相続手続きに必要な戸籍謄本の種類は?死亡した人の戸籍の取り方など
身近な人が亡くなった際には、さまざまな手続きで必要となる戸籍謄本をどのように準備すればよいのでしょうか?亡くなった方の戸籍謄本だけでなく、相続人全員の戸籍謄本が求められる場合もあります。
このため、どのような種類の戸籍が必要で、どのように取得するのかを知っておくことが、スムーズな相続手続きのための第一歩となります。また、亡くなった方の戸籍謄本を複数の役所から取り寄せる必要がある場合、その手間と時間は想像以上です。
この記事では、相続において必要となる戸籍謄本の種類や取り方、さらには必要となる相続手続きについて詳しく解説します。
目次
相続手続きに必要な戸籍謄本の種類
相続手続きにおいて、戸籍謄本は重要な役割を果たします。戸籍謄本は、出生から死亡までの身分関係(出生、婚姻、死亡、親族関係など)を登録し、公に証明する文書です。
相続手続きに必要な戸籍謄本の種類は以下のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本および相続人全員の現在の戸籍謄本が必要です。これらの戸籍謄本によって、相続人が誰であるかを正確に把握し、手続きを進めることができます。
たとえば、相続人が配偶者と子供、あるいは配偶者のみ、または子供のみの場合など、一般的な相続状況においては、これらの戸籍謄本で手続きを完了することが可能です。
法定相続人になる人によって追加で必要となる戸籍謄本
相続人が亡くなっており孫が法定相続人となる場合
親が亡くなった時に、もし親の子(被相続人の子)がすでに亡くなっており、その子に子供(被相続人から見て孫)がいる場合、孫が相続人となることを代襲相続と呼びます。
この場合、代襲相続を行うには、亡くなった子(被代襲者)の生涯を追う戸籍謄本(出生から死亡まで)と、その子の子(代襲相続人)全員の現在の戸籍謄本が必要になります。
兄弟姉妹が法定相続人になる場合
被相続人に子供がおらず、直系尊属(親や祖父母)も亡くなっている場合、兄弟姉妹が法定相続人として相続権を持ちます。この状況では、被相続人の両親それぞれについて、出生から死亡までを示す戸籍謄本が必要になります。
これらの戸籍謄本を提出することで、直系尊属がすでに亡くなっていることと、異父母の兄弟姉妹が存在する可能性を確認することができます。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要な理由と取り方
なぜ出生から死亡までの戸籍謄本が必要?法定相続人を証明する書類
相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必須です。この戸籍謄本には、被相続人の両親、兄弟姉妹、結婚歴、子供などの家族関係が詳細に記載されています。これにより、被相続人の法定相続人、つまり財産を相続する権利がある人々を正確に特定することができます。
たとえば、被相続人に子供がいる場合、戸籍謄本に記載された子供が相続人となります。子供がいなくて両親が生存している場合は、両親が相続人になります。兄弟姉妹が相続人になる場合も、戸籍謄本を通じてその関係を確認します。
このように、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は、法定相続人を証明するための不可欠な書類として、相続登記、遺産分割協議、相続税申告など、さまざまな相続手続きにおいて重要な役割を果たします。
出生から死亡までの戸籍謄本には除籍謄本や改正原戸籍も含まれる
相続手続きにおいて、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は必須の書類ですが、これには除籍謄本や改製原戸籍謄本も含まれます。戸籍のコンピューター化や法改正に伴い、戸籍は何度か改製されており、その過程で最新の戸籍謄本に過去の重要な身分事項が記載されていないことがあります。
除籍謄本は、戸籍から抹消された人の記録を残したもので、死亡や婚姻による姓の変更などで戸籍から除かれた場合に作成されます。改製原戸籍謄本は、戸籍の改製時に以前の戸籍の内容を保存するために作成されたもので、改製された時点より前の情報が記載されています。
したがって、被相続人の出生から死亡までの全ての身分事項を把握するためには、最新の戸籍謄本だけでなく、除籍謄本や改製原戸籍謄本も参照する必要があるのです。これにより、被相続人の正確な家族関係や身分の変遷を確認し、法定相続人を正しく特定することが可能となります。したがって、相続手続きを行う際には、これらの書類の提出も忘れずに行うことが重要です。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の取り方
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得するには、以下の手順を踏みます。
- 死亡記載のある戸籍謄本または除籍謄本の取得: まず、被相続人の死亡が記載されている最新の戸籍謄本または除籍謄本を取得します。これが出発点となります。
- 前の戸籍の情報をもとに遡る: 次に、取得した戸籍謄本に記載されている情報をもとに、一つ前の戸籍謄本を取得します。たとえば、戸籍謄本に改製前の戸籍番号や除籍された日付が記載されている場合、その情報をもとに前の戸籍謄本を請求します。
- 出生記載の戸籍に辿り着くまで繰り返す: この手順を繰り返し、被相続人の出生が記載されている戸籍謄本に辿り着くまで遡ります。各戸籍謄本には前の戸籍の情報が記載されているため、一つずつ遡ることが可能です。
この方法により、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得することができ、相続手続きに必要な法定相続人の特定や身分の変遷の確認が可能になります。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の取得例は、見附市ホームページ「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本の取得(例)」に見本付きでわかりやすく解説されていますので参照ください。
具体的な戸籍謄本の取り方については、後で詳しく解説いたします。
出生から死亡までの戸籍謄本を取る際の注意点
複数の自治体での戸籍謄本の取得
被相続人の本籍地が複数の市区町村にまたがっている場合、出生から死亡までの戸籍謄本が一つの自治体に揃っているとは限りません。そのため、まずは最後の本籍地の自治体で戸籍謄本を遡り、次に以前の本籍地があった自治体で同様の作業を繰り返す必要があります。同じ政令指定都市内であれば、行政区が異なっても一括して取得が可能です。
窓口での請求の際の対応
窓口で戸籍謄本を請求する際には、通常の請求書に出生から死亡までの戸籍謄本を取得したい旨が明記されていないことが多いため、職員に直接その旨を伝えると良いでしょう。職員は、その自治体で取得できる限界まで戸籍を遡り、次にどの自治体で取得すべきかを教えてくれます。
郵送での請求方法と費用
郵送で戸籍謄本を請求する場合は、請求書の余白部分に、「被相続人(氏名、生年月日、死亡日)の相続手続きのため、出生から死亡までの戸籍が必要です。」と明記します。
定額小為替を同封する際には、必要な通数が不明なため、余裕を持った金額を入れておきます。450円と750円の定額小為替を数枚程度が適切と考えられます。余った分は戸籍謄本と共に返送されますが、不足している場合は追加で送る必要があります。
相続人全員の現在の戸籍謄本│生存を確認するための書類
相続手続きにおいて、法定相続人が明確になった後、相続人全員が現在生存していることを証明するためには、相続人全員の現在の戸籍謄本が必要となります。これにより、相続人が生存しているか、またはすでに亡くなっているかを確認することができます。
ただし、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本に相続人がすでに記載されている場合や、遺言書が存在する場合には、相続人全員の戸籍謄本が必ずしも必要とは限りません。遺言書によって相続人が明記されていれば、それに従って手続きを進めることができるためです。
現在の戸籍謄本の具体的な戸籍謄本の取り方については、以下の記事を参照してください。
以下では、相続の手続きに必要な死亡した人の戸籍謄本の取り方に特化して解説していきます。相続人自身の戸籍の取り方については、上記の記事を参照してください。
死亡した人の戸籍謄本の取り方
戸籍の請求先は死亡した人の本籍地
死亡した人の戸籍謄本は、通常は本籍地にある市区町村役場で取得することができます。また、市区町村役場の支所や出張所でも取得可能です。
さらに、郵送での取り寄せや、一部の自治体ではコンビニ交付に対応しており、そこで取得することもできます。ただし、コンビニで取得できるのは自分が記載されている戸籍謄本のみで、除籍謄本や改正原戸籍謄本は対象外です。利用できる市区町村については、総務省「コンビニ交付」の「利用できる市区町村」で確認できます。
本籍地以外でも取得できるように!2024年3月法改正
2024年3月1日から、戸籍謄本の広域交付制度が施行されることにより、相続手続きにおける戸籍謄本の取得がより便利になります。この制度により、本籍地が遠方にある場合でも、最寄りの市区町村の役所で戸籍謄本を取得できるようになります。
本籍地以外の役所で戸籍証明書等が請求できるのは、以下の続柄の人のみです。
- 本人
- 配偶者
- 父母、祖父母などの直系尊属
- 子、孫などの直系卑属
ただし、代理人や郵送による請求は認められておらず、本人が窓口に直接出向く必要があります。また、顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)の提示が必要となります。
この制度の導入により、相続手続きをはじめとする様々な手続きで必要となる戸籍謄本の取得が容易になり、手間や時間、費用の削減が期待できます。ただし、戸籍抄本や一部の戸籍謄本は広域交付の対象外となるため、これらの書類は引き続き本籍地の市区町村役場で取得する必要があります。また、兄弟姉妹やおじ、おばなどの戸籍謄本は広域交付の対象外となるため、これらの書類は郵送や代理人による請求を併用する必要があります。
この制度の利用により、相続手続きなどで市役所などを訪問する際には、本人が戸籍担当窓口に出向き、戸籍を一括して請求することで手続きの負担を軽減できます。
死亡した人の本籍地の調べ方│本籍が記載された住民票を取得する
死亡した人の本籍地が不明な場合は、その人の住民票の除票(本籍地記載あり)を取得することで調べることができます。本籍地が記載された住民票を得るには、申請時に「本籍地記載あり」であることを明示する必要があります。また、その後の戸籍謄本の取得をスムーズに行うためには、住民票の除票に「戸籍の筆頭者」「世帯主」「続柄」も記載してもらうと良いでしょう。
住民票の除票は、亡くなった人の最後の住所地を管轄する自治体の役場で取得可能です。取得方法や必要書類は以下の通りです。
請求者 |
相続人または代理人 |
請求先 |
亡くなった人の最後の住所地の市区町村役場 |
手数料 |
1通につき300円 |
必要書類 |
・住民票の写し等交付申請書 |
その他にも、運転免許証で本籍地を確認できる場合があります。古いタイプの運転免許証には本籍地が記載されている場合があります。新しいタイプの場合、警察署や免許証更新センターで情報照会を依頼して、本籍地を確認してください。また親族に尋ねることで、本籍地を知ることができる場合もあります。
死亡した人の戸籍謄本を取得できる人
死亡した人の戸籍謄本は、以下の人々が取得できます。
- 本人: 当然ですが、その戸籍に記載されている人は自分の戸籍謄本を取得できます。
- 配偶者: 戸籍に記載されている人の配偶者も取得できます。
- 直系血族: 祖父母、父母、子、孫など、戸籍に記載されている人の直系の血族も取得できます。
配偶者や直系血族が戸籍謄本を取得する際には、彼らの続柄が確認できる書類が必要です。ただし、その自治体の戸籍で続柄が確認できる場合は、その書類を提出する必要はありません。
本人、配偶者、直系血族以外の場合は委任状が必要
配偶者や直系血族以外の人も、正当な理由がある場合や、戸籍謄本を取得できる人からの委任状がある場合には戸籍謄本を取得できます。例えば、遺産分割協議や相続手続きのために兄弟姉妹の戸籍謄本が必要な場合などが該当します。請求書には請求理由を記載し、それを証明する資料を添付する必要があります。
添付資料としては、被相続人の死亡を確認できる戸籍謄本や、自分が相続人であることを確認できる戸籍謄本が適切です。ただし、申請先の自治体にある戸籍でこれらの情報が確認できる場合は、添付資料は不要です。
弁護士や司法書士などの専門家に戸籍謄本の収集を依頼する場合も、委任状が必要です。専門家に依頼する場合は、彼らが委任状の書式を用意してくれます。
本籍地の役所の窓口で取得する方法
戸籍謄本は亡くなった人の本籍地の市区町村役場に直接出向き、窓口で請求できます。その際は、以下の必要書類を持参して手続きを行います。
- 戸籍証明等交付申請書(窓口で取得)
- 印鑑(交付申請書に押印)
- 手数料(戸籍謄本1通450円※市役所に要確認)
- 請求者の本人確認書類 (運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなど)
- 委任状(代理人が取得する場合)
- 代理人の本人確認書類
今まで戸籍謄本等を取得するためには、本籍地の市役所窓口へ申請をする必要がありましたが、2024年3月1日以降、全国の戸籍情報を最寄りの役所窓口で請求できるようになりました。
本籍地の役所に郵送で取り寄せる方法
直接役所に出向くことが難しい場合には郵送での取り寄せが可能です。
郵送で戸籍謄本を取り寄せる場合、まず本籍地の役所宛に必要書類を揃えて送付する必要があります。戸籍謄本を郵送で取り寄せる際に必要なものは以下のとおりです。手数料の額や必要書類の詳細は、事前に役所のホームページなどで確認しておくことが重要です。
- 戸籍謄本等郵送請求書(各役所のホームページでダウンロード可)
- 請求者の本人確認書類の写し(運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなど)
- 手数料に相当する定額小為替
- 返信用封筒と切手
- 委任状(代理人が取得する場合)
- 代理人の本人確認書類の写し
書類を揃えたら、役所のホームページで送付先の住所を確認して、書類一式を役所宛に郵送します。役所で書類が受理され、手続きが完了すると、戸籍謄本が郵送で自宅に届けられます。郵送での手続きは、時間がかかることがあるため、余裕を持って申請することが望ましいです。
戸籍謄本の取得にかかる手数料は、定額小為替で支払う必要があります。定額小為替は郵便局で購入することができますので、必要な金額を確認した上で、郵便局で適切な金額の定額小為替を購入しましょう。その後、購入した定額小為替を、戸籍謄本の請求書類とともに役所宛の封筒に同封して送付します。
相続手続きで戸籍謄本が必要となるとき
相続手続きを行う際には、戸籍謄本が重要な役割を果たします。相続手続きで求められる主な情報は以下の二点です。
- 被相続人(亡くなった人)の死亡が確認できること。
- 相続人が誰であるかが明らかであること。
具体的には以下のような相続手続きに戸籍謄本が必要となります。
遺産分割に関する手続き
相続人の確定
相続人調査では、誰が相続人になるのかを確定する必要があります。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)を収集し、法定相続人を確定します。
そのほか法定相続人の種類によって必要な戸籍謄本は異なります。
遺言書の検認
遺言書の検認とは、遺言書の発見者や保管者が家庭裁判所に遺言書を提出し、相続人などの立会いのもとで遺言書を開封し、その内容を確認する手続きです。この手続きは、遺言書の真正性を確認し、相続人に遺言の内容を明らかにするために行われます。
<必要な戸籍謄本>
- 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本(発行から3カ月以内)
- 相続放棄、限定承認の申立
故人が多額の債務を残している場合など、相続人が相続を受けることで不利益を被る可能性がある場合、相続人は相続放棄を選択することができます。また、相続した財産の範囲内でのみ債務を弁済することを選択する限定承認も可能です。
相続放棄や限定承認は、故人の死亡から3か月以内に行う必要があります。この期間を過ぎると、自動的に相続を承認したものとみなされます。
<必要な戸籍謄本>
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍・除籍謄本(改製原戸籍謄本)
- 申述人の現在の戸籍謄本(発行から3カ月以内)
不動産の相続登記
所有権移転登記は、売買、贈与、相続などによって不動産の所有権が変更される際に行う登記です。この登記は、不動産が位置する地域を管轄する法務局で手続きを行います。所有権移転登記に必要な書類は、法務局や管轄の役所などから入手する必要があります。
不動産の相続登記においては、以下の戸籍謄本が使用されます。戸籍謄本は原本が必要となりますが、相続関係説明図や戸籍謄本のコピーを添付することで、原本の還付を受けることができます。
<必要な戸籍謄本>
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本又は戸籍抄本
銀行口座、株式、自動車等の名義変更
被相続人が預貯金の払い戻しや証券口座の名義変更の手続きでは、戸籍謄本が必要となります。金融機関によって必要な書類が異なりますが、多くの場合、以下のような戸籍謄本が必要です。
これは、故人の資産を相続する際に、相続人の身分と相続関係を証明するために使用されます。ただし、遺言書がある場合は、故人の死亡の記載がある戸籍謄本のみで足りることもあります。
<必要な戸籍謄本>
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
また、被相続人が所有していた自動車を相続人が引き継ぎ、名義変更(移転登録)を行う場合にも、戸籍謄本が必要となります。この手続きは、管轄の運輸局で行われます。相続人が自動車の所有権を正式に引き継ぐためには、相続関係を証明する戸籍謄本が必須です。
相続税の申告
相続税申告では、相続財産の価額を算出し、相続税を計算します。相続税申告書を作成する際に、被相続人及び相続人全員の戸籍謄本が必要です。
相続手続きにおける戸籍謄本の必要部数は?
相続手続きでは、戸籍謄本の必要部数はケースによって異なりますが、多くの場合3~4通以上が必要になります。特に、結婚や本籍地の移動などで新しい戸籍が作成されたり、戸籍法の改正による改製原戸籍謄本が必要になったりすることで、必要な部数はさらに増加する可能性があります。
戸籍謄本は、被相続人の死亡確認や相続人の範囲確定のために不可欠であり、想定外の相続人が発覚することもあるため、漏れなく準備する必要があります。手続きによっては戸籍謄本の原本が求められることもあり、原本を提出する手続きでは返却されないことも多いため、必要部数を準備するか、法定相続情報一覧図の作成を検討すると良いでしょう。
戸籍謄本に有効期限はある?
相続手続きに使用する戸籍謄本自体には、有効期限が設定されているわけではありません。戸籍謄本には発行年月日が記載されていますが、それが特定の日付までしか使用できないという意味ではないのです。つまり、一度発行された戸籍謄本は、その後も有効な書類として扱われます。
ただし、提出先によっては、戸籍謄本の新しさを求める場合があります。例えば、相続手続きを行う際に、相続人全員の戸籍謄本が必要とされることがありますが、この場合、提出先である金融機関や不動産登記所などが「発行から3か月以内の戸籍謄本」といったような条件を設けていることがあります。
このように、戸籍謄本自体には有効期限がないものの、提出先によっては最近発行されたものを求められることがあるため、相続手続きを行う際には、提出先の要件を事前に確認し、必要に応じて新たに戸籍謄本を取得することが重要です。
戸籍謄本の代わりに提出できる「法定相続情報一覧図」とは?
相続手続きでは、戸籍謄本や除籍謄本など様々な戸籍書類が必要になりますが、相続人が多い場合にはこれらの書類が大量に必要になることがあります。この手続きの負担を軽減するために、2017年5月29日から法定相続情報証明制度がスタートしました。
この制度は、戸籍や除籍謄本などを基に作成した法定相続情報一覧図を法務局に提出し、認証を受けることで、その一覧図のコピーが5年間無料で交付されるというものです。もともとは不動産の相続登記が放置されることを防ぐために導入されましたが、預貯金口座の相続手続きなどにも活用できます。したがって、一度法定相続情報一覧図を作成しておけば、相続手続きが格段に楽になるでしょう。
法定相続情報一覧図の様式及び記載例は、法務局のホームページ「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」を参照してください。
法定相情報一覧図の作成方法や必要書類などは下記ページを参照してください。
相続手続きに必要な戸籍謄本に関するQ&A
Q: 相続手続きで使用する戸籍謄本は、コピーでもよい?
A: 相続手続きで使用する戸籍謄本は、手続きによって原本が必要な場合とコピーで足りる場合があります。一般的には、法的な証明が求められる手続きでは原本が必要とされることが多いです。
しかし、場合によってはコピーで受け付けられることもあるため、事前に提出先に確認することが重要です。また、原本を提出する際には返却されないことが多いので、必要部数の戸籍謄本を準備するか、法定相続情報一覧図の作成を検討するとよいでしょう。
ただし提出した原本は所定の手続きを行うことで、基本的には返却してもらえます。
注意点として即日返却してもらえる場合と後日返却となる場合があるので、確認が必要です。
Q: 法定相続情報一覧図を戸籍謄本の代わりに提出するメリットは?
A: 法定相続情報一覧図とは、法務局の認証を受けた、被相続人と相続人の関係を表や家系図のような形式で表した書類のことです。この一覧図を相続手続きで提出することで、戸籍謄本の提出が不要となります。
また、一度作成しておくと5年間は無料で交付してもらえるため、手続きのたびに戸籍謄本を取得する手間と費用を削減することができます。
まとめ
相続手続きにおいて、戸籍謄本は重要な役割を果たします。身近な人が亡くなった際、遺産分割や相続税申告、不動産の相続登記など、様々な手続きで戸籍謄本が必要となります。必要な戸籍謄本の種類には、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本が含まれます。
また、戸籍謄本の取得方法についても理解しておくことが重要です。役所への直接訪問や郵送、オンライン申請など、手続き方法はさまざまですが、必要な部数や種類を事前に把握し、計画的に取得することがスムーズな相続手続きにつながります。
この記事では、相続手続きに必要な戸籍謄本の種類や取り寄せ方について解説しました。相続に際しては、戸籍謄本の準備を忘れずに行いましょう。
この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。