遺族年金がもらえないケース│受給条件や対処法もあわせて解説!

家計を支えていた家族が亡くなったとき、遺族年金は遺族の生活を支える重要な収入源になり得ます。しかし、請求手続を進める中で受給要件を満たさないことが判明し、「遺族年金を受け取れない」と言われてしまう場合もあります。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、それぞれ受給対象者や年金額の仕組みが異なります。受給の可否は、亡くなった方の加入状況や保険料の納付状況に加え、遺族の生計維持関係、年齢、優先順位などの要件を満たすかどうかによって決まります。
この記事では、遺族年金がもらえないケースやその具体的な条件、もらえない場合の対処法について解説します。
目次
「遺族年金を受け取れないのでは?」と不安な方へ|まずは受給条件をチェック
遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入していた人が亡くなった際に、残された家族が受け取ることができる年金です。遺族年金には、国民年金から支給される「遺族基礎年金」と、厚生年金から支給される「遺族厚生年金」の2種類があります。
どちらの年金を受け取れるか、あるいは両方を受け取れるかは、亡くなった方の年金の加入状況によって決まります。遺族基礎年金は主に子のいる配偶者や子自身が対象となり、遺族厚生年金は最も優先順位の高い遺族が対象となります。これにより、残された家族が経済的に困窮しないように支援する仕組みが整えられています。
遺族基礎年金の受給条件は?もらえる人は?
次のいずれかに該当する方が亡くなった場合、遺族基礎年金の支給対象となり得ます。
(参照:日本年金機構HP「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」)
遺族基礎年金の受給対象者は、「子のある配偶者」または「子」です。ここでいう「子」とは、次のいずれかに該当する方をいいます。
- 18歳に到達する年度の末日までにある子
- 20歳未満で、障害年金の障害等級1級または2級の障害の状態にある子
遺族厚生年金の受給条件は?もらえる人は?
次のいずれかに該当する方が亡くなった場合、遺族厚生年金の支給対象となり得ます。
遺族厚生年金を受け取れるのは、死亡当時に亡くなった方によって生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位の高い方です。具体的な優先順位は、以下のとおりです。
子のある配偶者
第二順位
子
第三順位
子のない配偶者
第四順位
父母
第五順位
孫
第六順位
祖父母
なお、夫、父母および祖父母には55歳以上などの年齢要件があり、子・孫には年齢または障害の状態に関する要件があります。
遺族厚生年金を受け取る妻には、一定の要件を満たす場合に中高齢寡婦加算が加算されます。例えば、夫の死亡時に40歳以上65歳未満で、生計を同じくする対象年齢の子がいない妻が該当します。また、子のある妻が遺族基礎年金を受け取れなくなった場合にも、要件を満たせば加算の対象となります。このどちらかの条件を満たすと「中高齢寡婦加算」が上乗せされます。この加算額は年額63万5,500円です(令和8年度)。
さらに、遺族年金は老齢年金とは異なり、非課税となります。
遺族年金がもらえないケースとは?なぜもらえない?
上記のような受給条件を満たす場合であっても、遺族年金をもらえないケースがあります。
①保険料が未納の場合
保険料の納付要件を満たさない場合、遺族年金を受け取れないことがあります。会社員や公務員は、原則として給与から保険料が控除されるため、自ら国民年金保険料を納付するケースは多くありません。一方、自営業者やフリーランスなどは自ら保険料を納める必要があり、未納期間があると納付要件に影響する可能性があります。
遺族年金をもらうためには、以下の「保険料の納付要件」を満たしている必要があります。
- 死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上であること。
- 死亡日が2036年3月末日までで、亡くなった方が死亡時に65歳未満である場合は、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと。
この要件を満たさないと遺族年金は受け取れません。
保険料の納付が困難な場合は、未納のままにせず、免除や納付猶予の制度を利用できるか確認しましょう。承認された免除期間などは、遺族年金の納付要件の判定において考慮されます。ただし、実際の取扱いは納付状況や制度の利用状況によって異なるため、年金事務所等に確認することが重要です。
②別居中で生計同一でない・年収が850万円以上の場合
遺族基礎年金をもらえないケースの一つに、生計維持関係がない場合があります。亡くなった方と遺族の間に生計維持の関係が成り立っていないと、遺族基礎年金は受け取れません。遺族年金の受給には、原則として、亡くなった方に生計を維持されていたことが必要です。生計維持は、次の二つの要件をいずれも満たすかどうかで判断されます。
- 生計同一要件:同居していること。別居していても、仕送りを受けている、健康保険の被扶養者であるなどの事情があれば認められる場合があります。
- 収入要件:前年の収入が850万円未満、または所得が655万5,000円未満であること。
遺族の収入が原則として年額850万円以上である場合、基本的に生計維持の収入要件を満たしません。ただし、退職や廃業などにより、おおむね5年以内に収入が基準未満になると認められる事情がある場合は、受給できる可能性があります。また、別居していても、仕送りを受けている、健康保険の被扶養者であるなどの事情があれば、生計同一と認められる場合があります。
③遺族基礎年金がもらえない場合│子どもがいない
子どもがいない場合、遺族基礎年金を受け取ることはできません。遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」に支給される年金で、子どもがいない場合は対象外となります。ここでいう「子」とは、18歳に到達する年度の末日までにある子、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の障害の状態にある子をいいます。
遺族基礎年金は、子どもを育てるための経済的支援を目的としています。そのため、子どもがいない場合は支給されません。亡くなった方が厚生年金に加入していた場合、受給対象となる子がいなくても、遺族厚生年金の要件を満たす遺族がいれば、遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。
④遺族厚生年金がもらえない場合│夫が55歳未満など年齢要件を満たさない
遺族厚生年金を受給できる遺族には、次の優先順位があります。
- 子のある配偶者
- 子
- 子のない配偶者
- 父母
- 孫
- 祖父母
この中で、最も優先順位が高い人だけが遺族厚生年金を受け取ることができます。例えば、子のある配偶者がいれば、その下の順位の人は受給できません。
そして、夫、父母および祖父母は、原則として死亡当時55歳以上でなければ受給できず、受給開始は60歳からです。ただし、55歳以上の夫が子のある配偶者として遺族基礎年金を併せて受給できる場合には、60歳前でも遺族厚生年金を受け取れます。なお、夫の死亡当時に30歳未満で子のない妻が受給権を取得した場合、原則として受給期間は5年間です。
⑤配偶者が再婚した場合
「子のある配偶者」は、対象となる子がいる配偶者をいいます。遺族年金の受給権者が再婚したときは、事実婚を含め、原則として遺族年金の受給権を失います。
遺族年金の受給権を失った場合は、原則として「遺族年金失権届」の提出が必要です。届出期限は、失権事由に該当した日から、遺族基礎年金は14日以内、遺族厚生年金は10日以内です。再婚のほか、養子縁組などが失権事由となる場合もあるため、該当時は年金事務所等に確認しましょう。
⑥離婚した元配偶者はもらえない
死亡時に離婚している元配偶者は、原則として遺族年金の受給対象となる「配偶者」には当たらず、本人が配偶者として遺族年金を受け取ることはできません。遺族年金の制度は、故人と生計を共にしていた遺族を対象としており、離婚によって法的な配偶者関係が終了しているため、元配偶者は遺族年金の受給資格を失います。
元配偶者本人は受給対象となりませんが、亡くなった方の子については、子自身が年齢・生計維持・優先順位などの要件を満たす場合に、遺族年金を受け取れる可能性があります。養育費を受け取っていたことの有無だけで、受給可否が決まるわけではありません。
⑦遺族基礎年金を受給していた人が亡くなった場合・65歳未満の場合
障害年金を受けている方が、配偶者の死亡により遺族厚生年金の受給権を取得する場合には、併給調整に注意が必要です。
65歳未満の方は、原則として障害基礎年金と遺族厚生年金のいずれか一方を選択します。65歳以上の方は、一定の組合せで両方を受け取れる場合があります。なお、亡くなった方が1級または2級の障害厚生年金を受け取っていた場合は、遺族厚生年金の支給要件の一つに該当し得ますが、遺族側にも生計維持などの要件があります。
遺族年金がもらえない場合の対処法
遺族年金を受け取れない場合でも、亡くなった方の加入状況や遺族の要件によっては、他の制度を利用できることがあります。以下では、主な3つの制度を紹介します。
寡婦年金│夫が死亡した妻のみが受給できる
寡婦年金は、死亡日の前日において、国民年金の第1号被保険者または任意加入被保険者としての保険料納付済期間と保険料免除期間が合計10年以上ある夫が亡くなったときに、一定の要件を満たす妻に支給される年金です。
妻には、夫との婚姻関係(事実婚を含む)が10年以上継続していること、死亡当時に夫によって生計を維持されていたことなどが求められます。要件を満たす場合、妻が60歳から65歳になるまでの間、寡婦年金を受け取れます。
寡婦年金の金額は、夫の第1号被保険者期間を基に計算された老齢基礎年金の4分の3となります。
死亡一時金
死亡一時金は、死亡日の前日において国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方が、老齢基礎年金または障害基礎年金を受けないまま亡くなった場合に支給される一時金です。
受給対象者は、亡くなった方と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹のうち、最も優先順位の高い方です。支給額は保険料納付月数に応じて12万円から32万円で、付加保険料の納付状況によっては加算があります。
死亡一時金と寡婦年金の両方の要件を満たす場合は、いずれか一方を選択して受け取ります。どちらが有利かは、寡婦年金の見込額、受給開始年齢、受給期間などによって異なるため、請求前に年金事務所等で確認しましょう。なお、妻が繰上げ支給の老齢基礎年金を受けている場合などには、寡婦年金を請求できません。
労災保険の補償
労災保険の補償は、労働者が仕事中や通勤中に負傷したり病気になったりした場合に給付される保険制度です。すべての労働者を雇用する事業所は、業種や規模、雇用形態に関係なく、この保険に加入することが義務付けられています。
業務災害または通勤災害が原因で労働者が亡くなった場合は、要件に応じて、遺族(補償)等年金または遺族(補償)等一時金、葬祭料または葬祭給付などが支給されます。受給できる給付と金額は、死亡原因、遺族の範囲・人数などによって異なります。なお、年金または一時金の受給権者には、遺族特別支給金として一律300万円が支給されます。
遺族年金がもらえないケースに関するQ&A
Q1.遺族基礎年金を受け取れないのは、どのような場合ですか?
A1. 主なケースは、次のとおりです。
- 子の要件を満たさない場合: 受給対象となる子がいない場合や、子が年齢要件または障害の状態に関する要件を満たさない場合は、遺族基礎年金を受け取れません。また、受給権を有する子が婚姻した場合などには、受給権を失うことがあります。
- 収入条件を満たさない場合: 生計維持の収入要件は、原則として前年の収入が850万円未満、または前年の所得が655万5,000円未満であることです。死亡時に収入が基準以上でも、退職・廃業等によりおおむね5年以内に基準未満となる見込みがある場合は、受給できることがあります。
- 配偶者が再婚した場合: 受給権者である配偶者が再婚したときは、事実婚を含め、原則として遺族基礎年金の受給権を失います。
Q2.遺族厚生年金がもらえないのはどのような場合ですか?
A2. 遺族厚生年金がもらえないケースには以下のようなものがあります。
- 生計維持の要件を満たさない場合: 死亡当時に亡くなった方によって生計を維持されていなかった場合、遺族厚生年金を受け取れません。生計維持には、生計同一要件に加え、原則として年額850万円未満等の収入要件があります。
- 配偶者が再婚した場合: 遺族基礎年金と同様に、配偶者が再婚すると支給が停止されます。
- 夫の年齢要件を満たさない場合: 妻が亡くなった場合、夫は原則として死亡当時55歳以上でなければ遺族厚生年金を受けられず、受給開始は60歳からです。ただし、夫が遺族基礎年金を併せて受給できる場合は、60歳前でも受け取れます。
Q3.妻が再婚した場合、遺族年金はもらえない?
A3. 受給権者である妻が再婚した場合、事実婚を含め、妻自身の遺族基礎年金および遺族厚生年金の受給権は原則として失われます。子が遺族年金を受け取れるかは、子自身が年齢、生計維持、優先順位などの要件を満たすかどうかによって個別に判断されます。
子が遺族基礎年金を受け取れるかは、子自身の年齢等の要件に加え、生計を同じくする父または母の有無などによって判断されます。配偶者の再婚のみを理由として、子の遺族基礎年金または遺族厚生年金の支給が開始・停止されると一律に説明することはできません。個別の事情により取扱いが異なるため、年金事務所等で確認が必要です。
夫と死別した後、再婚や事実婚をせずに復氏しただけでは、遺族年金の受給権は失われません。氏名を変更した場合は、必要な氏名変更の届出を行いましょう。
まとめ
遺族年金は、大切な家族が亡くなった際に生活を支える重要な制度ですが、受給条件を満たさないと支給されないケースもあります。
この記事では、遺族年金がもらえない代表的なケースについて詳しく解説しました。保険料の未納、生計維持関係の欠如、子どもの有無、優先順位の低さ、再婚などが主な理由です。これらの条件を理解し、適切な対処を行うことが大切です。
遺族年金を受け取れない場合でも、亡くなった方の国民年金の加入状況などの要件を満たせば、寡婦年金または死亡一時金を受け取れる可能性があります。受給要件や必要書類は個別の事情によって異なるため、疑問や不安がある場合は、年金事務所、街角の年金相談センターまたは市区町村窓口に確認しましょう。
この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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