「生前に全額預金をおろしておくことです」は本当?死亡前の預金引き出しに注意

相続手続き

更新日 2024.07.05

投稿日 2024.07.05

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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「生前に全額預金をおろしておくことです」という言葉を聞いたことがありますか?

例えば、生前に預金を全額引き出しておくことが相続税の節税につながると考える人もいれば、死亡後に口座が凍結され、生活費が手に入らなくなることを懸念する人もいます。しかし、この行動が本当に賢明な選択なのか、不安に思っている方も多いのではないでしょうか。実は、「生前に全額預金をおろしておくことです」という噂を鵜吞みにして実行すると、家族間のトラブルの原因となる可能性もあります。

この記事では、「生前に全額預金をおろしておくことです」について検証し、適切な対応方法について解説します。

目次

「生前に全額預金をおろしておくことです」とは本当か?

「生前に全額預金をおろしておくことです」という言葉を聞いたことがありますか?

この噂は、名義人が亡くなると口座が凍結され、生活費が引き出せなくなるという懸念から広まっています。また、相続税の節税が可能だとも言われています。しかし、この噂を鵜呑みにして銀行の預金を本人の同意なしに全額おろしてしまうことは、思わぬトラブルを招く可能性があります。

名義人が亡くなると口座は即時凍結されて引き出せなくなるのか

銀行口座の名義人が亡くなると、口座は即時凍結され、遺族は生活費を引き出すことができなくなるのでしょうか。しかし、この噂には誤解があります。実際には、名義人の死亡が銀行に届けられるまでは口座の凍結は行われません。つまり、銀行に死亡の届出をするまでの間、口座からの引き出しは可能です。

しかし、相続人や関係者が死亡を銀行に報告すると、その時点で口座は凍結されます。特に、相続人が明確でない場合や相続人間で争いがある場合、口座の凍結解除には時間がかかることがあります。このような状況を避けるため、生活費に関しては事前に対策を講じることが重要です。

たとえば、名義人が生前に遺族に対して生活費分の贈与を行う、生命保険に加入しておくなどの方法があります。これにより、名義人が亡くなった後も遺族が生活に困らないようにすることができます。

相続税の節税になるのか

多くの人は「通帳の残高が多いと相続税が高くなる」と考え、生前に預金を引き出すことで節税を図ろうとします。たとえば、亡くなる前に本人が窓口に行けないため、代わりに妻が連日ATMに通い預金を引き出すケースもあります。しかし、一度にATMで引き出せる金額には50万円などの制限があるため、このような行動はかなりの労力を要します。

しかし、残念ながらこのような努力は相続税の節税にはつながりません。相続税は、相続が発生した時点での財産の総額に基づいて計算されます。これには、通帳の残高だけでなく、口座から引き出した後の現金も含まれます。

もちろん、引き出したお金が病院の支払いや生活費などで使用された場合、その分は相続財産から差し引かれますが、引き出した時点での残額は依然として相続税の対象となります。

したがって、単純に預金を引き出すだけでは相続税の節税にはならないということを理解することが重要です。

生前にできる相続税対策は預金の引き出しではなく生前贈与

生前贈与は、相続財産を減らし、相続税の節税を目指す一つの方法です。しかし、名義人の許可なく預金を全額引き出してしまう行為は、相続税の節税にはなりません。むしろ、このような行為は第三者による窃盗と同じ扱いとなり、他の相続人から不当利得返還請求権や不法行為による損害賠償請求権を行使される可能性があります。

その結果、相続税の正確な計算ができなくなり、遺産分割が進まなくなるリスクもあります。

一方で、名義人の許可を得て預金を全額引き出した場合は、生前贈与として扱われます。特に、相続時精算課税制度を利用すれば、2,500万円までの贈与税が非課税となり、生前贈与を有効に活用することができます(相続税法21条の9)。この制度では、相続税申告時に2,500万円を相続財産と合算して申告することが可能です。

また、年間110万円までの生前贈与は基礎控除の対象となるため、この範囲内の贈与は相続財産に加算する必要はありません。

相続税の節税を検討する際は、預金を全額引き出すことだけでなく、生前贈与の方法や制度を理解し、名義人と相談して最適な対策を選択することが重要です。生前贈与を上手に活用することで、相続税の負担を軽減し、スムーズな遺産分割を実現することが可能になります。

ただし、生前3年以内の財産贈与は相続税の対象になる

被相続人が生前に贈与することで相続財産を減らし、相続人の税負担を軽減する生前贈与は、相続税対策の一つとしてよく利用されます。しかし、相続税の計算においては、被相続人が亡くなる3年以内に行われた贈与は、相続財産に加算されることに注意が必要です(これを「相続開始前3年以内の贈与加算」といいます)。

例えば、家族1人に対して1年間に110万円を超えない範囲で贈与を行ったとしても、亡くなる3年以内に行った贈与であれば、その金額は相続財産に加えられます。このため、生前贈与を相続税対策として考える場合は、3年ルールを意識する必要があります。

ただし、このルールは相続人に対する贈与にのみ適用されます。つまり、相続人とならない人(例えば友人や知人、配偶者の親族など)への贈与は、相続開始前3年以内であっても贈与加算の対象外となります。

このため、相続税対策としては、早めに遺産を受け継ぐ予定の人への贈与や、相続人とならない人への贈与を検討することが有効です。早期の計画と適切な対策により、相続税の負担を軽減することが可能になります。

生前に預金をおろすと相続トラブルの火種となる

生前に許可なく預金を全額引き出す行為は、相続人間でのトラブルの原因となり得ます。このような行為は、単に不当利得返還請求権や不法行為による損害賠償請求権に基づく法的な争いに留まらず、家族間の信頼関係の悪化や被相続人への疑念の発生にもつながる可能性があります。

事前に想定された相続財産と実際の財産額が一致しない場合、相続人は口座の利用明細を調査し、原因を突き止めようとします。預金が全額引き出された時期や方法が明確になれば、他の相続人が不正に財産を得た事実を隠し通すことは困難になります。

一般的に、被相続人は自身の死後、相続人同士が争う状況を望みません。そのため、生前に許可なく預金を全額引き出すことは、避けるべき行為と言えるでしょう。

また、家族や同居する親族が生前に預金を勝手に引き出しても、刑事罪に問われることはありませんが(刑法244条)、民事上の責任は問われる可能性があります。生前の預金引き出しについての合意がない場合や、その行為が透明性を欠いている場合、社会的な評判を損なうリスクも否定できません。このような事態を避けるためにも、遺産相続においては公正かつ透明性のある対応が求められます。

生前に預金をおろしても問題にならないケース

被相続人が生前に引き出して相続人に生前贈与した場合は節税効果に

被相続人が自らの預金を引き出し、家族に対して生前贈与を行う場合、その贈与に対する贈与税の課税が重要なポイントとなります。贈与された家族は、贈与額が1人当たり年間110万円以内であれば、原則として贈与税が非課税となります。

このように、被相続人が生前に毎年コツコツと暦年贈与を行うことにより、将来の相続税の負担を減らす節税効果が期待できます。

特別受益の持ち戻しに注意

ただし、相続が発生した際には、生前贈与が特別受益として相続財産に持ち戻される可能性があります。特別受益とは、相続人が被相続人から生計の資本や婚姻・養子縁組に関連する費用として受けた贈与財産のことを指し、民法903条1項に基づいて相続財産に加算されます。これは、その相続人が生前に相続分に相当する財産を受け取っていたとみなされるためです。

しかし、被相続人が生前に明確に意思表示をして、生前贈与分を相続分から除外するように指示していた場合は、その贈与は持ち戻し計算の対象外となります(民法903条3項)。したがって、被相続人が生前に行った贈与が、相続人にとって有利な条件であるかどうかは、具体的な状況や意思表示によって異なります。

結論として、被相続人が生前に引き出して相続人に生前贈与した場合、問題がないかどうかは、贈与税の課税範囲や特別受益の有無、遺産分割における意思表示など、複数の要素を検討する必要があります。適切な節税対策と相続計画を立てるためには、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

被相続人に許可を得て引き出して本人のために使用した場合は問題ない

被相続人のために、本人が保有している預金を引き出して使用する場合、基本的には問題ありません。ただし、使用目的とその後の処理によって異なります。

たとえば、被相続人が病気やけがで入院するなどして、その入院費や治療費、介護施設の入所費用やサービス費用の支払いのために被相続人の預金を使用した場合は、基本的に相続への影響はありません。これは、引き出されたお金が被相続人のために使われていることが明確であるためです。

ただし、引き出したお金が余った場合には、その余剰金を再び被相続人の口座に入金することが望ましいです。これは、引き出した目的や用途を他の家族に明確に伝え、預かっておかないと、「被相続人の財産を勝手に自分のものにした」と誤解されるリスクがあるためです。

支払った葬儀費用や医療費などの領収書等は大切に保管する

特に、被相続人が死亡して口座が凍結されることを想定し、引き出したお金を手元に置いて葬儀費用や医療費などに利用したい場合には、より慎重な配慮が必要です。生前に被相続人の許可を得て預金を引き出す場合、その情報を他の相続人に共有することが大切です。

これにより、将来的に発生するかもしれない不信感や紛争を防ぐことができます。たとえば、一部の相続人だけが預金引き出しの事実を知っていると、他の相続人が不公平だと感じる可能性があります。

そのため、預金引き出しの事実は透明性を持って全ての相続人に知らせることが望ましいです。これにより、後の相続手続きや財産分割において信頼関係を保つことができます。

また、被相続人の意思に従い適正な金額を引き出した事実を証明できるように、請求書や領収証を大切に保管し、通帳に預金残高の記録を残すなど、証拠をあげて説明できるように準備しておくことが重要です。これにより、相続時の不必要なトラブルや誤解を避けることができます。

生前に預金をおろしたら問題になるケース

被相続人の許可なく引き出し自分のために使用した場合

財産の管理を任されていた場合でも、その財産はあくまで被相続人のものであり、管理者は被相続人のために財産を管理することが認められています。そのため、管理者が被相続人の許可なく預金を引き出し、自分のために使用することは許されません。

このような行為は、正当な理由なく被相続人の財産から利益を得て、被相続人に損失を与えることになるため、法的な問題を引き起こす可能性があります。

具体的には、被相続人は、財産の管理をしていた者に対して、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求を行うことができます。これらの請求権は、被相続人の権利義務の一部として相続財産に含まれ、相続開始とともに相続人間で分割されます。

このため、財産の管理者は、被相続人の許可なく預金を引き出し、自分のために使用した場合、相続人からの法的な請求を受けることになる可能性が高く、さらには相続財産の分配にも影響を及ぼす可能性があります。

生前に葬儀代のために預金をおろした場合は相続税申告に注意

亡くなる直前におろした預金も相続税申告の対象

相続税の計算は、被相続人が亡くなった時点で所有していた財産に基づきます。このため、被相続人が生前に預金口座から引き出した現金も、相続時に残っていれば相続財産として課税対象になります。例えば、被相続人が容態が悪化したため、葬儀費用に備えて大量の現金を引き出した場合、この現金は相続財産に含まれますが、実際に葬儀費用として使われた分は相続税の計算上、財産から控除できます。

例えば、ある方(乙さん)が亡くなる直前に預金500万円と葬儀準備金として100万円の現金(手許現金)を持っていたとします。この場合、葬儀準備金として引き出した現金は、葬儀に使用されるため、死亡時点で現金として残っていたと考えられます。

相続税の計算では、まず預金500万円と手許現金100万円の合計600万円の財産を計上します。その後、実際に葬儀にかかった費用100万円をマイナスして、最終的な相続財産額を算出します。この場合、相続税の対象となる財産額は500万円(600万円 – 100万円)となります。

ただし、引き出した現金を意図的に相続財産から除外しようとすると、税務署から財産隠しを指摘され、重いペナルティが科される可能性があるため注意が必要です。

もし葬儀費用100万円は計上するものの、手許現金100万円を計上しなかった場合、相続税の対象額は400万円(500万円 – 100万円)となり、実際の財産額よりも少なく申告してしまうことになります。これは、葬儀費用を二重で控除したことになります。

また、「タンス預金」についても注意が必要です。被相続人のタンス預金は相続財産に含まれますが、相続人がその存在を知らないことがあります。タンス預金が税務調査で発覚した場合、意図的な財産隠しとみなされることもあります。重いペナルティを避けるためにも、タンス預金の存在を知った場合は相続税の申告に含めることが重要です。

銀行の仮払い制度を利用すれば死亡後も葬儀代を引き出せる

現在の法律では、被相続人が亡くなった後に預金口座が凍結されても、一定額までは引き出すことができます。そのため、被相続人の容態が悪化したからといって、慌てて大量の現金を引き出す必要はありません。相続税の申告において正確な財産額を計上し、適切な対応をすることが重要です。

入院費の精算や葬式費用の支払いなど、急な資金が必要になった場合、相続預金の仮払い制度を利用することができます。

ただし、単独で払い戻しを行う際には、一定の上限額が設けられています。

預金引き出し上限金額=死亡時の預貯金残高×1/3×仮払いを申請する相続人の法定相続分
※ただし、1金融機関あたりの預金引き出し上限金額は150万円

この制度を利用することで、相続手続きが完了する前でも必要な資金を確保することが可能となり、急な入用に対応することができます。ただし、利用にあたっては、金融機関による条件や手続きの詳細を確認することが重要です。

生前に引き出した預金がトラブルの原因とならないための方法

他の相続人への情報共有と証拠の準備

相続が発生した際にトラブルを避けるためには、被相続人が生存中から推定相続人に対して金融情報の開示を行うことが重要です。被相続人の預金から引き出された金額やその目的が客観的に明らかであれば、相続開始時に不正な引き出しがあったという疑念を払拭することができます。そのため、複数の推定相続人がいる場合は、生前から情報の共有を心掛けましょう。

また、引き出した資金の使用目的や金額に関する証拠は、請求された際に速やかに提出できるように、請求書や領収証などを手元に準備しておくことが望ましいです。このような準備をしておくことで、相続開始後に生じる可能性のある疑念やトラブルに迅速に対応することができます。

さらに、引き出した預金に関する領収書やメモなどをまとめておくことで、引き出した金額の正確性や使用目的を相続人に伝えることができます。全ての領収書を準備する必要はありませんが、被相続人の生活状況や購入した物品に関する概要をまとめておくと良いでしょう。これにより、相続人間での信頼関係を保ち、円滑な相続手続きにつながる可能性が高まります。

遺産分割の際に生前贈与を考慮する

相続では、生前の贈与によって家族間で不公平が生じることがあります。たとえば、同居していた家族だけが特別に資金援助を受けていた場合、相続時にその不公平さから争いが起こることが少なくありません。このような状況では、「特別受益」という考え方が重要になります。

特別受益とは、被相続人から開業資金や住宅の建築資金など、多額の贈与を受けた場合に考慮される利益のことです。遺産分割の際には、特別受益を受けた人の相続割合を減らして、全体のバランスを取ることができます。特別受益が考慮される期間(持ち戻し期間)は、相続開始前10年以内と定められています。

相続が始まった際には、過去3年以内の生前贈与や、過去10年以内に特別受益を受けたことがある相続人は、その事実を他の相続人に正直に伝え、遺産分割で得る財産を調整する必要があります。事実を隠したり嘘をついたりすると、後になって事実が明らかになった際に相続人同士のトラブルに発展する恐れがあります。

ただし、特別受益の範囲やその金額を確定するのは難しい場合も多く、話し合いが進まないこともあります。相続人同士で合意に至らない場合は、早めに弁護士や税理士などの専門家に相談することが望ましいです。専門家の助言を得ることで、スムーズな遺産分割につながる可能性が高まります。

「生前に全額預金をおろしておくことです」は本当?に関するQ&A

Q: 被相続人の生前に本人に代わって預金を引き出した場合、他の家族や税務署へ正当な理由を証明するためにどのような準備が必要ですか?

A:被相続人の生前に本人に代わって預金を引き出す場合、正当な理由があれば問題はありません。 被相続人の生前に本人に代わって預金を引き出した場合、正当な理由があることを証明するためには、請求書や領収証を保管し、通帳に預金残高の記録を残すことが重要です。

これにより、他の家族や税務署に対して、引き出しの目的が正当であったことを明確に説明することができます。

Q: 被相続人が亡くなる直前に預金口座から引き出した現金は、どのように扱われますか?

A: 被相続人が亡くなる直前に預金口座から引き出した現金は、相続時に残っていれば相続財産として扱われます。ただし、その現金が葬儀代などの被相続人のための支出に充てられた場合、その部分は相続税の計算上、相続財産から控除されます。

したがって、葬儀代に使われた分は実質的に相続財産に含まれず、余った部分のみが相続税の課税対象となります。

ただし、被相続人が亡くなる前に預金口座から引き出した現金を意図的に相続財産に含めなかった場合、税務署から財産隠しを指摘される可能性があるため、注意が必要です。

Q: 被相続人が亡くなった後、預貯金を引き出すことは可能ですか?

A: 被相続人が亡くなった後、金融機関への死亡報告が行われると、通常、被相続人の口座は相続手続きが完了するまで凍結されます。しかし、葬儀費用などを賄うために必要な場合、2019年から開始された「仮払い制度」を利用することで、凍結中の口座からも上限150万円まで引き出すことが可能です。この制度は、遺族が葬儀費用などの支払いに困らないようにするために設けられています。

亡くなった後に預貯金を引き出す方法については、下記記事を参照してください。

亡くなった人の預金をおろすには?死亡後凍結された銀行口座から引き出す方法

Q: 被相続人が亡くなった直後に預金を引き出す際、どのような注意が必要ですか?

A: 被相続人が亡くなった直後は、家族間で動揺や混乱が起こりやすいため、うっかり死亡報告をせずに口座凍結を忘れることがあります。口座凍結は、他の相続人が預金を勝手に引き出さないための重要な措置です。葬儀代や医療費などの支払いのために急いで被相続人の預金を引き出すことがあるかもしれませんが、この行為が相続財産を減らす目的だと疑われたり、他の相続人から財産を独占したと疑われるリスクがあります。

ただし、被相続人が本来支払うべき医療費や葬儀費用は相続財産から控除可能です。そのため、支払った医療費や葬儀費用の領収書は大切に保管しておきましょう。領収書があれば、支出の正当性を証明できるため、疑いを晴らすことができます。

まとめ

「生前に全額預金をおろしておくことです」という考え方は、一見すると相続税対策や葬儀費用の準備として有効に思えるかもしれません。しかし、この行為は多くのトラブルを引き起こす可能性があります。生前に預金を引き出す際は、その用途が本人のためであれ、相続人のためであれ、関係するすべての相続人にその旨を伝えることが重要です。特に、相続人が無許可で預金を引き出した場合、それは不法行為とみなされる可能性が高いです。

相続税対策として預金を引き出すことを検討している場合、より効果的で安全な方法は生前贈与の活用です。これにより、相続税負担を軽減しつつ、法的なトラブルを避けることができます。

相続に関する様々な疑問やお困りごとがある場合は、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。弁護士法人あおい法律事務所では、相続税対策や生前贈与、預金の引き出しに関する相談を承っておりますので、お気軽にご連絡ください。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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