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不倫は法律違反になる?民法上の不法行為とは

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。
1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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「配偶者の不倫に気付いたけど、これって違法なの?」

信用していた配偶者に浮気や不倫をされると大きなショックを受けます。相手に責任を取らせたいという思いも強くなるでしょう。

しかし、日本には、不倫を取り締まる法律はないため、犯罪にはなりません。

「被害者は泣き寝入りするしかないの?」と悩まれるかもしれませんが、民法上の法律に触れる行為として損害賠償などを請求することはできます。

ここでは、不倫が違法にならない理由や、民法上・憲法上の法律などについて解説していきます。

目次

不倫は犯罪?合法か違法か?

不倫は犯罪ではないため、刑法上の法律違反にはなりません。

冒頭でもお伝えしましたが、不倫は、犯罪ではありません。

なぜなら、日本の法律には、不倫を取り締まる条文や罰則規定がないからです。そのため、不倫が合法なのか、違法なのか?と問われたら、刑法上、違法であるとはいえません。

例えば、人に暴力を振るって、相手に怪我を負わせた場合は、「暴行罪」や「傷害罪」などの犯罪になります。

これらは、「刑法」という法律において、犯罪が成立する要件や罰則などが明記されています。

一方で、不倫には、そのような条文が存在しないため、不倫をしても犯罪ではなく、懲役刑や罰金系などの罪を与えることはできませんし、逮捕されることもありません。

不倫でも例外的に法律違反となり、逮捕されるケースがあります。

このように、不倫は犯罪ではありません。ただし、不倫でも違法になるケースも例外的にあります。

それは、不倫相手が18歳未満の未成年である場合です。

なぜかというと、成人と未成年者との交際については、全国の都道府県や市区町村では、青少年保護育成条例によって規制されているからです。

そのため、不倫相手が未成年者の場合は違法となります。

特に、未成年と性交や性交に類似した行為を行った場合は、たとえ未成年者側が同意しているときであっても、条例違反となり、罰則規定が適応されます。例えば、東京都や大阪府であれば、「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」の罰則規定が定められています。

なお、条文や罰則規定の細かい内容については、各都道府県によって異なるところがあります。

また、児童福祉法という法律でも、18歳未満の未成年者を相手とする性交又は性交に類似した行為を禁止しています。

児童福祉法の法律では、罰則規定があり、未成年者と性交を含む不倫をした場合、「10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、もしくは併科」の罰則が適応されます。

以上より、不倫は基本的には犯罪ではなく、刑法上の違法とはいえませんが、不倫相手が18歳未満の未成年者の場合は、児童福祉法の法律違反又は青少年保護育成条例の条例違反になり、逮捕されたり、刑事罰を受けるおそれがあります。

不倫がだめな理由は?不倫に罰則規定はないが、民法上の不法行為や不貞行為にあたります。

不倫は犯罪にはなりませんが、決して許されることではありません。

また、不倫をされた側は、不倫によって大変傷付き、甚大な損害を被ることになります。

しかし、「不倫をした側がなぜその責任を取らないのか」と不満に思う方も多いでしょう。

では、不倫について責任を問うためには、どのような方法があるのでしょうか。

配偶者が不倫をした場合、刑法上の法律では裁くことができませんが、民事上の法律において、損害賠償を請求することができます。

不倫は、民事上の法律に違反している?

なぜ、民事上であれば、不倫に対して責任を問うことができるのでしょうか。

それは、不倫が民事上の不法行為又は不貞行為にあたるからです。したがって、

不倫は犯罪ではありませんが、民事上は違法行為になります。

不法行為とは、どのようなものか、以下で詳しく解説しましょう。

不倫が民事上の不法行為にあたるケースとは?

民法709条では、「故意又は過失によって、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。

不法行為とは、この故意又は過失によって、相手の権利などを侵害する行為のことをいいます。そして、不法行為をしたものは、相手に対して、その責任を負うことになります。

なお、故意とは、選択肢がいくつかある中で、あえてその行為に及んだ状態であり、過失とは、十分に注意していれば防げたことを、不注意のために回避できなかった状態をいいます。

具体的には、相手が既婚者であることを知っている上で(故意)、又は知ろうと思えば知れたのに、不注意で相手が既婚者だと知らずに不倫した場合(過失)には、不倫が不法行為となる可能性があります。

不法行為は、犯罪のように、罰金や懲役などの罰則を与えることはできませんが、民事上、不倫による損害を賠償する責任が生じます。

不倫が民法上の不貞行為にあたるケースとは?

配偶者の不倫によって、夫婦が離婚する場合、配偶者の不倫は、「不貞行為」になります。

民法(770条第1項)では、夫婦の離婚する事由として、①「配偶者に不貞な行為があったとき」、②「配偶者から悪意で遺棄されたとき」、③「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」、④「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」、⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」の5つの事項を列挙しています。

不貞行為とは、この1つ目の事由のことです。

配偶者が不倫をした場合は不貞行為になり、配偶者に不貞行為があれば、離婚が認められる可能性が高いでしょう。

夫婦には、貞操義務といって、配偶者以外と性的関係を持ってはいけない義務があります。

配偶者の不貞行為は、この貞操義務に違反しているので、その責任から、不倫された側が離婚を求める場合に、裁判所はこれを認めることになります。

なお、ここでいう夫婦の中には、事実婚の夫婦や同性愛の事実婚夫婦も含まれています。

以上から、配偶者が不倫して、それが不貞行為と認められる場合は、民事上、不倫は違法といえるでしょう。

不倫が民事上の不法行為と認められた場合、不倫した側や不倫相手に損害賠償を請求することができます。

不倫について、民事上の不法行為として損害賠償を請求するための方法には、どのようなものがあるのでしょうか。

不倫の損害賠償を請求するためには、以下の条件を満たしていることが必要です。

 

  • 配偶者が既婚者であることを不倫相手が知っていた、又は知ろうと思えば気付く状況であった
  • 不倫について自らの自由意思で肉体関係を持っていた
  • 不倫をしていた時期は、夫婦関係が破綻していなかった

 

これらは、民法709条の不法行為として損害賠償を請求するために必要な要件となります。

上記要件が満たされている場合は、不倫した配偶者や不倫相手に損害賠償を請求することができます。

次に、損害賠償を請求する手順ですが、まずは、①不倫をした証拠を集める、②不倫相手にも慰謝料を請求する場合は、不倫相手の名前や住所を特定する、③不倫した配偶者又は不倫相手と直接交渉する、もしくは弁護士を介して示談交渉する、④交渉が難しい場合は、裁判所で調停又は訴訟手続を行うことになります。

不倫について、損害賠償を請求する場合の具体的な方法や損害賠償の相場などについては、こちらに詳しくまとめていますので、参考にしてください。

[不倫で慰謝料を請求する方法とは?離婚と合わせて示談や裁判の方法も解説!]

不倫と浮気の境界線とは?

みなさんは、不倫と浮気の違いはどこだと思いますか?配偶者が隠れて恋人を作っている場合、不倫と浮気のどちらになるのでしょうか?

一般には、浮気は、心の浮つきを意味していて、配偶者や恋人以外の相手に恋愛感情を持つことを指します。

一方、不倫とは、どちらか一方が既婚者であり、かつ配偶者以外の相手と肉体関係を持つことを指します。

したがって、既婚者であっても、肉体関係がなければ不倫ではなく、浮気ということになります。

つまり、たとえば夫が妻以外の女性と会っていても、不倫にはならないケースがあります。

簡単にまとめますと、以下の2つの場合は不倫にならない可能性が高いでしょう。

 

  • 性交又は性交に類似した行為がない場合
  • 性交又は性交に類似した行為を強要されている場合

 

ここから、法律上、不倫と認められない可能性があるケースについて解説します。

不倫と浮気の境界線

法律上、不倫(=不貞行為)と認められないものがある

法律上、どういう行為が不倫(=不貞行為)となるかの境界線を紹介していきます。なお、肉体関係がないキスや抱擁といった行為も、場合によっては、不法行為になることもありますので、詳しくお知りになりたい方は弁護士に相談しましょう。

①SNSやメールでやり取りをする、二人で食事をする、二人で映画館やドライブに行く

不倫は、配偶者以外の相手と性交又は性的に類似した行為を行うことをいいます。

したがって、配偶者以外の相手に恋愛感情を抱くだけでは、不倫とはいえません。

また、配偶者以外とメールやSNSでやり取りをする、電話をする、二人で食事に行く、二人でドライブに行く、二人で映画館や水族館に行く、といった行為だけでは不倫として認められないことがあります。

②手をつなぐ、キスや抱擁をする

配偶者以外と手をつなぐ、キスや抱擁をするなど、明らかに恋愛感情を持って身体接触をしている場合は、前後の状況によって不倫として認められる場合と、不倫としては認められず、浮気に留まる場合があります。

キスや抱擁が不倫と認められるのは、それが性的な類似行為として認められる場合です。

具体的には、性交の一環におけるキス、手淫や口淫、裸で抱き合う行為などがあると不倫になる可能性が高いです。

一方で、前後に性交を推察される言動がなければ、キスや抱擁があっても不倫として認められないことが多いでしょう。

③飲酒で酔った状況で性交を行った場合

不倫が法律上不貞行為と認められるのは、自由意思で肉体関係を持った場合です。自由意思とは、相手や第三者から強制されておらず、自発的に行為を行う心理状態をいいます。

では、アルコールに酔った状態で相手と性交又は性的な類似行為をした場合は、不倫といえるのでしょうか?

結論としては、アルコールで酔っている状況であっても、既婚者と性交をした場合には、不倫といえるケースがほとんどでしょう。

なぜなら、法律上、「自由意思ではなかった」というためには、事理弁識能力が全くなく、責任能力が欠如していたという状況が求められるためです。

意識がないほどに酩酊している中で、強制的に性交させられる場合は、自由意思でなかったといえるかもしれません。

しかし、単に飲酒して酔っていたからと言って、どちらかの家やホテルに行って性交するのは、多少自分にも性交する意思があったと考えられます。

そのため、アルコールの影響があったとしても、配偶者以外の相手と性交又は性的に類似する行為を行った場合、原則として不貞行為に該当します。

④風俗店の利用

配偶者が風俗を利用した場合、法律上不貞行為といえるのでしょうか。

風俗には様々な種類があり、性的行為がない風俗を利用する場合は、法律上の不貞行為と認められないです。

また、性的行為がある風俗を李承した場合であっても、一度限りであれば、不貞な行為として認められないケースもあります。

ただし、何度も性的行為のある風俗に通ったり、風速の相手と親密な関係を継続して持っている場合には、法律上の不貞行為として認められる可能性があります。

配偶者の行為が浮気なのか、不倫なのか、その境界を理解するには判例などを調べる必要があります。

また、不倫を法律上の不貞行為として認めるには、証拠なども必要になりますので、一度弁護士事務所などに相談されることをおすすめします。

不倫は憲法違反になる?

不倫がだめな理由として、民事上の法律に違反していることを一つの例として挙げました。

実は、その他にも法律違反といえるものがあります。それは、私たち日本人の最高法規である憲法に違反するというものです。

日本では、憲法の中で夫婦の婚姻中に守るべきことを明記しています。

憲法には、以下の条文で夫婦の婚姻について触れています。

日本国憲法24条

1.「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」

2.「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない。」

日本では、一夫一婦制という婚姻制度を採用しており、憲法は、婚姻中の夫婦は、互いに協力して婚姻を継続することを要求しています。

この憲法の要求を受け、日本の夫婦には、重婚禁止、同居扶養義務、離婚原因としての不貞行為という規則が定められています。

憲法には、罰則規定はありませんが、不倫は憲法の要求する夫婦の在り方に反する行為であるといえるでしょう。

不倫は1回でもだめ?

1回だけの不倫であっても、不倫をされた側は大きなショックを受けます。しかし、その1回の不倫を理由として、慰謝料請求や離婚訴訟が認められるのでしょうか?

結論としては、たとえ配偶者の不倫が1回だけであっても、それが不貞行為として認められる場合は、慰謝料請求や離婚訴訟の事由として認められる可能性があります。

ただし、離婚訴訟の場合は、1回の不倫によって、配偶者と別居するなどの結果になるなど、不倫が婚姻関係を破綻させる原因であると認められる必要があります。

1回の不貞行為でも、配偶者が我慢をして共同生活を続けていた場合などは、離婚理由として認められないでしょう。

不倫は法律違反になる?民法上の不法行為とはに関するQ&A

不倫は法律違反になりますか?

不倫は犯罪ではありませんが、民事上は違法行為になります。

なぜなら、不倫は民法という法律の「不貞行為」に該当する可能性があるからです。

不倫が不貞行為として認められる場合は、慰謝料を請求したり、不倫した配偶者を相手方として離婚訴訟を起こすことができます。

不倫が民事上の不貞行為となるには、どのような要件が必要ですか?

不倫が、民事上の不貞行為として認められるためには、次の要件が必要になります。①配偶者が既婚者であることを不倫相手が知っていた、又は知ろうと思えば気付く状況であった、②不倫について自らの自由意思で肉体関係を持っていた、③不倫をしていた時期は、夫婦関係が破綻していなかった。

不倫が違法となる境界線はどこでしょうか?

不倫が違法となる境界線としては、①性交又は性交に類似した行為の有無、②性交又は性交に類似した行為を強要されているかどうか、が鍵となります。したがって、既婚者が自分の意思で配偶者以外と性交又は性交に類似した行為を行った場合は不貞行為として認められるでしょう。

配偶者の不倫がわかったら弁護士にご相談を

配偶者の不倫が民事の法律上の不貞行為として認められるかどうかは、過去の判例などと照らし合わせて考える必要があります。

特に、不倫した配偶者や不倫相手に対して慰謝料請求を行ったり、離婚訴訟を起こす場合などは、不貞行為の要件を満たすための証拠を集めたり、裁判所の手続に基づいて、法律の要件に沿った主張が必要となります。

弁護士事務所では、依頼者に代わって、すべての手続きを代理で行うことができます。

不倫された側はもちろん、不倫した側で自分の行為によって慰謝料を請求されるか不安な方なども、一度弁護士事務所に相談して、専門家からのアドバイスを受けるとよいでしょう。

この記事を書いた人

雫田 雄太

弁護士法人あおい法律事務所 代表弁護士

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

 

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。

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