遺産分割協議書の文例集│不動産や預貯金などの財産別の書き方を解説

遺産分割

更新日 2024.03.20

投稿日 2024.01.25

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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遺産分割協議書は、遺産分割協議で相続人全員が合意した内容をまとめたもので、相続財産の名義変更などの相続手続きにおいて必要不可欠となる重要な文書です。

「いざ遺産分割協議書を書こうとしたものの、どのように書いたらいいのかわからない」、といった方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。確かに、文例集があれば、遺産分割協議書を書く際に参考になるでしょう。

遺産分割協議書の書き方は、相続する財産の種類などによって異なります。

本記事では、不動産、預貯金、株式など、相続する財産の種類別に、遺産分割協議書の文例集を解説を交えてご紹介します。
文例集をお探しの方は、ぜひ参考になさってください。

目次

遺産分割協議書の書き方│共通部分の文例集

遺産分割協議書の書き方に決まりはない

遺産分割協議書の作成は、法律で義務付けられているものではないので、書き方や書式に決まりはありません。

手書きでも、パソコンで作成しても、縦書きでも、横書きで作成しても、問題ありません。
重要なのは、「相続人の誰が、どの財産を、どのように引き継ぐのか」ということを明確に示すことです。

また、記載内容に相続人全員が同意していることを証明するために、相続人全員の署名と実印の押印が必要です。

遺産分割協議書の書き方の詳細や、遺産分割協議書ひな形のダウンロードについては、下記の記事を参考になさってください。
[遺産分割協議書とは?作成方法や書き方について解説!]
[遺産分割協議書のひな形(word・pdf)のダウンロード【無料】│法務局のテンプレートもご紹介]

遺産分割協議書に記載する項目

遺産分割協議書に記載すべき主な項目は、下記のとおりです。
相続財産を正確に記載し、もれがないように注意しましょう。

なお、被相続人の遺産に含まれない項目については、遺産分割協議書に記載する必要はありません。

  • タイトル・被相続人の情報
  • 相続人の情報
  • 分割する相続財産(不動産・預貯金・株式などの有価証券)についての具体的な内容
  • 記載のない遺産の取り扱い
  • 後書き(相続人全員で話し合って合意した事実・作成した協議書の通数)
  • 作成した日付、相続人全員の署名押印欄

遺産分割協議書の共通部分の文例集

以下では、相続財産などに関係なく、全ての遺産分割協議書に共通する部分の文例集を、解説を交えてご紹介します。

1.タイトル・被相続人の情報の文例

タイトル・被相続人の情報の文例には、次のようなものがあります。

【文例】               遺産分割協議書

被相続人の表示

氏名     〇〇〇〇

本籍地    〇〇〇県〇〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番地

最後の住所  〇〇〇県〇〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番地

生年月日   〇〇〇年〇月〇日

死亡生年日  令和〇年〇月〇日

タイトルは、「遺産分割協議書」と記載します。
被相続人の情報は、戸籍謄本や住民票などを確認しながら、「氏名、本籍地、最後の住所地、生年月日、死亡年月日」などを正確に記載します。

2.相続人の情報の文例

相続人の情報の文例には、次のようなものがあります。

【文例1】

被相続人 〇〇〇〇の遺産について、被相続人の妻〇〇〇〇、被相続人の長男〇〇〇〇、被相続人の長女〇〇〇〇の相続人全員が遺産分割協議を行ない、次のとおり分割することに合意した。

 

【文例2】

上記被相続人の遺産について、同人の相続人全員(〇〇〇〇、〇〇〇〇、及び〇〇〇〇)は下記のとおり遺産分割協議を行い、これに合意した。

前文では、誰が相続人なのか明らかにするために、相続人全員の名前を記しましょう。また、相続人全員で遺産分割協議をした結果について記載した書面であることを記載します。

3.後書き(相続人全員で話し合って合意した事実・作成した協議書の通数)の文例

後書きの文例には、次のようなものがあります。

【文例】

以上のとおり、相続人全員による遺産分割についての合意が成立したため、本協議書を3通作成し、各相続人が署名押印のうえそれぞれ1通ずつ所持する。

後書きでは、相続人全員で話し合い、合意した事実を記載しましょう。
また、作成した遺産分割協議書の通数も記載します。

遺産分割協議書の作成通数に決まりはありませんが、相続人全員が同じ内容の遺産分割協議書を各自1通ずつ保管できるよう、相続人の人数分作成しておいたほうがよいでしょう。

4.作成した日付、相続人全員の署名押印欄の文例

作成した日付、相続人全員の署名押印欄の文例には、次のようなものがあります。

【文例】

令和〇年〇月〇日

住 所 ○○○県○○○市○○○区○○○丁目○番○号

相続人 ○○ ○○ 実印

住 所 ○○○県○○○市○○○区○○○丁目○番○号

相続人 ○○ ○○ 実印

住 所 ○○○県○○○市○○○区○○○丁目○番○号

相続人 ○○ ○○ 実印

住所はあらかじめ印字しても構いません。
遺産分割協議書を作成した日付、各相続人の住所を記入のうえ、相続人全員が名前を自署し、実印で押印しましょう。

法律上、実印による押印は必須ではありませんが、相続手続きで実印による押印を求められるケースが多く、のちのトラブル防止の観点からも、実印で押印すべきでしょう。

以上、共通する部分に関する遺産分割協議書の文例集をご紹介しました。
事項では、「相続財産についての記載」について、主な相続財産別に文例集をご紹介いたします。

不動産(土地・建物・マンション)を相続する場合│遺産分割協議書の文例集

不動産を相続する場合│遺産分割協議書の文例集

不動産を相続する場合、不動産の内容は、「分割する相続財産の内容」として、遺産分割協議書に記載します。

不動産の内容を正確に記載するために、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、その内容を確認しながら正確に記載しましょう。

不動産の登記簿謄本と遺産分割協議書に記載された不動産の内容が異なると、不動産の名義変更ができないおそれがありますので、注意してください。

以下では、不動産を記載する場合の文例集をご紹介します。不動産といっても、土地、建物、マンションなど、不動産の種類によって書き方が異なりますので、各ケースごとの記載例を解説を交えてご紹介します。

【文例1-1】土地を記載する場合の記載例

土地を記載する場合の文例集には、次のようなものがあります。

【文例】

〇〇〇〇〇は、次の遺産を相続する。

(土地)

所  在 〇〇〇県〇〇〇市〇〇〇区○丁目

地  番 ○○番○○

地  目 宅地

地  積 ○○○.○○平方メートル

法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、内容を確認しながら、土地の所在、地番、地目、地積を正確に記載しましょう。

【文例1-2】土地の共有持分を記載する場合の記載例

土地の共有持分を記載する場合の記載例には、次のようなものがあります。

【文例】

〇〇〇〇〇は、次の遺産を相続する。

(土地)持分2分の1

所  在 〇〇〇県〇〇〇市〇〇〇区○丁目

地  番 ○○番○○

地  目 宅地

地  積 ○○○.○○平方メートル

 被相続人の土地の権利のうち、2分の1のみを所有している場合(これを共有持分といいます)、遺産分割協議書にも共有持分について記載する必要があります。
登記簿謄本の「権利者その他の事項」に共有持分割合の記載がありますので、その内容に従って、上記のように「持分」を記載します。

【文例2-1】建物を記載する場合の記載例

建物を記載する場合の記載例には、次のようなものがあります。

【文例】

〇〇〇〇〇は、次の遺産を相続する。

(建物)

所  在 〇〇〇県〇〇〇市〇〇〇区○丁目〇〇番地

家屋番号 〇〇

種  類 居宅

構  造 木造瓦葺2階建

床面積 1階 〇〇.〇〇平方メートル

2階 〇〇.〇〇平方メートル

法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を正確に記載しましょう。

【文例2-2】建物の共有持分を記載する場合の記載例

建物の共有持分を記載する場合の記載例には、次のようなものがあります。

【文例】

〇〇〇〇〇は、次の遺産を相続する。

(建物)持分2分の1

所  在 〇〇〇県〇〇〇市〇〇〇区○丁目〇〇番地

家屋番号 〇〇

種  類 居宅

構  造 木造瓦葺2階建

床面積 1階 〇〇.〇〇平方メートル

2階 〇〇.〇〇平方メートル

前述の土地の場合と同様に、 登記簿謄本の「権利者その他の事項」の内容にしたがって、上記のように持分を記載します。

【文例3】マンションを記載する場合の記載例

マンションの1室のみマンションを相続する場合の記載例には、次のようなものがあります。

【文例】

〇〇〇〇〇は、次の遺産を相続する。

(一棟の建物の表示)

所  在  〇〇〇県〇〇〇市〇〇〇区○丁目〇〇番地〇

建物の名称 〇〇〇〇マンション

(専有部分の建物の表示)

家屋番号  〇〇番〇

建物の名称 〇〇〇

種  類  居宅

構  造  鉄筋コンクリート造〇階建

床面積   2階部分 〇〇.〇〇平方メートル

(敷地権の目的たる土地の表示)

土地の符号 〇

所在及び地番 〇〇〇県〇〇〇市〇〇〇区○丁目〇〇番〇〇

地  目 宅地

地  積 〇〇〇〇.〇〇平方メートル

(敷地権の表示)

敷地権の種類 所有権

敷地権の割合 〇〇分の〇〇

登記事項証明書(登記簿謄本)に沿って、「一棟の建物の表示」、「専有部分の表示」、「敷地権の目的たる土地の表示」、「敷地権の表示」などを正確に記載しましょう。
以上、不動産の種類別に、遺産分割協議書の文例集をご紹介しました。

預貯金や現金を相続する場合│遺産分割協議書の文例集

1.預貯金を相続する場合│遺産分割協議書の文例集

預貯金を相続する場合、遺産分割協議書に預貯金の残高を記載しない方法と、記載する方法があります。

預金残高は、必ず記載しなければならない訳ではありません。
相続開始後に利息が発生して金額が変動した場合には、修正を要することになるため、金額の記載を行わないのが一般的です。

 

遺産分割の対象となる期間

 

以下では、預貯金の残高を記載しないケースと記載するケース、それぞれの文例を解説を交えてご紹介します。

【文例1-1】預貯金の残高を記載しない場合の記載例

預貯金の残高を記載しない場合の記載例には、以下のようなものがあります。

【文例】

〇〇〇〇〇は、次の遺産を相続する。

(預貯金)

○○○○銀行○○○○支店 普通預金 口座番号 ○○○○○○○

通帳や残高証明書などを参考に、銀行名、支店名、種別(普通預金・定期預金)、口座番号等を正確に記載しましょう。

【文例1-2】預貯金の残高を記載する場合の文例の記載例

預貯金の残高を記載する場合の記載例には、以下のようなものがあります。

【文例】

〇〇〇〇〇は、次の遺産を相続する。

(預貯金)

○○○○銀行○○○○支店 普通預金 口座番号 ○○○○○○○

残高 ○,○○○,○○○円および相続開始後に生じた利息およびその他の果実

預貯金の残高は記載しないのが一般的ですが、上記のように残高を記載する場合は、必ず金融機関で「残高証明書」を発行してもらい、正式な預金残高を記載しましょう。

2.現金を相続する場合の文例集

続いて、現金を相続する場合の文例集をご紹介します。
現金の場合も、金額を記載するケースと記載しないケースがあります。

【文例2-1】現金の金額を記載しない場合の文例の記載例

現金の金額を記載しない場合の記載例には、以下のようなものがあります。

【文例】

〇〇〇〇〇は、被相続人の現金をすべて取得する。

【解説】
現金を記載する場合は、特定できる情報を盛り込む必要は特にありませんので、上記のようなシンプルな記載となります。
現金の額が少額であれば、遺産分割協議書に金額を書かないことが一般的でしょう。

【文例2-2】現金の金額を記載する場合の記載例

現金の金額を記載する場合の記載例には、以下のようなものがあります。

【文例】

〇〇〇〇〇は、次の遺産を相続する。

(現金)

金○○○,○○○円

現金の金額を記載する場合は、上記のように記載します。
被相続人の現金が高額である場合には、後から相続人同士で揉めないためにも、遺産分割協議書に具体的な金額を記載した方がよいでしょう。

以上、預貯金を相続する場合の遺産分割協議書の文例集をご紹介しました。

株式などの有価証券を相続する場合│遺産分割協議書の文例集

株式などの有価証券を記載する場合の記載例には、以下のようなものがあります。

【文例】

相続人〇〇〇〇は、次の遺産を取得する。

(有価証券等)

1. 〇〇〇証券会社 〇〇〇支店 口座番号〇〇〇〇〇〇 〇〇〇株式会社 株式 1,000株

2. 〇〇〇〇株式会社 株式 〇〇〇株

残高証明書などを参考に、会社名や株式数を正確に記載しましょう。
証券口座で保有する株式については、証券会社から届く通知書等を参考に、証券会社名、支店名や口座番号等も記載しましょう。

記載内容に誤りがあると、証券会社で名義変更できませんので慎重に記載しましょう。

「記載のない財産」「その他一切の財産」を記載する場合│遺産分割協議書の文例集

1.「記載のない財産」についての遺産分割協議書の文例集

遺産分割協議書に記載のない財産が新たに見つかった場合の取り扱いをどうするかについて、あらかじめ遺産分割協議書に定めておくことができます。

遺産分割協議書を作成した後に、記載のない財産が発見されるケースは珍しくありません。
のちの紛争を回避するためにも、対処方法を事前に決めておき、遺産分割協議書に記載しておくと安心です。

以下では、対象方法に応じて、3つの記載例を解説を交えてご紹介します。

  • 【文例1】特定の相続人が取得する方法
  • 【文例2】相続人全員での協議によって決定する方法
  • 【文例3】取得する割合を定めておく方法

【文例1】特定の相続人が取得する方法

【文例】

本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産については、相続人〇〇〇〇がこれを相続する。

遺産分割協議書に記載のない財産が発見されたときに、特定の相続人が取得する場合には、上記のように相続人の名前を記載します。
この記載をした場合、後から大きな財産が見つかった場合に、相続人間でもめる可能性があります。

もっとも、この文例をあらかじめ記載しておいた方が決めておいた方が、実務上の手間が省けるというメリットもあるので、個別の状況に応じて判断が必要です。

【文例2】相続人全員での協議によって決定する方法

【文例】

本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産については、相続人全員がその財産について再度協議を行うこととする。

遺産分割協議書に記載のない財産が発見されたときに、相続人全員がその財産について再度協議を行う場合には、上記のようにその旨を記載します。

遺産分割協議を終えたあとに新たに発見された財産については、再度、相続人全員で遺産分割協議を行うという内容の方が、当事者間での了解を得やすいでしょう。

ただし、相続人が遠方に住んでいる場合には、再度遺産分割協議を行うのは、実務上手間がかかります。また、いったん解決したはずの相続について再度協議することになるため、トラブルに発展する可能性も否定できません。

【文例3】取得する割合を定めておく方法

【文例】

本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産については、各相続人の法定相続分の割合で取得するものとする。

遺産分割協議書に記載のない財産が発見されたときに、各相続人の法定相続分の割合で取得する場合には、上記のように記載します。

2.「その他一切の財産」についての遺産分割協議書の文例集

法律上、「その他一切の財産」と記載しても、は問題ありません。

ただし、「その他一切の財産」と記載する場合は、誰が何を取得するのか分かるように記載しましょう。

具体的な文例として、以下のようなものがあります。

遺産分割協議書

次の財産はAが取得する。

(土地 ※記載省略)

(建物 ※記載省略)

次の財産はBが取得する。

(預貯金 ※記載省略)

上記以外のその他一切の財産はCが取得する。

上記では、土地や建物などの不動産はAが取得し、預貯金はBが取得し、その他一切の財産はCが取得するということが分かります。

一方で、これらの記載がなく、「その他一切の財産はCが取得する。」とだけ記載した場合には、何を取得するのか分かりません。

「その他一切の財産」と記載する場合のリスク

通常、「その他一切の財産」と記載する場合は、「その他一切の財産」が少額な財産を想定しているケースが多いです。

しかし、「その他一切の財産」には、実際には高額な財産も含まれますので、このような記載をした場合にトラブルに、相続人同士のトラブルに発展するリスクがあります。

例えば、上記の文例で、Cが取得する「その他一切の財産」は、100万円程度を想定していたとします。しかし、実際には、株券や現金があったので、「その他一切の財産」が3000万円だったとします。このような場合、一般的には、AやBは納得できず、相続人同士で揉めてしまうことになるでしょう。

このようなリスクもあるので、安易に「その他一切の財産」と記載することは控えた方がよいでしょう。

全ての財産を相続する場合│遺産分割協議書の文例集

全ての財産を母や配偶者が相続する場合の文例集

以下では、全ての財産を、母や配偶者などの特定の相続人が相続する場合の遺産分割協議書の文例集を、解説を交えてご紹介します。

全ての財産を特定の相続人が相続する場合の遺産分割協議書の文例には、以下の2種類があります。

  • 全財産をまとめて記載する文例:「全ての財産は○○○○が相続する」「一切の財産は○○○○が相続する」などと書く。
  • 個別の財産ごとに記載する文例:各財産の項目ごとに、「〇〇〇〇が相続する。」と書く。

ただし、全財産をまとめて記載する書き方の場合、「全ての財産」「一切の財産」には、借金などのマイナスの財産も含まれるため、注意が必要です。

マイナス財産が含まれることを知らずに遺産分割協議書にこのような書き方をした場合、借金などのマイナスの財産も全て母や配偶者が返済しないといけないことになってしまうリスクがあります。

以下では、全ての財産を特定の相続人が相続する場合の文例集を、ケース別にご紹介します。

  • 【文例1】母が全ての財産を相続する場合の文例
  • 【文例2】配偶者が全ての財産を相続する場合の文例
  • 【文例3】母が全ての財産を相続する場合の文例│※財産を書き出す方法

【文例1】母が全ての財産を相続する場合

【文例】

被相続人の有する財産は全て  ○○○○○(母の氏名)が相続する。

財産の内容に関わらず、母が全ての財産を相続する場合は、上記のように、「全て○○○○○(母の氏名)が相続する」と記載します。

【文例2】配偶者が全ての財産を相続する場合

【文例】

被相続人の有する一切の財産は、 ○○○○○(配偶者の氏名)が相続する。

財産の内容に関わらず、配偶者が全ての財産を相続する場合は、上記のように、「一切の財産は○○○○○(配偶者の氏名)が相続する」と記載します。

【文例3】母が全ての財産を相続する場合│※財産を書き出す方法

【文例】

次の財産は○○○○○(母の氏名)が取得する。

(建物)

○○○○○ ※記載省略

次の財産は○○○○○(母の氏名)が取得する。

(預貯金)

○○○○○ ※記載省略

次の財産は○○○○○(母の氏名)が取得する。

(有価証券)

○○○○○ ※記載省略

財産の内訳が分かっている場合には、上記のように、財産を個別に列挙し、それぞれについて母が相続することを記載する書き方もあります。

遺産分割協議後に記載のない財産が見つかる場合に備え、「後日に判明した財産は○○○○(母の氏名)が相続する」としたり、「相続人全員で再度協議する」などと記載しておくことができます。

なお、母や配偶者などの特定の相続人がすべて相続するからといって、母や配偶者だけの署名押印があればよいわけではありません。遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印による押印が必要ですので、注意してください。

遺産分割協議書の文例集のQA

Q.不動産を記載する場合の、遺産分割協議書の文例集は?

土地、建物、マンションなどの不動産の種類によって、遺産分割協議書に記載する内容が以下のように異なります。

土地を記載する場合

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積

建物を記載する場合

  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

マンションを記載する場合

  • 一棟の建物の表示
  • 専有部分の表示
  • 敷地権の目的たる土地の表示
  • 敷地権の表示

法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、不動産の内容を正確に記載しましょう。

Q.預貯金を記載する場合の、遺産分割協議書の文例集は?

預貯金を相続する場合の遺産分割協議書の文例には、以下のようなものがあります。

  • 「○○○○銀行○○○○支店 普通預金 口座番号 ○○○○○○○」
  • 「○○○○銀行○○○○支店 普通預金 口座番号 ○○○○○○○ 残高 ○,○○○,○○○円および相続開始後に生じた利息およびその他の果実」

上記のとおり、預貯金を相続する場合は、遺産分割協議書に預貯金の残高を記載しない方法と、記載する方法があります。

Q.記載のない財産が発見されることに備えた、遺産分割協議書の文例集は?

記載のない財産が発見されることに備えた遺産分割協議書の文例には、以下のようなものがあります。

  • 「本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産については、相続人〇〇〇〇がこれを相続する。」
  • 「本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産については、相続人全員がその財産について再度協議を行うこととする。」
  • 「本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産については、各相続人の法定相続分の割合で取得するものとする。」

まとめ

以上、相続する財産の種類別に、遺産分割協議書の文例集を解説を交えてご紹介しました。

遺産分割協議書は、その書き方や書式に法的な決まりはありませんが、相続した内容を対外的に証明する重要な書類ですので、「誰が、どの財産を、どのように相続するのか」が分かるように、適切に記載することが大切です。

遺産分割協議書をご自身で作成する場合は、本記事でご紹介した文例集を参考になさってください。
相続財産の種類が多くてお困りの場合や、ご自身で作成することが不安な場合には、相続に詳しい司法書士や弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。