすることが重要です。

遺産分割に強い弁護士の選び方

相続問題の解決実績が豊富である

相続問題を専門に扱ってきた弁護士であれば、単なる遺産分割だけでなく、遺留分の請求や遺言書の有効性の確認など、多岐にわたる相続問題を扱ってきた実績がある可能性が高いです。

相続問題に深い知識と豊富な経験を持っているため、さまざまな複雑なケースへの対応や解決策を提案する力があります。
法律事務所の公式サイトやポータルサイトを活用し、相続問題を専門的に取り扱い、解決事例が豊富な弁護士や法律事務所を探しましょう。

料金体系が明確であること

明確な料金体系のある弁護士は、初回相談料から着手金、成功報酬、そして必要に応じて発生する可能性のある追加の実費に至るまで、すべての費用について詳細に説明してくれます。これにより、依頼者は依頼前に全体の費用を把握することができ、予算の計画を立てやすくなります。

特に、遺産分割の場合、報酬金の費用が相続財産の規模に応じて変わる場合が多いので、報酬金がどのように計算されるのかを事前に詳細に理解しておくことが重要です。

弁護士によっては、相談料が無料である場合や、分割払いなどの支払い方法に柔軟に対応していることもあります。料金体系が明確な弁護士を選ぶことで、依頼者は費用に関する不安を減らし、遺産分割の問題に集中することができます。

初回相談時の印象や相性

初回相談時の弁護士の対応を重視することが大切です。説明がわかりやすく、悩みや質問に対して丁寧に応えてくれるかどうかは、今後の関係性を築く上でとても大切です。

遺産分割はしばしば感情的な問題を含むため、弁護士が依頼者の状況を理解し、共感を示してくれるかどうかも大切です。依頼者の感情や立場に立ったアドバイスができる弁護士は、信頼関係を築きやすくなります。

逆に、話を軽く受け止めるような態度や、費用について明確な説明を避ける弁護士は避けた方が良いでしょう。
弁護士がどの程度迅速に応答してくれるか、また連絡が取りやすいかどうかも、重要です。連絡がスムーズで、必要なときに適切なサポートが受けられるかどうかを確認しましょう。

相続問題は長期間にわたる可能性があるため、信頼できる弁護士を選ぶことが重要です。多少費用が高くても、より良いサービスを提供する弁護士に依頼することが、長期的に見て最良の選択となる場合があります。

遺産分割を弁護士に相談してから解決するまでの流れ

①初回相談に行く

遺産分割に関する弁護士との最初の相談が行われます。この段階で相談料が発生することもありますが、無料相談を行っている事務所も多いです。相談では、相続人や相続財産の概要、遺産分割における懸念事項を弁護士に伝えます。

②相続人・財産の調査を行う

弁護士との相談の結果、依頼を決定した場合、着手金を支払い、正式に依頼します。依頼された 弁護士は、相続人の特定や相続財産の調査を行います。遺言書の有無、遺留分の問題などもこの段階で検討されます。

③遺産分割案の作成と遺産分割協議の代行

弁護士は、収集した情報に基づいて遺産分割案を作成します。この過程で、相続人間の意見調整や、必要に応じて遺留分の請求も検討されます。
弁護士は相続人間の協議や交渉を代行することができるので、感情的な対立を避けることができ、合理的かつ公平な解決が可能となります。

④遺産分割協議書の作成

遺産分割協議が成立したら、弁護士は遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には相続人全員の署名と押印が必要です。

⑤遺産分割調停、訴訟への対応

話し合いで合意に至らない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て手続きを行い、調停の場で話し合いを行います。調停での合意が成立しない場合は、地方裁判所または簡易裁判所に訴訟を提起することになります。
弁護士に依頼した場合、裁判所への出頭などの裁判手続きを代理人として全て代わりに行うことができます。

遺産分割を弁護士に相談・依頼することに関するQ&A

Q: 弁護士に相談する前に、遺産分割に関してどのような資料や情報を用意するのが最適ですか?

A: 弁護士に相談する際、被相続人の戸籍謄本、相続財産に関する詳細なリスト(不動産の登記情報、銀行口座の明細、投資資産の詳細など)、存在する場合は遺言書のコピー、および他の相続人の情報などを準備しておくと良いでしょう。これらの情報があれば、弁護士はより具体的かつスムーズに分析とアドバイスを行うことができます。

Q: 弁護士が遺産分割協議に介入すると、どのようなメリットがありますか?

A: 弁護士が遺産分割協議に介入すると、冷静な第三者の視点から協議が進められ、話し合いがスムーズに進むことが一般的です。弁護士の専門的な意見が提供されることで、当事者間の感情的な対立が抑えられ、より客観的で合理的な決定が行えます。

また、弁護士が手続きを代行するため、相続人が直面するストレスが大幅に減ります。特に、遠方の相続人との話し合いや複雑な交渉が必要な場合、弁護士がこれらをすべて代わりに行うことで、依頼者は話し合いの結果を待つだけで済み、ストレスを感じる機会が格段に減少します。

Q: 遺産分割協議を弁護士に依頼する際のデメリットは何ですか?

A: 遺産分割協議を弁護士に依頼する主なデメリットは費用の問題です。しかし、増額された遺産分割の取り分と比較して、弁護士費用が高い場合でも、将来のトラブルを未然に防ぐことを考慮すれば、大きな利益があると言えます。

ただし、相続に関連する手続きに不慣れな弁護士に依頼すると、手続きに時間がかかる可能性がありますので、選択には注意が必要です。適切な弁護士を選べば、多くの場合、メリットがデメリットを上回ると考えられます。

まとめ

この記事では、遺産分割における弁護士の役割と、遺産分割を弁護士に依頼するメリットを深く掘り下げました。弁護士に依頼する最大のメリットは、専門的な知識と経験に基づいた適切なアドバイスを受けられることです。これにより、法的な観点から遺産分割を進めることができ、感情的な対立を避けることが可能になります。

また、弁護士は遺産分割の交渉や協議を代理で進めることができ、最も公正で有利な条件での解決を目指します。さらに、将来的なトラブルを防ぐために、遺産分割協議書の作成やその後の相続手続きをサポートすることができます。これにより、遺産分割が円滑に進み、相続人間の関係も保たれることが期待できます。
ただし、依頼する弁護士を選ぶ際には、その料金体系や相続問題に関する実績などを十分に検討するようにしましょう。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。