絶縁した兄弟との遺産相続は?トラブルの対処法や回避する方法を解説

遺産分割

更新日 2024.07.05

投稿日 2024.07.05

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

兄弟姉妹と絶縁状態にある方々にとって、遺産相続は大きな悩みの一つです。絶縁している兄弟に連絡を取ること自体がストレスであり、遺産を分け与えたくないという気持ちも強いかもしれません。

しかし、親が亡くなり遺産相続の手続きを避けることはできません。遺産分割協議が成立していない状態では、親の遺産を適切に処分することが難しく、法的なトラブルに発展する可能性もあります。

この記事では、絶縁した兄弟との遺産相続における具体的なトラブル事例と、その対処法を詳しく解説します。円満な解決方法やトラブル回避のポイントを知ることで、遺産相続をスムーズに進める手助けになるはずです。

目次

絶縁した兄弟姉妹も遺産相続の権利がある!遺産分割協議が必要

絶縁状態の兄弟がいる場合、話し合いをしたくないと考える方も少なくないでしょう。また、遺産相続の手続きを適正に行えば、絶縁した兄弟に連絡を取らずに進められるのではないかと思うこともあるかもしれません。しかし、遺産相続ではすべての相続人の同意が必要です。絶縁している兄弟も、相続人としての権利を持っているため、その同意を無視することはできません。

遺産は相続人全員の法定相続分に応じて共有状態にあり、遺産分割協議を経て初めて各相続人の取り分が決まります。この遺産分割協議は、全員の同意と実印が求められるため、絶縁している兄弟の同意がなければ成立しません。また、遺産分割協議書がなければ相続登記や預金の払い戻しもできないため、兄弟を無視して手続きを進めることは事実上不可能です。

遺言書がある場合は異なりますが、遺産分割協議が必要なケースでは、絶縁した兄弟にも連絡を取り、協議に参加してもらう必要があります。もし勝手に遺産を使ってしまうと、権利侵害となりトラブルに発展する可能性が高くなります。

このように、絶縁した兄弟も相続人としての権利を持ち、その同意がなければ遺産分割は進められないことを理解しておくことが重要です。円満な解決を目指すためにも、適切な対応と連絡を欠かさず行うことが必要です。

遺産相続手続きが終わるまで遺産を勝手に処分してはいけない!

絶縁した兄弟姉妹であっても、遺産相続の権利を持っています。相続が開始されると、被相続人が死亡した時点で有していた財産は、遺贈や死因贈与の対象となる財産を除き、相続人全員の共有となります(民法896条、898条)。

相続財産が共有となるため、遺産分割が行われる前に財産を処分するには、全ての相続人の同意が必要です(民法251条、264条)。まだ遺産分割を終えていない遺産に手を付けてはいけません。

他の相続人の同意を得ずに勝手に預貯金を引き出してしまった場合、他の相続人は使い込んだ相続人に対して財産の返還を請求することができます。または、不当利得(民法703条、704条)や不法行為(民法709条)に基づいて損害賠償請求される可能性があります。

絶縁状態の兄弟姉妹間で起こる遺産相続トラブル

絶縁中の兄弟姉妹がいる場合、遺産相続において様々なトラブルが発生しやすくなります。まず一つの問題として、相続人の連絡先がわからないために遺産分割協議が進まないことが挙げられます。被相続人が遺言書を作成していない場合、遺産の名義変更手続きには相続人全員の合意が必要です。絶縁中の兄弟姉妹がどこにいるか不明な場合、その他の相続人も遺産を受け取ることができず、手続きが進まなくなります。

さらに、絶縁中の兄弟姉妹の行方が全くわからない場合や生死が不明な場合、不在者財産管理人の選任や失踪宣告といった法的手続きが必要となります。これらの手続きは時間と労力を要し、相続手続きが長引く原因となります。

絶縁中の兄弟姉妹の居場所がわかったとしても、彼らが相続手続きに非協力的である場合も問題です。このような場合、遺産分割協議が円滑に進まず、最終的には遺産分割調停や遺産分割審判を行わなければならないケースが多くなります。これらの手続きもまた、時間と費用がかかるため、他の相続人にとって大きな負担となります。

さらに、遺産の分割について意見が対立し、感情的な衝突が生じることも少なくありません。特に、絶縁の原因が過去の金銭トラブルや家庭内の争いである場合、その影響が遺産相続の場でも引き続き影響を与えることがあります。これにより、相続手続きがさらに複雑化し、解決までに長い時間を要することになります。

絶縁状態の兄弟姉妹の連絡先がわかる場合の対処法

絶縁状態にある兄弟姉妹の連絡先がわかる場合でも、直接連絡を取りたくないと感じる方は多いでしょう。そのような場合には、以下の3つの対処法を検討することができます。

1. 直接対面せずにメールや電話で話し合いをする

まず、直接対面せずにメールや電話、手紙などで連絡を取る方法があります。遺産分割協議は必ずしも対面で行う必要はなく、これらの手段で協議を進めることが可能です。特にメールや手紙は、対面によるストレスを軽減しながら話し合いを進める手段として有効です。

ただし、文字だけではお互いの意思が十分に伝わらない可能性があるため、慎重に文面を考え、何度もやり取りを重ねることが重要です。誤解を避けるために、お互いの意思をしっかりと確認し合いましょう。

2. 他の相続人を間にはさんで話し合いをする

次に、他の相続人に仲介を依頼する方法があります。絶縁していない兄弟姉妹がいる場合、その兄弟姉妹に間に立ってもらうことで、絶縁中の兄弟姉妹との直接のやり取りを避けることができます。これにより、感情的な負担を軽減し、スムーズに遺産分割協議を進めることが可能です。

ただし、この方法では、仲介者が双方の意図を正確に伝えることが求められるため、誤解が生じないよう注意が必要です。また、絶縁していない兄弟姉妹がいない場合にはこの方法は利用できません。

3. 弁護士に間に入ってもらい話し合いをする

最後に、弁護士に依頼する方法があります。弁護士は遺産相続手続きを代理で行うことができ、遺産分割協議の場でも他の相続人とのやり取りをすべて引き受けてくれます。

これにより、あなたが直接やり取りをする必要がなくなり、ストレスを大幅に軽減することができます。弁護士に依頼することで、法的なトラブルを避けるためのアドバイスも受けることができるため、安心して手続きを進めることができます。

絶縁状態の兄弟姉妹と音信不通で連絡先がわからない場合の対処法

絶縁中の兄弟姉妹も相続人であるため、相続が発生した際には協力して遺産分割協議や相続手続きを進める必要があります。そのため、連絡先や行方がわからない場合は、まず特定することから始めましょう。

兄弟姉妹の所在を調査するには、戸籍の附票や住民票を取得することが有効です。戸籍の附票や住民票を取得しても行方がわからない場合には、不在者財産管理人の選任が必要となります。選任後は、不在者財産管理人と他の相続人が協力して遺産分割協議を行います。

また、兄弟姉妹が生死不明で7年が経過している場合は、失踪宣告の申立てが可能です。失踪宣告が認められると、その兄弟姉妹は死亡したものと見なされ、残りの相続人で相続手続きを進めることができます。以下で、詳しく解説していきます。

1.まずは所在を特定する

絶縁状態の兄弟姉妹と連絡が取れない場合、まずはその所在を特定することが重要です。連絡先を確認するために有効な方法の一つが、戸籍の附票を取り寄せることです。

戸籍の附票は、新しい戸籍が作成されたときやその戸籍に入ったときから現在までの住所の移り変わりが記載された書類です。戸籍には住所が記載されていないため、住所を確認するためには戸籍の附票が必要です。この附票は、兄弟姉妹の本籍地の市区町村役場で取得することができます。

ただし、戸籍の附票は誰でも自由に取れるわけではなく、プライバシー保護のため、他人が自由に取得することはできません。兄弟姉妹であっても、遺産相続の手続きのために附票を取れるとは限りません。

このような場合、弁護士に依頼することが一つの解決策です。弁護士は、職務上必要がある場合に他人の戸籍や住民票を取得できる職務上請求という権利があります。遺産相続手続きを弁護士に依頼すれば、その一環として戸籍の附票を取得してもらえる可能性があります。

ただし、戸籍の附票を取得しても以下のような場合には、現在の住所を特定できないことがあります。例えば、引っ越しの際に住民票の転出届を出さなかった場合や引っ越し先で転入届を出さなかった場合などです。

このような場合、戸籍の附票に最新の住所が記載されていないため、他の方法を検討する必要があります。

2.行方がわからない場合は不在者財産管理人の選任が必要

以上の方法でも所在がわからない場合は、「不在者財産管理人」を選任することが一般的です。不在者財産管理人とは、所在不明な人がいる場合に、その人の財産を管理するために家庭裁判所が選任する人のことです。

所在不明な相続人がいるために遺産分割協議ができない場合、他の相続人が家庭裁判所へ所在不明者の不在者財産管理人選任の申立てをします。裁判所が選任した不在者財産管理人が、所在不明の相続人の代わりに遺産分割協議に参加します。これにより、他の相続人と協力して遺産分割協議を行い、遺産相続手続きを進めることができます。

3.生死不明の場合は失踪宣告を申し立てる│死亡したものとみなして遺産相続を

相続人である兄弟が生死不明の場合、失踪宣告を申立てることで遺産相続人から除外する方法があります。失踪宣告とは、生死が不明な人物を法的に亡くなったものとして扱う手続きです。これにより、長期間放置されていた財産の整理が可能になります。

失踪宣告を行うと、行方不明の兄弟は死亡したものと見なされます。行方不明の期間が7年(危難失踪の場合は危難が去った時)経過すると、失踪宣告が認められます。これにより、兄弟が生きている場合でも、遺産相続に影響を与えることはありません。

もし絶縁した兄弟に子や孫がいる場合は、その子や孫が代襲相続します。代襲相続とは、相続人が死亡した場合に、その相続人の子や孫が代わりに相続することを指します。

絶縁した兄弟姉妹と遺産相続で関わりたくなければ相続放棄を

絶縁した兄弟姉妹と遺産相続で関わりたくない場合、一つの対処法として「相続放棄」があります。相続放棄とは、相続人としての立場を放棄し、相続の権利を完全に放棄することを指します。相続放棄を行うと、最初から相続人ではなかったものとみなされ、その後の遺産相続手続きに関与する必要がなくなります。

相続放棄をすると、相続人としての権利を失うため、遺産のプラスの財産を受け継ぐことができなくなります。つまり、たとえ多くの財産がある場合でも、それを受け取る権利を失うことになります。このため、相続放棄のデメリットとして、プラスの財産を放棄する点を考慮する必要があります。

しかし、相続放棄のメリットは、絶縁した兄弟姉妹と関わることなく遺産相続手続きから解放されることです。このメリットとデメリットをよく比較し、相続放棄をするかどうかを決めることが重要です。

相続放棄は、自己のために相続があったことを知ったときから3ヶ月以内に手続きを行う必要があります。ここで言う「自己のために相続があったことを知ったとき」とは、被相続人が亡くなったことを知ったとき、または自分が相続人となることを知ったときを指します。この3ヶ月以内という厳しい時間制限内に家庭裁判所で手続きを完了させなければなりません。

家庭裁判所で相続放棄の手続きを行うには、必要な書類を準備する必要があり、これには一定の手間がかかります。もしご自身だけで手続きを進めるのが難しい場合や、自分のケースで相続放棄をするべきかどうか迷う場合は、遺産相続に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、相続放棄が最適な選択かどうかをアドバイスしてくれますし、必要な手続きを代行してくれるため、安心して進めることができます。

絶縁している兄弟姉妹に遺産相続させない方法

①親に相続人廃除の申立てをしてもらう│遺留分をもつ推定相続人のみ廃除できる

絶縁状態にある兄弟姉妹に相続させたくない場合、「相続人廃除の申立て」を行う方法があります。相続人廃除の制度は、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して重大な悪行を行った場合に適用されます。具体的には以下のような場合に申請が認められます。

  1. 被相続人に対する虐待
    推定相続人が被相続人に対して肉体的または精神的な虐待を行った場合。
  2. 被相続人に対する重大な侮辱
    推定相続人が被相続人に対して社会的信用を失わせるような重大な侮辱を与えた場合。
  3. 著しい非行
    推定相続人が社会的規範を著しく逸脱するような非行を行った場合。

これらの事由があれば、相続人を廃除することが可能です。ただし、「絶縁しているため」という理由だけでは認められません。

相続人廃除の手続き

被相続人が生前に相続人を廃除するためには、家庭裁判所に対して申立てを行う必要があります。具体的な手続き方法は以下2つです。

  1. 生前に廃除の申立てを行う
    被相続人が生前に相続人廃除の事由を家庭裁判所に申請します。申請が認められれば、相続人は廃除されます。
  2. 遺言書に廃除の旨を記載する
    被相続人が生前に廃除の申立てを行っていない場合でも、遺言書にその旨を記載しておくことで、遺言執行者を通じて相続人廃除の申立てを行うことができます。遺言書には具体的な理由と廃除を求める意思を明確に記載しておくことが重要です。

相続人廃除の制度は、遺留分を有する推定相続人に対して適用されます。ただし、被相続人の兄弟姉妹は遺留分を持たないため、兄弟姉妹を廃除することはできません。したがって、兄弟姉妹に対しては遺言書などで相続させない旨を明記することが必要です。

②相続欠格に該当すればそもそも相続権はない

絶縁している兄弟姉妹に遺産を相続させたくない場合、「相続欠格」に該当するかどうかを確認する方法があります。相続欠格とは、特定の事由に該当する場合に相続権を自動的に失う制度です。被相続人の意思は関係なく、法律上の事由に該当することで相続権が剥奪されます。これにより、永続的に相続権が認められなくなります。

相続欠格に該当する事由は以下の通りです。

  • 被相続人や他の相続人を殺害した、または殺害しようとして刑に処せられた場合
  • 被相続人が殺害されたのを知りながら告発しなかった場合
  • 被相続人を騙したり脅迫したりして、遺言書を書き換えさせたり撤回させたりした場合
  • 被相続人が遺言書を書き換え・撤回しようとしているのを妨害した場合
  • 遺言書を偽造したり勝手に書き換えたりした場合

これらの事由に該当する場合、特別な手続きを踏まなくても相続権を失うことになります。たとえ遺言書に相続させる旨が記載されていても、相続は認められません。

ただし、相続欠格者が相続権を失った場合でも、その欠格者が被相続人の死亡前に死亡していた場合、代襲相続が発生します。代襲相続とは、欠格者の子や孫が代わりに相続する制度です。欠格者本人は相続できませんが、その子孫は相続権を持つことになります。

このため、相続欠格者に子や孫がいる場合、その子孫が代襲相続によって相続する可能性があります。これを防ぐためには、遺言書を作成する際に代襲相続についても考慮し、専門家の助言を受けながら遺産分割の方法を慎重に検討することが重要です。

③親に遺言書を作成してもらう│ただし、遺留分に注意

絶縁状態にある兄弟姉妹に遺産を相続させたくない場合、親に遺言書を作成してもらう方法があります。遺言書が有効に作成されていれば、その内容は基本的に遺産分割協議に優先されるため、絶縁した兄弟姉妹と遺産を分けるためのやり取りを避けることができます。

遺言書は被相続人(親)が自分の意思で作成するものであり、その内容が法律に基づいて有効である限り、その指示に従って遺産が分配されます。親が絶縁している兄弟姉妹の状況を考慮し、適切な内容の遺言書を作成してくれる場合、この方法が最も効果的です。

ただし、親に無理やり遺言書を作成させることは避けるべきです。無理やり作成させた遺言書は、その有効性が疑われるだけでなく、後々のトラブルの原因となります。遺言書はあくまで親自身の意思で作成されるべきです。

また、絶縁した兄弟姉妹に全く遺産を渡さない内容の遺言書を作成すると、「遺留分」という法定相続人に最低限保証された取り分を侵害することになります。遺留分を侵害すると、絶縁した兄弟姉妹から遺留分侵害額請求をされる可能性があり、これが新たなトラブルを引き起こすことがあります。遺言書を作成する際には、遺留分を考慮しつつ、適切な内容にすることが重要です。遺留分を侵害しないようにすることで、後々の法的トラブルを防ぐことができます。

遺言書の内容を決める際には、遺産相続に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、法的に有効な遺言書の作成をサポートし、遺留分を侵害しない内容にするためのアドバイスを提供してくれます。

生前対策で親に遺言書を作成してもらう場合は公正証書遺言を!

公正証書遺言は、遺言者が証人2人の立ち会いのもとで遺言内容を公証人に口授し、公証人がそれを文書にまとめる形式の遺言書です。この形式の遺言書にはいくつかの重要な利点があり、トラブル回避に大いに役立ちます。

まず、公正証書遺言の原本は公証役場で保管され、全国の公証役場から検索できるシステムが利用可能です。このため、遺言書が紛失、改ざん、または隠匿されるリスクがほぼありません。遺言者自身が遺言書を筆記する必要がないため、病気やケガ、加齢などで自書が難しい人でも作成できます。

さらに、遺言書の作成には法律の知識を持つ公証人が関与するため、方式の不備や法的に無効となるリスクが非常に低くなります。ただし、公証人は遺産配分や相続税についての助言は行わないため、これらの点については別途弁護士または税理士のアドバイスを受けることをおすすめします。

公正証書遺言の作成には費用がかかりますが、安全で確実な遺言書作成方法としての価値は非常に高いです。また、公正証書遺言は家庭裁判所の検認が不要なため、遺言執行がスムーズに行われます。

親が絶縁している兄弟姉妹の状況を考慮して、公正証書遺言を作成してくれることで、後々の相続トラブルを未然に防ぐことができます。この方法により、遺産分割協議を行う必要がなくなり、絶縁した兄弟姉妹とやり取りをしなくて済むため、大きな精神的負担を回避できます。

絶縁した兄弟姉妹との遺産相続に関するQ&A

Q: 絶縁中の兄弟姉妹が相続人である場合、行方がわからない場合はどうすればよいですか?

A: 絶縁中の兄弟姉妹も相続人になるため、相続が発生したときには協力して遺産分割協議や相続手続きを進めなければなりません。まず、連絡先や行方がわからない場合は特定することから始めましょう。兄弟姉妹の所在調査は、戸籍の附票や住民票を取得して行います。

これらを取得しても行方がわからない場合は、不在者財産管理人の選任が必要です。不在者財産管理人は、行方不明の相続人のかわりに相続財産を管理する人物です。選任された不在者財産管理人と残りの相続人で遺産分割方法について話し合いを行います。

さらに、兄弟姉妹が生死不明で7年経過している場合は失踪宣告の申立ても可能です。失踪宣告が認められれば、絶縁した兄弟姉妹が死亡したものとして、残りの相続人で相続手続きを行うことができます。

Q: 絶縁した兄弟姉妹がいる場合、遺産分割で注意すべき点は何ですか?

A: 絶縁した兄弟姉妹がいる場合の遺産分割では、特に注意が必要です。以下の点に注意して進めると良いでしょう。

  1. 冷静に話し合いをする
    絶縁した兄弟姉妹との遺産相続手続きは感情的になりがちです。しかし、冷静に対応しないと手続きが進まないため、できるだけ感情を抑えて事務的に連絡を取るように心がけましょう。どうしても冷静でいられない場合は、弁護士に代理人として間に入ってもらうことを検討すると良いです。
  2. 相続手続きが完了するまで遺産に手をつけない
    遺産相続手続きが完了するまでは、遺産は相続人全員の共有状態です。相続人全員の同意がない限り、遺産を勝手に処分してはいけません。絶縁した兄弟姉妹との連絡を避けるために遺産を処分すると、後でトラブルになる可能性が高いので、必ず手続きを完了させてから遺産を分割するようにしましょう。

Q: 絶縁した兄弟姉妹に前もって相続放棄させることはできますか?

A: 相続放棄は相続開始後にしかできません。兄弟姉妹のうち特定の人に財産を継がせたくないと考える場合、前もって相続放棄させたいと思うこともあるでしょう。しかし、相続放棄は実際に相続が開始してからでないと法的に有効ではありません。例えば「相続を放棄します」という念書を取っておいても、法的には無効です。

相続が開始された後に、放棄しようとする人が家庭裁判所で「相続の放棄」の申述を行い、相続放棄が受理されたことを他の兄弟姉妹に通知する必要があります。相続放棄の申述は、相続開始から3ヶ月以内に行う必要がありますので、注意が必要です。

まとめ

絶縁した兄弟姉妹の間での遺産分割は、感情的な対立やコミュニケーションの困難さから、多くのトラブルを引き起こすことがよくあります。しかし、弁護士に依頼することで、これらの問題を効果的に対処し、スムーズな遺産分割を実現することができます。

まず、弁護士を代理人として依頼すれば、相続人自身が直接他の相続人とやり取りする必要がなくなり、絶縁した相手との接触を避けることができます。これにより、感情的な対立を避け、冷静かつ客観的に遺産分割協議を進めることが可能です。また、弁護士は法的知識を駆使して有利な事情をしっかりと主張し、相続人の利益を最大限に守るため、トラブルを最小限に抑えることができます。

さらに、遺産分割調停や審判などの裁判手続きに進む場合でも、弁護士に対応を任せることで安心して手続きを進めることができます。弁護士は専門的な知識と経験を持っているため、複雑な法的手続きをスムーズに進めることができます。

絶縁している不仲な相続人が共同相続人にいる場合、遺産分割の話し合い自体が難しくなることが多く、相続トラブルが発生する可能性が高いです。そのため、早めに弁護士に相談することを強くおすすめします。弁護士のサポートを受けることで、法的トラブルを回避し、遺産分割を円滑に進めることができるでしょう。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。