相続登記を自分でする│法務局での不動産の名義変更を自分でする方法やメリットを解説

親や配偶者が亡くなり、故人名義の土地や建物を相続したときに必要となるのが「相続登記」の手続きです。不動産の相続登記とは、被相続人が所有していた不動産の名義を、相続や遺言、遺産分割の合意内容等に基づいて、相続人の名義に書き換える所有権移転登記の手続きを指します。
相続登記の手続きと聞くと、複雑で専門家に依頼する必要があるのでは、とご不安になる方も見受けます。ですが、その手順やポイントを事前に確認しておき、しっかりと注意点を把握しておけば、専門家でなくとも適切に対応することが可能です。
そこでこの記事では、相続登記の手続きを自分でする場合の進め方や、メリット・デメリット等について弁護士が詳しく解説させていただきます。相続登記を自分でする際の注意点についても分かりやすくご説明しておりますので、ぜひ最後までご一読いただければと思います。
これから相続登記の手続きを控えている方や、不動産を相続する可能性のある方にとって、本記事が少しでもご参考となりましたら幸いです。
目次
相続登記を自分で
それでは、相続登記を自分でするにあたって、その前提として重要なことを確認しておきましょう。
1.相続登記は自分でできますか?
そもそも不動産(土地・建物)の相続登記とは、亡くなった人が所有していた不動産の名義を相続人に移転する所有権移転登記の手続きのことを指します。不動産の所有者情報は法務局に保管されている登記簿に記録されており、所有者が亡くなった場合、相続人が自ら法務局に申請して名義変更を行う必要があります。2024年4月1日からは相続登記が義務化されたため、相続の事実を知った日から3年以内に登記を完了させなければなりません。
不動産を安全に所有・管理し権利を確実に行使するために、相続登記はとても重要な手続きです。そのため、専門家でなければ適切な相続登記は難しいのではないか、と不安に思われる方も少なくありません。ですが、不動産の相続登記はやり方とポイントをしっかりとおさえておけば、専門家でなくても十分に可能です。
法制度上も、不動産の相続登記をする申請者は専門家でなければならない、とは規定されていません。
不動産の所有権等、権利に関する登記については、通常は登記権利者(新たに所有者となる人)と登記義務者(所有者)が共同で申請することとされています(不動産登記法第60条)。ですが、遺産相続における登記義務者は既に亡くなっている被相続人です。故人が相続人と共同して相続登記をすることはできないことに加え、戸籍等により相続関係が客観的に証明できることから、相続を原因とする不動産の相続登記は登記権利者(相続人)が単独で行えると定められているのです(不動産登記法第63条2項)。
(共同申請)
不動産登記法第60条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。(判決による登記等)
不動産登記法第63条2項 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
このように、相続登記の手続きは相続人自身で行えるものです。ですが、遺産相続にもさまざまなケースや個々の事情もあるため、「自分で相続登記するのがおすすめな場合」と、「専門家に依頼することがおすすめな場合」があります。
2.相続登記を自分でできるケース
自分で相続登記するのがおすすめなケースとしては、遺産相続自体がシンプルである場合と、自分自身に余裕のある場合とが挙げられます。
2-1.相続関係が複雑でない場合
相続人が自分1人だけ・配偶者と子どもの2人だけ、といった相続人関係がシンプルなケースや、戸籍の変動が少ない場合などには、揃える書類が最小限で済み、相続人間で争いになる可能性も低いため、専門家の手を借りずともスムーズに相続登記の手続きを進めていけるでしょう。
2-2.時間や精神的に余裕のある場合
相続登記の手続きは法務局で行います。また、その手続きに必要な戸籍謄本等の書類は市区町村役場で入手しなければなりません。法務局や市区町村役場は、基本的に平日の午前8時30分から午後17時頃までが窓口の対応時間となっているため、開庁時間内に対応できるのであれば、代理人を立てる必要もないでしょう。
一方で、相続関係が複雑になる場合でも、対応できる時間と精神的な余裕のある場合は、自分で相続登記をすることで専門家への依頼料も節約することが可能です。法務局では登記手続きに関する無料相談も行っているため、相談すること・職員とやり取りをすることが面倒でなければ、自分で相続登記をすることがおすすめです。
2-3.遺言がある場合
被相続人が遺言書を作成していた場合は、その指定どおりに遺産分割を進めることになるため、不動産を相続する相続人も遺言の内容どおりにスムーズに相続登記を進めていけるかと思います。
ただし、自筆証書遺言書や秘密証書遺言書の場合は、家庭裁判所での検認の手続きをし、交付される検認済証明書を提出する必要があります。検認は裁判所の混雑具合にもよりますが、申し立てから1ヶ月程度要することが一般的ですので、時間に余裕を持って進めましょう。
2-4.既に法定相続分での登記がされている場合
2023年(令和5年)4月1日施行の不動産登記法改正により、法定相続分での登記が既になされている場合の遺産分割等の結果を反映させる手続き(更正登記)は、大幅に簡略化されました。そのため、既に法定相続分での相続登記がなされていた場合に、以下のような事情によって不動産の所有権を取得し更正登記が必要となった際には、専門家に依頼することなくスムーズに手続きを行えます。
- その後の遺産分割協議・遺産分割調停・審判によって不動産の所有権を取得した場合。
- 他の共同相続人が相続放棄をしたことにより不動産の所有権を取得した場合。
- 「相続させる」旨の遺言によって不動産の所有権を取得した場合。
- 相続人が受遺者である遺贈によって不動産の所有権を取得した場合。
なお、更正登記の手続きの際には、遺産分割協議書や遺産分割の審判書の謄本(確定証明書付き)、遺産分割の調停調書の謄本、相続放棄申述受理証明書、遺言書といった「登記原因」を証明する書類が必要です。法定相続分による相続登記のときに相続証明情報は提出したことになるため、更正登記であらためて提出する必要はありません。
3.自分で相続登記するのが向かないケース
一方で、相続人関係が複雑な場合や不動産等が多い場合等には、相続登記の手続きも複雑になることがあります。以下のようなケースでは、自分で相続登記の手続きをするよりも、専門家に依頼する方が推奨されるでしょう。
3-1.兄弟姉妹が相続人になる場合や家族関係が複雑な場合
相続人に子どもがおらず、兄弟姉妹のみが相続人である場合、相続人を確定させるために何通もの戸籍謄本を取得する必要が生じ、相続登記の提出書類を揃えるだけで多大な労力を要することがあります。あるいは、離婚や再婚、異父母兄弟、認知子、養子縁組といった複雑な家族構成のケースでも、誰が相続人になるのか、その法定相続割合はどれくらいなのか、といった前提を確認するだけでも煩雑になりがちです。
古い戸籍謄本等を読み間違えてしまったり、法律を誤解していたりと、誤った解釈により相続人を間違えたまま進めてしまうと、手続きの遅延や書類の再提出といった手間が生じるばかりか、遺産分割協議をやり直すことになってしまいかねません。そうなると、相続登記を完了できずに、不動産の権利関係が曖昧な状態が続いてしまいます。
3-2.相続人同士の仲が悪い場合
遺産分割協議によって不動産を相続する場合などには、相続人全員の署名・捺印による合意を示した遺産分割協議書が相続登記においても必要となります。そのため、相続人同士の仲が悪い場合や、不動産の分割について争いがある場合などには、相続登記をするまでに時間がかかってしまい、相続登記を進めるにあたってもトラブルが生じる可能性もあるでしょう。
こうした場合には、無理に相続人自身で相続登記を進めようとせずに、弁護士などの専門家に依頼することが推奨されます。
3-3.相続登記をせずに放置していた不動産がある場合
従来、不動産の相続登記は義務ではなかったため、数世代にわたって放置された古い名義のままの不動産も少なくありません。親が亡くなり不動産の名義を確認してみると、名義が数世代前のご先祖様のままだった、というケースも珍しくないのです。
ですが、相続登記が義務化された2024年4月1日以前に発生した相続であっても、未登記であれば義務化の対象となっています。原則として、「施行日」または「相続による所有権の取得を知った日」のいずれか遅い日から3年以内に申請する必要があります。これは改正法の施行前に相続が始まっていたケースにも適用されるため、既に相続開始を知っていた場合には、施行日から3年以内の2027年(令和9年)3月31日までに相続登記の申請をしなければなりません(民法等の一部を改正する法律 不動産登記法の一部改正関係 附則第5条第6項)。
特に、記録されている不動産の名義が明治や昭和の初期に更新されたものであった場合、戦前の旧民法の規定を確認しながら、その名義人から被相続人に至るまでの全ての相続人を特定し、全員から委任状や遺産分割協議書への捺印を受ける必要があります。作業自体にたいへんな手間がかかることに加え、専門的な知識が求められるため、自分で相続登記をするよりも専門家にご相談いただくことが推奨されます。
3-4.不動産のみが主要な遺産など特殊な相続の場合
相続において主要な遺産が不動産のみの場合、現金や預貯金で不動産の価値を分け合うことも難しいため、相続人間でトラブルになる可能性が高いです。相続登記に着手するまでの話し合いが長期化する恐れもあるため、弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。
3-5.対象の不動産が遠方にある場合
相続登記の申請は、その不動産を管轄している地域の法務局で行わなければなりません。そのため、自身の居住区に不動産がある場合は法務局に行くことも容易ですが、不動産が遠方になる場合は交通費や郵送料等がかかります。
一度で済めばそこまで費用は発生しないかもしれませんが、書類に不備があり訂正や再提出が必要になると、その分の費用がかかってしまいます。相続登記はオンラインでの申請も可能ですが、オンライン申請も難しく、書類の作成に自信がないような場合には、専門家に相続登記を依頼することを検討していただければと思います。
3-6.不動産の名義変更を急ぐ場合
相続した不動産を売却するためには、不動産の名義を相続人のものにしなければなりません。そのため、不動産を売却するために名義変更を急ぎたい、といったケースでは、正確かつ迅速に相続登記を進めるために、専門家に依頼することをおすすめいたします。
また、相続税の申告も、被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に行う必要があります。税制度上の兼ね合いからも、相続登記はなるべく迅速に行うことが大切です。
日々の生活に追われる中で相続登記を自分一人で進めるには、時間や労力が必要ですし、スムーズに対応できないこともあるかと思います。事前に弁護士などの専門家に相談し、自身で相続登記をできるか・専門家に依頼すべきかを検討していただくことをおすすめいたします。
4.相続登記を自分でするメリット
さて、相続登記を自分で行うことの最大のメリットは、専門家への報酬支払いを節約できることです。
相続登記に必要な費用は、① 登録免許税、② 戸籍謄本などの取得費用、③ 専門家への報酬の3つに大別できます。この内、登録免許税や戸籍謄本の取得費用は、自分で手続きする場合でも必要となる実費ですが、③ 専門家への報酬は相続登記を自分ですることで削減できるコストです。
相続登記を業務として行うことができるのは、弁護士と司法書士のみとなっています。特に、相続登記の手続きだけを依頼する場合は、司法書士に相談することが一般的です。相続登記の報酬は、司法書士であれば5万円から15万円程度が目安とされています。そのため、専門家に依頼するか自分で相続登記をするかによって、数万円~十数万円を節約することが可能となるのです。
なお、自分で相続登記する場合の費用の詳細については、こちらの関連記事にて詳しく解説しておりますので、本記事と合わせてぜひご覧ください。
5.相続登記を自分でするデメリット
一方で、相続登記を自分ですることには、以下のようなデメリットもあります。
5-1.時間と労力がかかる
相続登記は、不動産の権利関係を公示するための重要な制度であり、その手続きは法律によって厳格に規定されています。戸籍謄本等の書類の収集や登記申請書の作成、訂正を求められた場合の対応等、正確に進めていく必要があります。
戸籍謄本等は、被相続人の出生から死亡に至るまでのすべての戸籍を収集しなければなりません。家族や親族が多い場合や遠方に転籍している場合、戸籍謄本等を揃える作業だけでも、数週間から1ヶ月以上かかってしまうことも少なくありません。
こうした時間や労力、精神的な負担を考慮すると、自分で相続登記をするより専門家に依頼することが推奨されるケースもあるのです。
5-2.登記漏れのリスクがある
相続登記を自分で行うことで、「登記漏れ」が発生するリスクもあります。
登記漏れとは、被相続人が所有していた不動産の一部を見逃してしまうことです。一戸建ての敷地内にある道路後退部分や私道など、日常生活で使用していても、「被相続人の所有」であることを意識していないことが少なくありません。
法務局では、申請書に記載されている物件についてのみ相続登記を行うため、相続人が不動産を正確に把握していなければ、登記漏れが発生してしまいます。登記漏れがあると、不動産の売薬や建て替えをする際に、その部分についての所有権者としての名義がないことで、トラブルに発展する可能性もあるのです。
また、登記漏れがあった場合には、再度登記を行う必要がありますが、相続人間の関係が悪いと協力が得られないこともあり、売却や再建築が困難になることがあります。
このような状況を避けるためにも、相続登記は専門的な知識を持つ司法書士に依頼することが推奨されます。司法書士は所有権の全体像を把握し、適切な登記を完了させるために必要なサポートを提供することができます。自分で手続きを進める場合に比べて、時間と労力を節約し、登記漏れのリスクを大幅に減少させることが可能です。
法務局での相続登記を自分でする方法
1.自分で相続登記をする方法
1-1.名義変更の提出書類を用意する
相続登記を行うには、申請に必要な様々な添付書類を事前に集める必要があります。戸籍謄本等を収集し、例えば遺産分割協議によって不動産を取得したのであれば、相続人全員が記名押印した遺産分割協議書が必要です。
参考:不動産の所有者が亡くなった(法務局)
そして、法務局に提出する相続登記の申請書も作成します。法務局のホームページ等で入手できる記載例を参考に、A4サイズの用紙にパソコンまたは手書きで必要事項を記入しましょう。申請書の内容は、書類受付時には詳細までチェックされないため、提出書類に不備があれば、後日修正や再提出を求められることがあります。ですので、正確な内容を記載し、不明点があれば法務局の無料相談等を積極的に活用しましょう。
相続登記の必要書類については、下記記事で詳しく解説していますので、こちらを参照ください。
1-2.管轄の法務局に申請する
相続登記の申請は、相続する不動産のある地域を管轄する法務局で行います。申請内容に不備がなければ、通常、相続登記は約2週間で完了します。この間に、修正や再提出を求められた場合は、適切かつ迅速に対応しましょう。
遠方に住んでいる場合や、直接法務局に行く時間が取れない場合には郵送申請も検討しましょう。申請書類は個人情報を多く含むため、普通郵便ではなく書留郵便で送ることが推奨されます。ただし、書類に間違いがあった場合、訂正のために法務局へ出向く必要もあるため、訂正印や捨印を事前に押印しておくようにしましょう。
相続登記が完了すると、申請者に「登記識別情報通知」が交付されます。登記識別情報通知は、従来の不動産の権利証に相当する重要な書類です。不動産の所有者が変更されたことを証明し、具体的な登記情報を含んでいます。この書類は、将来的な不動産取引や証明作業に必要となるため、安全な場所に保管することが重要です。
相続登記の完了後、登記識別情報通知は法務局の窓口だけでなく郵送で受け取ることもできますので、相続登記の申請の際には返信用封筒を添付しておくと便利です。
不動産の相続手続きの全体的な流れについては、こちらの関連記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひご覧いただければと思います。
2.法務局のホームページでオンライン申請も可能
なお、上で少し触れておりますが、相続登記は法務省のホームページでオンライン申請することも可能です。申請には、法務省が運営する「登記・供託オンライン申請システム」を利用します。
参考:登記・供託オンライン申請システム(法務省)
オンライン申請ですが、利用時間は平日の8時30分から21時00分までとなっており、加えて国民の祝日・休日、12月29日から1月3日までの年末年始は利用することができません。そして、システムの利用には申請者情報を登録する必要があります。
インターネットに慣れていないと使いづらい、といった難点もありますが、登記・供託オンライン申請システムの操作サポートのチャットボットもありますので、一度確認してみてはいかがでしょうか。交通費や郵送料が不要な分、書面による申請よりも手数料等が低額になる可能性もあります。
なお、登記・供託オンライン申請システムでは、Webブラウザから申請する方法と、申請用総合ソフトを使う方法があります。申請用総合ソフトを使う場合は、登記・供託オンライン申請システムで取り扱っている全ての手続きを行えますが、専用ソフトのダウンロードが必要です。一方で、Webブラウザで申請できるのは一部の手続きに限られます(下表参考)。
| 手続き | Webブラウザ | 申請用総合ソフト |
| 不動産登記の申請 | 〇 | 〇 |
| 登記識別情報に関する証明請求 | × | 〇 |
| 登記識別情報の失効の申出 | × | 〇 |
| 登記識別情報通知・未失効照会 | × | 〇 |
| 不動産登記の申出 | 〇 | 〇 |
| 登記事項証明書等の交付請求 | 〇 | 〇 |
| 所有不動産記録証明書交付請求書 | × | 〇 |
相続登記を自分でする際の注意点
それでは最後に、不動産の相続登記を自分でする際の注意点を確認しておきましょう。
1.必要な戸籍謄本を不足なく収集する
前述のとおり、相続登記を行う際には、亡くなった人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本が必要となります。除籍謄本や改製原戸籍といった日常的に馴染みのない書類も含まれ、本籍地の変遷に応じて網羅的に追う必要があります。手間や時間がかかることに加え、戸籍謄本の取得には費用もかかります。時間的な余裕を持って、必要な戸籍謄本を不足なく収集するようにしましょう。
スムーズに進めていくためには、亡くなった人の家族構成や本籍地の変遷に関する情報を、事前に把握している範囲で整理しておき、窓口で交付申請をするか・郵送で申請するか、費用や時間はどれくらいかかりそうか、といった目途を立てておくことをおすすめいたします。
2.登記簿の住所と死亡時の住所は一致している必要がある
不動産の登記簿に記載されている名義人と、死亡した被相続人が同一人物であることを証明するためには、登記簿上の住所と被相続人の死亡時の住所が一致しているか、連続性があることが必要です。
具体的には、被相続人の住民票の除票または戸籍の附票(もしくは除附票)を取得します。住民票の除票や戸籍の附票・除附票に記載された被相続人の最後の住所が、登記簿上の住所と一致すれば、同一人物であることを証明することができます。
被相続人の最後の住所が登記簿上の住所と一致しない場合は、登記簿上の住所から最後の住所までの連続性を証明する書類が必要です。住民票の除票には原則として前住所までしか記載されないため、被相続人が住所を複数回移転している場合には、住民票の除票ではなく戸籍の附票を取得しておくと安心です。
もし上記の書類でも連続性を証明できない場合は、相続登記申請をする物件の権利証(登記済証)を添付することになります。権利証がない場合は、納税通知書の原本や、「登記簿上の所有者と被相続人が同一人物である旨の上申書」等を添付して提出しましょう。「登記簿上の所有者と被相続人が同一人物である旨の上申書」は相続人全員の実印による押印と印鑑証明書が必要になりますので、上述のような公的書類で証明できることが望ましいです。
なお、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等に記載されている本籍地が不動産登記簿上の住所と一致している場合は、同一性が客観的に確認できるため、被相続人の住民票の除票などの添付は不要とされています。
3.私道やマンションの共用部分の持分を確認する
本記事で「登記漏れ」がある、とご説明しましたが、一戸建ての敷地やマンションの専有部分だけでなく、私道や共用スペースなどの持分に関する相続登記を忘れないよう、注意が必要です。万が一登記漏れがあると、不動産の利用や処分に影響が生じたり、取引の際に不動産全体の価値に影響が及んだりする可能性があります。
特に、以下の2点に注意が必要です。
3-1.私道の持分
一戸建ての敷地の隣にある私道の場合、その私道の所有形態や、設定されている権利によって、土地へのアクセス権や保守責任が異なります。
例えば共有私道の場合、各共有者は自身の持分に応じて私道の全体を使用できます。一方、隣地所有者が分筆された一部を所有し合う場合は、相互に「通行地役権」を設定していると解されることになり、その範囲でアクセスが認められることとなります。
また、私道の現状維持のための保存行為は単独で行えますが、砂利道の舗装といった「管理行為」に関しては持分の過半数、道路の大規模な改変などの「変更行為」は原則として共有者全員の同意が必要となります。
そのため、土地と土地に隣接する私道を相続人の1人が引き継ぐことになった場合、私道についても忘れずに相続登記しなければ、相続人が所有者としての正当な権利を行使できなくなってしまいかねないのです。
相続登記を行う際には、敷地だけでなく隣接する私道の持分も確認し、適切に登記する必要があります。
3-2.マンションの共用部分
マンションの場合、各住戸の所有者はその専有部分のみならず、廊下や集会所、エレベーター、屋上などの共用部分にも一定の持分を有しています。そして、マンションの権利関係は、専有部分と共用部分(および敷地利用権)が一体として扱われるのが原則です(不動産登記法第73条1項本文)。
(敷地権付き区分建物に関する登記等)
不動産登記法第73条1項本文 敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権(一般の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この条において同じ。)に係る権利に関する登記は、第四十六条の規定により敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する。
マンションの廊下等の共用部分の権利は専有部分と一体化していることから、基本的には、専有部分の相続登記を行えば、共用部分の持分もカバーされるとされています。ですが、相続登記の際には共有部分についても一定の持分を有していることを意識しておくと安心です。
4.期限内に完了させないと罰則がある
不動産登記法の改正により、相続登記が義務化されたため、相続で不動産を取得した場合、その事実を知った日から3年以内に相続登記を完了させなければなりません。正当な理由なく期限内に申請を怠った場合、10万円以下の過料に処せられる可能性があります(不動産登記法第164条1項)。
(過料)
不動産登記法第164条1項 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
ですので、期限内に手続きを終わらせることが非常に重要です。
相続登記には多くの書類が必要であり、特に相続する不動産の数が多かったり、亡くなった人が生前に何度も引っ越しをしていた場合、必要な戸籍謄本や不動産登記簿等を揃えるだけでも大きな労力と時間が必要です。こうした状況では、手続きが予想以上に長引くことがあります。
このように、手続きに時間がかかることを見越して、相続事実を知ったらできるだけ早めに登記の準備を開始することが推奨されます。早期に手続きを始めることで、予期せぬ遅延に対処しやすくなり、期限内にすべての登記を完了させることができます。また、登記を早期に行うことで、不動産の権利関係が明確になり、将来的なトラブルを防ぐことにもつながります。
自分で相続登記を行う場合は、必要書類のリストアップから始め、各書類がどこでどのように取得できるかを事前に確認しておくことが重要です。可能であれば、手続きの進め方や書類の具体的な記入方法について専門家のアドバイスを求めることも検討しましょう。
Q&A【相続登記を自分で】
Q1.相続登記は専門家でなければできませんか?
A:いいえ、不動産の相続登記は専門家に依頼しなければならない手続きではありません。法制度上、専門家による申請が義務付けられていることもありませんし、手続き自体も相続人自身が戸籍謄本等の書類を集めて申請書を提出することで足ります。
Q2.相続登記を自分で行うことのメリットは何ですか?
A:相続登記を自分で行う最大のメリットは、弁護士などの専門家に支払う報酬を節約できる、という点です。相続登記には登録免許税や戸籍謄本などの取得費用がかかりますが、自分で相続登記することで、こうした実費のみで抑えることができます。
Q3.相続登記を自分でする際の費用の相場はいくらですか?
A:相続登記を自分でする場合、主な費用は「登録免許税」と「必要書類の取得費用」です。登録免許税は、原則として不動産の固定資産税評価額に0.4%を掛けて算出します。例えば、評価額1,000万円の不動産であれば、登録免許税は「1,000万円 × 0.004 = 4万円」です。これに、戸籍謄本等の取得費用が数千円から数万円程度かかります。法務局に直接出向くか、郵送により申請するか、オンラインで申請するかによっても、実費は変動します。
まとめ
この記事では、不動産を相続した場合の相続登記を自分でする方法に着目し、弁護士が詳しく解説させていただきました。
相続人関係や不動産の権利関係がシンプルなケースでは、相続人自身で相続登記の申請をすることがおすすめです。一方で、相続人関係が複雑な場合や、不動産が多数ある場合、前提となる遺産分割協議で揉めている場合などには、専門家にご相談いただくことが望ましいです。
相続登記の手続きに自信がない、時間的な余裕がない、迅速に手続きを完了させたい、といった場合には、法律の専門家である弁護士にご相談いただければと思います。
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この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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