再転相続|再転相続とは?一次相続・二次相続の相続放棄の順番は?数次相続との違いも

遺産相続

更新日 2026.05.14

投稿日 2024.08.06

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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民法は、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に「相続するか・相続権を放棄するか」を決定しなければならない、と規定しています。ですが、相続人が高齢、あるいは突然の事故などで、遺産相続について承認も放棄もしないうちに、相続人が亡くなってしまうことがあります。

このように、3ヶ月という熟慮期間内に相続の承認・放棄を選択しないまま亡くなった場合に、亡くなった相続人を被相続人とする次の相続が始まることを、「再転相続」といいます。

仮に、祖父の相続について父が判断する前に父も亡くなった場合、子は父の相続だけでなく、祖父の相続についても承認・放棄を検討しなければなりません。特に、祖父や父に借金がある場合や、不動産や預貯金などの詳細がはっきり分からない場合などには、祖父の遺産相続を承認するかしないか、父の遺産相続をどうするのか、それぞれについて慎重に考え、3ヶ月以内に承認・相続放棄を決める必要があります。

また、数次相続や代襲相続、同時死亡といった似たような制度もあるため、自身のケースがどれに該当するのか、正確に判断しなければなりません。

そこでこの記事では、再転相続について弁護士が詳しく解説させていただきます。再転相続は通常の遺産相続よりも複雑なケースが多いため、適切な対応を取れるように、基本をしっかりおさえておきましょう。

本記事が少しでもご参考となりましたら幸いです。

目次

再転相続

1.再転相続とは

再転相続とは、被相続人(一次被相続人)の死亡により相続(一次相続)が開始した際、その相続人(一次相続人)が、相続の承認または放棄をしないまま熟慮期間(民法第915条1項)中に死亡し、さらに新たな相続(二次相続)が始まった状態を指します。一次相続とは最初の相続のことで、二次相続とは次に発生した相続のことです。

具体的には、A(一次被相続人)が死亡し、その相続人B(一次相続人)が熟慮期間内に承認も放棄もしないうちに死亡してC(再転相続人)がBを相続した場合に、Bの財産に属した一切の権利(民法第896条)として、Bが有していた「一次相続に関する承認または放棄の選択権」をCが承継することになります。

2.再転相続と類似の相続との違い

再転相続に似ている制度がいくつかありますので、違いを確認しておきましょう。

2-1.数次相続と再転相続の違い

数次相続とは、一次相続の法定相続人が「財産を相続する」と承認したものの、遺産分割協議が完了する前にその相続人が亡くなったことで二次相続が発生した状態を指します。例えば、祖父を被相続人とする遺産相続で父が相続を承認した後、遺産分割協議を始める前に父が亡くなった場合、父の相続人である子どもが数次相続人となります。

再転相続と数次相続は、いずれも一次相続が完了する前に次の遺産相続が発生するケースですが、二次相続が発生するタイミングに違いがあります。

再転相続の場合は、「一次相続について相続の承認または放棄をしないまま熟慮期間中」に相続人が亡くなった場合です。一方で、数次相続に関しては「遺産相続承認後、遺産分割協議の完了前に発生した二次相続」を意味します。再転相続においては一次相続に関する承認・放棄の選択権が未確定のまま次順位の相続人に引き継がれることに対し、数次相続では一次相続の相続人が相続を承認しており、その承認済みの権利を引き継ぐことになります。そのため、数次相続の相続人は一次相続について相続を承認・放棄を選択する権利はないのです。

数次相続については、こちらの関連記事にて詳しく解説しておりますので、本記事とあわせてぜひご覧ください。

2-2.代襲相続と再転相続の違い

代襲相続とは、被相続人の法定相続人が死亡・相続欠格・相続廃除などの理由で相続できない場合、その法定相続人の子どもが代わりに相続することです。たとえば、亡くなった祖父の子である父が祖父よりも先に他界している場合、父を代襲して孫が祖父の遺産分割の相続人(代襲相続人)となります。

「祖父の遺産分割について孫が相続人になる」という点が再転相続と似ていますが、両者は異なるので注意が必要です。

代襲相続では、一次相続人となるべき父親は「被相続人(祖父)が死亡する前」に死亡等しています。つまり、代襲相続においては父親の死亡した時点では祖父の遺産相続は始まっていません。これに対し再転相続では、祖父の遺産相続が始まってから父親が亡くなっています。そのため、代襲相続人は「祖父の遺産についての相続人」という立場で、自身に固有の権利に基づき直接遺産相続することになりますが、再転相続人は父の地位を承継して間接的に祖父の遺産の相続人となるのです。

2-3.同時死亡と再転相続の違い

同時死亡は、数人の死亡時期の先後が不明な場合に同時に死亡したものと推定される制度(民法第32条の2)です。

民法第32条の2 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

同時死亡では祖父と父が同時に死亡したものと推定されるため、祖父と父との間で遺産相続は発生しません。相続人となるためには、被相続人の死亡時に生存していることが必要だからです。このような同時死亡のケースは民法第887条2項の「相続の開始以前に死亡したとき」に含まれると解されているため、子は祖父の遺産相続について代襲相続人として直接相続し、父の遺産について相続人になると考えられます。

2-4.相次相続と再転相続の違い

相次相続(そうじそうぞく)とは、短期間(一般的に10年)のうちに複数回の相続が連続して発生することです。数次相続とも似ているのですが、数次相続は「一次相続を承認後、遺産分割協議の完了前に亡くなった場合」を意味し、相次相続は「一次相続の遺産分割が完了後、短期間に次の相続が発生する場合」を意味します。

 

以上の類似した相続の相違点をまとめますと、下表のとおりとなります。

  再転相続 数次相続 代襲相続 同時死亡
亡くなる順番 祖父→父 祖父→父 父→祖父 祖父と父が同時
一次被相続人 祖父 祖父
一次相続人
一次相続人の死亡時期 一次被相続人(祖父)の遺産分割における熟慮期間内(承認・放棄の選択前) 一次被相続人(祖父)の遺産分割協議の完了前 一次被相続人(祖父)の死亡より前
発生原因 熟慮期間中の一次相続人の死亡 遺産相続承認後の一次相続人の死亡 相続人の死亡・相続欠格・相続人廃除等 同じ危難等で死亡し、その先後が明らかでない
二次被相続人
二次相続人
相続手続き 【2件】
祖父から父への相続
父からへの相続
【2件】
祖父から父への相続
父からへの相続
※中間省略登記をする場合は1件
【1件】
祖父から子への相続
※父から子への相続は完了済み
【2件】
祖父から父への相続
父からへの相続

3.再転相続人とは

そして、一次相続の相続人が熟慮期間中に亡くなった場合に、その相続人の権利や義務を引き継ぐ相続人を「再転相続人」といいます。上で例示した祖父を被相続人とする一次相続と父を被相続人とする二次相続がある場合の子(祖父にとっての孫)が再転相続人となります。

前述のとおり、再転相続人は代襲相続人と混同されることがありますが、代襲相続人としての子は自己固有の権利として直接祖父の遺産を相続しますが、再転相続人としての子は祖父の遺産分割に関する父の選択権を「承継」して間接的に相続するため、注意が必要です。

4.再転相続はどこまで続く?

再転相続は、相続人が相続を承認または放棄する前に亡くなり続ける限り、理論上は無制限に続きます。

本記事で挙げているケースで、祖父、父が亡くなった後にさらに子が亡くなった場合は、孫が再転相続人となります。相続人が遺産相続について承認・放棄を完了しないまま相続人が死亡し続ける限り、再転相続は次々に発生するのです。

再転相続と相続放棄

1.再転相続と相続放棄の順番

再転相続が発生した場合に、特に問題となるのが「相続放棄」です。再転相続では一次相続と二次相続についてそれぞれ相続を承認もしくは放棄することになりますが、この際に順番を誤ると想定外の結果となってしまうことがあります。

以下では、再転相続と相続放棄に関して確認していきましょう。

再転相続が発生したら、再転相続人は一次相続と二次相続について「単純承認・限定承認・相続放棄」のいずれかを選択しなければなりません。そして、再転相続人が一次相続と二次相続の承認・放棄を決定する順番について、法律上、特定の順序で行わなければならないという決まりはありません。そのため、考えられる選択肢としては次の8つのパターンがあります。

  1. まず一次相続を承認してから、二次相続も承認する。

  2. まず一次相続を承認してから、二次相続を放棄する。

  3. まず一次相続を放棄してから、二次相続を承認する。

  4. まず一次相続を放棄してから、二次相続を放棄する。

  5. まず二次相続をを承認してから、一次相続も承認する。

  6. まず二次相続を承認してから、一次相続を放棄する。

  7. まず二次相続を放棄してから、一次相続を承認する。

  8. まず二次相続を放棄してから、一次相続を放棄する。

一見すると、一次相続と二次相続のどちらからでも問題ないように思えますが、どちらを先に選択するかによって、他方の相続についての選択権に重大な影響を及ぼすため、注意が必要です。結論から申しますと、上の8つのパターンのうち、「⑦まず二次相続を放棄してから、一次相続を承認する。」と「⑧まず二次相続を放棄してから、一次相続を放棄する。」は不可能とされているのです。

2.先に二次相続を放棄すると一次相続を自由に選択できない

具体的には、一次相続について先に決定した場合は、その内容が「承認か放棄か」に関わらず二次相続についても自由に選択できます。先に一次相続を放棄した後に二次相続を放棄しても、先に行った放棄の効力は維持されるというのが判例の立場です(最高裁判所昭和63年6月21日判決)。

民法916条の規定は、甲の相続につきその法定相続人である乙が承認又は放棄をしないで死亡した場合には、乙の法定相続人である丙のために、甲の相続についての熟慮期間を乙の相続についての熟慮期間と同一にまで延長し、甲の相続につき必要な熟慮期間を付与する趣旨にとどまるのではなく、右のような丙の再転相続人たる地位そのものに基づき、甲の相続と乙の相続のそれぞれにつき承認又は放棄の選択に関して、各別に熟慮し、かつ、承認又は放棄をする機会を保障する趣旨をも有するものと解すべきである。そうであつてみれば、丙が乙の相続を放棄して、もはや乙の権利義務をなんら承継しなくなった場合には、丙は、右の放棄によつて乙が有していた甲の相続についての承認又は放棄の選択権を失うことになるのであるから、もはや甲の相続につき承認又は放棄をすることはできないといわざるをえないが、丙が乙の相続につき放棄をしていないときは、甲の相続につき放棄をすることができ、かつ、甲の相続につき放棄をしても、それによつては乙の相続につき承認又は放棄をするのになんら障害にならず、また、その後に丙が乙の相続につき放棄をしても、丙が先に再転相続人たる地位に基づいて甲の相続につきした放棄の効力がさかのぼつて無効になることはないものと解するのが相当である。

(最高裁判所昭和63年6月21日判決)

反対に、二次相続について先に「放棄」した場合は、一次相続についての選択権を承継できなくなるため、その後に一次相続を承認もしくは放棄することができなくなります。

これは、相続放棄をした人は「初めから相続人とならなかったもの」とみなされるためです(民法第939条)。

(相続の放棄の効力)
民法第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

たとえば、祖父を被相続人とする一次相続と、父を被相続人とする二次相続について、子が「祖父の遺産は相続して、父の遺産は放棄したい。」と考え、先に二次相続を放棄したとしましょう。子は父の遺産に関する一切の権利を失うことになります。そして、「父の遺産に関する一切の権利」の中には、一次相続に関する相続権も含まれているのです。

というのも判例や通説は、再転相続人が有する一次相続の選択権の性質について、二次被相続人(父)の相続人としての地位に基づき承継したものと解する「承継説」を採っています。子が祖父の遺産を直接相続するのではなく、あくまで「父が有していた祖父の遺産相続に関する権利」を引き継いでいるに過ぎません。したがって、「二次相続を先に放棄する」ことは、「祖父の遺産を引き継ぐ権利を含んだ父の遺産相続に関する権利を全て放棄する」ということになるのです。

つまり、一次相続についての承認や放棄を選択するためには、二次相続についての相続権を有していることが前提となります。そのため、必ずしも二次相続について先に決断してはいけない、という意味ではありません。二次相続を承認するということは、「父の遺産を相続すること」と、「祖父の遺産相続について承認か放棄かを選ぶ権利を承継すること」を決定するということになります。そのため、二次相続を承認する限りでは、二次相続についての決断が先行しても一次相続の選択に影響を及ぼさないのです。

再転相続の熟慮期間

1.いつまでに相続放棄・承認を決めなければならない?

再転相続が生じた場合も、遺産相続の原則のとおり「熟慮期間内」に相続の承認(単純承認・限定承認)か放棄かを決めなければなりません。この熟慮期間については、民法で「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と定められています(民法第915条1項、同法第916条)。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

民法第916条 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

民法第917条 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

2.再転相続の熟慮期間の起算点

「自己のために相続の開始があったことを知った時」がいつであるか、いわゆる「起算点」について問題となることがあるため、確認しておきましょう。

まず、二次相続については一般的な直接の遺産相続ですので、通常は「二次被相続人の死亡を知った時」が起算点となるでしょう(民法第915条1項)。一次相続についても、「二次被相続人の死亡を知った時」が起算点になると考えられています(民法第916条)。

ところで、熟慮期間の起算点である「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、原則として相続人が「相続開始の原因たる事実」および「これにより自己が法律上相続人となった事実」の両方について認識した時を意味するとされています(大審院大正15年8月3日決定)。単に被相続人の死亡を知っただけでは足りず、自身が相続人になったことを自覚することが必要なのです。

そのため、一次相続の熟慮期間の起算点が「二次被相続人の死亡を知った時」とはならない例外的なケースもあり得るでしょう。

たとえば、次のような判例があります。

一次被相続人Aの死亡後、一次相続人Bが自身が相続人になったことを知らないまま死亡し、その相続人C(再転相続人)が、二次相続の開始から3ヶ月以上経過した後に、初めてBがAの相続人であること、それによってAの相続人としてのBの地位を承継していることを知って、相続放棄をした事案です。本件においてCは、債務名義、承継執行文の謄本等の送達を受けたことによって、Aの相続人としてのBの地位の承継を知りました。そのため、3ヶ月以上過ぎた後の相続放棄が有効かどうか、再転相続人であるCの熟慮期間の起算点が争われました。

本件では、以下のような事実関係が認められています。

  • 一次被相続人Aには貸金等に係る連帯保証債務として8,000万円の債務があった。
  • 一次被相続人Aは平成24年6月30日に死亡した。
  • Aの弟Bは自己がAの相続人となったことを知らないまま、Aからの相続について相続放棄の申述をすることなく平成24年10月19日に死亡した。
  • 平成27年11月11日に、CはAの債務に関して債務名義、上記承継執行文の謄本等の送達を受けた。
  • 平成28年2月5日、CはAからの相続について相続放棄の申述をして受理された。

仮に、Cの一次相続についての熟慮期間の起算点が、二次被相続人であるBの亡くなった「平成24年10月19日」だとすると、平成28年2月5日の相続放棄は3ヶ月を経過しているので放棄が認められないことになります。反対に、「平成27年11月11日」を起算点とするのであれば、相続放棄は3ヶ月以内に行われているため有効です。

この争点に関して、裁判所は次のとおり判断しました。

裁判所の判断

民法916条の趣旨は、乙が甲からの相続について承認又は放棄をしないで死亡したときには、乙から甲の相続人としての地位を承継した丙において、甲からの相続について承認又は放棄のいずれかを選択することになるという点に鑑みて、丙の認識に基づき、甲からの相続に係る丙の熟慮期間の起算点を定めることによって、丙に対し、甲からの相続について承認又は放棄のいずれかを選択する機会を保障することにあるというべきである。

再転相続人である丙は、自己のために乙からの相続が開始したことを知ったからといって、当然に乙が甲の相続人であったことを知り得るわけではない。また、丙は、乙からの相続により、甲からの相続について承認又は放棄を選択し得る乙の地位を承継してはいるものの、丙自身において、乙が甲の相続人であったことを知らなければ、甲からの相続について承認又は放棄のいずれかを選択することはできない。丙が、乙から甲の相続人としての地位を承継したことを知らないにもかかわらず、丙のために乙からの相続が開始したことを知ったことをもって、甲からの相続に係る熟慮期間が起算されるとすることは、丙に対し、甲からの相続について承認又は放棄のいずれかを選択する機会を保障する民法916条の趣旨に反する。

以上によれば、民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が、当該死亡した者からの相続により、当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を、自己が承継した事実を知った時をいうものと解すべきである。

前記事実関係等によれば、Cは、平成27年11月11日の本件送達により、BからAの相続人としての地位を自己が承継した事実を知ったというのであるから、Aからの相続に係るCの熟慮期間は、本件送達の時から起算される。そうすると、平成28年2月5日に申述がされた本件相続放棄は、熟慮期間内にされたものとして有効である。

(最高裁判所令和元年8月9日判決)

再転相続の注意点

1.遺産分割協議書は相続ごとに作成しましょう

再転相続では、一次相続と二次相続それぞれで遺産分割協議を行います。一次相続の遺産分割協議では、一次相続の法定相続人と再転相続人が相続人となり、話し合いをします。二次相続の遺産分割協議では、二次相続の法定相続人全員で話し合いをすることになります。

このように、一次相続と二次相続では関わる当事者も相続する財産も異なりますので、両方に共通する相続人(一次相続の再転相続人)がいる場合でも、別途話し合ってそれぞれで遺産分割協議書を作成するようにしましょう。

1-1.一次相続に関する遺産分割協議書

  • 遺産の分け方等については通常の遺産分割協議書と同様に記載します。
  • 一次相続の法定相続人であり、二次相続の被相続人である人については、「相続人兼被相続人」と記載します。
  • そして、「被相続人Aの相続にかかる被相続人Bの遺産分割は、被相続人B固有の遺産の分割に影響を及ぼさず、被相続人Bの遺産の分割については、今回の分割とは別個独立に分割することを確認する。」といった一文を明記しておくと、二次相続と明確に区別できます。

1-2.二次相続に関する遺産分割協議書

通常の遺産分割協議書を作成します。

1-3.まとめて作成してもOK

なお、一次相続と二次相続の遺産分割協議書をまとめて1通にする場合もあります。相続人が1人しかいないような場合や、相続人・相続財産が少なくあまり複雑にならない場合には、手続きを簡略化させるため1通でまとめることが多いです。

この場合、遺産分割協議書の書き方としては以下の点がポイントとなります。

  • 一次被相続人Xと二次被相続人Yについて、「相続人Xは、令和6年4月30日死亡した。また、Xの相続人であるYが令和6年6月1日死亡したので、X及びYの相続人全員は、令和7年8月9日、被相続人の遺産につき次のとおりに分割することを協議した。」といったように、再転相続である旨を明記します。
  • 署名押印する相続人の肩書きには、承継関係がはっきり分かるように、「Xの相続人兼Xの相続人Yの相続人」などと記入します。

2.再転相続と相続登記

不動産を引き継いだ場合には相続登記申請が必要です。再転相続では相続が2回発生するため、通常であれば不動産の登記手続きも2回行う必要があります。

ですが、再転相続において一次相続と二次相続の相続人が同じであり、その相続人が一人である場合には、登記申請を1回にまとめることができます(中間省略登記)。たとえば、祖父から父への相続登記を省略し、祖父から子への1度の相続登記で済ませることが可能となるのです。

また、一次相続の相続人が1人だけの単独相続であれば、二次相続人が複数人であっても、一次相続の登記手続きを省略することができます。

3.再転相続と特別受益

再転相続においても、再転相続人が特別受益者になる場合が考えられますので、注意しましょう。

特別受益とは、被相続人から生前に贈与や遺贈を受けた相続人が、他の相続人と比較して不公平な利益を受けたとみなされる利益のことです。特別受益者になり得るのは「被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた共同相続人」と規定されています(民法第903条1項)から、再転相続人もこれに含まれます。

たとえば、再転相続人が一次相続の被相続人から生前贈与等を受けていた場合は、特別受益とみなされて、遺産分割の際に特別受益分を持ち戻さなければならない可能性があるのです。実際の判例においても、再転相続の場合の特別受益の持ち戻しが検討されています。

先に死亡したAの遺産の分割申立て事件と、その後に死亡した同人の妻Bの遺産の分割申立て事件とが併合された事案です。

この事例で裁判所は、「遺産は、相続人が数人ある場合において、それが当然に分割されるものでないときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属し、この共有の性質は、基本的には民法249条以下に規定する共有と性質を異にするものではない。そうすると、共同相続人が取得する遺産の共有持分権は、実体上の権利であって遺産分割の対象となるというべきである。」と述べた上で、「本件におけるA及びBの各相続の経緯は、Aが死亡してその相続が開始し、次いで、Aの遺産の分割が未了の間にAの相続人でもあるBが死亡してその相続が開始したというものである。そうすると、Bは、Aの相続の開始と同時に、Aの遺産について相続分に応じた共有持分権を取得しており、これはBの遺産を構成するものであるから、これをBの共同相続人である抗告人及び相手方らに分属させるには、遺産分割手続を経る必要があり、共同相続人の中にBから特別受益に当たる贈与を受けた者があるときは、その持戻しをして各共同相続人の具体的相続分を算定しなければならない。」と判断しました。

(最高裁判所平成17年10月11日決定)

なお、特別受益とみなされるかどうかは、遺産分割において非常に重要な論点ですので、弁護士などの専門家にご相談いただくことをおすすめいたします。

再転相続に関するQ&A

Q1.再転相続とは何ですか?

A:再転相続とは、被相続人(一次被相続人)の死亡により相続(一次相続)が開始した際、その相続人(一次相続人)が、相続の承認または放棄をしないまま熟慮期間中に死亡し、さらに新たな相続(二次相続)が始まった状態を指します。一次相続とは最初の相続のことで、二次相続とは次に発生した相続のことです。

Q2.再転相続で相続放棄する場合、一次相続と二次相続のどちらが先かは自由ですか?

A:順番自体は自由ですが、二次相続を先に相続放棄してしまうと、二次被相続人の有していた「一次被相続人の遺産を相続するか放棄するかを選択する権利」も放棄してしまうことになるため、結果として一次相続を承認することができなくなってしまいます。そのため、「一次相続を承認し、二次相続を放棄したい」場合にはまず一次相続の承認をしてから、二次相続の放棄をしましょう。

Q3.再転相続における熟慮期間の起算点はいつですか?

A:再転相続における熟慮期間の起算点は、「再転相続人になったことを知った時点」です。基本的には、二次相続の被相続人の死亡を知った時(=二次被相続人の死亡日)が、再転相続の熟慮期間の起算点となります。ただし、二次相続の被相続人が一次相続の相続人であったことを、再転相続人が知らなかったような場合には、その事実を具体的に知った時が熟慮期間の起算点となる可能性があります。

まとめ

この記事では、再転相続について弁護士が解説させていただきました。

再転相続は、承認と放棄を選択する順番や、熟慮期間の起算点の判断を誤ってしまうと、相続放棄や承認ができなくなってしまい、想定外の不利益を被ることになりかねません。そのため、再転相続に関する正しい知識を持ち、必要であればなるべく早めに弁護士に相談することが大切です。

弁護士法人あおい法律事務所では、再転相続をはじめとしたさまざまな遺産相続の問題について、経験豊富な弁護士がご相談をお受けしております。当ホームページのWeb予約フォームやお電話にてご予約いただけますので、まずはお気軽に初回無料相談をご利用いただければと思います。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。