土地を相続したら│手続きの流れや必要書類、名義変更など詳しく解説

遺産分割

更新日 2024.08.12

投稿日 2024.04.13

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

土地を相続するということは、単に財産を受け継ぐということだけではありません。実際には、名義変更や相続税の申告など、さまざまな手続きが必要になります。

特に、土地のような不動産の場合、現金とは異なり簡単に分割できないため、相続人間でのトラブルが発生する可能性もあります。また、相続税の計算や申告も複雑であり、知識がなければ損をすることもあります。

そこで、この記事では、土地を相続する際に必要な手続きや費用、さらにはトラブルを回避するためのポイントなどを、わかりやすく解説します。

何から手を付けてよいかわからない方にとって、手続きを進める一助となれば幸いです。

目次

土地を相続した際の手続きの流れ

 

 

土地を相続する際の手続きの流れは以下の通りです。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 相続人を確定する
  3. 相続財産を確定する
  4. 遺産分割協議で遺産の分割方法を決める
  5. 名義変更を行う
  6. 相続税の申告・納付を行う

それぞれについて、以下で詳しく解説していきます。

①遺言書の有無を確認する

まず最初に遺言書があるかどうかを確認することが重要です。遺言書があれば、その内容に基づいて相続手続きを進めます。遺言書には、土地を含む財産の分配方法や、誰に相続するかなどが記載されています。そのため、不動産の所有者が亡くなった際には、まず遺言書がないかを確認する必要があります。

遺言書が見つからない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、土地を含む財産の分配方法を決定します。

また、遺言書が見つからなかったが、後に遺言書が発見された場合は、遺言書の内容が優先されるため、既に進めていた手続きが無効になる可能性があります。

このような事態を避けるためにも、遺言書の有無をまず確認し、内容を把握しておくことが大切です。

②相続人を確定する

次に相続人を確定させます。遺言書がない場合、被相続人の財産は法律で定められた範囲の親族によって相続されます。そのため、まずは亡くなった人の戸籍謄本や除籍謄本を取得し、家系図を作成することで、誰が相続人となるのかを正確に特定する必要があります。

相続人は、通常、配偶者、子供、親、兄弟姉妹など、被相続人と血縁関係または婚姻関係にある人々です。これらの相続人の中で、相続の順位や割合が法律で定められています。相続人の確定は、後の遺産分割協議や相続登記などの手続きの基礎となるため、慎重に行う必要があります。

相続人が確定した後は、相続人全員で遺産分割協議を行い、土地を含む財産の分配を決定します。もし新たな相続人が後から発覚した場合、すでに行われた遺産分割協議をやり直す必要があるため、最初の段階で正確に相続人を把握するようにしましょう。

③相続財産を確定する

次に相続財産を確定します。まず、相続人は被相続人の財産を網羅的に把握する必要があります。これには、不動産、預貯金、株式、生命保険金、自動車、貴金属、美術品など、被相続人が所有していたすべての財産が含まれます。

不動産の場合は、相続する土地や建物がどこにあり、いくつあるのかを正確に把握しなければなりません。そのためには、固定資産税評価証明書や名寄帳などの書類を用いて、所有不動産を確認します。また、市区町村役場では被相続人の名前で登録されている不動産の一覧「名寄せ」を確認することもできます。相続人が把握していない土地や建物がある場合も多く、例えば自宅の近隣の私道の持分や把握しきれていない農地など、被相続人が所有していた可能性があります。

財産目録を作成する際には、不動産の場合は権利証や登記識別情報通知、固定資産税の納税通知書などで確認し、預貯金の場合は通帳や残高証明書で亡くなった時点の残高を確認します。その他の財産についても、可能な限り詳細にリストアップし、相続財産の全体像を把握することが大切です。

④遺産分割協議で遺産の分割方法を決める

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。遺産分割協議は、相続人が一人でも欠けた状態では合意が成立しないため、全員の参加が必要です。遺産分割協議では、相続財産である土地などの不動産、預貯金などを誰が引き継ぐかを含めて、その内容を遺産分割協議書にまとめます。この協議書には、相続人全員が署名し、実印で押印する必要があります。

土地の分割方法にはいくつかの選択肢があり、分割方法によって相続登記の方法や相続税の金額にも影響が出ます。分割方法の例としては、土地を物理的に分割する方法、共有状態を維持しつつ持分を決める方法、土地を売却して代金を分割する方法などがあります。詳しくは、以下「相続した土地の4つの分割方法」で解説します。

⑤名義変更を行う

遺産分割協議で土地を誰が相続するのか決まれば、その後名義変更を行います。相続人間で話がまとまったとしても、法務局に名義人の変更届けを行わなければ、不動産は被相続人の名義のままとなります。そのため、被相続人から相続人への名義変更「相続登記」を行う必要があります。

相続登記は、土地の所在地を管轄する法務局にて手続きを行います。土地の名義変更について詳しくは、以下「土地の名義変更の方法」で解説します。

なお、法改正により、令和6年4月から相続登記が義務化されます。相続登記を怠った場合には、過料を科されるなどのデメリットが生じるため、必ず手続きするようにしましょう。

⑥相続税の申告・納付を行う

相続税は、不動産を含む遺産の総額が基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超える場合に発生します。相続税が発生するかどうかを確認するためには、まず被相続人の財産の総額を把握し、基礎控除額と比較する必要があります。

相続税の申告と納付の期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内です。この期限内に申告や納付が行われないと、追徴課税や罰則が科せられる可能性があるため、すぐに申告手続きを進めて納付するようにしましょう。

相続した土地の4つの分割方法

土地の遺産分割の方法は以下の4つです。遺産分割協議でどのように分割するか、相続人全員が納得する方法を決めます。

現物分割│土地をそのまま分割する

現物分割は、相続財産をそのままの形で各相続人に分割する方法です。例えば、預貯金を長男、有価証券を長女、実家を次男に渡すように、各種財産を相続人ごとに分けます。この方法のメリットは、手続きがシンプルでわかりやすく、思い入れのある財産をそのまま残せる点です。しかし、デメリットとして、法定相続分に従って公平に分けるのが難しい場合があります。特に、一人の相続人が土地や家を相続すると、他の相続人の取得分が少なくなり、不公平感が生じやすいです。

土地に関しては、法定相続分通りに平等に分割することも可能ですが、土地が広くない場合、分割によって売却が困難になったり、活用が難しくなるというデメリットがあります。したがって、現物分割を選択する際には、財産の種類や相続人の状況を考慮し、不公平感が生じないよう配慮することが重要です。

換価分割│土地を売却して売却金を分割する

換価分割は、相続財産を売却して現金化し、その金額を基に相続人間で分割する方法です。特に、相続財産の大部分が不動産の場合に適しています。

この方法のメリットは、現金に換えることで公平な分割がしやすくなることです。たとえば、土地が3,000万円で売れた場合、相続人が子ども3人とすると、1人あたり1,000万円ずつ分配することができます。

しかし、デメリットとしては、不動産の売却には時間と費用がかかり、また、相続人の中にその不動産に住んでいる人がいる場合や、すぐに買い手が見つからない物件の場合は、売却自体が困難になる可能性があります。

換価分割について詳しくは、下記記事で解説しておりますので、参照してください。

換価分割とは│遺産分割協議書の書き方と譲渡所得などの税金について

代償分割│土地を相続した人が他の相続人へ金銭を支払う

代償分割は、特定の相続人が土地などの特定の財産を単独で相続し、他の相続人に対してその代償として金銭を支払う方法です。この方法は、分割が困難な土地や建物などの財産に適しており、特定の相続人がその財産の取得を強く希望する場合に有効です。

たとえば、父親が残した土地が4,000万円の価値がある場合、長男がその土地を相続し、母と次男にそれぞれ2,000万円と1,000万円の代償金を支払うことになります。

この方法のメリットは、特定の相続人が財産を保持できることと、現金での分割が可能なことです。

一方で、代償金を支払う相続人には相応の資金力が必要となり、また、代償金の額の算定には公平な評価が必要となるため、紛争の原因となることもあります。

代償分割について詳しくは、下記記事で解説しておりますので参照してください。

代償分割とは?代償金の決め方・遺産分割協議書の書き方・相続税の計算方法

共有分割│土地を複数の相続人の共有名義とする

共有分割は、相続財産である土地などを相続人全員で共有する方法です。この方法では、土地を実際に分割せず、相続人それぞれが一定の持分を持つことになります。たとえば、父親が残した土地を、母、長男、長女の3人で共有する場合、それぞれが1/2、1/4、1/4の持分を持つことになります。

共有分割のメリットは、相続人間の公平性を保ちやすいことです。一方で、デメリットとしては、将来的に土地を売却したい場合や利用方法を変更したい場合に、共有者全員の同意が必要となるため、意見の相違がトラブルの原因となりやすい点が挙げられます。また、次の世代への相続が発生した場合、権利関係がさらに複雑化する可能性があります。

土地を相続したら名義変更は必須

土地を相続したら被相続人から相続人へ名義変更する必要があります。この名義変更の手続きを「相続登記」といいます。ここでは、名義変更の手続きについて詳しく解説していきます。

相続した土地の名義変更の義務化

令和6年4月1日からは、相続によって取得した土地・不動産の名義変更が義務化されます。申請の期限は、土地・不動産の所有権を取得した事実を知ってから3年以内です。遺産分割協議によって土地・不動産を相続した場合は、遺産分割協議の成立日から3年以内に手続きをしなければなりません。

期限を守らない場合は、10万円以下の過料が科せられることがあります。

なお、名義変更の義務化は令和6年4月1日以前に亡くなっているが、まだ名義変更していない土地も対象ですのでご注意ください。

土地の名義変更をしないとどうなる

名義変更をしないままでいると以下のデメリットやリスクが発生します。

権利関係が複雑になる

相続人全員が法定相続分に従って不動産を共有して所有する状態になります。遺産分割協議で決まったにもかかわらず手続きしないままだと、他の相続人を含む全員で共有している状態です。また、名義変更をしないまま相続した人が亡くなると、所有権は配偶者や子どもに移行してしまい、共有する人数が増えてしまいます。

そうなると遺産分割協議をまとめることは一層困難になってしまいます。

子孫の相続で大変になる

次の世代に引き継がれた際、次の世代の相続人は「祖父母の代」「親の代」の2世代分の名義変更手続きが必要です。そうすると、相続関係を示す戸籍等や印鑑証明の収集など手続きは複雑で時間がかかります。

土地を売却できない

相続登記が出来ていないと、売却手続きができません。また、担保を設定することもできないので、手続きがスムーズに済ませられる相続のタイミングで名義変更をしておく方が賢明です。

土地の名義変更の手続きの流れ

必要書類を集める

法務局で名義変更の手続きを進める前に、以下のような必要書類を準備しましょう。

必要書類

説明

取得方法 

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本および除籍謄本

結婚や転籍などで変更がある場合もすべて含む戸籍謄本。

被相続人の本籍地の市区町村役場で取り寄せ。

相続人全員の現在の戸籍謄本または抄本

相続人が生存していることの証明。

各相続人の本籍地の市区町村役場で取り寄せ。

被相続人の住民票の除票または戸籍の附票

被相続人の登記簿に記載されている住所から死亡時の住所との繋がりを証明。

被相続人の最後の住所地の市区町村役場、または本籍地の役所で取り寄せ。

名義人となる相続人の住民票

新しい名義人の現住所を証明。

新しい名義人の住民登録地の市区町村役場で取り寄せ。

固定資産評価証明書

不動産の価値を証明。固定資産税納税通知書のコピーでも可。

不動産を管轄する市区町村役場で取得、または固定資産税納税通知書で代用。

遺産分割協議書および相続人の印鑑証明書

相続人全員が署名し実印を押した遺産分割協議書と、その実印を証明する印鑑証明書。

遺産分割協議書は相続人が作成、印鑑証明書は各相続人の住民登録地の市区町村役場で取り寄せ。

登記申請書を作成する

法務局のホームページで公開されている様式に従って登記申請書を作成します。(法務局HP:「不動産登記の申請書様式について」)

作成した登記申請書に、先に準備した必要書類を添付して法務局の窓口に提出します。

申請書の直後には、白紙の紙を挟み、その上に登録免許税を支払うための収入印紙を貼り付けます。その後、各種書類を綴じる際には、原本を後で返却してもらいたい場合に備え、コピーした書類に「原本と相違ありません」と記載し、署名と捺印を行っておくことをお勧めいたします。手続きの詳細については、法務局で相談するこもできます。

法務局に提出する

全ての書類が準備できたら、法務局に提出します。提出先は、その不動産の所在地を管轄する法務局です。

提出後、書類の審査が行われ、書類に不備がなければ、1週間~2週間程度で登記完了証と登記識別情報通知書が交付されます。交付予定日には法務局に取りに行く必要があります。もし提出書類に不備があった場合は、法務局から補正の指示があり、指示に従って書類を訂正し再提出する必要があります。

もし法務局に行くことが難しい場合は、郵送による申請も可能です。郵送の場合、登記申請書に登録免許税分の収入印紙を貼り、添付書類と返信用封筒を同封して送ります。書類の紛失を防ぐために、書留などの方法で送りましょう。ただし、郵送の場合でも補正が必要な場合は窓口に赴く必要があります。

名義変更にかかる費用

相続した土地の名義変更にかかる費用は、主に「必要書類の取得にかかる手数料」「登録免許税」「司法書士報酬」の3つです。以下の表に、それぞれの費用の詳細をまとめます。

費用の種類

費用の内容

費用の目安 

必要書類の取得にかかる費用

戸籍謄本(1通450円)や住民票(1通300円~400円)印鑑証明書(1通300円)などの取得に必要な費用。

数千円~1万円以内

登録免許税

土地や建物の評価額に基づいて算出される税金。評価額の合計に1000分の4を掛けた金額。100万円以下の土地は非課税。

評価額1000万円の場合は4万円

司法書士報酬

名義変更手続きを代行してもらう場合の報酬。内容の複雑さや相続人の数、不動産の個数によって変動する。

約10万円前後

 

土地を相続したら相続税がかかる

亡くなった親から土地や建物を相続する場合、名義変更の費用だけでなく相続税が発生する可能性があります。相続税は、故人の遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額に対して課税されます。基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」と定められています。

たとえば、被相続人の配偶者と子ども2人が相続人である場合、法定相続人の数は3人となるため、基礎控除額は「3000万円+(600万円×3)=4800万円」となります。この場合、遺産総額が4800万円を超えなければ、相続税は課税されません。

しかし、遺産総額が基礎控除額を超える場合には、超過分に対して相続税が課されます。相続税の税率は、相続財産の額に応じて変動し、最高で55%に達することがあります。

また、相続税が課せられる場合でも、相続した土地が「小規模宅地等の特例」の要件を満たすと、一定の条件のもとで減税されることがあります。
相続税に関する詳細な計算方法や特例の適用条件については、弁護士や税理士など専門家に相談することをお勧めします。

相続税を計算する際の土地の評価額は

相続した土地の相続税評価額をもとに、相続税を計算します。相続税評価額は、土地の実際の市場価格とは異なり低くなるのが一般的です。

土地の相続税評価額の計算には主に二つの方法があります。一つ目は、土地が接している道路ごとに決められた「相続税路線価」を用いる方法です。路線価は、その地域の地価公示価格の約80%程度に設定されており、土地の面積に路線価を掛けることで土地の相続税評価額を求めます。

二つ目は、路線価が設定されていない地域の土地に対する「倍率方式」です。この方法では、土地の固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて相続税評価額を計算します。倍率は地域や土地の特性によって異なり、税務署が定めることが一般的です。

土地の評価額については、下記記事で計算方法などを解説しております。あわせて参照してください。

土地評価額の調べ方と計算方法をわかりやすく解説│売値との違いも

小規模宅地の特例で相続税の引き下げを

小規模宅地等の特例を活用して相続税の負担を軽減しましょう。この制度は、相続によって土地を取得した際に、その土地の評価額を下げて節税できるものです。特に、被相続人が自宅として利用していた土地を配偶者が相続する場合、土地の評価額を最大80%引き下げることが可能です。

この特例が適用できるかは、土地の利用状況や相続人によって異なります。例えば、自宅用地以外にも、事業用地や賃貸用地など、特定の条件を満たす土地に対しても適用される場合があります。また、相続人が配偶者だけでなく、直系卑属(子供や孫)などである場合も、一定の条件下でこの特例を利用できます。

土地を相続する際には、まずこの小規模宅地等の特例が適用できるかどうかを確認することが大切です。適用できる場合は、相続税の負担を大幅に軽減することができます。具体的な適用条件や手続きについては、弁護士や税理士など専門家にご相談ください。

相続した土地を売却する際の注意点

必ず相続登記をしておく

土地を売却する前には、必ず被相続人の名義から相続人の名義に変更しておく必要があります。これは、土地の所有権を明確にしておくためです。たとえ相続人が土地を利用せずに売却する場合でも、名義変更は必ず必要です。

売却時に税金がかかる

土地の売却には、登録免許税、印紙税、譲渡所得税(所得税+住民税)がかかります。印紙税は売買契約書を作成する際に発生し、譲渡所得税は土地を売却して利益が出た場合に課税されます。

売却は3年以内に

相続した土地を売却する場合、3年以内に売却すると、譲渡所得税が軽減されます。また、固定資産税の支払いも免除されます。

相続した不動産の売却を検討されている方は、下記記事もあわせてご覧ください。

相続した不動産を売却する流れとかかる税金│特別控除など税金を抑える方法も

兄弟で土地を相続する際の注意点│トラブルを防ぐために

兄弟で土地を相続する際には、トラブルを防ぐためにいくつかの注意点があります。相続トラブルを防ぎたい場合は、遺産分割協議の際に弁護士に仲介してもらうことをお勧めします。

まずは、親が生存中に、兄弟間で土地や建物の相続について話し合っておくことが重要です。将来的なトラブルを避けるために、家族での意思疎通を図っておくことが大切です。

なお、兄弟間で土地を共有する方法は、将来の売却時に全員の同意が必要となるなどデメリットが多いため、おすすめしません。トラブルの原因となる可能性があるため、共有分割は選択しないようにしましょう。これらの点に注意して、兄弟間で円滑な土地相続を目指しましょう。

土地の相続トラブルを回避するための生前対策

遺言書を作成しておく

遺言を作成しておくことをおすすめいたします。遺言によって自身の意思を明確に示しておくことで、相続人間の争いを防ぐことができます。また、遺言には法的効果があるため、相続手続きがスムーズに進むなどのメリットがあります。

遺言には一般的に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の二つの形式があります。公正証書遺言は公証人役場で作成する遺言で、法的な保証が強い一方で、作成費用がかかるというデメリットがあります。一方、自筆証書遺言は特定の書式に従って自分で書く遺言で、自由に作成できる上に無料であるため、手軽に利用できます。

さらに、近年では自筆証書遺言保管制度が法務局によって開始されました。この制度を利用することで、自筆で書いた遺言を法務局で保管してもらえるため、遺言の紛失や偽造を防ぐことができます。また、死後に遺言の検認手続きを省略できるなど、さまざまなメリットがあります。遺言を作成し、適切に保管することで、相続時のトラブルを回過することができるでしょう。

生前贈与しておく

土地を生前贈与しておくのもよいでしょう。暦年贈与を活用すると、税金対策をしながら土地を贈与することができます。

暦年贈与とは、毎年一定額以下の財産を贈与することで、贈与税の非課税枠を利用して贈与税を節約する方法です。現在の制度では、年間110万円までの贈与が非課税となっています。この枠を利用して、毎年少しずつ土地の持分を贈与することで、贈与税の負担を軽減しながら、ゆっくりと土地を移転することが可能です。
この方法のメリットは、生前に自身の意思を反映させて土地を譲りたい人に贈与できる点です。また、贈与を受ける側にとっても、生前に土地を受け取ることで、将来の相続時におけるトラブルのリスクを減らすことができます。

ただし、生前贈与を行う際には、贈与する土地の評価額や贈与税の計算方法、非課税枠の活用方法など、さまざまな点に注意が必要です。そのため、生前贈与を検討する際には、弁護士や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

相続土地国庫帰属制度│土地を相続したくない場合

令和5年4月27日より、相続した土地を国が引き取る制度、「相続土地国庫帰属法(正式名称:相続などにより取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)」が開始されました。

相続または遺贈によって土地を取得した人が、一定の負担金を納付することを条件に、土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度です。この制度は、土地利用ニーズの低下などにより、相続した土地を手放したいと考える人が増加している背景から制定されました。

相続土地国庫帰属制度を利用することで、土地を国に引き渡すことが可能となります。しかし、所有者の申請に基づき、法務局による一定の審査を経て、要件を満たしていると判断された土地のみが国庫に帰属することになります。対象となる土地は、管理が困難であることや利用ニーズが低いことなど、一定の条件を満たす必要があります。

相続土地国庫帰属制度の詳しい内容については法務省のホームページ「相続土地国庫帰属制度について」で解説されていますので、そちらをご覧ください。

土地の相続に関するQ&A

Q: 土地の相続手続きの流れはどのようになっていますか?

A: 土地の相続手続きの流れは大まかに以下のようになります。まず、遺言の有無を確認し、相続人を確定するために必要な戸籍謄本や除籍謄本などを取得します。

次に、相続財産を調査しますが、土地を調べるためには固定資産税評価証明書や名寄帳を取得して漏れがないように把握します。

そして、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。その後、相続登記の申請を行うために、登記申請書などの書類を法務局に提出します。最後に、登記が完了すれば、土地の名義変更手続きは終了です。

Q: 相続した土地の名義変更はいつまでにする必要がありますか?

A: 相続した土地や建物の名義変更は、2024年4月1日以降は法律上義務化されました。相続人は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権の取得を知った時から3年以内」に名義変更しなければなりません。

正当な理由なく名義変更を怠った場合、10万円以下の過料に処される可能性があるため、早めに手続きを行うことが推奨されます。また、2024年4月1日以前に亡くなり、まだ相続人名義に変更されていない土地や建物も対象となるので注意が必要です。

Q: 相続した土地の名義変更は自分でできる?

A: 相続した土地の名義変更は自分で行うことも可能ですが、必要な書類をすべて揃えるのは大変な手間がかかります。戸籍謄本の取得や遺産分割協議書、登記申請書の作成には一定の法律知識が必要であり、誤りや記載不足があると法務局から訂正や差し替えを求められることもあります。戸籍謄本の取得に不慣れな人や書類作成が苦手な人は、最初から専門家に依頼することが得策と言えます。

Q: 相続した土地に関する税金はどのようなものがありますか?

A: 相続した土地に関する税金としては、主に相続税と固定資産税があります。相続税は、被相続人の死亡により相続が発生した際に、相続人が支払う税金です。

一方、固定資産税は、土地や建物などの不動産を所有している人が毎年支払う税金で、市町村が徴収します。相続した土地については、名義変更後に固定資産税の納税義務者となります。

Q: 相続した土地を売却する場合、どのような税金がかかりますか?

A: 相続した土地を売却する場合、売却益に対して所得税と住民税が課税されます。これを譲渡所得税と呼びます。譲渡所得は、売却価格から取得費(相続時の評価額など)と譲渡費用を差し引いた金額で計算されます。また、相続してから3年以内に売却した場合は、短期譲渡所得として税金が軽減されることがあります。税金の計算は複雑なため、弁護士や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

まとめ

不動産の相続には、戸籍謄本の取得から始まり、遺産分割協議書の作成、相続登記の申請に至るまで、多くの手続きが必要です。これらの手続きは複雑で時間がかかるため、専門家へ相談されることをお勧めいたします。

また、相続税の申告においては、特例の適用可否によって税額が大きく変動することがあります。相続手続きや税務申告に関する専門的な知識が必要となるため、弁護士や税理士へ一度は必ず相談するようにしましょう。さらに、相続した土地の名義変更は令和6年4月から義務化されるため、期限内に手続きを完了させるよう注意しましょう。手続きの概要や必要書類の準備に時間を確保できない場合は、弁護士や司法書士に名義変更手続きを依頼することを検討しましょう。

不動産の相続に関しては、早めの対策と適切な専門家への相談が、スムーズな手続きと税負担の軽減につながります。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。