亡くなった人の預金が少額の場合も手続きが必要?ゆうちょ銀行の簡易手続き方法も

相続手続き

更新日 2026.08.13

投稿日 2024.07.05

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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亡くなった方の預金が少額だと、相続手続きに戸惑ってしまう遺族は少なくありません。相続には手続的な負担が伴うにもかかわらず、遺産が少ないとその手間に見合わないと感じてしまいがちです。

しかし、たとえ少額であっても適切な手続きを怠ると、将来的に相続トラブルや財産権の問題が生じるおそれがあります。

そこで、この記事では、亡くなった人の預金が少額の場合に必要な手続きや、ゆうちょ銀行で利用できる簡易手続き方法について解説します。

目次

亡くなった人の預金が少額の場合も相続手続きは必要?

預金が少額であればそのまま放置してもいい?

亡くなった方の預金が少額であっても、一般的には通常の預金と同様に相続手続きを行います。

故人の預金残高が少額でも、相続手続きを行うかどうかは手間や費用を総合的に判断する必要があります。口座がまだ凍結されていない場合は、慌てて手続きを急ぐ必要はありません。その場合、口座を放置するという選択肢もあり得ます。

相続手続きには戸籍謄本や住民票などの公的書類を取得する必要があり、時間や費用がかかります。預金残高が非常に少ない場合、手続きにかかるコストが残高を上回ることもあるため、その際は相続手続きを見送ることも合理性があります。

また、最後の取引から10年以上が経過した口座は「休眠口座」となり、その預金は「休眠預金等活用法」に基づいて公益活動に活用されます。そのため、残高が少ない口座を放置することで間接的に公益に貢献することも可能です。ただし、休眠口座となった後でも正しい手続きを行えば預金を引き出せます。

このように、亡くなった方の預金が少額でも、相続手続きを行うかどうかは、手間や費用、公益への貢献など様々な要素を踏まえて判断することが大切です。状況に応じて、適切に選択しましょう。

少額の預金をそのままにするとどうなる?注意すべき点

ただし、相続手続きを見送る際には注意点もあります。一部の銀行では、長期間利用されていない口座に対して口座管理手数料を徴収することがありますので、事前に確認が必要です。

また、口座を放置すると、将来預金を払い戻す際に手続きが複雑になることがあります。

銀行口座は残高がゼロでも凍結される

故人の預金口座は、銀行に故人の死亡が通知されると、残高の有無にかかわらず凍結されます。これは、故人名義の口座を悪用した不正取引を防止するための措置です。

したがって、たとえ残高がゼロであっても、口座の正式な解約や凍結解除には、相続人による相続手続きが必要となります。

手続きの方法については後ほど詳しく解説します。

亡くなった人の預金が少額の場合も手続きが必要なケースは?

相続税の申告が必要な場合は残高ゼロであっても手続きを

被相続人の預金残高がゼロである場合でも、相続手続きが必要な場合があります。特に、被相続人の財産全体の価額が相続税の基礎控除額(法定相続人の人数により変動)を超える場合は、相続税の申告義務が生じ、残高ゼロの口座であっても税務署への申告が必要です。

相続税の申告には被相続人の全財産を正確に申告する必要があり、「残高がない」ことを証明するために、銀行から残高ゼロである旨の証明書(残高証明書や取引停止証明書など)の提出を求められる場合があります。

また、通帳の記帳が長期間行われていなかったり、通帳を紛失していたりする場合は、過去5年間の取引明細を銀行から取り寄せなければならない場合もあります。

相続人が複数いる場合

故人の預金が少額でも、相続人が複数いる場合は遺産分割協議が必要になることが多く、相続人間で誰がどのくらいの金額を相続するかを話し合って決定することが重要です。

この過程で作成される遺産分割協議書は、相続に関する合意内容を正式に記録する重要な書類です。相続人全員が署名および押印(実印が望ましい)することで、合意内容が正式に確定します。

たとえ預金残高が少額でも、遺産分割協議は原則として行うことが望ましいです。これにより相続人間のトラブルを防ぎ、将来の紛争リスクを減らせます。また、遺産分割協議書は金融機関で預金の引き出しや口座名義変更の際に必要となる場合があります。

亡くなった人の預金が少額の場合の手続き方法

①亡くなった人の全財産を調べる

亡くなった人の預金が少額でも、相続手続き開始前にまず故人の全財産を調査することが重要です。遺言書や財産目録があれば参考になりますが、必ずしも正確・完全とは限りません。例えば、最後の取引から一定期間利用されていない「休眠口座」など、故人も把握していなかった財産が存在する可能性もあります。

故人のキャッシュカードや通帳、銀行から届いた明細書や通知書などを確認し、隠れた資産や見落とした預金口座がないか確認します。全財産の把握は遺産分割や相続税申告の基礎となるため、丁寧かつ慎重に行うことが望ましいです。

②銀行へ名義人が死亡したことを連絡する

亡くなった方の預金が少額でも、名義人の死亡を正式に銀行に知らせることが大切です。

銀行への連絡はできるだけ早めに行いましょう。口座が凍結されれば、故人名義の預金が不正に引き出されるリスクを減らせます。また、銀行によっては死亡通知後に相続手続きの具体的な案内が受けられます。

③必要書類を銀行に提出する

亡くなった方の預金が少額でも、口座の凍結を解除し相続手続きを完了するには、銀行に必要書類を提出しなければなりません。この段階では、故人の死亡を証明する書類と相続人の決定を示す書類が中心です。

具体的には、以下のような書類が必要となります。

  • 故人の死亡が記載された戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名および押印が必要)
  • 相続人の身分を証明する書類(運転免許証、パスポートなど)
  • 印鑑証明書(遺産分割協議書に押印した印鑑のもの)

これらの書類を銀行に提出することで口座の凍結解除や預金の引き出しが可能となります。提出方法は窓口への持参または郵送があり、窓口に直接出向くほうが郵送より手続きが早い場合があります。

必要書類や手続きの詳細は金融機関により異なるため、事前に確認しておくことが大切です。また、手続きには相続人全員の合意が求められることもあるため、相続人間で十分に話し合うことが望ましいです。

亡くなった人の預金の解約方法については、以下の記事に詳しく解説していますので参照してください。

 

亡くなった人の預金が少額の場合の手続き方法

ゆうちょ銀行は預金が少額の場合、簡易手続きが可能

ゆうちょ銀行では、貯金総額が100万円以下の場合、代表相続人1人で解約や払戻しができる簡易相続手続きが認められています。

この簡易手続きを利用すれば、葬儀費用などの支払いにもスムーズに対応できます。

ゆうちょ銀行の預金残高の合計が100万円以下の場合に利用可能

ゆうちょ銀行では、亡くなった方が保有していた口座の預金残高の合計が100万円以下の場合、簡易な相続手続きを利用できます。これは少額の預金について手続きを簡略化し迅速に対応するための制度です。

簡易手続きの対象かどうかは、通常貯金、定期貯金、総合口座など故人が保有していた全てのゆうちょ銀行口座の残高を合計して判定します。例えば、通常貯金口座に50万円、定期貯金口座に40万円があれば、合計90万円となり簡易手続きの対象となります。

一方、合計残高が100万円を超える場合は簡易手続きは利用できず、通常の相続手続きを行う必要があります。この場合は戸籍謄本や遺産分割協議書など、より詳細な書類の提出が求められます。

ゆうちょ銀行の簡易手続きの流れ

  1. 最寄りのゆうちょ銀行の窓口に行く: まず、相続人または代表者が故人が保有していたゆうちょ銀行の口座に関する情報を持って、最寄りの窓口に行きます。
  2. 残高の確認と判断: 窓口の担当者が故人の口座の残高を調べ、合計が100万円以下であるかどうかを確認します。100万円を超えている場合は簡易手続きが利用できず、通常の相続手続き必要です。
  3. 簡易手続きの実施: 残高が100万円以下と判断されると、相続代表人は「貯金等相続手続請求書」に必要事項を記入します。この請求書は代表人1人で記入でき、相続人全員の実印や印鑑証明書の提出は不要です。

通常の相続手続きでは相続人全員の実印が必要で、全員の署名押印を得るための手間がかかります。一方、ゆうちょ銀行の簡易手続きはこの手間を省けるため、相続人の時間と労力を節約できます。

簡易手続きの必要書類

ゆうちょ銀行の預金が少額で簡易手続きを行う際に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 貯金等相続手続請求書
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
  • 被相続人と代表相続人との関係を証明する戸籍謄本
  • 被相続人の通帳や証書
  • 代表相続人の印鑑証明書
  • 代表相続人の実印
  • 代表相続人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなど)

簡易手続きの場合は、代表相続人が単独で手続きできます。

そのため、他の相続人が知らない間に解約手続きを行うことも可能です。しかし、以下のような点に注意が必要です。

預金が少額であっても相続手続き前の預金の引き出しには注意

勝手に預金を引き出してはいけない│相続トラブルに発展する可能性がある

預金が少額であっても、相続手続きを進める際には慎重な対応が求められます。相続手続きでは、全ての相続人の同意を得て進めていくことが一般的です。

しかし、ゆうちょ銀行のように簡易手続きを設けている金融機関では、代表相続人が単独で手続きできます。他の相続人が知らないまま口座の解約や預金の払い戻しが行われると、無断で相続手続きを進めたとして、相続人間でトラブルに発展するおそれがあります。ゆうちょ銀行での簡易手続きは問題なくできたとしても、他の相続人に十分な説明を行わなかったことで、その後の手続きがスムーズに進まなくなる可能性もあります。

たとえ全体から見ればわずかな金額であっても、全ての相続人に説明し、了解を得ながら進めていくことをおすすめします。

相続放棄できなくなる

故人の負債が多い場合や相続する土地の管理が難しい場合などは、相続放棄を検討することになります。この場合、故人の口座からのお金の引出しは慎重に判断してください。なぜなら、故人の口座から出金する行為は、単純承認とみなされ、その後に相続放棄ができなくなるおそれがあるからです。したがって、故人のお金を引き出す前に弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

ただし、例外的に、亡くなった方の葬儀費や墓石代などの必要経費の引出しについては、単純承認とはみなされないケースがあります。そのため、使途を明らかにする領収書や明細書はすべて保管しておくことが必要です。後々のトラブルに備えて紛失しないようにしてきましょう。

たとえ故人の預金が少額であっても、相続手続き前の引き出しには慎重な対応が求められます。具体的な相続手続きや適切な対応が分からないという場合には、必ず専門家に相談するようにしてください。

預金が少額の場合で負債が多いときは相続放棄の検討を

被相続人が保有している銀行口座の預金が少額で、さらにそれを上回る負債(ローンなど)がある場合、相続放棄を検討すべきです。このような場合、相続人には負債しか残らない可能性が高いからです。

また、たとえ預金が負債を上回っている場合でも、その差がわずかである場合にも相続放棄を検討すべきです。相続手続きには、凍結された銀行口座の解除や相続財産の分配など、時間と手間がかかります。さらに、すべての共同相続人の合意を得ながら、さまざまな書類を集めて銀行に提出しなければなりません。

一方、相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになるため、面倒な相続手続きから離脱できます。ただし、相続放棄には期限があるので、早めに専門家に相談のうえ、迅速に家庭裁判所に申述する必要があります。

預金が少額の場合は生前に解約を

口座名義人の生前に全額を引き出しておけば、死後、金融機関での相続手続きを行う必要はなくなります。これは、特に預金が少ない場合に、手間と時間を節約する方法として有効です。

名義人が自分で引き出しに行けない場合、代理人に依頼することができます。ATMではキャッシュカードと暗証番号があれば引き出せますが、1日の引き出せる金額には上限があるため注意が必要です。例えば、ゆうちょ銀行の引き出し限度額は50万円までとなっています。ただし、この限度額はご自身で変更することができます。

一方、窓口での引き出しには限度額が設定されていませんが、本人以外が引き出す場合は委任状が必要になります。委任状は金融機関で入手できるほか、ウェブサイトからダウンロードできる場合もあります。

さらに、本人が認知症などで委任状を作成できない場合には、成年後見制度の利用を検討することになります。この制度を利用すれば、法定代理人が選定され、口座からの引き出しなどが可能になります。

したがって、預金が少額の場合は、生前に解約しておくことで、相続時の手続きを簡素化できる可能性があります。しかし、預金を解約するには、事前に適切な計画と準備が必要となります。

亡くなった人の預金が少額の場合の相続手続きに関するQ&A

Q1.亡くなった人の預金が少額の場合、そのまま放置するとどのような問題が生じますか?

A:預金残高が少額の場合でも、解約手続きを放置するといくつかの問題が生じる可能性があります。まず、たとえ少額だとしても、相続税申告が必要な場合には、残高証明書を取得する必要があります。この残高証明書の取得には手数料がかかる可能性があります。

故人名義の口座が多い場合、相続後に預金の解約手続きをする相続人の負担が大きくなりがちです。さらに、長期間放置された預金口座は「休眠口座」に移行している可能性があります。休眠口座内の預金は公益目的で活用される場合もあります。

したがって、生前から使用していない預金口座の整理を行うことをおすすめします。

Q2.亡くなった方の貯金額が100万円以下の場合、ゆうちょ銀行の簡易手続きを利用するメリットは何ですか?

A:亡くなった方の貯金額が100万円以下であれば、ゆうちょ銀行であれば簡易手続きを利用することができます。

代表となる相続人が「貯金等相続手続請求書」に必要事項を記入して提出すれば、通常よりも早く払い戻しを受けられます。すべての相続人の署名・押印や印鑑証明書の提出は必要ないため、手間や時間の負担が大幅に軽減されます。

これは、相続人の負担を減らし、効率的に相続手続きを進めるための便利な制度です。

Q3.亡くなった方の預金が少額の場合、相続手続き前に預金を引き出す際のリスクはどのようなものがありますか?

A:亡くなった方の預金が少額であっても、相続手続き前に預金を引き出す際には以下のリスクがあります。

  1. 相続トラブルの可能性
    相続人が複数いる場合、代表相続人が単独で預金を引き出すと、他の相続人との間でトラブルに発展するおそれがあります。金融機関で簡易手続きを利用する場合には、他の相続人への十分な説明が求められます。
  2. 相続放棄ができなくなる
    引き出しを行うことで、相続が単純承認されたとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。ただし、亡くなった方の葬儀費や墓石代などの必要経費のための引き出しの場合には、単純承認とならない場合があります。したがって、使途を証明する領収書や明細書は適切に保管しておくことが重要です。

まとめ

亡くなった方の預金が少額であっても、相続手続きは必要です。預金額に関わらず、正式な手続きを行うことで将来的なトラブルを回避できます。ゆうちょ銀行では、預金残高が100万円以下の場合、簡易手続きを利用できるため、手間を減らすことが可能です。

しかし、相続放棄を検討する際や、他の相続人がいる場合には、適切な相談や協議が必要になります。故人の財産と負債の全体像を把握し、相続人全員で納得のいく解決策を見つけられることが理想的です。

相続に関する手続きや疑問点がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。