遺産相続の期限【完全版】相続手続きの期限はいつまで?遺産分割協議や預金の相続に期限はある?

遺産相続の手続きには、「いつまでにやらなければいけない」という期限が法律によって決められているものがあります。ですので、家族や親族が亡くなり、何かと慌ただしい中で、相続手続きを進めていかなくてはなりません。
手続きの期間内にスムーズに完了させるためには、あらかじめ遺産相続手続きの期限をしっかり把握しておくことが重要です。
そこでこの記事では、遺産相続の手続きはそれぞれいつまでに行わなければならないのか、期限を解説させていただきます。遺産相続について知りたい方や、今まさに遺産相続に直面している方にとって、本記事が少しでもご参考になりましたら幸いです。
目次
遺産相続の期限
1.遺産相続に期限はある?
遺産相続は、大きく4つの段階に分けることができます。
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遺産相続をするかしないか判断する。
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相続人ごとの具体的な相続分について取り決める。
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不動産の相続登記や預貯金の解約といった相続手続きをする。
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相続税の申告と納付をする。
そして、それぞれの段階ごとに必要な手続きがあり、その中には期限が定められているものもあります。
ところで、以下でご紹介する遺産相続手続きに期限が設けられているのは、相続財産の帰属を早期に確定させ、遺産共有状態を解消し、なるべく早めに取引関係や法的関係を安定させるためです。
たとえば、相続財産が誰のものになるのかが決まらないと、被相続人に金銭を貸していた相続債権者等が、誰に返済を請求できるのかが不明になり、相続債権者の利益がいつまでも保護されないままとなってしまいます。あるいは、土地や家屋の所有者がいつまでも不明なまま不動産が放置され、公共事業や不動産の売却、土地の利活用が阻害されてしまい、管理不全となった土地が隣接地に悪影響を及ぼすこともあるでしょう。
こうした問題が生じないよう、遺産相続手続きに期限を設けることで、相続人自身の法的地位が安定し、社会全体の法律関係が円滑に機能しているのです。
2.遺産相続の期限一覧
それではさっそく、遺産相続の手続きの中で期限が定められているものを確認していきましょう。期限のある遺産相続手続きを一覧にまとめますと、下表のとおりになります。
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期限 |
手続き |
解説 |
|---|---|---|
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3ヶ月以内 |
相続放棄や限定承認の申出 |
相続人が相続財産を放棄したり、負債の範囲内でのみ相続を承認する「限定承認」を選択する場合、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。 |
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4ヶ月以内 |
被相続人の準確定申告 |
被相続人が亡くなった年の所得税について、亡くなった日から4ヶ月以内に遺族または相続人が準確定申告を行う必要があります。 |
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10ヶ月以内 |
相続税申告と納税 |
相続税が発生する場合、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税を行う必要があります。 |
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1年以内 |
遺留分侵害額の請求 |
遺留分(法定相続分の一定割合)が侵害された場合、相続人は遺留分侵害額の請求をすることができますが、その請求は被相続人の死亡を知った日から1年以内に行う必要があります。 |
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3年以内 |
死亡保険金の請求 |
生命保険の受取人が死亡保険金を受け取る場合、通常は被保険者の死亡を知った日から3年以内に請求する必要があります。 |
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3年以内 |
不動産の名義変更 |
相続登記は所有権の取得を知った日、または遺産分割が成立した日から3年以内に行う必要があります。期限を過ぎると違約金が発生することがあるため、注意が必要です。 |
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申告期限から5年以内 |
相続税の還付 |
過払いなどにより相続税が還付される場合、相続税の申告期限から5年以内に還付請求を行う必要があります。 |
この記事では、それぞれの手続きの期限について、以下で具体的に見ていきたいと思います。
遺産相続手続きの期限はいつまで?
1.市区町村役場での手続き:7日・14日以内
さて、遺産相続に関する手続きではありませんが、被相続人が亡くなった場合に、まず市区町村役場で行わなければならない手続きがあります。
1-1.死亡届の提出
① 同居の親族、② その他の同居者、③ 家主、地主または家屋もしくは土地の管理人などは、被相続人が亡くなった場合、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡があったときは、その事実を知った日から3ヶ月以内)に、死亡届を提出しなければなりません(戸籍法第86条1項)。
戸籍法第86条1項 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
死亡届は、死亡者の本籍地・死亡地または届出人の住所地・所在地の市区町村役場に提出します。
死亡届書の用紙は、死亡診断書・死体検案書と一体化していることが一般的です。被相続人の死亡を診断した医師に記入してもらう必要がありますが、やむを得ず書面を得ることができない場合は、届出先の市区町村に問い合わせて、手続きを進めましょう。
1-2.死亡診断書や死体検案書の受領
人が亡くなると、その死の経緯によって「死亡診断書」もしくは「死体検案書」が医師から交付されます。基本的に、医師の診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したような場合は「死亡診断書」が交付され、それ以外の場合(診療外での死亡、事故死、不審死など)は、警察への届け出や検視等を経た上で「死体検案書」が交付されます。
前述の死亡届の書式を一体になっていることが通常ですので、死亡診断書等を受領したら、死亡の事実を知った日から7日以内に死亡届として市区町村役場に提出することになるでしょう。
1-3.死体火(埋)葬許可証交付申請書の提出
遺体を火葬・埋葬するためには、市区町村長の許可が必要です。許可を得るために、死体火(埋)葬許可証交付申請書を提出し、死体火葬許可証の交付を受けることになります。
実務では、死亡届と同時に埋火葬許可申請を行い、埋火葬許可証を受領することが一般的です。死体火(埋)葬許可証交付申請書の提出自体に法律で定められた期限はありませんが、手続上の前提となる「死亡届」の提出期限が「死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡したときは3ヶ月以内)」と定められていることからも、実質的に死亡届の提出期限である「死亡の事実を知った日から7日以内」が死体火(埋)葬許可証交付申請書の提出期間となるでしょう。
なお、実際には、相続人らではなく、葬儀業者が死亡届と火葬許可申請書の提出を行っていることも少なくありません。
1-4.世帯主の変更(残された世帯員が2人以上の場合)
死亡届が受理されることによって、住民票は消除されます。世帯主が亡くなり、その世帯に2人以上の世帯員が残っている場合は、14日以内に世帯主変更届を提出する必要があります(住民基本台帳法第25条)。もし、提出が遅れたことに正当な理由がない場合は、5万円以下の過料に処されることがあるため、注意しなければなりません(戸籍法第137条)。
(世帯変更届)
住民基本台帳法第25条 第二十二条第一項及び第二十三条の場合を除くほか、その属する世帯又はその世帯主に変更があつた者(政令で定める者を除く。)は、その変更があつた日から十四日以内に、その氏名、変更があつた事項及び変更があつた年月日を市町村長に届け出なければならない。戸籍法第137条 正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、五万円以下の過料に処する。
1-5.国民年金、厚生年金の受給停止の手続き
年金受給者が死亡した場合、その受給権を喪失するため、遺族等の届出義務者は速やかに「受給権者死亡届(報告書)」を提出する必要があります。
国民年金の場合は、死亡した日から14日以内が期限となっています(国民年金法第105条4項・5項)。厚生年金保険の場合は、死亡した日から10日以内が期限となっています(厚生年金保険法第98条4項)。
国民年金法第105条4項 被保険者又は受給権者が死亡したときは、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の規定による死亡の届出義務者は、厚生労働省令の定めるところにより、その旨を第三号被保険者以外の被保険者に係るものにあつては市町村長に、第三号被保険者又は受給権者に係るものにあつては厚生労働大臣に届け出なければならない。ただし、厚生労働省令で定める被保険者又は受給権者の死亡について、同法の規定による死亡の届出をした場合(厚生労働省令で定める場合に限る。)は、この限りでない。
国民年金法第105条5項 第十二条第六項から第九項までの規定は、第三号被保険者に係る前項の届出について準用する。この場合において、同条第六項中「第三号被保険者」とあるのは、「第三号被保険者の死亡に係るもの」と読み替えるものとする。
厚生年金保険法第98条4項 受給権者が死亡したときは、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の規定による死亡の届出義務者は、十日以内に、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。ただし、厚生労働省令で定める受給権者の死亡について、同法の規定による死亡の届出をした場合(厚生労働省令で定める場合に限る。)は、この限りでない。
1-6.国民健康保険・介護保険の資格喪失の手続き
国民健康保険の被保険者が死亡した場合、死亡した日から14日以内に、各健康保険の窓口(市区町村役場)へ被保険者資格喪失届を提出しなければなりません(国民健康保険第9条、国民健康保険法施行規則第12条)。
(都道府県の区域内に住所を有しなくなつた者に係る資格喪失の届出)
国民健康保険法施行規則第12条 都道府県の区域内に住所を有しなくなつたため、被保険者の資格を喪失した者があるときは、その者の属していた世帯の世帯主は、十四日以内に、次に掲げる事項を記載した届書を、当該世帯主が住所を有していた市町村に提出しなければならない。
一 被保険者資格を喪失した者の氏名、個人番号及び世帯主との続柄
二 資格喪失の年月日及びその理由
三 変更後の住所
四 被保険者記号・番号
そして、65歳以上の人、または要介護認定・要支援認定を受けていた人が死亡した場合には、届出義務者は死亡から14日以内に市区町村役場へ「介護保険資格喪失届」を提出しなければなりません(介護保険法第12条4項、介護保険法施行規則第32条)。
(届出等)
介護保険法第12条4項 被保険者は、その資格を喪失したときは、厚生労働省令で定めるところにより、速やかに、被保険者証を返還しなければならない。(資格喪失の届出)
介護保険法施行規則第32条 被保険者証交付済被保険者は、被保険者の資格を喪失したときは、十四日以内に、次に掲げる事項を記載した届書を、市町村に提出しなければならない。
一 氏名
二 資格喪失の年月日及びその理由
三 住所の変更により資格を喪失したときは、変更後の住所
四 個人番号
五 被保険者番号
なお、故人が会社員などとして協会けんぽや組合健保(社会保険)に加入していた場合は、手続きの期限は国民健康保険の場合よりも厳格です。死亡した日から5日以内に、事業主等を通じて年金事務所または健康保険組合へ、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を提出しなければならないとされています(健康保険法第48条、健康保険法施行規則第29条、厚生年金保険法第27条、厚生年金保険法施行規則第15条)。
2.相続放棄や限定承認:3ヶ月以内
続いて期限の早いものは、遺産相続の承認・放棄です。相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選択しなくてはなりません(民法第915条1項)。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法第915条1項 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
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単純承認
被相続人の財産(プラス・マイナスの両方)をそのまま引き継ぐ方法です。特別な手続きは不要で、3ヶ月以内に相続放棄や限定承認を行わなければ、自動的に単純承認したとみなされます。また、熟慮期間中に相続財産を処分したり使用したりすると、単純承認したとみなされます。 -
限定承認
プラス財産の範囲内でマイナス財産を引き継ぐ方法です。共同相続人全員の同意が必要で、共同相続人の全員が共同して家庭裁判所で申述の手続きを行わなければなりません。実際に限定承認が利用されるケースは少ないです。 -
相続放棄
相続人としての権利を放棄するため、プラス財産もマイナス財産も一切引き継がないことになります。家庭裁判所で相続放棄の申述という手続きを行うことで、相続の開始時から相続人ではなかったことになります。
3ヶ月を超えると、相続放棄と限定承認を選択することができなくなり、「単純承認」したことになります。すると、仮に被相続人に借金があった場合には、相続人が弁済しなければならないことになってしましまうのです。
なお、相続放棄・限定承認ともに熟慮期間は3ヶ月ですが、どうしても3ヶ月以内に決定できないときは、熟慮期間伸長の申立てを検討しましょう。伸長の申立てが認められると熟慮期間が1~3ヶ月程度伸長されるので、相続財産の調査に時間がかかる場合などには、家庭裁判所で申立てをしておくことをおすすめいたします。
3.所得税の準確定申告:4ヶ月以内
被相続人が生前に確定申告をすべき収入を得ていた場合は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に、相続人が被相続人の亡くなった年の所得に対する確定申告(準確定申告)を行う必要があります。確定申告義務のある者が、翌年1月1日から申告期限(3月15日)までに申告書を提出せずに死亡した場合についても、前年分について申告しなければなりません(所得税法第124条、同第125条)。準確定申告が必要なケースは、被相続人が以下のような場合です。
- 事業所得がある場合(事業主やフリーランスなど)
- 不動産所得がある場合
- 年収が2,000万円以上の場合
- 2箇所以上の会社から収入がある場合
- 公的年金を年間400万円以上受け取っていた場合
- 給与や退職金以外で年間20万円以上の収入があった場合
- 生命保険の満期金や一時金を受け取った人
期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税が課されてしまう可能性があるため、4ヶ月以内という期限に注意が必要です。
参考:納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)(国税庁)
4.相続税の申告・納付:10ヶ月以内
遺産相続が終わったら、相続税の申告・納付をすることになります。相続税に関しては、相続が開始されたことを知った翌日から10ヶ月以内に申告と納税を完了させなければなりません(相続税法第27条1項、同大33条)。
そのため、10ヶ月以内に各相続人の相続分を確定させて、相続財産の評価額の合計を算出し、申告書や書類を整え、被相続人の死亡時における住所地を所轄する税務署に提出し、納付までをしなければなりません。
もし遺産分割協議が整わず、10ヶ月の期限までに申告が間に合わない場合には、期限の延長ができないため、定相続分に基づいた遺産分割で暫定的に申告をしておき、最終的な遺産分割が決まったら、修正申告や更正の請求を行うようにしましょう。
なお、相続税は金銭による納付が原則ですが、10ヶ月の期限内に納税資金を用意するのが難しい場合には、「① 相続税額が10万円を超えており、② 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内である場合に、③ 延納税額および利子税額に相当する担保を提供すること」で、延納(相続税の分割納付)の申請をすることができます。延納によっても金銭で納付することが難しい場合には、例外的に相続財産による現物納付(物納)も認められます(相続税法第41条)。
配偶者に対する税額軽減や小規模宅地等の特例が適用されると、相続税を減免することができます。ですが、こうした特例は原則として、申告期限までに遺産分割が行われていることが適用要件となっています。つまり、10ヶ月以内に遺産が未分割の場合は、特例を適用できなくなってしまうのです。
こうした場合に備えて、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しましょう。相続税の申告時に申告期限後3年以内の分割見込書を添付して提出すると、申告期限から3年以内に遺産分割が成立した場合、更正の請求によって特例の適用を受けることが可能となります。
参考:相続税の申告と納税(国税庁)
5.遺留分侵害額請求:1年以内
遺留分とは、配偶者、子、親など兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる、最低限相続できる割合を定めたものです。遺留分を侵害する相続や生前贈与があった場合、遺産を多く受け取った人に対して、遺留分相当額の金銭を請求することができます(遺留分侵害額請求)。
遺留分を請求する権利は、遺留分権利者が「相続の開始」および「遺留分を侵害する贈与または遺贈」があったことを知った時から1年以内に行使しなければ、時効により消滅します。また、相続の開始などを知らない場合であっても、相続開始から10年が経過すれば、除斥期間の経過により遺留分を請求することができなくなります(民法第1048条)。
(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
民法第1048条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
遺留分の請求権を消滅させないためには、期限内に適切な方法で意思表示する必要があります。実務上は意思表示したことの証拠を残すため、内容証明郵便が利用されることが一般的です。
遺留分の時効の問題については、こちらの関連記事をぜひご覧ください。
6.死亡一時金の受取請求:2年以内
一定の条件を満たした遺族に対し支払われる年金として、「死亡一時金」の制度があります。
国民年金制度における「死亡一時金」については、被相続人が死亡した日の翌日から起算して2年以内に請求しなければなりません(国民年金法第102条4項)。
国民年金法第102条4項 保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び死亡一時金を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によつて消滅する。
また、労災保険制度における「遺族(補償)等年金前払一時金」や「長期家族介護者援護金」も、死亡日の翌日から2年が期限となっています(労働者災害補償保険法第42条1項)。
労働者災害補償保険法第42条1項 療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、複数事業労働者療養給付、複数事業労働者休業給付、複数事業労働者葬祭給付、複数事業労働者介護給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したとき、障害補償給付、遺族補償給付、複数事業労働者障害給付、複数事業労働者遺族給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から五年を経過したときは、時効によつて消滅する。
7.死亡保険金の請求:3年以内
被相続人が生命保険に加入していた場合、指定された受取人は死亡保険金を受け取ることができます。保険金請求期限は3年となっており、3年を過ぎると保険金請求権は時効により消滅していまいますので、速やかに手続きを行いましょう(保険法第95条1項)。期限の起算点は、原則として被保険者の死亡時(保険事故発生時)から進行します。
(消滅時効)
保険法第95条 保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。
2 保険料を請求する権利は、これを行使することができる時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。
なお、かんぽ生命の場合、期限は5年以内とされています。
8.相続した土地や家屋の名義変更:3年以内
被相続人が土地や家屋を所有していた場合は、その不動産の名義変更(相続登記)が必要です。相続登記は2024年4月1日より義務化されておりますので、不動産を取得したことを知ってから3年以内に手続きをしないと、10万円以下の過料に処される可能性があります(不動産登記法第76の2、同第164条)。
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
不動産登記法第76の2 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
3 前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
そのため、遺言や遺産分割協議によって不動産の権利関係が明らかになった時点で、速やかに相続登記を行うようにしましょう。
9.相続税の更正の請求(還付):5年以内
相続税を納付した後、計算が誤っていて相続税を払い過ぎてしまったことがわかった場合、税務署に申告することで還付を受けることができます。請求の理由が「当初からの計算・評価誤り」の場合の更正請求の期限は、法定申告期限から5年以内です(国税通則法23条1項)。
(更正の請求)
国税通則法23条1項 納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から五年(第二号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、十年)以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第二十六条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があつた場合には、当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。
一 当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。
二 前号に規定する理由により、当該申告書に記載した純損失等の金額(当該金額に関し更正があつた場合には、当該更正後の金額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があつた場合には、更正通知書)に純損失等の金額の記載がなかつたとき。
三 第一号に規定する理由により、当該申告書に記載した還付金の額に相当する税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があつた場合には、更正通知書)に還付金の額に相当する税額の記載がなかつたとき。
つまり、更正の請求をする場合は、相続が開始された翌日から計算すると「5年10ヶ月以内」に申請する必要があるのです。
もし相続税を過払いしている可能性がある場合は、早めに税理士や弁護士などの専門家に相談し、還付請求の手続きを進めることをおすすめいたします。
期限の定められていない遺産相続手続き
ところで、遺産相続手続きにおいては、期限の定められていない手続きもあります。ですが、他の手続きの期限との兼ね合いや実務上、期限が定められていないとはいえ、なるべく早めに行うべきと考えられています。
1.遺産分割協議
遺言書が存在しない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合、相続人と相続財産が確定した後に、「遺産分割協議」を行う必要があります。遺産分割協議では、相続人全員が集まって、遺産をどのように分割するかを話し合います。
遺産分割協議には厳密な期限は設けられていませんが、相続税申告は被相続人の死亡から10ヶ月以内に行う必要があるため、遺産分割協議もそれまでに終わらせることが望ましいでしょう。
2.銀行口座の解約・変更
被相続人が取引していた銀行や証券会社などの金融機関で、解約(払い戻し)や名義変更の手続きをする必要があります。預金の解約・変更手続きにも明確な期限はありませんが、預金を相続する人が確定したら、出来るだけ速やかに手続きを行いましょう。
10ヶ月以内に銀行口座の解約・変更手続きを行えば、相続税の支払いに被相続人の相続財産を充てることができるので、相続税申告に間に合うように手続きを完了させることをおすすめいたします。
ところで、期限がないからといって被相続人の銀行口座をそのまま放置しておくと、解約手続きが煩雑になってしまう可能性があります。
銀行口座は、取引のないまま10年が経過すると、「休眠口座」として扱われ、預金保険機構に移管されます(民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律)。通帳残高が1万円以上あれば、休眠口座にはなりませんが、転居などで通知が届かない場合は休眠口座となります。
たとえば、定額郵便貯金が郵便貯金法57条1項により通常郵便貯金となった後10年を経過した場合について、分割払戻しの認められないいわゆる睡眠貯金となったとして、相続人の自己の持分のみの分割払戻請求が排斥された判例(東京地法裁判所平成13年8月31日判決)もあり、手続きがより複雑化する恐れがあるのです。
銀行によっては、不正口座の作成・利用の防止や口座の維持・管理に係る費用の充当を目的とし、2年以上未利用の普通預金口座について、未利用口座管理手数料を徴収するところもあります。口座残高が未利用口座管理手数料未満の場合は、口座残高から未利用口座管理手数料の一部として引き落とされた上で、口座が解約されることになりかねません。
参考:未利用口座管理手数料(2021年7月以降に新たに普通預金口座を開設されるお客さま)(三菱UFJ銀行)
また、反対に銀行口座が凍結できていない場合は、他の相続人が勝手に預金をひきだして使い込む可能性もあります。
そのため、被相続人の預金の相続人が決まったら、出来るだけすみやかに銀行口座の解約や名義変更などの手続きを行いましょう。
3.遺言書の検認
遺産相続においては被相続人の意思が最優先されるため、まず遺言書の有無を確認しなければなりません。法定の方式によって遺言が作成されたかを確認し、遺言書の存在を明らかにして、偽造や変造を防止するために現状を保存するためです。
そして、「公正証書遺言と自筆証書遺言書保管制度により法務局に保管されている遺言書」を除いた遺言書があった場合は、遅滞なく家庭裁判所で検認を請求する必要があります(民法第1004条)。
(遺言書の検認)
民法第1004条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
「遅滞なく」の具体的な期間についてですが、そのケースにおいて合理的期間内に手続きを行えば足り、正当な理由による遅れは許容される余地がある、と考えられています。ですが、実務上は不動産の相続登記や銀行手続などの前提条件となっておりますし、遺産分割を終えた後に遺言書のあることが判明した場合、遺産分割の内容が覆されてしまうこともあるため、相続の開始と遺言書の存在を把握したら、速やかに家庭裁判所で遺言書の検認手続きを行うことが推奨されます。
その他にも、遺産相続に関する手続き全般についてこちらの関連記事で解説しておりますので、ぜひ本記事とあわせてご覧ください。
遺産相続手続きの期限を過ぎたら
1.遺産相続手続きの期限を過ぎた場合のペナルティ
以上でご紹介した遺産相続手続きの期限を過ぎてしまうと、次のような不利益を被ることになってしまいます。
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相続放棄・限定承認(3ヶ月)
期限を過ぎると単純承認したものとみなされ、自動的に被相続人の財産だけでなく負債も相続することになってしまいます。 -
所得税の準確定申告(4ヶ月)
税務調査の結果によっては、本来納めるべき税金に加えて、延滞税や無申告加算税、さらには重加算税が追加で課される可能性があります。 -
遺留分侵害額請求(1年)
相続開始を知った日から1年以内に遺留分侵害額請求をする権利を行使しなければ、消滅時効によって権利が失われるため、遺留分を請求できなくなってしまいます。 -
不動産の相続登記(3年)
不動産の相続登記を行わないと、10万円以下の過料に処される可能性があります。 -
相続税申告(10ヶ月)
相続税申告の期限を過ぎた場合、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、農地等の納税猶予の特例、非上場株式等に関する贈与税の納税猶予及び免除の特例など、税金を軽減するための様々な制度を利用できなくなります。相続税の延納や物納の制度も利用できず、延滞税や無申告加算税が課税される可能性もあります。
相続が始まったら、なるべく迅速に手続きを進めていき、もし自分自身で手続きをするのが難しいときには、なるべく早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。
2.遺産相続を期限内に完了させるポイント
遺産相続の手続きを期限内に終わらせるためには、特に以下の点に意識して進めていくことが重要です。
-
制度ごとに異なる法的期限を正確に把握しておき、あらかじめどの手続きを優先して行うか、スケジュールを確認しておく。
-
遺言を残すことを生前に認識できていれば、相続開始後すぐに遺言書を確認し、必要であれば検認の申立てをする。
-
相続開始後、相続人の確認のための戸籍謄本等の収集を迅速に進め、同時に相続財産も確認して一覧にするなど、整理しておく。
-
整理した情報をもとに、遺産分割協議を落ち着いて進める。話し合いで合意できそうになければ調停も活用する。
特に、相続人間での話し合いは、感情的になってしまうと意見がますます対立して長引いてしまい、その後の相続手続きの期限が差し迫ってしまいかねません。何事も冷静に対処し、必要であれば弁護士などの専門家に相続手続きを依頼しましょう。
遺産相続の期限に関するQ&A
Q1.遺産相続手続きに期限はないのに、なぜすぐに行うべきだとされているのでしょうか?
A:期限がない遺産相続手続きでも、以下の理由から迅速に進めることが重要です。
- 財産の利用や処分ができない
亡くなった方の遺産は、相続手続きが終わるまで相続人全員の共有財産となります。そのため、手続きが完了するまで、相続人が勝手に預金を引き出したり、不動産を売却したりすることはできません。 - 相続人の関係が複雑となる
相続手続きが終わらないうちにさらに相続人が亡くなると、遺産相続や相続人が増え、相続手続きがより複雑になる恐れがあります。 - 多額の借金を背負う可能性も
相続財産の確認が遅れると借金のあることに気付かず、3ヶ月の期間内で相続放棄できなかった、といったことになりかねません。相続放棄の期限を過ぎてしまうと単純承認したものとみなされますので、多額の借金を負うリスクがあります。
Q2.遺産分割協議書はいつまでに作成しなければなりませんか?
A:遺産分割協議書の作成に、法定の期限はありません。ですが、金融機関などの相続手続きで遺産分割協議書が必要になることもあるため、その後の手続きを期限内に終わらせられるよう、遺産分割協議が成立したらすぐに遺産分割協議書も作成しましょう。
Q3.遺産相続で最も期限の短い手続きは何ですか?
A:遺産相続に関連する手続きとしては、相続放棄・限定承認・単純承認の選択が、「相続開始を知った時から3ヶ月以内」と最も短いです。
まとめ
遺産相続手続きには様々な期限が設けられているため、必要な手続きの期限は全て把握して、計画的かつ迅速に進めなければなりません。期限を過ぎると、本記事でご紹介したとおり、権利が消滅したり、税金の軽減措置が受けられなくなったり、延滞税が発生したりするなど、経済的に大きなデメリットが生じる可能性があります。
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この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
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